説明

コンバイン

【課題】脱穀部における負荷にかかわらず、脱穀性能および選別性能を維持して、脱穀作業および選別作業の作業効率が低下するのを防止することができるコンバインを提供する。
【解決手段】エンジン27の動力を脱穀部5の扱胴32に伝達するとともに、選別部6に伝達する構成において、脱穀部における負荷を検出し(S1)、その検出した負荷が閾値以上であるか否かを判定する(S2)。検出した負荷が閾値未満であるとき、エンジン27の回転数を第一設定回転数とする(S3)。検出した負荷が閾値以上であるとき、エンジン27の回転数を第一設定回転数よりも大きな第二設定回転数とする(S4)。次に、選別部6の回転数をエンジン27の回転数が第一設定回転数である場合における回転数で保たれるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
原動機部から選別部に駆動力を供給するとともに、原動機部を補助する補助原動機部を設けて、原動機部からの駆動力の変動により選別部に供給される駆動力が変動した場合であっても、この補助原動機部により選別部に常時所定の駆動力を供給可能としたコンバインが従来技術として知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−245260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような従来技術は、原動機部から脱穀部にも駆動力を供給するため、脱穀する穀稈の湿り具合などの影響で脱穀部における負荷が大きく変動して、原動機部からの駆動力の変動により脱穀部に供給される駆動力が変動した場合には、脱穀部における扱胴の回転数を最適なものに設定できずに脱穀性能が低下し、ひいては脱穀作業および選別作業の作業効率が低下するという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、脱穀部における負荷にかかわらず、脱穀性能および選別性能を維持して、脱穀作業および選別作業の作業効率が低下するのを防止することができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明は、以下の手段をとる。
【0007】
請求項1においては、エンジンの動力を脱穀部の扱胴に伝達するとともに、選別部に伝達するように構成するコンバインであって、前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、前記脱穀部における負荷を検出する負荷検出手段と、前記エンジンの回転数を制御するエンジン回転数制御手段と、前記選別部の回転数を調整する回転数調整手段と、前記エンジン回転数制御手段を、前記負荷検出手段の検出値が閾値未満であるとき、前記エンジンの回転数が第一設定回転数となるように制御し、前記負荷検出手段の検出値が閾値以上であるとき、前記エンジンの回転数が第一設定回転数よりも大きな第二設定回転数となるように制御するとともに、前記調整手段を、前記負荷検出手段の検出値にかかわらず、前記選別部の回転数が所定の回転数で保たれるように制御する制御手段とを備える。
【0008】
請求項2においては、前記エンジンの動力を変速して走行部に伝達する無段変速装置と、前記無段変速装置の変速比を変更する変速比調整手段と、走行速度を検出する走行速度検出手段とをさらに備え、前記制御手段は、前記エンジン回転数制御手段を、前記エンジンの回転数が第一設定回転数または第二設定回転になるように制御するとき、前記変速比調整手段を、前記負荷検出手段の検出値にかかわらず、前記無段変速装置の変速比が走行速度を所定の走行速度で保つ値となるように制御する。
【0009】
請求項3においては、前記扱胴を前記エンジンにより回転駆動される前扱胴として、前記前扱胴の搬送方向下流側に設けられ当該前扱胴に対して相対回転可能な後扱胴と、前記後扱胴を回転駆動する脱穀用アクチュエータと、前記前扱胴の回転数を検出する前扱胴回転数検出手段と、前記後扱胴の回転数を検出する後扱胴回転数検出手段とをさらに備え、前記制御手段は、前記脱穀用アクチュエータを、前記前扱胴が回転駆動されるとき、前記後扱胴の回転数が前記前扱胴の回転数以上で一定となるように制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、脱穀部における負荷が閾値未満であるとき、エンジンの回転数を比較的小さなものとして、燃費の向上を図りながら、扱胴をその負荷に応じた最適な回転数で回転駆動させることが可能となる。一方、脱穀部における負荷が閾値以上であるとき、エンジンの回転数を増大させて、扱胴をその回転数を増大させてその負荷に応じた最適な回転数で回転駆動することが可能となる。このとき、エンジンの回転数の増減にともなう選別部の回転数の変化を阻止することが可能となる。また、脱穀部における負荷が閾値以上であるときでも、エンジンの回転数が増大するため、ささり粒等による穀粒のロスを低減することが可能となる。したがって、脱穀部における負荷にかかわらず、脱穀性能および選別性能を維持して、脱穀作業および選別作業の作業効率が低下するのを防止することができる。
【0012】
請求項2においては、脱穀部における負荷に基づいてエンジン回転数が増減する際に、走行速度の変化を阻止して、穀稈の脱穀部への供給量を一定に維持し、扱胴を安定的に回転駆動させることが可能となる。したがって、脱穀部における負荷にかかわらず、脱穀性能を維持して、脱穀作業の作業効率が低下するのを防止することができる。
【0013】
請求項3においては、脱穀部における負荷に基づいてエンジンの回転数が変化した場合であっても、後扱胴の回転数が常に前扱胴の回転数以上で一定となり、脱穀部でささり粒等による穀粒のロスを低減することが可能となる。したがって、脱穀作業の作業効率が低下するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの側面図。
【図2】コンバインにおける動力伝達経路の模式図。
【図3】脱穀部および選別部の側面断面図。
【図4】制御手段のブロック図。
【図5】制御手段の構成を示す図。
【図6】制御手段による制御の流れを示す図。
【図7】別実施例の脱穀部および選別部の側面断面図。
【図8】別実施例の脱穀部および選別部の側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。
【0017】
図1、図2に示すように、コンバイン1には、走行部3、刈取部4、脱穀部5、選別部6、穀粒貯溜部7、排藁処理部8、エンジン部9、ミッション部10、操縦部11が備えられる。
【0018】
走行部3は機体フレーム2の下部に設けられる。走行部3は左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置12などを有して、機体をクローラ式走行装置12により前進または後進方向に走行させることができるように構成される。
【0019】
刈取部4は機体フレーム2の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部4は分草具13や、引起装置14や、切断装置15や、搬送装置16などを有して、圃場の穀稈を分草具13により分草し、分草後の穀稈を引起装置14により引き起こし、引起後の穀稈を切断装置15により切断し、切断後の穀稈を搬送装置16により脱穀部5側へ搬送することができるように構成される。
【0020】
脱穀部5は機体フレーム2の左側前部に設けられ、刈取部4の後方に配置される。脱穀部5はフィードチェン31や、扱胴32、処理胴34などを有して、刈取部4から搬送されてくる穀稈をフィードチェン31により受け継いで排藁処理部8側へ搬送し、搬送中の穀稈を扱胴32により脱穀し、扱胴32側からの未処理物を処理胴34により処理することができるように構成される。
【0021】
選別部6は機体フレーム2の左側部に設けられ、脱穀部5の下方に配置される。選別部6は揺動選別装置40や、風選別装置54や、穀粒搬送装置50などを有して、脱穀部5から落下する処理物を揺動選別装置40により揺動選別し、揺動選別後のものを風選別装置54により風選別して藁屑や塵埃などを藁屑排出装置により外部へ排出する一方、穀粒を穀粒搬送装置50により穀粒貯溜部7側へ搬送することができるように構成される。
【0022】
穀粒貯溜部7は機体フレーム2の右側後部に設けられ、脱穀部5および選別部6の右側方に配置される。穀粒貯溜部7はグレンタンク21や、穀粒排出装置22などを有して、選別部6から搬送されてくる穀粒をグレンタンク21により一時的に貯溜し、貯溜中の穀粒を穀粒排出装置22によりグレンタンク21から排出し、更に任意の方向に搬送してから外部へ排出することができるように構成される。
【0023】
排藁処理部8は機体フレーム2の左側後部に設けられ、脱穀部5の後方に配置される。排藁処理部8は排藁搬送装置17や、排藁切断装置18などを有して、脱穀部5からの脱穀済みの穀稈を排藁として排藁搬送装置17により受け継いで外部へ排出する、または排藁切断装置18へ搬送し、搬送後の排藁を排藁切断装置18により切断してから外部へ排出することができるように構成される。
【0024】
エンジン部9は機体フレーム2の右側前部に設けられ、穀粒貯溜部7の前方に配置される。エンジン部9はエンジン27などを有して、動力をエンジン27からこれを駆動源とする各部の装置に適宜の動力伝達機構を介して伝達し、各部の装置を駆動させることができるように構成される。
【0025】
具体的には、たとえば、図2に示すように、エンジン27の動力は、走行部3のクローラ式走行装置12に後述のミッション部10のトランスミッション23を介して伝達可能とされるとともに、脱穀部5の扱胴32と処理胴34とに、選別部6の揺動選別装置40と穀粒搬送装置50とに、穀粒貯溜部7の穀粒排出装置22とに、排藁処理部8の排藁搬送装置17と排藁切断装置18とに伝達可能とされる。
【0026】
なお、本実施形態においては、電動式モータ28・29がコンバイン1の任意位置に配設される。そして、エンジン27の動力ではなく、電動式モータ28の動力が、刈取部4の引起装置14と切断装置15と搬送装置16とに、また脱穀部5のフィードチェン31に伝達可能とされるとともに、電動式モータ29の動力が選別部6の風選別装置54に伝達可能とされる。
【0027】
ミッション部10は機体フレーム2の右側前部に設けられ、エンジン部9の前方に配置される。ミッション部10は油圧式無段変速装置30を含むトランスミッション23などを有して、エンジン部9のエンジン27の動力が走行部3のクローラ式走行装置12に伝達される前に、トランスミッション23により当該動力を変速することができるように構成される。
【0028】
操縦部11は機体フレーム2の右側前部に設けられ、エンジン部9およびミッション部10の上方に配置される。操縦部11は操縦席24や、ステアリングハンドル25を含む操作具類などを有して、操縦席24に操縦者を着座させ、操作具類により操縦者が各部の装置を操作することができるように構成される。
【0029】
このようにして、コンバイン1は、操縦部11での操作具類の操作によって、エンジン部9のエンジン27の動力または電動式モータ28・29の動力を各部の装置に伝達して、走行部3にて機体を走行させながら、刈取部4で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部5で刈取部4からの穀稈を脱穀し、選別部6で脱穀部5からの脱穀物を選別して、穀粒貯溜部7で選別部6からの穀粒を貯溜すると同時に、排藁処理部8で脱穀部5からの排藁を外部へ排出することができるように構成される。
【0030】
次に、脱穀部5および選別部6の構成について説明する。
【0031】
図2、図3に示すように、脱穀部5には、フィードチェン31、扱胴32、処理胴34などが備えられる。また、選別部6には、揺動選別装置40、風選別装置54、穀粒搬送装置50などが備えられる。
【0032】
脱穀部5において、扱胴32は、前端部を面取りした円筒状に形成され、軸心方向を前後方向として扱室36に配置される。扱胴32は、扱室36でその前壁36aと後壁36bとの間に回転自在に架設された回転支軸37に取り付けられ、この回転支軸37にエンジン27からの動力が伝達されることで当該回転支軸37と一体的にその前後方向の軸心回りで回転駆動される。扱胴32の下方には、受網33が扱胴32の下半部を覆うように配置される。
【0033】
処理胴34は、円筒状に形成され、軸心方向を前後方向として扱胴32と平行とされて、その右後方で処理室38に配置される。処理室38はその前部の左側方に設けられる送塵口を介して扱室36と連通される。そして、処理胴34は、処理室38に前後方向に回転自在に架設された支軸に支持され、この支軸にエンジン27からの動力が伝達されることで当該支軸と一体的にその前後方向の軸心回りで回転駆動される。処理胴34の下方には、処理胴網35が配置される。
【0034】
フィードチェン31は、扱胴32の左側方で刈取部4と排藁処理部8との間にわたって配置される。フィードチェン31は、扱胴32の左側方でフィードチェンフレームに設けられた駆動スプロケットおよび複数の従動スプロケットに巻回され、その駆動スプロケットに電動式モータ28からの動力が伝達されることで回転駆動される。
【0035】
選別部6において、揺動選別装置40には、揺動選別装置本体41、フィードパン42、チャフシーブ43、グレンシーブ44、ストローラック45が備えられる。揺動選別装置本体41は、その長手方向を前後方向として脱穀部5の扱胴32および受網33ならびに処理胴34および処理胴網35の下方に配置され、揺動機構46の作動にともなって揺動される。この揺動機構46はその回転軸にエンジン27からの動力が伝達されることで作動される。
【0036】
フィードパン42は、揺動選別装置本体41の前部に設けられ、脱穀部5の扱胴32および受網33の前部下方に配置される。チャフシーブ43は、揺動選別装置本体41の前後中途部に設けられ、脱穀部5の扱胴32および受網33の前部下方であって、フィードパン42の後方に配置される。
【0037】
グレンシーブ44は、揺動選別装置本体41の前後中途部に設けられ、チャフシーブ43の下方に配置される。ストローラック45は、揺動選別装置本体41の後部に設けられ、チャフシーブ43の後方であってグレンシーブ44の後上方に配置される。
【0038】
風選別装置54には、風選別装置本体51、唐箕ファン52、吸引ファン53が備えられる。唐箕ファン52は、風選別装置本体51の前部に左右方向に横設され、フィードパン42の後部の下方に配置される。吸引ファン53は風選別装置本体51の後端部の上方で左右方向に横設され、ストローラック45の後上方に配置される。唐箕ファン52および吸引ファン53は、その回転軸に電動式モータ29からの動力が伝達されることで回転される。
【0039】
穀粒搬送装置50には、一番搬送装置55、二番搬送装置56、一番揚穀装置57、二番還元装置58が備えられる。一番搬送装置55は、風選別装置本体51の底部で左右方向に横設され、唐箕ファン52の後方であってチャフシーブ43およびグレンシーブ44の下方に配置される。二番搬送装置56は、風選別装置本体51の底部で左右方向に横設され、一番搬送装置55の後方であってストローラック45の下方に配置される。
【0040】
一番揚穀装置57は、風選別装置本体51の右外側に上下方向に立設され、一番搬送装置55と接続されるとともに、穀粒貯溜部7のグレンタンク21と接続される。二番還元装置58は、風選別装置本体51の右外側に前後方向に斜設され、二番搬送装置56と接続されるとともに、脱穀部5の扱室36または揺動選別装置40の上方空間に接続される。
【0041】
このような構成において、脱穀作業および選別作業が行われる際、脱穀部5では、刈取部4からの穀稈がフィードチェン31により受け継がれ、排藁処理部8側へ搬送される。この搬送中の穀稈が扱胴32により脱穀され、その穀粒や藁屑や塵埃を含む処理物が選別部6へ落下する過程で受網33により選別される。扱胴32により脱穀されなかった未処理物は、扱室36から送塵口を介して処理室38に搬送されて、処理胴34により処理され、その処理物が選別部6へ落下する過程で処理胴網35により選別される。
【0042】
選別部6では、揺動選別装置40が作動されている状態、つまり揺動選別装置本体41が揺動機構46により揺動されている状態で、脱穀部5の受網33の前部から落下した処理物の層がフィードパン42により均平化されて、処理物が比重選別される。フィードパン42による選別後のものがチャフシーブ43により粗選別される。また、脱穀部5の受網33および処理胴網35から落下した処理物がチャフシーブ43により粗選別される。チャフシーブ43による選別後のものがグレンシーブ44と唐箕ファン52からの選別風により精選別される。
【0043】
チャフシーブ43およびグレンシーブ44から落下する穀粒や藁屑などが、唐箕ファン52からの選別風により精選別される。このとき、比重が大きく重い穀粒は、一番物として選別風に逆らって落下し、一番搬送装置55に収容される。これよりも比重が小さく軽いものは、唐箕ファン52からの選別風により二番搬送装置56の上方へ向けて飛ばされる。
【0044】
この飛ばされたものの中でも比較的重いものは、二番物として落下し、二番搬送装置56に収容される。これを除いたものは、唐箕ファン52からの選別風によりストローラック45へ向けてさらに飛ばされる。そのうちの藁屑はストローラック45によりほぐされる。この藁屑の中にある穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置56に収容される。他の塵埃などは、吸引ファン53により吸引されて、三番口59から外部に排出される。
【0045】
一番物は、一番搬送装置55により一番揚穀装置57に搬送され、つづいて一番揚穀装置57により穀粒貯溜部7のグレンタンク21に搬送されて、このグレンタンク21に一時的に貯溜される。二番物は、二番搬送装置56により二番還元装置58に搬送され、つづいて二番還元装置58により脱穀部5の扱室36または揺動選別装置40の上方空間へ搬送され、脱穀され又は脱穀さずに揺動選別装置40により再選別される。
【0046】
次に、コンバイン1における制御構成について説明する。
【0047】
図4に示すように、コンバイン1には、制御手段60が備えられる。制御手段60には、エンジン27の回転数を検出するエンジン回転数検出手段61、走行速度を検出する走行速度検知手段62、扱胴32の回転数を検出する扱胴回転数検出手段63、脱穀部5における負荷を検出する負荷検出手段64などが電気的に接続される。
【0048】
制御手段60には、また、エンジン27の回転数を制御するエンジン回転数制御手段66、トランスミッション23に含まれる油圧式無段変速装置30の変速比を変更する変速比調整手段67、エンジン27の動力により作動する選別部6の回転数を調整する調整手段70などが電気的に接続される。
【0049】
本実施形態において、負荷検出手段64は、扱胴32の回転支軸37の回転数を検出する回転センサで構成される。つまり、負荷検出手段64は、扱胴回転数検出手段63と兼用される。なお、負荷検出手段64は、脱穀部5内における穀粒の流量や排藁流量を検出する流量検出センサなどで構成することも可能である。
【0050】
エンジン回転数制御手段66は、燃料噴射装置からなり、その燃料噴射ポンプの燃料調節用ラックを機械式ガバナなどを介して調速用アクチュエータにより操作し、燃料噴射量を変更することによって、エンジン27の回転数を制御することができるように構成される。
【0051】
変速比調整手段67は、電動式モータなどからなる変速用アクチュエータを有し、油圧式無段変速装置30のトラニオン軸を変速用アクチュエータにより連動機構を介して操作することによって、この油圧式無段変速装置30の変速比を変更することができるように構成される。
【0052】
調整手段70は、図5に示すように、電動式モータからなる調整用アクチュエータ71、遊星ギヤ機構72を有し、選別部6の回転数、即ち動力がエンジン27から伝達される揺動選別装置40(揺動機構46の回転軸)の回転数を調整用アクチュエータ71および遊星ギヤ機構72により調整することができるように構成される。調整手段70では、遊星ギヤ機構72がエンジン27と選別部6の揺動選別装置40とを連結する動力伝達経路の途中に設けられ、これに調整用アクチュエータ71が組み合わされる。
【0053】
具体的には、たとえば、遊星ギヤ機構72に、サンギヤ73、リングギヤ74、複数のプラネタリギヤ75、キャリア76が備えられる。サンギヤ73はエンジン27側の伝達軸77に固定され、リングギヤ74はサンギヤ73を同心状に囲繞するように配置される。各プラネタギヤ75はサンギヤ73とリングギヤ74の内歯とに噛合するようにキャリア76に回転自在に軸支され、キャリア76は選別部6側の伝達軸78に固定される。そして、リングギヤ74の外歯が調整用アクチュエータ71の出力軸に固定されたギヤ79に噛合される。
【0054】
そして、制御手段60が、脱穀部5で扱胴32が回転駆動している状態において、次のような制御を行うように構成される。この制御では、図6に示すように、まず、脱穀部5における負荷が負荷検出手段64により検出される(S1)。そして、この検出された検出値、即ちその検出時の脱穀部5における負荷が閾値以上であるか否かが判定される(S2)。
【0055】
脱穀部5における負荷が閾値未満であると判定された場合、エンジン回転数制御手段66の制御が行われる(S3)。このエンジン回転数制御手段66の制御により、エンジン27の回転数が第一設定回転数とされ、その後この第一設定回転数に保たれる。その結果、扱胴32の回転数が前記第一設定回転数に応じた第一所定回転数とされ、選別部6の揺動選別装置40が前記第一設定回転数に応じた所定回転数とされる。
【0056】
脱穀部5における負荷が閾値以上であると判定された場合、エンジン回転数制御手段66の制御が行われる(S4)。このエンジン回転数制御手段66の制御により、エンジン27の回転数が第二設定回転数とされ、その後この第二設定回転数に保たれる。その結果、扱胴32の回転数が前記第二設定回転数に応じた第二所定回転数とされる。
【0057】
ここでの第二設定回転数は、エンジン27の定格回転数であり、第一設定回転数よりも大きくあらかじめ設定される。言い換えれば、第一設定回転数は、エンジン27の定格回転数である第二設定回転数よりも小さく、たとえば定格回転数の80パーセント程度にあらかじめ設定される。このことから、扱胴32の第一所定回転数は、第二所定回転数よりも小さくなる。
【0058】
エンジン回転数制御手段66の制御が前述のようにエンジン27の回転数が第二設定回転数となるように行われると、調整手段70の制御が行われる(S5)。この調整手段70の制御により、調速用アクチュエータ71が適宜に駆動されて、エンジン27から選別部6の揺動選別装置40への動力伝達経路の途中で、選別部6側の伝達軸78に遊星ギヤ機構72を介して作用することとされる。
【0059】
その結果、エンジン27の回転数が第一設定回転数から第二設定回転数に増大した場合であっても、それに連動して揺動選別装置40の回転数が変化(増大)しないように調整されて、このエンジン27の回転数の増大の前後で前記所定回転数に保たれる。つまり、この場合の揺動選別装置40の回転数は、エンジン27の回転数が第一設定回転数とされている場合における回転数と同一となる。
【0060】
なお、エンジン27の回転数が脱穀部5における負荷に応じて第一設定回転数または第二設定回転数に変更された場合、エンジン27の回転数が脱穀部5における負荷が閾値に基づいてさらに変更されるまでは、その変更後の回転数で一定に保たれるように、エンジン回転数制御手段66の制御が行われる。
【0061】
また、制御手段60は、前述のように、エンジン回転数制御手段66の制御を、エンジン27の回転数が脱穀部5における負荷に応じて第一設定回転数または第二設定回転数となるように行う際、調整手段70の制御とともに、変速比調整手段67の制御を行うように構成することも可能である。
【0062】
この場合、変速比調整手段67の制御により、その変速用アクチュエータが適宜に駆動されて、エンジン27から走行部3のクローラ式走行装置12への動力伝達経路の途中で、油圧式無段変速装置30にトラニオン軸を介して作用することとされる。これにより、油圧式無段変速装置30の変速比が、エンジン27の回転数が第一設定回転数であっても第二設定回転数であっても、走行速度を一定の走行速度で保つ値となるように変更される。
【0063】
その結果、エンジン27の回転数が第一設定回転数から第二設定回転数に増大した場合には、それに連動して走行部3の回転数、即ちクローラ式走行装置12の回転数が変化(増大)しないように調整されて、このエンジン27の回転数の増大の前後で走行速度が保たれる。なお、エンジン27の回転数が第二設定回転数から第一設定回転数に減少した場合にも、前記同様の制御が行われる。
【0064】
以上のように、本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、エンジン27の動力を脱穀部5の扱胴32に伝達するとともに、選別部6に伝達するように構成するものであって、エンジン27の回転数を検出するエンジン回転数検出手段61と、脱穀部5における負荷を検出する負荷検出手段64と、エンジン27の回転数を制御するエンジン回転数制御手段66と、選別部6の回転数を調整する調整手段70と、エンジン回転数制御手段66を、負荷検出手段64の検出値が閾値未満であるとき、エンジン27の回転数が第一設定回転数となるように制御し、負荷検出手段64の検出値が閾値以上であるとき、エンジン27の回転数が第一設定回転数よりも大きな第二設定回転数となるように制御するとともに、調整手段70を、負荷検出手段64の検出値にかかわらず、選別部6の回転数が所定の回転数、即ちエンジン27の回転数が第一設定回転数である場合における回転数で保たれるように制御する制御手段60とを備えるものとされる。
【0065】
これにより、脱穀部5における負荷が閾値未満であるとき、エンジン27の回転数を比較的小さなものとして、燃費の向上を図りながら、扱胴32をその負荷に応じた最適な回転数で回転駆動させることが可能となる。一方、脱穀部5における負荷が閾値以上であるとき、エンジン27の回転数を増大させて、扱胴32をその回転数を増大させてその負荷に応じた最適な回転数で回転駆動することが可能となる。このとき、エンジン27の回転数の増減にともなう選別部6の回転数の変化を阻止することが可能となる。本実施形態においては、エンジン27の回転数の増大にともなう選別部6の回転数の増加を阻止することが可能となる。また、脱穀部5における負荷が閾値以上であるときでも、エンジン27の回転数が増大するため、ささり粒等による穀粒のロスを低減することが可能となる。したがって、脱穀部5における負荷にかかわらず、脱穀性能および選別性能を維持して、脱穀作業および選別作業の作業効率が低下するのを防止することができる。
【0066】
本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、また、エンジン27の動力を変速して走行部3に伝達する油圧式無段変速装置30と、油圧式無段変速装置30の変速比を変更する変速比調整手段67と、走行速度を検出する走行速度検出手段62とをさらに備え、制御手段60は、エンジン回転数制御手段66を、前記エンジン27の回転数が第一設定回転数または第二設定回転数になるように制御するとき、変速比調整手段67を、負荷検出手段64の検出値にかかわらず、油圧式無段変速装置30の変速比が走行速度を所定の走行速度で保つ値となるように制御するものとされる。
【0067】
これにより、脱穀部5における負荷に基づいてエンジン27の回転数が増減する際に、走行速度の変化を阻止して、穀稈の脱穀部への供給量を一定に維持し、扱胴を安定的に回転駆動させることが可能となる。したがって、脱穀部5における負荷にかかわらず、脱穀性能を維持して、脱穀作業の作業効率が低下するのを防止することができる。
【0068】
さらに、このような制御手段60による制御が行われるコンバイン1において、脱穀部5に前述の扱胴32に代えて次のような扱胴82を備えてその回転数制御を行うことも可能である。
【0069】
この場合、図7に示すように、扱胴82は、前扱胴83と、後扱胴84とで構成される。前扱胴83は、前述の扱胴32と前後方向の長さが短くなっていることを除けば同様のものであり、前端部を面取りした円筒状に形成されて、軸心方向を前後方向として扱室36に配置される。前扱胴83は、扱室36の前壁36aと後壁36bとに回転自在に架設された回転支軸87に取り付けられ、この回転支軸87と一体的に回転可能とされる。
【0070】
扱室36の前壁36aから外部へ突出する回転支軸87の前端部には入力プーリ88が設けられて、この回転支軸87と一体的に回転可能とされる。そして、入力プーリ88とエンジン27側の伝達軸に設けられたプーリとにわたって伝動ベルトが巻き掛けられる。こうして、エンジン27から伝動ベルトを介して入力プーリ88に伝達された動力が回転支軸87に伝達されることで、前扱胴83がこの回転支軸87と一体的にその前後方向の軸心回りで回転駆動される。
【0071】
後扱胴84は、円筒状に形成されて、軸心方向を前後方向として扱室36に配置される。後扱胴84は、前扱胴83の搬送方向下流側、即ち後側に当該前扱胴83と同軸心上に設けられて、回転支軸87の後端部に相対回転自在に支持された筒支軸91に取り付けられ、この筒支軸91と一体的に回転可能とされる。ここで、後扱胴84の前後方向の長さは前扱胴83の前後方向の長さよりも短く設定される。後扱胴84の胴径は前扱胴83の胴径と同程度に設定される。
【0072】
扱室36の後壁36bから外部へ突出する筒支軸91の後端部側には駆動手段92が設けられる。そして、筒支軸91と駆動手段92とが適宜の動力伝達機構を介して連動連結される。こうして、動力が駆動手段92から動力伝達機構を介して筒支軸91に伝達されることで、後扱胴84がこの筒支軸91とともにその前後方向の軸心回りで回転駆動される。
【0073】
駆動手段92は、電動式モータなどからなる駆動用アクチュエータを有し、動力を駆動用アクチュエータから筒支軸91に伝達して、筒支軸91上の後扱胴84を前扱胴83とは独立して回転駆動させることができるように構成される。この駆動手段92は、コンバイン1の適宜の位置に配置され、図8に示すように、制御手段60に電気的に接続される。
【0074】
さらに、制御手段60には、図8に示すように、前扱胴83の回転数を検出する前扱胴回転数検出手段95、後扱胴84の回転数を検出する後扱胴回転数検出手段96が接続される。前扱胴回転数検出手段95は前扱胴83の回転支軸87の回転数を検出する回転センサで構成される。後扱胴回転数検出手段96は後扱胴84の筒支軸91の回転数を検出する回転センサで構成される。本実施形態において、負荷検出手段64は前扱胴回転数検出手段95と兼用される。
【0075】
このように構成された扱胴82において、前扱胴83の回転数は、前述の扱胴32と同様に制御手段60による脱穀部5における負荷に応じたエンジン回転数制御手段66の制御に基づいて調整される。一方、後扱胴84の回転数は、駆動手段92の駆動用アクチュエータの制御に基づいて調整されて、前扱胴83の回転数以上に設定される。
【0076】
具体的には、制御手段60によるエンジン回転数制御手段66の制御でエンジン27の回転数が脱穀部5における負荷に基づいて第一設定回転数とされた場合、前扱胴83が第一所定回転数で回転駆動され、後扱胴84が第一所定回転数よりも大きい回転数で回転駆動される。エンジン27の回転数が脱穀部5における負荷に基づいて第二設定回転数とされた場合、前扱胴83が第一所定回転数よりも大きい第二所定回転数で回転駆動され、後扱胴84が第二所定回転数と同一の回転数で回転駆動される。
【0077】
以上のように、本発明の一実施形態に係るコンバイン1は、また、エンジン27により回転駆動される前扱胴83と、前扱胴83の搬送方向下流側に設けられ当該前扱胴83に対して相対回転可能な後扱胴84とを、扱胴82として備えるとともに、後扱胴84を回転駆動する駆動手段92と、前扱胴83の回転数を検出する前扱胴回転数検出手段95と、後扱胴84の回転数を検出する後扱胴回転数検出手段96とをさらに備え、制御手段60は、駆動手段92を、前扱胴83が回転駆動されるとき、後扱胴84の回転数が前扱胴83の回転数以上で一定となるように制御するものとされる。
【0078】
これにより、脱穀部5における負荷に基づいてエンジン27の回転数が変化した場合であっても、後扱胴84の回転数が常に前扱胴83の回転数以上で一定となり、脱穀部5でささり粒等による穀粒のロスを低減することが可能となる。したがって、脱穀作業の作業効率が低下するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 コンバイン
5 脱穀部
6 選別部
27 エンジン
30 無段変速装置
32 扱胴
60 制御手段
61 エンジン回転数検出手段
62 走行速度検出手段
64 負荷検出手段
66 エンジン回転数制御手段
67 変速比調整手段
70 調整手段
82 扱胴
83 前扱胴
84 後扱胴
92 駆動手段
95 前扱胴回転数検出手段
96 後扱胴回転数検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力を脱穀部の扱胴に伝達するとともに、選別部に伝達するように構成するコンバインであって、
前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
前記脱穀部における負荷を検出する負荷検出手段と、
前記エンジンの回転数を制御するエンジン回転数制御手段と、
前記選別部の回転数を調整する回転数調整手段と、
前記エンジン回転数制御手段を、前記負荷検出手段の検出値が閾値未満であるとき、前記エンジンの回転数が第一設定回転数となるように制御し、前記負荷検出手段の検出値が閾値以上であるとき、前記エンジンの回転数が第一設定回転数よりも大きな第二設定回転数となるように制御するとともに、前記調整手段を、前記負荷検出手段の検出値にかかわらず、前記選別部の回転数が所定の回転数で保たれるように制御する制御手段とを備えるコンバイン。
【請求項2】
前記エンジンの動力を変速して走行部に伝達する無段変速装置と、
前記無段変速装置の変速比を変更する変速比調整手段と、
走行速度を検出する走行速度検出手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記エンジン回転数制御手段を、前記エンジンの回転数が第一設定回転数または第二設定回転になるように制御するとき、前記変速比調整手段を、前記負荷検出手段の検出値にかかわらず、前記無段変速装置の変速比が走行速度を所定の走行速度で保つ値となるように制御する、請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記扱胴を前記エンジンにより回転駆動される前扱胴として、
前記前扱胴の搬送方向下流側に設けられ当該前扱胴に対して相対回転可能な後扱胴と、
前記後扱胴を回転駆動する脱穀用アクチュエータと、
前記前扱胴の回転数を検出する前扱胴回転数検出手段と、
前記後扱胴の回転数を検出する後扱胴回転数検出手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記脱穀用アクチュエータを、前記前扱胴が回転駆動されるとき、前記後扱胴の回転数が前記前扱胴の回転数以上で一定となるように制御する、請求項1または請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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