説明

コンバイン

【課題】揺動可能にした分草板により刈取装置の穀稈刈取作業などに支障を来さないコンバインを提供すること。
【解決手段】走行車体2の前側に配置した刈取装置6と該刈取装置6の前側に複数個並列配置される分草杆20と分草杆(20)の前端部に左右に揺動可能に支持された分草板7を備え、分草板7の下部と分草杆20の下部に、前方接地体41と後方接地体42をそれぞれ一体的に取り付け、分草板7の先端を刈幅の内側に揺動させたときには、前方接地体41も分草板7と一体的に刈幅の内側側に揺動可能な構成とすることを特徴とするコンバインである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀類の収穫作業などを行う農業用のコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
農業用の収穫機の典型例であるコンバインが刈取脱穀作業を開始すると、圃場の穀稈は刈取装置の前端下部にある分草板によって分草作用を受け、次いで穀稈引起し装置の引起し作用によって倒伏状態から直立状態に引起こされ、穀稈の株元が刈刃に達して刈取られ、穀稈の供給搬送装置に受け継がれて順次連続状態で後部上方に搬送される。
穀稈の供給搬送装置の後部に搬送された穀稈は扱深さが調節され、次いでフィードチェンから脱穀装置に供給され、脱穀装置において回転する扱胴の扱歯によって脱穀される。そして、脱穀処理物は選別室で選別処理され、脱穀選別された穀粒はグレンタンクに一時貯留され、穀粒の貯留量が多くなるとオーガによりコンバインの外部に穀粒が搬出される。
コンバインには下記特許文献1にあるように刈取装置を接地追従して昇降させる構成及び刈取装置を車体外側に移動開放させる構成を備えたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−211972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の刈取装置は昇降させる構成と車体外側に移動開放させる構成を備えているが、分草板のみを進行方向に向かって左右に開く構成は備えていない。
本発明の課題は揺動可能にした分草板により刈取装置の穀稈刈取作業などに支障を来さないコンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成により解決される。
すなわち、請求項1記載の発明は、走行車体(2)の前側に配置した刈取装置(6)と、該刈取装置(6)に設けられる刈刃(9)の前側に複数個並列配置した分草杆(20)と、該分草杆(20)の前端部に左右に揺動可能に支持した分草板(7)を備えたコンバインにおいて、前記分草板(7)を刈取装置(6)の刈幅の内側または外側へ揺動自在な構成とし、該分草板(7)の下部と分草杆(20)の下部とに、前方接地体(41)と後方接地体(42)とをそれぞれ一体に取り付け、該前方接地体(41)が分草板(7)と一体で刈幅の内側または外側へ揺動する構成としたコンバインである。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記分草板(7)を刈幅の外側へ向けて揺動させた状態で、該分草板(7)に取り付けた前方接地体(41)と分草杆(20)に取り付けた後方接地体(42)とが一直線上に並ぶ構成とした請求項1記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、前方接地体41を刈幅の内側へ向けて移動させると、前方接地体41がコンバインの前進方向に対して斜めになり、この前方接地体41の外側縁部が圃場面の泥土を刈取装置6の刈幅の外方に押し出すので、刈刃9側に泥が入り込みにくくなり、刈取穀稈の株元に泥土が付着したまま脱穀されて穀粒が汚損されたり、刈刃9が泥土を噛んで早期に摩耗するのを防止することができる。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加え、分草板7を刈幅の外側に向けて揺動させた状態でも、分草板7に取り付けた前方接地体41と分草杆20に取り付けた後方接地体42とが一直線上に並ぶので、刈刃9側に泥が入り込みにくくなり、刈取穀稈の株元に泥土が付着したまま脱穀されて穀粒が汚損されたり、刈刃9が泥土を噛んで早期に摩耗するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態の穀類の収穫作業を行うコンバインの右側面図である。
【図2】図1のコンバインの刈取装置の分草板部分の説明用概略平面図である。
【図3】図1のコンバインの刈取装置の分草板の取付構造図(図3(a)は平面図、図3(b)は側面図)である。
【図4】図1のコンバインの刈取装置の左右スライド機構を説明する図(図4(a)、図4(b)は平面図、図4(c)は正面図)である。
【図5】図1のコンバインの分草板の開閉機構図(図5(a)は開閉機構の平面図、図5(b)は開閉機構の側面図と前処理部の開閉レバーとの連動関係を示す図)である。
【図6】図1のコンバインの刈取装置の昇降機構部を示す構成図である。
【図7】図1のコンバインの刈取装置の昇降機構部の拡大側面図である。
【図8】図1のコンバインの他の実施例の刈取装置とその昇降部材の要部側面図である。
【図9】図8の刈取装置とその昇降部材の要部平面略図である。
【図10】図8の刈取装置とその昇降部材の別実施例の要部側面図である。
【図11】図1のコンバインの他の実施例の刈取装置の後フレームを昇降させる刈取上下シリンダと刈取フローティングシリンダを設けた場合の側面図である。
【図12】図1のコンバインの刈取上下シリンダと刈取フローティングシリンダの油圧制御回路図である。
【図13】図1のコンバインの電磁比例制御弁ソレノドバルブの作動用の電圧と電磁比例制御弁の作動油圧との関係図である。
【図14】図1のコンバインの別実施例の刈取上下シリンダと刈取フローティングシリンダの油圧制御回路図である。
【図15】図1のコンバインの別実施例の刈取高さにより刈取フローティングシリンダの保持圧を解除する構成図である。
【図16】図1のコンバインの刈取装置の接地面からの高さとフローティングシリンダ保持圧及びフローティングシリンダによる刈取装置の上昇速度の関係を示すグラフ(図16(a)と図16(b))である。
【図17】図1のコンバインの刈取装置の接地面からの高さとフローティングシリンダ保持圧の関係図である。
【図18】図1のコンバインの刈取装置の高さと刈取フローティングシリンダ保持圧との関係を示す図(図18(a))と刈取装置の高さと刈取装置の下げ速度の関係を示す図(図18(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を収穫機の典型例であるコンバインを例にして、以下図面と共に説明する。
図1に本発明の実施の形態の穀類の収穫作業を行うコンバインの右側面図を示し、図2には刈取装置の分草板部分の説明用概略平面図を示し、図3には刈取装置の分草板の昇降装置の要部平面図(図3(a))と側面図(図3(b))を示す。
なお、本実施例ではコンバインの前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前後方向をそれぞれ前、後という。
【0011】
図1に示すコンバイン1の車体2の下部には、ゴムなどの可撓性材料材を素材として無端帯状に成型したクローラ4により、乾田はもちろんのこと、湿田においても沈下しないで走行できる構成の走行装置3を備え、車体2の前部には刈取装置6を搭載し、車体2の上部には脱穀装置11(図6)とグレンタンク13を搭載する。
【0012】
図示しないエンジンの始動の後、主変速レバー14によりコンバイン1を前進操作させ、刈取・脱穀クラッチ(図示せず)が「入」になると、刈取作業と脱穀作業が開始される。圃場に植立する穀稈は、刈取装置6の前端下部にある複数の分草板7によって分草作用を受け、次いで穀稈引起具8a(図2)の引起し作用によって倒伏状態にあれば直立状態に引起こされ、穀稈の株元が刈刃9に達して刈取られる。
【0013】
本実施例の刈取装置6の並列配置された複数の分草板7と穀稈引起具8aを含む部材を前処理部又は刈取前処理部10と呼ぶことにする。該刈取前処理部10の後側に、刈取穀稈をフィードチェン(図示せず)へ引き継ぐ穀稈供給搬送装置12が設けられる。
【0014】
該前処理部10は左右にスライド可能な可動式の構成であり、並列配置された複数の分草板7のうちの最も右側の分草板7は刈取装置6の前処理部10の左右へのスライドに連動してリモートコントロールにより更に回動可能な構成にしている。
【0015】
図1のコンバインの刈取装置の左右スライド機構を説明する図を図4(図4(a)、図4(b)は平面図、図4(c)は正面図)に示す。
刈取装置6を油圧シリンダ17の伸縮作動によって上下動させる刈取装置後フレーム18の先端側には、図2、図4に示すように刈取装置下部フレーム19を取り付けている。刈取装置下部フレーム19は左右方向に伸びている伝動筒部材であり、該刈取装置下部フレーム19には前後方向に伸びる分草杆20が複数本設けられ、各分草杆20の先端には分草板7(図2と図4には分草板7(図4には分草板7の図示なし)がそれぞれ4本と3本並列配置される場合を示す。)が取り付けられている。
【0016】
刈取装置6は刈取装置下部フレーム19を平行リンク機構を介して刈取装置後フレーム18に対して左右方向に移動自在に取付けられている。刈取装置後フレーム18の先端側にはコンバイン1の進行方向に向かって左側方に突き出る取付部材32の基部を固定し、該取付部材32の先端の取付軸32aにより左リンクアーム33の基部を軸着する。また、左リンクアーム33の先端の取付軸33aにより刈取装置下部フレーム19を軸着している。取付軸32aおよび取付軸33aの軸着部分にはベアリングを介在させる。
【0017】
また、刈取装置後フレーム18の先端には接続フレーム35を介して右リンクアーム36の基部36aを回動自在に取付け、右リンクアーム36の先端は前記下部フレーム19の上面側に回動自在に取付ける。この右リンクアーム36は刈刃9などの伝動ケースを兼用し、右リンクアーム36内には前記刈取装置後フレーム18内に設けた伝動機構を介して前記下部フレーム19内の伝動軸(図示せず)および刈刃9(図2)を駆動するベベルギヤ(図示せず)に噛み合わせて、これらに回転を伝動させる。
【0018】
そして、前記下部フレーム19および取付部材32と、これらを連結する左リンクアーム33および右リンクアーム36により平行リンク機構を構成し、左リンクアーム33の基部を取り付ける取付軸32aと右リンクアーム36の基部36aは固定側の回動中心となり、また、左リンクアーム33の下部フレーム19との取付軸33aと右リンクアーム36の出力軸36bは移動側の回動中心となり、下部フレーム19が左右に平行移動できるように配置する。
【0019】
また、所定のスライド位置で刈取装置後フレーム18に対して下部フレーム19側の位置を固定するようにロック装置39を設ける。ロック装置39は刈取前処理部10の左右方向へのスライドを禁止する構成として下部フレーム19には右リンクアーム36の回動軸を中心として所定半径を有す半円筒板19aを取り付け、該半円筒板19aの径方向には複数の孔(図示せず)を設けている。また半円筒板19aの外側に位置する下部フレーム19上には、ワイヤ39aの先端に前記孔に向けて挿脱自在のピン39bと該ピン39bの支持部材39cを取り付けている。またピン39bは常時ピン支持部材39cの反対側(半円筒板19a側)に牽引されるようにバネ39dにより付勢されているので、半円筒板19aの孔に挿通した状態を維持している。そのため通常状態では常時は半円筒板19aを固定支持している右リンクアーム36と下部フレーム19とは回動できないように係止され、ロック状態が維持されている。
【0020】
しかし、図4(c)の正面図に示すように操縦席26から手の届く範囲の穀稈引起装置8の頂部にロック解除レバー39eと固定把持部39fとを設け、該固定把持部39f側にロック解除レバー39eを引きつけると、ワイヤ39aによりピン39bが引かれて半円筒板19aの孔から抜け出て、刈取前処理部10が左右右向へスライドできるようになる。
【0021】
本実施例の構成では右クローラ4側の分草板7は以下に説明する手動で開閉可能な機構を備えているので、刈取装置6の前処理部10を右側にスライドさせて、さらに分草板7を開くと、刈取装置6をスライドさせないで、分草板7を閉じた場合に比較して1条分余計に穀稈を刈り取ることができる。
【0022】
本実施例の構成では分草板7は以下に説明する手動で開閉可能な機構を備えている。
図5に分草板7の開閉機構図を示す。図5(a)は開閉機構の平面図、図5(b)は開閉機構の側面図と刈取前処理部10の開閉レバー30との連動関係を示す図である。なお、図5(a)の平面図において分草板7の外形が省略されているが、図5(b)には分草板7の外形を一点鎖線で示した。
【0023】
分草杆20の先端に回動可能に取り付けられる分草板7は図5にはわずかしか図示していないが、該分草板7と一体のバネ取付部21が分草杆20の先端に設けられた回動軸21aを中心にして左右方向に回動するが、該バネ取付部21の左右両端部にバネ22、23がそれぞれ接続し、その一方のバネ23がワイヤ24に接続している。そのため該ワイヤ24を牽引することで右クローラ4側の分草板7を図5(a)に一点鎖線で示す通常時の分草板7の閉じ位置から実線で示す開き位置まで分草板7を回動させることができる。
【0024】
例えば分草板7の開閉動作を刈取装置6の前処理部10の左右スライド機構に連動させる構成とし、例えば左右スライド機構を右にスライドさせるときにワイヤ24で牽引させる構成にしておけば、右端の分草板7を閉じ位置から開き位置に自動的に作動させることができる。
【0025】
また、図5(b)に示すように、操縦席26に設けた分草板開閉レバー30を設け、該レバー30によりワイヤ24を牽引する構成を採用すると、該分草板開閉レバー30を操作することで、右クローラ4側の分草板7を開閉させる構成にすると手動で該分草板7の開閉ができる。
【0026】
なお、通常刈取装置6の前処理部10を左側にスライドさせて刈取作業をするのは、圃場を外側から順次内側に周りながら穀稈を刈り取る、いわゆるまわり刈りを行う場合であり、この他に、圃場内の植立穀稈群の中を直進して植立穀稈群を二分する刈り取り、いわゆる中割の場合がある。
【0027】
上記したように、刈取装置6の前処理部10を右へスライドさせると、右端の分草板7が開くため、中割を行う場合に例えば一条分多い穀稈の刈り取りが可能となり、右クローラ4による穀稈の踏み倒しを少なくすることができる。
【0028】
また、従来は刈取装置6の前処理部10の右スライド操作の後、さらに、分草板7を閉じ位置から開き位置に動かす操作の2つの操作が必要であったが、図5(b)に示す前処理部10のスライド機構の左リンクアーム33に接続したワイヤ25をワイヤ24に連結して連動させる構成を用いると、刈取装置6の前処理部10の左右スライド機構の操作のみで右端の分草板7を開くことができる。また、右スライド操作した前処理部10を左に移動して通常位置に戻すと、バネ22により分草板7が元の閉じ位置に戻る。
このように分草板7の開閉を刈取装置6の前処理部10の左右スライド操作に連動させる操作を取付軸32a(図4)により操縦席26で行うことができるので、刈取作業を中断させることなく、穀稈の刈取幅を増やすことができる。
【0029】
図3には別実施例の左右に回動可能なリモコン式の分草板7の取付構造図(図3(a)は平面図、図3(b)は側面図)を示す。
分草板7の下方と、後方の分草杆20の下方にそれぞれ板状の接地体(接地橇)41、42を設け、ワイヤ(図示せず)で分草板7を車体内側に閉じる時は、前方接地体41も車体内側に移動し、分草杆20に固定された後方の後方接地体42とで平面視で「へ」字状とする。
【0030】
前方接地体41は先端側が後端側より幅が狭い形状であるので、前方接地体41の先端を車体内側に移動させると、前方接地体41の車体2の外側面はテーパ形状となる。そのため、前方接地体41が泥を押しても刈り取り装置6の刈取幅の外方に押し出すので、刈刃9側に泥が入り込むことがない。
【0031】
また、リモコン式の分草板7を車体外側に開くときは、分草板7の下方に設けた前方接地体41の外側面と後方の分草杆20の下方に設けた後方接地体42の外側面をほぼ一直線上とし、分草杆(分草フレーム)20と略平行になる構成としている。
こうして分草板7を車体外側に開いている時でも刈刃9に泥が入り込むことがない。
【0032】
図2に刈取前部10の平面略図に示すように、刈取装置6の最右翼にある分草板7の下方に取り付けた前方接地体41を、操縦席26から左右に移動可能とし、リモコン分草板7の開閉にかかわらず分草杆20の下方に固定した後方接地体42は、既刈り株上を滑らせる位置にあるような構成とする。
こうして、分草板7の下方に取り付けた前方接地体41を、操縦席26から操作して分草板7を開閉しても、分草杆20の下方に固定した後方接地体42は、既刈り株上を滑らせるので、後方接地体42が圃場に突っ込むのを防止できる。
【0033】
図2で刈取装置6の最右翼にある分草板7の部分では前方接地体41と後方接地体42の2つの接地体を用いたが、各接地体41,42の接地面積を合わせた面積は、他の分草板7部分の下方に設けた単一の各接地体43の接地面積とほぼ同等の面積とする。
こうして、分草杆(分草フレーム)20の下方の面積はすべてほぼ同じとなり、刈取装置6が接地した状態でも、刈取装置6が傾くことがない。
【0034】
図6は分草板7をはじめ刈取装置6を昇降させる機構部を示す構成図であり、図7は刈取装置6の昇降機構部の拡大側面図である。刈取装置6の刈取後フレーム18は昇降油圧シリンダ17で昇降制御させるが、該刈取装置6の刈取後フレーム18は車体2上に基部側端部を支持された二重スプリング45,46を有する弾性支持部材34の先端部と連結している。
【0035】
油圧シリンダ17による刈取装置6の上昇速度は一定であるが、弾性支持部材34による刈取装置6を上昇させる力は二重スプリング45,46で押し上げられる。そして刈取装置6が最上げ位置に近づくと二重スプリング45,46の内の一つのスプリング45のみが伸びる構成になっているので、刈取装置6を上昇させる力が弱くなるため、刈取装置6を下降位置から上昇させるほど刈取装置6の上昇速は遅くなるようにしている。
【0036】
刈取装置6による穀稈の刈取作業時は分草板7を圃場面に近づけて刈取作業を行う。このとき、分草板7が圃場面に突っ込みそうになると刈取装置6を上昇させて、危険を回避するが、図7に示す構成で、分草板7が低い位置にあるときほど、刈取装置6の上昇速度が速くなるので刈取装置6が圃場面に突っ込むことは回避できる。また、刈取装置6が十分上昇すると上昇速度が遅くなるので、油圧シリンダ17がストロークエンドに達したとき、車体にショックが発生しない。
【0037】
また、上記構成により上昇位置にある刈取装置6を下降させる場合には、刈取装置6が下降する程刈取装置6の下降速度は弾性支持部材34のスプリング45,46の反発力により遅くなるので刈取装置6の下降操作の終了位置での車体ショックも低減される。
【0038】
図8に示す他の実施例の刈取装置6とその昇降部材の要部側面図と図9に示す図8の刈取装置6とその昇降部材の要部平面略図には、刈取装置6のフローティングのための構成を示す。
この場合は、図8の丸枠内に拡大図を示すように刈取後フレーム18を昇降させる刈取上下シリンダ17の他に、刈取後フレーム18の側面に圧縮スプリング48を取り付け、該圧縮スプリング48の作用側には刈取後フレーム18のブラケット18aに回動支点を持つクランクアーム49を取り付け、該クランクアーム49の作用側をクローラ4のホイルパイプ52から突出したストッパ50に当接させた構成を採用する。
【0039】
強度のあるホイルパイプ52と刈取後フレーム18の間に圧縮スプリング48とクランクアーム49とストッパ50を設けた上記構成で、圧縮スプリング48とクランクアーム49とストッパ50の反力で刈取装置6に上昇力を発生させ、刈取装置6のフローティングを容易に行うことができる。
【0040】
また図10に示すように前記ホイルパイプ52に代えて変速装置ケース53から突出したストッパ50にクランクアーム49の作用側を当接させることができる構成にしてもよい。
こうして、特別な構成を用いることなく、刈取装置6のフローティング機構を安価に構成できる。
【0041】
上記図8〜図10に示す刈取装置6のフローティングのための構成においてスプリング48を刈取後フレーム18の左側に取り付けると、スプリングスプリング48が取り付けられていない車体の右側は、スプリングスプリング48がない分、スペースができ車体のメンテナンスが容易に行える。
【0042】
また、クローラ4のホイルパイプ52または変速装置ケース53から突出したボルト形状のストッパ50を回転操作して、該ストッパ50のホイルパイプ52または変速装置ケース53からの突出量を調節することで、該ストッパ50とクランクアーム49の作用側が当接する位置を変更して刈取装置6のフローティング時の反力を変更できるので、圃場条件、補助デバイダの装着時など機械条件が変更させる場合の刈取フローティング力を変更できる。
【0043】
図11に示す刈取装置の後フレーム18には、後フレーム18を昇降させる刈取上下シリンダ17と刈取フローティングシリンダ56を設けた場合の図1のコンバインの他の実施例の側面図を示す。また図12には刈取上下シリンダ17と刈取フローティングシリンダ56の作動用油圧回路図を示す。
【0044】
クローラ4を支持する転輪フレーム57と車体2との間に左右各別に平行リンクを形成する左右前後のローリングアームを備えた車体水平機構58が設けられているが、車高を下げた状態で刈取装置6を接地させる場合に比べて、車高を上げた状態で刈取装置6を接地させるためには、車体2に対して刈取装置6をより低い位置まで下降させる必要がある。
このとき、刈取フローティングシリンダ56の保持圧を設定圧より下げることにより、刈取装置6を下げることができる。
【0045】
そのために油圧回路を図12に示すが、車高を上げると車高センサ60の検出値がコントローラ61を介して電磁比例制御弁(刈取フローティングシリンダ圧力制御バルブ)62のソレノドバルブ62aを作動させることで刈取フローティングシリンダ56の保持圧を設定圧より下げて、刈取装置6を下げることができる。
【0046】
また、車高を上げた状態から下げて刈取装置6を接地させると、車高を上げた状態で接地した状態と比べ、刈取装置6は下降量が少なくなる。この時刈取フローティングシリンダの保持圧を上げないと、刈取装置6のフローティング効果が低減する。
そこで、図12の丸枠内に電磁比例制御弁62部分の拡大図を示すように、車高を下げると車高センサ60の検出値がコントローラ61を介して電磁比例制御弁(刈取フローティングシリンダ圧力制御バルブ)62のソレノドバルブ62aを作動させて、図13に示すソレノドバルブ62aの作動用の電圧と電磁比例制御弁62の作動油圧との関係に従って刈取フローティングシリンダ56の保持圧を設定圧より上げて、刈取装置6は刈取フローティングシリンダ56により、安定したフローティング作用を受けて上昇することができる。
【0047】
図13と図12から明らかな通り、車高の上下位置により、刈取フローティングシリンダ56の保持圧が変わる。車体水平機構58と刈取フローティングシリンダ56を備えたコンバインにおいて、車高センサ60により車体の上下位置を検出し、その検出値に応じてフローティングシリンダ56の保持圧を変更させる構成により、車高の上下位置にかかわらず刈取フローティングシリンダ56の保持圧を適正な圧力に変更することにより、安定したフローティング作用を受けることができる。
また別実施例の油圧回路図を図14に示すが、車体の水平制御用のバルブ64を設けておき、該水平制御用のバルブ64の下流に刈取フローティングシリンダ56を配置して、単一のギヤポンプ65を油圧源として車体の水平制御油圧構成と刈取フローティング油圧構成を一体的に構成でき、油圧回路の構成を簡略化できる。
【0048】
上記した刈取フローティングシリンダ56を設けた構成において、クローラ4の接地面を基準とし、図15に示すように刈取装置6の底部のクローラ接地面からの高さを設定高さHとして、該設定高さHに刈取装置6があることを刈取高さ検出センサ(図示せず)により検出すると刈取フローティングシリンダ56の保持圧を解除する構成にする。こうして、刈取装置6が非作動時は、刈取フローティング制御を行う必要がなく、制御圧を発生させない構成とすることができ、エンジンの消費馬力を低減できる。
【0049】
刈取装置6のクローラ接地面からの高さとフローティングシリンダ保持圧及びフローティングシリンダ56による刈取装置6の上昇速度の関係を図16(a)と図16(b)のグラフで示すように設定しておき、また、刈取装置6のクローラ接地面を基準とし、クローラ4の基準接地面からの刈取装置6の底部の高さを設定高さHとして、設定上げ高さ以上の範囲においてフローティングシリンダ保持圧を図16(a)と図16(b)に示すように刈取装置6の上げ速度を速くする制御構成とすることができる。
【0050】
こうして、刈取装置6が非作動時は、刈取フローティングシリンダ56の制御を行う必要がなく、刈取フローティングシリンダ保持圧を上げ、この保持圧により刈取上下シリンダ17の上げ推力をアシストして刈取装置6の上げ時間を短縮し、作業効率を向上できる。
【0051】
また図17に示す刈取装置6のクローラ接地面からの高さとフローティングシリンダ保持圧の関係にすると、刈取装置6の最上げ時の近傍においては、刈取フローティングシリンダ56の上昇保持圧を最上昇保持圧から少し下げることにより、刈取装置6の上昇速度を遅くして、上昇操作終了位置での車体ショックを低減することができる。
【0052】
また、図18のグラフに示すように、刈取装置6を上昇位置から下降させる場合に、刈取装置6が下降するに従って刈取フローティングシリンダ保持圧を徐々に下げて所定下降位置で保持圧を一定値に保ち(図18(a))、また刈取装置6の下げ速度を刈取装置6の高さが低くなるほど小さくする(図18(b))制御構成を採用すると、刈取装置6を下げるに連れて、その下降速度が遅くなるので、下降操作終了位置での、車体ショックが低減される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は植立作物の刈取幅を大きくすることができるので、圃場などの大きさに合わせて刈取作業がし易く、コンバインとして利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0054】
1 コンバイン 2 車体
3 走行装置 4 クローラ
6 刈取装置 7 分草板
8 穀稈引起装置 8a 穀稈引起具
9 刈刃 10 刈取前処理部
11 脱穀装置 12 穀稈供給搬送装置
13 グレンタンク 14 主変速レバー
17 刈取上下(油圧)シリンダ
18 (刈取装置)後フレーム
18a ブラケット
19 刈取装置下部フレーム
19a 半円筒板 20 分草杆
21 バネ取付部 21a 回動軸
22、23 バネ 24、25 ワイヤ
26 操縦席 30 分草板開閉レバー
32 取付部材 32a 取付軸
33 左リンクアーム 33a 取付軸
34 弾性支持部材 35 接続フレーム
36 右リンクアーム 39 ロック装置
39a ワイヤ 39b ピン
39c 支持部材 39d バネ
39e ロック解除レバー
39f 固定把持部 41 前方接地体
42 後方接地体 43 接地体
45,46 二重スプリング
48 圧縮スプリング 49 クランクアーム
50 ストッパ 52 ホイルパイプ
53 変速装置ケース
56 刈取フローティングシリンダ
57 転輪フレーム 58 車体水平機構
60 車高センサ 61 コントローラ
62 電磁比例制御弁 62a ソレノイドバルブ
64 車体水平制御用のバルブ
65 ギヤポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の前側に配置した刈取装置(6)と、該刈取装置(6)に設けられる刈刃(9)の前側に複数個並列配置した分草杆(20)と、該分草杆(20)の前端部に左右に揺動可能に支持した分草板(7)を備えたコンバインにおいて、
前記分草板(7)を刈取装置(6)の刈幅の内側または外側へ揺動自在な構成とし、
該分草板(7)の下部と分草杆(20)の下部とに、前方接地体(41)と後方接地体(42)とをそれぞれ一体に取り付け、
該前方接地体(41)が分草板(7)と一体で前記刈幅の内側または外側へ揺動する構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記分草板(7)を刈幅の外側へ向けて揺動させた状態で、該分草板(7)に取り付けた前方接地体(41)と分草杆(20)に取り付けた後方接地体(42)とが一直線上に並ぶ構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−220552(P2010−220552A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71869(P2009−71869)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】