説明

コンバイン

【課題】操縦座席の足元スペースを広く設計できるコンバインを提供することを課題とする。
【解決手段】直進用HST機構を操作する主変速レバー35と、旋回用HST機構を操作する操向ハンドル12及びハンドル軸13と、主変速レバー35と操向ハンドル12とが直進用HST機構及び旋回用HST機構に連動連結する間に介される機械式連動機構75と、操縦座席14の前方に配置され、操向ハンドル12を支持する支持体と、を備えるコンバインであって、機械式連動機構75は、ステップ11の下方に配置され、支持体は、操向ハンドル12を軸支する軸支部材と、軸支部材を支持し、ハンドル軸13の左右側にそれぞれ配置される支持部材23・24と、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンバインの旋回操作具を支持する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走行機体に搭載されたエンジンからの動力を、直進用変速機及び旋回用変速機を介して、左右の走行クローラに伝達するコンバインのトランスミッション構成は公知である。特許文献1は、主変速レバーと操向ハンドルとを機械式連動機構を介して直進用変速機及び旋回用変速機に連動連結し、走行クローラでありながら、四輪自動車と同様の操作感覚で操縦できるコンバインを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−177619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されるコンバインは、複雑な機構である機械式連動機構を旋回操作具を支持するフロントコラムの内部に配置するため、フロントコラムが大きくなり、操縦席の足元スペースを広く設計できない点で不利である。
【0005】
そこで、本発明においては、操縦座席の足元スペースを広く設計できるコンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、走行機体に搭載されたエンジンの動力を変速して左右の走行部に伝達する直進用変速機及び旋回用変速機と、前記直進用変速機を操作する直進操作具と、前記旋回用変速機を操作する旋回操作具と、前記直進操作具と前記旋回操作具とが直進用変速機及び旋回用変速機に連動連結する間に介される機械式連動機構と、前記走行機体に配置されるステップと、前記ステップ上に配置される操縦座席と、前記操縦座席の前方に配置され、前記旋回操作具を支持する支持体と、を備えるコンバインであって、前記機械式連動機構は、前記ステップの下方に配置され、前記支持体は、前記旋回操作具を軸支する軸支部材と、前記軸支部材を支持し、前記旋回操作具の左右側にそれぞれ配設される支持部材と、から構成されるものである。
【0008】
請求項2においては、前記操縦座席への乗降口近傍に配置され、前記支持体を支持する補助支持部材を備えるものである。
【0009】
請求項3においては、前記ステップの側方に配置されるサイドコラムと、前記サイドコラム上に配置され、前記支持体を支持する補助支持部材と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコンバインによれば、操縦席の足元スペースを広く設計できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】運転部の平面図。
【図4】支持体を示した正面図。
【図5】同じく斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図2を用いて、本発明の実施形態に係るコンバイン100について説明する。
コンバイン100は、走行機体としてのシャーシ1と、シャーシ1を支持する走行部としての走行クローラ2と、シャーシ1の前部に昇降調節可能に装着され、穀稈を刈り取りながら取り込む刈取装置3と、シャーシ1の左側に配置され、刈取装置3によって刈り取られた穀稈を脱穀・選別する脱穀装置5と、シャーシ1の右側に配置され、脱穀装置5によって脱穀され選別された後の穀粒を貯留する穀粒タンク7と、シャーシ1の後部に旋回可能に配置され、籾投げ口9から穀粒タンク7の内部の穀粒をトラックの荷台またはコンテナ等に排出する排出オーガ8と、穀粒タンク7の前方に配置され、詳しくは後述する運転部10と、運転部10の下方に配置されるエンジンEと、を備えている。
【0013】
エンジンEの動力は、直進用HST機構71と旋回用HST機構72と副変速機構とを備えるトランスミッションを介して左右のそれぞれの走行クローラ2に伝達される。直進用HST機構71は、直進用変速機として直進操作具としての主変速レバー35によって主に変速され、旋回時にも減速方向に変速される。旋回用HST機構72は、旋回用変速機として旋回操作具となる操向ハンドル12の回動量に応じて左右のそれぞれの走行伝達経路に増速と減速を伝達し旋回させる。
【0014】
図3を用いて、コンバイン100の運転部10について説明する。
運転部10は、シャーシ1上に配置され、操縦者が搭乗する台床であるステップ11と、ステップ11上に配置され、操縦者が操縦する際に着座する操縦座席14と、操縦座席14の前方において、支持体20に支持される操向ハンドル12と、詳しくは後述する支持体20と、詳しくは後述するサイドコラム30と、直進操作具としての主変速レバー35と、操縦者が操縦座席14へ搭乗する際に把持するアシストバー15と、操縦者が操縦座席14において後方を視認するミラー16と、を備えている。
【0015】
サイドコラム30は、ステップ11上において操縦座席14の左方に配置され、コンバイン100の前進、停止、後退及びその車速を無段階に変更操作する主変速レバー35と、作業状態に応じて後述するミッションケース内の副変速機構(図示略)を変更操作し、直進用HST機構71の出力及び回転数を、低速、中速、高速及び中立という4段階の変速段に設定保持する副変速レバー36と、刈取装置3及び脱穀装置5への動力継断操作用の刈取・脱穀クラッチレバー37と、刈取装置3の変速用の刈取変速レバー38と、現在のコンバイン100の作業情報、エンジン回転数等を表示するモニター39と、を備えている。
【0016】
サイドコラム30には、左補助支持部材としてのパイプ31が配置されている。パイプ31は、平面視において操縦座席14から見てサイドコラム30の外側輪郭を縁取るように略L字状に配置される水平部31aと、側面視においてサイドコラム30から鉛直方向上向きに延出される鉛直部31bと、正面視において水平部31aから鉛直下向きに湾曲して後述する水平部21aに接続する鉛直部31cと、を備えている(図4参照)。なお、サイドコラム30と水平部31aとの隙間は、操縦者の手が無理なく入ることができる隙間とされている。
【0017】
図4を用いて、機械式連動機構75の配置について説明する。
機械式連動機構75とは、操向ハンドル12及び主変速レバー35で操作された操作量を直進用HST機構71と旋回用HST機構72の各変速アームに適宜伝える機構である。操向ハンドル12の操向操作を伝達するハンドル軸13と、主変速レバー35の主変速操作を伝達する主変速軸33とは、機械式連動機構75を介して、直進用HST機構71及び旋回用HST機構72に連動連結している。機械式連動機構75は、ステアリングボックス50に内蔵されている。ステアリングボックス50は、ステップ11の下方に配置されている。なお、本実施形態において、機械式連動機構75の構成についての説明は省略する。
【0018】
機械式連動機構75の機能について説明する。
機械式連動機構75は、下記の各種動作を実行するために、主変速レバー35や操向ハンドル12からの操作力を適宜変換する機能を有する。
機械式連動機構75によれば、主変速レバー35を中立以外の位置に傾動操作した状態で、操向ハンドル12を中立以外の位置に回動操作すると、その回動操作量が大きいほど小さな旋回半径でコンバイン100が左又は右に旋回し、かつ旋回半径が小さいほどコンバイン100の車速(前進及び後退時の旋回速度)が減速する、動作を実行できる。
【0019】
また、機械式連動機構75によれば、主変速レバー35を前進及び後退のいずれの方向に傾動操作した場合であっても、操向ハンドル12の回動操作方向とコンバイン100の旋回方向とが一致する(操向ハンドル12を左に回せばコンバイン100が左旋回し、操向ハンドル12を右に回せばコンバイン100は右旋回する)、動作を実行できる。
さらに、機械式連動機構75によれば、主変速レバー35が中立位置にあると操向ハンドル12を操作しても機能しない。
【0020】
図4及び図5を用いて、運転部10の支持体20について説明する。図4及び図5は、説明を分かり易くするため、支持体20の正面カバー、上面カバー、ステップ11上のペダル類、レバー類等の図示を省略している。
【0021】
支持体20は、ステップ11上において操縦座席14の前方に配置され、操向ハンドル12と、ハンドル軸13と、を支持するものである。また、支持体20は、ステップ11から鉛直方向に延出される支持部材23・24と、支持部材23・24の上方で支持部材23・24間に横架される軸支部材21と、によって門構え形状に構成され、正面カバーと、上面カバーと、によって被装されている。
【0022】
支持部材23・24は、ステップ11の前方であって、ステップ11のハンドル軸13の左右両側において、ステップ11からそれぞれ鉛直方向において上向きに延出されている。また、支持部材23・24は、側面視において、上底よりも下底が長い台形の形状に形成されており、ステップ11への設置面積を大きくし、ステップ11に対する設置強度を高めている。
【0023】
軸支部材21は、正面視において、支持部材23・24の上部における支持部材23・24の内側において水平に掛け渡されるパイプ状の水平部21aと、水平部21aの左右方向中央部に配置され、コの字形状に形成され、内部にハンドル軸13を挿通させることでハンドル軸13を軸支する軸支部21bと、を備えている。
【0024】
左補助支持部材としてのパイプ31の鉛直部31cは、正面視において水平部31aの前端から下方に湾曲し、軸支部材21の水平部21aの左端部上面で支持固定している。なお、パイプ31の鉛直部31cは、支持部材23を支持する構成であっても良い。
【0025】
右補助支持部材としてのパイプ41は、側面視における支持部材24の前後略中央において、シャーシ1から鉛直方向の上向きに延出し、パイプ31の水平部31aと略同一の高さ位置において、正面視においてU字状に湾曲し、軸支部材21の水平部21aの右端部上面に支持固定している。言い換えれば、パイプ41は、正面視において、略逆「J」状に形成され、一端がシャーシ1に設けられ、他端が水平部21aに設けられている。なお、パイプ41は、支持部材24を支持する構成であっても良い。また、パイプ41と支持部材24との隙間は、操縦者の手が無理なく入ることができる間隔とされている。
【0026】
本実施形態の効果について説明する。
従来、コンバインの機械式連動機構は、操縦席の前方に配置されたフロントコラム(支持体)に内蔵されていたため、フロントコラムを大きく設計する必要があった。また、操向ハンドルの振動が大きい場合には、操縦者が、長時間において操向ハンドルを握ることにストレスを感じるため、フロントコラムの剛性を高くする必要があった。そこで、従来の支持体は、アルミダイキャスト鋳造方法によって形成される大きなものが用いられていた。そのため、ステップ上において、操縦者の足元を広く設計することが困難であった。
【0027】
そこで、本実施形態のように、機械式連動機構75を、ステップ11の下方に配置し、支持体20を、軸支部材21と、支持部材23・24と、によって門構え形状に構成することで、ステップ11上において、操縦者の足元を広く設計することができる。
【0028】
また、本実施形態のように、支持体20の軸支部材21を、サイドコラム30に接続されているパイプ31と、シャーシ1に接続されているパイプ41と、によって上方から支持することで、シャーシ1においても強度が高いサイドコラム30とシャーシ1とに軸支部材21を支持することになり、軸支部材21の支持強度を高めて、支持体20の剛性を高めることができる。このようにして、操向ハンドル12の振動を低減して、操縦者のストレスを解消できる。
【0029】
さらに、本実施形態のように、パイプ31を、サイドコラム30の外側輪郭を縁取るように配設することで、コンバイン100が畦道を乗り越える際等において、車体が大きく傾く、或いは大きく振動する状況では、操縦者が、パイプ31を把持することで、運転姿勢を保つことができる。
【0030】
また、本実施形態のように、パイプ41を、支持部材24の略中央において延出するように配設することで、操縦者が、操縦座席14に搭乗する際に、パイプ41を把持することで、コンバイン100への乗降をアシストすることができる。
【0031】
このように、パイプ31及びパイプ41を、軸支部材21を支持する機能のみならず、把持部としての機能を持たせることで、部品点数を削減できる。
【0032】
さらに、本実施形態のように、パイプ31とパイプ41とを、同じ断面形状のパイプを使用し、正面視において、パイプ31の水平部31aとパイプ41の湾曲部との位置を揃えることで、コンバイン100の意匠性を向上している。また、共通の材料を使用することでコスト低減化を図っている。
【符号の説明】
【0033】
1 シャーシ
2 走行クローラ
11 ステップ
12 操向ハンドル
13 ハンドル軸
20 支持体
21 軸支部材
23 支持部材
24 支持部材
30 サイドコラム
31 パイプ
35 主変速レバー
41 パイプ
75 機械式連動機構
100 コンバイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に搭載されたエンジンの動力を変速して左右の走行部に伝達する直進用変速機及び旋回用変速機と、
前記直進用変速機を操作する直進操作具と、
前記旋回用変速機を操作する旋回操作具と、
前記直進操作具と前記旋回操作具とが直進用変速機及び旋回用変速機に連動連結する間に介される機械式連動機構と、
前記走行機体に配置されるステップと、
前記ステップ上に配置される操縦座席と、
前記操縦座席の前方に配置され、前記旋回操作具を支持する支持体と、
を備えるコンバインであって、
前記機械式連動機構は、前記ステップの下方に配置され、
前記支持体は、
前記旋回操作具を軸支する軸支部材と、
前記軸支部材を支持し、前記旋回操作具の左右側にそれぞれ配設される支持部材と、
から構成されることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記操縦座席への乗降口近傍に配置され、前記支持体を支持する補助支持部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記ステップの側方に配置されるサイドコラムと、
前記サイドコラム上に配置され、前記支持体を支持する補助支持部材と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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