説明

コンバイン

【課題】マルチステアリングレバーのグリップ部を握った手の手首部又は腕部を支えるアームレストの支持面高さを適正に設定可能とする。
【解決手段】運転席9の前方に立設され、左右方向及び前後方向に傾倒操作可能なマルチステアリングレバー17と、該マルチステアリングレバー17のグリップ部17aを握った手の手首部又は腕部を支えるアームレスト18とを備えるコンバイン1において、グリップ部17aの下端部には、グリップ部17aを握った手の下端部を支える鍔部17bが形成されると共に、該鍔部17bとアームレスト18の支持面18aが略同一の高さとしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席の前方に立設され、左右方向及び前後方向に傾倒操作可能な操作レバーを備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
運転席の前方に立設され、左右方向及び前後方向に傾倒操作可能な操作レバーを備えるコンバインが知られている。通常、この操作レバーは、機体旋回操作具(左右方向操作)と前処理昇降操作具(前後方向操作)とを兼ねており、オペレータは、走行中、常に上記の操作レバーを握っている。
【0003】
この種のコンバインには、オペレータの疲労を軽減するために、アームレストが設けられている(例えば、特許文献1参照)。このアームレストは、操作レバーのグリップ部を握った手の手首部又は腕部を支えるべく、運転席側から見て操作レバーの手前側に配置されている。
【特許文献1】特開2007−300864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来においては、操作レバーの握り位置がオペレータ毎に異なっているため、アームレストの支持面の高さを適正に設定することが難しいという問題があった。また、操作レバーを左右又は前後に傾倒操作すると、操作レバーを握る手とアームレストの高さ関係が変化するので、アームレストが邪魔に感じられる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、運転席の前方に立設され、左右方向及び前後方向に傾倒操作可能な操作レバーと、該操作レバーのグリップ部を握った手の手首部又は腕部を支えるアームレストとを備えるコンバインにおいて、前記グリップ部の下端部には、グリップ部を握った手の下端部を支える鍔部が形成されると共に、該鍔部とアームレストの支持面が略同一の高さとしてあることを特徴とする。このようにすると、グリップ部の下端部に形成した鍔部によって、グリップ部における握り位置をある程度規定することができるので、この規定される握り位置を基準としてアームレストの支持面高さを適正に設定することができる。しかも、鍔部とアームレストの支持面を略同一の高さとしたので、操作レバーの傾倒操作に際し、アームレストが邪魔になる可能性を低減することができる。
また、前記アームレストの支持面には、柔軟な中空部材に流動性材料を充填して形成され、手首部又は腕部の動きに追従して変形する支持パッドが設けられていることを特徴とする。このようにすると、グリップ部を握った手の手首部又は腕部がアームレストの支持面に接触した状態で操作レバーを傾倒操作しても、アームレストの支持面に設けられる支持パッドが手首部又は腕部の動きに追従して変形するので、アームレストが操作レバーの傾倒操作を阻害する不都合を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈り取る前処理部2と、刈り取った茎稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部(図示せず)と、選別した穀粒を貯留する穀粒タンク4と、穀粒タンク4内の穀粒を機外に排出搬送する排出オーガ5と、脱穀済みの排藁を後処理する後処理部6と、オペレータが乗車する運転部7と、クローラ式の走行部Sとを備えて構成されている。
【0007】
図2〜図5に示すように、運転部7は、機体前部の右側オフセット位置に設けられており、右側面部に形成される乗降口8を介してオペレータの乗降が行われる。運転部7には、オペレータが着座する運転席9と、運転席9の前方に設けられるフロントパネル10と、運転席9の左側方に設けられるサイドパネル11とが備えられており、オペレータは、運転席9に座った姿勢で、フロントパネル10やサイドパネル11に設けられる操作具を操作することにより、機体走行や各種作業を行う。
【0008】
サイドパネル11には、走行主変速操作を行う主変速レバー12、走行副変速操作を行う副変速レバー13、エンジン回転数設定を行うエンジンコントロールレバー14、刈取クラッチ及び作業機クラッチを入り/切り操作する刈取・作業機クラッチスイッチ15、各種自動制御のON/OFF操作や設定を行う各種自動スイッチ群16などが設けられており、フロントパネル10には、運転席9の前方に立設され、左右方向及び前後方向に傾倒操作可能なマルチステアリングレバー(操作レバー)17が設けられている。このマルチステアリングレバー17は、機体旋回操作具(左右方向操作)と前処理昇降操作具(前後方向操作)とを兼ねており、通常、オペレータは、走行中、常に右手でマルチステアリングレバー17を握っている。
【0009】
フロントパネル10には、オペレータの疲労を軽減するために、アームレスト18が設けられている。このアームレスト18は、マルチステアリングレバー17のグリップ部17aを握った手の手首部又は腕部を支えるべく、運転席9側から見てマルチステアリングレバー17の手前側に配置されている。従来では、マルチステアリングレバー17の握り位置がオペレータ毎に異なっていたので、アームレスト18の支持面18aの高さを適正に設定することが難しいという課題があると共に、マルチステアリングレバー17を左右又は前後に傾倒操作すると、マルチステアリングレバー17を握る手とアームレスト18の高さ関係が変化するので、アームレスト18が邪魔に感じられるという課題があった。本発明の実施形態に係るコンバイン1は、これらの課題を解決するための手段を有しており、以下、解決手段を具体的に説明する。
【0010】
図6〜図8に示すように、本発明の実施形態に係るコンバイン1は、運転席9の前方に立設され、左右方向及び前後方向に傾倒操作可能なマルチステアリングレバー17と、該マルチステアリングレバー17のグリップ部17aを握った手の手首部又は腕部を支えるアームレスト18とを備えるにあたり、グリップ部17aの下端部には、グリップ部17aを握った手の下端部を支える鍔部17bが形成されると共に、該鍔部17bとアームレスト18の支持面18aが略同一の高さとしてある。好ましくは、グリップ部17aを握った手の手首部又は腕部が、アームレスト18の支持面18aに接触する程度の高さ設定とする。ただし、この場合、グリップ部17aを握ったオペレータの腕の角度に応じて適正高さが変化してしまうため、標準的な身長、座高、腕の長さから標準的な腕の角度を想定し、該想定した標準腕角度にもとづいて高さ設定を行う。例えば、図3に示すように、オペレータの標準腕角度を僅かな前傾角度と想定した場合、グリップ部17aの鍔部17bよりもアームレスト18の支持面18aを僅かに高くすることが好ましい。
【0011】
このようにすると、グリップ部17aの下端部に形成した鍔部17bによって、グリップ部17aにおける握り位置をある程度規定することができるので、この規定される握り位置を基準としてアームレスト18の支持面高さを適正に設定することができる。しかも、鍔部17bとアームレスト18の支持面18aを略同一の高さとしたので、マルチステアリングレバー17の傾倒操作に際し、アームレスト18が邪魔になる可能性を低減することができる。
【0012】
また、図7及び図8に示すように、アームレスト18の支持面18aには、柔軟性を有する中空部材18bに流動性材料18cを充填して形成され、手首部又は腕部の動きに追従して変形する支持パッド18dを設けることが好ましい。例えば、アームレスト18の上面を左右方向に幅広とし、その略全域に支持パッド18dを貼着して支持面18aとする。このようにすると、グリップ部17aを握った手の手首部又は腕部がアームレスト18の支持面18aに接触した状態でマルチステアリングレバー17を傾倒操作しても、図8に示すように、アームレスト18の支持面18aに設けられる支持パッド18dが手首部又は腕部の動きに追従して変形するので、アームレスト18がマルチステアリングレバー17の傾倒操作を阻害する不都合を解消することができる。
【0013】
また、図6に示すように、本実施形態のマルチステアリングレバー17は、グリップ部17aの上端部背面側(オペレータ側からは上端部正面側)に形成されるスイッチ配置部17cに4つの操作スイッチSW1〜SW4を備えている。4つの操作スイッチSW1〜SW4は、上下及び左右に並べて配置されており、上側の操作スイッチSW1は、前処理部2を下降操作する前処理下降スイッチとして機能し、下側の操作スイッチSW2は、前処理部2を上昇操作する前処理上昇スイッチとして機能し、左側の操作スイッチSW3は、機体を左方向に操向させる左操向スイッチとして機能し、さらに、右側の操作スイッチSW4は、機体を右方向に操向させる右操向スイッチとして機能するようになっている。
【0014】
操作スイッチSW1〜SW4は、グリップ部17aを握った手の親指で操作されることを想定して位置が決められている。そして、本実施形態においては、グリップ部17aの下端部に形成した鍔部17bによって、グリップ部17aにおける握り位置をある程度規定することができるので、この規定される握り位置を基準として親指位置を特定し、操作スイッチSW1〜SW4の位置を適正に設定することができる。しかも、本実施形態では、グリップ部17aの左側面部に親指載置部17dを突出形成し、ここに親指を載置できるようにしたので、親指位置をより正確に規定できるだけでなく、親指の疲労を軽減することができる。
【0015】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、運転席9の前方に立設され、左右方向及び前後方向に傾倒操作可能なマルチステアリングレバー17と、該マルチステアリングレバー17のグリップ部17aを握った手の手首部又は腕部を支えるアームレスト18とを備えるコンバイン1において、グリップ部17aの下端部には、グリップ部17aを握った手の下端部を支える鍔部17bが形成されると共に、該鍔部17bとアームレスト18の支持面18aが略同一の高さとしてあるので、グリップ部17aの下端部に形成した鍔部17bによって、グリップ部17aにおける握り位置をある程度規定することができ、その結果、この規定される握り位置を基準としてアームレスト18の支持面18a高さを適正に設定することができる。しかも、鍔部17bとアームレスト18の支持面18aを略同一の高さとしたので、マルチステアリングレバー17の傾倒操作に際し、アームレスト18が邪魔になる可能性を低減することができる。
【0016】
また、アームレスト18の支持面18aには、柔軟な中空部材18bに流動性材料18cを充填して形成され、手首部又は腕部の動きに追従して変形する支持パッド18dが設けられているので、グリップ部17aを握った手の手首部又は腕部がアームレスト18の支持面18aに接触した状態でマルチステアリングレバー17を傾倒操作しても、アームレスト18の支持面18aに設けられる支持パッド18dが手首部又は腕部の動きに追従して変形することになり、その結果、アームレスト18がマルチステアリングレバー17の傾倒操作を阻害するという不都合を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの右側面図である。
【図2】運転部の右後方斜視図である。
【図3】運転部の右側面図である。
【図4】運転部の平面図である。
【図5】運転部の正面図である。
【図6】(A)はマルチステアリングレバーのグリップ部(スイッチ類省略)を示す左側面図、(B)はマルチステアリングレバーのグリップ部(スイッチ類省略)を示す背面図(オペレータ側から見たときは正面図)、(C)はマルチステアリングレバーのグリップ部を示す背面上方斜視図である。
【図7】支持パッドの正断面図である。
【図8】マルチステアリングレバーの操作状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 コンバイン
7 運転部
9 運転席
17 マルチステアリングレバー
17a グリップ部
17b 鍔部
18 アームレスト
18a 支持面
18b 中空部材
18c 流動性材料
18d 支持パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席の前方に立設され、左右方向及び前後方向に傾倒操作可能な操作レバーと、該操作レバーのグリップ部を握った手の手首部又は腕部を支えるアームレストとを備えるコンバインにおいて、
前記グリップ部の下端部には、グリップ部を握った手の下端部を支える鍔部が形成されると共に、該鍔部とアームレストの支持面が略同一の高さとしてあることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記アームレストの支持面には、柔軟な中空部材に流動性材料を充填して形成され、手首部又は腕部の動きに追従して変形する支持パッドが設けられていることを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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