説明

コンバイン

【課題】コンバインの乗降性、特に、比較的小柄なオペレータの乗降性を大幅に向上させる。
【解決手段】乗降ステップ24、25を有する乗降口8の側部に、乗降時に握る乗降グリップ26〜28が設けられたコンバイン1において、乗降グリップ26〜28を3箇所に設け、各乗降グリップ26〜28の設置高さを段階的に設定すると共に、最上段及び最下段の乗降グリップ26、28を乗降口8の右側部に配置し、中段の乗降グリップ27を乗降口8の左側部に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗降ステップを有する乗降口の左右側部に、乗降時に握る乗降グリップが設けられたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種コンバインは、オペレータが乗車する運転部を備えており、該運転部の一側部には、乗降ステップを有する乗降口が形成されている。また、乗降口の左右側部には、乗降グリップが設けられており、オペレータは、乗降グリップを握りながら、乗降ステップの昇り降りを行うようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−300864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されるように、従来のコンバインでは、左右2箇所の乗降グリップが乗降口の高い位置にのみ設けられているので、乗降グリップを握りながら、乗降ステップの昇り降りを行うと、垂直によじ登るような乗降姿勢になることから、近年大型化しているコンバインにおいては、良好な乗降性を確保することが難しいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、乗降ステップを有する乗降口の側部に、乗降時に握る乗降グリップが設けられたコンバインにおいて、前記乗降グリップを3箇所に設け、各乗降グリップの設置高さを段階的に設定すると共に、最上段及び最下段の乗降グリップを乗降口の一側部に配置し、中段の乗降グリップを乗降口の他側部に配置したことを特徴とする。このようにすると、オペレータは、低い位置の乗降グリップから順に高い位置の乗降グリップを握りながら乗降ステップを昇ることができるので、垂直によじ登るような乗降姿勢をとることなく、容易に運転部に乗車することができ、特に、比較的小柄なオペレータの乗降性を大幅に向上させることができる。
また、運転席の前方に立設されるフロントパネルの上方に、運転時に握る運転グリップを設け、該運転グリップの一端を支える脚部を、フロントパネルの外側方に沿って延長して最下段の乗降グリップとしたことを特徴とする。このようにすると、運転グリップの脚部を延長するだけで最下段の乗降グリップを追加できるので、部品点数の増加を回避できると共に、コストの上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈り取る前処理部2と、刈り取った茎稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部(図示せず)と、選別した穀粒を貯留する穀粒タンク4と、穀粒タンク4内の穀粒を機外に排出搬送する排出オーガ5と、脱穀済みの排藁を後処理する後処理部6と、オペレータが乗車する運転部7と、クローラ式の走行部Sとを備えて構成されている。
【0006】
図2〜図6に示すように、運転部7は、機体前部の右側オフセット位置に設けられており、右側面部に形成される乗降口8を介してオペレータの乗降が行われる。運転部7には、オペレータが着座する運転席9と、運転席9の前方に設けられるフロントパネル10と、運転席9の左側方に設けられるサイドパネル11とが備えられており、オペレータは、運転席9に座った姿勢で、フロントパネル10やサイドパネル11に設けられる操作具を操作することにより、機体走行や各種作業を行う。
【0007】
サイドパネル11には、走行主変速操作を行う主変速レバー12、走行副変速操作を行う副変速レバー13、エンジン回転数設定を行うエンジンコントロールレバー14、刈取クラッチ及び作業機クラッチを入り/切り操作する刈取・作業機クラッチスイッチ15、各種自動制御のON/OFF操作や設定を行う各種自動スイッチ群16などが設けられており、フロントパネル10には、運転席9の前方に立設され、左右方向及び前後方向に傾倒操作可能なマルチステアリングレバー17が設けられている。このマルチステアリングレバー17は、機体旋回操作具(左右方向操作)と前処理昇降操作具(前後方向操作)とを兼ねており、通常、オペレータは、走行中、常に右手でマルチステアリングレバー17を握っている。
【0008】
フロントパネル10には、オペレータの疲労を軽減するために、アームレスト18や運転グリップ19が設けられている。アームレスト18は、マルチステアリングレバー17のグリップ部17aを握った手の手首部又は腕部を支えるべく、運転席9側から見てマルチステアリングレバー17の手前側に配置されている。運転グリップ19は、運転時などに握られるパイプ状のグリップであり、本実施形態のものは、平面視でフロントパネル10の全域及びサイドパネル11の前半部を囲むようにL字状に形成されている。そして、運転グリップ19は、フロントパネル10及びサイドパネル11の上方に所定の間隔を存して配置されると共に、両端部から下方に延出する脚部19a、19bを介してフロントパネル10及びサイドパネル11に固定されるようになっている。
【0009】
乗降口8は、フロントパネル10の右端部と、エンジンカバー20(エアクリーナカバー21)の右端部との間に形成されており、運転ステップ22の立下がり面23に階段状に設けられる乗降ステップ24、25を使用して乗り降りが行われる。そして、本実施形態では、二段の乗降ステップ24、25を構成しているため、乗車時には、地面から下段の乗降ステップ25に昇る第一乗車動作(図7参照)と、下段の乗降ステップ25から上段の乗降ステップ24に昇る第二乗車動作(図8参照)と、上段の乗降ステップ24から運転ステップ22に昇る第三乗車動作(図9参照)とが3段階に行われる。
【0010】
この種のコンバイン1では、通常、乗降口8の左右側部に乗降グリップが設けられており、オペレータは、乗降グリップを握りながら、乗降ステップ24、25の昇り降りを行うようになっているが、従来では、左右2箇所の乗降グリップが乗降口8の高い位置にのみ設けられているので、乗降グリップを握りながら、乗降ステップ24、25の昇り降りを行うと、垂直によじ登るような乗降姿勢になることから、近年大型化しているコンバインにおいては、良好な乗降性を確保し難いという課題があった。本発明の実施形態に係るコンバイン1は、このような課題を解決するための手段を有しており、以下、解決手段を具体的に説明する。
【0011】
図7〜図9に示すように、本発明の実施形態に係るコンバイン1では、乗降ステップ24、25を有する乗降口8の側部に、乗降時に握る乗降グリップ26〜28を3箇所に設け、各乗降グリップ26〜28の設置高さを段階的に設定すると共に、最上段及び最下段の乗降グリップ26、28を乗降口8の右側部に配置し、中段の乗降グリップ27を乗降口8の左側部に配置してある。このようにすると、オペレータは、低い位置の乗降グリップ26から順に高い位置の乗降グリップ27、28を握りながら乗降ステップ24、25を昇ることができるので、垂直によじ登るような乗降姿勢をとることなく、容易に運転部7に乗車することができ、特に、比較的小柄なオペレータの乗降性を大幅に向上させることができる。
【0012】
つまり、乗車時を例に説明すると、図7〜図9に示すように、地面から下段の乗降ステップ25に昇る第一乗車動作は、右手で最下段の乗降グリップ28を握りながら行うことができ(図7参照)、また、下段の乗降ステップ25から上段の乗降ステップ24に昇る第二乗車動作は、右手で最下段の乗降グリップ28を握りつつ、左手で中段の乗降グリップ27を握りながら行うことができ(図8参照)、また、上段の乗降ステップ24から運転ステップ22に昇る第三乗車動作は、左手で中段の乗降グリップ27を握りつつ、右手で最上段の乗降グリップ26を握りながら行うことができる(図9参照)。以下、本実施形態に係る各乗降グリップ26〜28の具体的な構成について説明する。
【0013】
最上段の乗降グリップ26は、アームレスト18を利用して構成されている。具体的には、アームレスト18の右端部を支える脚部18aを乗降口8の右側部最上段に配置し、最上段の乗降グリップ28とする。このようにすると、部品を追加することなく最上段の乗降グリップ28を構成できるので、部品点数の増加を回避できると共に、コストの上昇を抑えることができる。尚、中段の乗降グリップ27は、エンジンカバー20の上端及びクリーナカバー21の前端に対して取り付けられており、その形状は、特許文献1に示されるものと同等のものである。
【0014】
最下段の乗降グリップ28は、運転グリップ19を利用して構成されている。具体的には、運転グリップ19の右端(一端)を支える脚部19bを、フロントパネル10の右側方(外側方)に沿って延長して最下段の乗降グリップ28とする。このようにすると、運転グリップ19の脚部19bを延長するだけで最下段の乗降グリップ28を追加できるので、部品点数の増加を回避できると共に、コストの上昇を抑えることができる。
【0015】
尚、29は運転グリップ19の脚部19bをフロントパネル10の右側面部に固定するための支持ステーであって、該支持ステー29を超えて脚部19bを下方に延長すると共に、延長部の下端部を内側方に湾曲させ、その先端部をフロントパネル10の側面に形成した挿入穴10aに挿入することにより最下段の乗降グリップ28が構成される。また、支持ステー29は、ミラー30の支持部にも兼用されており、安価なミラー取り付けが可能となる。
【0016】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、乗降ステップ24、25を有する乗降口8の側部に、乗降時に握る乗降グリップ26〜28が設けられたコンバイン1において、乗降グリップ26〜28を3箇所に設け、各乗降グリップ26〜28の設置高さを段階的に設定すると共に、最上段及び最下段の乗降グリップ26、28を乗降口8の右側部に配置し、中段の乗降グリップ27を乗降口8の左側部に配置したので、オペレータは、低い位置の乗降グリップ28から順に高い位置の乗降グリップ26、27を握りながら乗降ステップ24、25を昇ることができ、その結果、垂直によじ登るような乗降姿勢をとることなく、容易に運転部7に乗車することができ、特に、比較的小柄なオペレータの乗降性を大幅に向上させることができる。
【0017】
また、運転席9の前方に立設されるフロントパネル10の上方に、運転時に握る運転グリップ19を設け、該運転グリップ19の一端を支える脚部19bを、フロントパネル10の外側方に沿って延長して最下段の乗降グリップ28としたので、部品点数の増加を回避できると共に、コストの上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コンバインの右側面図である。
【図2】運転部の右後方斜視図である。
【図3】運転部の右側面図である。
【図4】運転部の平面図である。
【図5】運転部の正面図である。
【図6】運転部の右前方分解斜視図である。
【図7】運転部への乗車手順1を示す右側面図である。
【図8】運転部への乗車手順2を示す右側面図である。
【図9】運転部への乗車手順3を示す右側面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 コンバイン
7 運転部
8 乗降口
9 運転席
10 フロントパネル
18 アームレスト
19 運転グリップ
19b 脚部
22 運転ステップ
24 乗降ステップ
25 乗降ステップ
26 最上段の乗降グリップ
27 中段の乗降グリップ
28 最下段の乗降グリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降ステップを有する乗降口の左右側部に、乗降時に握る乗降グリップが設けられたコンバインにおいて、
前記乗降グリップを3箇所に設け、各乗降グリップの設置高さを段階的に設定すると共に、最上段及び最下段の乗降グリップを乗降口の一側部に配置し、中段の乗降グリップを乗降口の他側部に配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
運転席の前方に立設されるフロントパネルの上方に、運転時に握る運転グリップを設け、該運転グリップの一端を支える脚部を、フロントパネルの外側方に沿って延長して最下段の乗降グリップとしたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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