説明

コンバイン

【課題】引継移送装置により、刈取部の刈取穀稈を後送する傾動可能な搬送部から引き継ぎ、その後方に位置する脱穀部に安定して刈取穀稈を供給することができるコンバインを提供する。
【解決手段】コンバインは、刈取部(2)が刈取った穀稈を後送する傾動可能なチェーン機構による搬送部(5)の搬送終端に臨み、刈取穀稈の穂先側を受けて脱穀部(3)の扱口(3a)に案内支持する支持板(6)と、同じくその株元側を受けて脱穀部(3)のフィードチェーン(13)に引継ぐシンクロチェーン(7)とから構成され、上記支持板(6)とシンクロチェーン(7)は、両者の先端側が一体に上下動作可能に後端側を脱穀部(3)の扱口(3a)の近傍に軸支し、その傾斜角度は、両者の先端位置が搬送部(5)の搬送終端位置に合うように、同搬送部(5)の傾斜に応じて傾動制御する引継移送装置を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの刈取部から搬送部によって後送された刈取穀稈を脱穀部まで中継移送する引継移送装置を備えるコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインの引継移送装置は、特許文献1の例の如く、機体前端の刈取部からチェーン機構によって刈取穀稈を後送する搬送部に臨んで、その後方に位置する脱穀部の直前位置に配置され、刈取穀稈の穂先側を受ける支持板と、同刈取穀稈の株元側を受けるシンクロチェーンとから構成される。支持板は、脱穀部の扱口に臨む位置に設けられて搬送部の終端側に延び、また、シンクロチェーンは、搬送部の終端の高さ位置に合わせて傾動可能に穀稈の株元側を受けつつ、脱穀部の外側に配置のフィードチェーンに引き渡し、このフィードチェーンの引き込み動作によって刈取穀稈が脱穀部に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−251931号公報
【特許文献2】特開2001−299053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、搬送部が刈取部に内設されていることから、搬送部の昇降に応じて搬送部の傾斜が変化することに伴い、その搬送終端の高さ位置も変化するので、支持板の先端には、刈取部の昇降範囲と対応する搬送終端の可動範囲相当の隙間が設けてあり、この隙間が大きくなる低位置刈取りの場合に支持板への引継ぎに時に穂先側が引っ掛かったり、一部が漏れたりして穀稈の搬送姿勢が乱れることがあった。また、搬送部の傾斜調節によって穀稈の供給深さ、すなわち、扱深さを設定する構成の機種についても、同搬送部の傾斜調節範囲と対応する隙間が設けてあり、この隙間が大きくなる深扱設定の場合に、同様に支持板への引継ぎに異常を生じ、穀稈の搬送姿勢の乱れによって円滑な脱穀に支障を招くことがあった。
そのほか、搬送部終端と漏斗の間には搬送部側からゴム板を掛け渡してその上を穂先側が案内されるもの(特許文献2)にあっては、搬送部終端とと支持板の高さがが略同じになると穀稈の穂先側が引掛って搬送姿勢が乱れたり、ゴム板が搬送部の終端高さが変化することでゴム板が波打って搬送を阻害したりするという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、引継移送装置により刈取部の刈取穀稈を後送する傾動可能な搬送部から引き継ぎ、その後方に位置する脱穀部に安定して刈取穀稈を供給することができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明のコンバインは、走行装置を備えた機台の前側に刈取部を設け、機台の上側には扱口を前部に有した脱穀部を設け、該扱口の下側に穀稈の穂先側を支持して扱口側に案内する支持板を設け、脱穀部の外側部に形成した側部扱口に沿ってフィードチェンを設け、該フィードチェンの搬送始端部の横側に前記走行装置の駆動速度または刈取部の駆動速度に同調して駆動するシンクロチェーンを設け、前記刈取部に備えた掻込搬送装置の搬送終端部とシンクロチェーンの搬送始端部の間に、搬送終端部側を支点として搬送始端部側を上下動させることで前記搬送装置から穀稈を引き継ぐ際にこの穀稈の稈身方向での挟持位置を変更して扱ぎ深さを調節する搬送部を設け、前記支持板とシンクロチェーンを一体的に傾斜変更自在に構成し、扱ぎ深さの調節によって前記搬送部の搬送終端部が上下移動しても、該搬送部の搬送終端部と前記支持板及びシンクロチェーンの搬送始端部とが常に一定の位置関係を維持するように、該支持板及びシンクロチェーンの傾斜変更を扱ぎ深さ調節に連動させる連繋機構を設けたことを特徴とする。
上記構成のコンバインは、その引継移送装置により、刈取部から刈取穀稈を後送する搬送部の搬送終端から支持板とシンクロチェーンに刈取穀稈を受けるとともに、株元側を脱穀部のフィードチェーンに引継ぐことによって支持板上の穂先側が扱口に供給され、搬送部の傾斜が変化した場合は、支持板とシンクロチェーンの先端側が搬送部の搬送終端位置に合うように、搬送部の傾斜に応じて両者を一体に傾動制御することから、搬送部の搬送終端と支持板の先端との間の隙間が拡大することなく、刈取穀稈の穂先側が搬送部の搬送終端から支持板に、また、刈取穀稈の株元側が同じく搬送終端からシンクロチェーンに円滑に移行される。
【0007】
請求項2に係る発明のコンバインは、請求項1の構成において、前記シンクロチェーンは、前記フィードチェーンよりも稈身方向穂先側に偏位して設けることを特徴とする。上記シンクロチェーンが穀稈の穂先寄りを受けることにより、穀稈移送が安定する。
また、請求項3に係る発明のコンバインは、請求項1または請求項2の構成において、前記支持板及びシンクロチェーンの搬送終端部は、脱穀部の前壁よりも搬送下手側に位置することを特徴とする。上記シンクロチェーンは、扱口までの間が短くなるので、搬送姿勢の乱れが抑えられる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1のコンバインは、その引継移送装置により、搬送部の傾斜が変化した場合は、支持板とシンクロチェーンの先端側が搬送部の搬送終端位置に合うように、搬送部の傾斜に応じて両者を一体に傾動制御することから、搬送部の搬送終端と支持板の先端との間の隙間が拡大することなく、刈取穀稈の穂先側が搬送部の搬送終端から支持板に、また、刈取穀稈の株元側が同じく搬送終端からシンクロチェーンに円滑に移行される。したがって、刈取部の昇降や扱深さの変更によって搬送部の傾斜が変化しても、隙間からの漏れや引っ掛かりによる搬送阻害を招くことなく、穂先側が安定して支持板に移行されることから、株元側がシンクロチェーンを経てフィードチェーンに引渡されて支持板上の穂先側が扱口に案内されることにより、安定して脱穀部に供給することができる。
請求項2に係る発明のコンバインは、請求項1の効果に加え、穀稈移送が安定化され、また、請求項3に係る発明のコンバインは、請求項1または2の効果に加え、穀稈姿勢の乱れが抑えられ、それぞれ穀稈を円滑に脱穀部に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】扱深さ調節用の搬送部を有するコンバインの側面図
【図2】搬送部と引継移送装置の拡大側面図
【図3】図2と対応する部分の平面図
【図4】深扱時の搬送部の側面図
【図5】支持板の第1の構成例の要部正面図
【図6】支持板の第2の構成例の要部正面図
【図7】支持板の後端部の要部拡大測面図
【図8】別構成の搬送部と引継移送装置の拡大側面図
【図9】図8と対応する部分の平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
コンバインの引継移送装置1は、扱深さ調節用の搬送部を備えるコンバインの側面図を図1に示すように、クローラ等の走行装置Sによって圃場走行可能な支持機台Fの前端に昇降可能に穀稈を刈取る刈取部2と、その後方で左右に並ぶ脱穀部3および穀粒収容部4とからなるコンバインにおいて、刈取部2から受けた刈取穀稈を扱深さ調節用のチェーン機構によって後送する搬送部5に臨んで、その後方に位置する脱穀部3の直前位置に配置され、刈取穀稈の穂先側を受ける支持板6と、刈取穀稈の株元側を受けるシンクロチェーン7とから構成される。
【0011】
詳細には、搬送部と引継移送装置の拡大側面図および平面図をそれぞれ図2、図3に示すように、搬送部5は、穀稈の穂先側を搬送するラグ付きチェーン11と穀稈の株元側を搬送するガイド付きチェーン12とによって構成され、扱深さの設定のために株元側の掴み高さ位置を所定範囲で調節可能に、その搬送終端側を軸支して傾動制御可能に構成されている。すなわち、搬送部5の終端側は、刈取部2の昇降回動軸である伝動支軸16を軸心として回動自在に取付けられ、扱ぎ深さ調節するために搬送始端側を上下調節し、ポジションセンサなどによってその回動角度を読み取り可能に構成する。
【0012】
支持板6は、ラグ付きチェーン11の搬送終端から穀稈の穂先側を受ける位置で脱穀部3の扱口3aに臨んで配置する。走行装置Sと速度連動で駆動されるシンクロチェーン7は、ガイド付きチェーン12の搬送終端から穀稈の株元側を受ける位置で脱穀部3の外側に延びるフィードチェーン13に引渡すべく、脱穀部3の扱胴3bの中心より外側で同フィードチェーン13の内側に隣接して配置する。
【0013】
これら支持板6とシンクロチェーン7は、両者が一体で先端側が搬送部5の搬送終端に臨んで上下動作可能に後端側を支軸14によって脱穀部3に軸支する。支軸14は、支持板6に受けた穀稈の穂先側を脱穀部3の扱口3aに案内しうる高さ位置に配置する。また、支持板6とシンクロチェーン7の先端位置が搬送部5の搬送終端位置に合うように、支軸14にアクチュエータ14aを設けて搬送部5の傾斜に伴う終端位置の変化に応じて傾動制御可能な制御部による連繋機構Cを構成する。
【0014】
このように、引継移送装置1は、支持板6とシンクロチェーン7の両者が一体で先端側が搬送部5の終端高さ位置に合うように、同搬送部5の傾斜に応じて一体に傾動制御することにより、刈取部2から刈取穀稈を後送する搬送部5の搬送終端から支持板6とシンクロチェーン7が刈取穀稈を受けて脱穀部3に供給し、扱深さを深く設定することによって搬送部5が前下がりに傾斜した場合にも、図4の深扱時の搬送部の側面図に示すように、扱深さ調節用の搬送部5の搬送終端と引継移送装置1の先端との間の隙間が拡大することなく、刈取穀稈の穂先側が搬送部5の搬送終端から支持板6に、また、刈取穀稈の株元側が同じく搬送部5の搬送終端からシンクロチェーン7に、円滑に移行される。
【0015】
したがって、扱深さの変更によって搬送部5の傾斜が変化しても、穂先側は支持板6によって扱口3aに案内支持され、株元側はシンクロチェーン7によってフィードチェーン13に引渡され、搬送部5から刈取穀稈を脱穀部3に安定して供給することができる。
【0016】
この場合において、引継移送装置1の傾斜角は、水平から後ろ下がりを通常の動作範囲に設定することで、円滑な移送が確保でき、また、脱穀部3の前端に張出す前壁をなす前端カバー15は、その下面部15aを扱口3aに向かって下降傾斜に構成することにより、穀稈の穂先をガイドして円滑に扱口3aに案内することができる。
【0017】
上記支持板6は、その第1の構成例の要部正面図を図5に示すように、左右平坦に構成して扱室を形成する扱周板21との間に段差を設けることにより、扱室内から前方への籾の吹出しを防止することができ、また、第2の構成例の要部正面図を図6に示すように、円弧状の支持板6aによって扱周板21との間に段差を設けることにより、上記同様に、扱室から前方への籾の吹出しを防止することができる。
【0018】
支持板6の先端部は、引継ぎ時の籾漏れを防止するために、要部拡大測面図を図7に示すように、搬送部5の搬送終端と前後にラップさせ、間に不図示のクッションゴムを設ける。また、同支持板6の後端は、同様に、扱口3aに設けたコンケーブ22の前端とラップさせ、間にクッションゴム23を設ける。
【0019】
(別構成適用例)
次に、搬送部を刈取部に内設した構成のコンバインについて、本発明の引継移送装置を構成した例について説明する。なお、以下において、前記同様の部材は、その符号を付すことにより説明を省略する。
引継移送装置31は、搬送部を含む拡大側面図および平面図をそれぞれ図8、図9に示すように、刈取部2に内設した搬送部32と脱穀部3との間で刈取穀稈を中継移送するべく、脱穀部3の直前位置に設けた支持板6とシンクロチェーン7とを一体に傾動制御可能に構成する。
【0020】
搬送部32は、刈取部2が刈取った穀稈の穂先側を搬送するラグ付きチェーン33と穀稈の株元側を搬送する中間チェーン34が刈取部2に構成される。この刈取部2は、機体前部に配置された伝動支軸35に上下方向に回動支持した昇降支持杆36によって昇降動作可能に構成され、この刈取部2の昇降動作に応じて搬送部32が傾動される。また、刈取部2には、扱深さ調節チェーン37が中間チェーン34に引き継ぐ位置に配置され、設定の扱深さ位置の姿勢の刈取穀稈を搬送部32によって引継移送装置31に搬送する。
【0021】
引継移送装置31は、前記同様に、支持板6およびシンクロチェーン7を脱穀部3の扱口3aに臨んで一体に傾動可能に軸支し、刈取部2の昇降によって搬送部32が傾動してもその搬送終端位置に先端側が合うように、搬送部32の傾動と対応して傾動制御可能に制御部を構成する。
【0022】
このように、引継移送装置31は、支持板6とシンクロチェーン7の両者が一体で先端側が搬送部32の終端高さ位置に合うように、同搬送部32の傾斜に応じて一体に傾動制御することにより、低位置刈取りのために刈取部2が下降して搬送部32が前下がりに傾斜した場合においても、前記構成例と同様に、搬送部32から刈取穀稈を脱穀部3に安定して供給することができる。また、その他の細部についても、前記同様に構成することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 引継移送装置
2 刈取部
2a 掻込搬送装置
3 脱穀部
3a 扱口
5 搬送部
6 支持板
6a 支持板
7 シンクロチェーン
11 ラグ付きチェーン
12 ガイド付きチェーン
13 フィードチェーン
14 支軸
14a アクチュエータ
15 前壁(カバー)
16 伝動支軸
31 引継移送装置
32 搬送部
33 ラグ付きチェーン
34 中間チェーン
35 伝動支軸
36 昇降支持杆
C 連繋機構(制御部)
F 支持基台
S 走行装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(S)を備えた機台(F)の前側に刈取部(2)を設け、機台(F)の上側には扱口(3a)を前部に有した脱穀部(3)を設け、該扱口(3a)の下側に穀稈の穂先側を支持して扱口(3a)側に案内する支持板(6)を設け、脱穀部(3)の外側部に形成した側部扱口(3c)に沿ってフィードチェン(13)を設け、該フィードチェン(13)の搬送始端部の横側に前記走行装置(S)の駆動速度または刈取部(2)の駆動速度に同調して駆動するシンクロチェーン(7)を設け、前記刈取部(2)に備えた掻込搬送装置(2a)の搬送終端部とシンクロチェーン(7)の搬送始端部の間に、搬送終端部側を支点として搬送始端部側を上下動させることで前記搬送装置(2a)から穀稈を引き継ぐ際にこの穀稈の稈身方向での挟持位置を変更して扱ぎ深さを調節する搬送部(5)を設け、前記支持板(6)とシンクロチェーン(7)を一体的に傾斜変更自在に構成し、扱ぎ深さの調節によって前記搬送部(5)の搬送終端部が上下移動しても、該搬送部(5)の搬送終端部と前記支持板(6)及びシンクロチェーン(7)の搬送始端部とが常に一定の位置関係を維持するように、該支持板(6)及びシンクロチェーン(7)の傾斜変更を扱ぎ深さ調節に連動させる連繋機構(C)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記シンクロチェーン(7)は、前記フィードチェーン(13)よりも稈身方向穂先側に偏位して設けることを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記支持板(6)及びシンクロチェーン(7)の搬送終端部は、脱穀部(3)の前壁(15)よりも搬送下手側に位置することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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