説明

コンバイン

【課題】機体浮上支持手段を用いて簡易な操作により安定して走行部を浮上可能とし、かつ、機体浮上支持手段を使用しないときに、収納保管等の煩わしい取扱いや収穫走行の際の圃場作物との干渉等の問題を招くことのないコンバインを提供する。
【解決手段】コンバインは、車高調節可能な走行部2により支持した機体フレーム3と、その片側方に張出す唐箕カバー5aとを備え、上記機体フレーム3の四隅には、走行部2を浮上状態に機体を支持しうる支持脚8a,8bを機体フレーム3に沿う収納保持位置Uまで回動可能に軸支し、その中の上記唐箕カバー5aの側に配置の前後の支持脚8aには、それぞれ先端にネジ回転式の長さ調節部21を介して接地板22aを設け、この接地板22aをそれぞれの支持脚8aの回動支点11a,12aより高い位置h1,h2で唐箕カバー5aの内側に収納保持したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車高調節可能な走行部によって機体を支持するとともに、脱穀部の唐箕カバー(選別部カバー)を機体側部に備えるコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のコンバインは、車高調節部を介して左右のクローラにより機体フレームを支持して構成され、機体フレームの下部には、機体浮上支持のために、スタンドの受座を設けたものである。機体を浮上させる場合は、機体フレームの受座に合わせてその下方にスタンドを配置した上で車高を下げることにより、クローラを地面から浮かせてクローラの点検やクローラベルトの着脱等の走行部周りのメンテナンスを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−18266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、機体浮上支持手段としての堅固なスタンドを機体フレームの下方で左右のクローラの間の所定位置に合わせて機体を安定して浮上させるためには、作業場所の地盤選定等の安全確保のための十分な事前準備を要する上に、機体フレーム下の狭いスペースによる制限下において取扱いの困難な重量物の位置合わせ操作を強いられることとなり、また、走行部周りのメンテナンスを終了してスタンドを使用しないときに、機上に保管スペースが無いことから、その収納保管等の取扱いに悩まされるという問題があった。
【0005】
その一方で、スペースおよび機器配置の自由度の少ない機体上にスタンド等の機体浮上支持手段を搭載するように構成するとしても、圃場作物との干渉の問題を生じないように搭載スペースを確保することは非常に困難であった。
【0006】
本発明の目的は、走行部を地面から浮かすための機体浮上支持手段を用いて、簡易な操作により安定して走行部の浮上メンテナンスが可能となり、かつ、機体浮上支持手段を使用しないときに、収納保管等の煩わしい取扱いや収穫走行の際の圃場作物との干渉等の問題を招くことのないコンバインを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、車高調節部を介して走行部(2)により支持した平面視で略矩形状の機体フレーム(3)と、この機体フレーム(3)上に搭載した脱穀部(5)と、該脱穀部(5)下部の選別部の外側面を覆うべく同機体フレーム(3)よりも外側方に偏倚する位置に配置した選別部カバー(5a)とを有するコンバインにおいて、上記機体フレーム(3)の四隅には、走行部(2)を浮上状態に機体を支持しうる支持脚(8a,8b)を機体フレーム(3)に沿う収納保持位置(U)まで回動可能に軸支し、これら支持脚(8a,8b)の中の上記選別部カバー(5a)の側に配置した前後の支持脚(8a)には、それぞれ先端にネジ回転式の長さ調節部(21)を介して接地板(22a)を設け、この接地板(22a)をそれぞれの支持脚(8a)の回動支点(11a,12a)より高い位置(h1,h2)で選別部カバー(5a)の内側に収納保持可能な構成としたことを特徴とするコンバインとする。
【0008】
上記支持脚(8a,8b)は、回動操作によって垂下姿勢の浮上支持位置に準備でき、次いで車高調節部によって車高を下げると機体フレーム(3)の四隅が支持されて走行部(2)が浮上し、このとき、半数の支持脚の長さ調節部により地面に凹凸があっても機体を安定支持することができ、その後に浮上状態から復旧する場合は、コンバインの車高を高くすることによって機体フレーム(3)に沿う収納保持位置(U)まで支持脚(8a,8b)の回動操作が可能となり、選別部カバー(5a)の側に配置の前後の支持脚(8a)は、それぞれの回動支点より高い位置に接地板(22a)を保持することによって同接地板(22a)が安定保持され、また、選別部カバー(5a)により、圃場に植立する作物との干渉が回避される。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記支持脚(8a,8b)の中の上記選別部カバー(5a)を設けた側とは反対の側に配置した前後の支持脚(8b)は、それぞれ先端にネジ回転式の長さ調節部(21)を介して多角形状の接地板(22b)を設け、同支持脚(8b)の収納位置には、接地板(22b)の周辺部と当接して固定しうる受板(25a,25b)を設け、かつ、前側の支持脚(8b)の前面に圃場に植立する作物を後方に案内可能なガイド部材(15a)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとする。
機体フレーム(3)の他側に配置の前後の支持脚(8b)は、長さ調節可能な接地板(22b)によって機体の安定支持が可能となり、この接地板(22b)は多角形状で収納位置の受板(25a,25b)によって当接固定されることから、支持脚(8b)を収納保持位置(U)に回動することによって接地板(22b)が安定保持され、また、支持脚(8b)の前面のガイド部材(15a)が圃場に植立する作物を後方に案内することができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によると、上記支持脚(8a,8b)は、回動操作によって浮上支持位置と収納保持位置(U)とに切替えが可能で、支持脚(8a,8b)が浮上支持位置の場合は、車高調節によって走行部(2)の浮上と下降が可能となり、選別部カバー(5a)の側に配置の前後の支持脚(8a)は、その長さ調節部により地面の凹凸に対応でき、収納位置で接地板(22a)が安定保持されるとともに、外側の選別部カバー(5a)により、圃場に植立する作物との干渉が回避される。
【0011】
したがって、上記構成のコンバインは、収納保管の取扱いの問題を生じることのない機上構成の機体浮上支持手段の簡易な操作により安定して走行部(2)を浮上支持して確実なメンテナンス作業が可能となり、また、選別部カバー(5a)の側の支持脚(8a)を選別部カバー(5a)内に確実に安定して収納することができるので、圃場に植立する作物を傷めることなく、唐箕カバー(5a)の側を未刈り側として収穫走行が可能となる。
【0012】
請求項2の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加え、機体フレーム(3)の他側に配置の前後の支持脚(8b)は、長さ調節可能な接地板(22b)によって安定支持が可能となり、この接地板(22b)は多角形状で、収納位置の受板(25a,25b)によって当接固定されることから、支持脚(8b)を収納保持位置(U)に回動することによって接地板(22b)が安定保持され、また、支持脚(8b)の前面のガイド部材(15a)が圃場の作物を後方に案内可能なことから、圃場作物が支持脚(8b)に干渉する中割走行等の場合においても、圃場の作物の保護を確保しつつ刈取走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】機体浮上支持状態のコンバインの側面図
【図2】図1のコンバインのフレーム配置を付記した平面図
【図3】機体フレームの平面図
【図4】進行左側の支持脚の要部拡大正面図
【図5】進行左側の支持脚の収納状態の拡大側面図
【図6】進行右側の前側支持脚の支持状態の拡大側面図(a)と収納状態の正面図(b)
【図7】進行右側の後側支持脚の収納状態の要部拡大平面図(a)と側面図(b)
【図8】操縦部まわりの側面図
【図9】補助台使用による浮上支持の側面図
【図10】補助台の平面図(a)および側面図(b)
【図11】補助台の使用状態の背面図(a)および側面図(b)
【図12】機体後端部の平面図および縦断面図
【図13】機体後端部の平面図および縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1および図2は、それぞれ機体浮上支持状態のコンバインの側面図、同コンバインのフレーム配置を付記した平面図である。
【0015】
コンバイン1は、圃場走行を可能とする左右のクローラ2,2等による走行部と、機体水平用の車高調節部を介して走行部により支持される略矩形状の機体フレーム3と、この機体フレーム3の前部の刈取部4と、その後方で左右に配置した脱穀部5および穀粒貯留部6とを備え、脱穀部5の後部に藁排出部5d、穀粒貯留部6の前側に操縦部7を配置して構成される。
【0016】
進行左側に配した脱穀部5の外側面には、唐箕カバー(選別部カバー)5aを機体フレーム3の外側方まで張出して備え、また、機体フレーム3の四隅には、走行部2を浮上状態に機体を支持するための機体浮上支持手段である左右の支持脚8a,8bを機体フレーム3に沿って設けた収納保持位置Uまで回動可能に軸支する。
【0017】
機体フレーム3は、その平面図を図3に示すように、車幅方向に延びる前後のクロスビーム11,12、およびこれらを前後に接続する左右のサイドビーム13,14とによって略矩形状に構成し、前後のクロスビーム11,12の進行左側端には、ビーム内にそれぞれ軸線方向の支軸11a,12aを設け、これら支軸11a,12aによって前後の支持脚8a,8aをそれぞれ回動可能にL字型構成に軸支する。
【0018】
また、操縦部7に及ぶ右のサイドビーム14の先端および後のクロスビーム12の進行右端には、ビーム内にそれぞれ軸線方向の支軸14a,12aを設け、これら支軸14a,12aによって前後の支持脚8b,8bをそれぞれ回動可能にL字型構成に回動可能に軸支する。この進行右側の前後の支持脚8b,8bの収納位置U,Uには、少なくともそれぞれの前面側から圃場の作物を後方に案内可能な前後のガイド部材15a,15bを設ける。
【0019】
進行左側の前後の支持脚8a,8aの構成は、図4の要部拡大正面図に示すように、唐箕カバー5aより内側位置に固定ピンにより伸縮可能に構成し、それぞれの先端にはネジによる回転式の長さ調節部21,21を介して接地板22a,22aを備え、また、収納状態の拡大側面図を図5に示すように、支持脚8a,8aを短縮した状態で、それぞれの基部の回動支点11a,12aより高い位置h1,h2で接地板22a,22aを唐箕カバー5aの内側の収納保持位置U,Uに収容可能に、ピン固定可能なアーム23a,23bを支持脚8a,8aの基部に設けて構成する。
【0020】
進行右側の前後の支持脚8b,8bは、上記同様に長さ調節部21,21を介して接地板22b,22bをそれぞれ備える。前側の支持脚8bについては、図6の支持状態の拡大側面図(a)、収納状態の正面図(b)に示すように、支持位置Lと収納位置Uに保持可能に回動支軸14aの脇に固定ピン部24aを設け、接地板22bを正方形等の多角形状に形成するとともに、収納位置Uには、接地板22bの回り止めとして、接地板22bの周辺部と当接して固定する受板25aを設ける。
【0021】
後側の支持脚8bについては、図7の収納状態の要部拡大平面図(a)と側面図(b)に示すように収納保持位置Uに保持可能に、ピン固定可能なアーム24b,24bを支持脚8aの基部に設け、また、接地板22bを正方形等の多角形状に形成するとともに、収納位置Uには、接地板22bの回り止めとして、接地板22bの周辺部と当接して固定する受板25bを右のサイドビーム14の後部に設ける。
【0022】
上記の如く構成したコンバインは、四隅の支持脚8a,8bを回動して支持位置Lに支持準備した上で、コンバインの車高を低く調節することにより、機体フレーム3の四隅が支持脚8a,8bにより支持されて走行部2が浮上し、この支持脚8a,8bのそれぞれの長さ調節部21により安定接地が可能となり、復旧時はコンバインの車高を高く調節することにより、支持脚8a,8bの回動操作によって機体フレーム3に沿って収納位置Uに保持され、また、唐箕カバー5aの側に配置の前後の支持脚8a,8aは、それぞれの回動支点11a,12aより高い位置h1,h2に接地板22aを上向きに保持することによって同接地板22a,22aの脱落を招くことなく、安定保持が可能となり、また、唐箕カバー5aの内側に収納保持することにより、圃場に植立する作物の保護が可能となる。
【0023】
したがって、上記構成のコンバインは、収納保管の取扱いの問題を生じることのない機上構成の機体浮上支持手段の簡易な操作により安定して走行部を浮上支持して確実なメンテナンスが可能となり、また、唐箕カバーの側の支持脚をカバー内に確実に安定して収納することができるので、圃場の作物を傷めることなく、唐箕カバーの側を未刈り側として収穫走行が可能となる。
【0024】
また、機体フレームの他側に配置の前後の支持脚8b,8bは、長さ調節可能な接地板22b,22bによって安定支持が可能となり、この接地板22b,22bは多角形状で、収納位置の受板25a,25bによって当接固定されることから、支持脚8b,8bをそれぞれ収納保持位置U,Uに回動することによって接地板22b,22bが安定保持され、また、支持脚8b,8bの前面のガイド部材15a,15bが圃場の作物の絡まりを招くことなく、後方に案内可能なことから、圃場の作物が支持脚8b,8bに干渉する中割り走行の場合であっても、圃場の作物の保護を確保しつつ刈取走行することができる。
【0025】
(ガード板)
また、操縦部7の外側部の低位置には、図8の操縦部まわりの側面図に示すように、下垂状にガード板26を設ける。このガード板26は、機体に乗り降りする際に、足がクローラ2に巻き込まれないように、機体の右前の支持脚8bの後方でクローラ2の露出部に設ける。
【0026】
(補助台)
補助台を使用して走行部2を浮上させる場合は、図9の補助台使用による浮上支持の側面図に示すように、台形状に構成した2つの補助台31,31を機体後部に搭載可能に構成する。
詳細には、補助台31は、図10の平面図(a)および側面図(b)に示すように、細長部材の4つの外周部のそれぞれに傾斜面31a,31bを形成し、上下方向の2つの貫通孔31c,31cを中央線から側方に変移した位置に形成し、両側の傾斜面31b,31bに取手32,32を設ける。
【0027】
補助台31の大きさは、図11の使用状態の背面図(a)および側面図(b)に示すように、機体を安定支持するために、クローラ2の第1転輪から最終転輪までの距離L1より上面全長L2を長く、また、機体の外側方から引き出して効率よく作業ができるように、下面全長L3を支持脚内側間距離L4より短く形成する。
【0028】
また、2つの補助台31,31を一体ユニットとして機体後部に着脱可能に搭載するために、機体後端部の平面図および縦断面図をそれぞれ図12、図13に示すように、藁排出部5dのオープン動作に必要な開閉幅Wの吊り側となる右側端の範囲内に、着脱可能に構成した横長の収納座34を設け、この収納座34の下辺近傍位置に2つのスタッド部材35,35を起設する。このスタッド部材35,35は、2つの補助台31,31を収納座34に2段に重ねて固定するために、2つの貫通孔31c,31cに挿通可能に配置する。
【0029】
また、収納座34によって2つの補助台31,31を収納した状態において、藁の後方排出に邪魔にならないように、藁排出部5dの排出口に臨む排出板36の傾斜面に合わせて収納座34の上部にカバー37を設け、さらに、2つの補助台31,31の上側の傾斜面31b,31bが連続するようにその傾斜角を定めるとともに、2つの貫通孔31c,31cの側方変移位置を定める。
【符号の説明】
【0030】
1 コンバイン
2 クローラ(走行部)
3 機体フレーム
5 脱穀部
5a 唐箕カバー(選別部カバー)
8a 支持脚
8b 支持脚
11 クロスビーム
11a 回動支点
12 クロスビーム
12a 回動支点
13 サイドビーム
14 サイドビーム
14a 回動支軸(支点)
15a ガイド部材
21 調節部
22a 接地板
22b 接地板
25a 受板
25b 受板
h1 高さ位置
h2 高さ位置
L 支持位置
U 収納保持位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車高調節部を介して走行部(2)により支持した平面視で略矩形状の機体フレーム(3)と、この機体フレーム(3)上に搭載した脱穀部(5)と、該脱穀部(5)下部の選別部の外側面を覆うべく同機体フレーム(3)よりも外側方に偏倚する位置に配置した選別部カバー(5a)とを有するコンバインにおいて、
上記機体フレーム(3)の四隅には、走行部(2)を浮上状態に機体を支持しうる支持脚(8a,8b)を機体フレーム(3)に沿う収納保持位置(U)まで回動可能に軸支し、これら支持脚(8a,8b)の中の上記選別部カバー(5a)の側に配置した前後の支持脚(8a)には、それぞれ先端にネジ回転式の長さ調節部(21)を介して接地板(22a)を設け、この接地板(22a)をそれぞれの支持脚(8a)の回動支点(11a,12a)より高い位置(h1,h2)で選別部カバー(5a)の内側に収納保持可能な構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記支持脚(8a,8b)の中の上記選別部カバー(5a)を設けた側とは反対の側に配置した前後の支持脚(8b)は、それぞれ先端にネジ回転式の長さ調節部(21)を介して多角形状の接地板(22b)を設け、同支持脚(8b)の収納位置には、接地板(22b)の周辺部と当接して固定しうる受板(25a,25b)を設け、かつ、前側の支持脚(8b)の前面に圃場に植立する作物を後方に案内可能なガイド部材(15a)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−172532(P2011−172532A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40432(P2010−40432)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】