説明

コンバイン

【課題】運転席の前側に接近して穀稈引起し装置を配設しコンバインにおいて、引起しラグによって脱粒された穀粒等が運転席まで飛散するのを防止する。
【解決手段】運転席(5)の前側に接近して立毛穀稈を引き起す複数の引起し装置(8,…)を配設してあるコンバインにおいて、各引起し装置(8,…)の上方で、且つ、引き起し経路(K)に沿って回転移行する引起しラグ(14)の上部回転軌跡の上方を覆う引起しカバー体(15)を設け、該引起しカバー体(15)を前側引起しカバー(15a)と後側引起しカバー(15b)とに分割して形成し、該後側引起しカバー(15b)に前側引起しカバー(15a)を左右方向の軸(15c)回りに回動調節自在に軸支する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示された従来技術は、3基以上の引起し装置のうち、中間の引起し装置を除く左右両側の引起し装置の上部どうしを各引起し装置への動力分配手段の内装空間を有しない上部連結部材で連結し、この上部連結部材を、隣接する引起し装置どうしの間に形成される引起し経路の上側に位置する部分では、引起し経路を迂回し、かつ、引起し爪の引起し行程終端箇所の爪回動面の延長面と交差するように、前後方向幅が爪回動面に沿う方向の幅よりも広い部材で構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−176825号公報(図1、図8、図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転席の前側に接近して穀稈引起し装置を配設したものでは、引起し装置の上部と上部連結部材との間に空間部が介在しているものでは、引起しラグによって脱粒された穀粒が運転席まで飛散したり、塵埃がオペレータに飛散するという問題が発生する。
【0005】
本発明の課題は、かかる問題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
請求項1記載の発明は、運転席(5)の前側に接近して立毛穀稈を引き起す複数の引起し装置(8,…)を配設してあるコンバインにおいて、各引起し装置(8,…)の上方で、且つ、引き起し経路(K)に沿って回転移行する引起しラグ(14)の上部回転軌跡の上方を覆う引起しカバー体(15)を設け、該引起しカバー体(15)を前側引起しカバー(15a)と後側引起しカバー(15b)とに分割して形成し、該後側引起しカバー(15b)に前側引起しカバー(15a)を左右方向の軸(15c)回りに回動調節自在に軸支したことを特徴とするコンバインとする。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記後側引起しカバー(15b)を、引起し装置(8,…)の後側上方部位において左右方向に設けた支軸(16)で上下に回動調節自在に軸支したことを特徴とする請求項1記載のコンバインとする。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記引起し装置(8,…)の左右両サイドに配置されている左右サイドカバー(18,18)を上部サイドカバー(18a)と下部サイドカバー(18b)とに夫々上下に分割し、上部サイドカバー(18a)の下部を下部サイドカバー(18b)の上部に重合状態に配置可能に構成し、前記後側引起しカバー(15b)の左右両側部に左右上部サイドカバー(18a,18a)を一体的に取り付けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のコンバインとする。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記前側引起しカバー(15a)の全体あるいは一部を透明板体で構成したことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のコンバインとする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、引起し時に穀粒の飛散が多発したり、埃の発生する作物に対しては、前側引起しカバー(15a)を前方へ突出するように回動し、この前側引起しカバー(15a)によって穀粒や塵埃の飛散を防止しながら作業をすることができる。また、穀粒や埃の飛散しない作物に対しては、前側引起しカバー(15a)を後側に回動し後側引起しカバー(15b)に沿わせて収納することにより、オペレータの前方視界を良くしながら作業をすることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、引起しカバー体(15)の後側引起しカバー(15b)は、左右方向の支軸回りに開閉回動する構成であるため、引起しカバー体(15)の開閉操作を簡単に行なうことができる。また、引起しカバー体(15b)を上方に開けた場合には、オペレータ側への穀粒の飛散を良好に阻止し、また、引起しカバー体(15b)を下方に閉回動すると、オペレータの前方視界を良くすることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、引起しカバー体(15)の後側引起しカバー(15b)の左右両側に左右上部サイドカバー(18a,18a)を一体化した構成であるため、左右上部サイドカバー(18a,18a)を簡単に着脱することができ、刈取部(4)のメンテナンスを左右両側から容易に行うことができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2又は請求項3記載の発明の効果に加えて、前側引起しカバー(15a)の透明板体の部分から分草杆周辺などの前方の作業状態を見ることができ、オペレータの前方視界を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】コンバインの側面図
【図2】コンバインの前側部の平面図
【図3】コンバインの正面図
【図4】穀稈引起し装置の側面図
【図5】刈取部の側面図
【図6】刈取部後部の正面図
【図7】穀稈引起し装置の側面図
【図8】穀稈引起し装置の側面図
【図9】穀稈引起し装置の上部の側面図
【図10】コンバインの前側部の平面図
【図11】コンバインの側面図
【図12】コンバインの前側部の平面図
【図13】コンバインの正面図
【図14】穀稈引起し装置の上部の側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1乃至図3は、本発明を備えたコンバインを示すものであり、この走行車体1には、左右一対の走行クローラ2,2を備え、後部に搭載した脱穀装置3の前方部に刈取部4を設置し,刈取部4の横側部には運転席5や操作ボックス6等を備えた運転操作部を配設し、更に、その運転操作部の後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンクGを装備している。
【0016】
刈取部4は、立毛する穀稈を左右に分草する分草体7,7…と、分草後の穀稈を引き起す4条の穀稈引起し装置8,…と、引起し後の穀稈を刈り取る刈取装置9と、刈取後の穀稈を掻込搬送する掻込搬送装置(図示省略),掻込搬送後の穀稈を引き継いで揚上搬送しながら姿勢変更して脱穀装置3に受け渡し供給する揚上搬送供給装置(図示省略)等からなり、車体に対し上下に昇降可能に装備している。
【0017】
穀稈引起し装置8は、引起しチエンを内装し前後に分割可能な前側引起しケース12,後側引起しケース13と、後側引起しケース13から引起し経路K側に突出して穀稈を引き起す引起しラグ14,…とから構成されている。
【0018】
前側引起しケース12は、後側引起しケース13に対し着脱自在に取り付けできる構成としてあり、前側引起しケース12を長手方向に沿って上方に引き上げると、係止ロック手段が解除され、前側に取り外しできるようになっている。各前側引起しケース12,…の上端側12uは、側面視で下端側の後上り傾斜角度よりも後上り傾斜角度が緩傾斜となるように屈曲形成されていて、運転席5にオペレータが着座した姿勢での作業における分草位置近傍の視界を良好にしている。また、運転席5からオペレータが起立した姿勢での作業においては、分草位置が更に良く見えるように構成している。
【0019】
そして、各引起し装置8,…の上部は、左右横方向に長く構成された引起しカバー体15によって被覆される構造になっている。
引起し装置8,…の左右両サイドに配置されたサイドカバー18,18は、上部サイドカバー18aと下部サイドカバー18bとに分割構成されていて、上部サイドカバー18aは、下部サイドカバー18bの左右両側の上側面及び左右外側面上に重合するこうせいである。そして、前記引起しカバー体15の後側引起しカバー15bの左右両側部に左右上部サイドカバー18a,18aが一体的に取り付けられていて、引起しカバー体15の後側引起しカバー15bが左右方向の軸16回りに上下に揺動開閉可能に構成されている。しかして、後側引起しカバー15bと共に左右サイドカバー18a,18aは揺動開閉する構成である。
【0020】
また、引起しカバー体15及び左右上部サイドカバー18a,18aを上方に開動させないで下方に閉回動した状態では、前側引起しケース12及び左右下部サイドカバー18b,18bの取り外しができなく、下方への閉回動によってロック機構の役目を果たす構造になっている。
【0021】
そして、このカバー体15の姿勢変更手段として、前後上下のスライド構成とすることもできる。しかし、本実施例では、図4に示すように、該カバー体15が引起し装置8,…の背部側上方で左右横方向に架設された支軸16を回動支点として上下に揺動開閉するように構成されている。カバー体15の上方への開側回動が引起し経路Kの上方をカバーする姿勢変更状態であり、下方への閉側回動が前側引起しケース12の上端側12u前面をカバーする姿勢変更状態となる。
【0022】
カバー体15の開閉係止構成は、図4に示すように、後側引起しケース13のフレーム部に引張スプリング17の下端を取り付け、引張スプリング17の上端を引起しカバー体15の後側引起しカバー15bの回動支点付近に取り付け、引起しカバー体15が支軸16の支点に対して閉側と開側に回動すると、スプリング17の上端が支点越えをし張力方向を切り替えて、ワンタッチで揺動開閉を係止することができる。
【0023】
前記構成によると、前側引起しカバー15aを上方へ回動すると、前側引起しケース12の上端側12u前面をカバーする状態となり、穀稈引起し装置8,…の全幅の広範囲にわたり防塵することができ、オペレータを埃から守ることができると共に、穀稈引起し装置8,…で脱粒した籾がオペレータに飛散するのを防止することができる。また、前側引起しカバー15aを下方へ回動すると、引起しラグ14における引起し経路Kの上方をカバーする状態となる。
【0024】
また、図5及び図6に示すように、刈取部4を支持する刈取メインフレーム21は、刈取懸架台22に架設された刈取入力軸23を支点として上下に回動する構成であり、刈取昇降シリンダ24の伸縮作動により刈取部4が昇降するようになっている。刈取メインフレーム21の変速ギヤケース26よりも下方の中央部と、刈取入力軸23の軸受部との間をL型補強フレーム27で連結して強化し、衝突による捩れや、破損を防止するように構成している。また、補強フレーム27の内側に昇降シリンダ24の取付部及びフローティングスプリング25の設置部を設けておくと、衝突時の捩れ応力によるシリンダ・フローティングスプリングの変形、破損を防止することができる。各操作ワイヤ・ハーネス・ホース等の配策部28を刈取メインフレーム21から補強フレーム27に沿わせて設けることにより、上下回動時の屈曲、各部への干渉を防止することができる。
【0025】
また、前記L型補強フレーム27は、刈取メインフレーム21と側面視で平行とし、そして、この補強フレーム27と刈取メインフレーム21との間には、供給上下モータ29により揚上搬送供給装置(図示省略)の始端側を上下動させる上下リンク30を介装することで、上下リンクの保護を図るようにしている。
【0026】
また、図4に示すように、引起しカバー体15は前側引起しカバー15aと後側引起しカバー15bとに分割構成されていて、後側引起しカバー15bの前側端部に左右方向の軸15cにより前側引起しカバー15aの前端部が軸支されていて、前側引起しカバー15aを上下回動できるように構成している。
【0027】
しかして、埃の発生しない作物に対しては、後側引起しカバー15bを下方に回動し、前側引起しカバー15aを図4の仮想線に示すように、後側引起しカバー15bの下面に沿わせて収納することにより、オペレータの前方視界を良くし、長い穀稈の穂先部を前側引起しカバー15aに衝突させずに引き起こすことができる。また、コンバインを格納、移動する場合には、後側引起しカバー15bの下方に前側引起しカバー15aを収納することで、コンパクトになり場所を取らず、また、安全である。
【0028】
また、後側引起しカバー15bの前側端部に左右方向の軸15cにより前側引起しカバー15aの前端部を軸支するにあたり、軸15cを穀稈引起し装置8,…の引起しケースの前側部上方に配置し、引起しケースの穀稈の搬送通路には配置しないようにすると、前側引起しカバー15a,後側引起しカバー15b及び軸15cが穀稈の引起しの障害とならず、円滑に引き起こすことができる。
【0029】
また、図7に示すように、左右上部サイドカバー18a,18aと後側引起しカバー15bを上方に回動開放し、折り畳んでいる前側引起しカバー15aを前方に張り出すことにより、広い範囲の防塵作用を行なうことができる。この状態では、前側引起しカバー15aと後側引起しカバー15bにより穀稈引起し装置8の上端部を閉鎖した状態で前方へ突出させることができ、防塵効果を向上させることができる。また、左右上部サイドカバー18a,18aと後側引起しカバー15bを下方に回動し閉鎖収納状態とすることができる。
【0030】
また、図8に示すように、左右上部サイドカバー18a,18aと後側引起しカバー15bを上方に回動し開放した状態とし、後側引起しカバー15bの下面に沿うように前側引起しカバー15aを折り畳んだ状態で、刈取作業をすることができる。
【0031】
しかして、通常の穀稈長さの場合には、前側引起しカバー15aを閉鎖した状態で、穀稈の穂先部が前側引起しカバー15aと干渉しないようにし、防塵効果を高めながら作業をすることができる。また、長い穀稈の場合には、前側引起しカバー15aを閉鎖した状態で、穀稈の穂先部が前側引起しカバー15aに干渉しないようにしながら作業をすることができる。
【0032】
また、図9に示すように、前側引起しカバー15aを、伸縮可能に構成すると、前側引起しカバー15aの前方への突出長さを長くすることができ、防塵性能を高めることができる。
【0033】
また、前側引起しカバー15aを透明板体で構成すると、オペレータの前方視界を向上させることができる。
また、図10に示すように、前側引起しカバー15aに透明板体の窓15a1をで左右方向に沿わせて設けると、オペレータの前方視界を向上させることができる。
【0034】
次に、図11乃至図14に基づき引起しカバー体15の他の実施例について説明する。
後側引起しカバー15bの前側端部に左右方向の軸15cにより前側引起しカバー15aの前端部を軸支し、この前側引起しカバー15aを、図14に示すように、時計方向に回動して後側引起しカバー15bの上側面に沿うように接触した状態で収納したり、また、仮想線で示すように、前側引起しカバー15aを前方へ突出するように回動し、前側引起しケース12の上端側12u前面を被覆する状態とし、穀稈引起し装置8,…全幅の広範囲にわたり防塵するように構成している。
【0035】
前記構成によると、前側引起しケース12を取り外さずに、前側引起しカバー15aを後側引起しカバー15bに重ねるように収納することができ、前側引起しカバー15aの開閉操作が容易となる。
【符号の説明】
【0036】
5 運転席
8 穀稈引起し装置
12 引起しケース(前側)
12u 前側引起しケースの上端側前面
14 引起しラグ
15 引起しカバー体
15a 前側引起しカバー
15b 後側引起しカバー
15c 軸
16 支軸
18 サイドカバー
18a 上部サイドカバー
18b 下部サイドカバー
K 引き起し経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席(5)の前側に接近して立毛穀稈を引き起す複数の引起し装置(8,…)を配設してあるコンバインにおいて、各引起し装置(8,…)の上方で、且つ、引き起し経路(K)に沿って回転移行する引起しラグ(14)の上部回転軌跡の上方を覆う引起しカバー体(15)を設け、該引起しカバー体(15)を前側引起しカバー(15a)と後側引起しカバー(15b)とに分割して形成し、該後側引起しカバー(15b)に前側引起しカバー(15a)を左右方向の軸(15c)回りに回動調節自在に軸支したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記後側引起しカバー(15b)を、引起し装置(8,…)の後側上方部位において左右方向に設けた支軸(16)で上下に回動調節自在に軸支したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記引起し装置(8,…)の左右両サイドに配置されている左右サイドカバー(18,18)を上部サイドカバー(18a)と下部サイドカバー(18b)とに夫々上下に分割し、上部サイドカバー(18a)の下部を下部サイドカバー(18b)の上部に重合状態に配置可能に構成し、前記後側引起しカバー(15b)の左右両側部に左右上部サイドカバー(18a,18a)を一体的に取り付けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記前側引起しカバー(15a)の全体あるいは一部を透明板体で構成したことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−229449(P2011−229449A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102389(P2010−102389)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】