説明

コンバイン

【課題】コンバインの誤操作を低減するとともに、操作性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】エンジン71と、エンジン71の動力によって駆動されて穀稈を刈取る刈取部2と、エンジン71の動力によって駆動されて刈取られた穀稈の脱穀を行なう脱穀部3と、を備えるコンバイン100において、エンジン71の動力を刈取部2に伝達又は遮断する刈取クラッチCL1と、エンジン71の動力を脱穀部3に伝達又は遮断する脱穀クラッチCL2と、刈取クラッチCL1及び脱穀クラッチCL2がエンジン71の動力を伝達するか遮断するかを選択できるダイヤルスイッチ821と、を具備し、ダイヤルスイッチ821は、回動操作によってエンジン71の動力を伝達する入位置とエンジン71の動力を遮断する切位置とに切り替え可能とし、入位置に設定されている状態においても押動操作によって前記エンジンの動力を遮断する、とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの技術に関する。より詳細には、コンバインの誤操作を低減するとともに、操作性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、走行しながら穀稈を刈取るとともに、刈取った穀稈を脱穀するコンバインが知られている。コンバインには、穀稈を刈取る刈取部や刈取った穀稈を脱穀する脱穀部等が備えられる。従って、オペレータが着座する運転席の周囲には、刈取部や脱穀部等の駆動状態を操作する複数の操作具が配置されている。
【0003】
更に、近年においては、コンバインの多機能化に起因して操作具が増加する傾向にある。そのため、簡素な構成でありながら操作性が良く、誤操作を低減できるコンバインが求められていた。そこで、刈取部及び脱穀部の停止、脱穀部のみの駆動、刈取部及び脱穀部の駆動、のいずれかを選択できるダイヤルスイッチを設けたコンバインが提案されていた(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に示すコンバインは、ダイヤルスイッチの回動操作によって刈取部及び脱穀部の停止、脱穀部のみの駆動、刈取部及び脱穀部の駆動、のいずれかを選択できる構成であるため、オペレータの不注意によって誤操作を招く場合があった。また、特許文献1に示すコンバインは、ダイヤルスイッチの回動操作によって刈取部及び脱穀部を停止させる構成であるため、更に素早く刈取部と脱穀部を停止できる等の操作性の向上が要求されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−232797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであり、コンバインの誤操作を低減するとともに、操作性を向上させる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、
エンジンと、
前記エンジンの動力によって駆動されて穀稈を刈取る刈取部と、
前記エンジンの動力によって駆動されて刈取られた穀稈の脱穀を行なう脱穀部と、を備えるコンバインにおいて、
前記エンジンの動力を前記刈取部に伝達又は遮断する刈取クラッチと、
前記エンジンの動力を前記脱穀部に伝達又は遮断する脱穀クラッチと、
前記刈取クラッチ及び前記脱穀クラッチが前記エンジンの動力を伝達するか遮断するかを選択できるダイヤルスイッチと、を具備し、
前記ダイヤルスイッチは、回動操作によって前記エンジンの動力を伝達する入位置と前記エンジンの動力を遮断する切位置とに切り替え可能とし、入位置に設定されている状態においても押動操作によって前記エンジンの動力を遮断する、としたものである。
【0009】
請求項2においては、請求項1に記載のコンバインにおいて、
前記刈取クラッチが前記エンジンの動力を遮断するとともに、前記脱穀クラッチが前記エンジンの動力を伝達するように指示する手扱スイッチを具備する、としたものである。
【0010】
請求項3においては、請求項2に記載のコンバインにおいて、
前記ダイヤルスイッチが回動操作又は押動操作された場合は、該ダイヤルスイッチの回動操作又は押動操作の前にされた前記手扱スイッチの操作を無効とする、としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1に記載のコンバインによれば、刈取部及び脱穀部の駆動又は停止をダイヤルスイッチの回動操作によって選択することができる。これにより、脱穀部のみの駆動を選択することができないため、オペレータの不注意による誤操作を低減することが可能となる。更に、ダイヤルスイッチの押動操作のみで刈取部及び脱穀部を停止させることができる。これにより、刈取部及び脱穀部を素早く停止させるための操作性を向上させることが可能となる。
【0013】
請求項2に記載のコンバインによれば、刈取部及び脱穀部が停止しているときでも手扱スイッチの操作によって脱穀部を駆動させることができる。また、刈取部及び脱穀部が駆動しているときでも手扱スイッチの操作によって刈取部を停止させることができる。これにより、脱穀部のみの駆動を指示することができるため、オペレータの不注意による誤操作を低減することが可能となる。また、手扱ぎ作業を行なうための操作性を向上させることが可能となる。
【0014】
請求項3に記載のコンバインによれば、脱穀部のみが駆動しているときでもダイヤルスイッチの回動操作のみで刈取部及び脱穀部を駆動又は停止させることができる。これにより、刈取部及び脱穀部の操作方法を単純化することができるため、オペレータの不注意による誤操作を低減することが可能となる。更に、ダイヤルスイッチの押動操作のみで脱穀部を停止させることができる。これにより、脱穀部を素早く停止させるための操作性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの全体構成を示す図。
【図2】コンバインの動力伝達機構の構成を示す図。
【図3】コンバインの制御システムの構成を示す図。
【図4】カウンタケースの構成を示す図。
【図5】(A)コンバインの操縦部を示す図。(B)操作パネルに設けられたダイヤルスイッチ及び手扱スイッチを示す図。
【図6】(A)ダイヤルスイッチの回動操作を示す図。(B)ダイヤルスイッチ及び手扱スイッチの押動操作を示す図。
【図7】エンジンの動力が刈取部、脱穀部及び選別部に伝達されている状態を示す図。
【図8】エンジンの動力が刈取部、脱穀部及び選別部に伝達されていない状態を示す図。
【図9】エンジンの動力が脱穀部及び選別部のみに伝達されている状態を示す図。
【図10】ダイヤルスイッチの他の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の一実施形態に係るコンバイン100について簡単に説明する。
【0017】
図1は、コンバイン100の全体構成を示す図である。図1に示すように、コンバイン100は、主に走行部1と、刈取部2と、脱穀部3と、選別部4と、穀粒貯溜部5と、排藁処理部6と、動力部7と、操縦部8と、で構成される。
【0018】
走行部1は、機体フレームFの下部に設けられている。走行部1は、主にトランスミッション11と、左右一対のクローラ式走行装置12・12と、で構成される(図2参照)。トランスミッション11は、後述するエンジン71の動力をクローラ式走行装置12・12へ伝達する。クローラ式走行装置12・12は、コンバイン100を前進方向又は後進方向に走行させる。また、クローラ式走行装置12・12は、左右の駆動状態を変更することによってコンバイン100を左右に旋回させる。
【0019】
刈取部2は、機体フレームFの前部に設けられている。刈取部2は、主に分草具21と、引起装置22と、切断装置23と、搬送装置24と、で構成される(図2参照)。分草具21は、コンバイン100が走行した際に圃場の穀稈を分草する。引起装置22は、分草具21によって分草された穀稈を引き起こす。切断装置23は、引起装置22によって引き起こされた穀稈を切断する。搬送装置24は、切断装置23によって切断された穀稈を脱穀部3へ搬送する。
【0020】
脱穀部3は、機体フレームFの上部であって刈取部2の後方に設けられている。脱穀部3は、主にフィードチェーン31と、扱胴32と、で構成される(図2参照)。フィードチェーン31は、刈取部2を構成する搬送装置24から穀稈を受け継いで排藁処理部6へ搬送する。扱胴32は、フィードチェーン31によって搬送されている穀稈を脱穀する。
【0021】
選別部4は、機体フレームFの上部であって脱穀部3の下方に設けられている。選別部4は、主に揺動選別装置41と、風選別装置42と、穀粒搬送装置43と、藁屑排出装置44と、で構成される(図2参照)。揺動選別装置41は、脱穀部3から落下する脱穀物を穀粒と藁屑等に選別する。風選別装置42は、揺動選別装置41によって選別された脱穀物を更に穀粒と藁屑等に選別する。穀粒搬送装置43は、揺動選別装置41及び風選別装置42によって選別された穀粒を穀粒貯溜部5へ搬送する。藁屑排出装置44は、揺動選別装置41及び風選別装置42によって選別された藁屑等を外部へ排出する。
【0022】
穀粒貯溜部5は、機体フレームFの上部であって脱穀部3や選別部4の側方に設けられている。穀粒貯溜部5は、主にグレンタンク51と、穀粒排出装置52と、で構成される(図2参照)。グレンタンク51は、選別部4から搬送されてくる穀粒を貯溜する。穀粒排出装置52は、グレンタンク51に貯溜された穀粒をオーガを介して任意の位置に排出する。
【0023】
排藁処理部6は、機体フレームFの上部であって脱穀部3の後方に設けられている。排藁処理部6は、主に排藁搬送装置61と、排藁切断装置62と、で構成される(図2参照)。排藁搬送装置61は、脱穀部3を構成するフィードチェーン31から脱穀済みの穀稈を受け継いで排藁切断装置62へ搬送する。排藁切断装置62は、排藁搬送装置61によって搬送された穀稈を切断して外部へ排出する。
【0024】
動力部7は、機体フレームFの上部であって穀粒貯溜部5の前方に設けられている。動力部7は、主にエンジン71と、カウンタケース72と、で構成される(図2参照)。エンジン71は、燃料を燃焼させることによって動力を発生させる。カウンタケース72は、エンジン71の動力を刈取部2や脱穀部3、選別部4等へ伝達する。
【0025】
操縦部8は、機体フレームFの上部であって動力部7の上方に設けられている。操縦部8は、主に運転席81と、操作パネル82と、で構成される(図5参照)。運転席81は、コンバイン100の操縦に際してオペレータが座る座席である。操作パネル82には、コンバイン100の操縦に用いる複数の操作具が配置されている。
【0026】
このような構成により、オペレータは、運転席81に着座した状態で操作具を操作し、コンバイン100を操縦できる。コンバイン100は、走行しながら穀稈を刈取るとともに、刈取った穀稈を脱穀する。そして、コンバイン100は、刈取った穀稈を穀粒と藁屑等に選別して穀粒を貯溜するとともに、任意の位置に排出可能としている。
【0027】
次に、本実施形態に係るコンバイン100の動力伝達機構について説明する。
【0028】
図2は、コンバイン100の動力伝達機構の構成を示す図である。図2に示すように、コンバイン100の動力伝達機構は、主にトランスミッション11と、カウンタケース72と、その他の各部へエンジン71の動力を伝達する回転軸やベルト等で構成される。なお、以下の説明では、無段変速装置111を経由してカウンタケース72に入力されるエンジン71の動力を指定する場合、「無段変速装置111からの動力」とする。
【0029】
上述したように、トランスミッション11は、エンジン71の動力をクローラ式走行装置12・12へ伝達する。トランスミッション11には、ベルトb1を介してエンジン71の動力が入力される。トランスミッション11は、無段変速装置111や副変速装置等を備え、エンジン71の動力を油圧に変換した後に任意の動力としてクローラ式走行装置12・12へ伝達する。これにより、オペレータは、トランスミッション11を介してクローラ式走行装置12・12の駆動状態を制御でき、コンバイン100を任意の方向に走行させることができる。
【0030】
上述したように、カウンタケース72は、エンジン71の動力を刈取部2や脱穀部3、選別部4等へ伝達する。カウンタケース72には、ベルトb2・b3を介してエンジン71の動力が入力される。更に、カウンタケース72には、ベルトb4・b5を介して無段変速装置111からの動力が入力される。カウンタケース72は、遊星歯車機構729を備え、エンジン71の動力と無段変速装置111からの動力を合成して脱穀部3を構成するフィードチェーン31へ伝達する。また、カウンタケース72は、無段変速装置111からの動力を刈取部2へ伝達する。これにより、カウンタケース72は、フィードチェーン31による搬送速度と刈取部2による刈取速度をコンバイン100の走行速度に同調させることを可能としている。なお、カウンタケース72は、エンジン71の動力を脱穀部3を構成する扱胴32及び選別部4へ伝達する。
【0031】
本コンバイン100においては、エンジン71の動力を刈取部2に伝達又は遮断する刈取クラッチCL1が設けられている。詳細には、無段変速装置111からの動力を刈取部2に伝達又は遮断する刈取クラッチCL1が設けられている。図3に示すように、刈取クラッチCL1は、該刈取クラッチCL1に制御信号を送信可能とする制御装置ECUに接続されている。制御装置ECUは、該制御装置ECUに入力信号を送信可能とするダイヤルスイッチ821(図5A、図5B参照)に接続されている。なお、本コンバイン100において刈取クラッチCL1は、いわゆるドグクラッチであって、カウンタケース72の内部に備えられている。
【0032】
更に、本コンバイン100においては、エンジン71の動力を脱穀部3に伝達又は遮断する脱穀クラッチCL2が設けられている。図3に示すように、脱穀クラッチCL2は、該脱穀クラッチCL2に制御信号を送信可能とする制御装置ECUに接続されている。制御装置ECUは、該制御装置ECUに入力信号を送信可能とするダイヤルスイッチ821(図5A、図5B参照)に接続されている。なお、本コンバイン100において脱穀クラッチCL2は、いわゆるテンションクラッチであって、プーリがベルトb3に接するように備えられている。
【0033】
次に、カウンタケース72の構成と動力伝達経路について詳細に説明する。
【0034】
図4は、カウンタケース72の構成を示す図である。図4に示すように、カウンタケース72は、主に第一入力軸721と、第二入力軸722と、第一中間軸723と、第二中間軸724と、刈取部駆動軸725と、選別部駆動軸726と、第三中間軸727と、フィードチェーン駆動軸728と、で構成される。なお、本カウンタケース72は、代表的な構成を示したものであり、詳細については異なる部分を有する場合がある。
【0035】
第一入力軸721は、エンジン71の出力軸71oに対して垂直となるように回転自在に支持されている。第一入力軸721の一端部には、プーリ721aが取り付けられて該プーリ721aにベルトb3が掛けられている。第一入力軸721の他端部には、プーリ721bが取り付けられて該プーリ721bにベルトb6が掛けられている。これにより、第一入力軸721は、エンジン71の動力を脱穀部3を構成する扱胴32に伝達することを可能としている。なお、プーリ721aに掛けられたベルトb3は、脱穀クラッチCL2のプーリが該ベルトb3を押して張力を掛かけることによってエンジン71の動力を伝達する。
【0036】
第二入力軸722は、無段変速装置111の出力軸111oに対して平行となるように回転自在に支持されている。第二入力軸722の一端部には、プーリ722aが取り付けられて該プーリ722aにベルトb5が掛けられている。第二入力軸722の中途部には、高速ギヤ722h及び標準ギヤ722sが回転自在に支持されている。高速ギヤ722h及び標準ギヤ722sは、ワンウェイクラッチを介して第二入力軸722と連結されている。
【0037】
第一中間軸723は、第二入力軸722に対して平行となるように回転自在に支持されている。第一中間軸723の中途部には、高速ギヤ723h及び標準ギヤ723sが回転自在に支持されている。高速ギヤ723hは、第二入力軸722に設けられた高速ギヤ722hと歯合され、標準ギヤ723sは、第二入力軸722に設けられた標準ギヤ722sと歯合されている。なお、高速ギヤ723h及び標準ギヤ723sのいずれかは、刈取クラッチCT1を構成するスライダが摺動し、係合することによって第一中間軸723と連結される。
【0038】
第二中間軸724は、第一中間軸723とスプライン構造によって連結されて回転自在に支持されている。第二中間軸724の中途部には、高速ギヤ724h及び標準ギヤ724sが回転自在に支持されている。なお、高速ギヤ724h及び標準ギヤ724sのいずれかは、クラッチを構成するスライダが摺動し、係合することによって第二中間軸724と連結される。
【0039】
刈取部駆動軸725は、第二中間軸724に対して平行となるように回転自在に支持されている。刈取部駆動軸725の一端部には、トルクリミッター725tが設けられている。また、トルクリミッター725tの側面には、入力ギヤ725aが設けられて該入力ギヤ725aと第二中間軸724に設けられた出力ギヤ724aが歯合されている。刈取部駆動軸725の他端部には、プーリ725bが取り付けられて該プーリ721bにベルトb7が掛けられている。これにより、刈取部駆動軸725は、無段変速装置111からの動力を刈取部2に伝達することを可能としている。このため、刈取部2による刈取速度をコンバイン100の走行速度に同調させることができる。
【0040】
選別部駆動軸726は、第二中間軸724に対して平行となるように回転自在に支持されている。選別部駆動軸726の一端部には、入力ギヤ726aが取り付けられて該入力ギヤ726aと第一入力軸721に設けられた出力ギヤ721cが歯合されている。選別部駆動軸726の他端部には、プーリ726bが取り付けられて該プーリ726bにベルトb8が掛けられている。これにより、選別部駆動軸726は、エンジン71の動力を選別部4に伝達することを可能としている。
【0041】
また、選別部駆動軸726の中途部には、高速ギヤ726h及び標準ギヤ726sが設けられている。高速ギヤ726hは、第二中間軸724に設けられた高速ギヤ724hと歯合され、標準ギヤ726sは、第二中間軸724に設けられた標準ギヤ724sと歯合されている。これにより、選別部駆動軸726は、高速ギヤ726h又は標準ギヤ726sを介して第二中間軸724を回転させ、エンジン71の動力を刈取部2に伝達することも可能としている。
【0042】
更に、選別部駆動軸726の中途部には、遊星歯車機構729が設けられている。遊星歯車機構729のアウターギヤ729aは、第二中間軸724に設けられた出力ギヤ724bと歯合され、遊星歯車機構729のインナーギヤ729bは、キャリア729cに支持されたプラネタリギヤ729dと歯合されている。
【0043】
第三中間軸727は、選別部駆動軸726に対して平行となるように回転自在に支持されている。第三中間軸727の中途部には、入力ギヤ727aが回転自在に支持されている。入力ギヤ727aは、遊星歯車機構729を構成するキャリア729cに設けられた出力ギヤ729eと歯合されている。入力ギヤ727aは、クラッチを構成するスライダが摺動し、係合することによって第三中間軸727と連結される。
【0044】
フィードチェーン駆動軸728は、第三中間軸727に対して平行となるように回転自在に支持されている。フィードチェーン駆動軸728の中途部には、入力スプロケット728aが設けられている。入力スプロケット728aには、第三中間軸727に設けられた出力スプロケット727bのチェーン727cが掛けられている。これにより、フィードチェーン駆動軸728は、エンジン71の動力と無段変速装置111からの動力をフィードチェーン31に伝達することを可能としている。このため、フィードチェーン31による搬送速度をコンバイン100の走行速度に同調させることができる。
【0045】
次に、操縦部8の操作パネル82に設けられたダイヤルスイッチ821及び手扱スイッチ822について詳細に説明する。なお、本実施形態において、ダイヤルスイッチ821及び手扱スイッチ822は、運転席81の側方(サイドコラム)に配置されている。しかし、例えばハンドルコラムに設けることも可能であり、その位置について限定するものではない。
【0046】
図5Aは、コンバイン100の操縦部8を示す図である。図5Bは、操作パネル82に設けられたダイヤルスイッチ821及び手扱スイッチ822を示す図である。図5A、図5Bに示すように、コンバイン100の操縦部8には、ダイヤルスイッチ821や手扱スイッチ822等の複数の操作具が配置されている。
【0047】
ダイヤルスイッチ821は、刈取クラッチCL1及び脱穀クラッチCL2がエンジン71の動力を伝達するか遮断するかを選択できる。つまり、ダイヤルスイッチ821を回動操作して入位置に設定した場合は(図6A中白塗り矢印参照)、刈取クラッチCL1及び脱穀クラッチCL2がエンジン71の動力を伝達する。ダイヤルスイッチ821を回動操作して切位置に設定した場合は(図6A中黒塗り矢印参照)、刈取クラッチCL1及び脱穀クラッチCL2がエンジン71の動力を遮断する。なお、ダイヤルスイッチ821は、入位置又は切位置まで回動された場合に回動された状態で維持するように構成されている。更に、ダイヤルスイッチ821は、入位置に設定された状態で押動操作されると切位置まで回動するように構成されている。
【0048】
ここで、オペレータがダイヤルスイッチ821を回動操作して入位置に設定した場合を想定する(図6A中白塗り矢印参照)。なお、図7に示す白塗りの矢印は、エンジン71の動力の伝達方向を示している。図7に示す黒塗りの矢印は、無段変速装置111からの動力の伝達方向を示している。また、図7に示す破線の矢印は、エンジン71の動力と無段変速装置111からの動力を合成して得られた動力の伝達方向を示している。
【0049】
ダイヤルスイッチ821が入位置に設定された場合、脱穀クラッチCL2がベルトb3に張力を掛けるため、エンジン71の動力は、カウンタケース72に入力される。具体的に説明すると、エンジン71の動力は、ベルトb3を介してカウンタケース72の第一入力軸721に伝達され、該第一入力軸721を回転させる。これにより、脱穀部3を構成する扱胴32が駆動されて穀稈を脱穀することが可能となる。
【0050】
また、エンジン71の動力は、第一入力軸721を介して選別部駆動軸726に伝達され、該選別部駆動軸726を回転させる。これにより、選別部4が駆動されて穀粒と藁屑等を選別することが可能となる。
【0051】
一方、無段変速装置111からの動力は、ベルトb5を介してカウンタケース72の第二入力軸722に伝達され、該第二入力軸722を回転させる。第二入力軸722の回転は、高速ギヤ722h・723h又は標準ギヤ722s・723sを介して第一中間軸723に伝達され、該第一中間軸723及び第二中間軸724を回転させる。第二中間軸724の回転は、各ギヤ724a・725aを介して刈取部駆動軸725に伝達され、該刈取部駆動軸725を回転させる。これにより、刈取部2が駆動されて穀稈を刈取ることが可能となる。
【0052】
また、選別部駆動軸726の回転と第二中間軸724の回転によって決定されるキャリア729cの回転は、各ギヤ729e・727aを介して第三中間軸727に伝達され、該第三中間軸727を回転させる。第三中間軸727の回転は、チェーン727cを介してフィードチェーン駆動軸728に伝達され、該フィードチェーン駆動軸728を回転させる。これにより、フィードチェーン31が駆動されて穀稈を搬送することが可能となる。
【0053】
次に、オペレータがダイヤルスイッチ821を回動操作して切位置に設定した場合を想定する(図6A中黒塗り矢印参照)。なお、図8に示す白塗りの矢印は、エンジン71の動力の伝達方向を示している。図8に示す黒塗りの矢印は、無段変速装置111からの動力の伝達方向を示している。
【0054】
ダイヤルスイッチ821が切位置に設定された場合、脱穀クラッチCL2がベルトb3に掛けていた張力を弛緩するため、エンジン71の動力は、カウンタケース72に入力されない。具体的に説明すると、エンジン71の動力は、ベルトb3を介してカウンタケース72の第一入力軸721に伝達されず、該第一入力軸721を回転させることができない。これにより、脱穀部3を構成する扱胴32の駆動を停止させることが可能となる。
【0055】
また、エンジン71の動力は、選別部駆動軸726にも伝達されないため、該選別部駆動軸726を回転させることができない。これにより、選別部4の駆動を停止させることが可能となる。
【0056】
一方、無段変速装置111からの動力は、ベルトb5を介してカウンタケース72の第二入力軸722に伝達され、該第二入力軸722を回転させる。しかし、刈取クラッチCL1が中立位置に切り替わっているため、第二入力軸722の回転は、高速ギヤ722h・723h又は標準ギヤ722s・723sを介して第一中間軸723に伝達されず、該第一中間軸723及び第二中間軸724を回転させることができない。これにより、刈取部2の駆動を停止させることが可能となる。
【0057】
また、選別部駆動軸726が回転せず、第二中間軸724も回転しないため、第三中間軸727やフィードチェーン駆動軸728も回転させることができない。これにより、フィードチェーン31の駆動を停止させることが可能となる。
【0058】
次に、ダイヤルスイッチ821が入位置に設定されている状態において、オペレータがダイヤルスイッチ821を押動操作した場合を想定する(図6B中白塗り矢印参照)。ダイヤルスイッチ821は、入位置に設定されている状態で押動操作された場合、スプリングの付勢力によって切位置まで回動することを特徴としている(図6B中黒塗り矢印参照)。このため、コンバイン100の制御態様は、オペレータがダイヤルスイッチ821を回動操作して切位置に設定した場合(図6A中黒塗り矢印参照)と同様となる。
【0059】
このような構成により、刈取部2及び脱穀部3の駆動又は停止をダイヤルスイッチ821の回動操作によって選択することができる。これにより、脱穀部3のみの駆動を選択することができないため、オペレータの不注意による誤操作を低減することが可能となる。更に、ダイヤルスイッチ821の押動操作のみで刈取部2及び脱穀部3を停止させることができる。これにより、刈取部2及び脱穀部3を素早く停止させるための操作性を向上させることが可能となる。
【0060】
手扱スイッチ822は、脱穀クラッチCL2のみがエンジン71の動力を伝達するように設定できる。つまり、手扱スイッチ822を押動操作して入位置に設定した場合は、刈取クラッチCL1が無段変速装置111からの動力を遮断し、脱穀クラッチCL2がエンジン71の動力を伝達する。なお、手扱スイッチ822は、入位置に設定された状態でランプが点灯し、オペレータが運転状態を容易に認識できるように構成することも可能である。
【0061】
ここで、ダイヤルスイッチ821が切位置に設定されている状態において、オペレータが手扱スイッチ822を押動操作して入位置に設定した場合を想定する(図6B中白塗り矢印参照)。なお、図9に示す白塗りの矢印は、エンジン71の動力の伝達方向を示している。図9に示す黒塗りの矢印は、無段変速装置111からの動力の伝達方向を示している。
【0062】
手扱スイッチ822が入位置に設定された場合、脱穀クラッチCL2がベルトb3に張力を掛けるため、エンジン71の動力は、カウンタケース72に入力される。具体的に説明すると、エンジン71の動力は、ベルトb3を介してカウンタケース72の第一入力軸721に伝達され、該第一入力軸721を回転させる。これにより、脱穀部3を構成する扱胴32が駆動されて穀稈を脱穀することが可能となる。
【0063】
また、エンジン71の動力は、第一入力軸721を介して選別部駆動軸726に伝達され、該選別部駆動軸726を回転させる。これにより、選別部4が駆動されて穀粒と藁屑等を選別することが可能となる。
【0064】
一方、無段変速装置111からの動力は、ベルトb5を介してカウンタケース72の第二入力軸722に伝達され、該第二入力軸722を回転させる。しかし、刈取クラッチCL1が中立位置で維持するため、第二入力軸722の回転は、高速ギヤ722h・723h又は標準ギヤ722s・723sを介して第一中間軸723に伝達されず、該第一中間軸723及び第二中間軸724を回転させることができない。これにより、刈取部2の停止状態を維持させることが可能となる。
【0065】
また、選別部駆動軸726の回転によって決定されるキャリア729cの回転は、各ギヤ729e・727aを介して第三中間軸727に伝達され、該第三中間軸727を回転させる。第三中間軸727の回転は、チェーン727cを介してフィードチェーン駆動軸728に伝達され、該フィードチェーン駆動軸728を回転させる。これにより、フィードチェーン31が駆動されて穀稈を搬送することが可能となる。
【0066】
次に、ダイヤルスイッチ821が入位置に設定されている状態において、オペレータが手扱スイッチ822を押動操作して入位置に設定した場合を想定する(図6B中白塗り矢印参照)。この場合、脱穀クラッチCL2はベルトb3に張力を掛けた状態で維持し、刈取クラッチCL1は中立位置に切り替わる。このため、コンバイン100の制御態様は、ダイヤルスイッチ821が切位置に設定されている状態において、オペレータが手扱スイッチ822を押動操作して入位置に設定した場合と同様となる。
【0067】
このような構成により、刈取部2及び脱穀部3が停止しているときでも手扱スイッチ822の操作によって脱穀部3を駆動させることができる。また、刈取部2及び脱穀部3が駆動しているときでも手扱スイッチ822の操作によって刈取部2を停止させることができる。これにより、脱穀部3のみの駆動を指示することができるため、オペレータの不注意による誤操作を低減することが可能となる。また、手扱ぎ作業を行なうための操作性を向上させることが可能となる。
【0068】
また、本コンバイン100においては、ダイヤルスイッチ821が回動操作又は押動操作された場合、該ダイヤルスイッチ821の回動操作又は押動操作の前にされた手扱スイッチ822の押動操作が無効となることを特徴としている。
【0069】
このような構成により、脱穀部3のみが駆動しているときでもダイヤルスイッチ821の回動操作のみで刈取部2及び脱穀部3を駆動又は停止させることができる。これにより、刈取部2及び脱穀部3の操作方法を単純化することができるため、オペレータの不注意による誤操作を低減することが可能となる。更に、ダイヤルスイッチ821の押動操作のみで脱穀部3を停止させることができる。これにより、脱穀部3を素早く停止させるための操作性を向上させることが可能となる。
【0070】
なお、図10に示すように、ダイヤルスイッチ821を入位置から更に回動させた場合に、刈取部2の駆動を停止させる構成としても良い。このような構成により、例えば条合わせを行なう時に刈取部2を停止させることができるため、誤って意図しない条の穀稈を刈取ることを防止できる。なお、このような場合においても、ダイヤルスイッチ821が押動操作された場合、脱穀部3の駆動を停止させることが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
100 コンバイン
1 走行部
2 刈取部
3 脱穀部
4 選別部
5 穀粒貯溜部
6 排藁処理部
7 動力部
8 操縦部
11 トランスミッション
12 クローラ式走行装置
71 エンジン
72 カウンタケース
111 無段変速装置
721 第一入力軸
722 第二入力軸
723 第一中間軸
724 第二中間軸
725 刈取部駆動軸
726 選別部駆動軸
727 第三中間軸
728 フィードチェーン駆動軸
729 遊星歯車機構
821 ダイヤルスイッチ
822 手扱スイッチ
CL1 刈取クラッチ
CL2 脱穀クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの動力によって駆動されて穀稈を刈取る刈取部と、
前記エンジンの動力によって駆動されて刈取られた穀稈の脱穀を行なう脱穀部と、を備えるコンバインにおいて、
前記エンジンの動力を前記刈取部に伝達又は遮断する刈取クラッチと、
前記エンジンの動力を前記脱穀部に伝達又は遮断する脱穀クラッチと、
前記刈取クラッチ及び前記脱穀クラッチが前記エンジンの動力を伝達するか遮断するかを選択できるダイヤルスイッチと、を具備し、
前記ダイヤルスイッチは、回動操作によって前記エンジンの動力を伝達する入位置と前記エンジンの動力を遮断する切位置とに切り替え可能とし、入位置に設定されている状態においても押動操作によって前記エンジンの動力を遮断する、ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
押動操作によって前記刈取クラッチが前記エンジンの動力を遮断するとともに、前記脱穀クラッチが前記エンジンの動力を伝達するように指示する手扱スイッチを具備する、ことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記ダイヤルスイッチが回動操作又は押動操作された場合は、該ダイヤルスイッチの回動操作又は押動操作の前にされた前記手扱スイッチの押動操作を無効とする、ことを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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