説明

コンバイン

【課題】前処理部の穀稈搬送装置を逆転する際に、爪付きチェーンを有する穂先搬送体が逆転しないように配置するワンウェイクラッチへの、アクセス性を向上して、メンテナンスを容易とする。
【解決手段】右穂先搬送体の駆動軸S7の先端部をカバーの上方に突出するように配置し、該駆動軸S7の突出部分にワンウェイクラッチ56を配置して、カバーの外方からワンウェイクラッチ56を脱着し得る。該ワンウェイクラッチ56の出力側に爪クラッチ59,60を着脱可能に装着し、該爪クラッチ59,60を介して上記ワンウェイクラッチ56から駆動スプロケット37に動力伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈を刈取って脱穀するコンバインに係り、詳しくは、刈取った穀稈を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインは機体の前方側に、刈刃、引起装置、及び各種の搬送装置によって構成される前処理部が配設されており、上記搬送装置による穀稈の搬送の過程で藁詰まりが生じた場合には、搬送装置を逆転駆動させて、藁詰まりを解消させる。搬送装置の逆転駆動の際に、スプロケットに爪付きチェーンが巻き掛けられて構成される搬送装置は爪が破損する虞があり、該スプロケットが軸支される駆動軸とスプロケットの間に一方向の回転動力のみを伝達するワンウェイクラッチを装着し、爪付きチェーンには動力が伝達されないように構成されたコンバインが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−172282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のものは、ワンウェイクラッチが駆動軸とスプロケットの間に取付けられているが、ワンウェイクラッチのメンテナンスの際には、爪付きチェーンを収納したカバー、爪付きチェーン、及びスプロケットを取外すといった作業が必要であり、メンテナンス性が良くないという問題がある。
【0005】
また、所要トルクをキープする為にはワンウェイクラッチを大きくする必要があるが、既存のスプロケットの径にはそのような大きなクラッチを取付けることができず、たとえスプロケットの径を大きくしてワンウェイクラッチを取付けたとしても、ワンウェイクラッチが爪付きチェーンの爪と当たって、爪が起立してしまう又は破損してしまうという虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、作業者がアクセスしやすいように、かつ爪付きチェーンの爪と当たらないようにワンウェイクラッチを配置し、もって上述した課題を解決したコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、駆動軸(S7)と、該駆動軸(S7)に回転自在に遊嵌される駆動スプロケット(37)と、該駆動スプロケット(37)に巻き掛けられる爪付きチェーン(35)と、前記駆動軸(S7)と前記駆動スプロケット(37)との間に介在するワンウェイクラッチ(56)と、前記駆動スプロケット(37)及び前記爪付きチェーン(35)を収納したカバー(41)と、を有し、刈取られた穀稈を起立した状態の前記爪付きチェーン(35)で搬送する穀稈搬送装置(33B)を備えてなるコンバインにおいて、
前記駆動軸(S7)の先端部を前記カバー(41)の上方に突出するように配置し、該駆動軸(S7)の突出部分に前記ワンウェイクラッチ(56)を配置してなる、ことを特徴とする。
【0008】
例えば図6を参照して、前記ワンウェイクラッチ(56)の出力側に、互いに噛合する上爪クラッチ(59)及び下爪クラッチ(60)が装着されて、該上爪クラッチ(59)は下爪クラッチ(60)に対して着脱可能に構成され、前記上爪クラッチ(59)及び下爪クラッチ(60)を介して前記ワンウェイクラッチ(56)から前記駆動スプロケット(37)に動力伝達されてなる。
【0009】
前記下爪クラッチ(60)は、前記駆動スプロケットとの間に縮径状の凹部(60b)を有してなる。
【0010】
例えば図4を参照して、前記ワンウェイクラッチ(56)の上方に、刈取られた穀稈の穂先側を案内する穂先ガイド板(46)を着脱自在に設けてなる。
【0011】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によると、搬送装置の駆動軸の先端部が該搬送装置のカバーの上方に突出し、該突出部分にワンウェイクラッチが配置されるので、作業者がワンウェイクラッチへのアクセスが良く、メンテナンス性を向上することができ、かつワンウェイクラッチと爪付きチェーンの爪が干渉することはない。
【0013】
請求項2に係る本発明によると、ワンウェイクラッチの出力側に上爪クラッチが下爪クラッチに対して着脱可能に装着されるので、ワンウェイクラッチが破損した際には上爪クラッチを外してワンウェイクラッチを取替えることが容易であり、メンテナンス性を向上することができる。
【0014】
請求項3に係る本発明によると、下爪クラッチは、駆動スプロケットとの間に縮径状の凹部を有するので、爪付きチェーンの起伏自在の爪が、下爪クラッチと当たって爪が起立することはない。これにより、爪付きチェーンの爪が、爪付きチェーンを収納したカバー内に穀稈を持ち込むことがないので、カバー内に穀稈の侵入が少なくなり、チェーン外れ及び爪の異常摩耗がなくなり、搬送装置の耐久性を向上することができる。
【0015】
請求項4に係る本発明によると、ワンウェイクラッチの上方に穂先ガイド板を着脱自在に設けたので、穂先ガイド板を外すことでワンウェイクラッチに上方から容易にアクセスすることができ、メンテナンス性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用し得るコンバインを示す側面図。
【図2】その平面図。
【図3】本発明を適用したコンバインの前処理部を示す側面図。
【図4】穀稈を搬送する穀稈搬送装置の後部を示す斜視図。
【図5】穀稈の穂先を搬送する穂先搬送体を示す斜視図。
【図6】穂先搬送体の駆動軸に配置されるワンウェイクラッチ部を示す断面図。
【図7】ワンウェイクラッチ部の分解斜視図。
【図8】本発明を適用した前処理部の伝動展開図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。コンバイン1は、図1及び図2に示すように、クローラにより支持される走行機体2を有しており、該走行機体2の前方には穀稈の刈取りと搬送を行う前処理部3が配置されている。上記走行機体2は、その一側(左側)に、刈取った穀稈から穀粒を脱穀する脱穀部5が配置され、他側(右側)に、運転操作部6及びエンジンが配置されており、その後方に脱穀された穀粒を一時貯蔵するグレンタンク7及び該グレンタンク7内の穀粒を機外へ排出する排出オーガ9が配置されている。
【0018】
上記前処理部3は、図3に示すように、エンジンからの動力を上記前処理部3に伝達する横筒10を回動中心として走行機体2に昇降自在に支持されており、該横筒10内の駆動軸S1(図8参照)の左端が横筒10の左外方に突出されて、該突出部Pにラチェットレンチ等の工具を嵌めて手動で逆転駆動できるように構成されている。上記前処理部3は、該前処理部前部に設けられて穀稈を分草するデバイダ11と、該デバイダ11の後方で分草された穀稈を引起こす引起装置12と、穀稈を刈取るレシプロ式の刈刃13と、引起こされた穀稈の株元側を掻き込む株元掻込装置15と、上記刈刃13によって刈取られた穀稈を後方に搬送して上記脱穀部5のフィードチェーン16に受け渡す穀稈搬送装置17と、から構成されている。また、前処理部3の両側面には、それぞれ保守・整備のために簡単に着脱することを可能としたサイドカバー19が配設されている。
【0019】
上記前処理部3にエンジンからの動力を伝達する上記横筒10は、機体左右幅方向に延設され、該横筒10からは、縦伝動筒20が前方斜め下方に向けて延出される。該縦伝動筒20の下端は、上記前処理部3の略々全幅に亘って左右に延設された下部伝動筒21に接続されており、該下部伝動筒21は、その両端にブラケット22を介して前処理部前方を囲むようにして延びる前処理フレーム23が取付けられている。該前処理フレーム23の前部には、圃場の穀稈を刈取り条ごとに分ける複数のデバイダ11……が幅方向所定間隔に固定されており、前処理フレーム23の下面には、上記刈刃13が配置され、該刈刃13により上記引起装置12で引起こされた穀稈の株元を切断し、穀稈の刈取りを行う。
【0020】
上記下部伝動筒21の左端近傍からは、中間伝動筒25が前方斜め上方に向けて延出され、該中間伝動筒25の上端は、圃場の穀稈の状況に応じて上記引起装置12の引起し速度を変速する引起変速装置26を介して、走行機体幅方向に延設される上部伝動筒27に接続されている。該上部伝動筒27からは、前方に向けて複数の引起伝動筒29が突設しており、該引起伝動筒29の前方に穀稈を起立させる引起装置12が配置される。該引起装置12は、爪付きチェーン(不図示)と引起ケース12aとを有し、該爪付きチェーンの爪が引起ケース12a内を上方に回動して穀稈を引起こす。
【0021】
上記引起装置12によって引起こされた穀稈は、上記株元掻込装置15によって後方に掻込まれて集束される。該株元掻込装置15は、上記引起装置12によって引起こされた穀稈の株元を掻込む掻込ベルト30と、該掻込ベルト30によって掻込まれた穀稈を集束するスターホイール31とから構成されており、これら掻込ベルト30及びスターホイール31は、それぞれ刈取り条数に応じた数(本実施形態においては6つ)だけ設けられている。該スターホイール31(機体左側から31A,31a,31C,31c,31b,31B)は、樹脂からなる略々星型形状であり、スターホイール31と掻込ベルト30とは同軸上に設けられ、同期して回転するように構成されている。
【0022】
上記穀稈搬送装置17は、スターホイール31から後送された穀稈の株元側を搬送する左右及び中央の主株元搬送体32A,32B,32Cと、その穂先側を搬送する左右及び中央の穂先搬送体33A,33B,33Cと、これらによって後方に搬送されて合流した穀稈の株元側を搬送する後方株元搬送体35と、穀稈の扱ぎ深さを調節する扱深搬送体36と、から構成されている。これらは、機体進行方向左側の穀稈を左主株元搬送体32A及び左穂先搬送体33Aが、右側の穀稈を右主株元搬送体32B及び右穂先搬送体33Bが、中央の穀稈を中央主株元搬送体32C及び中央穂先搬送体33Cが、それぞれ後方に搬送し、上記扱深搬送体36によって穀稈の挟持位置が変更されつつ、これらの穀稈を上記右穂先搬送体33B及び後方株元搬送体35が受け取って、上記フィードチェーン16へと受け渡される。
【0023】
上記右穂先搬送体33Bは、図4,図5,図6,図8に示すように、駆動軸S7に回転自在に遊嵌される駆動スプロケット37、従動スプロケット39、これら駆動スプロケット37と従動スプロケットに巻き掛けられる爪付きチェーン40、上記駆動スプロケット37及び従動スプロケット39を収納したカバー41、該カバー41の上方に配置されるワンウェイクラッチ部42、を備える。該右穂先搬送体33Bは、前方から搬送された穀稈を上記脱穀部5に向けて、穀稈の穂先側を上記爪付きチェーン40とガイドレール43との間で挟持しながら後上方に搬送する。上記右穂先搬送体33Bの上方には、前処理部3の上記運転操作部6近傍に取付けられたブラケット45を介して、搬送される穀稈の穂先を案内するプレート状の穂先ガイド板46が着脱自在に設けられている。該穂先ガイド板46の後部には、ゴム等の弾性部材からなる脱穀入口ゴム板47が固定され、該脱穀入口ゴム板47は、上記脱穀部5の穀稈が流入する前部入口まで延設されて、上記フィードチェーン16によって運ばれる穀稈を案内する。
【0024】
上記ワンウェイクラッチ部42は、図5ないし図7に示すように、駆動軸S7の先端部が上記カバー41を貫通して上方に突出し、該駆動軸S7の突出部分の上端近傍にCリング49及びライナ50によって上端が位置決めされたジョイント51を装着し、更に、該ジョイント51に、Cリング52及びスラストライナ53によって上端を位置決めして、メタル55,ワンウェイクラッチ56,及びメタル57が上方から順に装着されている。該ワンウェイクラッチ56は、アウターレースとインナーレースとの間にリテーナに支持させて多数のロック部材(スプラグ、ローラ、又はスプリング等)を配し、一方向のみの回転において該ロック部材を介してアウターレースとインナーレースとが係合し、トルクを伝達する。
【0025】
上記メタル55,ワンウェイクラッチ56,及びメタル57は、互いに外径が揃うように構成されており、これらの外径側(出力側)には、互いに噛合する上爪クラッチ59及び下爪クラッチ60が装着されて、該上爪クラッチ59は下爪クラッチ60に対して着脱可能に構成されている。これら上爪クラッチ59及び下爪クラッチ60は、下方側の上記メタル57の外径側において噛み合う構成となっており、上爪クラッチ59を取外すことによって、上記ワンウェイクラッチ56の全部が露出し、該ワンウェイクラッチ56のメンテナンスが容易になっている。上記下爪クラッチ60は、上記上爪クラッチ59と噛み合う大径部60aと、該大径部60a下部から縮径し、Cリング61及びメタル62によって上下が位置決めされたブッシュ63を介して、駆動軸S7に装着されている小径部(縮径状の凹部)60bと、を有する。該大径部60aと、小径部60bの下端に接続される上記駆動スプロケット37との間には、下爪クラッチ60が縮径されたことによって凹状の空間Sが形成されており、該空間Sにおいて、上記駆動スプロケット37に巻き掛けられる爪付きチェーン40の爪40aが通過し、該爪40aと、上記下爪クラッチ60の大径部60a又は小径部60bとが干渉することはない。
【0026】
なお、上述したワンウェイクラッチ部42は、上記右穂先搬送体33Bのみではなく、左穂先搬送体33A及び中央穂先搬送体33Cにも同様の構成で備えられており、駆動軸の一方向のみの回転をこれら左穂先搬送体33A、中央穂先搬送体33Cに伝達する。上記左穂先搬送体33A、中央穂先搬送体33Cに設けられるワンウェイクラッチ部は、上記ワンウェイクラッチ部42と同様の構成及び作用効果を奏するので、右穂先搬送体33Bのワンウェイクラッチ部42のみを説明して、他は省略する。
【0027】
次に、本実施の形態に係るコンバイン1の動力伝達について説明する。コンバイン1は、走行機体2にエンジンEを搭載しており、該エンジンEの動力は、図8に示すように、脱穀クラッチ65を介して搬送HST66に伝達され、ギヤ変速装置67を介して、上記フィードチェーン16に伝達されると共に、入力プーリ69aに入力される。該入力プーリ69aに入力された動力は、ベルト69bに配置されたテンションクラッチである刈取クラッチ70を介して、出力プーリ69cから上記横筒10内の駆動軸S1に伝達され、該駆動軸S1から上記縦伝動筒20内の駆動軸S2に伝達されている。該駆動軸S2からの動力は、下部伝動筒21内の駆動軸S3に伝達されると共に、中間伝動筒25及び上部伝動筒27内の駆動軸S4,S5を介して、引起伝動筒29内の駆動軸S6へと伝達される。
【0028】
また、上記縦伝動筒20内の駆動軸S2の中途部からは、複数の副伝動軸が分岐しており、これらの副伝動軸に設けられた複数の駆動スプロケット37,71,72,73,75,76によって、上述した右穂先搬送体33B、後方株元搬送体35、右主株元搬送体32B、扱深搬送体36、中央主株元搬送体32C、中央穂先搬送体33Cを駆動させている。該右穂先搬送体33Bの駆動軸S7の動力は、上記ワンウェイクラッチ部42において、上記ジョイント51を介して上記ワンウェイクラッチ56に伝達され、一方向のみの回転動力が、上記ワンウェイクラッチ56の出力側に装着される上爪クラッチ59及び下爪クラッチ60を介してスプロケット37に伝達される(図6参照)。駆動軸S7が逆転駆動される場合には、上記ワンウェイクラッチ56から上爪クラッチ59に駆動力は伝わらず、上記スプロケット37は回転しない。
【0029】
更に、下部伝動筒21内の駆動軸S3からの動力は、上記前処理フレーム23に取付けられた刈刃13に伝達され、上記中間伝動筒25内の駆動軸S4から分岐した副伝動軸S8には駆動スプロケット77,79が設けられており、左主株元搬送体32A、左穂先搬送体33Aに動力を伝達している。上記中間伝動筒25に設けられた引起変速装置26内には複数の変速ギヤが設けられ、これらの噛合によって変速された動力が上部伝動筒27内の駆動軸S5に伝達される。なお、上記引起変速装置26は、変速ギヤを噛合させずに、引起装置12へ動力が伝達しないように設定することもできる。上記駆動軸S5から上記上部伝動筒27内の駆動軸S6に伝達された動力は、複数の(本実施の形態においては4個)引起伝動筒29内の駆動軸S6を介して、上記引起装置12の駆動スプロケット80に伝達されている。
【0030】
上述した左主株元搬送体32A及び右主株元搬送体32Bの従動スプロケット81,82は、それぞれ機体左右端に設けられたスターホイール31A,31Bの取付軸S9,S10に固設されており、これら取付軸S9,S10に動力を伝達して駆動側のスターホイール31A,31Bを回転させる。該スターホイール31Aの回転は、まず取付軸S11に取付けられる従動側のスターホイール31aに、次に取付軸S12に取付けられる中央のスターホイール31Cに、互いに噛み合うことで伝達され、上記取付軸S12には、中央主株元搬送体32Cの従動スプロケット83が遊嵌されている。更に、上記スターホイール31Cの回転は、中央のスターホイール31Cと対となる、取付軸S13に取付けられるスターホイール31cに伝達される。他方、上記右端のスターホイール31Bの回転は、取付軸S14に取付けられる従動側のスターホイール31bに伝達される。上記取付軸S9,S10,S11,S12,S13,S14の動力は、各駆動軸の同軸上にそれぞれ設けられた掻込ベルト30……を駆動させている。
【0031】
次に、本実施形態に係るコンバイン1の作用について説明する。作業者は、コンバイン1を走行させて、圃場の穀稈を刈取りつつ脱穀して収穫作業を進めていく。コンバイン1が圃場を走行すると、前処理部3のデバイダ11によって穀稈が分草されると共に、引起装置12によって分草された穀稈が引起こされて直立する。該引起こされた穀稈は、掻込ベルト30によって掻込まれると共に、スターホイール31によって集束され、その過程において刈刃13によって刈取られる。
【0032】
刈取られた穀稈は、前処理部3の左右及び中央に配置される株元搬送体32A,32B,32Cによって株元側が、穂先搬送体33A,33B,33Cによって穂先側が後方に搬送される。後方に搬送された穀稈は、扱深搬送体36によって自動的に適正な扱ぎ深さに調整された後、右穂先搬送体33B及び後方株元搬送体35によってフィードチェーン16へと受け渡されて、脱穀部5に運ばれる。
【0033】
上記穀稈搬送装置17における穀稈の搬送において、藁詰まりが発生した場合には、刈取クラッチ70及び引起変速装置26によって、駆動軸S5,S6及び入力プーリ69aよりエンジン側に動力伝達が行われないように設定する。その上で、上記横筒10から外方に突出した逆転駆動用の突出部Pを、ラチェットレンチ等によって手動で逆転させ、駆動軸S1,S2,S3,S4及びこれらに接続される副駆動軸が逆転駆動し、詰まった藁をほぐして取り除きやすくする。穂先側を搬送する上記穂先搬送体33A,33B,33Cは爪付きチェーンを有し、該爪付きチェーンは逆転駆動出来る構造となっておらず、無理に逆転させると破損や異常摩耗の原因となるので、ワンウェイクラッチ部42を備えることで、穂先搬送体33A,33B,33Cが逆転しないようになっている。
【0034】
また、上記ワンウェイクラッチ部42は、穂先搬送体33のカバー41の上方に突出しアクセスが良く、負荷が特にかかる上記ワンウェイクラッチ56が破損した際には、着脱自在の上記穂先ガイド板46及び脱穀入口ゴム板47を取り外して、上記ワンウェイクラッチ部42の上爪クラッチ59を外して、簡単にワンウェイクラッチ56にアクセスできるため、ワンウェイクラッチ56の取替え等のメンテナンスが容易である。更に、下爪クラッチ60の大径部60aと、小径部60bの下端に接続される上記駆動スプロケット37との間に設けられた凹状の空間Sを爪付きチェーン40の爪40aが通過することで、爪付きチェーンの爪40aと、上記下爪クラッチ60が干渉して爪が起立することはない。これによって、該爪40aが、爪付きチェーン40を収納したカバー41内に穀稈を持ち込むことがないので、カバー41内に穀稈の侵入が少なくなり、チェーン外れ及び爪の異常摩耗がなくなり、穂先搬送体33の耐久性を向上することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 コンバイン
3 前処理部
33B 穂先搬送体
35 爪付きチェーン
37 駆動スプロケット
41 カバー
42 ワンウェイクラッチ部
46 穂先ガイド板
56 ワンウェイクラッチ
59 上爪クラッチ
60 下爪クラッチ
60b 小径部
S7 駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸と、該駆動軸に回転自在に遊嵌される駆動スプロケットと、該駆動スプロケットに巻き掛けられる爪付きチェーンと、前記駆動軸と前記駆動スプロケットとの間に介在するワンウェイクラッチと、前記駆動スプロケット及び前記爪付きチェーンを収納したカバーと、を有し、刈取られた穀稈を起立した状態の前記爪付きチェーンで搬送する穀稈搬送装置を備えてなるコンバインにおいて、
前記駆動軸の先端部を前記カバーの上方に突出するように配置し、該駆動軸の突出部分に前記ワンウェイクラッチを配置してなる、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記ワンウェイクラッチの出力側に、互いに噛合する上爪クラッチ及び下爪クラッチが装着されて、該上爪クラッチは下爪クラッチに対して着脱可能に構成され、前記上爪クラッチ及び下爪クラッチを介して前記ワンウェイクラッチから前記駆動スプロケットに動力伝達されてなる、
請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記下爪クラッチは、前記駆動スプロケットとの間に縮径状の凹部を有してなる、
請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記ワンウェイクラッチの上方に、刈取られた穀稈の穂先側を案内する穂先ガイド板を着脱自在に設けてなる、
請求項1ないし3のいずれか記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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