説明

コンバーゼンス補正装置

【目的】 樹脂製ケースとコンバーゼンス補正コイルを完全に断絶してノイズすなわち唸り音の発生を殆ど完全に防止することができるコンバーゼンス補正装置を提供すること。
【構成】 ドラムコア11aに巻回された制御コイル11と、該制御コイルの両側に配置されそれぞれドラムコア14a,14b,15a,15bに巻回された2分割被制御コイル12a、12b、13a、13bからなるコンバーゼンス補正コイルを同一のケース18内に接着剤たとえばシリコン系ボンド20により支持した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は3電子銃インライン型カラー陰極線管のコンバーゼンス補正装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、3電子銃インライン型カラー陰極線管において、製造時の各部品の許容誤差等によって種々のミスコンバーゼンスが生じるため、偏向ヨークの水平偏向磁界を糸巻型磁界とし、また垂直偏向磁界をバレル型磁界としてミスコンバーゼンスを減少させている。
【0003】しかしながら、偏向磁界の制御、調整だけではミスコンバーゼンスを除去することは非常に難しいため、偏向ヨークの水平偏向コイルおよび垂直偏向コイルにダイナミックコンバーゼンス補正コイル(以下ドラムコイルと略称する)をそれぞれ接続し、偏向ヨークのインピーダンスを制御することによりミスコンバーゼンスの発生を抑えている。これをコンバーゼンス補正装置または可飽和リアクターと称している。
【0004】図2は従来のコンバーゼンス補正装置の概略構成を示す平面図である。図3は図2のII−II線上断面図である。図4は図2の III−III 線上断面図である。
【0005】図2に示す従来のコンバーゼンス補正装置は、全体がほぼ円筒状で上下二つ割り形成品の樹脂製ケース8の中に収納されている。樹脂製ケース8の内側はその長手方向に中央部と、その両側に対称に配置された側部とに区画され、中央部に制御コイル1を配置し、両側部に一対の被制御コイル(インピーダンスコイル)2および3を配置している。被制御コイル部2、3はそれぞれ被制御コイル部2a、2bおよび被制御コイル部3a、3bに2分割されている。制御コイル1はドラム型コア1aに巻回され、被制御コイル部2a、2bは制御コイル1の左側に平行に配置された一対のドラム型コア4a、4bに巻回され、被制御コイル3a、3bは制御コイル1の右側に平行に配置された一対のドラム型コア5a、5bに巻回されている。これらのドラム型コア1a、4a、4b、5a、5bはそれぞれ両端につば部を備えている。各対のドラム型コア4a、4b並びにドラム型コア5a、5bの外側のつば部外表面には厚み方向に着磁されたマグネット6、7がそれぞれ取付けられ、被制御コイル2および3に磁気バイアスを付与している。
【0006】このように、制御コイル1、被制御コイル2および3、及びこれらのドラム型コア1a、4a、4b、5a、5b、マグネット6、7は一まとめにして樹脂製ケース8の中に収納されている。そのため樹脂製ケース8はそれぞれの内面に上記諸部材が嵌まって位置決めされるための扇形の突起10、10aが突出形成されている。樹脂製ケース8の内面には一体に成形された上記扇形の突起10に横方向に突出形成された三角形断面のリブ9が形成されている。従来はこのリブ9によりを成形品の樹脂製ケース8に収めドラムコイルを安定保持していた。
【0007】コンバーゼンス補正装置の制御コイル1が偏向ヨークの一対の垂直偏向コイルと直列に接続されて垂直偏向電流が供給される。また、非制御コイル2、3の中の非制御コイル2は偏向ヨークの上部に取り付けられた一方の水平偏向コイルと直列に接続され、他方の非制御コイル3は偏向ヨークの下部に配置された他方の水平偏向コイルと直列に接続されて、それぞれ水平偏向電流が供給される。このようにして、3電子銃インライン型カラー陰極線管におけるミスコンバーゼンスを減少させることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来はドラムコイルを成形品の樹脂製ケース8に収める場合は、この成形品の形状を工夫してドラムコイルをその中に安定保持していた。たとえば上述したように、扇形の突起10、10aと三角形断面のリブ9は樹脂製ケース8に形成されたものである。ドラムコイルは完全に樹脂製ケース8と隔絶されず、樹脂製ケース8に形成されたリブ9と接触している。そのため、偏向電流がコンバーゼンス補正装置に流れた場合、ドラムコイルが振動して樹脂製ケース8を叩き、ノイズすなわち唸り音を発生する。なお、唸り音の発生源は樹脂製ケース8とコンバーゼンス補正コイルの間の関係であることを発明者が確認した。
【0009】本発明は上述の点にかんがみてなされたもので、樹脂製ケースとドラムコイルを完全に断絶してノイズすなわち唸り音の発生を殆ど完全に防止することができるコンバーゼンス補正装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明はドラムコアに巻回された制御コイルと、該制御コイルの両側に配置されそれぞれドラムコアに巻回された2分割被制御コイルからなるコンバーゼンス補正コイル(すなわちドラムコイル)を同一のケース内に接着剤たとえばシリコン系ボンドにより支持したことを特徴とする。
【0011】
【作用】ドラムコイルが接着剤により樹脂製ケースに安定保持されるので、樹脂製ケースとドラムコイルが接触することがなく、コンバーゼンス補正装置に偏向電流が流れても、ドラムコイルの振動が樹脂製ケースに伝わらない。そのため唸り音やノイズは殆ど発生しない。
【0012】
【実施例】本発明を図面に基づいて説明する。
【0013】図1は本発明のコンバーゼンス補正装置の概略構成を示す平面図である。
【0014】本発明のコンバーゼンス補正装置は、中央に制御コイル11を配置し、その両側に一対の被制御コイル(インピーダンスコイル)12および13を配置している。これらの制御コイル11、被制御コイル12および被制御コイル13がコンバーゼンス補正コイルすなわちドラムコイルを構成する。制御コイル11はドラム型コア11aに巻回されている。被制御コイル12および13はそれぞれ被制御コイル12a、12bおよび被制御コイル部13a、13bに2分割され、被制御コイル12a、12bは制御コイル11の左側に平行に配置された一対のドラム型コア14a、14bに巻回され、被制御コイル13a、13bは制御コイル11の右側に平行に配置された一対のドラム型コア15a、15bに巻回されている。
【0015】制御コイル11は偏向ヨークの一対の垂直偏向コイルと直列に接続されて垂直偏向電流が供給される。被制御コイル12、13の中の被制御コイル12は偏向ヨークの上部に取り付けられた一方の水平偏向コイルと直列に接続され、他方の被制御コイル13は偏向ヨークの下部に配置された他方の水平偏向コイルと直列に接続されて、それぞれ水平偏向電流が供給される。
【0016】各対のドラム型コア14a、14bとドラム型コア15a、15bの外側のつば部外表面には厚み方向に着磁されたマグネット16、17が取付けられ、被制御コイル12および13に磁気バイアスを付与している。
【0017】それぞれのドラム型コアに巻回された制御コイル11と2分割被制御コイル12、13がコンバーゼンス補正コイルすなわちドラムコイルを構成する。このドラムコイルは同一の樹脂製ケース18内に収容され、その中で接着剤20たとえばシリコン系ボンドにより支持され、且つ図1(b)に明示するように、樹脂製ケース18に形成されたツメ22によりマグネット16、17がそれぞれ押されている。また、マグネット16とドラム型コア14a、14bとの間およびマグネット17とドラムコア14aとの間にギャップ21が配置されている。ギャップとはポリエステルフィルムである。このギャップ21はマグネット16、17とドラム型コア14a、14b、15a、15bとのミューを調整するためのものであり、温度ドリフトに対する影響を低減し、コイルのインダクタンスを安定させることができる。
【0018】よって、コア11aが振動しても、ツメ22とコア11aの間にはコア14a、14b、ギャップ21、マグネット16あるいはコア15a、15b、ギャップ21、マグネット17が配置されているので、コア11aから樹脂製ケース18へ振動が伝わりにくい構造となっている。接着剤20は硬化時に一定以上の硬度にならないものであれば使用可能である。
【0019】上記構成の本発明のコンバーゼンス補正装置に偏向電流を流すとき、ドラム型コア14a、14bおよびドラム型コア15a、15bとドラム型コア11aはたとえ振動して互いに衝突しても、その影響はシリコン系ボンド20にさえぎられて樹脂製ケース18に到達しない。このため、唸り音を発生しない。たとえ、発生しても低減される。
【0020】
【発明の効果】上述のように、本発明のコンバーゼンス補正装置においては、ドラムコイルが樹脂製ケースの中で接着剤により支持されているので、ドラムコイルが安定的に固定されると同時にノイズや唸り音の発生が極力防止されるという優れた効果が得られる。実験によれば、接着剤の種類やドラムコアの振動周期により異なるが従来技術に比較して唸り音は1/5〜1/10程度に低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコンバーゼンス補正装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】従来のコンバーゼンス補正装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】図2のII−II線上断面図である。
【図4】図2の III−III 線上断面図である。
【符号の説明】
1 制御コイル
1a コア被制御コイル
2 被制御コイル
2a 被制御コイル部
2b 被制御コイル部
3 被制御コイル
3a 被制御コイル部
3b 被制御コイル部
4a ドラム型コア
4b ドラム型コア
5a ドラム型コア
5b ドラム型コア
6 マグネット
7 マグネット
9 リブ
10 突起
11 コイル
11a コア
12 被制御コイル
12a 被制御コイル部
12b 被制御コイル部
13 被制御コイル
13a 被制御コイル部
13b 被制御コイル部
14a ドラム型コア
14b ドラム型コア
15a ドラム型コア
15b ドラム型コア
16 マグネット
17 マグネット
18 ケース
20 接着剤またはシリコン系ボンド
21 ギャップ
22 ツメ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ドラムコアに巻回された制御コイルと、該制御コイルの両側に配置されそれぞれドラムコアに巻回された2分割被制御コイルからなるコンバーゼンス補正コイルを同一のケース内に接着剤により支持したことを特徴とするコンバーゼンス補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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