説明

コンベヤチェーン

【課題】ローラの回転不良を抑制すると共に、ブシュとローラ間の摩耗寿命の向上を図ったコンベヤチェーンを提供することにある。
【解決手段】ブシュ110は、両端部に内リンクプレート120の厚みよりも若干長い肉薄の段部110aを有し、段部110aの先端部が外リンクプレート150側に突出するように段部110aが内リンクプレート120に穿孔されたブシュ孔120aに圧入されることにより、内リンクプレート120と外リンクプレート150の間に若干の隙間Aを形成し、且つ、ローラ130の内周面とブシュ110の外周面との間隔を、同サイズ標準設定平均隙間の2倍以上の平均隙間に設定したことにより、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に使用されるコンベヤチェーンに関し、さらに詳しくは、溶鉱炉から排出される溶融スラグや、溶融スラグに加圧水を噴射するなどして急激に冷却することによって得られる水砕スラグを搬送する溶融・水砕スラグ搬送用コンベヤチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
銑鉄を製造する高炉で溶融された鉄鉱石の鉄以外の成分は、副原料の石灰石やコークス中の灰分と一緒にスラグとして分離回収される。このスラグを搬送するコンベヤチェーンとして、例えば、図3及び図4に示したようなローラチェーン300が汎用されている。ここで、図3(a)は、内部構造を明示するために一部を切断して示した平面図を示し、図3(b)は、その側面図を示し、図4は、その主要部断面図を示している。
【0003】
このローラチェーン300は、2本のブシュ310の両端が、一対の内リンクプレート320に穿孔されたブシュ孔320aにそれぞれ圧入され、前記ブシュ310の外側に回転可能なローラ330を有する内リンクILと、隣接した前記内リンクILの前記ブシュ310内に遊貫された2本の連結ピン340の両端が、前記一対の内リンクプレート320の両外側に配置された一対の外リンクプレート350に穿孔されたピン孔350aにそれぞれ圧入された外リンクOLとを有し、前記内リンクILと前記外リンクOLが前記連結ピン340により交互に屈曲可能に連結された構造をしている。なお、符号360で示した部材は、連結ピン340の抜けを防止するためのTピンである。また、符号370で示した孔は、スラグ搬送用のアタッチメントを取り付けるビス孔を示している。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10ー250818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述したようなローラチェーンを溶融・水砕スラグ搬送用コンベヤチェーンとして使用した場合、内リンクプレート320と外リンクプレート350との僅かな隙間に、スラグの微粉末が侵入し、内リンクILと外リンクOLとの屈曲が不良になるという課題が指摘されている。また、ブシュ310の外周面とローラ330の内周面との間に、スラグの微粉末が侵入し、ローラの円滑な回転が阻害されるばかりでなく、ブシュ310の外周面及びローラ330の内周面に付着したスラグ微粉末によって、ブシュ310とローラ330の摺接面が摩耗したり、腐食が発生するという課題が指摘されている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、前述したような従来のコンベヤチェーンが抱えていた問題点を解消し、ローラの回転不良を抑制すると共に、ブシュとローラ間の摩耗寿命の向上を図ったコンベヤチェーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、2本のブシュの両端が、一対の内リンクプレートに穿孔されたブシュ孔にそれぞれ圧入され、前記ブシュの外側に回転可能なローラを有する内リンクと、隣接した前記内リンクの前記ブシュ内に遊貫された2本の連結ピンの両端が、前記一対の内リンクプレートの両外側に配置された一対の外リンクプレートに穿孔されたピン孔にそれぞれ圧入された外リンクとを有し、前記内リンクと前記外リンクが前記連結ピンにより交互に屈曲可能に連結されたコンベヤチェーンにおいて、前記ブシュは、両端部に前記内リンクプレートの厚みよりも若干長い肉薄の段部を有し、該段部の先端部が外リンクプレート側に突出するように前記段部が前記内リンクプレートに穿孔された前記ブシュ孔に圧入されることにより、前記内リンクプレートと前記外リンクプレートの間に若干の隙間が形成されており、前記ローラの内周面と前記ブシュの外周面との間隔を、同サイズ標準設定平均隙間の略2倍の平均隙間に設定したことによって、上述した課題を解決するものである。
【0007】
ここで、同サイズ標準設定平均隙間とは、チェーンのサイズ毎に標準値として設定されたブシュとローラ間の平均クリアランスを意味しており、例えば、10トンサイズのチェーンでは0.73mm、12トンサイズのチェーンでは0.74mm、17トンサイズ及び26トンサイズのチェーンでは0.85mmである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明は、2本のブシュの両端が、一対の内リンクプレートに穿孔されたブシュ孔にそれぞれ圧入され、前記ブシュの外側に回転可能なローラを有する内リンクと、隣接した前記内リンクの前記ブシュ内に遊貫された2本の連結ピンの両端が、前記一対の内リンクプレートの両外側に配置された一対の外リンクプレートに穿孔されたピン孔にそれぞれ圧入された外リンクとを有し、前記内リンクと前記外リンクが前記連結ピンにより交互に屈曲可能に連結されたコンベヤチェーンであって、前記ブシュは、両端部に前記内リンクプレートの厚みよりも若干長い肉薄の段部を有し、該段部の先端部が外リンクプレート側に突出するように前記段部が前記内リンクプレートに穿孔された前記ブシュ孔に圧入されることにより、前記内リンクプレートと前記外リンクプレートの間に若干の隙間が形成され、内リンクプレートと外リンクプレートとの間に侵入したスラグの滞留を抑え、固着によるチェーンの屈曲不良が抑制される。
【0009】
また、ブシュが段付きブシュであることによって、内リンクプレートとブシュの接合が強固になると共に、ブシュの外径が大きくなることで、従来のものよりローラの許容できる負荷を上げることができ、チェーンの耐久性が向上する。また、内リンクプレートとブシュの嵌合部外径に対して、ブシュとローラの摺動部径が大きくなることにより、ローラの回転抵抗が抑えられ、接触面積の増加による耐面圧増加と肉厚の増加による摩耗代増加の相乗効果によって耐摩耗性が向上する。
【0010】
さらに、ローラの内周面とブシュの外周面との間隔を、同サイズ標準設定平均隙間の略2倍の平均隙間に設定した構成をしていることによって、ローラとブシュ間に侵入したスラグを排出させ易くし、スラグの固着による回転不良が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を実施例に基づき、図1及び図2を用いて説明する。
【0012】
図1(a)は、内部構造を明示するために一部を切断して示した平面図を示し、図2(b)は、その側面図を示し、図2は、その主要部断面図を示している。
【0013】
このローラチェーン100は、連結ピン間のピッチが200mm、ローラの外径が80mm、内リンクプレートの高さが50.8mm、内リンクプレートの内幅が49.4mmである17トンサイズのものを示しており、2本のブシュ110の両端が、一対の内リンクプレート120に穿孔されたブシュ孔120aにそれぞれ圧入され、前記ブシュ110の外側に回転可能なローラ130を有する内リンクILと、隣接した前記内リンクILの前記ブシュ110内に遊貫された2本のピン140の両端が、前記一対の内リンクプレート120の両外側に配置された一対の外リンクプレート150に穿孔されたピン孔150aにそれぞれ圧入された外リンクOLとを有し、前記内リンクILと前記外リンクOLが前記ピン140により交互に屈曲可能に連結された構造をしている。なお、符号160で示した部材は、ピン140の抜けを防止するためのTピンである。また、符号170で示した孔は、スラグ搬送用のアタッチメントを取り付けるビス孔を示している。
【0014】
前記ブシュ110は、両端部に前記内リンクプレート120の厚みよりも若干長い肉薄の段部110aを有し、この段部110aの先端部が外リンクプレート150側に突出するように前記段部110aが前記内リンクプレート120に穿孔された前記ブシュ孔120aに圧入されている。このように、段部110aの先端部が外リンクプレート150側に突出していることによって、内リンクプレート120と外リンクプレート150の間に若干の隙間Aが形成され、リンク同士の接触が回避され、リンク間に侵入した例えばスラグのような搬送物の滞留が抑制され、スラグの固着によるチェーンの屈曲不良が軽減される。
【0015】
また、前記ローラ130の内周面と前記ブシュ110の外周面との間隔Bを、同サイズ標準設定平均隙間の略2倍の平均隙間に設定している。具体的には、10トンサイズのチェーンでは、標準設定平均隙間の2.10倍に相当する1.53mm、12トンサイズのチェーンでは、標準設定平均隙間の2.08倍に相当する1.54mm、17トンサイズ及び26トンサイズのチェーンでは、標準設定平均隙間の2.06倍に相当する1.75mmであるが、これらの違いは、寸法設定上の公差が影響しているためであって、略2倍の平均隙間であれば、特にこれに限定されるものではない。
【0016】
このように、ローラ130の内周面と前記ブシュ110の外周面との間隔Bを大きくすることにより、ローラ130とブシュ110間に侵入したスラグの排出が容易になりローラの回転不良が軽減される。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、特殊な製造設備や高価な材料を用いることなく製造でき、しかも、ローラとブシュ間及び外リンクプレートと内リンクプレート間のクリアランスを調整するという簡単な方法でコンベヤチェーンの長寿命化と円滑な屈曲運動を実現できるため、産業上の利用可能性は、きわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例であるコンベヤチェーンと上面図(a)と側面図(b)である。
【図2】図1に示したコンベヤチェーンの要部拡大断面図である。
【図3】従来例であるコンベヤチェーンと上面図(a)と側面図(b)である。
【図4】図3に示したコンベヤチェーンの要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0019】
100、300 ・・・ コンベヤチェーン
110、310 ・・・ ブシュ
110a ・・・ 段部
120、320 ・・・ 内リンクプレート
120a、320a ・・・ ブシュ孔
130、330 ・・・ ローラ
140、340 ・・・ 連結ピン
150、350 ・・・ 外リンクプレート
160、360 ・・・ Tピン
170、370 ・・・ ビス孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のブシュの両端が、一対の内リンクプレートに穿孔されたブシュ孔にそれぞれ圧入され、前記ブシュの外側に回転可能なローラを有する内リンクと、隣接した前記内リンクの前記ブシュ内に遊貫された2本の連結ピンの両端が、前記一対の内リンクプレートの両外側に配置された一対の外リンクプレートに穿孔されたピン孔にそれぞれ圧入された外リンクとを有し、前記内リンクと前記外リンクが前記連結ピンにより交互に屈曲可能に連結されたコンベヤチェーンにおいて、
前記ブシュは、両端部に前記内リンクプレートの厚みよりも若干長い肉薄の段部を有し、該段部の先端部が外リンクプレート側に突出するように前記段部が前記内リンクプレートに穿孔された前記ブシュ孔に圧入されることにより、前記内リンクプレートと前記外リンクプレートの間に若干の隙間が形成されており、
前記ローラの内周面と前記ブシュの外周面との間隔を、同サイズ標準設定平均隙間の略2倍の平均隙間に設定したこと
を特徴とするコンベヤチェーン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate