説明

コンベヤチェーン

【課題】コンベヤチェーンを構成する部品点数を少なくすると共に、組立、分解、ボールの取り外し等を容易に行なうことができるコンベヤチェーンを提供すること。
【解決手段】物品を載荷する物品載荷部111を有するチェーンリンク110が相互に隣接して連結ピンで無端状に連結されてなるコンベヤチェーン100において、前記物品載荷部111の一方側縁に配置されたヒンジ部113間には、ボール抱持用内周面115aを有するU字状切欠部115が形成され、該U字状切欠部115に対向して隣接するチェーンリンク110のヒンジ部112と前記U字状切欠部115との間に挿入されたフリーボール130がボール抱持用内周面115aとストッパー140により回動可能に係止され、該フリーボール130の上下部分が物品載荷部111の表面及びリンク部114の下端からそれぞれ突出しているコンベヤチェーン100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱状、板状等底面が平面な物品を載荷して搬送するのに適したコンベヤチェーンに関するものであって、特に、多数のフリーボールの上下部分がコンベヤチェーンの上面及び下端からそれぞれ回転自在に突出しているコンベヤチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
物品を載荷して搬送するコンベヤチェーンの一種であるコンベヤベルトとして、該コンベヤベルトを構成するベルトモジュールに回転自在なボールを設けて、搬送途上において物品を捌いてベルトの横側方に滑動して排出するようにしたコンベヤベルトが知られている(特開2003−182829号公報)。
【0003】
上記コンベヤベルトは、物品を載荷するベルトモジュールが第1部材と第2部材とを上下に重ねて合体したもので、第1部材と第2部材とにそれぞれ形成されているヒンジ部を合わせてベルトモジュールのヒンジ部を形成し、このベルトモジュールを複数個連結ピンで連結してなるものである。このベルトモジュールは回転自在なボールを備え、コンベヤベルトで搬送している物品をベルト上で滑動させて横側方に排出できるようにしたものである。第1部材、第2部材にはそれぞれ開口部が形成され、第1部材と第2部材とを合体したときにボール受け部が形成され、ボールはこのボール受け部に回動可能に保持される。
【特許文献1】特開2003−182829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンベヤチェーンの一種である従来のコンベヤベルトは、ベルトモジュールが第1部材と第2部材とを合体してボールを挟む構造であるため、部品点数が多くなる、という問題があり、また1つのボールを取り出す場合でも、連結ピンを抜いた上で合体しているベルトモジュールを分割する必要がありその作業に手間がかかる、という問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、前述したような従来技術の問題点を解決し、コンベヤチェーンを構成するチェーンリンクの物品載荷部を1つの部材で形成し、回動可能なフリーボールの保持を隣接するチェーンリンク間に形成されたフリーボール収容部とストッパーとで行なうようにして部品点数を少なくすると共に、組立、分解、ボールの取り外し等を容易に行なうことができるコンベヤチェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本請求項1に係る発明は、物品を載荷する物品載荷部と該物品載荷部の両側縁に一体形成された複数のヒンジ部と前記物品載荷部の裏面に一体形成されたリンク部とを有するチェーンリンクが相互に隣接して連結ピンで無端状に連結されてなるコンベヤチェーンにおいて、前記物品載荷部の一方側縁に配置されたヒンジ部間には、ボール抱持用内周面を有するU字状切欠部が形成され、該U字状切欠部に対向して隣接するチェーンリンクのヒンジ部と前記U字状切欠部との間に挿入されたフリーボールがボール抱持用内周面とストッパーにより回動可能に係止され、該フリーボールの上下部分が物品載荷部の表面及びリンク部の下端からそれぞれ突出していることにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上述したような構成を備えることによって、以下のような特有の効果を奏することができる。
すなわち、コンベヤチェーンを構成するチェーンリンクの物品載荷部が1つの部材で形成されているので、チェーンリンクの部品点数を少なくすることができる。また、物品載荷部の一方側縁に配置されたヒンジ部間には、ボール抱持用内周面を有するU字状切欠部が形成され、該U字状切欠部に対向して隣接するチェーンリンクのヒンジ部と前記U字状切欠部との間に挿入されたフリーボールが前記ボール抱持用内周面とストッパーにより回動可能に係止されているので、フリーボールを抜け出せないように回転保持することができ、フリーボールを取り外す場合でも、ピン抜け止め、連結ピン及びストッパーを抜き出すだけで取り外し可能となり、コンベヤチェーンの組立、分解を容易に行なうことができ、部品点数も少なくすることができる。さらに、フリーボールと隣接するチェーンリンクのヒンジ部との間にストッパーが介在し、隣接するチェーンリンクのヒンジ部はフリーボールと接触しないので、逆運転時のチェーンリンクのヒンジ部の摩耗を抑えてコンベヤチェーンの寿命を長くすることができる。
【0008】
また、コンベヤチェーンに設けられているフリーボールの上下部分が物品載荷部表面及びリンク部下端からそれぞれ突出しているので、コンベヤチェーン上に載置した箱状、板状等の物品をフリーボールの自由回転により滑動移動させたり、方向転換させたりすることができ、その結果、搬送途上の両サイドへの物品を容易に排出することができる。また、コンベヤチェーンの下面側にガイドプレートを設置して突出しているフリーボールの下部が当たるようにした場合、コンベヤチェーンの走行に伴ってフリーボールが進行方向に回転されるので、ガイドプレート設置部分で物品をチェーン速度よりも速く搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施例を図1〜図7に基づいて説明する。図1はコンベヤチェーンの一部を表面側からみた斜視図、図2はチェーンリンクを表面(搬送面)側からみた斜視図、図3はコンベヤチェーンの一部を裏面側からみた斜視図、図4はチェーンリンクを裏面側からみた斜視図、図5はチェーンリンクの展開図であり、(A)は搬送面側平面図、(B)は図(A)の矢印X方向正面図、(C)は裏面側平面図、(D)は図(C)の矢印Y方向正面図、図6はコンベヤチェーンを構成するチェーンリンクの配列状態の一例を示す説明図、図7はコンベヤチェーンの作動状態を示す説明図である。
【0010】
図1、図3に示すように、コンベヤチェーン100は、概略、物品Wが上面に載荷される物品載荷部111を有する複数個のチェーンリンク110と、チェーンリンク110の連結部近傍に設けられた複数個の自由に回転するフリーボール130と、ストッパー140と、連結ピン120、ピン抜け止め150とで構成される。
【0011】
図2、図4に示すように、チェーンリンク110は、物品載荷部111の前後両側縁に複数のヒンジ部112、113を有すると共に、物品載荷部111の下面に形成されたリンク部114を有し、物品載荷部111の一方側縁に形成されたヒンジ部113、113間には、ボール抱持用内周面115aを有するU字状の切欠部115が形成されている。そして、図1に示すように、コンベヤチェーン100はチェーンリンク110が複数個隣接して連結ピン120で無端状に連結され、この連結部近傍にU字状切欠部115とこのU字状切欠部115に対向して隣接するチェーンリンク110のヒンジ部112とでフリーボール収容部Rが形成され、このフリーボール収容部Rにフリーボール130とストッパー140が挿入され、ボール抱持用内周面115aとストッパー140によりフリーボール130は回動可能に係止される。
【0012】
また、物品載荷部111の下面に形成されたリンク部114には、コンベヤチェーン100を駆動させるスプロケットと噛み合うスプロケット噛み合い部Sが設けられている。本実施例では、コンベヤチェーン100の進行方向と直交する方向にも多数のスプロケット噛み合い部Sを配置するように、全てのリンク部114にスプロケット噛み合い部Sを設け、スプロケットの数やスプロケットの間隔を異にしても対応できるように汎用性をもたせているが、全てのリンク部114にスプロケット噛み合い部Sを設けずに、使用するスプロケットの数や配置に応じて適宜間隔をあけて設けてもよい。
【0013】
なお、図1、図3において、連結ピン120を全長の一部しか示していないが、チェーンリンク110と略々同じ長さのもので、チェーンリンク110両端の溝116間に丁度収まる長さであり、この溝116にピン抜け止め150を嵌着して連結ピン120の抜けを防止する。また、コンベヤチェーン110は、図6に示すように、長いチェーンリンク110と短い(長さが半分)チェーンリンク110aとを使用してレンガ積み状に組み合わせて広幅になるように組み立ててもよい。
【0014】
図5(A)〜(D)に示すように、ボール抱持用内周面115aは湾曲状であって、挿入されたフリーボール130の一部を抱持してチェーン搬送面や裏面側に飛び出さないようにしている。なお、ボール抱持用内周面115aの形状は、上記湾曲状に限らず、フリーボール130の一部を抱持して抜け止め機能を有するものであればどのような形状でもよい。また、ボール抱持用内周面115aに摩耗粉や塵の排出溝を設けてもよい。
【0015】
図1、図3に示すように、ストッパー140は、上面141及び下面142を平坦としたブロックであって、フリーボール収容部Rに挿入したときにチェーン搬送面及び裏面から突出しない高さを有し、フリーボール130との当接面143はフリーボール130の一部を抱持するような湾曲状に形成され、左右の側面144はボール抱持用内周面115aに嵌合する凸湾曲状とし、隣接するチェーンリンク110のヒンジ部112との対向面145も凸湾曲状としたものであり、フリーボール収容部Rに挿入されたフリーボール130をボール抱持用内周面115aと当接面143とで回動可能に係止するようにフリーボール収容部Rに挿入される。なお、ストッパー140は前記の形状に限らず、フリーボール収容部Rに挿入したフリーボール130を回転可能に係止できる機能を有するものであればどのような形状でもよい。
【0016】
フリーボール130のフリーボール収容部Rでの保持は、ボール抱持用内周面115aによりフリーボール130の片側が支持され、反対側がストッパー140の当接面143の湾曲面により抱持されてフリーボール130は抜け出せないように保持される。この場合、全てのヒンジ部113、113間にフリーボール収容部Rを形成する必要はなく、とびとびに適宜間隔をあけてフリーボール収容部Rを形成し、フリーボール130を適宜数に調整して設けてもよい。
【0017】
図7に示すように、フリーボール収容部Rに挿入されたフリーボール130は、その上下部分が物品載荷部111の表面及びリンク部114の下端からそれぞれ突出している。したがって、コンベヤチェーン100は、フリーボール130の上下部分がコンベヤチェーン100の表面及び下端面から突出した状態で進行する。その際、進行方向は正逆いずれでもよい。
【0018】
以上、コンベヤチェーン100の構造を説明したが、チェーンリンク110、110a、連結ピン120、ピン抜け止め150、ストッパー140、フリーボール130は、エンジニアリングプラスチック製の方が軽量で使い勝手もよいが、これらは、プラスチック製、金属製のいずれでも構わない。
【0019】
上記構成からなるコンベヤチェーン100の作用効果は次のとおりである。コンベヤチェーン100は、スプロケット(図示略)間に掛け渡されてチェーンリンク110のリンク部114のスプロケット噛み合い部Sにスプロケット歯(図示略)が入ってヒンジ部113に当接、噛合して走行する。この場合、コンベヤチェーン100にフリーボール130を設けないで使用している従来のコンベヤチェーンと同じサイズのチェーンリンクとすることが可能なので、スプロケットとしては、従来からコンベヤチェーンに使用していたスプロケットをそのまま使用することができる。
【0020】
コンベヤチェーン100に設けられているフリーボール130の上部分が物品載荷部111表面から突出しているので、コンベヤチェーン100上に載置した箱状、板状等下面が平面な物品をフリーボール130の自由回転により滑動させることが可能となり、その結果、搬送途上においてどの方向への物品排出も容易に行なうことができ、方向転換も容易に行なうことができる。
【0021】
図7に示すように、コンベヤチェーン100の下面側にガイドプレート160を適宜に設置して、リンク部114の下端から突出しているフリーボール130の下部が当たるようにした場合、コンベヤチェーン100の走行に伴ってフリーボール130が進行方向に回転されるので、ガイドプレート160の設置部分で物品をチェーン速度にフリーボール130の周速が付加された速度(倍速)で搬送することができる。なお、図7では、矢印で示すように、コンベヤチェーン100は、フリーボール130の後方がストッパー140となるように進行させているが(正運転)、括弧で示した矢印のように、フリーボール130の前方がストッパー140となるように進行させてもよい(逆運転)。このような逆運転時においても、U字状切欠部に対向しているヒンジ部112の端部は、ストッパー140の存在によって、回転しているフリーボール130と接触しないので、ヒンジ部112の摺動摩耗を抑制することができる。
【0022】
また、コンベヤチェーン100を構成するチェーンリンク110の物品載荷部111が1つの部材で形成されているので、チェーンリンク110の部品点数を少なくすることができ、物品載荷部111の両側縁に複数のヒンジ部112、113が形成され、物品載荷部111の一方側縁に形成されたヒンジ部113、113間には、ボール抱持用内周面115aを有するU字状切欠部115が形成され、U字状切欠部115に対向して隣接するチェーンリンク110のヒンジ部112とU字状切欠部115との間に挿入されたフリーボール130がボール抱持用内周面115aとストッパー140により回動可能に係止されているので、フリーボール130を抜け外れないように保持することができ、フリーボール130を取り外す場合でも、連結ピン120とストッパー140を抜き出すだけで取外し可能となり、コンベヤチェーン100の組立、分解を容易に行なうことができ、部品点数も少なくすることができる。さらに、フリーボール130と隣接するチェーンリンク110のヒンジ部113との間にストッパー140が介在し、隣接するチェーンリンク110のヒンジ部113はフリーボール130と接触しないので、逆運転時のチェーンリンク110のヒンジ部113の摩耗を抑えてコンベヤチェーン100の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例を示し、コンベヤチェーンの一部を表面側からみた斜視図。
【図2】同上、チェーンリンクを表面側からみた斜視図。
【図3】同上、コンベヤチェーンの一部を裏面側からみた斜視図。
【図4】同上、チェーンリンクを裏面側からみた斜視図。
【図5】同上、チェーンリンクの展開図であり、(A)は搬送面側平面図、(B)は図(A)の矢印X方向正面図、(C)は裏面側平面図、(D)は図(C)の矢印Y方向正面図。
【図6】同上、コンベヤチェーンを構成するチェーンリンクの配列状態の一例を示す説明図。
【図7】同上、コンベヤチェーンの作動状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0024】
100 コンベヤチェーン
110 チェーンリンク
110a 短いチェーンリンク
111 物品載荷部
112、113 ヒンジ部
114 リンク部
115 U字状切欠部
115a ボール抱持内周面
116 溝
120 連結ピン
130 フリーボール
140 ストッパー
141 上面
142 下面
143 フリーボール当接面
144 側面
145 対向面
150 ピン抜け止め
160 ガイドプレート
R フリーボール収容部
S スプロケット噛み合い部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を載荷する物品載荷部と該物品載荷部の両側縁に一体形成された複数のヒンジ部と前記物品載荷部の裏面に一体形成されたリンク部とを有するチェーンリンクが相互に隣接して連結ピンで無端状に連結されてなるコンベヤチェーンにおいて、
前記物品載荷部の一方側縁に配置されたヒンジ部間には、ボール抱持用内周面を有するU字状切欠部が形成され、該U字状切欠部に対向して隣接するチェーンリンクのヒンジ部と前記U字状切欠部との間に挿入されたフリーボールがボール抱持用内周面とストッパーにより回動可能に係止され、該フリーボールの上下部分が物品載荷部の表面及びリンク部の下端からそれぞれ突出していることを特徴とするコンベヤチェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−69765(P2006−69765A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257438(P2004−257438)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】