説明

コンベヤベルトを潤滑にする方法

本発明は、コンベヤベルトを潤滑にする方法であって、少なくとも0.1重量%の少なくとも1種の遊離脂肪酸と、少なくとも1種の腐食抑制剤とを含有する潤滑剤濃縮物を乾燥潤滑プロセスにおける乾燥潤滑剤として使用する、コンベヤベルトを潤滑にする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤濃縮物を乾燥潤滑プロセスにおける乾燥潤滑剤として使用する、コンベヤベルトを潤滑にする方法に関する。本発明はさらに、乾燥潤滑剤として、特にコンベヤベルトを潤滑にするためのこのような潤滑剤濃縮物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
既知のコンベヤベルト潤滑剤は、固体表面間(例えばガラスと金属、又はプラスチックと金属との)での摺動接触(gliding contact)を確実にする必要がある用途に使用される。これらの用途としては、瓶詰め及び運搬プラントが挙げられ、ベルト上でボトルを問題なく運搬するために、コンベヤベルトに潤滑剤を塗布する。多くの既知のシステムでは、カリベースの軟せっけん等のせっけんが潤滑剤として使用される。
【0003】
せっけんベースの潤滑剤の代わりとして、或る特定のアミン化合物を含む多種多様の合成コンベヤベルト潤滑剤が使用されている。これらの合成潤滑剤は、例えばホスフェートトリエステルを含有する潤滑剤濃縮物を開示する特許文献1に記載されている。この潤滑剤濃縮物は、さらなる成分としてアミン及び酸(塩酸、硝酸若しくはリン酸等の無機酸、又はギ酸、酢酸若しくはオレイン酸等の有機酸であり得る)を含有する。アミンの存在により、各潤滑剤は使用する酸を遊離形態では含有していない。
【0004】
これらのコンベヤベルト潤滑剤は一般的に、濃縮物として与えられる。このような濃縮物の使用濃縮液(又は使用溶液)は通常、摩擦要件及び水の種類に応じて、典型的な希釈率である0.2重量%〜1.0重量%の各濃縮物水溶液を適用することによって調製する。0.1重量%より有意に低い活性潤滑成分の使用濃縮物を有する、このような水溶性ベルト潤滑剤(水溶性の使用溶液)は何年間も問題なく塗布される。このような水溶性の使用溶液は、「湿潤潤滑剤」としても知られている。
【0005】
特許文献2は、容器及び/又は容器用のコンベヤシステムを処理又は潤滑にするために抗菌性の潤滑剤組成物を使用する、湿潤潤滑プロセスに関する。使用する潤滑剤組成物は、潤滑剤と、抗菌的に有効な量の第四ホスホニウム化合物とを含む。潤滑剤は、非中性脂肪酸(オレイン酸であり得る)を含む。
【0006】
特許文献3は、容器及びコンベヤシステムの潤滑用の非水溶性潤滑剤に関し、実質的に非水溶性の潤滑剤には、天然潤滑剤、石油系潤滑剤、合成潤滑油、グリース及び固体潤滑剤が含まれ得る。
【0007】
特許文献4は、脂肪族カルボン酸、例えば長鎖カルボン酸の混合物を0重量%〜50重量%含む、再使用可能なガラスボトルのコーティング用の組成物に関する。しかし、この組成物は、コンベヤベルトを潤滑にするのではなく、ガラスボトルをコーティングするのに使用される。
【0008】
特許文献5は、少なくとも1種の潤滑剤(オレイン酸等)と、少なくとも1種のPETボトル用の保護剤(カルボン酸アルキルエーテル又はその塩等)とを含むコンベヤ潤滑剤組成物に関する。
【0009】
特許文献6は、リン酸エステルと、カルボン酸エーテルと、水と、C〜C22の脂肪酸(オレイン酸等)及び/又はC〜C22の脂肪アルコールとを含む、コンベヤシステム用の潤滑剤組成物に関する。
【0010】
Kao Chemicals GmbH(Emmerich, Germany)は、脂肪酸(約10重量%)を含有し、且つアミンを含まないAKYPO GENE CL 756という商品名の潤滑剤濃縮物を販売している。Kaoはまた、コンベヤベルト潤滑剤の濃度が8%〜11%になるまで濃縮物を希釈して水溶性のエマルションを形成する、湿潤潤滑剤としてこの潤滑剤濃縮物を使用する方法を提案している。この希釈コンベヤベルト潤滑剤を水で0.2%〜0.4%までさらに希釈して(水溶性の使用溶液)、最終的に湿潤潤滑剤としてコンベヤベルト上に塗布する。
【0011】
特許文献7は、有効な潤滑量のアミンと、腐食抑制剤と、界面活性剤とを含有する潤滑剤濃縮組成物に関する。約5〜10の範囲のpH値を得るための中和剤として脂肪酸を当該組成物に添加してもよい。
【0012】
特許文献8は、脂肪酸と、アミノアルコールと、ホスフェートエステルとを含む、金属加工プロセスで使用する潤滑剤組成物に関する。使用する脂肪酸をアミノアルコールで中和し、pHが少なくとも約8の潤滑剤を得るために、有機ホスフェートエステルと錯体形成させる。潤滑剤は、粉末金属部品及び/又は従来の鉄部品及び非鉄金属部品をサイジング、鋳造及び機械加工するのに有用である。
【0013】
特許文献9は、例えば油圧オイル又はコンプレッサオイルに有用な改良型食品グレード潤滑剤に関する。潤滑剤は、少なくとも1種の植物油と、少なくとも1種のポリアルファオレフィンと、少なくとも1種の抗酸化剤とを含む。
【0014】
しかし、上記の(ほとんど水溶性の)潤滑剤は乾燥潤滑プロセスには全く使用されない。これらのほとんどを使用溶液、したがって湿潤潤滑剤として使用し、その中でも油圧オイル等の異なる用途に使用されるもののもある。これらのほとんどが、任意又はさらに必須の成分としてオレイン酸等の脂肪酸を含有し得るが、脂肪酸は、中和剤、アミン、又はpH値を中性若しくはアルカリ性の範囲にする任意の他の成分等のさらなる成分によって、中和形態で通常存在する。
【0015】
また一方で、これらの水溶性の潤滑剤(湿潤潤滑剤)の塗布によって、水の使用率が高く、また使用者にとって廃水コストが相対的に高くなる。さらに、従来の目的で使用される場合、これらの水溶性の潤滑剤が、それで処理されるコンベヤトラックの表面に流れ出て、これにより化学物質及び水が無駄になり、床表面が滑りやすく、周辺環境で働くオペレータにとって危険なものとなる危険性があり、また床及び他の表面にたまるため、クリーニングが必要となる。
【0016】
湿潤潤滑剤を使用することの上述の欠点を克服するために、特許文献10は、いわゆる「乾燥潤滑剤」としてのコンベヤベルトを潤滑にするための液体組成物の使用を開示している。液体組成物は、各コンベヤベルト(その上に(液体として)液体組成物を塗布する)の表面に残り、結果としてこの表面から流れ出ることがない乾燥潤滑剤膜を作製するのに適している。液体は通常水性相(最大95重量%が水)であり、シリコーン油又は植物油、鉱油及びそれらの混合物から成る他の油をさらに含む。植物油は、ダイズ油、ヤシ油、オリーブ油又はヒマワリ油であり得る。
【0017】
このような植物油は、グリセロール1分子から生成される化合物であるトリグリセリド(三価アルコールであるグリセリン)を含有することが知られている。個々の植物油に応じて、異なる脂肪酸がグリセロールに化学結合する。例えば、オリーブ油は、グリセロール骨格に化学結合した2つのオレイン酸ラジカルと、1つのパルミチン酸ラジカルとから成るトリグリセリドを含有する。この植物油は、1つだけ又は2つの脂肪酸ラジカルを有する、モノグリセリド又はジグリセリドを含有してもよい。しかし、この植物油は、有意量では遊離脂肪酸を全く含有していない。化学的組成物に関して最も一般的な植物油の概説は、例えばインターネット上で入手可能なA. Zamoraの論文(www.scientificpsychic.com_fitness_fattyacids)に見ることができる。さらなる情報は、オレイン酸に関する無料のインターネット百科事典ウィキペディア(www.en.wikipedia.org/wiki/oleic_acid)から入手可能である。
【0018】
特許文献11は、コンベヤトラック又はコンベヤベルトを潤滑にする組成物及び方法に関し、潤滑剤組成物は、脂肪酸を少なくとも約25重量%含有する。潤滑プロセスは、任意で乾燥潤滑として行い得る。一実施形態では、脂肪酸は遊離形態で存在し得る。しかし、潤滑剤組成物には、中和剤又はポリアルキレングリコールポリマー等の必須成分の存在が必要である。アミン又はアルカリ金属水酸化物等の中和剤成分を使用するので、各pH値がアルカリ性の範囲まで上昇する。結果として、各潤滑剤濃縮物は脂肪酸を遊離形態では全く含有していない。同様の開示は、特許文献12、特許文献13及び特許文献14に見ることができる。コンベヤベルトを潤滑にする任意の形態として乾燥潤滑プロセスを記載しているこれらの文献では、少なくとも1種の遊離脂肪酸と、少なくとも1種の腐食抑制剤とを含有する潤滑剤濃縮物を乾燥潤滑剤として使用する方法の開示はない。
【0019】
乾燥潤滑方法の1つの主な利点は、潤滑に使用する各液体の量の劇的な低減である。コンベヤベルトの従来の乾燥潤滑では、約1.5ml/時間〜20ml/時間の各潤滑剤をコンベヤベルト上に(乾燥潤滑剤として)塗布するのに対し、湿潤潤滑の場合には、同じコンベヤベルト上に約10l/時間〜30l/時間の水溶液を塗布しなければいけない。コンベヤベルト上で使用する各液体潤滑剤の量は通常、(乾燥潤滑に対して湿潤潤滑で)1000倍〜10000倍異なる。
【0020】
しかし、例えば特許文献15で記載される乾燥潤滑方法は、植物油、特に鉱油を含有する乾燥潤滑剤の使用による幾つかの欠点にも関連し、コンベヤベルト上を運ばれる容器の底面上にいわゆる黒変(blackening)が観察される。この黒変は、特に使用する容器の運搬/再充填の際、又は例えばコンベヤベルト上を運ばれる対象物により生じるガラス若しくは金属の摩擦によって、通常容器表面に付着した汚れによって引き起こされることが多い。さらなるコンベヤベルト上の汚れの元は、ビール又は糖含有飲料等の液体分画であり、これは各(再)充填プロセス中に容器には充填されずに、各容器の外側をコンベヤベルト上へと運ばれる。黒変問題は通常、乾燥潤滑プロセスの場合に起こり、湿潤潤滑プロセス中では起こらない。
【0021】
汚れと植物油又は特に鉱油とのこの混合物をコンベヤベルトから取り除き、黒変を避けるのは困難であるので、全コンベヤベルトシステムを時々止め、さらにクリーニング工程を行う必要がある。特に鉱油を使用する際、油−汚れ混合物は従来の水溶性洗剤組成物では十分に取り除くことができないので、通常、界面活性剤を含有する強アルカリ性の洗剤組成物を使用することでこのクリーニングを行う。使い切った潤滑剤膜を、コンベヤベルトから完全に取り除けなければ、黒変問題は解決しない。また、新しい潤滑剤膜が不完全に形成されると、運ばれる対象物に関して問題が生じる。クリーニングの後、容器の運搬に関して何ら問題なく全システムを作動することができるまで、各コンベヤベルト上に潤滑剤を十分に(再)塗布するのに(いわゆる開始段階に)さらなる時間を費やす必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1690920号
【特許文献2】国際公開第01/23504号
【特許文献3】米国特許第6,288,012号
【特許文献4】米国特許第4,420,578号
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0288191号
【特許文献6】欧州特許出願公開第1840196号
【特許文献7】米国特許第5,723,418号
【特許文献8】米国特許第5,399,274号
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0241309号
【特許文献10】国際公開第01/07544号
【特許文献11】米国特許出願公開第2005/0059564号
【特許文献12】米国特許第6,427,826号
【特許文献13】米国特許第6,673,753号
【特許文献14】米国特許第6,855,676号
【特許文献15】国際公開第01/07544号
【発明の概要】
【0023】
したがって、本発明の目的は、コンベヤベルト用の新規の乾燥潤滑法を提供することである。
【0024】
少なくとも0.1重量%の少なくとも1種の遊離脂肪酸と、少なくとも1種の腐食抑制剤とを含有する潤滑剤濃縮物を乾燥潤滑プロセスにおける乾燥潤滑剤として使用する、コンベヤベルトを潤滑にする方法によって、この目的を達成する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の方法の主な利点は、乾燥潤滑プロセス中に(低摩擦による)優れた潤滑性がコンベヤベルト上に与えられることである。本発明の方法は、運ばれる対象物の種類/品質、又はコンベヤベルトの材料にかかわらず優れた潤滑性を与える。運ばれる対象物は、一部又は完全にガラス、金属、ボール紙又はプラスチック製であり、且つコンベヤベルトは、一部又は完全にスチール又はプラスチック製であり得る。本発明の方法は、例えばステンレスのコンベヤベルト上でのガラスボトルの運搬に優れた潤滑性を与える。これまでのところ、運ばれる対象物とコンベヤベルト自体とのどちらも一部又は完全にプラスチック製ではない場合、コンベヤベルト上で充填、特に再充填する対象物の運搬はかなり複雑なものであった。本発明の方法によって、ステンレスのコンベヤベルト上での使用するガラス製の対象物の運搬のための潤滑性が向上する。
【0026】
また、(さらに潤滑剤を添加することなく)その後の洗浄工程中でかなりの期間、十分な潤滑性が維持される。また黒変を避けるために、コンベヤベルトから汚れを取り除く際、コンベヤベルトの操作を全く又はほんのわずかの期間しか中断しなくてもよいので、これは有益である。油型の乾燥潤滑剤、特に鉱油に対して、本発明の遊離脂肪酸を含有する潤滑剤濃縮物は、特に遊離脂肪酸と、水と、乳化剤とを含有するエマルションとして使用する場合に、又は遊離脂肪酸の有機溶媒溶液として使用する場合に、水との優れた相溶性を示す。
【0027】
本発明の方法の別の利点は、遊離脂肪酸と腐食抑制剤との組合せによって、コンベヤベルト、さらにコンベヤ装置及び/又は運ばれる対象物の腐食を低減することができることである。これは例えば、コンベヤベルトがステンレス製であっても、ブリキ(tin plate)製の対象物がコンベヤベルト上を運ばれる場合に当てはまる。遊離脂肪酸と腐食抑制剤との組合せにはさらに、運ばれる対象物に対する黒変を低減する効果がある。
【0028】
潤滑剤濃縮物が遊離形態で脂肪酸を含有するので、各濃縮物のpH値は通常、酸性範囲であり、好ましくはpH1〜3の範囲である。このことは、当該技術分野の技術水準の潤滑剤濃縮物(又はその各使用溶液)の多くが中性又はアルカリ性範囲であるので有益である。このような潤滑剤濃縮物は通常、中和剤等のさらなる添加剤(アミン又はアルカリ水酸化物)、EDTA等のキレート剤、ポリアルキレングリコール等のポリマー、又は任意でフッ素化し得るシリコーンベースのオイル等の鉱油を含有する。上述の添加剤は欠点にも関連するので、本発明の方法中で使用する潤滑剤濃縮物は、さらなる成分として当該添加剤を含有する必要はない。EDTA等のキレート剤は、コンベヤベルト上での石灰せっけんの形成を防ぐのに使用される。通常、中性からアルカリ性の潤滑条件を使用することによって、コンベヤベルト上で石灰せっけんの形成が起こる。石灰せっけんの形成には、各コンベヤベルト上の潤滑を劇的に低減又はさらには停止させるという負の副作用がある。EDTA等のキレート剤を使用することには、これらが容易には生分解できないという負の副作用がある。遊離脂肪酸、また腐食抑制剤、及び任意で含有される有機酸の存在のために、本発明の潤滑剤濃縮物は、pHスペクトルの酸性範囲にあり、石灰せっけんの形成は起こらない。また、潤滑剤濃縮物のかなり低いpH範囲によって、生物静力学的な効果が誘発され、細菌、及び/又は寄生虫の増殖は起こらない。酢酸等の別の酸を使用すると、各潤滑剤濃縮物のさらなる安定化が得られる。
【0029】
さらなる利点は、少なくとも1種の遊離脂肪酸と腐食抑制剤とを含有する潤滑剤濃縮物を乾燥潤滑剤及び湿潤潤滑剤の両方として使用することができることである。これによって、同じコンベヤベルトシステムで両方法を組合せることが可能になる。例えば、使用するガラス容器の再充填は、幾つかの個々の工程から成り、当該ガラス容器が、コンベヤベルト上をコンベヤベルトに組み込まれた個々のセクションへと流れ、個々の工程(ボトルの洗浄、充填又はラベル付け等)を実施する。したがって、乾燥潤滑剤を使用して個々の工程の幾つかを行い、1つ又は複数の個々の工程中に、湿潤潤滑剤を使用することが可能である。このオプションは例えば、再充填プロセスの終わりに湿潤潤滑を使用することで、当該容器の底面の黒変を防いだり、最小限にすることができる場合、ガラス容器の再充填中の最終パッケージング工程に対して有益である。
【0030】
代替的に、各コンベヤベルトのクリーニングを容易にし、且つ運ばれる対象物の底面の黒変を避けるために、或る特定の期間、湿潤潤滑としてコンベヤベルトの一部又は全体を潤滑にすることができる。このことは、クリーニング工程を行うのに、各コンベヤベルトの操作を全く中断する必要がないことを意味する。代わりに、乾燥潤滑から湿潤潤滑(逆もまた同様)へと潤滑モードを単純に切り替えることで、システム全体の操作を継続することができる。
【0031】
本発明に関連する用語「乾燥潤滑剤」とは、各潤滑剤が、完全若しくは少なくとも実質的にコンベヤベルトの表面に残るように、使用する潤滑剤を各コンベヤベルト上に塗布することを意味する。実質的に残るとは、使用する潤滑剤が10容量%以下しか、各コンベヤベルトから流れ出ないことを意味する。明らかにするために、乾燥潤滑剤自体は通常、液体、例えばエマルション又は溶液として使用することを示している。当該乾燥潤滑剤の塗布に関連するプロセス(方法)は、「乾燥潤滑(プロセス)」と規定する。好ましくは、本発明の乾燥潤滑プロセス内で潤滑剤濃縮物を(通常、大きさが5m〜20m、好ましくは約12mのコンベヤベルトトラック1つ当たり)1.5ml/時間〜20ml/時間、特に約5ml/時間の割合で各コンベヤベルト上に添加する。
【0032】
本発明に関連する用語「湿潤潤滑剤」とは、使用する潤滑剤又は潤滑剤を含有する液体が有意量、各コンベヤベルトの表面から流れ出るように、各潤滑剤をコンベヤベルトの表面に塗布することを意味する。好ましくは、使用する液体量の少なくとも30容量%、より好ましくは少なくとも50容量%、特に少なくとも90容量%が流れ出る。好ましくは、湿潤潤滑プロセス内で潤滑剤を(コンベヤベルトトラック/通常サイズ当たり)1.5l/時間〜20l/時間の割合で各コンベヤベルト上に添加する。
【0033】
本発明に関連する用語「潤滑剤濃縮物」とは、各潤滑剤が、少なくとも0.1重量%の量の1種の遊離脂肪酸、又は2種以上の遊離脂肪酸の混合物と、少なくとも1種の腐食抑制剤とを含有することを意味する。潤滑剤濃縮物は、水又は有機溶媒を含むさらなる成分を含有してもよく、全体で(遊離脂肪酸とさらなる成分との合計が)100重量%になる。
【0034】
本発明に関連する用語「(潤滑剤の)使用溶液」とは、各潤滑剤内に含有される、1種の遊離脂肪酸、又は2種以上の遊離脂肪酸の混合物の量が0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満であることを意味する。通常、各潤滑剤濃縮物を溶媒、好ましくは水で1000倍〜10000倍に希釈することによって、潤滑剤の使用溶液が得られる。
【0035】
以下に、本発明のコンベヤベルトを潤滑にする方法を詳細に説明する。
【0036】
(乾燥潤滑プロセスにおける)乾燥潤滑剤として使用する潤滑剤濃縮物は、第1の成分として少なくとも1種の遊離脂肪酸を含有する。遊離脂肪酸は、当業者に既知の任意の脂肪酸であり得る。好ましくは、遊離脂肪酸は、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸又はリノール酸等のC〜C22−脂肪酸である。脂肪酸は、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸又は多価不飽和脂肪酸であり得る。
【0037】
最も好ましくは、遊離脂肪酸はオレイン酸である。
【0038】
本発明に関連する用語「遊離脂肪酸」は、各脂肪酸の酸性官能基(カルボン酸基)が、各潤滑剤の任意の他の成分によって遮断されないか、又はこれと反応することを意味する。好ましくは、各潤滑剤は、各脂肪酸のカルボン酸基を遮断し得る、及び/又はこれと反応し得る対イオンを全く含有しない。特に、各潤滑剤は、任意のカチオン性イオン又はカルボン酸基の対イオンとして作用し得る他のカチオン成分を実質的に含有しない。また、各潤滑剤濃縮物は、アミンを全く含まないのが好ましい。
【0039】
潤滑剤濃縮物が、使用する遊離脂肪酸の酸性官能基を遮断し得るか、又はこれと反応し得る任意の他の成分を含有する場合、本発明の潤滑剤濃縮物に使用する遊離脂肪酸の量は、少なくとも0.1重量%の濃度の遊離脂肪酸をもたらすレベルまで上昇させる必要がある。組成物(潤滑剤濃縮物等)中に含有される遊離脂肪酸の量を検出する方法は、当該技術分野で既知である。
【0040】
潤滑剤濃縮物は概して、少なくとも0.1重量%の量、好ましくは0.1重量%〜25重量%の量、より好ましくは0.3重量%〜5重量%の量で少なくとも1種の遊離脂肪酸又は2つ以上の遊離脂肪酸の混合物を含有する。
【0041】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種の遊離脂肪酸を0.1重量%〜25重量%、水、好ましくは脱イオン水を5重量%〜95重量%、さらに腐食抑制剤を少なくとも0.1重量%含有する潤滑剤濃縮物を使用する。
【0042】
潤滑剤濃縮物はさらに、第2の成分として、少なくとも1種の腐食抑制剤を含有する。好ましい腐食抑制剤は、リン酸エステル(ホスフェートエステル)であり、これはオレイル−3EO−ホスフェートエステル等の酸化エチレン(EO)由来のフラグメントを含有し得る。
【0043】
概して、ホスフェートエステルは、式OP(OX)(Xは独立して、H又はRであり、Rはアリール基又はアルキル基を表し得る)を有する。好ましくは、ホスフェートエステルは、式(I):
【0044】
【化1】

【0045】
又は式(II):
【0046】
【化2】

【0047】
(Rは任意のアルキル基又はアルキルアリール基であり、nは(互いに独立して)1〜10に等しい値を取り得る)を有する少なくとも1つの化合物である。式(I)又は式(II)内で、Rが2つ以上存在する場合、Rは同じ又は異なる意味を有していてもよい。好ましくは、ホスフェートエステルはNa又はK等のイオンを全く含有しない。例えば、アルキルはC〜C20−アルキルであり、アリールはフェニルであり得る。本発明の一実施形態では、少なくとも1種の式(I/ジエステル)の化合物と、少なくとも1種の式(II/モノエステル)の化合物との混合物を使用する。当該混合物内のジエステルとモノエステルとの比は、1:4〜4:1[重量%/重量%]、好ましくは約1:1[重量%/重量%]である。本発明の好ましい実施形態では、ホスフェートエステルは、少なくとも1種の式(I)のジエステルである。ジエステルは、(副生成物として)各モノエステルを最大10重量%含有し得る。
【0048】
式(I)又は式(II)のホスフェートエステルの好ましい例は、(C16〜C18)−アルキル−O−5EO−ホスフェートエステル(モノエステルとジエステルとの混合物)、(セチル−オレイル)−O−4EO−ホスフェートエステル(モノエステルとジエステルとの混合物)、(C12〜C14)−アルキル−O−4EO−ホスフェートエステル(モノエステルとジエステルとの混合物)、(C13〜C15)−アルキル−O−3EO−ホスフェートエステル、(C13〜C15)−アルキル−O−7EO−ホスフェートエステル、オレイル−O−4EO−ホスフェートエステル(モノエステルとジエステルとの混合物)、ラウリル−O−4EO−ホスフェートエステル及びC17−アルキル−O−6EO−ホスフェートエステル(モノエステルとジエステルとの混合物、好ましくは5.5:4.5の比で)である。当該ホスフェートエステル内での「(C16〜C18)」等の用語は、各アルキル残基がC16〜C18の鎖長で変わり得るか、又は各鎖長の当該アルキル残基を有する混合物を用いることを意味する。同じことが、「(セチル−オレイル)」等の用語に適用される。この好ましいホスフェートエステルは、Phospholan PE 65(Akzo Nobel)、Maphos 54P(BASF)、Maphos 74P(BASF)、Maphos 43T(BASF)、Maphos 47T(BASF)、Lubrhophos LB−400(Rhodia)、Lubrhophos RD−510(Rhodia)及びLakeland PAE 176(Lakeland)の商品名で市販されている。より好ましくは、式(I)又は式(II)のホスフェートエステルは、(C12〜C18)−アルキルフラグメントと、3個〜6個のEOフラグメントとを含有する。
【0049】
本発明で使用する潤滑剤濃縮物内の腐食抑制剤の存在は、抗食性、乳化作用を与える、好ましくは1〜3の範囲までpH値を下げる、また乾燥潤滑プロセス中、黒変を低減するという利点をもたらす。
【0050】
好ましい腐食抑制剤のさらなる種類はアルコキシル化カルボン酸であり、これは、アルキルエーテルカルボン酸としても既知であり、且つ1つ又は複数のエーテル基、或いはその混合物を含有する飽和又は不飽和のカルボン酸である。アルコキシル化は、エトキシル化であるのが好ましく、各エトキシル化化合物が、酸化エチレン由来の1つ又は複数のフラグメント(EOフラグメント)を含有することを意味する。3EOは、各化合物が酸化エチレン由来のフラグメントを3つ含有することを意味する。この定義は、アルコキシル化脂肪アルコール、アルコキシル化エステル、又はアルコキシル化ホスフェートエステル等の下記又は上記の化合物にも適用される。
【0051】
好ましいエトキシル化カルボン酸は、C〜C18−アルキルフラグメントと、1個〜6個、好ましくは3個〜6個のEOフラグメントとを含有する。C〜C18−アルキルは、各フラグメントが、4個から最大18個の炭素原子を含有し、これがアルキル残基を形成するか、又は指示範囲内の少なくとも2つのアルキル残基の混合物を使用することを意味する。通常、エトキシル化カルボン酸は、2つ以上の酸((C16〜C18)−アルキルエーテルカルボン酸等)の混合物として使用される。エトキシル化カルボン酸の好ましい例は、C12−アルキル−4EO−カルボン酸、(C16〜C18)−アルキル−2EO−カルボン酸、(C16〜C18)−アルキル−5EO−カルボン酸、(C16〜C18)−アルキル−10,5EO−カルボン酸又は(C〜C)−アルキル−8EO−カルボン酸である。より好ましくは、エトキシル化カルボン酸は、C12−アルキル−4EO−カルボン酸である。エトキシル化カルボン酸は、例えばKao Chemicals GmbH(Emmerich, Germany)から、Akypo RLM 25、Akypo RO 20、Akypo RO 50、Akypo RO 90、Akypo RCO 105又はAkypo LF2という商品名で市販されている。本発明の好ましい一実施形態では、エトキシル化カルボン酸エステルは、(C12〜C18)−アルキルフラグメントと、3個〜6個のEOフラグメントとを含有する。例としては、C12−アルキル−4EO−カルボン酸、又は(C16〜C18)−アルキル−5EO−カルボン酸である。
【0052】
本発明の一実施形態において、腐食抑制剤は、少なくとも1種のホスフェートエステル及び少なくとも1種のアルコキシル化カルボン酸である。本発明の別の実施形態では、腐食抑制剤は少なくとも1種のホスフェートエステルである。本発明のさらなる実施形態では、腐食抑制剤は少なくとも1種のアルコキシル化カルボン酸である。
【0053】
潤滑剤濃縮物は概して、少なくとも0.1重量%の量、好ましくは0.1重量%〜25重量%の量、より好ましくは0.1重量%〜9.0重量%の量で少なくとも1種の腐食抑制剤を含有する。
【0054】
遊離脂肪酸、腐食抑制剤及び任意の水に加えて、潤滑剤濃縮物は、界面活性剤、乳化剤、強有機酸若しくは弱有機酸(例えば1つ又は複数のエーテル基を含有する飽和或いは不飽和のカルボン酸)等の酸、溶媒、又は脂肪アルコール等の当業者に既知のさらなる成分を1つ又は複数含有してもよい。任意成分及び腐食抑制剤は、遊離脂肪酸のカルボン酸基の自由な使用可能性を妨げないように選択される。任意成分はまた、例えばそれらの混和性に関して互いに適合するように選択される。
【0055】
好適な界面活性剤の例は、特許文献10又は特許文献12に見ることができる。 好ましい界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸、カルボン酸、アルキルホスホン酸、並びにそのカルシウム塩、ナトリウム塩及びマグネシウム塩、ポリブテニルコハク酸誘導体、シリコーン界面活性剤、フルオロ界面活性剤、並びに油溶性の脂肪族炭化水素鎖に結合した極性基を含有する分子が挙げられる。安定して存在する場合、上記の好ましい界面活性剤を、塩としてではなく酸性形態で使用する。所望の結果が与えられる量で界面活性剤を使用する。この量は、組成物の総重量に対して、個々の成分は0重量%〜約30重量%、好ましくは約0.5重量%〜約20重量%の範囲であり得る。
【0056】
乳化剤も当業者に既知であり、これらは、(有機)溶媒又は界面活性剤としても使用され得る化合物を含んでいてもよい。本発明における好ましい乳化剤は、アルコキシル化脂肪アルコール、アルコキシル化エステル、任意にアルコキシル化した脂肪アルコール又はホスフェートエステルである。
【0057】
好ましい脂肪アルコールは、セチルアルコール又はオレイルアルコール、特にセチルアルコール(1−ヘキサデカノール)である。アルコキシル化脂肪アルコールは、エトキシル化脂肪アルコールであるのが好ましい。乳化剤として好適なエトキシル化脂肪アルコールは、BASF AG(Ludwigshafen, Germany)からLutensol XLシリーズ(XL 70等)、Emulan EL、Emulan NP 2080、Emulan OC、Emulan OG、Emulan OP25、又はEmulan OUという商品名で市販されている。エトキシル化脂肪アルコールの好ましい例は、RO(CO)H(R=C1021及び=4、5、6、7、8、9、10及び14)である。
【0058】
アルコキシル化エステルは、エトキシル化エステルであるのが好ましい。エトキシル化エステルは、対応するアルコール由来のエステルフラグメント内に1つ又は複数のエーテル基(EOフラグメント)を含有するカルボン酸のエステルである。好ましいエトキシル化エステルは、エトキシル化脂肪酸エステル、特にオレイン酸のエトキシル化エステルであり、これはBASF AGからEmulan Aという商品名で市販されている。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、潤滑剤濃縮物はさらに、少なくとも1種の酸を含有する。この酸は、上記のような(遊離)脂肪酸の定義には入らない。好ましくは、この酸は、アルコキシル化カルボン酸を含む強有機酸又は弱有機酸から選択される。
【0060】
より好ましくは、この酸は、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、クエン酸、酢酸又はギ酸等の弱有機酸、特に酢酸である。潤滑剤濃縮物内の当該(さらなる)酸の存在によって、潤滑剤濃縮物のpH値がより低く、好ましくはpH値が1〜3、特に2に良好に調整される。存在する場合、当該(さらなる)酸の濃度は、少なくとも0.1重量%の量、好ましくは0.1重量%〜25重量%、より好ましくは0.1重量%〜5.0重量%の量である。
【0061】
本発明の乾燥潤滑プロセスに使用する潤滑剤濃縮物のpH値は、1〜3、特に2であるのが好ましい。しかし、pH値はさらに、1未満であっても又は3を超えてもよい。潤滑剤濃縮物がさらに希釈される場合、例えば乾燥潤滑プロセスを湿潤潤滑プロセスと組合せる場合、通常、使用溶液(例えば水で希釈した潤滑剤濃縮物)のpH値は、5.5〜7.5の範囲、好ましくは7である。
【0062】
本発明の別の実施形態において、少なくとも1種の遊離脂肪酸を0.1重量%〜25重量%、少なくとも1種の腐食抑制剤を0.1重量%〜25重量%、好ましくは0.1重量%〜9.0重量%、少なくとも1種の酸を0.1重量%〜25重量%、好ましくは0.1重量%〜5.0重量%、及び水及び/又は少なくとも1種の有機溶媒を5重量%〜95重量%含有する潤滑剤濃縮物を使用する。好ましい有機溶媒は、グリコールエーテル、特にジプロピレングリコールメチルエーテルであり、これは、Dow ChemicalsからDovanol DPMという商品名で市販されている。任意に、水と少なくとも1種の有機溶媒との混合物を使用してもよい。潤滑剤濃縮物が、好ましくは10重量%を超えて有機溶媒を含有する場合、当該濃縮物は、(透明な)溶液としてコンベヤベルト上に及び/又は不連続に塗布するのが好ましい。
【0063】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1種の遊離脂肪酸を0.1重量%〜25重量%、水を0重量%〜95重量%、少なくとも1種の乳化剤を0.1重量%〜95重量%、少なくとも1種の酸を0重量%〜25重量%、少なくとも1種のさらなる成分、好ましくは界面活性剤を0重量%〜30重量%、及び少なくとも1種の腐食抑制剤を0.1重量%〜25重量%含有する潤滑剤濃縮物を使用する。好ましくは、潤滑剤濃縮物は、エマルションとしてコンベヤベルト上に及び/又は不連続に塗布する。
【0064】
本発明の別の好ましい実施形態において、植物油、特にナタネ油、ダイズ油、パーム油、オリーブ油又はヒマワリ油の量が、20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、さらにより好ましくは5重量%未満及び最も好ましくは1重量%未満である、潤滑剤濃縮物を使用する。
【0065】
本発明の一実施形態において、実質的な量で任意の中和剤を含有しない潤滑剤濃縮物を使用する。中和剤及び下記の鉱油、錯生成剤又はポリアルキレンポリマー)に関する実質的な量とは、中和剤が、使用する潤滑剤濃縮物内に全く存在しないか、又はその濃度が潤滑剤濃縮物の0.05重量%、好ましくは0.01重量%未満の量であることを意味する。中和剤の例は、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又はリン酸ナトリウム等のバッファー、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン又はアルカノールアミン等のアルキルアミン、並びに脂肪アルキル置換アミン等のアミンである。
【0066】
本発明の別の実施形態において、実質的な量でポリアルキレングリコールポリマーを含有しない潤滑剤濃縮物を使用する。このようなポリアルキレングリコールポリマーには、通常分子量が少なくとも1000から最大約数十万である、酸化アルキレンのポリマー又は誘導体、及びその混合物又は組合せが含まれる。このようなポリアルキレングリコールポリマーは、例えば特許文献14で開示されている。
【0067】
本発明の別の実施形態において、実質的な量でキレート剤を含有しない潤滑剤濃縮物を使用する。特に、このようなキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、特に二ナトリウム塩若しくは四ナトリウム塩、イミノジコハク酸ナトリウム塩、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸一水和物、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸のナトリウム塩、N−ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸の五ナトリウム塩、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)グリシンの三ナトリウム塩、又はグルコヘプタン酸ナトリウムのナトリウム塩である。
【0068】
本発明の別の実施形態において、実質的な量で任意の鉱油を含有しない潤滑剤濃縮物を使用する。本発明内の鉱油には、シリコーンベースのオイル、フッ素化されたオイル、DuPont Chemicalsから「Krytox」という商品名で市販されているフッ素化グリース、及び他の合成油が含まれる。
【0069】
潤滑剤濃縮物は、例えば任意の順番で個々の成分を混合することによって当該技術分野で知られているように調製することができる。しかし、本発明の潤滑剤濃縮物は、得られた混合物が依然として少なくとも1種の遊離脂肪酸又は2種以上の遊離脂肪酸の混合物を0.1重量%含有するという条件下において、水等の溶媒で少なくとも1種の遊離脂肪酸(及び腐食抑制剤)を含有する第1の濃縮物を希釈することによっても調製することができる。
【0070】
本発明の方法は、当業者に既知の任意の従来のコンベヤベルトシステム(ユニット)上で使用することができる。コンベヤベルトシステム、特にチェーン及びトラックは、一部又は完全にスチール、特にステンレス、又はプラスチック等の当該技術分野で既知の任意の材料で作製され得る。このようなコンベヤベルト(装置)は、例えば食品産業及び/又は飲料産業での、例えばボトル等の容器のクリーニング、充填又は再充填に広く使用される。通常、コンベヤベルトシステムには、幾つかの個々のコンベヤベルト(コンベヤベルトセクション)が含まれる。
【0071】
各コンベヤベルト上を運ばれる対象物は、当業者に既知の任意の対象物(容器、特にボトル、缶又は段ボール箱等)であり得る。当該対象物は、一部又は完全に金属、ガラス、ボール紙又はプラスチック等の任意の材料、好ましくはガラス又はプラスチックから作製され得る。好ましいプラスチック製品又は容器は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)又はポリ塩化ビニル(PVC)製である。
【0072】
本発明の一実施形態において、コンベヤベルトは、一部又は完全にスチール、特にステンレス製であり、及び/又はコンベヤベルト上を運ばれる対象物は、一部又は完全にガラス製であり、特にガラスボトルである。本発明のこの実施形態は、このような対象物を充填、特に再充填するプロセスに使用するのが好ましい。
【0073】
本発明の方法において、乾燥潤滑剤として使用する潤滑剤濃縮物は、当該技術分野の技術水準で既知の任意の方法によって各コンベヤベルト上に塗布し得る。特許文献10は、コンベヤベルトの(上部)表面に潤滑剤濃縮物を塗布することが可能な方法を概説している。塗布装置として、噴霧ノズル、定量型ダイヤフラムポンプ、ブラシ塗布装置、又はいわゆるフリッカーを使用してもよい。潤滑剤濃縮物を連続して又は好ましくは不連続に塗布してもよい。例えば、潤滑剤濃縮物は、運ばれる対象物に応じて、5分ごと、20分ごと又はさらに24時間ごとにコンベヤベルト表面に不連続に塗布してもよい。
【0074】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種の遊離脂肪酸と腐食抑制剤とを含有する潤滑剤濃縮物は、乾燥潤滑剤としてコンベヤベルト(システム)の少なくとも1ヶ所のセクションに(のみ)使用する。この実施形態では、潤滑剤の使用溶液は、同じコンベヤベルト(システム)の残りの(少なくとも1ヶ所の)セクションに湿潤潤滑剤として使用する。好ましくは、コンベヤベルトの残りのセクションに湿潤潤滑剤として使用する潤滑剤の使用溶液は、少なくとも1種の遊離脂肪酸と腐食抑制剤とを含有する潤滑剤濃縮物から作製される。より好ましくは、乾燥潤滑剤として使用する潤滑剤濃縮物及び湿潤潤滑剤として使用する潤滑剤の使用溶液は、同じ潤滑剤濃縮物から作製される。
【0075】
本発明の別の実施形態において、コンベヤベルト(システム)(その上に潤滑剤濃縮物を乾燥潤滑剤として使用する)の個々のセクションの少なくとも1ヶ所又はさらに全ての上で(又はこれらに対して)水によって洗い流す工程(洗浄工程)を一時的に行う。或る特定の期間、好ましくは10分間〜最大30分間、洗い流す工程を行う。その後再び、0.1重量%の少なくとも1種の遊離脂肪酸と腐食抑制剤とを含有する潤滑剤濃縮物を、ガラスボトル等の対象物の運搬を(有意に)中断するか、又は妨げることなく、乾燥潤滑剤として各コンベヤベルト(セクション)上に塗布することができる。
【0076】
上記実施形態は、コンベヤベルト上の対象物の運搬に好ましく使用され、これによりコンベヤベルトを、例えばボトルの洗浄工程、仕分け工程、充填工程、ラベル付け工程又はパッケージング工程を行うための異なる操作ユニット(セクション)に一体化される。好ましくは、当該実施形態は、特に一部又は完全にスチール、好ましくはステンレス製のコンベヤベルト上でのガラス容器、特にガラスボトルを充填又は再充填するプロセスに使用される。
【0077】
好ましくは、コンベヤベルトの個々のセクションは、デペレタイザ(depelletizer)、ボトル仕分けユニット、ボトル洗浄器、充填ユニット、蓋締め(capping)ユニット、ラベル付けユニット、パッケージングユニット(領域)、クレートコンベヤユニット及び/又は電子的ボトル検査のための領域に一体化されるか、これらと連結するか、又はこれらの間に配置され得る。各セクション(ユニット)は、任意の順番及び/又は数で互いに連結し得る。
【0078】
より好ましくは、上記の実施形態による一時的な洗い流す工程又は湿潤潤滑は、デペレタイザ(ユニット)とボトル洗浄器、デペレタイザとボトル仕分けユニット、ボトル仕分けユニットとボトル洗浄器、及び/又は充填ユニットとラベル付けユニットとの間で行うか、又は使用される。
【0079】
本発明の別の実施形態において、コンベヤベルトを潤滑にする方法は、乾燥潤滑プロセスにおける乾燥潤滑剤として少なくとも1種の遊離脂肪酸と腐食抑制剤とを含有する潤滑剤濃縮物を使用する各コンベヤベルトシステムの潤滑に対して行われ、これは、潤滑剤の使用溶液を使用する各コンベヤベルトの湿潤潤滑と一時的に組合せられる。使用溶液は、少なくとも1種の遊離脂肪酸と腐食抑制剤とを含有する潤滑剤濃縮物の使用溶液であるのが好ましい。コンベヤベルト(システム)全体又はその(セクションの)一部でのみ一時的に湿潤潤滑を行うことができる。本発明の乾燥潤滑剤として潤滑剤濃縮物を使用する際、コンベヤベルトから汚れを取り除く場合にこの実施形態を行うのが好ましい。少なくとも1種の遊離脂肪酸と腐食抑制剤とを含有する潤滑剤の使用溶液を使用する場合、上記洗浄工程中、各コンベヤベルトの操作を停止する必要はない。
【0080】
本発明の別の主題は、上記で規定したような、乾燥潤滑プロセスにおける乾燥潤滑剤として0.1重量%の少なくとも1種の遊離脂肪酸と、少なくとも1種の腐食抑制剤とを含有する潤滑剤濃縮物の使用である。好ましくは、当該潤滑剤濃縮物は、コンベヤベルトを潤滑にするのに使用する。
【0081】
以下の実施例は、本発明のより詳細な説明を与えるものである。
【実施例】
【0082】
以下で、組成物の成分量のパーセント(%)は全て、特に指示がない限り重量パーセント(重量%)として表す。
【0083】
1 トラックコンベヤ試験
1.1 潤滑性及び耐久性の試験方法
1.1.1 試験トラック
パイロットコンベヤ施設で試験を行う。このパイロットコンベヤには、ステンレス及びプラスチック(アセタール)の試験トラックが含まれる。
【0084】
1.1.2 試験手順
以下の標準的な試験手順を適用する。
1. 任意の試験を行なう前に、試験トラックに残渣が含まれていないことを確認する。必要であれば、酸性洗浄剤又はアルカリ性洗浄剤、及び/又はアルコールでトラックを清浄にし、前の試験からの潤滑剤の残りを完全に取り除く。
2. 水で(約10分)トラックを洗い流し、クリネックスで乾燥させる。
3. デジタル式のトラックコンベヤシステム用プログラムを始動する。
4. 2分後、チェーン上に直接各組成物10mlをピペッティングする。このプロセスは、非常に慎重且つゆっくりと行う必要があり、確実にチェーン表面全体に処理が行き渡るようにする。プラスチック製の布又はブラシを用いて、拡げるのを助ける。
5. 始動から20分後、スイッチを入れ、(約8リットル/分で)水道水によって洗い落とす。
6. 10分洗い流した後、プログラムを止める。
【0085】
1.2 評価
試験中、6個〜8個のボトルを試験トラック上に置く。A/D変換器を備える電子秤によって、引張り力(pulling power)(F)を継続して測定する。測定は、最大2kgに制限される。引張り力/ボトル又は缶の重量の係数は、潤滑性を表す摩擦係数を表す(μ=F/F)。最終的にこのデータをMSエクセルに移し、振幅の真ん中で値(μ)を読み出すことができる。水で洗い流す間、耐久性を記録する。耐久性は、重負荷又は水での洗い流し等の不利な条件に対する潤滑剤の耐性である。
【0086】
2. 試験
2.1. ステンレストラック上のガラスボトル
総重量8.1kgの8個のガラスボトルで試験を行う。
【0087】
2.1.1. 当該技術分野の技術水準の濃縮組成物
3.68%のN−オレイル−1,3−ジアミノプロパン、3.6%の(C16〜18)アルキル(9EO)カルボン酸及び6%のポリエチレングリコール(M=200)を含有し、100%まで軟水を添加した潤滑剤1の濃縮物を調製する。95%HOで希釈した5%のこの潤滑剤1を濃縮物Aとして使用し、5%HOで希釈した95%のこの潤滑剤1を濃縮物Bとして使用する。
【0088】
小さい20ml容のネジ蓋付きガラスボトル中で成分を振盪することによって、水中油型エマルションを調製する(以下に記載)。
濃縮物C:50%のシリコーンオイル(Dow Corning 200)及び50%の H
濃縮物D:95%のヒマワリ油及び5%のH
濃縮物E:75%の鉱油及び25%のH
濃縮物F:5%のオレイン酸及び95%のジプロピレングリコメチルエーテル
【0089】
2.1.2. 本発明の濃縮組成物
濃縮物1及び濃縮物2は、遊離脂肪酸としてオレイン酸を含有する。33%のオレイル−O−3EO−ホスフェートエステル、4%の(C16〜C18)−アルキル−5EO−カルボン酸、33%の(C16〜C18)−アルキル−2EO−カルボン酸、13%のオレイン酸、8%のセチルアルコール(1−ヘキサデカノール)及び9%の(C〜C)−アルキル−8EO−カルボン酸を含有する潤滑剤2の濃縮物を調製する。
濃縮物1:8%の潤滑剤2及び92%のH
濃縮物2:100%の潤滑剤2
【0090】
2.1.3. 結果
以下の表1は、異なる時間段階での摩擦係数(μ)を示す。潤滑剤の塗布が2分後から始まるので、10分及び20分での値は潤滑性を示す。水での洗い流しが20分後から始まるので、25分及び30分は耐久性の指標となる。0.15を超える値(μ)は、不十分な潤滑性を示し、測定装置の限界を超えている。
【0091】
【表1】

【0092】
本発明の濃縮物(1及び2)はほとんどの場合で、従来技術(A〜F)に比べて有意な摩擦の低減を示す。洗い流す間(20分後、洗い流す工程を始める)、より長く潤滑性が残存するので、濃縮物1及び濃縮物2で性能の向上が認められる。
【0093】
3. 腐食抑制
【0094】
【表2】

【0095】
寸法が50mm×100mm×2mmのMild Steel Plates(ST37)を次亜塩素酸(32%(w/w))で処理し、脱イオン水及びエタノールで洗い流し、100℃で1時間乾燥させ、乾燥器中で冷ました後、秤量する。予め処理したプレートを試験溶液350ml中で22時間浸漬し、脱イオン水及びエタノールで洗い流し、100℃で1時間乾燥させ、乾燥器中で冷ました後、再び秤量する。
【0096】
表2から分かるように、本発明の実施例で、有意な腐食抑制を得ることができる(実施例1及び実施例2に対する実施例3〜実施例6)。
【0097】
4. 黒変
【0098】
【表3】

【0099】
2.1項で上記のような幾つかの濃縮物に対して1〜5の段階で黒変を評価する。1は、黒変が起こっていないことを意味し、5は許容できないことを意味する。視覚的評価のために、潤滑剤濃縮物を塗布し、ガラスボトルを固定して、コンベヤを30分間作動させる。作動後、ボトルの底面をティッシュでふき取り、ティッシュ上での黒変度を段階分けする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.1重量%の少なくとも1種の遊離脂肪酸と、少なくとも1種の腐食抑制剤とを含有する潤滑剤濃縮物を乾燥潤滑プロセスにおける乾燥潤滑剤として使用する、コンベヤベルトを潤滑にする方法。
【請求項2】
前記遊離脂肪酸がオレイン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンベヤベルトが一部又は完全にスチール製であり、及び/又は前記コンベヤベルト上を運ばれる対象物が一部又は完全にガラス製である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記潤滑剤濃縮物が、
少なくとも1種の遊離脂肪酸を0.1重量%〜25重量%、
少なくとも1種の腐食抑制剤を0.1重量%〜25重量%、
少なくとも1種の酸を0.1重量%〜25重量%、及び
水及び/又は少なくとも1種の有機溶媒を5重量%〜95重量%含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記潤滑剤濃縮物が、少なくとも1種の遊離脂肪酸を0.1重量%〜25重量%、水を0重量%〜95重量%、少なくとも1種の乳化剤を0.1重量%〜95重量%、少なくとも1種の酸を0重量%〜25重量%、少なくとも1種の界面活性剤を0重量%〜30重量%、及び少なくとも1種の腐食抑制剤を0.1重量%〜25重量%含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記潤滑剤濃縮物をエマルション又は溶液としてコンベヤベルト上に塗布する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記腐食抑制剤が、式(I):
【化1】

又は式(II):
【化2】

(式中、Rは任意のアルキル基又はアルキルアリール基であり、nは(互いに独立して)1〜10に等しい値を取り得る)を有する少なくとも1種のホスフェートエステル、及び/又は(C12〜C18)−アルキルフラグメントと、3個〜6個のEOフラグメントとを含有する少なくとも1種のエトキシル化カルボン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コンベヤベルトの少なくとも1ヶ所のセクションで、少なくとも0.1重量%の少なくとも1種の遊離脂肪酸と、少なくとも1種の腐食抑制剤とを含有する前記潤滑剤濃縮物を乾燥潤滑剤として使用し、且つ同じコンベヤベルトの少なくとも1ヶ所のセクションで、潤滑剤の使用溶液を湿潤潤滑剤として使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
湿潤潤滑剤として使用する前記使用溶液を、少なくとも1種の遊離脂肪酸と、少なくとも1種の腐食抑制剤とを含有する前記潤滑剤濃縮物から作製する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
洗い流す工程を前記コンベヤベルトの少なくとも1ヶ所のセクション上で一時的に行う、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
同じコンベヤベルトの潤滑を湿潤潤滑として一時的に行う、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも0.1重量%の少なくとも1種の遊離脂肪酸と、少なくとも1種の腐食抑制剤とを含有する潤滑剤濃縮物を、乾燥潤滑プロセスにおける乾燥潤滑剤として使用する、コンベヤベルトを潤滑にする方法。
【請求項13】
コンベヤベルトを潤滑するために使用する、請求項12に記載のコンベヤベルトを潤滑にする方法。

【公表番号】特表2010−512452(P2010−512452A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541539(P2009−541539)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/087143
【国際公開番号】WO2008/073951
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(398061050)ジョンソンディバーシー・インコーポレーテッド (101)
【住所又は居所原語表記】8310 16th Street,Sturtevant,Wisconsin 53177−0902,United States of America
【Fターム(参考)】