説明

コンベヤ

【課題】長期間にわたって一対のスプロケット間の距離を調節する必要なく、無端チェーンの旋回停止時には落とし口への垂れ込みが防止されるコンベヤを提供する。
【解決手段】一対のスプロケットと、このスプロケットが取り付けられるケーシング9と、スプロケット2の支持軸2aを支持する軸受部材15と、一対のスプロケットに巻回され、且つ、所定間隔ごとにスクレーパが取り付けられた無端チェーンと、軸受部材15に固定されたナットと、このナットに螺合し、且つ、バネ座が設けられたネジ棒25と、このバネ座とケーシング9との間に予圧縮された状態で装着されたコイルバネであって、その復元力が軸受部材15に対して、一対のスプロケットの配置間隔が拡大する方向に作用するコイルバネ26と、ネジ棒25に装着された、コイルバネ26の圧縮たわみを所定値に制限するためのストッパとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体等を搬送するスクレーパ式のコンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
製粉工場または飼料貯蔵サイロ等においては、一般的に粉粒体を搬送するのに適したコンベヤが配設されている。このようなコンベヤの一つにスクレーパコンベヤがある。このスクレーパコンベヤは、一対のスプロケットに巻き掛けられて旋回する無端チェーンに、搬送用のスクレーパ(搬送板)が所定間隔を置いて取り付けられたものである。このスクレーパコンベヤの一例は、特許文献1に開示されているように、旋回する無端チェーンの下側が搬送側であり、上側がリターン側とされている。搬送側の底部には平坦なスライドベッドが形成され、その両側端には側板が立設されている。このように、スライドベッドと両側板とで形成される箱樋状の搬送ケーシング内に前記一対のスプロケットおよび無端チェーンが収容されている。搬送対象の粉粒体はスライドベッドの上に投下される。そして、上記チェーンの旋回にともなってスクレーパがスライドベッド面上を掻きながら移動して、スライドベッド面の上にある粉粒体を搬送する。
【0003】
上記スクレーパコンベヤ(以下、単にコンベヤともいう)における粉粒体の搬送目的位置に対応したスライドベッドの部位には、粉粒体を下方に落とすための落とし口(切り欠き開口)が形成されている。スライドベッド上を搬送されてきた粉粒体は、この落とし口から落下させられる。一本のコンベヤに搬送目的位置が複数存在する場合には、この落とし口は複数箇所形成される。この場合には、各落とし口にこれを開閉するためのゲート板(扉)が設けられる。使用しない落とし口はゲート板を閉じることにより、このゲート板の上面がスライドベッド面として機能する。
【0004】
最近では、このゲート板は、落とし口を閉止したときにその上面がスライドベッドの上面と面一の状態になるように構成されているものが多い(上記特許文献1参照)。これは、以下の問題を解消するための工夫である。すなわち、上記工夫がなければ、閉止位置にあるゲート板の上面とスライドベッドの上面との間に少なくともスライドベッドの板厚分の段差が生じてしまう。こうなると、落とし口におけるこの段差分だけ下がったゲート板の上面に粉粒体が溜まり、ゲート板を後退させて落とし口を開いたときには溜まっている粉粒体が落とし口から下方に落下してしまう。そうすると、コンベヤによって搬送する粉粒体を変更した場合には、ゲート板上に残留した変更前の粉粒体が変更後の粉粒体に混入してしまうこととなる。これを回避するために、ゲート板が閉止したときにはその上面がスライドベッドの上面と面一となるように構成して粉粒体がゲート板上に残留することを防止している。
【0005】
しかしながら、ゲート板の上面とスライドベッドの上面とを面一とした場合には、他の問題が生じる可能性がある。すなわち、無端チェーンの旋回が停止したとき、使用によって弛んだ無端チェーンの一部が落とし口に僅かであるが垂れ込み、これが閉止動作するゲート板に引っ掛かるのである。複数個の落とし口を備えたコンベヤでは、搬送する粉粒体の種類を変更したとき、それに応じて搬送目的位置である落とし口を切り替える。この場合、チェーンの旋回を停止し、今まで開口していた落とし口を閉止するとともに、他の落とし口を開口する。この作業後に再度チェーンの旋回を開始する。旋回時のチェーンには大きな張力が加わっているので垂れることはないが、旋回を停止すると旋回駆動による張力が解消してしまい、チェーンは僅かに垂れ下がる。この垂れ下がった部分が開口している落とし口に進入し、閉止しようとするゲート板に引っ掛かるのである。
【0006】
旋回する無端チェーンの弛みを解消するためにテンションプーリをチェーンに押圧する方法は他の技術分野で多用されているが、このスクレーパコンベヤには適しない。また、適時にスプロケットの位置を移動して無端チェーンに張力を加える方法も考えられるが、その場合には、この位置調整のために頻繁にコンベヤの運転を停止する必要があり、運転効率の大幅な低下を招来する。
【特許文献1】登録実用新案第2059244号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、長期間にわたって一対のスプロケット間の距離を調節する必要なく、無端チェーンの旋回停止時に落とし口への垂れ込みが防止されるコンベヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコンベヤは、
一対のスプロケットと、
この一対のスプロケットに巻回され、且つ、所定間隔ごとにスクレーパが取り付けられた無端チェーンと、
この無端チェーンの張力を増加させるチェーン緊張装置とを備えており、
このチェーン緊張装置が、少なくとも一方のスプロケットを両スプロケットの配置間隔を拡げる方向に弾力的に付勢する弾性機構と、両スプロケットの配置間隔を拡大するための距離拡大機構とを有している。
【0009】
かかる構成のコンベヤによれば、弾性機構が一対のスプロケットに巻回された無端チェーンに弾力的に張力を加えている。したがって、チェーンの旋回が停止して旋回駆動による張力が消失しても、弾性機構による張力が残存するので、チェーンの弛みは防止される。
【0010】
前記一対のスプロケットが取り付けられる機枠を設け、前記距離拡大機構に、スプロケットおよび機枠のうちの一方にチェーンの長手方向に延設されたネジ棒と、他方に設けられた、前記ネジ棒に螺合するナット部材とを備え、前記ネジ棒およびナット部材のうちの一方を固定し、他方を回転することによってスプロケットを前記配置間隔が拡大する方向に移動させるように構成することができる。これにより、距離拡大機構の構成が簡易となり、しかも、その操作も容易となる。ここで言う機枠とは、スプロケットおよびチェーンを完全に収容するケーシングには限らず、それらを支持するフレームのような部材をも含む広い意味である。
【0011】
前記弾性機構における前記ネジ棒と機枠との間に弾性部材を取り付け、この弾性部材がその復元力によって前記スプロケットを両スプロケットの配置間隔を拡げる方向に付勢するように構成することができる。前記弾性部材としては、たとえば、コイルバネを採用することができる。
【0012】
前記スプロケットの中心を通る軸を支持する軸受部材を設け、この軸受部材に前記ナット部材を固定し、このナット部材に前記ネジ棒を螺合し、前記弾性部材を予撓みを付与されたバネから構成し、このバネの復元力により、前記ネジ棒とナット部材とを介して前記スプロケットが付勢されるように構成し、さらに、前記バネのたわみを所定値に制限するためのストッパを備えることができる。
【0013】
また、前記一対のスプロケットが取り付けられる機枠を設けるとともに、前記弾性機構に、弾性部材と前記スプロケットに付設された弾性部材取付部とを備え、この弾性部材を弾性部材取付部と機枠との間に取り付け、その復元力によって前記スプロケットを両スプロケットの配置間隔を拡げる方向に付勢することができる。
【0014】
本発明のコンベヤは、
一対のスプロケットと、
この一対のスプロケットが取り付けられる機枠と、
各スプロケットの中心軸を支持する軸受部材と、
この一対のスプロケットに巻回され、且つ、所定間隔ごとにスクレーパが取り付けられた無端チェーンと、
前記軸受部材に固定されたナット部材と、
このナット部材に螺合し、且つ、バネ座が設けられたネジ棒と、
このバネ座と前記機枠との間に予圧縮された状態で装着されたコイルバネであって、その復元力が前記軸受部材に対して、一対のスプロケットの配置間隔が拡大する方向に作用するコイルバネと、
前記ネジ棒に装着された、前記コイルバネの圧縮たわみを所定値に制限するためのストッパとを備えている。
【0015】
かかる構成によっても、コイルバネが一対のスプロケットに巻回された無端チェーンに弾力的に張力を加えている。したがって、前述したコンベヤと同様に、チェーンの旋回が停止しても張力が残存するので、チェーンの弛みは防止される。
【0016】
本発明のコンベヤは、
一対のスプロケットと、
この一対のスプロケットが取り付けられる機枠と、
各スプロケットの中心軸を支持する軸受部材と、
この一対のスプロケットに巻回され、且つ、所定間隔ごとにスクレーパが取り付けられた無端チェーンと、
前記軸受部材に固定され、且つ、バネ座が設けられたネジ棒と、
このバネ座と前記機枠との間に予圧縮された状態で装着されたコイルバネであって、その復元力が前記軸受部材に対して、一対のスプロケットの配置間隔が拡大する方向に作用するコイルバネと、
前記ネジ棒に螺合したナット部材と、
前記ネジ棒に装着された、前記コイルバネの圧縮たわみを所定値に制限するためのストッパとを備えている。
【0017】
この構成のコンベヤも、コイルバネが無端チェーンに張力を加えているので、チェーンの弛みは防止される。この発明は、前述した発明とはネジ棒を取り付ける対象とナット部材を取り付ける対象とが逆になっているのであり、特別な技術的特徴が前述した発明と対応するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少なくとも一方のスプロケットが両スプロケットの配置間隔を拡げる方向に弾力的に付勢されているので、無端チェーンの旋回が停止して旋回駆動によるチェーンの張力が消滅しても、弾力的に加えられている張力が残存している。したがって、長期間にわたって一対のスプロケット間の距離を調節することなく、無端チェーンの旋回が停止したときでもこのチェーンの落とし口への垂れ込みが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照しながら本発明のコンベヤの一実施形態であるスクレーパコンベヤ(以下、単にコンベヤという)を説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態であるスクレーパコンベヤの中間部分を示す組立前の斜視図である。図2は図1のコンベヤの従動スプロケットの部分を示す組立前の斜視図である。図3は図2のIII−III線断面図である。図4は図2のスプロケット部分の正面を示すIV−IV線矢視図である。図5は図4のV−V線断面図である。図6は図2のスプロケット部分におけるチェーン緊張装置を示す一部断面図である。
【0021】
図1に示すように、このコンベヤ1は、一対のスプロケット(図2には一方のスプロケット2のみ示す)に巻き掛けられて旋回する無端チェーン(以下、単にチェーンともいう)3に、搬送用の多数のスクレーパ4が所定間隔を置いて取り付けられたものである。このチェーン3は多数のリンク3aがピン3bによってループ状に連結されたものである。もちろん、かかるチェーン3の構成には限定されない。スプロケット2およびチェーン3はともに、下部のスライドベッド5、上部の天板6、左右の側板7および前後の端板(図2には一方の端板8のみ示す)から構成される箱樋状の機枠としてのケーシング9内に収容されている。無端チェーン3の下側が搬送側Cであり、上側がリターン側Rである。リターン側Rと搬送側Cとの間であって、リターン側Rのチェーン3に近接した位置にはチェーン3の旋回方向に沿ってリターン側Rのチェーンを受けるための支持棚10が配設されている。この支持棚10は、左右の側板6間に架け渡された多数の桟10aと、この桟10a上に、ケーシング9の長手方向に取り付けられた支持レール10bとから構成されている。
【0022】
スライドベッド5の複数箇所に粉粒体の搬送目的位置である落とし口11が開口している。スライドベッド5上をスクレーパ4によって搬送されてきた粉粒体は、この落とし口11を通して下方に落下させられる。各落とし口11にはこれを開閉するためのゲート板12が設けられている。ゲート板12は送りネジ機構13等によって開閉される。ゲート板12が落とし口11を閉止したときには、ゲート板12の上面とスライドベッド5の上面とは面一となるようにされている。
【0023】
図2(a)には、このコンベヤ1における従動側のスプロケット2が設置されている部分が示されている。図2(b)は図2(a)におけるチェーン緊張装置(後述する)21を抜き出して示したものである。図2(a)にはチェーン3の図示が省略されている。スプロケット2の後側(図中右側)、すなわち、従動側スプロケット2を挟んで駆動側スプロケット(図示せず)とは反対側には粉粒体等の搬送対象物の残留を防止するための防止板14が配設されている。天板6には作業用開口6aが形成されており、この開口6aには蓋6bが着脱可能に取り付けられている。図2とともに図3〜図5も併せて参照すれば明らかなように、スプロケット2にはその中心を通る支持軸2aが固定されている。左右の両側板7には、この支持軸2aが貫通しうる、チェーン3の延設方向に長い長孔7a(図3〜図5)が形成されている。長孔7aを貫通した支持軸2aの左右両端部は、両側板7の外面に配設された軸受部材15に回転自在に支持されている。側板7の外面には、上下に間隔をあけて平行な二本のレール16がチェーン3の延設方向(ケーシング9の長手方向)に沿って取り付けられている。軸受部材15はこの上下のレール16間に挟まれ、レール16に沿って移動可能に取り付けられている。
【0024】
軸受部材15は、上下のレール16間に挟まれて側板7の外表面を摺動するスライド板17と、このスライド板17に固定された軸受18と、スライド板17の側板7側の面に貼着されたシール用のゴム板19と、上下のレール16間に装着されてスライド板17のゴム板19の面を側板7の外表面に押圧するように付勢する板バネ20とを有している。板バネ20はこの軸受18の前後それぞれに配設されている。こうすることにより、ゴム板19のシール機能が発揮され、ケーシング8内の粉粒体が前記長孔を通って外部へ逃げ出すことを抑制することができる。前記軸受18はスプロケット2の支持軸2aを回転自在に支持するボールベアリングから構成されている。かかる構成により、軸受部材15がレール16に沿って移動すれば、この軸受部材15に支持されている従動スプロケット2も一体に移動することになる。なお、軸受18の形式はとくに前記ボールベアリングに限定されない。
【0025】
図2、図4〜図6に示すように、左右の軸受部材15それぞれとケーシング9の一部分である前記端板8とを連結するようにチェーン緊張装置21が配設されている。このチェーン緊張装置21は従動スプロケット2を駆動スプロケット(図示せず)から遠ざける向きに、すなわち、駆動および従動の両スプロケットの離間距離を拡げる向きに移動させることにより、チェーン3の張力を増加させるものである。このチェーン緊張装置21は、送りネジ方式によって所望時期に従動スプロケット2を所望寸法だけ端板8に向けて移動させる機能(手動緊張機能)を発揮する機構(手動緊張機構)と、コイルバネ26によって従動スプロケット2を常に端板8に向けて弾力的に引っ張る機能(自動緊張機能)を発揮する機構(自動緊張機構)とを有している。なお、コイルバネ26の採用には限定されず、他の弾性部材を用いてもよい。このように、自動緊張機構はコイルバネ等の弾性部材を用いるため、弾性機構ともいう。弾力的にとは、引っ張られた距離が増加するに従って引っ張る力が減少することを言う。なお、前記「手動緊張」とは、前記「自動緊張」に対比させるために用いた仮称であり、これが手動ではなく、張力検出センサ、電動モータ等が協働することによって人手を用いることなくチェーン3を緊張させるものをも含む。上記手動緊張機構は一対のスプロケットの離間距離を拡げる機構であるため、距離拡大機構とも言う。
【0026】
軸受部材15の前記スライド板17には取付ブラケット22が突設されており、この取付ブラケット22にナット23が固定されている。端板8には係止板24が配設されている。前記ネジ棒25はチェーン3の延設方向に延びる姿勢で、その先端側が前記ナット23に螺合しており、その基端側は前記係止板24に形成された貫通孔24aに挿通されている。図示のごとく、係止板24は従動スプロケット2を挟んで駆動スプロケット(図示せず)とは反対側に位置している。ついで、前記した自動緊張機構について以下に述べる。
【0027】
図6に示すように、ネジ棒25の係止板24より外側(ネジ棒25の基端側)の部分にはコイルバネ26が外嵌されており、さらに、有底円筒状のバネハウジング27がこのコイルバネ26を収容するように装着されている。このバネハウジング27の底部27aと係止板24の外側表面24bとがバネ座を構成している。バネハウジング27の円筒部の先端27bは、後述するように、係止板24に当接することによるストッパの機能を発揮する(図6(b)参照)。すなわち、コンベヤ1の運転中にはチェーン3が(その結果、従動スプロケット2が)駆動スプロケットの駆動によって駆動スプロケット側に引っ張られるが、このバネハウジング27のストッパ27bが端板8の係止板24に当接するため、従動スプロケット2はそれ以上は駆動スプロケット側に移動することはない。
【0028】
なお、本実施形態では係止板24の外側表面24bにはバネ座用のワッシャ28が装着されている。バネ座用部材としては、このワッシャ28に代えてスラストベアリングを採用してもよい。後述するようにネジ棒25を回転させたときにコイルバネ26も連れ回りするからである。ネジ棒25のバネハウジング27より外方(基端側)には固定ピン29aによってカラー29が固定され、そのまた外側には固定ピン30aによって同期用のスプロケット30が固定されている。そして、左右のチェーン緊張装置21のスプロケット30には同期用チェーン31が掛け回されている。
【0029】
また、ネジ棒25における、係止板24を挟んだコイルバネ26とは反対側(ネジ棒25の先端側)には、コイルバネ26の初期たわみを設定するためのナット32aおよびロックナット32bが螺着されている。また、このナット32aおよびロックナット32bにより、コイルバネ26の初期たわみとともに、前記ストッパとしてのバネハウジング27の円筒部の先端27bと係止板24との隙間寸法Dが調節される。コイルバネ26は初期圧縮たわみを与えられた状態でセットされている。したがって、前述したように、その復元力によって従動スプロケット2を、一対のスプロケットの配置間隔を拡げるように弾力的に引っ張っている(図6(a))。その結果、チェーン3には、その弛みを防止する張力が加わる。
【0030】
しかしながら、コンベヤBの運転中に駆動スプロケット(図示せず)の駆動力によってチェーン3に生じる張力は大きい。この張力によって生じる従動スプロケット2を駆動スプロケットに近づけようとする力は、前記コイルバネ26の復元力に打ち勝つ。すなわち、その程度の強さのコイルバネ26を採用している。換言すれば、かかる作用を奏しうるバネ定数および初期たわみが選定されている。その結果、ネジ棒25は前記バネハウジング27のストッパ27bが係止板24の外側表面24bに当接するまで駆動スプロケット側に引っ張られている(図6(b))。そして、コンベヤBの運転が停止することにより、チェーン3から駆動スプロケットの駆動力が解消すると、前述のとおり従動スプロケット2はコイルバネ26の復元力によって弾力的にスプロケットの配置間隔を拡げる向きに移動させられる。そして、前記ナット32aが係止板24の内側表面24cに当接するまで引っ張られ(図6(a))、チェーン3は弛むことが防止される。前述したコイルバネ26の仕様や初期たわみ、バネハウジング27の寸法等は、もちろん左右のチェーン緊張装置21ともに同一としている。
【0031】
前述したように、複数個の落とし口11のうち開放する落とし口を変更する場合にはチェーンの旋回駆動を停止する。そして、落とし口11をゲート板12によって閉止するとき、弛んだチェーン3に引っ掛かることが問題であった。しかし、上記構成のコンベヤ1によれば、チェーン3の旋回駆動を停止したときにはコイルバネ26がチェーン3の弛みを抑制するので、ゲート板12に引っ掛かることが防止される。したがって、このコンベヤ1では、チェーン3の旋回停止ごとに自動的にチェーン3に張力が加えられる(自動緊張機能)ので、特別の作業を必要とすること無しに、落とし口11の切り替えを含んだ連続運転が可能となる。
【0032】
このチェーン緊張装置21には、前述したように、コイルバネ26を用いたこの自動緊張機構とは別に、必要に応じて送りネジ方式の特別な作業によってチェーンを緊張させる手動緊張機構が備わっている。以下、この手動緊張機構を説明する。
【0033】
ネジ棒25の基端部にはネジ棒回転操作を容易にするために横断面が矩形となるように四カ所の面取り部25aが形成されている。また、前述のとおり、このネジ棒25は軸受部材15に固定されたナット23に螺合しており、さらに、コイルバネ26によって常時基端側に引っ張られている。したがって、このネジ棒25を正逆方向に回転させると、従動スプロケット2が前後方向(チェーンの緊張を緩める向きおよび高める向き)に移動する。このときのネジ棒25の回転を円滑に行うために、前述したごとく、バネ座用ワッシャ28をスラストベアリングに代えるのが好ましい。また、ネジ棒25を回転させるときには前記ナット32aおよびロックナット32bを一旦緩めておく。前述したように、左右のチェーン緊張装置21のネジ棒25は同期用のスプロケット30およびチェーン31を介して同期して回転させることができるので、容易且つ円滑に従動スプロケット2を移動させることができる。
【0034】
かかる構成のチェーン緊張装置21によれば、コンベヤ1の長期間の使用によるチェーン3の弛みが、コイルバネ26による自動緊張機能によっても解消できないほどになったとき、手動緊張機能によってチェーン3の張力を再生することができる。すなわち、チェーン3の旋回が停止したとき、開口した落とし口11にチェーン3が垂れ込んでいても、ネジ棒25を回転操作することにより、前記コイルバネ26が作用している状態でこの弛みを解消することができる。そして、このコンベヤ1を、さらに長期間にわたって自動緊張機能を活かしながら連続運転することができる。
【0035】
この実施形態における手動緊張機構では、ナット23を軸受部材15に固定し、ネジ棒25を回転させることによってチェーン3を緊張させるものである。しかし、かかる構成に限定されない。
【0036】
たとえば、図7に示すチェーン緊張装置33のように、ネジ棒34を軸受部材15の取付ブラケット37に固定し、このネジ棒34の基端部に、図6のチェーン緊張装置21におけるカラー29に代えて調整用ナット35を螺合したものでもよい。そして、前記同期用スプロケット30はネジ棒34にピン止めはせずに、この調整用ナット35に一体化させておく。なお、符号36はロックナットである。このように、前述の本実施形態とはネジ棒34とナット35との取付対象を逆にし、固定と可動とを逆にしてもよい。なお、このチェーン緊張装置33の自動緊張機構は図6のチェーン緊張装置21の自動緊張機構と同じ構成である。図6のチェーン緊張装置21と同じ部材には同じ参照符号を付記してその説明を省略する。
【0037】
このチェーン緊張装置33によって手動緊張機能を実行するには、まず、ナット32aおよびロックナット32bを緩めて(図中の左方へ移動して)係止板24との間に隙間を設ける。ついで、調整用のナット35を締め込んで、バネハウジング27のストッパ27bを係止板24に当接させる。すなわち、当初の係止板24とストッパ27bとの隙間分D1だけ締め込んだことになる。当接した後にさらに所定寸法D2(図示せず)だけ締め込むことにより、従動スプロケット2がその分D2だけ係止板24に近寄る。調整用のナット35を全体で所定寸法D1+D2だけ締め込んだことになる。そして、ナット32aおよびロックナット32bを締め込んで係止板24に当接させる。ついで、前記調整用のナット35を所定寸法D1(当初の前記隙間D1)だけ緩める。こうすることにより、従動スプロケット2が寸法D2だけスプロケット間隔を拡げる向きに移動する。また、ストッパ27bと係止板24との間隙D1が生じる。これはコイルバネ26の伸縮代がD1だけ残留することを意味する。この伸縮代D1は調節前後で変化させる必要はない。
【0038】
本実施形態は、一対のスプロケットを有するスクレーパコンベヤ1であって、その従動スプロケット2にのみ前記チェーン緊張装置21、33を配設している。しかし、かかる構成に限定されない。たとえば、駆動スプロケットにこのチェーン緊張装置21、33を配設してもよい。しかし、駆動スプロケットは駆動装置が連結されているため、チェーン緊張装置を取り付けた場合、とくに自動緊張機能をスムーズに発揮させるのはそれほど容易ではない。したがって、従動スプロケットに取り付けるほうが好ましい。
【0039】
また、前記自動緊張機構と手動緊張機構とを分離し、自動緊張機構は従動スプロケット2に配設し、手動緊張機構を駆動スプロケットに配設することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、チェーンの旋回が停止して旋回駆動による無端チェーンの張力が消滅しても、弾力的に加えられている張力が残存している。したがって、長期間にわたって一対のスプロケット間の距離を調節することなく、無端チェーンの旋回停止時には落とし口へのチェーンの垂れ込みが防止される。したがって、運転中に落とし口を開閉するスクレーパコンベヤ、落とし口のゲート板が閉止したときにその上面がコンベヤのスライドベッドの上面と面一となるコンベヤにとって有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態であるスクレーパコンベヤの中間部分の組立前の状態を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は図1のコンベヤの従動スプロケットの部分を示す組立前の斜視図であり、図2(b)は図2(a)中のチェーン緊張装置を抜き出して示す斜視図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のスプロケット部分の正面を示すIV−IV線矢視図である。
【図5】図4のV−V線断面図であり、図2のスプロケット部分の平面を示している。
【図6】図2のスプロケット部分におけるチェーン緊張装置を示す一部断面図であり、図6(a)はチェーンの旋回が停止しているときの状態を示し、図6(b)はチェーンが旋回しているときの状態を示している。
【図7】本発明のコンベヤの他の実施形態におけるチェーン緊張装置を示す一部断面図であり、チェーンの旋回が停止しているときの状態を示している。
【符号の説明】
【0042】
1 … コンベヤ
2 … 従動スプロケット
3 … (無端)チェーン
4 … スクレーパ
5 … スライドベッド
6 … 天板
7 … 側板
8 … 端板
9 … ケーシング
10 … 支持棚
11 … 落とし口
12 … ゲート板
13 … 送りネジ機構
14 … 防止板
15 … 軸受部材
16 … レール
17 … スライド板
18 … 軸受
19 … ゴム板
20 … 板バネ
21 … チェーン緊張装置
22 … 取付ブラケット
23 … ナット
24 … 係止板
25 … ネジ棒
26 … コイルバネ
27 … バネハウジング
28 … (バネ座用)ワッシャ
29 … カラー
30 … (同期回転用)スプロケット
31 … (同期用)チェーン
32a … ナット
32b … ロックナット
33 … チェーン緊張装置
34 … ネジ棒
35 … (調整用)ナット
36 … ロックナット
37 … 取付ブラケット
C … (チェーンの)搬送側
R … (チェーンの)リターン側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のスプロケットと、
この一対のスプロケットに巻回され、且つ、所定間隔ごとにスクレーパが取り付けられた無端チェーンと、
この無端チェーンの張力を増加させるチェーン緊張装置とを備えており、
このチェーン緊張装置が、少なくとも一方のスプロケットを両スプロケットの配置間隔を拡げる方向に弾力的に付勢する弾性機構と、両スプロケットの配置間隔を拡大するための距離拡大機構とを有しているコンベヤ。
【請求項2】
前記一対のスプロケットが取り付けられる機枠が配設されており、
前記距離拡大機構が、スプロケットおよび機枠のうちの一方にチェーンの長手方向に延設されたネジ棒と、他方に設けられた、前記ネジ棒に螺合するナット部材とを有しており、前記ネジ棒およびナット部材のうちの一方を固定し、他方を回転することによってスプロケットを前記配置間隔が拡大する方向に移動させるように構成されている、請求項1記載のコンベヤ。
【請求項3】
前記弾性機構が、前記ネジ棒と機枠との間に取り付けられた弾性部材を有しており、この弾性部材が、その復元力によって前記スプロケットを両スプロケットの配置間隔を拡げる方向に付勢している請求項2記載のコンベヤ。
【請求項4】
前記スプロケットの中心を通る軸を支持する軸受部材を備えており、
この軸受部材に前記ナット部材が固定されており、このナット部材に前記ネジ棒が螺合しており、前記弾性部材が、予撓みを付与されたバネから構成されており、このバネの復元力により、前記ネジ棒とナット部材とを介して前記スプロケットが付勢されており、前記バネのたわみを所定値に制限するためのストッパが配設されている請求項3記載のコンベヤ。
【請求項5】
前記一対のスプロケットが取り付けられる機枠が配設されており、
前記弾性機構が、弾性部材と前記スプロケットに付設された弾性部材取付部とを有しており、
この弾性部材が、弾性部材取付部と機枠との間に取り付けられ、その復元力によって前記スプロケットを両スプロケットの配置間隔を拡げる方向に付勢している請求項1記載のコンベヤ。
【請求項6】
一対のスプロケットと、
この一対のスプロケットが取り付けられる機枠と、
各スプロケットの中心軸を支持する軸受部材と、
この一対のスプロケットに巻回され、且つ、所定間隔ごとにスクレーパが取り付けられた無端チェーンと、
前記軸受部材に固定されたナット部材と、
このナット部材に螺合し、且つ、バネ座が設けられたネジ棒と、
このバネ座と前記機枠との間に予圧縮された状態で装着されたコイルバネであって、その復元力が前記軸受部材に対して、一対のスプロケットの配置間隔が拡大する方向に作用するコイルバネと、
前記ネジ棒に装着された、前記コイルバネの圧縮たわみを所定値に制限するためのストッパとを備えているコンベヤ。
【請求項7】
一対のスプロケットと、
この一対のスプロケットが取り付けられる機枠と、
各スプロケットの中心軸を支持する軸受部材と、
この一対のスプロケットに巻回され、且つ、所定間隔ごとにスクレーパが取り付けられた無端チェーンと、
前記軸受部材に固定され、且つ、バネ座が設けられたネジ棒と、
このバネ座と前記機枠との間に予圧縮された状態で装着されたコイルバネであって、その復元力が前記軸受部材に対して、一対のスプロケットの配置間隔が拡大する方向に作用するコイルバネと、
前記ネジ棒に螺合したナット部材と、
前記ネジ棒に装着された、前記コイルバネの圧縮たわみを所定値に制限するためのストッパとを備えているコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−234725(P2009−234725A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83111(P2008−83111)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(390021739)東亜機械工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】