説明

コークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止装置および粉塵飛散防止方法

【課題】コークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止装置および粉塵飛散防止方法を提供する。
【解決手段】赤熱コークス1を受骸しチャンバー6へと搬送するためのバケット3の上部を覆うバケットカバー4を備えたコークス乾式消火設備用バケット3の粉塵飛散防止装置であって、バケットカバー4に集塵装置を設け、この集塵装置は、バケット3内のコークス粉を集塵するための粉塵排出口40を備える。この構成によれば、集塵装置は、粉塵排出口40から、赤熱コークス1をチャンバー6に投入した後の空バケット3内に残留したコークス粉を集塵気流に同伴させて集塵することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス乾式消火設備において、発生するコークス粉の飛散を防止するために用いられる、コークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止装置および粉塵飛散防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コークス炉で乾留され、コークス炉から押し出された赤熱コークスをコークス乾式消火(CDQ:Coke Dry Quenching、以下、単にCDQと称することもある)法により不活性ガス(例えば、窒素ガスなど)で消火する方法においては、一連の消火工程は以下のようになっている。初めに、コークス炉から押し出された赤熱コークスを、バケット台車に搭載したコークス受骸バケット(以下、単にバケットと称する)に受骸する。次いで、バケット台車をCDQ設備まで移動させ、バケット上部に粉塵飛散等防止のためのバケットカバーを装着する。次いで、バケットカバーと一体となったバケットをクレーンで赤熱コークスの消火および冷却を行う塔(以下、単にチャンバーと称する)の上部の装入ホッパーまで移動させ、バケット底部とチャンバー頂部を開放し、バケット内の赤熱コークスをチャンバーに投入する。チャンバー内では循環不活性ガスにより赤熱コークスが消火、冷却される。次いで、空となったバケットを装入ホッパーから離し、バケットカバーと一体のままクレーンで降下させる。次いで、バケットをバケットカバーと切り離し、バケット台車に搭載し、消火工程は終了する。バケットを搭載したバケット台車は、次の赤熱コークスを受骸するためにコークス炉の該当位置へ移動する。また、消火されたコークスは、チャンバーの底部に設けられたコークス切出し装置により一定量で切出され、高炉へ搬送される。
【0003】
上記の赤熱コークスの一連の消火工程において、CDQ設備周辺で発生するコークス粉塵を集塵するための方法として、粉塵の発生部を局所的にフード等で覆ったり、コークス乾式消火設備のバケット移動範囲を建屋全体で覆うなどして集塵が行われている(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−126644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の赤熱コークスの消火工程において、バケットからバケットカバーを切り離す際、バケット内に残留したコークス粉がバケットの熱気流に同伴され、粉塵となって大気中に飛散することは避けられなかった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、バケット内に残留するコークス粉の粉塵を確実に集塵することができるとともに、バケットから装入ホッパーを介しチャンバーへ赤熱コークスを投入する過程でもバケット内の粉塵を集塵することができ、コストも抑えられたコークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止装置及びその粉塵飛散防止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係るコークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止装置は、赤熱コークスを受骸しチャンバーへと搬送するためのバケットの上部を覆うバケットカバーを備えたコークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止装置であって、前記バケットカバーに集塵装置を設け、この集塵装置は、前記バケット内のコークス粉を集塵するための粉塵排出口を備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によるコークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止装置の作用・効果を説明する。上記の粉塵飛散防止装置においては、赤熱コークスを受骸しチャンバーへと搬送するためのバケットの上部を覆うバケットカバーに集塵装置が設けられており、この集塵装置は、バケット内のコークス粉を集塵するための粉塵排出口を備える。この構成によれば、集塵装置は、粉塵排出口から、赤熱コークスをチャンバーに投入した後の空バケット内に残留したコークス粉を集塵気流に同伴させて集塵することができる。これにより、チャンバーへ赤熱コークスを投入した後の空バケットをバケットカバーと切り離す際、及び、バケットカバーが切り離された空バケットをバケット台車でコークス炉に移動させる際にも、これまでバケット内に残留していたコークス粉やバケット内面に付着したコークス粉が粉塵となって飛散していたものを確実に防止することができる。また、本発明に係る粉塵飛散防止装置によれば、建屋全体を覆って粉塵の飛散を防止する装置に比べ、設備もコンパクトであり、コストも低く抑えられる。なお、ここでは、バケットカバーに設けられる集塵装置とは、集塵するための集塵ポンプや集塵ダクト等を含まず、これら集塵ポンプや集塵ダクト等はバケットカバー以外の場所に設けられるものとする。
【0009】
本発明に係るコークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止装置において、前記バケットカバーに少なくとも1対の外気取入口が設けられることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、バケットカバーに少なくとも1対設けられた外気取入口から外気を取り入れることができる。これにより、集塵装置によって粉塵排出口からコークス粉を集塵することに伴い、バケット内が負圧になり集塵能力が落ちることを防止することとともに、集塵気流を起こすことにより、バケット内面に付着したコークス粉を同伴し、粉塵排出口へ導くことができるので、バケット内のコークス粉が粉塵となって飛散することを確実に防止することができる。
【0011】
本発明に係るコークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止装置において、前記粉塵排出口は前記バケットカバーの中心部に設けられ、前記1対の外気取入口は前記バケットカバーの周縁部であって、前記中心部を挟んで互いに対向する位置に設けられることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、外気取入口はバケットカバーの周縁部に設けられているので、取り入れられた外気は、バケット内の側壁面に付着している飛散し易いコークス粉を取り込みながら下方へと流れる。そして、下方へ流れていった外気は、バケット内の底部にぶつかり、底部中心部へと流れる。さらに、1対の外気取入口は、バケットカバーの周縁部であって、バケットカバーの中心部を挟んで互いに対向する位置に設けられているので、バケット内の対向する位置の側壁面を下方へ流れていった1対の外気は、バケット内の底部中心部でぶつかり、バケット内の中心軸に沿って上方(バケットカバー方向)へ移動する。これにより、外気が取り込んだバケット内のコークス粉を、バケットカバーの中心部に設けられた粉塵排出口から効率よく集塵することができる。
【0013】
上記課題を解決するため本発明に係るコークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止方法は、赤熱コークスを受骸しチャンバーへと搬送するためのバケットの上部を覆うバケットカバーに設けられた粉塵排出口から、前記バケット内のコークス粉の集塵を開始し、
集塵開始後、前記バケットカバーに設けられた外気取入口から外気を取り入れることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、初めに、バケットの上部を覆っているバケットカバーに設けられた粉塵排出口から、バケット内の上昇気流に同伴したコークス粉の集塵を開始する。集塵開始後、バケットカバーに設けられた外気取入口から外気を取り入れることで、集塵装置によって粉塵排出口からコークス粉を集塵することに伴い、バケット内が負圧になり集塵能力が落ちることを防止するとともに、集塵気流を起こすことにより、バケット内面に付着したコークス粉を同伴し、粉塵排出口へ導くことができるので、バケット内のコークス粉が粉塵となって飛散することを確実に防止することができる。
【0015】
本発明に係るコークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止方法において、前記集塵開始後、集塵を継続したまま前記バケットカバーを前記バケットから切り離すことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、バケットカバーをバケットから切り離す際にも、粉塵排出口から集塵を継続することで、バケットとバケットカバーとの隙間から外気を取り入れることができるので、バケット内のコークス粉が粉塵となって飛散することを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係るコークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止装置および粉塵飛散防止方法の好適な実施形態を図面を用いて説明する。
【0018】
初めに、CDQ設備を用いた赤熱コークスの消火の一連の工程について説明する。図1は、CDQ設備による赤熱コークスの消火工程を説明するための模式図である。不図示のコークス炉から押し出された赤熱コークス1を、バケット台車2に搭載したバケット3に受骸する。次いで、バケット台車2をバケット台車道を走らせてCDQ設備まで移動させ、バケット3の上部に粉塵飛散等防止のためのバケットカバー4を装着する。次いで、バケット3とバケットカバー4を一体として、クレーン5を用いてチャンバー6上部の装入ホッパー7まで移動させ、バケット3の底部とチャンバー6の頂部を開放し、バケット3内の赤熱コークス1を装入ホッパー7を介しチャンバー6に投入して消火を行う。チャンバー6内では循環不活性ガスにより赤熱コークス1を消火、冷却する。
【0019】
次に、図2の模式図を用いて、バケット3内のコークス粉が粉塵となって飛散する様子を説明する。図2のように、消火されたコークス9は、チャンバー6の底部に設けられたコークス切出し装置8により一定量で切出され、不図示の高炉へ搬送される。赤熱コークス1をチャンバー6に投入し空となったバケット3を装入ホッパー7から離し、バケットカバー4と一体のままクレーン5でバケット台車2まで降下させ、バケット台車2に搭載する。次いでバケット3をバケットカバー4と切り離すが、このバケット3とバケットカバー4を切り離す際、バケット3内の熱せられた空気が、バケット3とバケットカバー4との隙間から上昇気流となって、バケット3内のコークス粉を伴い大気中に飛散させる。バケット3を搭載したバケット台車2は、赤熱コークス1を受骸するためにコークス炉の該当位置へ移動させられる。このバケット3を移動する際にも、バケット3にはバケットカバー4が無いので、バケット3内部に残留したコークス粉が粉塵となって大気中に飛散しやすい。
【0020】
<バケットカバーの構成>
図3は、バケットカバー4の構成を示す構成図である。図3(a)は平面図、図3(b)は図3(a)のA−A断面図である。図のように、バケットカバー4は、カップ状のバケット3の上部を覆うように円板状をしている。ただし、バケットカバー4の形状は円板状に限られず、例えば、バケット3が箱型形状であれば矩形板状等でもよく、バケット3上部の形状に対応した形状とすることができる。
【0021】
バケットカバー4は、バケット3内のコークス粉を集塵するための粉塵排出口40と、外気を取り入れるための外気取入口41を備える。粉塵排出口40は、断面が長方形をしており、円板状のバケットカバー4の中心部に設けられている。外気取入口41は、円板状のバケットカバー4の周縁部に2対設けられており、1対の外気取入口41は、それぞれの外気取入口41がバケットカバー4の中心部を挟んで対向する位置に設けられる。4つの外気取入口41の断面は円形をしている。なお、粉塵排出口40と外気取入口41の断面形状と配置や、外気取入口41の個数等は、集塵機(集塵ポンプ等)の能力やバケット3の大きさや形状等により適宜決定される。
【0022】
粉塵排出口40には、L字型の排出ダクト42が接続されており、排出ダクト42の先端にはヒンジにより開閉可能な開閉蓋42aを備える。排出ダクト42の先端に、後述する集塵ポンプの集塵ダクト45を接続することにより、バケット3内のコークス粉を集塵可能となっている。また、外気取入口41にも、それぞれ外気導入ダクト43が接続されており、外気導入ダクト43の先端にはヒンジにより開閉可能な開閉蓋43aを備える。外気を取り入れる際には、開閉蓋43aを開放する。なお、ヒンジ構造は、開閉蓋の開閉機構の一例であり、開閉蓋によりバケット3を外気と遮断することができれば、その他の開閉機構であってもよい。ただし、ヒンジ構造は、バケット3を外気と簡易な構造で遮断することができるとともに、万が一バケット3内で小爆発が起きた場合にも、バケット3内の内圧を外に逃がすこともできるので、好ましい。
【0023】
<コークス粉の集塵方法>
バケット3内のコークス粉を集塵する方法について、図4を用いて説明する。図4(a)に示すように、空となったバケット3からバケットカバー4を切り離す際、切り離す前に集塵ダクト45を、開閉蓋42aが開放された排出ダクト42の先端に接続する。集塵ダクト45は、不図示の集塵ポンプに接続されている。これにより、バケット3内のコークス粉、及び熱気を粉塵排出口40から集塵することができる。
【0024】
粉塵排出口40からの集塵開始後、図4(b)に示すように、バケットカバー4に設けられた外気導入ダクト43の開閉蓋43aを開放する。これにより、粉塵排出口40から集塵することにより負圧となったバケット3内に、外気取入口41から外気を取り入れることができる。このとき、4つの外気取入口41はバケットカバー4の周縁部に設けられているので、外気取入口41から取り入れられた外気は、バケット3内の側壁面に付着しているコークス粉を取り込みながら下方へ流れる。そして、下方へ流れていった外気は、バケット内の底部にぶつかり、底部中心部へと流れる。さらに、1対の外気取入口41は、バケットカバー4の周縁部であって、それぞれの外気取入口41がバケットカバー4の中心部を挟んで互いに対向する位置に設けられているので、バケット3内の対向する位置の側壁面を下方へ流れた1対の外気は、バケット3内の底部中心部でぶつかり、バケット3内の中心軸に沿って上方(バケットカバー4方向)へ移動する。これにより、外気が取り込んだバケット3内のコークス粉を、バケットカバー4の中心部に設けられた粉塵排出口40から効率よく集塵することができる。
【0025】
その後、図4(c)に示すように、バケットカバー4を上昇させて、バケット3と切り離すが、バケットカバー4をバケット3から切り離す際にも粉塵排出口40から集塵を継続する。これにより、バケット3とバケットカバー4との隙間から外気を取り入れることができるので、バケット3内のコークス粉がバケット3とバケットカバー4の隙間から粉塵となって飛散することを確実に防止することができる。
【0026】
<別実施形態>
外気導入ダクト43には、開閉蓋43aに加えて、ファンを設けてもよい。ファンの回転により外気をバケット3内に強制的に取り込むことで、バケット3内を正圧とすることができ、粉塵排出口40から集塵を行う際に、さらに集塵しやすくなる。
【0027】
また、バケットカバー4に水供給装置を備えるように構成してもよい。バケット3内は高温であるので、水供給装置によりバケット3内に噴霧状ないし水滴状の水を供給すると、バケット3内には水蒸気が発生する。これにより、発生した水蒸気によりバケット3内を正圧とすることで粉塵排出口40から集塵を行う際に集塵しやすくするとともに、その水蒸気が細かな粉塵を捕捉することで集塵効率を上げることができる。
【0028】
なお、バケット3内の集塵を行うタイミングは、上記の場合に限られず、例えば、バケット3内の赤熱コークス1をチャンバー6に投入する際に集塵することも可能である。本発明に係る粉塵飛散防止装置は、バケットカバー4に設けられた粉塵排出口40から集塵を行うことができるので、建屋全体を覆って粉塵の飛散を防止する方法等に比べ、任意のタイミングで集塵がしやすく、さらには、設備もコンパクトであり、コストも低く抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】CDQ設備による赤熱コークスの消火工程の模式図
【図2】バケット内のコークス粉が飛散する様子を示す模式図
【図3】バケットカバーの概略構成図
【図4】コークス粉の集塵方法を説明するための模式図
【符号の説明】
【0030】
1 赤熱コークス
2 バケット台車
3 バケット
4 バケットカバー
5 クレーン
6 チャンバー
7 装入ホッパー
8 コークス切出し装置
9 コークス
40 粉塵排出口
41 外気取入口
42 排出ダクト
43 外気導入ダクト
45 集塵ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤熱コークスを受骸しチャンバーへと搬送するためのバケットの上部を覆うバケットカバーを備えたコークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止装置であって、
前記バケットカバーに集塵装置を設け、この集塵装置は、前記バケット内のコークス粉を集塵するための粉塵排出口を備えることを特徴とするコークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止装置。
【請求項2】
前記バケットカバーに少なくとも1対の外気取入口が設けられることを特徴とする請求項1に記載のコークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止装置。
【請求項3】
前記粉塵排出口は前記バケットカバーの中心部に設けられ、前記1対の外気取入口は前記バケットカバーの周縁部であって、前記中心部を挟んで互いに対向する位置に設けられることを特徴とする請求項2に記載のコークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止装置。
【請求項4】
コークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止方法であって、
赤熱コークスを受骸しチャンバーへと搬送するためのバケットの上部を覆うバケットカバーに設けられた粉塵排出口から、前記バケット内のコークス粉の集塵を開始し、
集塵開始後、前記バケットカバーに設けられた外気取入口から外気を取り入れることを特徴とするコークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止方法。
【請求項5】
前記集塵開始後、集塵を継続したまま前記バケットカバーを前記バケットから切り離すことを特徴とする請求項4に記載のコークス乾式消火設備用バケットの粉塵飛散防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−197095(P2009−197095A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38886(P2008−38886)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000156961)関西熱化学株式会社 (117)
【Fターム(参考)】