説明

コークス炉の操業方法、コークス炉の制御システム及びコークス炉

【課題】ドライメン及び炭化室の内部圧力を精度良く制御でき、安定した操業を実施可能なコークス炉の操業方法を提供する。
【解決手段】石炭装入工程の後に、ジャンパパイプ22を取り外して装入窯10a及び隣接窯の接続口15を閉止し、前記隣接窯からのガスの吸引を停止するジャンパパイプ取り外し工程と、装入孔16から装入スリーブ21を取り外し、装入孔16を閉止する装入スリーブ取り外し工程と、を有し、この装入スリーブ取り外し工程では、複数の装入スリーブ21を2以上のグループに分割し、一のグループの装入スリーブ21aを装入孔16aから取り外して装入孔16aを閉止した後に、他のグループの装入スリーブ21bを装入孔16bから取り外して装入孔16bを閉止し、分割したグループ毎に、順次、装入スリーブ21の取り外しを実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化室に装入された石炭を加熱してコークスを生成するコークス炉の操業方法、コークス炉の制御システム及びコークス炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前述のコークス炉としては、例えば特許文献1〜3に示すように、複数の炭化室と燃焼室とが交互に配置された構造とされ、炭化室内に装入された石炭を高温で乾留することで、コークスを製造するものが提案されている。
炭化室には、石炭を装入するための複数の装入孔が設けられている。石炭の装入は、石炭装入車の装入スリーブを炭化室の装入孔に接続した状態で実施される。ここで、炭化室からは、装入された石炭に含まれる揮発成分が揮発することによって、コークス炉ガスが発生することになる。
【0003】
炭化室において発生するコークス炉ガスは、各炭化室の天井部に設けられた上昇管からベンド部を経て、ドライメンに排出される。なお、上昇管には、ベンド部に向けて安水を噴射する安水噴射装置が設けられており、この安水噴射のエジェクタ効果によってコークス炉ガスがドライメン側に吸引される。
ドライメンは、オフテークメンを介してサクションメンに接続されており、前述のコークス炉ガスは、オフテークメン及びサクションメンを介して、ガス処理施設へと移送される。
【0004】
オフテークメンには、内部圧力を計測する圧力センサと、この圧力センサの下流側(サクションメン側)に位置する制御ダンパと、が配設されており、圧力センサの圧力値が設定値となるように、オフテークメンの制御ダンパの開度が調整される構成とされている。これにより、ドライメン及び炭化室の内部圧力を所定値(正圧)に保持し、炭化室の内部に外気が混入することを防止している。
【0005】
ここで、石炭を炭化室に装入した際には、高温の炭化室の側面や底面に石炭が接触することで、石炭に含まれる揮発成分が速やかに揮発し、大量のコークス炉ガスが一度に発生する。そこで、例えば特許文献1においては、石炭を装入する炭化室(装入窯)と、この炭化室(装入窯)に隣接する炭化室(隣接窯)と、をジャンパパイプで連結し、石炭を装入した炭化室(装入窯)から発生するコークス炉ガスを、隣接する炭化室(隣接窯)を介してドライメンへと排出する技術が提案されている。
【0006】
また、例えば特許文献2,3には、コークス炉における乾留時間を短縮してコークスの生産効率を向上させるために、例えば100〜300℃といった高温の状態の石炭を、炭化室に装入する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−249453号公報
【特許文献2】特開平07−118640号公報
【特許文献3】特開平11−246864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に示すように装入窯と隣接窯とを連結するジャンパパイプを備えたコークス炉において、石炭装入終了後に装入スリーブ及びジャンパパイプを取り外す作業は、例えば図5に示す手順で実施されていた。
まず、石炭の装入(S´01)が終了した後に、装入孔から装入スリーブを取り外し、装入孔を閉止する(S´02)。このとき、一時的に開放された装入孔を通じて外気が炭化室(装入窯)内に混入する。これにより、図5に示すように、ドライメンへのガスの吸引量が大幅に増加(例えば、ベースに対して、約11000Nm/h増加)することになる。なお、作業効率の観点から、複数の装入スリーブを一度に取り外す。
次に、ジャンパパイプを取り外すとともに接続口を閉止する(S´03)。このとき、一時的に開放された接続口を通じて外気が炭化室内に混入し、やはり、ドライメンへのガスの吸引量が増加(例えば、ベースに対して、約9000Nm/h増加)することになる。ちなみに、上記ベースとは、石炭の装入や、装入スリーブ等の取り外し作業が行われていない際の発生ガス量を意味している。
その後、安水噴射装置からの安水の噴射を停止する(S´04)。これにより、ドライメンへのガスの吸引量が大きく低減される。
このように、装入スリーブ及びジャンパパイプを取り外した後、石炭装入車が、次の石炭室(装入窯)へと移動される。
【0009】
ここで、図5に示すように、装入スリーブを取り外す際には、大量の外気が炭化室(装入窯)に混入することから、装入窯からの吸引のみでは装入窯内部のガスをドライメン側に排出することができず、ジャンパパイプを介して隣接窯からもガスを吸引する必要があった。
さらに、装入スリーブを取り外す際には、炭化室(装入窯及び隣接窯)から大量のガスがドライメン側へと吸引されるため、上述した制御ダンパの制御範囲を超えてしまい、ドライメンや炭化室の内部圧力を調整することができなくなるといった問題があった。
【0010】
特に、特許文献2,3に示すように、100〜300℃といった高温の石炭を炭化室に装入した場合には、石炭の揮発成分が急激に揮発することになり、コークス炉ガスの単位時間当たりの発生量が従来よりも大幅に増加することになる。このため、装入スリーブの取り外しの際のガスの吸引量が従来よりも増加する傾向にあり、ドライメンや炭化室の内部圧力が大きく変動するおそれがあった。
【0011】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、100〜300℃といった高温の石炭を炭化室に装入して、炭化室から大量のコークス炉ガスがドライメンに向けて流入する場合であっても、ドライメン及び炭化室の内部圧力を精度良く制御でき、安定した操業を実施可能なコークス炉の操業方法、コークス炉の制御システム及びコークス炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係るコークス炉の操業方法は、並列する複数の炭化室と、これら複数の炭化室に接続されたドライメンと、炭化室に石炭を装入する石炭装入車と、石炭を装入する炭化室である装入窯とこの装入窯に隣接する炭化室である隣接窯とを連結するジャンパパイプと、を有するコークス炉の操業方法であって、前記炭化室には、複数の装入孔と、前記ジャンパパイプに接続される接続口と、が設けられ、前記石炭装入車には、前記装入窯のそれぞれの装入孔に接続される複数の装入スリーブが設けられており、前記ジャンパパイプを前記装入窯及び前記隣接窯の接続口に接続するとともに、前記装入窯の前記装入孔に前記装入スリーブを装着した状態で前記石炭の装入を実施する石炭装入工程と、この石炭装入工程の後に、前記ジャンパパイプを取り外して前記装入窯及び前記隣接窯の前記接続口を閉止するジャンパパイプ取り外し工程と、前記ジャンパパイプ取り外し工程の後に、前記装入孔から前記装入スリーブを取り外し、前記装入孔を閉止する装入スリーブ取り外し工程と、を有し、この装入スリーブ取り外し工程では、複数の装入スリーブを2以上のグループに分割し、一のグループの装入スリーブを前記装入孔から取り外して当該装入孔を閉止した後に、他のグループの装入スリーブを前記装入孔から取り外して当該装入孔を閉止し、分割したグループ毎に、順次、前記装入スリーブの取り外しを実施することを特徴としている。
【0013】
このような構成とされた本発明に係るコークス炉の操業方法によれば、装入窯に石炭を装入した後に、まず、ジャンパパイプを取り外してジャンパパイプの接続口を閉止するので、隣接窯からのガスの吸引を抑えることができ、ドライメンへのガス吸引量を大幅に低減することができる。
【0014】
そして、複数の装入スリーブを2以上のグループに分割し、一のグループの装入スリーブを前記装入孔から取り外して当該装入孔を閉止した後に、他のグループの装入スリーブを前記装入孔から取り外して当該装入孔を閉止するようにして、装入スリーブの取り外しを行うので、装入スリーブを取り外す際の炭化室の開口面積を少なく抑えることができ、一時的に多くの外気が装入窯内部に混入することを抑制できる。よって、隣接窯にガスを流通させることなく、装入窯からの吸引のみで、装入窯に混入した外気等をドライメン側へ確実に排出することができる。
このように、ドライメンへのガス吸引量が低減されていることから、ドライメンの圧力制御を安定して行うことができる。
【0015】
本発明に係るコークス炉の制御システムは、並列する複数の炭化室と、これら複数の炭化室に接続されたドライメンと、炭化室に石炭を装入する石炭装入車と、石炭を装入する炭化室である装入窯とこの装入窯に隣接する炭化室である隣接窯とを連結するジャンパパイプと、を有するコークス炉の制御システムであって、前記炭化室には、複数の装入孔と、前記ジャンパパイプに接続される接続口と、が設けられ、前記石炭装入車には、前記装入窯のそれぞれの装入孔に接続される複数の装入スリーブが設けられており、前記装入窯への石炭装入作業の終了後、前記ジャンパパイプの取り外し及び前記接続口が閉止されたことを確認し、その後、複数の装入スリーブを2以上のグループに分割し、一のグループの装入スリーブを前記装入孔から取り外して当該装入孔が閉止されたことを確認した後に、他のグループの装入スリーブの取り外し動作を開始し、分割したグループ毎に、順次、前記装入スリーブの取り外しを行うように、前記装入スリーブの動作を制御することを特徴としている。
【0016】
また、本発明に係るコークス炉は、並列する複数の炭化室と、これら複数の炭化室に接続されたドライメンと、炭化室に石炭を装入する石炭装入車と、石炭を装入する炭化室である装入窯とこの装入窯に隣接する炭化室である隣接窯とを連結するジャンパパイプと、を有するコークス炉であって、前記炭化室には、複数の装入孔と、前記ジャンパパイプに接続される接続口と、が設けられ、前記石炭装入車には、前記装入窯のそれぞれの装入孔に接続される複数の装入スリーブと、前記装入スリーブの動作を制御する制御部と、が設けられており、前記制御部は、前記装入窯への石炭装入作業の終了後、前記ジャンパパイプの取り外し及び前記接続口が閉止されたことを確認し、その後、複数の装入スリーブを2以上のグループに分割し、一のグループの装入スリーブを前記装入孔から取り外して当該装入孔が閉止されたことを確認した後に、他のグループの装入スリーブの取り外し動作を開始し、分割したグループ毎に、順次、前記装入スリーブの取り外しを行うように、前記装入スリーブの動作を制御することを特徴としている。
【0017】
このような構成とされた本発明に係るコークス炉の制御システム及びコークス炉においては、上述の手順で、装入スリーブの取り外し時における装入スリーブの動作を制御するので、装入スリーブを取り外す際の炭化室の開口面積を少なく抑えることができ、一時的に多くの外気が装入窯内部に混入することを抑制できる。よって、ドライメンへのガス吸引量が低減されることになり、ドライメンの圧力制御を安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
上述のように、本発明によれば、石炭装入後に炭化室(装入窯)から装入スリーブを取り外した際におけるドライメンへのガス吸引量を低減することにより、ドライメン及び炭化室の内部圧力を精度良く制御でき、安定した操業を実施可能なコークス炉の操業方法、コークス炉の制御システム及びコークス炉を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態であるコークス炉の概略説明図である。
【図2】図1に示すコークス炉に備えられた炭化室(装入窯)の断面説明図である。
【図3】図1に示すコークス炉に備えられた炭化室(隣接窯)の断面説明図である。
【図4】本発明の一実施形態であるコークス炉における石炭装入終了後の装入スリーブ及びジャンパパイプ取り外し作業の手順とガス吸引量との関係を示すグラフである。
【図5】従来のコークス炉における石炭装入終了後の装入スリーブ及びジャンパパイプ取り外し作業の手順とガス吸引量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の一実施形態であるコークス炉の操業方法、コークス炉の制御システム及びコークス炉について、添付した図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態であるコークス炉1は、図1に示すように、並列された複数の炭化室10を備えており、隣接する2つの炭化室10の間には、図示しない燃焼室が配置されている。
炭化室10は、図1に示すように、上面視して、一方向(図1において左右方向)に延在しており、一端に上昇管11が配設され、他端にスタンドパイプ15が配設されている。また、上昇管11とスタンドパイプ15との間には、複数の装入孔16が形成されている。本実施形態では、5つの装入孔16(16a,16b,16c、16d,16e)が形成されている。
【0022】
図2及び図3に示すように、炭化室10に設けられた上昇管11は、ベンド部12を介して集合管であるドライメン30に接続されている。ここで、ベンド部12には、安水噴射装置13が配設されており、ベンド部12に安水が噴射される際のエジェクタ効果によって、炭化室10内のガスがドライメン30に向けて吸引される。
【0023】
また、図1に示すように、各炭化室10と接続されたドライメン30には、オフテークメン32を介して、図示しないガス処理施設に連結されたサクションメン35に接続されている。
オフテークメン32には、ドライメン30側の内部圧力及び温度を測定するセンサ33と、オフテークメン32の開度を調整する制御ダンパ34と、が配設されている。ここで、制御ダンパ34は、センサ33によって測定された圧力値が一定となるように、オフテークメン32の制御ダンパ34の開度を調整する構成とされている。
【0024】
図1に示すように、並列された複数の炭化室10の上部には、レール19が炭化室10の並列方向に向けて延在するように配設されている。このレール19の上には、石炭装入車20が載置されている。石炭装入車20はレール19に沿って移動する構成とされている。
石炭装入車20は、炭化室10のスタンドパイプ15に接続されるジャンパパイプ22を備えている。このジャンパパイプ22は、図1に示すように、石炭を装入する炭化室10(以下、装入窯10a)と、装入窯10aに隣接する炭化室10(以下、隣接窯10b)とを連結する構成とされている。
【0025】
図2に示すように、装入窯10aの上に配置される石炭装入車20には、炭化室10(装入窯10a)に設けられた複数の装入孔16(16a,16b,16c、16d,16e)にそれぞれ対応する複数の装入スリーブ21(21a,21b,21c、21d,21e)が設けられており、この装入スリーブ21を装入孔16に接続した状態で、石炭を炭化室10(装入窯10a)内に装入する構成とされている。
なお、図3に示すように、石炭の装入を行わない炭化室10(隣接窯10b)においては、装入孔16が蓋17によって閉止されている。
また、石炭装入車20には、装入スリーブ21及びジャンパパイプ22の動作を制御する制御部25が設けられている。
【0026】
次に、このコークス炉1の操業方法について、図4を参照して説明する。
まず、装入窯10aに石炭を装入する(石炭装入工程S01)。石炭の乾留時間を短縮してコークスの生産効率を向上させるために、コークス炉へ装入する石炭の温度を100℃以上、好ましくは150℃以上、さらに好ましくは250℃以上とすることがある。但し、石炭の温度が高すぎると石炭が溶融するため、上限は300℃以下とすることが好ましい。この石炭装入工程S01においては、石炭装入車20を、装入窯10aの上にまで移動する。そして、装入窯10a及び隣接窯10bのスタンドパイプ15の蓋を開放し、ジャンパパイプ22を接続する。また、装入窯10aの各装入孔16の蓋17を開放し、それぞれの装入孔16(16a,16b,16c、16d,16e)に装入スリーブ21(21a,21b,21c、21d,21e)を接続する。
【0027】
そして、装入スリーブ21を介して、装入窯10aの内部に石炭を装入する。このとき、装入窯10a及び隣接窯10bのべンド部12に設けられた安水噴射装置13を噴射する。
これにより、装入窯10aで発生するコークス炉ガスは、装入窯10a及び隣接窯10bを介してドライメン30へと吸引される。吸引されたコークス炉ガスは、オフテークメン32を介してサクションメン35へと排出される。このとき、センサ33によって測定される圧力が設定値となるように、オフテークメン32の制御ダンパ34の開度が調整される。
【0028】
ここで、石炭を炭化室10(装入窯10a)に装入した場合には、石炭の装入の直後にガスの発生量が大幅に増加し、その後、ガスの発生量は徐々に減少していく。これは、石炭の装入を開始した時点では、石炭が炭化室10(装入窯10a)の底面と側面とに接触し、揮発成分が急激に揮発してガス発生量が多くなり、その後に装入される石炭は、炭化室10(装入窯10a)の側面に接触するのみであるため、温度上昇が緩やかになり、ガスの発生量が抑えられるためである。このように、石炭の装入作業が完了する時点では、ガスの吸引量が少なく安定することになる。なお、図4における石炭装入工程S01のガス吸引量は、石炭装入作業の終了間近の状態を示している。
【0029】
そして、石炭の装入が完了した後、装入窯10a及び隣接窯10bからジャンパパイプ22を取り外し、装入窯10a及び隣接窯10bのスタンドパイプ15を蓋によって閉止する(ジャンパパイプ取り外し工程S02)。ここで、図4に示すように、スタンドパイプ15が開放されている間は、外気が装入窯10a内に混入することからガスの吸引量が一時的に増加(例えば、ベースに対して、約8000Nm/h増加)する。
その後、隣接窯10bの安水噴射装置13を停止する(S03)。これにより、隣接窯10bからドライメン30へのガスの吸引量が低減する。
【0030】
次に、スタンドパイプ15の閉止を確認した後、装入スリーブ21の取り外し作業(S04)を実施する。複数の装入スリーブ21(21a,21b,21c、21d,21e)を2以上のグループに分割する。本実施形態では、5つの装入スリーブ21(21a,21b,21c、21d,21e)のそれぞれを1つのグループとした。すなわち、5つのグループに分割した。
そして、まず、上昇管11から最も離れた第1装入孔16aに装着されている第1装入スリーブ21aを取り外し、第1装入孔16aを蓋17で閉止する(S011)。このとき、図4に示すように、第1装入孔16aが開放されている間は、外気が装入窯10a内に混入することからガスの吸引量が一時的に増加(例えば、ベースに対して、約6000Nm/h増加)する。
【0031】
次に、第1装入孔16aの閉止を確認した上で、第1装入孔16aに隣接する第2装入孔16bに装着されている第2スリーブ21bを取り外し、第2装入孔16bを蓋17で閉止する(S12)。このとき、図4に示すように、第2装入孔16bが開放されている間は、外気が装入窯10a内に混入することからガスの吸引量が一時的に増加(例えば、ベースに対して、約6000Nm/h増加)することになる。
【0032】
このように、第1装入孔16aに装着された第1装入スリーブ21aから、順次、装入スリーブ21の取り外し作業をグループ毎に行い(S11〜S15)、全ての装入孔16から装入スリーブ21を取り外す。すなわち、第1装入スリーブ21a→第2装入スリーブ21b→第3装入スリーブ21c→第4装入スリーブ21d→第5装入スリーブ21eの順に、装入スリーブ21の取り外しが行われる。
そして、装入窯10aの安水噴射装置13を停止(S05)し、装入窯10aからのガスの吸引を抑える。
【0033】
ここで、石炭装入台車22に備えられた制御部25は、上述の手順によってジャンパパイプ22、装入スリーブ21の取り外しを行うように、ジャンパパイプ22及び装入スリーブ21に対して指令を与える構成とされている。すなわち、スタンドパイプ15の閉止の信号を受けた後に、第1装入孔16aに装着された第1装入スリーブ21aに取り外しの指令を与え、この第1装入孔16aの閉止の信号を受けた後に、第2装入孔16bに装着された第2装入スリーブ21bに取り外しの指令を与えることになる。
【0034】
以上のような構成とされた本実施形態であるコークス炉1の操業方法、コークス炉1の制御システム及びコークス炉1においては、装入窯10aに石炭を装入した後に、まず、ジャンパパイプ22を取り外してスタンドパイプ15を閉止し、隣接窯10bからのガスの吸引を抑えるので、ドライメン30を通過するガス量が低減されることになる。
【0035】
そして、石炭装入台車20において、5つの装入スリーブ21(21a,21b,21c、21d,21e)をそれぞれ1つずつの5つのグループに分割し、一のグループの装入スリーブ21を装入孔16から取り外して当該装入孔16を閉止した後に、他のグループの装入スリーブ21を装入孔16から取り外して当該装入孔16を閉止するようにして、装入スリーブ21の取り外しを順次行うので、5つの装入孔16(16a,16b,16c、16d,16e)について、開放/閉止が順次実施されることになる。よって、装入スリーブ21を取り外す際に外気が導入される開口面積を少なく抑えることができ、外気が一度に大量に混入することを防止できる。これにより、隣接窯10bを介することなく、装入窯10aからの吸引のみで、装入窯10aの内部のガスをドライメン30側へと確実に排出することができる。
このように、ドライメン30へのガスの吸引量が低減されていることから、ドライメン30の圧力のピーク値を低減できるため、ドライメン30の圧力制御を安定して行うことができる。
【0036】
さらに、本実施形態においては、石炭装入台車20に、装入スリーブ21及びジャンパパイプ22の動作を制御する制御部15が設けられているので、上述のように、ジャンパパイプ22の取り外し、及び、装入スリーブ21の取り外しを確実に実施することができる。
【0037】
以上のように、本実施形態であるコークス炉1の操業方法、コークス炉1の制御システム及びコークス炉1によれば、炭化室10(装入窯10a)から装入スリーブ21及びジャンパパイプ22を取り外した際におけるドライメン30へのガス吸引量を削減することにより、ドライメン30及び炭化室10の内部圧力を制御でき、安定した操業を行うことが可能となる。
【0038】
以上、本発明の実施形態であるコークス炉1の操業方法、コークス炉1の制御システム及びコークス炉1について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、装入孔が5つ設けられた炭化室を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、装入孔の数はいくつあってもよい。
また、石炭装入車の構造は、本実施形態で例示したものに限定されることはない。
【0039】
さらに、5つの装入孔及び装入スリーブを、1つずつのグループに分割し、順次装入スリーブの取り外しを行うものとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば2つの装入孔及び装入スリーブを1つのグループとし、残りの3つを、それぞれ1つずつのグループとして、順次、装入スリーブの取り外しを実施してもよい。
また、本実施形態では、上昇管から最も離れた装入孔16aに装着された装入スリーブ21aから順に装入スリーブ21の取り外しを行うものとして説明したが、装入スリーブを取り外す順序に特に限定はない。
【符号の説明】
【0040】
1 コークス炉
10 炭化室
11 上昇管
13 安水噴射装置
15 スタンドパイプ(接続口)
16 装入孔
17 蓋
20 石炭装入車
21 装入スリーブ
22 ジャンパパイプ
25 制御部
30 ドライメン
32 オフテークメン
34 制御ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列する複数の炭化室と、これら複数の炭化室に接続されたドライメンと、炭化室に石炭を装入する石炭装入車と、石炭を装入する炭化室である装入窯とこの装入窯に隣接する炭化室である隣接窯とを連結するジャンパパイプと、を有するコークス炉の操業方法であって、
前記炭化室には、複数の装入孔と、前記ジャンパパイプに接続される接続口と、が設けられ、
前記石炭装入車には、前記装入窯のそれぞれの装入孔に接続される複数の装入スリーブが設けられており、
前記ジャンパパイプを前記装入窯及び前記隣接窯の接続口に接続するとともに、前記装入窯の前記装入孔に前記装入スリーブを装着した状態で前記石炭の装入を実施する石炭装入工程と、
この石炭装入工程の後に、前記ジャンパパイプを取り外して前記装入窯及び前記隣接窯の前記接続口を閉止するジャンパパイプ取り外し工程と、
前記ジャンパパイプ取り外し工程の後に、前記装入孔から前記装入スリーブを取り外し、前記装入孔を閉止する装入スリーブ取り外し工程と、を有し、
この装入スリーブ取り外し工程では、複数の装入スリーブを2以上のグループに分割し、一のグループの装入スリーブを前記装入孔から取り外して当該装入孔を閉止した後に、他のグループの装入スリーブを前記装入孔から取り外して当該装入孔を閉止し、分割したグループ毎に、順次、前記装入スリーブの取り外しを実施することを特徴とするコークス炉の操業方法。
【請求項2】
並列する複数の炭化室と、これら複数の炭化室に接続されたドライメンと、炭化室に石炭を装入する石炭装入車と、石炭を装入する炭化室である装入窯とこの装入窯に隣接する炭化室である隣接窯とを連結するジャンパパイプと、を有するコークス炉の制御システムであって、
前記炭化室には、複数の装入孔と、前記ジャンパパイプに接続される接続口と、が設けられ、
前記石炭装入車には、前記装入窯のそれぞれの装入孔に接続される複数の装入スリーブが設けられており、
前記装入窯への石炭装入作業の終了後、前記ジャンパパイプの取り外し及び前記接続口が閉止されたことを確認し、
その後、複数の装入スリーブを2以上のグループに分割し、一のグループの装入スリーブを前記装入孔から取り外して当該装入孔が閉止されたことを確認した後に、他のグループの装入スリーブの取り外し動作を開始し、分割したグループ毎に、順次、前記装入スリーブの取り外しを行うように、前記装入スリーブの動作を制御することを特徴とするコークス炉の制御システム。
【請求項3】
並列する複数の炭化室と、これら複数の炭化室に接続されたドライメンと、炭化室に石炭を装入する石炭装入車と、石炭を装入する炭化室である装入窯とこの装入窯に隣接する炭化室である隣接窯とを連結するジャンパパイプと、を有するコークス炉であって、
前記炭化室には、複数の装入孔と、前記ジャンパパイプに接続される接続口と、が設けられ、
前記石炭装入車には、前記装入窯のそれぞれの装入孔に接続される複数の装入スリーブと、前記装入スリーブの動作を制御する制御部と、が設けられており、
前記制御部は、前記装入窯への石炭装入作業の終了後、前記ジャンパパイプの取り外し及び前記接続口が閉止されたことを確認し、その後、複数の装入スリーブを2以上のグループに分割し、一のグループの装入スリーブを前記装入孔から取り外して当該装入孔が閉止されたことを確認した後に、他のグループの装入スリーブの取り外し動作を開始し、分割したグループ毎に、順次、前記装入スリーブの取り外しを行うように、前記装入スリーブの動作を制御することを特徴とするコークス炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−224673(P2012−224673A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91114(P2011−91114)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)