コークス炉の炉壁診断方法
【課題】コークス炉の炉壁状態を正確且つ迅速に診断することができるとともに、炉壁状態の傾向を管理して炉壁トラブルを未然に防止することができるコークス炉の炉壁診断方法を提供する。
【解決手段】コークス炉炭化室の窯口より、炭化室内の炉壁全域を撮影する撮影装置6を挿入し、撮影された炉壁映像から上記炉壁の診断を行うコークス炉の炉壁診断方法において、同一炭化室についてコークス押出し毎に上記撮影装置によって炉壁を撮影し、上記撮影された炉壁映像から、炭化室内の炉長方向複数位置に対応する炉壁画像を切り出し、切り出した上記炉壁画像を、コークス押出しサイクル別にメモリ8aに記憶し、このメモリ8aに記憶された前回押出し時の炉壁画像と、今回押出し時に記憶された炉壁画像とをそれぞれ数値化し、同じ切出位置同士で比較することにより、両炉壁画像における画像の差分を計算し、この差分が、予め設定されているしきい値を超えた場合に炉壁の異常として検出することを特徴とする。
【解決手段】コークス炉炭化室の窯口より、炭化室内の炉壁全域を撮影する撮影装置6を挿入し、撮影された炉壁映像から上記炉壁の診断を行うコークス炉の炉壁診断方法において、同一炭化室についてコークス押出し毎に上記撮影装置によって炉壁を撮影し、上記撮影された炉壁映像から、炭化室内の炉長方向複数位置に対応する炉壁画像を切り出し、切り出した上記炉壁画像を、コークス押出しサイクル別にメモリ8aに記憶し、このメモリ8aに記憶された前回押出し時の炉壁画像と、今回押出し時に記憶された炉壁画像とをそれぞれ数値化し、同じ切出位置同士で比較することにより、両炉壁画像における画像の差分を計算し、この差分が、予め設定されているしきい値を超えた場合に炉壁の異常として検出することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の炉壁に生じた異常部分を迅速に検出するとともに、炉壁の状態を管理することができるコークス炉の炉壁診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コークス炉は、炭化室と燃焼室が炉団方向に交互に配置されている構造からなり、コークス炉の炉上を炉団方向に走行する石炭装入車から炭化室内に石炭が装入され、燃焼室の熱をその炭化室に伝えることにより装入された石炭を乾留しコークスを製造するようになっている。
【0003】
この種のコークス炉の多くは築炉から30年を経過し老朽化しており、炭化室の壁面では、カーボンの付着、成長、剥離が繰り返され、コークス押出し抵抗を増加させている。このコークス押出し抵抗の増加は、押出し力の上昇を招き、窯出しトラブルを引き起こす原因となるため、炉壁の状態を観察することは安定操業を行うために極めて重要な検査項目になっている。
【0004】
炉内観察は、図11に示すようにコークス押出しが行われている時、具体的には、炉蓋が外され、炭化室50で乾留された赤熱コークス51を、ラムビーム52先端のラムヘッド53により炉外に待機しているガイド車(図示しない)に押し出している間に行われ、通常、押出機運転室54の位置からオペレータ55の目視によって行われている。
【0005】
なお、図中56は炉壁に付着したカーボンを示しており、各石炭装入孔57の下方に付着する傾向がある。
【0006】
炉内観察は、炉内温度が約1100℃と高温であり炉の間近まで近寄れないこと、炉幅は450mm前後と狭いのに対し奥行きは約15mと長く視界が悪いこと、また、操業度にもよるが炉内を観察できる時間が約3分程度と制限されていること等、制約も多い。
【0007】
このような事情から、熟練したオペレータ55であっても目視で炉内全体を観察することは容易ではない。
【0008】
そこで、撮影装置を炉内に挿入し、炉体に関する情報を収集して管理、解析するコークス炉炉体診断方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
上記特許文献1には、撮影された炭化室内壁画像から、複数の損傷領域を抽出し、抽出したそれぞれの内壁損傷領域毎に、位置、形態を定量的に示すための複数項目の特徴量が算出され、その特徴量の値から損傷部位の名称が分別され、損傷部位の最大外接長方形大きさで部分画像として切り出され、損傷部位データとして算出かつ収集される点、
上記損傷部位データは、損傷の位置、形態を表現しており、膨大な炭化室内壁画像全域の画像は保持しない点、
損傷部位データの特徴量や損傷名称から、炉団中のどの炭化室にどのような損傷が分布しているか等の検索が容易に行える点、が記載されている。
【特許文献1】特開平11−256166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記診断方法では、炭化室内壁画像全域に亙って、損傷部位データを収集し、炭化室番号と撮影時間と一緒にデータベースに蓄積するようになっているが、損傷部位データの蓄積を終えると、損傷部位の検出に用いた炭化室内壁画像は破棄するようになっている。
【0011】
したがって、炉団中で例えば目地切れが存在する炭化室を検索したり、補修すべき炭化室の順位付けを行うには有効であるが、コークス押出し毎に変化する炉壁の状態を考慮しつつ炉壁の異常を迅速に検出したり、炉壁状態を経時的に観察し炉体の延命化を図るという管理を行うことは困難である。
【0012】
詳しくは、カーボンの炉壁付着状態は日々の操業においても微妙に異なっている。空窯直後の炭化室炉壁は肌荒れした炉壁面が露出しているため表面平滑性が悪い。ところが、その後、カーボンが良好な状態で付着し成長した場合には、煉瓦損傷によって平滑性を失った炭化室炉壁面がカーボンによってコーティングされ、押出抵抗を大幅に軽減することが知られている。
【0013】
したがって、炉壁の診断を正確に行うにはコークス押出し毎に炉壁画像を連続して撮影し、前回の炉壁状態との比較を行わなければ、炉壁を正確に診断することができない。
【0014】
本発明は以上のような従来の炉体診断方法における課題を考慮してなされたものであり、コークス炉の炉壁状態を正確且つ迅速に診断することができるとともに、炉壁状態の傾向を管理して炉壁トラブルを未然に防止することができるコークス炉の炉壁診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、炉壁の異常をリアルタイムに検出する第一の診断方法と、炉壁の傾向を管理する第二の診断方法がある。
【0016】
第一の診断方法は、コークス炉炭化室の窯口より、炭化室内の炉壁全域を撮影する撮影装置を挿入し、撮影された炉壁映像から上記炉壁の診断を行うコークス炉の炉壁診断方法において、
同一炭化室についてコークス押出し毎に上記撮影装置によって炉壁を撮影し、
上記撮影された炉壁映像から、炭化室内の炉長方向複数位置に対応する炉壁画像を切り出し、
切り出した上記炉壁画像を、コークス押出しサイクル別に記憶手段に記憶し、
上記記憶手段に記憶された前回押出し時の炉壁画像と、今回押出し時に記憶された炉壁画像とをそれぞれ数値化し、同じ切出位置同士で比較することにより、両炉壁画像における画像の差分を計算し、
この差分が、予め設定されているしきい値を超えた場合に炉壁の異常として検出することを要旨とする。
【0017】
本発明において、上記炉壁の異常を検出した場合にアラームを報知することが好ましい。
【0018】
本発明において、上記撮影装置をコークス押出し機に常設することにより、コークス炉のすべての炭化室について炉壁画像を撮影することができる。
【0019】
第二の診断方法は、コークス炉炭化室の窯口より、炭化室内の炉壁全域を撮影する撮影装置を挿入し、撮影された炉壁映像から上記炉壁の診断を行うコークス炉の炉壁診断方法において、
同一炭化室についてコークス押出し毎に上記撮影装置によって炉壁を撮影し、
上記撮影された炉壁映像から、炭化室内の炉長方向複数位置に対応する炉壁画像を切り出し、
切り出した上記炉壁画像を、コークス押出しサイクル別に蓄積手段に蓄積し、
上記蓄積手段に蓄積された、特定のコークス押出しサイクルの炉壁画像を基準の炉壁画像とし、この基準炉壁画像と、上記特定のコークス押出しサイクル以降のサイクルでの炉壁画像とをそれぞれ数値化し、同じ切出位置同士で比較することにより、各比較において両炉壁画像における画像の差分を計算し、
この差分を、コークス押出しサイクル数分について履歴として作成し、
上記差分の履歴を観察することにより、炉壁状態の傾向を把握することを要旨とする。
【0020】
上記第一および第二の診断方法において、上記炉壁画像における画像の差分は、両炉壁画像における輝度を数値化することによって求めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第一の診断方法によれば、コークス炉の炉壁状態を正確且つ迅速に診断することができる。
【0022】
本発明の第二の診断方法によれば、炉壁状態の傾向を管理して炉壁トラブルを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明に係るコークス炉の炉壁診断方法に使用する撮影装置および処理装置の構成を示したものである。
【0025】
同図において、コークス押出機1は、ラムヘッド2と、このラムヘッド2を水平方向に往復移動させるためのラムビーム3とからなる押出ラム4を備えており、炭化室内で乾留された赤熱コークスをラムヘッド2によって炉外に押し出すようになっている。
【0026】
上記ラムビーム3上で且つラムヘッド2寄りには支持スタンド5が立設されており、この支持スタンド5に撮影装置6が設置されている。
【0027】
なお、本実施形態では1台の撮影装置6による炉壁の撮影について説明するが、炉壁全域を詳細に撮影する場合には複数台の撮影装置を設置することもできる。例えば、撮影装置6の上方に撮影装置を設置すれば炉壁上部の詳細を撮影することができ、ラムビーム3の下側に撮影装置を設置すれば炉壁下部の詳細を撮影することができる。
【0028】
図中、Aはコークス押出し方向を示し、Bは撮影装置6による観察方向を示し、θaはその撮影装置6に搭載されているCCDカメラの画角を示している。なお、このCCDカメラは冷却機構によって炉内の高温から保護されるようになっている。
【0029】
上記撮影装置6の信号系統は、図示しない巻取装置のドラム一方側から巻き解かれた信号/電源ケーブル6aを介して押出機運転室7内のコンピュータ8と接続され、炉内の映像は、押出機運転室7内のモニター9によりリアルタイムで観察することができるようになっている。なお、コンピュータ8は処理に必要なデータを一時的に記憶する作業メモリ(記憶手段)8aが備えられている。
【0030】
上記コンピュータ8は、押出機運転室7から離れた管理室のデータベース(蓄積手段)10に接続され、このデータベース10は、その管理室のコンピュータ11と接続されている。なお、上記データベース10はハードディスク装置から構成することができる。また、上記コンピュータ8とデータベース10の接続は有線接続に限らず、無線で送信することもできる。
【0031】
また、ラムビーム3をコークス押出し方向(A方向)に移動させる駆動モータ12にはエンコーダ13が搭載されている。このエンコーダ13から出力される位置信号Saは、上記したコンピュータ8に与えられ、コンピュータ8はそのエンコーダ13から出力されるパルス信号に基づき、駆動モータ12の回転数を検出することができ、それにより、上記撮影装置6による撮影位置を計算することができる。
【0032】
上記構成において、コークス押出し時に押出ラム4がプッシャーサイドからコークスサイドに移動すると、エンコーダ13から出力される位置信号Saと、撮影装置6によって撮影された炉壁映像信号Sbがそれぞれコンピュータ8に与えられる。
【0033】
また、炉壁映像信号Sbはモニター9にも与えられ、炉壁の状態をリアルタイムで観察することができるようになっている。
【0034】
上記コンピュータ8は、上記エンコーダ13から出力される位置信号Saを利用し、プッシャーサイド窯口からコークスサイド窯口に向けて、一定間隔毎(本実施形態では100〜300mmピッチ)に上記炉壁映像から炉壁画像を切り出す処理を実行する。
【0035】
また、コンピュータ8は、警報装置14が接続されており、押出し時に異常が検出された場合には、その警報装置14によってアラームを報知するようになっている。
【0036】
上記コンピュータ8は、コークス押出しサイクル毎に上記画像切出し処理を実行し、経時的に得られる炉壁画像データは、位置情報と対応付けられてデータベース10に蓄積される。
【0037】
データベース10は上記コンピュータ11からアクセス可能であり、蓄積された炉壁画像データ等に基づいて、炉壁状態を管理することができるようになっている。
【0038】
以下、炉壁診断方法について説明する。
【0039】
図2は、上記撮影装置付きコークス押出機1と炉壁の配置を示したものである。
【0040】
炭化室Cの炉頂部には、コークス押出し方向に沿って複数の石炭装入孔が配列されており、これらの石炭装入孔の下方の左右両側壁には、カーボンの付着、成長、剥離によって炉壁変化部Dが現れる。
【0041】
図中Eは、その炉壁変化部Dを撮影装置6によって撮影した左右側壁の映像を示しており、この映像Eは、コークス押出しサイクル毎に連続的に、すなわち動画として撮影されるようになっている。なお、図中、Lはプッシャーサイド窯口からコークスサイド窯口までの距離を示しており、本実施形態では15,560mmである。
【0042】
図3は本発明の炉壁診断の概念を図示したものであり、同一の炭化室について、上記の手順で撮影された炉壁映像から一定距離毎に切り出された炉壁画像(静止画)を、押出しサイクル別に並べている。本実施形態では43サイクル〜101サイクルの一部を示している。
【0043】
同図において、各炉壁画像の横方向は押出しサイクル数を示している。また、縦方向は、プッシャーサイド窯口(0mm)からコークスサイド窯口(15,560mm)の間で画像を切出した位置を示している。なお、説明を簡単にするため、押出しサイクルの中間、および切出し位置の中間はそれぞれ省略している。
【0044】
コンピュータ8(図1参照)は、プッシャーサイド窯口からコークスサイド窯口までの間で撮影された炉壁映像から複数の炉壁画像を切り出し、押出しサイクル毎に配列し、炉壁の変化を同じ切出し位置同士で比較する。
【0045】
例えば、隣接する炉壁画像F1と炉壁画像F2とを比較することにより、または隣接する炉壁画像Fn−1とFnとを比較することにより、または中間の隣接する炉壁画像同士を比較することにより、炉壁の異常をリアルタイムで検出することができる。
【0046】
なお、図中、Gはカーボンが剥離することによって生じた亀裂、すなわち異常が検出された部分を示している。
【0047】
また、炉壁画像F1が空窯直後である場合、この炉壁画像F1を基準とし、炉壁画像F1と次のサイクルの炉壁画像F2、炉壁画像F1とさらに次のサイクルの炉壁画像、炉壁画像F1と炉壁画像Fnというように順次、基準炉壁画像と以降のサイクルの炉壁画像とを比較することにより、炉壁状態の傾向を把握することが可能になる。
【0048】
なお、図3では一つの炭化室について炉長方向に撮影した炉壁画像を示しているが、撮影装置6はコークス押出機1の常設されているため、コークス炉のすべての炭化室について炉壁を撮影することが可能である。
【0049】
以下、炉壁診断を行うための、切り出した炉壁画像の解析方法について図4〜図6を参照しながら説明する。
【0050】
図4において、まず、コンピュータ8は、コークス押出しが行われた今回の炉壁画像を作業メモリ8aから読み込む(ステップS1)。
【0051】
次いで、外乱等を削除する目的で画像のぼかし処理を行うとともに、右側炉壁画像について楕円に切り取った範囲を解析範囲MRとし、左側炉壁について同じく楕円に切り取った範囲を解析範囲MLとする(ステップS2)。
【0052】
なお、楕円に切り取る理由は、炉壁画像の周辺部分については撮影条件等に起因する差が大きく、炉壁画像の比較に適さないからである。
【0053】
上記ぼかし処理は、図6(a)に示すように、炉壁画像上でターゲットマスTを決め、このターゲットマスTを含み、その周囲のマス(本実施形態では太実線S内の3×3マス)の輝度の平均値を取り、この平均値をターゲットマスTの輝度とするという処理を、炉壁画像内のすべてのマスについて行う。
【0054】
図6(a)の例で説明すると、(3+2+3+1+3+2+2+1+1)/9=2
となり、この平均値2をターゲットマスTの輝度として置き換える。
【0055】
また、炉壁画像端部のマスについては、図6(b)に示すように、境界部分Uで輝度(3,2,3)の値をコピーする。
【0056】
この場合のターゲットマスT′の輝度は(3+2+3+3+2+3+1+3+2)/9=2.4となる。
【0057】
このようにして炉壁画像に対し、ぼかし処理が施される。
【0058】
図4に戻って説明する。
【0059】
今回の炉壁画像の平均輝度Vbを算出する(ステップS3)。
【0060】
次に、前回コークス押出しサイクル時の同じ切出し位置の炉壁画像を読み込む(ステップS4)。
【0061】
この前回の炉壁画像についても、ステップS2と同様に、ぼかし処理を行うとともに解析範囲を指定する(ステップS5)。
【0062】
次いで、前回サイクルの炉壁画像の平均輝度Vaを算出する(ステップS6)。
【0063】
次いで、前回の炉壁画像の輝度に、今回の炉壁画像の輝度を合わせる補正を行なう(ステップS7)。
【0064】
上記補正は、補正対象炉壁画像内の各ピクセルの輝度を(Va/Vb)倍することにより、今回炉壁画像の平均輝度を前回炉壁画像の輝度に合わせ込む。具体的には、Va=200、Vb=206である場合、補正対象炉壁画像のある点を代表としてその点の輝度がR=254、G=161、B=55とすると、R:254×200/206=246、G:161×200/206=156、B:55×200/206=53と補正する。この輝度補正を、補正対象炉壁画像のすべてのピクセルに対して行う。
【0065】
次いで、今回の炉壁画像と前回の炉壁画像の差分画像を取得する(ステップS8)。
【0066】
差分計算は、例えば、前回の炉壁画像における輝度データが、R=228,G=136,B=37であり、今回の炉壁画像の輝度データが、R=236,G=142,B=33であるとすると、前回の炉壁画像の輝度−今回の炉壁画像の輝度+128をピクセル毎に計算する。
R=228−236+128=120
G=136−142+128=122
B=37−33+128=132
となり、三色の平均は125となる。
なお、128は、輝度を256階調で表現した際の中間値である。
【0067】
差分算出後の輝度分布をグラフにすると、図7に示すようになる。
【0068】
両炉壁画像の輝度が同じであれば128になり、両炉壁画像の差が少なければ少ないほど128に近づくため、128±10の範囲より外側のピクセル(図中、Pa、Pbで示した領域)を画像の差分として抽出している。具体的には輝度118(しきい値)未満、若しくは輝度138(しきい値)を超えるものを差分画像として取得している。
【0069】
なお、上記しきい値は、変化のあった部位を検出する精度を高めるために適宜設定される。
【0070】
図5に示すように、差分画像MDについて、上記しきい値を超える領域をピクセル単位で測り、変化のあった部位を抽出する(ステップS9)。
【0071】
同図において、解析範囲ML内に複数、島状に見える領域NL、および解析範囲MR内に複数、島状に見える領域NRが上記しきい値以上の領域を示している。これらの領域NLおよびNRは、他に比べて輝度の変化が大きい部分であり、炉壁異常部分を示している。
【0072】
上述した解析をコークス押出しサイクル毎に自動的に行なえば、炉壁の状態を上記ピクセル数に基づいて診断することが可能になり、押出し電力の上昇を招く大きな原因となるカーボン付着状態(成長または剥離)、炉壁破孔、亀裂、炉壁の肌荒れをリアルタイムで検出することができる。
【0073】
また、補修を必要とする異常部位を検出した場合には警報装置14からアラームを報知することができ、アラームが報知されると、その異常部位が検出された炭化室については次の石炭装入を中止する等、迅速な処置を取ることができる。それにより、詰まり窯等の押出しトラブルを未然に防止することができる。
【0074】
また、炉壁破孔をリアルタイムで発見してアラームを報知することができるため、従来のように、装入してしまった石炭が、破孔部分を通して燃焼室や蓄熱室内に入り込むといった二次的トラブルを回避することができる。
【0075】
結果として、炉壁の損傷を低減することができるとともに、補修の低コスト化や工期短縮を図ることができるようになる。
【0076】
また、上記処理によって得られた炭化室毎の解析結果は、データベース10に順次蓄積されるため、コンピュータ11からアクセスすることができる。このデータベース10を利用した炉壁診断は、炉壁の傾向管理に役立てることができる。
【0077】
図8は、押出しサイクルと押出し電力の関係を示したグラフである。
【0078】
同グラフにおいて、横軸は押出しサイクルを示し、縦軸は押出し電力を示している。
【0079】
押出しサイクル“0”は空窯(カーボンを除去した状態)を示し、グラフ右側に向けてコークス製造サイクルが増加し、“120”サイクル目で再び空窯にした操業内容を示している。
【0080】
押出しサイクル“0”ではカーボンが除去されて炉壁が肌荒れした状態にあり、それによりグラフ中、H1に示すように、押出し電力は増加し且つ不安定な状態になるが、押出しサイクルが増えるにつれ、カーボンが良好に付着して壁面の平滑性が向上し、結果としてグラフ中、H2部分に示すように押出し電力は安定していく。
【0081】
また、図中、H3部分に示すように、押出しサイクルが“100”を超えたときから押出し電力が増加しているが、これは炉壁カーボンが剥離したことを示している。
【0082】
上記H1およびH3部分では、それぞれ撮影装置6によって撮影された炉壁画像から肌荒れが観察されており、炉壁の肌荒れは押出し電力の増加と相関していることが確認できる。
【0083】
図9は、図8に示した押出し電力のグラフの一部を拡大し、本発明の診断方法によって計算された差分のピクセル数(数値化データ)を重ね合わせたものである。
【0084】
図9のグラフにおいて、横軸は押出しサイクル、左側縦軸は押出し電力、右側縦軸は炉壁画像を比較することによって計算されたピクセル数を示している。
【0085】
同グラフにおいて、押出し電力が増加するH3部分より前のサイクルで、しきい値を超えるピクセル数P1が現れる。このピクセル数P1は、図5で説明したように、しきい値以上の領域NLまたはNRに対応している。
【0086】
上記しきい値を超えるピクセル数P1が発生した時点から押出し電力が増加しており、上記したように、押出し電力の増加と炉壁の肌荒れとは相関していることから、しきい値を超えるピクセル数P1を検出することにより、炉壁の異常を迅速に検出することができる。
【0087】
図10は、図3に示したように、炉壁画像F1を基準画像として以降の炉壁画像との間で順次、比較を行い、ピクセル数の推移をグラフに示したものである。
【0088】
なお、炉壁画像の比較は、コンピュータ11がデータベース10に蓄積されている基準画像としての炉壁画像を読み出し、次いで比較対象となる炉壁画像を順番に読み出し、上記基準画像と比較対象の炉壁画像と比較する。
【0089】
同グラフに示すように、ピクセル数の推移は押出し電力の推移と相関関係がある。図中、H4部分は、カーボン除去によって炉壁表面に肌荒れが生じた後、カーボンの良好な付着により押出し電力が徐々に低下していく状態を示している。一方、H4の範囲に対応するピクセル数は、押出しサイクル毎に、前回と今回の炉壁画像に差分が生じるため、値は増加する。
【0090】
H5部分は、炉壁のカーボンが良好な状態で付着し、押出し電力も安定していることを示しており、このH5の範囲に対応するピクセル数は、押出しサイクル毎に得られる前回炉壁画像と今回炉壁画像との間に生じる差分が小さいため安定している。
【0091】
したがって、データベース10に蓄積された炉壁画像を比較することによって得られたピクセル数を経時的に記し、履歴としてグラフにすれば、炉壁状態の変化の傾向を把握することが可能になる。すなわち、炉壁の管理が可能になる。
【0092】
炉壁状態の変化の傾向が把握できれば、空窯までの最適補修周期を決定することができる。
【0093】
また、炉壁の傾向を把握することが可能になるため、例えば、配合条件によってカーボンの付着が予想よりも速くなっているということも把握することができるようになる。
【0094】
また、カーボンの付着、成長が遅いという傾向を把握することができれば、安定操業に適した装入炭の配合を知ることができ、本発明のコークス炉の炉壁診断方法を配合炭の評価に使用することもできる。
【0095】
また、窯口は窯出し時の温度変化が大きいことから特に劣化しやすいが、炉壁が剥離・肌荒れしてく様子が経時的に把握できれば、本発明のコークス炉の炉壁診断方法を、ケイ石煉瓦および溶射材の評価にも使用することができるようになる。
【0096】
さらには、次回溶射補修の適正な時期を把握することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係るコークス炉の炉壁診断方法に使用する装置構成を示した説明図である。
【図2】図1に示すコークス押出機と炉壁の配置を示した側面図である。
【図3】図1に示す炉壁観察装置によって撮影された動画から切り出した炉壁画像を、サイクル別に並べた説明図である。
【図4】本発明の炉壁診断方法の解析手順を示す説明図である。
【図5】図4に連続する炉壁診断方法の解析手順を示す説明図である。
【図6】図4に示すぼかし処理を説明するための説明図である。
【図7】差分画像の輝度分布を示したグラフである。
【図8】押出しサイクルと押出し電力との関係を示すグラフである。
【図9】押出し電力とピクセル数(数値化データ)との関係を示すグラフである。
【図10】押出し電力の推移とピクセル数の推移を示すグラフである。
【図11】従来の炉内観察方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0098】
1 コークス押出機
2 ラムヘッド
3 ラムビーム
4 押出ラム
5 支持スタンド
6 撮影装置
6a ケーブル
7 押出機運転室
8 コンピュータ
8a 作業メモリ
9 モニター
10 データベース
11 コンピュータ
12 駆動モータ
13 エンコーダ
14 警報装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の炉壁に生じた異常部分を迅速に検出するとともに、炉壁の状態を管理することができるコークス炉の炉壁診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コークス炉は、炭化室と燃焼室が炉団方向に交互に配置されている構造からなり、コークス炉の炉上を炉団方向に走行する石炭装入車から炭化室内に石炭が装入され、燃焼室の熱をその炭化室に伝えることにより装入された石炭を乾留しコークスを製造するようになっている。
【0003】
この種のコークス炉の多くは築炉から30年を経過し老朽化しており、炭化室の壁面では、カーボンの付着、成長、剥離が繰り返され、コークス押出し抵抗を増加させている。このコークス押出し抵抗の増加は、押出し力の上昇を招き、窯出しトラブルを引き起こす原因となるため、炉壁の状態を観察することは安定操業を行うために極めて重要な検査項目になっている。
【0004】
炉内観察は、図11に示すようにコークス押出しが行われている時、具体的には、炉蓋が外され、炭化室50で乾留された赤熱コークス51を、ラムビーム52先端のラムヘッド53により炉外に待機しているガイド車(図示しない)に押し出している間に行われ、通常、押出機運転室54の位置からオペレータ55の目視によって行われている。
【0005】
なお、図中56は炉壁に付着したカーボンを示しており、各石炭装入孔57の下方に付着する傾向がある。
【0006】
炉内観察は、炉内温度が約1100℃と高温であり炉の間近まで近寄れないこと、炉幅は450mm前後と狭いのに対し奥行きは約15mと長く視界が悪いこと、また、操業度にもよるが炉内を観察できる時間が約3分程度と制限されていること等、制約も多い。
【0007】
このような事情から、熟練したオペレータ55であっても目視で炉内全体を観察することは容易ではない。
【0008】
そこで、撮影装置を炉内に挿入し、炉体に関する情報を収集して管理、解析するコークス炉炉体診断方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
上記特許文献1には、撮影された炭化室内壁画像から、複数の損傷領域を抽出し、抽出したそれぞれの内壁損傷領域毎に、位置、形態を定量的に示すための複数項目の特徴量が算出され、その特徴量の値から損傷部位の名称が分別され、損傷部位の最大外接長方形大きさで部分画像として切り出され、損傷部位データとして算出かつ収集される点、
上記損傷部位データは、損傷の位置、形態を表現しており、膨大な炭化室内壁画像全域の画像は保持しない点、
損傷部位データの特徴量や損傷名称から、炉団中のどの炭化室にどのような損傷が分布しているか等の検索が容易に行える点、が記載されている。
【特許文献1】特開平11−256166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記診断方法では、炭化室内壁画像全域に亙って、損傷部位データを収集し、炭化室番号と撮影時間と一緒にデータベースに蓄積するようになっているが、損傷部位データの蓄積を終えると、損傷部位の検出に用いた炭化室内壁画像は破棄するようになっている。
【0011】
したがって、炉団中で例えば目地切れが存在する炭化室を検索したり、補修すべき炭化室の順位付けを行うには有効であるが、コークス押出し毎に変化する炉壁の状態を考慮しつつ炉壁の異常を迅速に検出したり、炉壁状態を経時的に観察し炉体の延命化を図るという管理を行うことは困難である。
【0012】
詳しくは、カーボンの炉壁付着状態は日々の操業においても微妙に異なっている。空窯直後の炭化室炉壁は肌荒れした炉壁面が露出しているため表面平滑性が悪い。ところが、その後、カーボンが良好な状態で付着し成長した場合には、煉瓦損傷によって平滑性を失った炭化室炉壁面がカーボンによってコーティングされ、押出抵抗を大幅に軽減することが知られている。
【0013】
したがって、炉壁の診断を正確に行うにはコークス押出し毎に炉壁画像を連続して撮影し、前回の炉壁状態との比較を行わなければ、炉壁を正確に診断することができない。
【0014】
本発明は以上のような従来の炉体診断方法における課題を考慮してなされたものであり、コークス炉の炉壁状態を正確且つ迅速に診断することができるとともに、炉壁状態の傾向を管理して炉壁トラブルを未然に防止することができるコークス炉の炉壁診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、炉壁の異常をリアルタイムに検出する第一の診断方法と、炉壁の傾向を管理する第二の診断方法がある。
【0016】
第一の診断方法は、コークス炉炭化室の窯口より、炭化室内の炉壁全域を撮影する撮影装置を挿入し、撮影された炉壁映像から上記炉壁の診断を行うコークス炉の炉壁診断方法において、
同一炭化室についてコークス押出し毎に上記撮影装置によって炉壁を撮影し、
上記撮影された炉壁映像から、炭化室内の炉長方向複数位置に対応する炉壁画像を切り出し、
切り出した上記炉壁画像を、コークス押出しサイクル別に記憶手段に記憶し、
上記記憶手段に記憶された前回押出し時の炉壁画像と、今回押出し時に記憶された炉壁画像とをそれぞれ数値化し、同じ切出位置同士で比較することにより、両炉壁画像における画像の差分を計算し、
この差分が、予め設定されているしきい値を超えた場合に炉壁の異常として検出することを要旨とする。
【0017】
本発明において、上記炉壁の異常を検出した場合にアラームを報知することが好ましい。
【0018】
本発明において、上記撮影装置をコークス押出し機に常設することにより、コークス炉のすべての炭化室について炉壁画像を撮影することができる。
【0019】
第二の診断方法は、コークス炉炭化室の窯口より、炭化室内の炉壁全域を撮影する撮影装置を挿入し、撮影された炉壁映像から上記炉壁の診断を行うコークス炉の炉壁診断方法において、
同一炭化室についてコークス押出し毎に上記撮影装置によって炉壁を撮影し、
上記撮影された炉壁映像から、炭化室内の炉長方向複数位置に対応する炉壁画像を切り出し、
切り出した上記炉壁画像を、コークス押出しサイクル別に蓄積手段に蓄積し、
上記蓄積手段に蓄積された、特定のコークス押出しサイクルの炉壁画像を基準の炉壁画像とし、この基準炉壁画像と、上記特定のコークス押出しサイクル以降のサイクルでの炉壁画像とをそれぞれ数値化し、同じ切出位置同士で比較することにより、各比較において両炉壁画像における画像の差分を計算し、
この差分を、コークス押出しサイクル数分について履歴として作成し、
上記差分の履歴を観察することにより、炉壁状態の傾向を把握することを要旨とする。
【0020】
上記第一および第二の診断方法において、上記炉壁画像における画像の差分は、両炉壁画像における輝度を数値化することによって求めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第一の診断方法によれば、コークス炉の炉壁状態を正確且つ迅速に診断することができる。
【0022】
本発明の第二の診断方法によれば、炉壁状態の傾向を管理して炉壁トラブルを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明に係るコークス炉の炉壁診断方法に使用する撮影装置および処理装置の構成を示したものである。
【0025】
同図において、コークス押出機1は、ラムヘッド2と、このラムヘッド2を水平方向に往復移動させるためのラムビーム3とからなる押出ラム4を備えており、炭化室内で乾留された赤熱コークスをラムヘッド2によって炉外に押し出すようになっている。
【0026】
上記ラムビーム3上で且つラムヘッド2寄りには支持スタンド5が立設されており、この支持スタンド5に撮影装置6が設置されている。
【0027】
なお、本実施形態では1台の撮影装置6による炉壁の撮影について説明するが、炉壁全域を詳細に撮影する場合には複数台の撮影装置を設置することもできる。例えば、撮影装置6の上方に撮影装置を設置すれば炉壁上部の詳細を撮影することができ、ラムビーム3の下側に撮影装置を設置すれば炉壁下部の詳細を撮影することができる。
【0028】
図中、Aはコークス押出し方向を示し、Bは撮影装置6による観察方向を示し、θaはその撮影装置6に搭載されているCCDカメラの画角を示している。なお、このCCDカメラは冷却機構によって炉内の高温から保護されるようになっている。
【0029】
上記撮影装置6の信号系統は、図示しない巻取装置のドラム一方側から巻き解かれた信号/電源ケーブル6aを介して押出機運転室7内のコンピュータ8と接続され、炉内の映像は、押出機運転室7内のモニター9によりリアルタイムで観察することができるようになっている。なお、コンピュータ8は処理に必要なデータを一時的に記憶する作業メモリ(記憶手段)8aが備えられている。
【0030】
上記コンピュータ8は、押出機運転室7から離れた管理室のデータベース(蓄積手段)10に接続され、このデータベース10は、その管理室のコンピュータ11と接続されている。なお、上記データベース10はハードディスク装置から構成することができる。また、上記コンピュータ8とデータベース10の接続は有線接続に限らず、無線で送信することもできる。
【0031】
また、ラムビーム3をコークス押出し方向(A方向)に移動させる駆動モータ12にはエンコーダ13が搭載されている。このエンコーダ13から出力される位置信号Saは、上記したコンピュータ8に与えられ、コンピュータ8はそのエンコーダ13から出力されるパルス信号に基づき、駆動モータ12の回転数を検出することができ、それにより、上記撮影装置6による撮影位置を計算することができる。
【0032】
上記構成において、コークス押出し時に押出ラム4がプッシャーサイドからコークスサイドに移動すると、エンコーダ13から出力される位置信号Saと、撮影装置6によって撮影された炉壁映像信号Sbがそれぞれコンピュータ8に与えられる。
【0033】
また、炉壁映像信号Sbはモニター9にも与えられ、炉壁の状態をリアルタイムで観察することができるようになっている。
【0034】
上記コンピュータ8は、上記エンコーダ13から出力される位置信号Saを利用し、プッシャーサイド窯口からコークスサイド窯口に向けて、一定間隔毎(本実施形態では100〜300mmピッチ)に上記炉壁映像から炉壁画像を切り出す処理を実行する。
【0035】
また、コンピュータ8は、警報装置14が接続されており、押出し時に異常が検出された場合には、その警報装置14によってアラームを報知するようになっている。
【0036】
上記コンピュータ8は、コークス押出しサイクル毎に上記画像切出し処理を実行し、経時的に得られる炉壁画像データは、位置情報と対応付けられてデータベース10に蓄積される。
【0037】
データベース10は上記コンピュータ11からアクセス可能であり、蓄積された炉壁画像データ等に基づいて、炉壁状態を管理することができるようになっている。
【0038】
以下、炉壁診断方法について説明する。
【0039】
図2は、上記撮影装置付きコークス押出機1と炉壁の配置を示したものである。
【0040】
炭化室Cの炉頂部には、コークス押出し方向に沿って複数の石炭装入孔が配列されており、これらの石炭装入孔の下方の左右両側壁には、カーボンの付着、成長、剥離によって炉壁変化部Dが現れる。
【0041】
図中Eは、その炉壁変化部Dを撮影装置6によって撮影した左右側壁の映像を示しており、この映像Eは、コークス押出しサイクル毎に連続的に、すなわち動画として撮影されるようになっている。なお、図中、Lはプッシャーサイド窯口からコークスサイド窯口までの距離を示しており、本実施形態では15,560mmである。
【0042】
図3は本発明の炉壁診断の概念を図示したものであり、同一の炭化室について、上記の手順で撮影された炉壁映像から一定距離毎に切り出された炉壁画像(静止画)を、押出しサイクル別に並べている。本実施形態では43サイクル〜101サイクルの一部を示している。
【0043】
同図において、各炉壁画像の横方向は押出しサイクル数を示している。また、縦方向は、プッシャーサイド窯口(0mm)からコークスサイド窯口(15,560mm)の間で画像を切出した位置を示している。なお、説明を簡単にするため、押出しサイクルの中間、および切出し位置の中間はそれぞれ省略している。
【0044】
コンピュータ8(図1参照)は、プッシャーサイド窯口からコークスサイド窯口までの間で撮影された炉壁映像から複数の炉壁画像を切り出し、押出しサイクル毎に配列し、炉壁の変化を同じ切出し位置同士で比較する。
【0045】
例えば、隣接する炉壁画像F1と炉壁画像F2とを比較することにより、または隣接する炉壁画像Fn−1とFnとを比較することにより、または中間の隣接する炉壁画像同士を比較することにより、炉壁の異常をリアルタイムで検出することができる。
【0046】
なお、図中、Gはカーボンが剥離することによって生じた亀裂、すなわち異常が検出された部分を示している。
【0047】
また、炉壁画像F1が空窯直後である場合、この炉壁画像F1を基準とし、炉壁画像F1と次のサイクルの炉壁画像F2、炉壁画像F1とさらに次のサイクルの炉壁画像、炉壁画像F1と炉壁画像Fnというように順次、基準炉壁画像と以降のサイクルの炉壁画像とを比較することにより、炉壁状態の傾向を把握することが可能になる。
【0048】
なお、図3では一つの炭化室について炉長方向に撮影した炉壁画像を示しているが、撮影装置6はコークス押出機1の常設されているため、コークス炉のすべての炭化室について炉壁を撮影することが可能である。
【0049】
以下、炉壁診断を行うための、切り出した炉壁画像の解析方法について図4〜図6を参照しながら説明する。
【0050】
図4において、まず、コンピュータ8は、コークス押出しが行われた今回の炉壁画像を作業メモリ8aから読み込む(ステップS1)。
【0051】
次いで、外乱等を削除する目的で画像のぼかし処理を行うとともに、右側炉壁画像について楕円に切り取った範囲を解析範囲MRとし、左側炉壁について同じく楕円に切り取った範囲を解析範囲MLとする(ステップS2)。
【0052】
なお、楕円に切り取る理由は、炉壁画像の周辺部分については撮影条件等に起因する差が大きく、炉壁画像の比較に適さないからである。
【0053】
上記ぼかし処理は、図6(a)に示すように、炉壁画像上でターゲットマスTを決め、このターゲットマスTを含み、その周囲のマス(本実施形態では太実線S内の3×3マス)の輝度の平均値を取り、この平均値をターゲットマスTの輝度とするという処理を、炉壁画像内のすべてのマスについて行う。
【0054】
図6(a)の例で説明すると、(3+2+3+1+3+2+2+1+1)/9=2
となり、この平均値2をターゲットマスTの輝度として置き換える。
【0055】
また、炉壁画像端部のマスについては、図6(b)に示すように、境界部分Uで輝度(3,2,3)の値をコピーする。
【0056】
この場合のターゲットマスT′の輝度は(3+2+3+3+2+3+1+3+2)/9=2.4となる。
【0057】
このようにして炉壁画像に対し、ぼかし処理が施される。
【0058】
図4に戻って説明する。
【0059】
今回の炉壁画像の平均輝度Vbを算出する(ステップS3)。
【0060】
次に、前回コークス押出しサイクル時の同じ切出し位置の炉壁画像を読み込む(ステップS4)。
【0061】
この前回の炉壁画像についても、ステップS2と同様に、ぼかし処理を行うとともに解析範囲を指定する(ステップS5)。
【0062】
次いで、前回サイクルの炉壁画像の平均輝度Vaを算出する(ステップS6)。
【0063】
次いで、前回の炉壁画像の輝度に、今回の炉壁画像の輝度を合わせる補正を行なう(ステップS7)。
【0064】
上記補正は、補正対象炉壁画像内の各ピクセルの輝度を(Va/Vb)倍することにより、今回炉壁画像の平均輝度を前回炉壁画像の輝度に合わせ込む。具体的には、Va=200、Vb=206である場合、補正対象炉壁画像のある点を代表としてその点の輝度がR=254、G=161、B=55とすると、R:254×200/206=246、G:161×200/206=156、B:55×200/206=53と補正する。この輝度補正を、補正対象炉壁画像のすべてのピクセルに対して行う。
【0065】
次いで、今回の炉壁画像と前回の炉壁画像の差分画像を取得する(ステップS8)。
【0066】
差分計算は、例えば、前回の炉壁画像における輝度データが、R=228,G=136,B=37であり、今回の炉壁画像の輝度データが、R=236,G=142,B=33であるとすると、前回の炉壁画像の輝度−今回の炉壁画像の輝度+128をピクセル毎に計算する。
R=228−236+128=120
G=136−142+128=122
B=37−33+128=132
となり、三色の平均は125となる。
なお、128は、輝度を256階調で表現した際の中間値である。
【0067】
差分算出後の輝度分布をグラフにすると、図7に示すようになる。
【0068】
両炉壁画像の輝度が同じであれば128になり、両炉壁画像の差が少なければ少ないほど128に近づくため、128±10の範囲より外側のピクセル(図中、Pa、Pbで示した領域)を画像の差分として抽出している。具体的には輝度118(しきい値)未満、若しくは輝度138(しきい値)を超えるものを差分画像として取得している。
【0069】
なお、上記しきい値は、変化のあった部位を検出する精度を高めるために適宜設定される。
【0070】
図5に示すように、差分画像MDについて、上記しきい値を超える領域をピクセル単位で測り、変化のあった部位を抽出する(ステップS9)。
【0071】
同図において、解析範囲ML内に複数、島状に見える領域NL、および解析範囲MR内に複数、島状に見える領域NRが上記しきい値以上の領域を示している。これらの領域NLおよびNRは、他に比べて輝度の変化が大きい部分であり、炉壁異常部分を示している。
【0072】
上述した解析をコークス押出しサイクル毎に自動的に行なえば、炉壁の状態を上記ピクセル数に基づいて診断することが可能になり、押出し電力の上昇を招く大きな原因となるカーボン付着状態(成長または剥離)、炉壁破孔、亀裂、炉壁の肌荒れをリアルタイムで検出することができる。
【0073】
また、補修を必要とする異常部位を検出した場合には警報装置14からアラームを報知することができ、アラームが報知されると、その異常部位が検出された炭化室については次の石炭装入を中止する等、迅速な処置を取ることができる。それにより、詰まり窯等の押出しトラブルを未然に防止することができる。
【0074】
また、炉壁破孔をリアルタイムで発見してアラームを報知することができるため、従来のように、装入してしまった石炭が、破孔部分を通して燃焼室や蓄熱室内に入り込むといった二次的トラブルを回避することができる。
【0075】
結果として、炉壁の損傷を低減することができるとともに、補修の低コスト化や工期短縮を図ることができるようになる。
【0076】
また、上記処理によって得られた炭化室毎の解析結果は、データベース10に順次蓄積されるため、コンピュータ11からアクセスすることができる。このデータベース10を利用した炉壁診断は、炉壁の傾向管理に役立てることができる。
【0077】
図8は、押出しサイクルと押出し電力の関係を示したグラフである。
【0078】
同グラフにおいて、横軸は押出しサイクルを示し、縦軸は押出し電力を示している。
【0079】
押出しサイクル“0”は空窯(カーボンを除去した状態)を示し、グラフ右側に向けてコークス製造サイクルが増加し、“120”サイクル目で再び空窯にした操業内容を示している。
【0080】
押出しサイクル“0”ではカーボンが除去されて炉壁が肌荒れした状態にあり、それによりグラフ中、H1に示すように、押出し電力は増加し且つ不安定な状態になるが、押出しサイクルが増えるにつれ、カーボンが良好に付着して壁面の平滑性が向上し、結果としてグラフ中、H2部分に示すように押出し電力は安定していく。
【0081】
また、図中、H3部分に示すように、押出しサイクルが“100”を超えたときから押出し電力が増加しているが、これは炉壁カーボンが剥離したことを示している。
【0082】
上記H1およびH3部分では、それぞれ撮影装置6によって撮影された炉壁画像から肌荒れが観察されており、炉壁の肌荒れは押出し電力の増加と相関していることが確認できる。
【0083】
図9は、図8に示した押出し電力のグラフの一部を拡大し、本発明の診断方法によって計算された差分のピクセル数(数値化データ)を重ね合わせたものである。
【0084】
図9のグラフにおいて、横軸は押出しサイクル、左側縦軸は押出し電力、右側縦軸は炉壁画像を比較することによって計算されたピクセル数を示している。
【0085】
同グラフにおいて、押出し電力が増加するH3部分より前のサイクルで、しきい値を超えるピクセル数P1が現れる。このピクセル数P1は、図5で説明したように、しきい値以上の領域NLまたはNRに対応している。
【0086】
上記しきい値を超えるピクセル数P1が発生した時点から押出し電力が増加しており、上記したように、押出し電力の増加と炉壁の肌荒れとは相関していることから、しきい値を超えるピクセル数P1を検出することにより、炉壁の異常を迅速に検出することができる。
【0087】
図10は、図3に示したように、炉壁画像F1を基準画像として以降の炉壁画像との間で順次、比較を行い、ピクセル数の推移をグラフに示したものである。
【0088】
なお、炉壁画像の比較は、コンピュータ11がデータベース10に蓄積されている基準画像としての炉壁画像を読み出し、次いで比較対象となる炉壁画像を順番に読み出し、上記基準画像と比較対象の炉壁画像と比較する。
【0089】
同グラフに示すように、ピクセル数の推移は押出し電力の推移と相関関係がある。図中、H4部分は、カーボン除去によって炉壁表面に肌荒れが生じた後、カーボンの良好な付着により押出し電力が徐々に低下していく状態を示している。一方、H4の範囲に対応するピクセル数は、押出しサイクル毎に、前回と今回の炉壁画像に差分が生じるため、値は増加する。
【0090】
H5部分は、炉壁のカーボンが良好な状態で付着し、押出し電力も安定していることを示しており、このH5の範囲に対応するピクセル数は、押出しサイクル毎に得られる前回炉壁画像と今回炉壁画像との間に生じる差分が小さいため安定している。
【0091】
したがって、データベース10に蓄積された炉壁画像を比較することによって得られたピクセル数を経時的に記し、履歴としてグラフにすれば、炉壁状態の変化の傾向を把握することが可能になる。すなわち、炉壁の管理が可能になる。
【0092】
炉壁状態の変化の傾向が把握できれば、空窯までの最適補修周期を決定することができる。
【0093】
また、炉壁の傾向を把握することが可能になるため、例えば、配合条件によってカーボンの付着が予想よりも速くなっているということも把握することができるようになる。
【0094】
また、カーボンの付着、成長が遅いという傾向を把握することができれば、安定操業に適した装入炭の配合を知ることができ、本発明のコークス炉の炉壁診断方法を配合炭の評価に使用することもできる。
【0095】
また、窯口は窯出し時の温度変化が大きいことから特に劣化しやすいが、炉壁が剥離・肌荒れしてく様子が経時的に把握できれば、本発明のコークス炉の炉壁診断方法を、ケイ石煉瓦および溶射材の評価にも使用することができるようになる。
【0096】
さらには、次回溶射補修の適正な時期を把握することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係るコークス炉の炉壁診断方法に使用する装置構成を示した説明図である。
【図2】図1に示すコークス押出機と炉壁の配置を示した側面図である。
【図3】図1に示す炉壁観察装置によって撮影された動画から切り出した炉壁画像を、サイクル別に並べた説明図である。
【図4】本発明の炉壁診断方法の解析手順を示す説明図である。
【図5】図4に連続する炉壁診断方法の解析手順を示す説明図である。
【図6】図4に示すぼかし処理を説明するための説明図である。
【図7】差分画像の輝度分布を示したグラフである。
【図8】押出しサイクルと押出し電力との関係を示すグラフである。
【図9】押出し電力とピクセル数(数値化データ)との関係を示すグラフである。
【図10】押出し電力の推移とピクセル数の推移を示すグラフである。
【図11】従来の炉内観察方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0098】
1 コークス押出機
2 ラムヘッド
3 ラムビーム
4 押出ラム
5 支持スタンド
6 撮影装置
6a ケーブル
7 押出機運転室
8 コンピュータ
8a 作業メモリ
9 モニター
10 データベース
11 コンピュータ
12 駆動モータ
13 エンコーダ
14 警報装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉炭化室の窯口より、炭化室内の炉壁全域を撮影する撮影装置を挿入し、撮影された炉壁映像から上記炉壁の診断を行うコークス炉の炉壁診断方法において、
同一炭化室についてコークス押出し毎に上記撮影装置によって炉壁を撮影し、
上記撮影された炉壁映像から、炭化室内の炉長方向複数位置に対応する炉壁画像を切り出し、
切り出した上記炉壁画像を、コークス押出しサイクル別に記憶手段に記憶し、
上記記憶手段に記憶された前回押出し時の炉壁画像と、今回押出し時に記憶された炉壁画像とをそれぞれ数値化し、同じ切出位置同士で比較することにより、両炉壁画像における画像の差分を計算し、
この差分が、予め設定されているしきい値を超えた場合に炉壁の異常として検出することを特徴とするコークス炉の炉壁診断方法。
【請求項2】
上記炉壁の異常を検出した場合にアラームを報知する請求項1記載のコークス炉の炉壁診断方法。
【請求項3】
上記撮影装置をコークス押出し機に常設することにより、コークス炉のすべての炭化室について炉壁映像を撮影する請求項1または2記載のコークス炉の炉壁診断方法。
【請求項4】
コークス炉炭化室の窯口より、炭化室内の炉壁全域を撮影する撮影装置を挿入し、撮影された炉壁映像から上記炉壁の診断を行うコークス炉の炉壁診断方法において、
同一炭化室についてコークス押出し毎に上記撮影装置によって炉壁を撮影し、
上記撮影された炉壁映像から、炭化室内の炉長方向複数位置に対応する炉壁画像を切り出し、
切り出した上記炉壁画像を、コークス押出しサイクル別に蓄積手段に蓄積し、
上記蓄積手段に蓄積された、特定のコークス押出しサイクルの炉壁画像を基準の炉壁画像とし、この基準炉壁画像と、上記特定のコークス押出しサイクル以降のサイクルでの炉壁画像とをそれぞれ数値化し、同じ切出位置同士で比較することにより、各比較において両炉壁画像における画像の差分を計算し、
この差分を、コークス押出しサイクル数分について履歴として作成し、
上記差分の履歴を観察することにより、炉壁状態の傾向を把握することを特徴とするコークス炉の炉壁診断方法。
【請求項5】
上記炉壁画像における画像の差分を、両炉壁画像における輝度を数値化することによって求める請求項1〜4のいずれか1項に記載のコークス炉の炉壁診断方法。
【請求項1】
コークス炉炭化室の窯口より、炭化室内の炉壁全域を撮影する撮影装置を挿入し、撮影された炉壁映像から上記炉壁の診断を行うコークス炉の炉壁診断方法において、
同一炭化室についてコークス押出し毎に上記撮影装置によって炉壁を撮影し、
上記撮影された炉壁映像から、炭化室内の炉長方向複数位置に対応する炉壁画像を切り出し、
切り出した上記炉壁画像を、コークス押出しサイクル別に記憶手段に記憶し、
上記記憶手段に記憶された前回押出し時の炉壁画像と、今回押出し時に記憶された炉壁画像とをそれぞれ数値化し、同じ切出位置同士で比較することにより、両炉壁画像における画像の差分を計算し、
この差分が、予め設定されているしきい値を超えた場合に炉壁の異常として検出することを特徴とするコークス炉の炉壁診断方法。
【請求項2】
上記炉壁の異常を検出した場合にアラームを報知する請求項1記載のコークス炉の炉壁診断方法。
【請求項3】
上記撮影装置をコークス押出し機に常設することにより、コークス炉のすべての炭化室について炉壁映像を撮影する請求項1または2記載のコークス炉の炉壁診断方法。
【請求項4】
コークス炉炭化室の窯口より、炭化室内の炉壁全域を撮影する撮影装置を挿入し、撮影された炉壁映像から上記炉壁の診断を行うコークス炉の炉壁診断方法において、
同一炭化室についてコークス押出し毎に上記撮影装置によって炉壁を撮影し、
上記撮影された炉壁映像から、炭化室内の炉長方向複数位置に対応する炉壁画像を切り出し、
切り出した上記炉壁画像を、コークス押出しサイクル別に蓄積手段に蓄積し、
上記蓄積手段に蓄積された、特定のコークス押出しサイクルの炉壁画像を基準の炉壁画像とし、この基準炉壁画像と、上記特定のコークス押出しサイクル以降のサイクルでの炉壁画像とをそれぞれ数値化し、同じ切出位置同士で比較することにより、各比較において両炉壁画像における画像の差分を計算し、
この差分を、コークス押出しサイクル数分について履歴として作成し、
上記差分の履歴を観察することにより、炉壁状態の傾向を把握することを特徴とするコークス炉の炉壁診断方法。
【請求項5】
上記炉壁画像における画像の差分を、両炉壁画像における輝度を数値化することによって求める請求項1〜4のいずれか1項に記載のコークス炉の炉壁診断方法。
【図1】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2009−57491(P2009−57491A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227011(P2007−227011)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000156961)関西熱化学株式会社 (117)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000156961)関西熱化学株式会社 (117)
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