説明

コークス炉ガス歩留りの推定方法及びコークスの製造方法

【課題】コークス炉ガス歩留りを従来よりも精度よく推定することができるコークス炉ガス歩留り推定方法、および目標となるコークス炉ガス歩留りと実績との差異をより小さくすることができるコークスの製造方法を提供する。
【解決手段】石炭の揮発分量VM(質量%、dry)、炭素含有量C(質量%、dry)、固定炭素量FC(質量%、dry)、酸素含有量O(質量%、dry)、硫黄含有量(質量%、dry)および水素含有量H(質量%、dry)に基づき、推定コークス炉ガス発熱量Ccog(kcal/kg 石炭)を算出し、該算出されたコークス炉ガス発熱量Ccogに基づき、4800kcal/N m3換算コークス炉ガス歩留りY(N m3/t石炭)を推定することを特徴とするコークス炉ガス歩留りの推定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室炉式コークス炉における4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留りの推定方法及びその推定方法を用いたコークスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭を室炉式コークス炉に装入してコークスを製造する際に、コークス炉ガスが発生する。コークス炉が一貫製鉄所の構内あるいは隣接地に配置されているときには、コークス炉ガスは製鉄所のエネルギー源として重要な位置を占めている。従って、コークス炉ガスの発生量やカロリーが予定外に変動すると、製鉄所内のエネルギーバランスに大きな影響を及ぼすため、常に計画通りの発生量およびそのカロリーを達成することが要求される。また、ガス発生量やカロリーに変動が生じる場合においても、事前に変動が予知され、その計画的な変動に応じて製鉄所内のエネルギーバランスに対処(例えば、エネルギー源の別途確保)を加えることが必要である。したがって、得られるコークス炉ガスの発生量を精度良く予測できることが求められている。
【0003】
該コークス炉ガスの発生量の予測において、コークス炉に装入する石炭の銘柄毎にコークス炉ガスの発生量が異なるので、配合する各単味炭の特性に基づいてコークス炉ガス発生量を精度良く予測することが要求される。なお、本明細書においては、コークス炉ガスの発生量とガス中のカロリーとを総合する指標として、石炭トン当たりに発生するコークス炉ガス発生量であって、カロリー4800kcal/Nm3換算したコークス炉ガス発生量(Nm3/t石炭)を、コークス炉ガス歩留りと呼んで用いることとする。
【0004】
ところで、従来、コークス炉ガスの発生量は、石炭の揮発分量VM(質量%、dry)の関数を用いて予測されていた。しかしながら、非微粘結炭を使用したときに生成ガスの発生量が予測値より低下する現象が見られた。そのため、非微粘結炭使用時においても精度よくコークス炉ガスの発生量を予測でき、さらにはコークス炉ガスのカロリーについても考慮したコークス炉ガス歩留り方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【0005】
特許文献1に記載のコークス炉ガス歩留り推定方法は、石炭の揮発分量VM(質量%、dry)と石炭の酸素含有量O(質量%、dry)とに基づき、VMとVM×Oの所定の関数を用いてコークス炉ガス歩留りを推定する。該特許文献1に記載のコークス炉ガス歩留り推定方法によれば、非微粘結炭使用時においてもコークス炉ガス歩留りを精度よく推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-001994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、エネルギー利用のさらなる効率化に対する要求が高まっており、したがってコークス炉ガス歩留りをさらに精度よく推定できる方法が求められている。
【0008】
本発明はこのような事情に基づきなされたものであり、コークス炉ガス歩留りを従来よりも精度よく推定することができるコークス炉ガス歩留り推定方法を提供することを第1の目的とする。また、目標となるコークス炉ガス歩留りと実績との差異をより小さくすることができるコークスの製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者はこのような課題の解決に取り組むにあたり、コークス炉ガス(COG:Coke Oven Gas)の発熱量の推定に基づきコークス炉ガス歩留りを推定することを着想した。そして、種々の組成を有する石炭を用い、推定されるコークス炉ガス発熱量とコークス炉ガス歩留り実績との関係を調査したところ、VMとVM×Oによって推定するよりもさらに精度よくコークス炉ガス歩留りを推定できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その発明の要旨とするところは以下のとおりである。
1)石炭の揮発分量VM(質量%、dry)、炭素含有量C(質量%、dry)、固定炭素量FC(質量%、dry)、酸素含有量O(質量%、dry)、硫黄含有量S(質量%、dry)および水素含有量H(質量%、dry)に基づき、下記式(1)を用いて、単位質量石炭から発生するコークス炉ガスCOGの発熱量(kcal/kg 石炭)の推定値である推定コークス炉ガス発熱量Ccog(kcal/kg 石炭)を算出し、
算出された該推定コークス炉ガス発熱量Ccogに基づき4800kcal/N m3換算コークス炉ガス歩留りY(N m3/t 石炭)を推定することを特徴とするコークス炉ガス歩留りの推定方法。

Ccog=81×[C-(FC+d×VM)-(O/16)×e×12/2]+342.5×[H-O×(1-e)/8]+22.50×S-583.16×[8.94×H/100]・・・(1)
ここで、dおよびeは定数である。
2)前記定数dおよびeを、単位質量石炭から発生するコークス炉ガス発熱量の測定値である実績コークス炉ガス発熱量(kcal/kg 石炭)と、該実績コークス炉ガス発熱量(kcal/kg 石炭)と対応する石炭の揮発分量VM(質量%、dry)、炭素含有量C(質量%、dry)、固定炭素量FC(質量%、dry)、酸素含有量O(質量%、dry)、硫黄含有量S(質量%、dry)および水素含有量H(質量%、dry)との関係から算出することを特徴とする請求項1に記載のコークス炉ガス歩留りの推定方法。
3)前記定数eを、前記揮発分量VMに応じて設定することを特徴とする1)または2)に記載のコークス炉ガス歩留りの推定方法。
4)1)から3)のいずれか1つに記載のコークス炉ガス歩留りの推定方法を用いてコークス炉ガス歩留りを推定し、該推定したコークス炉ガス歩留りが予め定めた目標コークス炉ガス歩留りとなるように、配合炭を構成する各単味炭の配合比を調整することを特徴とするコークスの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコークス炉ガス歩留り推定方法によれば、コークス炉ガス歩留りを従来よりも精度よく推定することができる。また、本発明のコークスの製造方法によれば、コークス製造の際に、目標となるコークス炉ガス歩留りと実績との差異をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の推定換算ガス歩留りYと実績換算ガス歩留りとの関係を表すグラフである。
【図2】石炭中の酸素含有率Oとコークス炉ガスCOG中のCO2濃度との関係を表すグラフである。
【図3】本実施形態の推定換算ガス歩留りYと実績換算ガス歩留りとの関係を表すグラフである。
【図4】本実施形態の推定換算ガス歩留りYと実績換算ガス歩留りとの関係を表すグラフである。
【図5】A製鉄所のコークス工場における実績換算ガス歩留りの推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
表1に示す7種の石炭について成分分析を行うとともに、該石炭を用い、これら石炭を乾留したときに得られると推定される4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留りY((N m3/t石炭)、以下、推定換算ガス歩留りYとも称す)と、実際に表1に示す石炭を乾留したときに得られる4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留り(以下、実績換算ガス歩留りとも称す)との関係を調査した。なお、表1に示す石炭銘柄のうち、C5、C6、C7が非微粘結炭に該当する。
【0014】
【表1】

【0015】
このうち、揮発分量VMの測定は、JIS M8812に記載されている方法に従い測定した。また、固定炭素量FCの測定は、JISM8812に記載されている方法に従い測定した。さらに、灰分(質量%、dry)、炭素含有量C(質量%、dry)、酸素含有量O(質量%、dry)、窒素含有量N(質量%、dry)、水素含有量H(質量%、dry)、および硫黄含有量S(質量%)についても公知の方法(JIS M8813に準じた方法)に従い元素分析を行って測定した。なお、灰分とは、石炭を815℃で加熱して灰化したときの残留無機物をいい、例えば、ケイ酸、アルミナ、酸化鉄、石灰、マグネシア、アルカリ金属などから構成されている。
【0016】
石炭の乾留は試験乾留炉にて行い、精製したガスを捕集して、ガスカロリー、実績ガス歩留り(測定値、および測定値を4800kcal/Nm3換算した値(実績換算ガス歩留まり))を算出した。石炭ごとのガスカロリー、実績ガス歩留りを表2に示す。
【0017】
【表2】

【0018】
まず、特開2004-001994号公報に記載されたコークス炉ガス歩留りの推定方法を用いて、石炭ごとの推定換算ガス歩留りY(Nm3/t石炭)を算出した。
【0019】
具体的には、以下の式(A)において、推定換算ガス歩留りYの値が実績換算ガス歩留りと良好な相関を表すように定数をA=16.494、B=0.7408、およびC=0と最適化し、各石炭の推定換算ガス歩留りYを算出した。
【0020】
Y=A×VM-B×VM×O+C・・・(A)
【0021】
図1においては、実績換算ガス歩留りを縦軸に、また、推定換算ガス歩留りYを横軸にとり、石炭ごとにその関係をプロットしている。図1における近似曲線の相関係数Rは、0.90であった。
【0022】
一方、本発明者は、揮発分量VM(質量%、dry)と石炭の酸素含有率O(質量%、dry)に基づく特開2006-001994号公報とは観点を異とし、単位質量石炭から発生するコークス炉ガスCOGの発熱量(kcal/kg石炭)の推定値Ccog(推定コークス炉ガス発熱量Ccogと称す)に基づきコークス炉ガス歩留りを推定することを着想した。しかしながら、石炭のような固体燃料は複雑な分子構造をしているため、単純に石炭の元素分析値から推定コークス炉ガス発熱量Ccogを算出することができない。このとき、発明者は、石炭の発熱量は、石炭熱分解によって生成するコークス、タールおよびコークス炉ガスCOGの発熱量に分配されるとまず仮定した。次いで該仮定に基づき、石炭の推定される真発熱量から、コークス、タールの発熱量を除くことによって、推定コークス炉ガス発熱量Ccogを算出するものとして推定式を構築した。
【0023】
推定式の構築について、より具体的に説明する。まず、簡易的に真発熱量を元素分析値から概算できる式として、以下式(B)に示すDulongの式が公知となっている。当該式(B)において、まず、コークスおよびタール中の炭素分を石炭の炭素分から控除するものとした。このとき、コークスおよびタール中の炭素分は、揮発分量VM(質量%、dry)と固定炭素量FC(質量%、dry)に基づき、FC+d×VMとして表している。なお該FC+d×VMにおいて、コークス中の炭素分については、基本的には揮発分が揮発した後の残りがコークスであるので、固定炭素量FCと対応する。一方、タール中の炭素分については、揮発分はCOGとタールから構成されており、揮発分が高いほどタールが増えることから、タール中の炭素は揮発分に比例すると仮定し、d×VMとして表している。
【0024】
Hg(kcal/kg)=81×C+342.5×(H- O/8)+22.50×S-583.16×(8.94×(H/100))・・・(B)
【0025】
また、COGに含まれるガスのうちCO2については発熱量に寄与しないため、該CO2の炭素分を石炭の炭素分からさらに控除するものとした。ここで、石炭中の酸素含有率Oとコークス炉ガスCOG中のCO2濃度との間には図2に示すように強い相関がある。よって、石炭中の酸素のうちCO2として放出される酸素の割合を定数eで表し、さらにCO2における炭素含有量を(O/16)×e×12/2で表し、石炭の炭素分から控除するものとした。
【0026】
このような着想に基づき、発明者は、以下の式(1)を構築した。すなわち、式(1)においては、揮発分量VM(質量%、dry)、固定炭素量FC(質量%、dry)、炭素含有量C(質量%、dry)、酸素含有量O(質量%、dry)、硫黄含有量(質量%、dry)および水素含有量H(質量%、dry)の各測定値に基づき、推定コークス炉ガス発熱量Ccogを算出する。また、推定換算ガス歩留りYは、算出された推定コークス炉ガス発熱量Ccogを以下の式(2)を用いて4800kcal/Nm3換算することにより算出するものとした。
【0027】
Ccog=81×[C-(FC+d×VM)-(O/16)×e×12/2]+342.5×[H-O×(1-e)/8]+22.50×S-583.16×[8.94×H/100]・・・(1)
ここで、Ccogは推定コークス炉ガス発熱量Ccog (kcal/kg石炭)であり、dおよびeは定数である。
【0028】
Y= (Ccog/4800)×1000・・・(2)
【0029】
図3に、表1に示した7種の石炭についての実績換算ガス歩留りと、式(1)および式(2)により算出された推定換算ガス歩留りYとの関係を示す。なお、このときの定数dおよびeの値は、d=0.39、e=0.4である。図3に示すように、実績換算ガス歩留りと推定換算ガス歩留りYは、図1で示した特開2006-001994号公報の推定方法を用いた場合よりもさらに良好な相関が得られており、図1における近似曲線の相関係数Rは、0.92であった。
【0030】
式(1)における定数dおよびeの具体的な数値は、当業者が適宜設定可能である。例えば、単位質量石炭から発生するCOGの発熱量の測定値(表2中の実績ガス歩留りの測定値に相当)である実績コークス炉ガス発熱量(kcal/kg 石炭)と、当該実績コークス炉ガス発熱量に対応する石炭の各成分の含有量の測定値との関係から求めることができる。例えば、より具体的には、定数dおよびeを仮に変数DおよびEとし、式(1)におけるCcogに、複数種、例えば異なる2種の石炭についての、異なる値である単位質量石炭から発生する実績コークス炉ガス発熱量(kcal/kg 石炭)をそれぞれ代入する。次に、異なる2つの当該実績コークス炉ガス発熱量(kcal/kg 石炭)にそれぞれ対応する揮発分量VM、固定炭素量FC、炭素含有量C、酸素含有量O、硫黄含有量Sおよび水素含有量Hを式(1)にて当てはめ、変数DおよびEの値として得られる定数dおよびeを算出する。算出される定数dの具体的な数値を挙げると、例えば0.39とすることができる。
【0031】
定数eについても定数d同様に算出することができるが、eの値を石炭種の揮発分量VMに応じて設定することが好ましい。これは、揮発分の含有量が小さい石炭はCOの排出量も減少することに基づいており、当該揮発分量VMに応じた定数eの設定を行うことで、さらに推定ガス歩留りYの精度を高めることができる。
【0032】
当該定数eの設定においては、揮発分量VMの値が低いほど定数eを小さな値とし、また、揮発分量VMの値が大きいほど定数eを大きな値に設定する。具体的には、VMが17.5質量%未満の場合はe=0.2、VMが17.5質量%以上22.5質量%未満の場合はe=0.3、VMが22.5質量%以上27.5質量%未満の場合はe=0.4、VMが27.5質量%以上32.5質量%未満の場合はe=0.5、VMが32.5質量%以上37.5質量%未満の場合はe=0.6、およびVMが37.5質量%以上の場合はe=0.7とすることができる。
【0033】
表1で示した石炭について定数eの値を上記説明に従い設定した場合の実績換算ガス歩留りと推定換算ガス歩留りYとの関係を図4に示す。具体的には式(1)において、石炭C1についてはe=0.3として、石炭C2、石炭C3、および石炭C4についてはe=0.4として、また、石炭C5、石炭C6、および石炭C7についてはe=0.6として推定コークス炉ガス発熱量Ccogを算出した。図4から理解されるように、図3にて示した場合よりも実績換算ガス歩留りと推定換算ガス歩留りYとの関係の間にさらに良好な相関が得られており、図4における近似曲線の相関係数Rは、0.95であった。
【0034】
以上の検討では単一石炭銘柄毎の石炭組成とコークス炉ガス歩留りの関係について述べてきたが、複数の石炭銘柄を配合してコークスを乾留するに際しても、同じ方法を用いることができる。即ち、コークス炉に装入する配合炭について、配合炭の平均組成としての揮発分量VM、炭素含有量C、固定炭素量FC、酸素含有量O、硫黄含有量Sおよび水素含有量Hを算出し、これらの値に基づいて推定コークス炉ガス発熱量Ccogを式(1)を用いて算出し、さらに式(2)を用いて推定コークス炉ガス歩留りYを得るようにすればよい。
【0035】
本実施形態のコークスの製造方法においては、上記本実施形態のコークス炉ガス歩留りの推定方法を用いてコークス炉ガス歩留りを推定し、該推定したコークス炉ガス歩留りが予め定めた目標コークス炉ガス歩留りとなるように、配合炭を構成する各単味炭の配合比を調整することとすると好ましい。本実施形態のコークス炉ガス歩留りの推定方法を用いることにより、精度良くコークス炉ガス歩留りを推定することができ、目標とするコークス炉ガス歩留りに近い実績コークス炉ガス歩留りが得られるからである。その結果、コークス炉ガスの換算ガス歩留りが予定外に変動することがなくなり、製鉄所内のエネルギーバランスを常に安定して保持することができるようになる。
【0036】
また、配合する石炭の銘柄の関係上、換算ガス歩留りにやむを得ず変動が生じる場合においても、本発明の推定方法を用いてコークスを製造することによって事前に変動が予知され、その計画的な変動に応じて製鉄所内のエネルギーバランスに対処を加えることが可能となる。
【実施例】
【0037】
A製鉄所のコークス工場における4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留り実績の20日間の推移を図5に示す。このうち、前半の10日間である期間Aは、特開2006-001994号公報の推定方法に基づき、4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留まりを推定している。一方、後半の10日間である期間Bは、本実施形態の推定方法を実施して4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留まりを推定している。期間A、Bそれぞれにおいては、該推定されたコークス炉ガス歩留りに基づき、4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留りが予め定めた目標値となるように、配合炭を構成する各単味炭の配合比を調整することとした。図5において、■は4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留り実績値を示し、□は期間A、Bをとおしての目標値を示す。
【0038】
図5に示すように、特開2006-001994号公報の推定方法を適用した期間Aよりも、本実施形態の推定方法を適用した期間Bのほうが、4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留り実績値のばらつきを非常に小さくすることができた。
【0039】
すなわち、本実施形態の推定方法を適用することで、コークス炉ガス歩留まりのばらつきをより抑えることができ、また、目標値により近いコークス炉ガス歩留まりを得ることができた。したがって、本実施形態の推定方法によれば、製鉄所内などにおけるエネルギー需給管理をさらに計画通り順調に遂行することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭の揮発分量VM(質量%、dry)、炭素含有量C(質量%、dry)、固定炭素量FC(質量%、dry)、酸素含有量O(質量%、dry)、硫黄含有量S(質量%、dry)および水素含有量H(質量%、dry)に基づき、下記式(1)を用いて、単位質量石炭から発生するコークス炉ガスCOGの発熱量(kcal/kg-coal)の推定値である推定コークス炉ガス発熱量Ccog(kcal/kg 石炭)を算出し、
算出された該推定コークス炉ガス発熱量Ccogに基づき4800kcal/N m3換算コークス炉ガス歩留りY(N m3/t石炭)を推定することを特徴とするコークス炉ガス歩留りの推定方法。

Ccog=81×[C-(FC+d×VM)-(O/16)×e×12/2]+342.5×[H-O×(1-e)/8]+22.50×S-583.16×[8.94×H/100]・・・(1)

ここで、dおよびeは定数である。

【請求項2】
前記定数dおよびeを、単位質量石炭から発生するコークス炉ガス発熱量の測定値である実績コークス炉ガス発熱量(kcal/kg 石炭)と、該実績コークス炉ガス発熱量(kcal/kg 石炭)と対応する石炭の揮発分量VM(質量%、dry)、炭素含有量C(質量%、dry)、固定炭素量FC(質量%、dry)、酸素含有量O(質量%、dry)、硫黄含有量S(質量%、dry)および水素含有量H(質量%、dry)との関係から算出することを特徴とする請求項1に記載のコークス炉ガス歩留りの推定方法。
【請求項3】
前記定数eを、前記揮発分量VMに応じて設定することを特徴とする請求項1または2に記載のコークス炉ガス歩留りの推定方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のコークス炉ガス歩留りの推定方法を用いてコークス炉ガス歩留りを推定し、該推定したコークス炉ガス歩留りが予め定めた目標コークス炉ガス歩留りとなるように、配合炭を構成する各単味炭の配合比を調整することを特徴とするコークスの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−148924(P2011−148924A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12160(P2010−12160)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】