コークス炉炭化室の煉瓦積替方法
【課題】炭化室天井煉瓦を水平に保持し煉瓦積みを行い、昇温後も水平に保持可能にすることができる、室炉式コークス炉の炭化室炉壁を熱間で積替補修するコークス炉炭化室の煉瓦積替方法を提供する。
【解決手段】コークス炉の炭化室天井煉瓦を含んだ炭化室煉瓦の積替えを、該炭化室天井煉瓦が略水平となるように熱間で行う際に、煉瓦積みを終えた煉瓦の炉高方向の膨張を測定しながら煉瓦積みを行い、煉瓦積み中に発生する膨張量から昇温後の残存発生膨張量を予測し、可縮モルタルの可縮率を変更する。
【解決手段】コークス炉の炭化室天井煉瓦を含んだ炭化室煉瓦の積替えを、該炭化室天井煉瓦が略水平となるように熱間で行う際に、煉瓦積みを終えた煉瓦の炉高方向の膨張を測定しながら煉瓦積みを行い、煉瓦積み中に発生する膨張量から昇温後の残存発生膨張量を予測し、可縮モルタルの可縮率を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室炉式コークス炉の炭化室炉壁を熱間で積替補修するコークス炉炭化室の煉瓦積替方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室炉式コークス炉は、炉体の下部に蓄熱室があり、その上部に20余ないし30余のフリュー列からなる燃焼室と炭化室とが交互に配列されている。燃料ガスおよび空気(富ガス燃焼の場合は空気のみ)は、蓄熱室で予熱された後、燃焼フリューで燃焼する。燃焼排ガスは、引き落としフリューから蓄熱室へ入り、そこで熱回収された後、煙道を経て煙突から排出される。
【0003】
通常、炭化室の寸法は、炉高4〜7.5m余、炉幅400〜500mm、炉長13〜17m程度である。室炉式コークス炉は、高温領域で機械的強度が大きく、かつ体積変化が少なく、熱伝導性が比較的良好であるとともに、材料が安価で大量に入手できる等の理由から、その多くが珪石煉瓦で構築されている。室炉式コークス炉の稼働中の温度は、コークス炉ガス、高炉ガスの単独または混合ガスを燃料ガスとして燃焼させることによって、最も高い燃焼室で1100〜1300℃程度に、また、炭化室の石炭への熱伝達表面では約1000℃程度となっている。
【0004】
コークス炉の炭化室においては、乾留を終了した赤熱コークスを排出した直後に、水分を6〜9質量%有する常温の石炭(近年では、調湿炭と称する加熱乾燥炭も多く、この場合多くは水分6質量%以下、時には2質量%台のものもある)が装入され、18〜25時間後に約1000℃のコークスとして排出される。すなわち、炭化室の炉壁面は、18〜25時間周期で常温から約1000℃の熱変化サイクルに晒され、900℃以上の熱変動を受けている。
【0005】
一方、通常コークス炉は、操業を開始すると寿命が尽きるまで連続運転されるため、操業開始後に微小であった炉壁煉瓦の損傷が、長年に亘る操業すなわち操業開始後の経過年数によって損傷が次第に大きくなり、倒れ、亀裂、角欠け等が発生する。したがって、定期的に炉壁煉瓦の損傷を点検し、必要であれば炉壁煉瓦を熱間積替えにより部分的に補修することが炉体管理上重要である。
【0006】
補修に際しては、硅石煉瓦の膨張特性を考慮した温度管理が行われる。すなわち、補修対象部以外の燃焼室については膨張収縮の小さい800℃程度になるように燃焼を継続し、補修対象のフリューについては燃料ガスと燃焼用空気の供給を停止して温度を下げながら補修対象フリューよりも奥側と隣接する炉壁に断熱隔壁を取り付けて補修作業が可能な状態を確保する。
【0007】
硅石煉瓦の膨張は補修作業中に既に始まり、最終的に補修後の昇温により完了する。硅石煉瓦の膨張量としては、熱膨張率が比較的小さいとは言え、全高7000mmの側壁では約84mmも高さが変化する。
【0008】
昇温中に発生する膨張を残留膨張といい、この膨張を精度よく吸収することが炉壁の堅牢性を左右する要素である。
コークス炉齢が若く損傷が軽微なうちは、炉壁の部分積み替え補修で対応していた。この場合、上部には少なくとも10段程度の未積替え残置部があり、残置部は炭化室天井煉瓦より下段である。これまでに、このような残留膨張の吸収方法として以下の方法が提案されている。
【0009】
操業中のコークス炉の耐火壁温度以下の着火温度を有する、有機繊維物質等の可燃性個体の細小体を配合する可縮性耐火モルタル(特許文献1)や発泡合成樹脂、無機繊維を硅石煉瓦粉末に混合したクッション硅石モルタル等(特許文献2)を使用して、目地厚を4〜8mmで積替煉瓦全域に施工し、モルタルの可縮性を利用して膨張量を吸収する方法、最上段部はセラミックボードで、それまでの上部にクッションモルタルを施工し、さらに下段部は硅石モルタルを使用する方法(特許文献3)、目地材は珪石質モルタルを使用し、通常の4〜6mmの厚さに施工するが、最上段にセラミックファイバ,木片或いはクッションモルタルを施工して膨張量を吸収する方法(特許文献4)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭58−49586公報
【特許文献2】特開平6−345547公報
【特許文献3】特開平9−316456公報
【特許文献4】特開平10−251649公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図12は、従来の方法の熱間積替範囲を示す説明図である。図12に示すように特許文献3、4により開示された方法は、コークス炉炭化室の炉壁煉瓦5に限定された積替え方法である。これらの方法は、積替を行わず残置する「炭化室側壁上部の炉頂部7」(特許文献3)や「燃焼室2上部の非補修煉瓦」(特許文献4)等、いずれも炭化室天井煉瓦6と炭化室(燃焼室)の上部7を積替えずに補修を行う方法である。
【0012】
しかしながら、コークス炉の老朽化が進み炭化室煉瓦の損傷部が拡大すると、先述した炉頂部にも損傷が発生する場合がある。また、図12に示すような補修方法を同一箇所で繰り返して行うと、炭化室天井煉瓦6や炉頂部煉瓦7は、補修のたびに温度が低下し、煉瓦のスポーリング等を助長させ損傷が進展してしまう。
【0013】
炭化室天井煉瓦6を積替える際には、その上部に何段にも積み重なっている炉頂煉瓦7を解体して積替える事となる。
また炭化室天井煉瓦6は、炭化室の左右の炉壁煉瓦5、5’に支えられており、左右いずれかの炉壁を積替える際には、炭化室天井煉瓦6の片側は積替えを行わない炉壁煉瓦5’が残存することとなる。
【0014】
煉瓦積みの際には、煉瓦積替え壁5の方は温度がまだ低い状態なので所定の膨張量には達しておらず、また相対する補修を行わない煉瓦壁5’は断熱材8で保護されており、温度低下がなく所定の膨張量は確保されている状態である。
【0015】
図4は、残存膨張代を考慮しないで炭化室天井煉瓦を設置した状態を示す説明図である。
図4に示すように、このような状態で炭化室天井煉瓦6を積むと、煉瓦積み煉瓦壁5と補修を行なわない炉壁5’とにレベル差が生じ、天井煉瓦6が傾く状態となる。炭化室天井煉瓦6から上部の炉頂部の煉瓦7は、炭化室天井煉瓦6が傾いた状態で煉瓦を積んでしまうと、コークス炉の最上段の炉頂面が凹凸となり、安全上や操業上の支障となる。
【0016】
炭化室天井煉瓦6の上下段の煉瓦目地はモルタルで接着させ、炭化室天井煉瓦6が傾いた状態のまま、温度上昇後の膨張で水平な状態に持ち上げられると、操業後炭化室4と燃焼室3,4間のシール性が損なわれる危険性がある。
【0017】
また、所定の温度上昇後に、炭化室天井煉瓦6から上部を積む場合には、炭化室天井煉瓦6の温度は800℃以上となっており、煉瓦積みを行う人の作業環境や積替える煉瓦のスポーリング等も考慮する必要があり、炭化室天井煉瓦6を積む場合には炭化室天井煉瓦6を極力水平な状態で、かつ炉頂部煉瓦7も温度が上昇する前に積み上げ、操業温度到達後も炭化室天井煉瓦のレベルが水平状態である事が望ましいこととなる。
【0018】
以上の理由により、炭化室天井煉瓦6を積替える際には、炭化室天井煉瓦6を水平に保持し、煉瓦積みを行った煉瓦の膨張はその下段で膨張吸収をする必要がある。
まず、特許文献1、2に記載されたように、積替煉瓦の目地材に全域に可縮性耐火モルタルあるいはクッション硅石モルタルを使用する方法は、モルタルの強度が小さいので、炭化室炉壁の限定された部分での積替えには適しているものの、積替範囲が高さ方向に大きくなると積替え煉瓦の変形や摩耗に対して弱いため、操業復帰後のコークスケーキとの接触等で目地モルタルが消失する危険性もある。
【0019】
したがって、特許文献3により開示されたように、炭化室炉壁煉瓦5の全面に使用するには耐久性で問題がある。
図12に示すように特許文献4に記載された、燃焼室2の上部の非補修煉瓦の懸垂金物10は、炉頂部から煉瓦を解体して積替える場合には、設置が不可能である。
【0020】
次に、目地材は珪石質モルタルを使用し、炭化室最上段にセラミックファイバ、木片或いはクッションモルタルを施工し、膨張量を吸収する方法は、セラミックファイバは強度が小さく変形し易いので、炭化室天井煉瓦6を支えるには強度不足である。木片は強度がある半面、温度が上昇すると焼失するので、焼失する時にまだ残存膨張があれば天井煉瓦が傾く状態となり、その後の残存膨張で積替えた炉壁が変形する危険性がある。
【0021】
特許文献3に記載されたように、炭化室最上段部にセラミックボードで、それまでの上段にクッションモルタルを目地材として施工し、さらに下段に硅石モルタルを目地材として使用する方法は、最上段のセラミックボードの膨張吸収代が大きくなり、加えてセラミックボードには煉瓦を接着させる特性はないので、この上部に炭化室天井煉瓦6を設置させるには極めて不安定である。
【0022】
特許文献3、4に記載されたように上部に残置部があれば、膨張吸収代で残存膨張で可縮されるが、天井煉瓦から上部を積替える場合には、このような大きな可縮効果は期待できないので、操業後にセラミックボード部を通してコークス炉から発生するガスが燃焼室内2、3に漏洩する危険性が高い。
【0023】
コークス炉の炭化室4のコークスを押し出す側や排出する側である窯口煉瓦は、外気との接触等もあり、損傷が炉内部に比較して進行している。このため、熱間積替の多くは、窯口側の煉瓦から炉内部にかけて積替えられることが多い。
【0024】
このような箇所で積替えられる炉壁煉瓦5の温度は、窯口側よりも炉内側の方が炉内の熱伝導によって高められるので、その熱膨張発生量の違いから煉瓦積み中の煉瓦高さは、窯口側より炉内側にかけて徐々に高くなる。
【0025】
特許文献3、4に記載されたように、最上段に木片やセラミックボードを設ける場合、窯口側の残存膨張吸収代は大きく、炉内側の残存膨張吸収代は小さくする必要があり、木片やセラミックボードのその膨張吸収代に合せて加工する作業が発生する。木片は強個であり加工が難しく、セラミックボードは柔らかく加工時に破損する等の欠点があり、加工作業時間が長くなると新たに熱膨張が発生して残存膨張代が変化してしまうこととなる。
【0026】
さらに、煉瓦積み中は煉瓦段数が高くなるにつれ、隣接する炉壁煉瓦からの熱伝導によって徐々にその温度が上昇する。そのため、煉瓦の熱膨張量もその都度変化し、発生する膨張は必ずしも常に同じ量では発生はしない。特に炉壁煉瓦の積替え範囲が大きくかつ長期間にわたる場合には、よりその影響が出やすくなる。
【0027】
特許文献3、4に記載されたように、残置部に炭化室天井部6があるような場合には、煉瓦を積む前に、その積み高さを測定し、所定の温度での膨張量を予め算出しておけば、定められた可縮量のクッションモルタルやセラミックボードを使用しても大きな問題とはならないが、炭化室天井煉瓦6まで積替える場合においては、上述したように積替えを行わない壁が存在し、天井煉瓦を水平に保持するためには、膨張量の吸収方法は極めて重要な課題となる。
【0028】
本発明は、従来の技術が有するこのような課題に鑑みてなされたものであり、炭化室天井煉瓦を水平に保持し煉瓦積みを行い、昇温後も水平に保持可能にすることができる、室炉式コークス炉の炭化室炉壁を熱間で積替補修するコークス炉炭化室の煉瓦積替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、以下の通りである。
(1)コークス炉の炭化室天井煉瓦を含んだ炭化室煉瓦の積替えを、該炭化室天井煉瓦が水平となるように熱間で行う際に、煉瓦積みを終えた煉瓦の炉高方向の膨張を測定しながら煉瓦積みを行い、煉瓦積み中に発生する膨張量から昇温後の残存発生膨張量を予測し、可縮モルタルの可縮率を変更することを特徴とするコークス炉炭化室の煉瓦積替方法。
【0030】
(2)炭化室天井煉瓦よりも下段の積替煉瓦の目地高さを、窯口側から炉内側にかけて減少させる(1)項に記載されたコークス炉炭化室の煉瓦積替方法。
(3)前記炭化室煉瓦の積替えを、炭化室の炉底部、炭化室天井部煉瓦から炉頂部にかけて、行う(1)項又は(2)項に記載されたコークス炉炭化室の煉瓦積替方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、コークス炉炭化室の炉底部から炉頂部にかけての煉瓦積替補修に際して、煉瓦積み中の膨張量を測定しながら煉瓦を積み、炭化室天井煉瓦を含んだ煉瓦段数を積む時には、クッションモルタルを使用して炭化室天井煉瓦を水平な状態に保持して煉瓦積みを行う。この結果、温度上昇後、すなわち残存膨張発生後にも炭化室天井煉瓦の水平状態を維持することが可能となり、非補修壁と補修壁に損傷を与えない補修を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、炭化室および燃焼室の正面と本発明による補修範囲を示す説明図である。
【図2】図2は、補修範囲の煉瓦を解体した状態を示す説明図である。
【図3】図3は、補修部の炭化室天井煉瓦積み前の煉瓦積み状態を示す説明図である。
【図4】図4は、残存膨張代を考慮しないで炭化室天井煉瓦を設置した状態を示す説明図である。
【図5】図5は、炭化室天井煉瓦を煉瓦積み時に水平にした、従来の残存膨張吸収代9の実施方法を示す説明図である。
【図6】図6は、クッションモルタルで残存膨張代を確保した状態を示す説明図である。
【図7】図7は、市販されているクッションモルタル材料と可縮率との関係を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例における炭化室および燃焼室の正面と補修範囲を示す説明図である。
【図9】図9は、実施例における炭化室および燃焼室の側面と補修範囲を示す説明図である。
【図10】図10は、クッションモルタルの材料と可縮特性の関係を示すグラフである。
【図11】図11は、クッションモルタルの熱間可縮特性を示すグラフである。
【図12】図12は、従来の方法の熱間積替範囲を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、炭化室および燃焼室の正面と本発明による補修範囲を示す説明図である。
図1に示すように、補修範囲1である炭化室4(燃焼室2)の炉壁煉瓦5の左右に炭化室天井煉瓦6が配置され、また炭化室天井煉瓦6の一方は非補修部の炭化室(燃焼室)の炉壁煉瓦5’上にある。
【0034】
補修範囲1の煉瓦の積替えを行うためには、補修する燃焼室2の左右に位置する炉頂部煉瓦7と炭化室天井煉瓦6と、その下段の炭化室(燃焼室)の炉壁煉瓦5を積替えることとなる。
【0035】
図2は、補修範囲の煉瓦を解体した状態を示す説明図である。
図2に示すように、非補修部の炉壁煉瓦5’は断熱材8で保護され、熱間状態で保持されている。このため、補修中も非補修部の煉瓦高さh1、h2は収縮することはない。
【0036】
図3は、補修部の炭化室天井煉瓦積み前の煉瓦積み状態を示す説明図である。図3に示すように、補修部の煉瓦高さh3は、この燃焼室の燃焼ガスが停止されているため所定の温度まで到達しておらず、非補修部の高さh1、h2よりも低い状態である。すなわち、h1≒h2>h3である。通常煉瓦積み中の煉瓦温度は200℃以下であり、硅石煉瓦の煉瓦膨張率では0.7%程度である。コークス炉の操業時の煉瓦温度は1000℃以上で膨張率は1.2%程度あり、煉瓦積み時は0.5%程度の残存膨張率があることとなる。仮に煉瓦積み高さhが7mであれば、35mm程度、補修部の煉瓦高さh3が低い状態である。
【0037】
このような状態で炭化室天井煉瓦6を積むと、図4に示すように、炭化室天井煉瓦6は傾いた状態となってしまう。このまま所定の温度まで上昇させて残存膨張が発生すれば、膨張がスムーズに行えずに、非補修部の煉瓦との接触や積替えた壁の変形につながる危険性がある。
【0038】
したがって、炭化室天井煉瓦6は、煉瓦積み時と残存膨張発生中も水平状態を保持することが望ましいこととなる。
図5は、炭化室天井煉瓦6を煉瓦積み時に水平にした、従来の残存膨張吸収代9の実施方法を示す説明図である。図5に示すように、炭化室天井煉瓦を積む時には残存膨張吸収代9は、通常の煉瓦目地代の4〜6mmより大きく、前述の通り35mm程度の吸収代を設けることとなる。
【0039】
この膨張吸収代9には炭化室天井煉瓦6と炉頂部煉瓦7の荷重を支えるために、強度のあるものを充填する必要があるが、膨張が発生終了時には焼失するか収縮する充填剤が必要となる。充填剤としては木製の楔を使用するのが一般的であるが、膨張完了時と木製の楔が焼失する時期が必ずしも一致せず、楔が早く焼失すれば炭化室天井煉瓦6や炉頂部煉瓦7が沈下する状態となる。反対に楔が膨張より遅く焼失すれば反対に炉頂部が凸状態となる。いずれの状態でも一時的に炭化室天井部6と炉頂部煉瓦7に大きな動きが発生し、非補修部の煉瓦にも悪影響を与えてしまう。
【0040】
木製の楔にかえてセラミックボードを挿入する方法もあるが、セラミックボードの可縮率が数10%でしかなく、仮に35mmの残存膨張量を吸収しようとすれば、35%の可縮率としても100mmの高さのセラミックボードを挿入する必要があり、炭化室天井煉瓦を水平な状態にするためには、膨張吸収代9より下段の煉瓦目地代を通常の4〜6mmより小さい目地代にする必要があり、煉瓦間の接着強度の低下を招く危険性がある。
【0041】
煉瓦積みの方法は以下の要領で行う。煉瓦解体時に図2に示す煉瓦高さhを予め測定をしておき、次に煉瓦積み枚数と煉瓦膨張量から一段当たりの煉瓦目地代を算出する。
従来の煉瓦積み方法は、この煉瓦目地代で煉瓦積みを行い、残存膨張吸収代9を設ける時に煉瓦積み中に熱膨張した量を煉瓦最終膨張量から減じて、残存膨張吸収代9を設定する。
【0042】
ところが煉瓦積み中の熱膨張は、外気側に近い窯口側と炉内側では熱伝導による煉瓦温度が異なるため、窯口側に比べて炉内側の方の熱膨張量が大きくなる。このため煉瓦積み期間が長期間に及ぶ場合には、残存膨張吸収代9は窯口側で広く炉内側では狭くなるため、先述の木製楔やセラミックボードではその高さを変更する必要があり、炭化室天井煉瓦6を水平に保持することがさらに困難となる。
【0043】
本発明の煉瓦積替方法は、煉瓦高さhから得られた煉瓦目地代で、炭化室炉壁煉瓦5の煉瓦積みを開始することは従来方法と同様であり、目地モルタルも硅石モルタルで積む。しかしながら、前日に煉瓦を積んだ炉壁は、翌日には熱膨張が発生し窯口側より炉内側の方の煉瓦高さは高くなっている。このため、前日の煉瓦積み中に発生した膨張と前日から翌日にかけて発生した膨張量を測定しておき、残りの煉瓦高さと煉瓦段数から、当日の目地代を窯口側と炉内側の目地割を変更して積んでゆく。この結果、煉瓦段数が増加するにつれて、窯口側の目地代に比べて炉内側の目地代が小さくなり、煉瓦高さも窯口側より炉内側が高くなる。
【0044】
すなわち、前日の煉瓦積み終了後から翌日の煉瓦積み前の間に、熱膨張が発生し温度が高い炉内側と温度が低い窯口側で熱膨張差が発生している状態となるので、煉瓦積み前には、煉瓦高さhは窯口<炉内側となっている。しかしながら煉瓦積みを行う炭化室の炉壁5は、図1に示す如く左右2壁を同時に積んでゆくために、煉瓦積み時は極力炉内、窯口側および左右共に水平に煉瓦積みを行う必要がある(水平に煉瓦積みをしない場合は、煉瓦間の目地代が不均一となったり、目地に隙間が発生したりする)。このように煉瓦積み中は水平な状態で煉瓦を積むために、煉瓦段数が増加するにつれて、窯口側の目地代にくらべ炉内側の目地代が小さくなるため、膨脹量の測定を行いながら、窯口側と炉内側の目地割を、窯口側の目地代にくらべ炉内側の目地代を小さくしても、煉瓦高さが窯口側より炉内側が高くなる。
【0045】
炭化室天井煉瓦6を積む作業内までの残り高さとなった時点(天井煉瓦から約10段以内)で残りの煉瓦積み段数と残存膨張量から、目地割を算出する。目地モルタルには残存膨張代を吸収するため、可縮性のあるクッションモルタルを使用する。
【0046】
炭化室天井煉瓦6は非補修部の炭化室壁煉瓦5’と水平にすべく目地割を計算する。すなわち残存膨張量は窯口側が大きく炉内側は小さいので、窯口側を大きく炉内側は小さい目地代となるが、可縮率を変更したモルタルを使用すれば膨張後も炭化室天井煉瓦6の水平状態は確保可能となる。すなわち、窯口側と炉内側で同じ可縮率のモルタルを使用すれば、厳密には非補修部にくらべ窯口側の天井煉瓦は上昇し、炉内側は下降して傾くので、窯口側と炉内側では可縮率を変更させたモルタルを使用する。
【0047】
クッションモルタルの可縮率は、煉瓦積み時の膨張発生量を減じた残存膨張量と炭化室天井煉瓦6と炉頂部煉瓦7の荷重を考慮し決定する。したがって、可縮率は熱間積替え補修を行う毎に煉瓦積み中の熱膨張量が異なるため、変更する。
【0048】
クッションモルタルの可縮率は、炭化室天井煉瓦6と炉頂部煉瓦7の荷重は常に一定であるので、煉瓦積み中の膨張量を正確に測定しておけば容易に変更は可能である。
図7は、市販されているクッションモルタル材料と可縮率との関係を示すグラフである。図7に示すように、市販されているクッションモルタルの可縮特性を勘案して、クッションモルタルの可縮率を変更すればよい。
【実施例】
【0049】
38年間稼働したコークス炉において、炭化室側壁および炭化室天井煉瓦の損傷が進行し、このままでは操業が困難となる危険性がある窯の熱間補修を行った。
図8は、実施例における炭化室および燃焼室の正面と補修範囲を示す説明図であり、図9は、実施例における炭化室および燃焼室の側面と補修範囲を示す説明図である。
【0050】
補修範囲は、図8、9に示すように、1つの燃焼室の両側の側壁5と炭化室天井煉瓦6と炉頂部7の範囲であり、垂直方向は炭化室4で7mと炭化室天井部6から炉頂部7の1.3mの合計8.3mで、水平方向は炭化室炉壁煉瓦5で1.2mの範囲で補修を行った。
【0051】
補修前には、炭化室4の非補修壁に断熱材8と補修煉瓦壁より内部煉瓦壁との境界に断熱材8を取り付けた。このような準備をした後、この補修部の燃焼室2の燃焼を停止し、降温後に補修作業を開始した。
【0052】
図6は、クッションモルタルで残存膨張代を確保した状態を示す説明図である。
図6に示すように、炭化室炉底部47段から93段までは、通常の硅石モルタルにより4.5mmの目地代で煉瓦積みを行った。炭化室天井煉瓦6までの段数は残り10段となった所で、炭化室天井煉瓦下端までの距離を測定し、また93段までの煉瓦積み中に発生する熱膨張量も日々の煉瓦積み作業時に測定を行った。
【0053】
残り10段で上記測定を行ったのは、1日の中で煉瓦積み可能な段数であることや、使用するクッションモルタルへの煉瓦荷重のバラツキを抑制するためである。
表1、2に実測した測定値から、クッションモルタルの可縮率を計算した結果を示す。表1に煉瓦段数93段までの膨張量を示し、表2に実測した測定値からクッションモルタルの可縮率を計算した結果を示す。なお、表2における丸囲み数字6は、煉瓦膨脹代とその残り(目地で埋める部分)を意味する。
【0054】
その結果、窯口側、中央部、炉内側の平均可縮率は各々60%、56%、50%となった。本実施例では窯口側から炉内側までの距離が1.2mであり、可縮率を3ブロック(0.4mピッチ)で変更する方法を選定した。
【0055】
また煉瓦段数94段から上部煉瓦から求めた荷重は、0.03Mpaであり、図10に示すクッションモルタルの特性から選定されるものはD,E,F材となった。また表3にはクッションモルタルの可縮率と可縮後の計算目地代との関係を示し、D,E,F材を使用した場合の膨張完了後の目地代を示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
また今回使用したクッションモルタルは、図11に示すように、荷重下でも200℃までは可縮されず、上記煉瓦積み中に煉瓦が沈み込むようなことないものである。
実施例では3種類のクッションモルタルを使用したが、中央部はD,F材を50%ずつ混合したものを使用しても良い。
【0060】
煉瓦積み完了後、所定の1000℃近い操業温度に到達後の状態を目視確認したが、ほぼ所定の目地代でなっていることが確認され、炭化室天井煉瓦は水平に保持され、煉瓦の沈み込みや突き上げはなかった。
【符号の説明】
【0061】
1 補修(煉瓦積替え)範囲
2 補修燃焼室
3 非補修燃焼室
4 炭化室
5 炭化室(燃焼室)炉壁煉瓦
6 炭化室天井煉瓦
7 炉頂部煉瓦
8 非補修炉壁煉瓦の断熱材
9 残存膨張量吸収代
10 懸垂金物
h1、h2、h3 煉瓦高さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、室炉式コークス炉の炭化室炉壁を熱間で積替補修するコークス炉炭化室の煉瓦積替方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室炉式コークス炉は、炉体の下部に蓄熱室があり、その上部に20余ないし30余のフリュー列からなる燃焼室と炭化室とが交互に配列されている。燃料ガスおよび空気(富ガス燃焼の場合は空気のみ)は、蓄熱室で予熱された後、燃焼フリューで燃焼する。燃焼排ガスは、引き落としフリューから蓄熱室へ入り、そこで熱回収された後、煙道を経て煙突から排出される。
【0003】
通常、炭化室の寸法は、炉高4〜7.5m余、炉幅400〜500mm、炉長13〜17m程度である。室炉式コークス炉は、高温領域で機械的強度が大きく、かつ体積変化が少なく、熱伝導性が比較的良好であるとともに、材料が安価で大量に入手できる等の理由から、その多くが珪石煉瓦で構築されている。室炉式コークス炉の稼働中の温度は、コークス炉ガス、高炉ガスの単独または混合ガスを燃料ガスとして燃焼させることによって、最も高い燃焼室で1100〜1300℃程度に、また、炭化室の石炭への熱伝達表面では約1000℃程度となっている。
【0004】
コークス炉の炭化室においては、乾留を終了した赤熱コークスを排出した直後に、水分を6〜9質量%有する常温の石炭(近年では、調湿炭と称する加熱乾燥炭も多く、この場合多くは水分6質量%以下、時には2質量%台のものもある)が装入され、18〜25時間後に約1000℃のコークスとして排出される。すなわち、炭化室の炉壁面は、18〜25時間周期で常温から約1000℃の熱変化サイクルに晒され、900℃以上の熱変動を受けている。
【0005】
一方、通常コークス炉は、操業を開始すると寿命が尽きるまで連続運転されるため、操業開始後に微小であった炉壁煉瓦の損傷が、長年に亘る操業すなわち操業開始後の経過年数によって損傷が次第に大きくなり、倒れ、亀裂、角欠け等が発生する。したがって、定期的に炉壁煉瓦の損傷を点検し、必要であれば炉壁煉瓦を熱間積替えにより部分的に補修することが炉体管理上重要である。
【0006】
補修に際しては、硅石煉瓦の膨張特性を考慮した温度管理が行われる。すなわち、補修対象部以外の燃焼室については膨張収縮の小さい800℃程度になるように燃焼を継続し、補修対象のフリューについては燃料ガスと燃焼用空気の供給を停止して温度を下げながら補修対象フリューよりも奥側と隣接する炉壁に断熱隔壁を取り付けて補修作業が可能な状態を確保する。
【0007】
硅石煉瓦の膨張は補修作業中に既に始まり、最終的に補修後の昇温により完了する。硅石煉瓦の膨張量としては、熱膨張率が比較的小さいとは言え、全高7000mmの側壁では約84mmも高さが変化する。
【0008】
昇温中に発生する膨張を残留膨張といい、この膨張を精度よく吸収することが炉壁の堅牢性を左右する要素である。
コークス炉齢が若く損傷が軽微なうちは、炉壁の部分積み替え補修で対応していた。この場合、上部には少なくとも10段程度の未積替え残置部があり、残置部は炭化室天井煉瓦より下段である。これまでに、このような残留膨張の吸収方法として以下の方法が提案されている。
【0009】
操業中のコークス炉の耐火壁温度以下の着火温度を有する、有機繊維物質等の可燃性個体の細小体を配合する可縮性耐火モルタル(特許文献1)や発泡合成樹脂、無機繊維を硅石煉瓦粉末に混合したクッション硅石モルタル等(特許文献2)を使用して、目地厚を4〜8mmで積替煉瓦全域に施工し、モルタルの可縮性を利用して膨張量を吸収する方法、最上段部はセラミックボードで、それまでの上部にクッションモルタルを施工し、さらに下段部は硅石モルタルを使用する方法(特許文献3)、目地材は珪石質モルタルを使用し、通常の4〜6mmの厚さに施工するが、最上段にセラミックファイバ,木片或いはクッションモルタルを施工して膨張量を吸収する方法(特許文献4)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭58−49586公報
【特許文献2】特開平6−345547公報
【特許文献3】特開平9−316456公報
【特許文献4】特開平10−251649公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図12は、従来の方法の熱間積替範囲を示す説明図である。図12に示すように特許文献3、4により開示された方法は、コークス炉炭化室の炉壁煉瓦5に限定された積替え方法である。これらの方法は、積替を行わず残置する「炭化室側壁上部の炉頂部7」(特許文献3)や「燃焼室2上部の非補修煉瓦」(特許文献4)等、いずれも炭化室天井煉瓦6と炭化室(燃焼室)の上部7を積替えずに補修を行う方法である。
【0012】
しかしながら、コークス炉の老朽化が進み炭化室煉瓦の損傷部が拡大すると、先述した炉頂部にも損傷が発生する場合がある。また、図12に示すような補修方法を同一箇所で繰り返して行うと、炭化室天井煉瓦6や炉頂部煉瓦7は、補修のたびに温度が低下し、煉瓦のスポーリング等を助長させ損傷が進展してしまう。
【0013】
炭化室天井煉瓦6を積替える際には、その上部に何段にも積み重なっている炉頂煉瓦7を解体して積替える事となる。
また炭化室天井煉瓦6は、炭化室の左右の炉壁煉瓦5、5’に支えられており、左右いずれかの炉壁を積替える際には、炭化室天井煉瓦6の片側は積替えを行わない炉壁煉瓦5’が残存することとなる。
【0014】
煉瓦積みの際には、煉瓦積替え壁5の方は温度がまだ低い状態なので所定の膨張量には達しておらず、また相対する補修を行わない煉瓦壁5’は断熱材8で保護されており、温度低下がなく所定の膨張量は確保されている状態である。
【0015】
図4は、残存膨張代を考慮しないで炭化室天井煉瓦を設置した状態を示す説明図である。
図4に示すように、このような状態で炭化室天井煉瓦6を積むと、煉瓦積み煉瓦壁5と補修を行なわない炉壁5’とにレベル差が生じ、天井煉瓦6が傾く状態となる。炭化室天井煉瓦6から上部の炉頂部の煉瓦7は、炭化室天井煉瓦6が傾いた状態で煉瓦を積んでしまうと、コークス炉の最上段の炉頂面が凹凸となり、安全上や操業上の支障となる。
【0016】
炭化室天井煉瓦6の上下段の煉瓦目地はモルタルで接着させ、炭化室天井煉瓦6が傾いた状態のまま、温度上昇後の膨張で水平な状態に持ち上げられると、操業後炭化室4と燃焼室3,4間のシール性が損なわれる危険性がある。
【0017】
また、所定の温度上昇後に、炭化室天井煉瓦6から上部を積む場合には、炭化室天井煉瓦6の温度は800℃以上となっており、煉瓦積みを行う人の作業環境や積替える煉瓦のスポーリング等も考慮する必要があり、炭化室天井煉瓦6を積む場合には炭化室天井煉瓦6を極力水平な状態で、かつ炉頂部煉瓦7も温度が上昇する前に積み上げ、操業温度到達後も炭化室天井煉瓦のレベルが水平状態である事が望ましいこととなる。
【0018】
以上の理由により、炭化室天井煉瓦6を積替える際には、炭化室天井煉瓦6を水平に保持し、煉瓦積みを行った煉瓦の膨張はその下段で膨張吸収をする必要がある。
まず、特許文献1、2に記載されたように、積替煉瓦の目地材に全域に可縮性耐火モルタルあるいはクッション硅石モルタルを使用する方法は、モルタルの強度が小さいので、炭化室炉壁の限定された部分での積替えには適しているものの、積替範囲が高さ方向に大きくなると積替え煉瓦の変形や摩耗に対して弱いため、操業復帰後のコークスケーキとの接触等で目地モルタルが消失する危険性もある。
【0019】
したがって、特許文献3により開示されたように、炭化室炉壁煉瓦5の全面に使用するには耐久性で問題がある。
図12に示すように特許文献4に記載された、燃焼室2の上部の非補修煉瓦の懸垂金物10は、炉頂部から煉瓦を解体して積替える場合には、設置が不可能である。
【0020】
次に、目地材は珪石質モルタルを使用し、炭化室最上段にセラミックファイバ、木片或いはクッションモルタルを施工し、膨張量を吸収する方法は、セラミックファイバは強度が小さく変形し易いので、炭化室天井煉瓦6を支えるには強度不足である。木片は強度がある半面、温度が上昇すると焼失するので、焼失する時にまだ残存膨張があれば天井煉瓦が傾く状態となり、その後の残存膨張で積替えた炉壁が変形する危険性がある。
【0021】
特許文献3に記載されたように、炭化室最上段部にセラミックボードで、それまでの上段にクッションモルタルを目地材として施工し、さらに下段に硅石モルタルを目地材として使用する方法は、最上段のセラミックボードの膨張吸収代が大きくなり、加えてセラミックボードには煉瓦を接着させる特性はないので、この上部に炭化室天井煉瓦6を設置させるには極めて不安定である。
【0022】
特許文献3、4に記載されたように上部に残置部があれば、膨張吸収代で残存膨張で可縮されるが、天井煉瓦から上部を積替える場合には、このような大きな可縮効果は期待できないので、操業後にセラミックボード部を通してコークス炉から発生するガスが燃焼室内2、3に漏洩する危険性が高い。
【0023】
コークス炉の炭化室4のコークスを押し出す側や排出する側である窯口煉瓦は、外気との接触等もあり、損傷が炉内部に比較して進行している。このため、熱間積替の多くは、窯口側の煉瓦から炉内部にかけて積替えられることが多い。
【0024】
このような箇所で積替えられる炉壁煉瓦5の温度は、窯口側よりも炉内側の方が炉内の熱伝導によって高められるので、その熱膨張発生量の違いから煉瓦積み中の煉瓦高さは、窯口側より炉内側にかけて徐々に高くなる。
【0025】
特許文献3、4に記載されたように、最上段に木片やセラミックボードを設ける場合、窯口側の残存膨張吸収代は大きく、炉内側の残存膨張吸収代は小さくする必要があり、木片やセラミックボードのその膨張吸収代に合せて加工する作業が発生する。木片は強個であり加工が難しく、セラミックボードは柔らかく加工時に破損する等の欠点があり、加工作業時間が長くなると新たに熱膨張が発生して残存膨張代が変化してしまうこととなる。
【0026】
さらに、煉瓦積み中は煉瓦段数が高くなるにつれ、隣接する炉壁煉瓦からの熱伝導によって徐々にその温度が上昇する。そのため、煉瓦の熱膨張量もその都度変化し、発生する膨張は必ずしも常に同じ量では発生はしない。特に炉壁煉瓦の積替え範囲が大きくかつ長期間にわたる場合には、よりその影響が出やすくなる。
【0027】
特許文献3、4に記載されたように、残置部に炭化室天井部6があるような場合には、煉瓦を積む前に、その積み高さを測定し、所定の温度での膨張量を予め算出しておけば、定められた可縮量のクッションモルタルやセラミックボードを使用しても大きな問題とはならないが、炭化室天井煉瓦6まで積替える場合においては、上述したように積替えを行わない壁が存在し、天井煉瓦を水平に保持するためには、膨張量の吸収方法は極めて重要な課題となる。
【0028】
本発明は、従来の技術が有するこのような課題に鑑みてなされたものであり、炭化室天井煉瓦を水平に保持し煉瓦積みを行い、昇温後も水平に保持可能にすることができる、室炉式コークス炉の炭化室炉壁を熱間で積替補修するコークス炉炭化室の煉瓦積替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、以下の通りである。
(1)コークス炉の炭化室天井煉瓦を含んだ炭化室煉瓦の積替えを、該炭化室天井煉瓦が水平となるように熱間で行う際に、煉瓦積みを終えた煉瓦の炉高方向の膨張を測定しながら煉瓦積みを行い、煉瓦積み中に発生する膨張量から昇温後の残存発生膨張量を予測し、可縮モルタルの可縮率を変更することを特徴とするコークス炉炭化室の煉瓦積替方法。
【0030】
(2)炭化室天井煉瓦よりも下段の積替煉瓦の目地高さを、窯口側から炉内側にかけて減少させる(1)項に記載されたコークス炉炭化室の煉瓦積替方法。
(3)前記炭化室煉瓦の積替えを、炭化室の炉底部、炭化室天井部煉瓦から炉頂部にかけて、行う(1)項又は(2)項に記載されたコークス炉炭化室の煉瓦積替方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、コークス炉炭化室の炉底部から炉頂部にかけての煉瓦積替補修に際して、煉瓦積み中の膨張量を測定しながら煉瓦を積み、炭化室天井煉瓦を含んだ煉瓦段数を積む時には、クッションモルタルを使用して炭化室天井煉瓦を水平な状態に保持して煉瓦積みを行う。この結果、温度上昇後、すなわち残存膨張発生後にも炭化室天井煉瓦の水平状態を維持することが可能となり、非補修壁と補修壁に損傷を与えない補修を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、炭化室および燃焼室の正面と本発明による補修範囲を示す説明図である。
【図2】図2は、補修範囲の煉瓦を解体した状態を示す説明図である。
【図3】図3は、補修部の炭化室天井煉瓦積み前の煉瓦積み状態を示す説明図である。
【図4】図4は、残存膨張代を考慮しないで炭化室天井煉瓦を設置した状態を示す説明図である。
【図5】図5は、炭化室天井煉瓦を煉瓦積み時に水平にした、従来の残存膨張吸収代9の実施方法を示す説明図である。
【図6】図6は、クッションモルタルで残存膨張代を確保した状態を示す説明図である。
【図7】図7は、市販されているクッションモルタル材料と可縮率との関係を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例における炭化室および燃焼室の正面と補修範囲を示す説明図である。
【図9】図9は、実施例における炭化室および燃焼室の側面と補修範囲を示す説明図である。
【図10】図10は、クッションモルタルの材料と可縮特性の関係を示すグラフである。
【図11】図11は、クッションモルタルの熱間可縮特性を示すグラフである。
【図12】図12は、従来の方法の熱間積替範囲を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、炭化室および燃焼室の正面と本発明による補修範囲を示す説明図である。
図1に示すように、補修範囲1である炭化室4(燃焼室2)の炉壁煉瓦5の左右に炭化室天井煉瓦6が配置され、また炭化室天井煉瓦6の一方は非補修部の炭化室(燃焼室)の炉壁煉瓦5’上にある。
【0034】
補修範囲1の煉瓦の積替えを行うためには、補修する燃焼室2の左右に位置する炉頂部煉瓦7と炭化室天井煉瓦6と、その下段の炭化室(燃焼室)の炉壁煉瓦5を積替えることとなる。
【0035】
図2は、補修範囲の煉瓦を解体した状態を示す説明図である。
図2に示すように、非補修部の炉壁煉瓦5’は断熱材8で保護され、熱間状態で保持されている。このため、補修中も非補修部の煉瓦高さh1、h2は収縮することはない。
【0036】
図3は、補修部の炭化室天井煉瓦積み前の煉瓦積み状態を示す説明図である。図3に示すように、補修部の煉瓦高さh3は、この燃焼室の燃焼ガスが停止されているため所定の温度まで到達しておらず、非補修部の高さh1、h2よりも低い状態である。すなわち、h1≒h2>h3である。通常煉瓦積み中の煉瓦温度は200℃以下であり、硅石煉瓦の煉瓦膨張率では0.7%程度である。コークス炉の操業時の煉瓦温度は1000℃以上で膨張率は1.2%程度あり、煉瓦積み時は0.5%程度の残存膨張率があることとなる。仮に煉瓦積み高さhが7mであれば、35mm程度、補修部の煉瓦高さh3が低い状態である。
【0037】
このような状態で炭化室天井煉瓦6を積むと、図4に示すように、炭化室天井煉瓦6は傾いた状態となってしまう。このまま所定の温度まで上昇させて残存膨張が発生すれば、膨張がスムーズに行えずに、非補修部の煉瓦との接触や積替えた壁の変形につながる危険性がある。
【0038】
したがって、炭化室天井煉瓦6は、煉瓦積み時と残存膨張発生中も水平状態を保持することが望ましいこととなる。
図5は、炭化室天井煉瓦6を煉瓦積み時に水平にした、従来の残存膨張吸収代9の実施方法を示す説明図である。図5に示すように、炭化室天井煉瓦を積む時には残存膨張吸収代9は、通常の煉瓦目地代の4〜6mmより大きく、前述の通り35mm程度の吸収代を設けることとなる。
【0039】
この膨張吸収代9には炭化室天井煉瓦6と炉頂部煉瓦7の荷重を支えるために、強度のあるものを充填する必要があるが、膨張が発生終了時には焼失するか収縮する充填剤が必要となる。充填剤としては木製の楔を使用するのが一般的であるが、膨張完了時と木製の楔が焼失する時期が必ずしも一致せず、楔が早く焼失すれば炭化室天井煉瓦6や炉頂部煉瓦7が沈下する状態となる。反対に楔が膨張より遅く焼失すれば反対に炉頂部が凸状態となる。いずれの状態でも一時的に炭化室天井部6と炉頂部煉瓦7に大きな動きが発生し、非補修部の煉瓦にも悪影響を与えてしまう。
【0040】
木製の楔にかえてセラミックボードを挿入する方法もあるが、セラミックボードの可縮率が数10%でしかなく、仮に35mmの残存膨張量を吸収しようとすれば、35%の可縮率としても100mmの高さのセラミックボードを挿入する必要があり、炭化室天井煉瓦を水平な状態にするためには、膨張吸収代9より下段の煉瓦目地代を通常の4〜6mmより小さい目地代にする必要があり、煉瓦間の接着強度の低下を招く危険性がある。
【0041】
煉瓦積みの方法は以下の要領で行う。煉瓦解体時に図2に示す煉瓦高さhを予め測定をしておき、次に煉瓦積み枚数と煉瓦膨張量から一段当たりの煉瓦目地代を算出する。
従来の煉瓦積み方法は、この煉瓦目地代で煉瓦積みを行い、残存膨張吸収代9を設ける時に煉瓦積み中に熱膨張した量を煉瓦最終膨張量から減じて、残存膨張吸収代9を設定する。
【0042】
ところが煉瓦積み中の熱膨張は、外気側に近い窯口側と炉内側では熱伝導による煉瓦温度が異なるため、窯口側に比べて炉内側の方の熱膨張量が大きくなる。このため煉瓦積み期間が長期間に及ぶ場合には、残存膨張吸収代9は窯口側で広く炉内側では狭くなるため、先述の木製楔やセラミックボードではその高さを変更する必要があり、炭化室天井煉瓦6を水平に保持することがさらに困難となる。
【0043】
本発明の煉瓦積替方法は、煉瓦高さhから得られた煉瓦目地代で、炭化室炉壁煉瓦5の煉瓦積みを開始することは従来方法と同様であり、目地モルタルも硅石モルタルで積む。しかしながら、前日に煉瓦を積んだ炉壁は、翌日には熱膨張が発生し窯口側より炉内側の方の煉瓦高さは高くなっている。このため、前日の煉瓦積み中に発生した膨張と前日から翌日にかけて発生した膨張量を測定しておき、残りの煉瓦高さと煉瓦段数から、当日の目地代を窯口側と炉内側の目地割を変更して積んでゆく。この結果、煉瓦段数が増加するにつれて、窯口側の目地代に比べて炉内側の目地代が小さくなり、煉瓦高さも窯口側より炉内側が高くなる。
【0044】
すなわち、前日の煉瓦積み終了後から翌日の煉瓦積み前の間に、熱膨張が発生し温度が高い炉内側と温度が低い窯口側で熱膨張差が発生している状態となるので、煉瓦積み前には、煉瓦高さhは窯口<炉内側となっている。しかしながら煉瓦積みを行う炭化室の炉壁5は、図1に示す如く左右2壁を同時に積んでゆくために、煉瓦積み時は極力炉内、窯口側および左右共に水平に煉瓦積みを行う必要がある(水平に煉瓦積みをしない場合は、煉瓦間の目地代が不均一となったり、目地に隙間が発生したりする)。このように煉瓦積み中は水平な状態で煉瓦を積むために、煉瓦段数が増加するにつれて、窯口側の目地代にくらべ炉内側の目地代が小さくなるため、膨脹量の測定を行いながら、窯口側と炉内側の目地割を、窯口側の目地代にくらべ炉内側の目地代を小さくしても、煉瓦高さが窯口側より炉内側が高くなる。
【0045】
炭化室天井煉瓦6を積む作業内までの残り高さとなった時点(天井煉瓦から約10段以内)で残りの煉瓦積み段数と残存膨張量から、目地割を算出する。目地モルタルには残存膨張代を吸収するため、可縮性のあるクッションモルタルを使用する。
【0046】
炭化室天井煉瓦6は非補修部の炭化室壁煉瓦5’と水平にすべく目地割を計算する。すなわち残存膨張量は窯口側が大きく炉内側は小さいので、窯口側を大きく炉内側は小さい目地代となるが、可縮率を変更したモルタルを使用すれば膨張後も炭化室天井煉瓦6の水平状態は確保可能となる。すなわち、窯口側と炉内側で同じ可縮率のモルタルを使用すれば、厳密には非補修部にくらべ窯口側の天井煉瓦は上昇し、炉内側は下降して傾くので、窯口側と炉内側では可縮率を変更させたモルタルを使用する。
【0047】
クッションモルタルの可縮率は、煉瓦積み時の膨張発生量を減じた残存膨張量と炭化室天井煉瓦6と炉頂部煉瓦7の荷重を考慮し決定する。したがって、可縮率は熱間積替え補修を行う毎に煉瓦積み中の熱膨張量が異なるため、変更する。
【0048】
クッションモルタルの可縮率は、炭化室天井煉瓦6と炉頂部煉瓦7の荷重は常に一定であるので、煉瓦積み中の膨張量を正確に測定しておけば容易に変更は可能である。
図7は、市販されているクッションモルタル材料と可縮率との関係を示すグラフである。図7に示すように、市販されているクッションモルタルの可縮特性を勘案して、クッションモルタルの可縮率を変更すればよい。
【実施例】
【0049】
38年間稼働したコークス炉において、炭化室側壁および炭化室天井煉瓦の損傷が進行し、このままでは操業が困難となる危険性がある窯の熱間補修を行った。
図8は、実施例における炭化室および燃焼室の正面と補修範囲を示す説明図であり、図9は、実施例における炭化室および燃焼室の側面と補修範囲を示す説明図である。
【0050】
補修範囲は、図8、9に示すように、1つの燃焼室の両側の側壁5と炭化室天井煉瓦6と炉頂部7の範囲であり、垂直方向は炭化室4で7mと炭化室天井部6から炉頂部7の1.3mの合計8.3mで、水平方向は炭化室炉壁煉瓦5で1.2mの範囲で補修を行った。
【0051】
補修前には、炭化室4の非補修壁に断熱材8と補修煉瓦壁より内部煉瓦壁との境界に断熱材8を取り付けた。このような準備をした後、この補修部の燃焼室2の燃焼を停止し、降温後に補修作業を開始した。
【0052】
図6は、クッションモルタルで残存膨張代を確保した状態を示す説明図である。
図6に示すように、炭化室炉底部47段から93段までは、通常の硅石モルタルにより4.5mmの目地代で煉瓦積みを行った。炭化室天井煉瓦6までの段数は残り10段となった所で、炭化室天井煉瓦下端までの距離を測定し、また93段までの煉瓦積み中に発生する熱膨張量も日々の煉瓦積み作業時に測定を行った。
【0053】
残り10段で上記測定を行ったのは、1日の中で煉瓦積み可能な段数であることや、使用するクッションモルタルへの煉瓦荷重のバラツキを抑制するためである。
表1、2に実測した測定値から、クッションモルタルの可縮率を計算した結果を示す。表1に煉瓦段数93段までの膨張量を示し、表2に実測した測定値からクッションモルタルの可縮率を計算した結果を示す。なお、表2における丸囲み数字6は、煉瓦膨脹代とその残り(目地で埋める部分)を意味する。
【0054】
その結果、窯口側、中央部、炉内側の平均可縮率は各々60%、56%、50%となった。本実施例では窯口側から炉内側までの距離が1.2mであり、可縮率を3ブロック(0.4mピッチ)で変更する方法を選定した。
【0055】
また煉瓦段数94段から上部煉瓦から求めた荷重は、0.03Mpaであり、図10に示すクッションモルタルの特性から選定されるものはD,E,F材となった。また表3にはクッションモルタルの可縮率と可縮後の計算目地代との関係を示し、D,E,F材を使用した場合の膨張完了後の目地代を示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
また今回使用したクッションモルタルは、図11に示すように、荷重下でも200℃までは可縮されず、上記煉瓦積み中に煉瓦が沈み込むようなことないものである。
実施例では3種類のクッションモルタルを使用したが、中央部はD,F材を50%ずつ混合したものを使用しても良い。
【0060】
煉瓦積み完了後、所定の1000℃近い操業温度に到達後の状態を目視確認したが、ほぼ所定の目地代でなっていることが確認され、炭化室天井煉瓦は水平に保持され、煉瓦の沈み込みや突き上げはなかった。
【符号の説明】
【0061】
1 補修(煉瓦積替え)範囲
2 補修燃焼室
3 非補修燃焼室
4 炭化室
5 炭化室(燃焼室)炉壁煉瓦
6 炭化室天井煉瓦
7 炉頂部煉瓦
8 非補修炉壁煉瓦の断熱材
9 残存膨張量吸収代
10 懸垂金物
h1、h2、h3 煉瓦高さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の炭化室天井煉瓦を含んだ炭化室煉瓦の積替えを、該炭化室天井煉瓦が略水平となるように熱間で行う際に、煉瓦積みを終えた煉瓦の炉高方向の膨張を測定しながら煉瓦積みを行い、煉瓦積み中に発生する膨張量から昇温後の残存発生膨張量を予測し、可縮モルタルの可縮率を変更することを特徴とするコークス炉炭化室の煉瓦積替方法。
【請求項2】
炭化室天井煉瓦よりも下段の積替煉瓦の目地高さを、窯口側から炉内側にかけて減少させる請求項1に記載されたコークス炉炭化室の煉瓦積替方法。
【請求項3】
前記炭化室煉瓦の積替えを、炭化室の炉底部、炭化室天井部煉瓦から炉頂部にかけて、行う請求項1又は請求項2に記載されたコークス炉炭化室の煉瓦積替方法。
【請求項1】
コークス炉の炭化室天井煉瓦を含んだ炭化室煉瓦の積替えを、該炭化室天井煉瓦が略水平となるように熱間で行う際に、煉瓦積みを終えた煉瓦の炉高方向の膨張を測定しながら煉瓦積みを行い、煉瓦積み中に発生する膨張量から昇温後の残存発生膨張量を予測し、可縮モルタルの可縮率を変更することを特徴とするコークス炉炭化室の煉瓦積替方法。
【請求項2】
炭化室天井煉瓦よりも下段の積替煉瓦の目地高さを、窯口側から炉内側にかけて減少させる請求項1に記載されたコークス炉炭化室の煉瓦積替方法。
【請求項3】
前記炭化室煉瓦の積替えを、炭化室の炉底部、炭化室天井部煉瓦から炉頂部にかけて、行う請求項1又は請求項2に記載されたコークス炉炭化室の煉瓦積替方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−236896(P2012−236896A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106262(P2011−106262)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
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