説明

コークス炉窯口部のシール用ブレイドロープおよびそのシール方法

【課題】コークス炉窯口部に形成される空隙を長期間安定してシールすることが可能なブレイドロープ、およびそのロープを使用したシール方法を提供する。
【解決手段】耐火性無機短繊維と有機繊維とを混紡したものを、芯線と共に撚り合わせて単糸とし、1本又は複数の単糸を芯糸と共に撚り合わせて合撚糸とし、複数の合撚糸を撚り合わせることでヤーンロープとし、該ヤーンロープを用いて形成される中芯を、耐火性無機連続繊維からなる被覆材によって被覆することで、密度が650kg/m3以上となるようにしたコークス炉窯口部のシール用ブレイドロープであり、また、このブレイドロープを耐火モルタルと組み合わせて、コークス炉窯口部における構成部材間に形成される空隙を塞ぐシール方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の窯口部分より炉内ガスが炉外に漏出するのを防ぐと共に、窯口部分から炉内に大気が吸い込まれるのを防止するためのシール用ブレイドロープ、およびそのロープを使用したシール方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭をコークス炉にて乾留すると、コークス炉ガスが発生して炉内の圧力を変動させる。具体的には、石炭挿入後の炉内ガス圧力は大気圧より少し高くなるが、窯出し前は真空に近くなる。この結果、石炭挿入後は、窯口部から外に炉内乾留ガスが流出して作業環境の悪化をもたらし、窯出し前には、大気を吸入する事により、コークスの燃焼による歩留まり悪化や炉内温度の低下をもたらす場合がある。
【0003】
図1にコークス炉窯口部においてシールを必要とする部位の代表例を示す。一般に、コークス炉の窯口部は、窯口を塞ぐ炉蓋(図示外)のナイフエッジが当接する炉枠1が、鋳物からなる保護板2を介して、レンガからなる炉体3に取り付けられており、窯口部におけるこれらの構成部材の間には、通常、隙間が形成される。すなわち、炉枠1と保護板2との間、および保護板2と炉体3との間には、それぞれ空隙が形成されるため、これをシールする必要がある。また、保護板が使用されない場合では、炉枠1と炉体3との間に形成される空隙をシールする必要がある。しかしながら、高さ数メートルに達することもある鋳鉄製の炉枠が操業中の熱サイクルによって変形する場合があり、またシールが必要な部分は最高で800℃程度の高温になるなど過酷な条件であり、さらに数ヶ月から数年間の長期間のシール性が要求されることから、シール方法については様々な検討が実施されて来た。
【0004】
従来のシール方法の代表例としては、上記のようなコークス炉の窯口部に形成される空隙に、その隙間よりも直径が大きなアスベスト製のロープを所定の位置に挟んだ状態で炉枠をセットしたり、電動チッパーなどによって強制的に打ち込んだりしてシールする方法がある。挟まれたり打ち込まれたりしたアスベストロープは変形して炉枠、保護板および炉体に密着しシール性を付与していた。
【0005】
しかしながら、アスベストは人体に悪影響をもたらす発がん性物質であるため使用が禁止され、近年は高温耐火性を有する無機繊維であるセラミックファイバーを主原料として形成したロープが、アスベストロープの代替品として採用されるようになった。例えば、特許文献1では、セラミックファイバー製のロープ状パッキンをコークス炉の炉枠と炉体間のシールとして用いる方法が開示されている。ところが、特許文献1で記載している一般的なセラミックファイバー製のロープは、コークス炉窯口部のシール材として用いるには通気性が高く、このため特許文献1では、高温耐熱性膨張シートを組み合わせてシールしている。本文献の高温耐熱性膨張シートの詳細は不明であるが、炉枠のシール性確保のために最も重要な役割を担うセラミックファイバー製ロープのシール性が改善されていなければ、効果は限定的と推定され、また、複数種類のシール材を施工することは作業負荷が大きくなってしまう。
【0006】
特許文献2には、セラミックファイバー等からなる中芯をグラスファイバーで被覆した不燃性ロープが記載されている。ところが、特許文献2に記載されたグラスファイバーを被覆材とした不燃性ロープは、グラスファイバーの耐熱性が500〜600℃程度であり、コークス炉窯口部の最高温度である800℃と比較すると低い。このため、使用中に被覆材が劣化あるいは溶融するためシール性が低下するという問題が生じる。
【0007】
ロープ状のシール材を使用しない例として、特許文献3では、耐熱モルタルを空隙に充填することによってシールする方法が開示されている。しかしながら、特許文献3で記載しているモルタルを充填する方法は、施工性には優れているものの、熱負荷によってモルタルが膨張収縮することや、炉枠や保護板の熱変形などのために、モルタルに亀裂が生じてシール性が低下する場合があり、長期間安定してシール性を確保することが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−148487号公報
【特許文献2】特開平9−302593号公報
【特許文献3】特開昭61−223087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明では、コークス炉窯口部に形成される空隙を長期間安定してシールすることが可能なブレイドロープ、およびそのロープを使用したシール方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、コークス炉窯口部に形成される空隙シール用のブレイドロープについて鋭意検討した結果、密度が所定の値になるようにブレイドロープを形成することで、シール性が著しく向上することを見出して本発明を完成するに至った。ちなみに、本発明者らが調査したところによれば、従来のコークス炉窯口部シール用のブレイドロープの密度は、いずれも600kg/m3以下である。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0011】
(1)コークス炉の窯口部における構成部材間に形成される空隙を埋めるのに用いられるコークス炉窯口部のシール用ブレイドロープであって、耐火性無機短繊維と有機繊維とを混紡したものを、芯線と共に撚り合わせて単糸とし、1本又は複数の単糸を芯糸と共に撚り合わせて合撚糸とし、複数の合撚糸を撚り合わせることでヤーンロープとし、該ヤーンロープを用いて形成される中芯を、耐火性無機連続繊維からなる被覆材によって被覆することで、密度が650kg/m3以上となるようにしたことを特徴とするコークス炉窯口部のシール用ブレイドロープ。
(2)ヤーンロープを複数本撚り合わせて中芯を形成する(1)に記載のコークス炉窯口部のシール用ブレイドロープ。
(3)芯線が、耐火性無機連続繊維からなる(1)又は(2)に記載のコークス炉窯口部のシール用ブレイドロープ。
(4)耐火性無機短繊維が、Al23−SiO2系材料からなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載のコークス炉窯口部のシール用ブレイドロープ。
(5)被覆材が、シリカファイバーからなることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のコークス炉窯口部のシール用ブレイドロープ。
(6)コークス炉窯口部における構成部材間に形成される空隙に(1)〜(5)のいずれか1項に記載のブレイドロープを施工後、無機繊維を含有した耐火モルタルを充填することを特徴とするコークス炉窯口部におけるシール方法。
【発明の効果】
【0012】
耐火性無機短繊維と有機繊維とを混紡したものを、芯線と共に撚り合わせて単糸を形成し、これらを芯糸と共に撚り合わせて合撚糸とし、更にこの合撚糸を複数本撚り合わせて中芯を形成し、この中芯を耐火性無機連続繊維で被覆して密度が650kg/m3以上となるようにしたブレイドロープは、シール性に極めて優れ、しかも、中芯を被覆する耐火性無機連続繊維をシリカファイバーとすることで、より一層シール性が向上する。また、これらのブレイドロープをコークス炉窯口部の空隙に施工した後に、無機繊維を含有したモルタルを充填することで、コークス炉の窯口部について長期間安定してシール性を保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、コークス炉の窯口部における構成部材間に形成される空隙にブレイドロープを施工し、モルタルを充填した状態を表す図である。
【図2】図2は、ブレイドロープの中芯製造までの過程における構成要素を説明した図である。
【図3】図3は、ブレイドロープの構成を示した図である。
【図4】図4は、実施例1〜8および比較例1〜6のロープのシール性を評価するための装置の概略図である。
【図5】図5は、実施例9〜14および比較例7〜8のシール性を評価するための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、好適な実施形態を挙げて、本発明のブレイドロープとそのロープを使用したシール方法をさらに詳細に説明する。
【0015】
本発明のブレイドロープは、次の様な手順で作製することができる。まず、耐火性無機短繊維と有機繊維を混紡したものを芯線と共に撚り合わせて、図2(a)に示すような単糸を作製する。ここで言う耐火性無機短繊維とは、例えばセラミックファイバー、アルカリ土類金属酸化物とシリカから構成される生体溶解性繊維(例えば新日本サーマルセラミックス社製スーパーウール)、高炉スラグや岩石を原料とするロックウールなどであるが、使用温度が最高で800℃であることや打ち込み施工する際に打ち込みに耐える強度が必要であることからセラミックファイバーが最も好ましい。なお、セラミックファイバーとは、広義ではアルミナファイバーやジルコニアファイバーなども含むが、狭義ではアルミナ−シリカ系のファイバーを指し、典型的な化学組成はAl23が45質量%、SiO2が55質量%、またはAl23が35質量%、SiO2が50質量%、ZrO2が15質量%である。本発明で最も好ましいものは、狭義のセラミックファイバーである。また、ここで言う短繊維とは連続繊維ではないということを意味しており、例として挙げた各種ファイバーは一般的に短繊維として製造されている。
【0016】
これらの耐火性無機短繊維から単糸を作製する場合、まず有機繊維と混紡し、これを芯線と共に撚り合わせて作製する。アスベストは平均繊維径が1μm以下と非常に細いため、有機繊維と混紡することなく単糸を作製することが可能であるが、例えばセラミックファイバーは平均繊維径が3μm程度と比較的太いため、有機繊維と混紡しなければ単糸を作製することはできない。有機繊維は、セラミックファイバーを撚り合わせた際にお互いが絡み合い易くするために添加するものであり、具体的にはレーヨン、ポリエステルなどが使用可能である。芯線としては耐熱性の無機連続繊維、例えばグラスファイバーの連続繊維が好ましい。芯線の場合は被覆材と異なりシール性への影響は非常に小さいため、グラスファイバーでも全く問題ない。
【0017】
次に、図2(b)に示すように、1本又は複数の単糸と芯糸を撚り合わせることで合撚糸を作製する。芯糸としては強度の高い材料が好ましく、ステンレス線のような金属線が最も好ましく、グラスファイバーでも適用可能である。さらに複数の合撚糸を撚り合わせることで、図2(c)に示すようなヤーンロープを作製する。次に、図2(d)に示すように、ヤーンロープを複数本撚り合わせることによって所定の太さの中芯を作製する。この際、合撚糸をヤーンロープと共に撚り合わせて中芯を作成するようにしてもよい。コークス炉用ブレイドロープの直径は10〜50mm程度であることから、細径の場合はヤーンロープ単体を中芯としてもよいが、一般的に使用されている直径25mm前後のブレイドロープを得るためには、好ましくは複数のヤーンロープを撚り合わせて中芯とするのがよい。
【0018】
最後に図3に示すように、中芯を耐火性無機連続繊維で被覆することによってブレイドロープを作製することができる。被覆材としては、耐火性の無機連続繊維である必要がある。耐火性のない被覆材では使用中の熱負荷により劣化あるいは消失してシール性が低下するからである。また、耐火性の無機繊維でも短繊維の場合は打ち込み施工時に破れる可能性が高く、また、単糸を作製するときに混紡する有機繊維が熱で消失するため、シール性の低下につながる。耐火性の無機連続繊維としてはシリカファイバー、カーボンファイバー、グラスファイバーなどが挙げられる。カーボンファイバーは耐酸化性が、グラスファイバーは耐熱性がそれぞれ使用上問題となる場合もあり得るため、シリカファイバーが最も好ましい。なお、中芯を被覆する被覆材は、シール性向上と施工時の必要強度を確保するため、中芯を全て被覆するのが最も好ましいが、上記のような構成により中芯の密度が高いため、中芯部分でのシール性も高いことから、一部(例えば20%程度)に被覆されていない部分があっても実用上大きな問題はない。そのため本発明のブレイドロープは、カーボンファイバーやグラスファイバーによる被覆で、使用時に被覆材の一部が酸化あるいは溶融しても使用可能となる。
【0019】
本発明では、上記のように中芯を構成した上で、ブレイドロープの密度を650kg/m3以上とすることで、シール性が顕著に向上する。ブレイドロープの密度は、中芯を構成する合撚糸やヤーンロープの使用量を多くして固く撚り合わせるほか、表面の被覆材を機械で編み上げる際に、被覆用の糸のキャリアの回転速度を下げて密に、かつ、固く編み上げたりする事により高密度にすることができる。
【0020】
セラミックファイバーを用いて形成したヤーンロープを中芯に使用したブレイドロープでは、前述したように有機繊維を混紡しているため、使用時の熱による燃焼消失により中芯部分のシール性が悪化することは避けられない。このため、本発明の様に密度を所定の値以上に規定することでシール性の顕著な改善効果が発揮される。ブレイドロープの密度は650kg/m3以上でシール性の改善効果が発揮されるが、より好ましくは700kg/m3以上、さらに好ましくは750kg/m3以上、最も好ましくは800kg/m3以上とすることで、さらに優れたシール性を発揮することが可能となる。なお、ブレイドロープの密度の上限については特に限定するものではないが、密度を上げようとすると中芯が損傷し易くなるのでその点を考慮する必要がある。
【0021】
ブレイドロープの密度は、測定するロープの長さが短すぎると誤差が大きくなるため、長さ200mm以上で測定する。また、ブレイドロープは厳密には真円とはならないので、任意の10箇所以上の直径を測定して平均した値をロープの直径とする。密度は、ロープの質量を、直径と長さから算出した体積で割ることで計算することができる。
【0022】
本発明で得られたブレイドロープは、コークス炉の窯口部を構成する炉枠、保護板、炉体等の構成部材間に形成される空隙を埋めるのに用いられ、図1に示すように、コークス炉窯口部の炉枠1と保護板2との間に介在させ、また、保護板2と炉体3との間に介在させるようにして、使用することができる。この際、図1に示すように、ブレイドロープ4を施工した後、各構成部材間に形成された隙間に更に耐火モルタル5等を充填することによって、一層シール性を向上させることができる。その際、耐火モルタルとして無機繊維を含有する耐火モルタルを使用することがより好ましい。無機繊維を含有しない一般的なモルタルは、乾燥時の収縮により亀裂や剥離を発生する場合があり、コークス炉窯口部のシールのような過酷な条件で長期間使用される用途には必ずしも適当ではない。これに対して無機繊維を含有する耐火モルタルは、乾燥時の収縮が小さいため、本発明のブレイドロープと組み合わせて施工することによって、長期間安定したシール性を維持することが可能となる。耐火モルタルに含有させる無機繊維としては、セラミックファイバー、生体溶解性繊維、ロックウールなどが挙げられるが、最も好ましいものは狭義のセラミックファイバーである。その含有量は特に制限されないが、例えば10質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましい。
【実施例】
【0023】
[実施例1〜8、比較例1〜6]
以下の表1に記載するブレイドロープA1〜3、及びB1の作製方法を説明する。ブレイドロープの中芯については、セラミックファイバーとレーヨンを混紡した後、グラスファイバーを芯線として単糸を作製し、この単糸を複数本用いてステンレスの細線を撚り合わせることによって、合撚糸を作製した。そして、7本の合撚糸からヤーンロープを作製し、さらに7本のヤーンロープを撚り合わせることによって中芯を作製した。
【0024】
上記で準備した中芯を用いて、被覆材として耐火性無機連続繊維であるシリカファイバー被覆した場合をブレイドロープAとし、短繊維を撚り合わせて作製したセラミックファイバーのヤーンで被覆した場合をブレイドロープBとした。ブレイドロープAは、直径が25mmで密度が550kg/m3から900kg/m3までの計8種類(A1)、直径が15mmで密度が800kg/m3の1種類(A2)、及び直径が35mmで密度が800kg/m3の1種類(A3)を作製し、ブレイドロープBは、直径が25mmで密度が550kg/m3から850kg/m3まで4種類(B1)を作製した。ブレイドロープの密度を変える方法としては、被覆材を編み上げる際に、被覆用の糸のキャリアの回転速度を調整した。ブレイドロープの密度は、ロープを約300mmに切断し、任意の10箇所を測定して平均した直径と長さから体積を計算し、その体積をロープの質量で割ることで算出した。
【0025】
【表1】

【0026】
上記で準備した実施例1〜8及び比較例1〜6のブレイドロープを図4の模式図に示す装置にてシール性の評価を行った。図4におけるステンレス製の円盤状のホルダーに上記で得られた各ロープを挟み、加圧してホルダーの隙間が直径25mmのロープの場合は15mm、直径15mmのロープの場合は9mm、直径35mmのロープの場合は21mmとなった状態を保持したまま、800℃で5時間加熱した。次いで、図4に示すコンプレッサー、バルブ、及び圧力計から構成された装置に加熱後のホルダーを装着し、3kPaの差圧をホルダー内部に付与したのちコンプレッサー側のバルブを閉じて、圧力計の数値を見て差圧がゼロになるまでの時間を計測し、シール性を評価した。表1に示したシール時間の評価結果は、実施例1のシール時間を100とした指数として示しており、数値が大きいほどシール性が良好であることを示している。
【0027】
シール性の評価について実施例1〜6の結果と比較例1〜2の結果を比較すると、ブレイドロープの密度を650kg/m3以上とすることでシール性が良好になっていることが明らかである。特に、ブレイドロープの密度が700kg/m3以上で改善効果が大きく、750kg/m3以上でさらに優れた改善効果が得られ、800kg/m3以上で顕著な改善効果が得られることが分かる。また、実施例7および8から明らかなようにロープの直径を変化させても優れた改善効果が得られている。
【0028】
一方、比較例3〜6は被覆材としてセラミックファイバーのヤーンを使用した場合であるが、ロープの密度を大きくしても本発明品と比較してシール性は劣っており好ましくない。セラミックファイバーの被覆材は圧縮時や熱処理時の劣化が激しくシール性が無くなると共に中芯の形状が保持できなくなるため、中芯自身のシール性も低下するためと考えられる。
【0029】
[実施例9〜14、比較例7〜8]
コークス炉の窯口部における構成部材間にブレイドロープを施工した後に更に塗布するモルタル中の無機繊維の有無による影響を調査した。試験に用いたモルタルは、Al23が20質量%、SiO2が78質量%からなる骨材に、可塑剤として粘土を添加し、結合材として水ガラスを添加して均一に混練してモルタルBを得た。また、モルタルAは、化学組成としてAl23が45質量%、SiO2が55質量%であるセラミックファイバーを、骨材と同じ質量で添加した後(セラミックファイバー50質量%、骨材50質量%)、モルタルBと同様、更に粘土と水ガラスを添加して、均一に混練して作製した。
【0030】
上記で準備したモルタルA及びモルタルBについて、ブレイドロープA1およびブレイドロープB1と組み合わせて以下のようにシール性を評価する試験を行った。シール性の評価装置を図5に示す。今回の評価方法では、ホルダーにブレイドロープを挟んだ後にその外周側にモルタルを充填してから加熱処理を行っている点が先ほどの評価方法と異なるだけで、その他の評価方法は先の場合と同じである。表2に示したシール時間の評価結果は、実施例1のシール時間を100とした指数として示しており、数値が大きいほどシール性が良好であることを示している。
【0031】
【表2】

【0032】
シール性の評価について実施例9〜14の結果と比較例7〜8の結果を比較すると、本発明のブレイドロープを使用した実施例においては、モルタルAおよびモルタルBのいずれを使用した場合でも比較例よりもシール性が改善されていることが明らかである。特に無機繊維を含有するモルタルAを使用した場合はモルタルを使用していない実施例1、3、5と比較してその改善効果が顕著であり、より好ましいことが分かる。モルタルAは加熱処理後も亀裂等は見られなかったが、モルタルBは亀裂が発生しており、このためモルタルAのシール性の方が良好になったものと考えられる。一方、密度が550kg/m3のブレイドロープB1を使用した比較例においては、いずれのモルタルを使用してもシール性は悪かった。このことより、従来のブレイドロープでは、たとえ無機繊維を含有するモルタルを使用したとしても、改善効果は不十分であることが明らかである。
【符号の説明】
【0033】
1:炉枠
2:保護板
3:炉体
4:ブレイドロープ
5:耐火モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の窯口部における構成部材間に形成される空隙を埋めるのに用いられるコークス炉窯口部のシール用ブレイドロープであって、耐火性無機短繊維と有機繊維とを混紡したものを、芯線と共に撚り合わせて単糸とし、1本又は複数の単糸を芯糸と共に撚り合わせて合撚糸とし、複数の合撚糸を撚り合わせることでヤーンロープとし、該ヤーンロープを用いて形成される中芯を、耐火性無機連続繊維からなる被覆材によって被覆することで、密度が650kg/m3以上となるようにしたことを特徴とするコークス炉窯口部のシール用ブレイドロープ。
【請求項2】
ヤーンロープを複数本撚り合わせて中芯を形成する請求項1に記載のコークス炉窯口部のシール用ブレイドロープ。
【請求項3】
芯線が、耐火性無機連続繊維からなる請求項1又は2に記載のコークス炉窯口部のシール用ブレイドロープ。
【請求項4】
耐火性無機短繊維が、Al23−SiO2系材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコークス炉窯口部のシール用ブレイドロープ。
【請求項5】
被覆材が、シリカファイバーからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコークス炉窯口部のシール用ブレイドロープ。
【請求項6】
コークス炉窯口部における構成部材間に形成される空隙に請求項1〜5のいずれか1項に記載のブレイドロープを施工後、無機繊維を含有した耐火モルタルを充填することを特徴とするコークス炉窯口部におけるシール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−208022(P2011−208022A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77322(P2010−77322)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(599074730)新日本サーマルセラミックス株式会社 (9)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】