説明

コージェネレーション代替省エネルギーシステム

【課題】
近年の原油価格の高騰により、温水排熱回収コージェネレーションによる発電と排熱回収した温水熱源の吸収式冷凍機による冷水供給システムのランニングコストが上昇してしまったため、安価な設備投資によるランニングコスト低減を図りたい。また、限りある資源を有効利用するために省エネルギー化を図り、地球温暖化影響を小さくするために更なる二酸化炭素排出量の削減を図ることが必要である。
【解決手段】
上記課題を解決するために本発明は、冷水供給については、既設の温水焚吸収冷凍機1をそのまま利用し、80℃以上の温水を生成できる冷水と温水を同時に取り出しが可能な電動式水冷式ヒートポンプ冷凍機3を新設し、水冷式ヒートポンプ冷凍機3から生成される温水を吸収式冷凍機1の加熱源の温水として利用しかつ吸収式冷凍機1より生成される冷水と電動式ヒートポンプ冷凍機3より生成される冷水を合わせて利用側に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コージェネレーションシステムと吸収式冷凍機とヒートポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の温水排熱回収コージェネレーションシステムは、非特許文献1等に記載されている。従来技術は、図2のようにコージェネレーションにより発電を行うとともに、エンジン排熱を80〜90℃の温水として回収して温水焚吸収冷凍機にて冷水を供給するものであった。また、冷水と温水の両方が必要な場合は、図3のように熱交換器17を併設して、三方弁の切り替えなどにより、温水が必要なときには吸収式冷凍機1を停止してコージェネレーション13の排温水を熱交換器17で温水配管25,11を通る温水と熱交換して温水を供給していた。
【非特許文献1】空気調和・衛生工学便覧 空気調和・衛生工学会出版 第13版第3編第362〜396頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近年の原油価格の高騰により、図2のような温水排熱回収コージェネレーション13による発電と排熱回収した温水熱源の吸収式冷凍機1による冷水供給システムのランニングコストが上昇してしまったため、安価な設備投資によるランニングコスト低減を図りたい。また、限りある資源を有効利用するために省エネルギー化を図り、地球温暖化影響を小さくするために更なる二酸化炭素排出量の削減を図ることが必要である。本発明は、従来の温水排熱回収コージェネレーションによる発電と排熱回収した温水熱源の吸収式冷凍機による冷水供給システムに対して、低ランニングコスト、省エネルギー、低二酸化炭素排出量を実現する代替システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために本発明は、電力についてはコージェネレーションによる発電を行わずに系統電力を利用し、また、図1のように冷水供給については、既設の80℃から90℃までの温水を加熱源とする温水焚吸収冷凍機1をそのまま利用し、80℃以上の温水を生成できる冷水と温水を同時に取り出しが可能な電動式水冷式ヒートポンプ冷凍機3を新設し、水冷式ヒートポンプ3から生成される温水を吸収式冷凍機1の加熱源の温水として利用しかつ吸収式冷凍機より生成される冷水と電動式ヒートポンプ冷凍機3より生成される冷水を合わせて利用側に供給する。

【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、電力と冷水供給のエネルギーコスト低減が可能になるとともに一次エネルギー量やCO2排出量が低減できる。
【0006】
例えば、コージェネレーションの発電効率を0.38、排熱回収効率を0.40とするとA重油の発熱量を39.1GJ/kL、温水焚吸収冷凍機の効率を0.6とすると従来システムの1kL当たりのコージェネレーションによる発電量は39.1×0.38/3.6=4.13(MWh)、コージェネレーション排熱による吸収式冷凍機の冷熱量は39.1×0.40=15.6(GJ)となる。また、1kL当たりの単価を70,000円とする。これに対して、冷水と温水を同時に取り出し可能なヒートポンプの消費電力に対する冷却熱量と加熱熱量はそれぞれ1.0と2.0とする。このとき、本発明においてヒートポンプの消費電力に対する吸収式冷凍機から生成される冷熱量は2.0×0.6=1.2となり、ヒートポンプから生成される冷熱を含めた合計の冷熱量1.2+1.0=2.2となる。従来システムの重油1kL当たりの冷却熱量分の本発明システムの必要消費電力量は15.6/2.2/3.6=2.0(MWh)であり、従来システムの重油1kL当たりの発電量分の本発明による系統電力による消費電力量は、1MWh当たり9.8GJとして、15.6/9.8=1.6(MWh)となり、本発明の合計消費電力量は2.0+1.6=3.6(MWh)となる。基本料金を含めた系統電力の平均電力単価を1MWh当たり15,000円とすれば、従来システムの重油1kL当たりの発電量と冷熱量に相当する本発明の合計料金は3.6×15,000=54,000(円)となり、従来システム70,000円よりも22%安くなる。
【0007】
また、一次エネルギー量としては従来システムが39.1GJ/kLに対して、本発明システムは3.6×9.8=35.3(GJ/kL)であり、11%の一次エネルギー削減となる。CO2排出削減量は地球温暖化対策の推進に関する法律によれば、電気の使用で0.555tCO2/MWh、A重油の使用で0.0189×39.1×44/12=2.7(tCO2/kL)であるので、従来システムの二酸化炭素排出量は重油1kL当たり2.7t、本発明システムでは3.6×0.555=2.0(t)となり、本発明システムにより従来システムに対して26%の二酸化炭素排出量削減となる。
【0008】
また、図2の従来システムから図1の本発明を実施するに当たり、80℃以上の温水を供給できる水冷式ヒートポンプ3、温水ポンプ4、冷水ポンプ7、温水配管8、冷水配管10を設置するだけで本発明を実施できるため、低コストでシステム変更が可能である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施の形態において、同一の符号を用いた構成要素は同じ機能を果たすので、一度説明したものについて説明を省略する場合がある。
【0010】
図3は、本発明を実施していない従来技術のシステム図であり、コージェネレーション13による発電を行うと同時にエンジン排熱を温水として回収して温水焚吸収冷凍機1にて冷水を供給する装置に熱交換器17を設置して吸収冷凍機1との切り替えにより温水も供給できるようにしたものである。
【0011】
図3に対して改良を加えたのが図4である。図4は本発明である請求項1を含んだ冷温水供給システム図であり、既設の80℃から90℃までの温水を加熱源とする温水焚吸収冷凍機1をそのまま利用し、80℃以上の温水を生成できる冷水と温水を同時に取り出しが可能な電動式水冷式ヒートポンプ冷凍機3を新設することにより、水冷式ヒートポンプ3から生成される温水を吸収式冷凍機1の加熱源の温水として利用しかつ吸収式冷凍機1より生成される冷水と電動式ヒートポンプ冷凍機3より生成される冷水を合わせて利用側に供給できるようにしたものである。図4を解説するために運転モード別にフローがわかるようにしたシステム図を図5、図6、図7、図8、図9に示し、実線部分が使用する部分を示し、波線部分は使用しない部分を示す。
【0012】
(ハイブリッド冷水運転モード1)
図5の実線部分は、本発明である請求項1を実施している部分であり、既設の80℃から90℃までの温水を加熱源とする温水焚吸収冷凍機1をそのまま利用し、80℃以上の温水を生成できる冷水と温水を同時に取り出しが可能な電動式水冷式ヒートポンプ冷凍機3を新設することにより、水冷式ヒートポンプ3から生成される温水を吸収式冷凍機1の加熱源の温水として利用しかつ吸収式冷凍機より生成される冷水と電動式ヒートポンプ冷凍機3より生成される冷水を合わせて利用側(冷水負荷)に供給できるようにしたものである。
【0013】
(コージェネレーション冷水運転モード)
図6の実線部分は、図2と同様に従来技術である温水排熱回収コージェネレーション13による発電と排熱回収した温水熱源の吸収式冷凍機1による冷水供給の運転フローであり、ハイブリッド冷水運転モードでは電力を使用するため、夏期の電力ピークなどに運転を行い、電力のピークカットを行う場合にのみ当モードの運転を行うとともに、ヒートポンプ3が故障した場合にバックアップとして運転を行うことができる。
【0014】
(コージェネレーション温水運転モード)
図7の実線部分は、図3と同様に従来技術であり、冷水と温水の両方が必要な場合は図3のように熱交換器17を併設して、三方弁の切り替えなどにより、温水が必要なときには吸収式冷凍機1を停止してコージェネレーション13の排温水を熱交換器17で温水配管25,11を通る温水と熱交換して温水を供給する運転モードであり、ヒートポンプ3が故障した場合のバックアップとして利用する運転フローである。
【0015】
(温水・冷水同時運転モード)
図8の実線部分は、水冷式ヒートポンプ3から生成される冷水と温水を同時に利用する運転フローであり、冷水配管31に接続される冷水負荷が別途存在する場合に運転が可能となる。このとき温水と冷水が混じり合わないように電動弁などで冷水配管30には水が流れないようにする。また、温水負荷が小さい場合は不要な温熱を冷却塔18と冷却水ポンプ20と熱交換器19で放熱することも可能である。この運転モードにおいて水冷式ヒートポンプ3から生成される温水は80℃以上でなくてもよい。また、冷水負荷の部分は地中熱、井水、工場排温水などの熱源とすることも可能である。
【0016】
(ヒートポンプ冷水運転モード1)
図9の実線部分は、図5、図6、図7、図8に示されるような冷温水配管23に接続される冷温水負荷が無く、かつ、冷水配管31に接続される冷水負荷が存在するときに冷水のみの運転をするときの運転フローであり、水冷式ヒートポンプ3の温水を冷却塔18、冷却水ポンプ20、熱交換器19により放熱することにより冷水運転が可能となる。
【0017】
(ヒートポンプ冷水運転モード2)
図10の実線部分は、図9に示されるような冷水配管31に接続される冷水負荷が無く、かつ、冷水配管23に接続される冷水負荷が存在するときに冷水のみの運転をするときの運転フローであり、水冷式ヒートポンプ3の温水を冷却塔18、冷却水ポンプ20、熱交換器19により放熱することにより冷水運転が可能となる。この運転モードは図5の運転モードよりも冷水能力が小さいため、冷水負荷が小さい中間期などに適した運転モードである。
【0018】
(ハイブリッド冷水運転モード2)
図11の実線部分は、本発明である請求項1を実施している部分と従来技術が混在している運転モードの運転フローを示しており、温水排熱回収コージェネレーション13と80℃から90℃までの温水を加熱源とする温水焚吸収冷凍機1と80℃以上の温水を生成できる冷水と温水を同時に取り出しが可能な電動式水冷式ヒートポンプ冷凍機3により、コージェネレーションの排温水と水冷式ヒートポンプ3から生成される温水の両方を吸収式冷凍機1の加熱源の温水として利用しかつ吸収式冷凍機より生成される冷水と電動式ヒートポンプ冷凍機3より生成される冷水を合わせて利用側(冷水負荷)に供給できるようにしたものである。この運転モードは図5の運転モードよりも冷水能力が高いので、ピーク負荷の場合などに適した運転モードである。この運転モードは図2従来のコージェネレーションと吸収式冷凍機よりも同じ冷水能力を確保するために使用する燃料が少なく済むため、低ランニングコスト、省エネルギー、低二酸化炭素排出量を実現できる。
【0019】
このように冷水負荷に応じて、図10、図5、図11の運転モードを使い分けることが可能である。
【0020】
従来技術であるコージェネレーションは油焚きエンジンコージェネレーションやガスエンジンコージェネレーション等であり、それを利用したシステムに対して本発明を適用することができる。

【実施例】
【0021】
温水を生成できる冷水と温水を同時に取り出しが可能な水冷式ヒートポンプ冷凍機については、JISB8613−1994におけるヒートポンプ加熱において過負荷条件の出口水温は50℃であり、80℃以上の温度については想定されていない。そこで、R134a冷媒を用いた水冷式ヒートポンプを製作し、性能試験を行ったところ、温水入口温度75℃、温水出口温度83℃、冷水入口温度15℃、冷水出口温度10℃の条件で、加熱COPが1.9、冷却COPが1.0であった。ここで、二酸化炭素冷媒ヒートポンプのように温水側の入口温度と出口温度の温度差が大きい瞬間給湯では、温水側平均温度が低くなるために温水焚吸収式冷凍機の熱源としては適さない。それに対して、水冷式のヒートポンプとしてR134a冷媒を用いることにより温水側入口、出口温度の温度差が5〜10℃程度の循環加熱が可能となり、10℃の冷水を得るとともに80℃以上の温水を得ることができた。これにより温水焚吸収式冷凍機の熱源として利用できるようになった。

【産業上の利用可能性】
【0022】
本願発明は、温水排熱回収コージェネレーションシステムによる発電と排熱回収温水熱源の吸収式冷凍機の冷水供給システムに対してエネルギーコスト削減、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減を実現する代替システムとして有用である。

【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を示した図であり、吸収冷凍機1と水冷式ヒートポンプ冷凍機3より構成される、水冷式ヒートポンプ3から生成される温水を吸収式冷凍機1の加熱源の温水として利用しかつ吸収式冷凍機より生成される冷水と電動式ヒートポンプ冷凍機より生成される冷水を合わせて利用側に供給することを特徴とする装置を示した図である。
【図2】従来システムを示した図であり、温水排熱回収コージェネレーション13と温水焚吸収式冷凍機1により、発電と排熱回収による冷水供給を行う装置の図である。
【図3】従来システムを示した図であり、吸収式冷凍機1と熱交換器17の切り替えにより冷水と温水の両方が必要な場合のシステム図である。
【図4】本発明である請求項1を含んだ冷温水供給システム図である。
【図5】図4を実線部分と波線部分に分けた図であり、実線部分は本発明である請求項1を実施している部分であり、吸収式冷凍機1をそのまま利用し、電動式水冷式ヒートポンプ冷凍機3を新設することにより、水冷式ヒートポンプ3から生成される温水を吸収式冷凍機1の加熱源の温水として利用しかつ吸収式冷凍機より生成される冷水と電動式ヒートポンプ冷凍機3より生成される冷水を合わせて利用側(冷水負荷)に供給できるようにしたものである。
【図6】図4を実線部分と波線部分に分けた図であり、実線部分は従来技術のコージェネレーション13による排温水熱源の吸収式冷凍機1による冷水供給の運転フローである。
【図7】図4を実線部分と波線部分に分けた図であり、図7の実線部分は、図3と同様の従来技術あり、冷水と温水の両方が必要な場合は熱交換器17を併設して、温水が必要なときには吸収式冷凍機1を停止してコージェネレーション13の排温水を熱交換器17で温水配管25,11を通る温水と熱交換して温水を供給する運転フローである。
【図8】図4を実線部分と波線部分に分けた図であり、図8の実線部分は、水冷式ヒートポンプ3から生成される冷水と温水を同時に利用する運転フローである。
【図9】図4を実線部分と波線部分に分けた図であり、図9の実線部分は、冷温水23に接続される冷温水負荷が無く、かつ、冷水配管31に接続される冷水負荷が存在するときの運転フローである。
【図10】図4を実線部分と波線部分に分けた図であり、図10の実線部分は、冷水配管31に接続される冷水負荷が無く、かつ、冷水配管23に接続される冷水負荷が存在するときに冷水のみの運転をするときの運転フローである。
【図11】図4を実線部分と波線部分に分けた図であり、図11の実線部分は、本発明である請求項1を実施している部分と従来技術が混在している運転モードの運転フローを示しており、コージェネレーション13と温水焚吸収冷凍機1と水冷式ヒートポンプ冷凍機3により、コージェネレーションの排温水と水冷式ヒートポンプ3から生成される温水の両方を吸収式冷凍機1の加熱源として利用し、吸収式冷凍機より生成される冷水と電動式ヒートポンプ冷凍機3より生成される冷水を合わせて利用側(冷水負荷)に供給できるようにしたものである。
【符号の説明】
【0024】
1 温水焚吸収式冷凍機
2 冷却等
3 冷水・温水同時取り出し電動式水冷式ヒートポンプ冷凍機
4 温水ポンプ
5 冷却水ポンプ
6 冷水ポンプ
7 冷水ポンプ
8 温水配管
9 冷却水配管
10 冷水配管
11 冷水配管
12 冷水配管
13 温水排熱回収コージェネレーション
14 温水ポンプ
15 温水配管
16 冷水配管
17 温水−温水熱交換器
18 冷却塔
19 温水−冷却水熱交換器
20 冷却水ポンプ
21 温水配管
22 温水配管
23 冷温水配管
24 温水配管
25 温水配管
30 冷水配管
31 冷水配管




【特許請求の範囲】
【請求項1】
80℃から90℃までの温水を加熱源とする温水焚吸収冷凍機と80℃以上の温水を生成できる冷水と温水を同時に取り出しが可能な水冷式ヒートポンプ冷凍機より構成され、水冷式ヒートポンプから生成される温水を吸収式冷凍機の加熱源の温水として利用しかつ吸収式冷凍機より生成される冷水と電動式ヒートポンプ冷凍機より生成される冷水を合わせて利用側に供給することを特徴とする装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−257685(P2009−257685A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108564(P2008−108564)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(399040106)ゼネラルヒートポンプ工業株式会社 (13)
【出願人】(508120411)株式会社エネ・ビジョン (3)
【出願人】(000241485)豊田通商株式会社 (73)