説明

コージェネレーション装置

【課題】 エンジン室の冷却効率を向上させ、自己消費電力を低減し発電効率を向上させる
【解決手段】 エンジン2とこれにより駆動する発電機3を収納するエンジン室10と、エンジン室10の上方に配置されエンジン2の冷却水回路5に設けられたラジエータ21およびラジエータ21を空冷するラジエータファン22が設けられたラジエータ室20と、エンジン室10の上方に配置されラジエータ室20に隣接し、エンジン室10とラジエータ室20との間の通路となるダクト室30と、エンジン室10の空気を吸引しラジエータ室20に送風する換気ファン31が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気と熱を併給するコージェネレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンにより発電機を駆動し、エンジンで発生する熱を利用するコジェネレーション装置が知られている。このコジェネレーション装置は、一般的にエンジン、発電機、エンジンの冷却水回路などを一つのパッケージ内に収納されている。このパッケージ内は、エンジンと発電機を収納するエンジン室と冷却水回路に設けられたラジエータを収納するラジエータ室に分割されている。エンジン室はエンジンや発電機で発生する熱の影響で温度が高くなり、エンジンや発電機に付属する配線、制御部品等を保護するために冷却する必要がある。
【0003】
特許文献1には、パッケージ内の最下層にダクト室を配置し、その上方に機械室(エンジン室)、機械室の上方にラジエータが配設された熱交換器室(ラジエータ室)を配置し、冷却ファンによって外気がダクト室、機械室、熱交換器室の順で通風するように構成した熱併給発電装置が開示されている。
【特許文献1】特開2000−205606号公報([請求項1]、[請求項2]、図1など) しかしながら、特許文献1の装置では、機械室の室内温度を適正な温度に保つためには、消費電力が大きな大型の冷却ファンを使用し連続運転する必要があった。このためコージェネレーション装置で発電した電力がコージェネレーション装置自身が消費する電力(自己消費電力)として多く消費され、発電効率が低くなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決したもので、エンジン室の冷却効率を向上でき、自己消費電力を低減し発電効率を向上できるコージェネレーション装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決するために、請求項1の発明では、エンジンにより発電機を駆動するとともに前記エンジンで発生する熱を利用するコージェネレーション装置において、前記エンジンと前記発電機を収納するエンジン室と、該エンジン室の上方に配置され前記エンジンの冷却水回路に設けられたラジエータおよび該ラジエータを空冷するラジエータファンが設けられたラジエータ室と、前記エンジン室の上方に配置され前記ラジエータ室に隣接し、前記エンジン室と前記ラジエータ室との間の通路となるダクト室と、前記エンジン室の空気を吸引し前記ダクト室を介して前記ラジエータ室に送風する換気ファンが設けられていることを特徴とするコージェネレーション装置としている。
【0006】
請求項2の発明では、前記ダクト室は前記エンジンの上方に設けられていることを特徴とする請求項1記載のコージェネレーション装置としている。
【0007】
請求項3の発明では、前記換気ファンは前記エンジン室と前記ダクト室の接続部分に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコージェネレーション装置としている。
【0008】
請求項4の発明では、前記エンジン室内に室内温度を検知する温度センサが設けられ、前記室内温度が所定温度以下の時には前記換気ファンを停止するように制御されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコージェネレーション装置としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、エンジン室の上方にラジエータ室とそれに隣接されたダクト室が配置され、エンジン室の空気を吸引しダクト室を介してラジエータ室に送風する換気ファンが設けられているので、エンジン室を効率的に冷却でき、これによって定格消費電力が小さい換気ファンを使用でき、かつ換気ファンを停止することが可能であるため、自己消費電力を低減し発電効率を向上できる。
【0010】
請求項2の発明によれば、ダクト室がエンジンの上方に設けられているので、エンジン室内の空気の流れをエンジン室内冷却に適した流れにすることができ、冷却効率をさらに向上できる。特に発熱の大きなエンジンを効率的に冷却できる。
【0011】
請求項3の発明によれば、換気ファンがエンジン室とダクト室の接続部分に設けられているので、換気ファンがエンジン室内の空気を効率的に吸引でき、冷却効率をさらに向上できる。
【0012】
請求項4の発明によれば、室内温度が所定温度以下の時には換気ファンを停止するので、換気ファンに使用する消費電力をさらに低減でき、自己消費電力をさらに低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明者は特許文献1などの方法ではエンジンを冷却する効率が悪い原因を追究し、エンジン室内の通風の流れを研究した結果、本発明に至った。
【0014】
以下、本発明の実施例について、図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態のコージェネレーション装置を説明する説明図である。このコージェネレーション装置は、エンジン2、発電機3、冷却水回路5、熱交換器6、ラジエータ21、インバータ41、制御装置42、ラジエータファン22および換気ファン31などから構成されている。これらの機器はパッケージ1内に収納されている。パッケージ1の床は脚1aによって持ち上げられ、床部分から外気を取り入れることができるようになっている。パッケージ1内は、エンジン室10、ラジエータ室20、ダクト室30および制御室40に区分けされている。図1で白抜き矢印は空気の流れを、→は冷却水の流れを、先端が黒塗り三角形の線矢印は貯湯水の流れを示している。
【0015】
エンジン室10内には、エンジン2、発電機3、熱交換器6などが収納されている。発電機3はエンジン2により駆動されて発電し、発電した電気はインバータ41を介して外部の電力消費機器に利用される。エンジン2は天然ガスを燃料とする内燃機関エンジン(通称ガスエンジン)で定格7.4kWである。
【0016】
冷却水回路5はエンジン冷却水をポンプ4により循環する回路である。冷却水回路5は、エンジン2を冷却しながらエンジン2で発生した熱を回収するとともに、エンジン2から排出される排ガスの熱を回収するように構成されている。エンジン2の排ガス管路に冷却水回路5と熱交換する排ガス熱交換器2bが設けられ、冷却水回路5が排ガスの熱を回収するようになっている。冷却水回路5上には熱交換器6が設けられている。この熱交換器6は貯湯タンク(図示せず)の貯湯水を循環する貯湯水回路7と熱交換するもので、これにより本実施形態ではエンジン2で発生した熱をお湯として利用するようになっている。本実施形態では熱交換器6もエンジン室10内に収納されている。エンジン室10内にはその室内温度を検知するために温度センサ8が設けられている。温度センサ8は後述する仕切壁1bの下、すなわちエンジン室10の天井に付設されている。図示されていないが、エンジン2、発電機3などを制御するための配線や燃料供給機器、燃焼用空気供給機器などの付属機器などもエンジン室10内に収納されている。また発電機3で発電した電気を送電するための配線もエンジン室10内に存在する。これらの配線や付属機器は、高温になると故障するので、エンジン室10の室内温度を所定温度以下に保つ必要がある。
【0017】
冷却水回路5にはラジエータ21が設けられ、冷却水が所定温度以上にならないように放熱する。ラジエータ21はラジエータ室20内に収納されている。ラジエータ室20内にはラジエータ21を冷却するためのラジエータファン22が設けられている。ラジエータファン22は定格250Wのものを使用した。ラジエータファン22はラジエータ21を通るように外気をラジエータ室20内に取り入れるとともに、エンジン室10内の空気をラジエータ室20内に取り入れ、これらの空気をラジエータ室20からパッケージ1外に排出する。ラジエータ室20はエンジン室10の上に配置されている。ラジエータ室20とエンジン室10は仕切壁1bによって互いの室を直接空気が流通しないように仕切られている。仕切壁1bは、エンジン室10の天井であるとともにラジエータ室20の床である。仕切壁1bが存在するため、ラジエータファン22などからラジエータ室20内に侵入した雨水がエンジン室10に入ることはない。
【0018】
ダクト室30はエンジン室10の上に設けられている。またダクト室30はラジエータ室20に隣接している。ダクト室30とラジエータ室20の間は仕切壁1cによって仕切られている。仕切壁1cには開口部33が設けられている。開口部33にはラジエータ室20への空気の流れ方向が下方となるように庇状部材32が設けられている。これによりラジエータ室20内に侵入した雨水がダクト室30を介してエンジン室10に入ることを防止している。ダクト室30とエンジン室10の接続部分にも開口部が設けられ、ここに換気ファン31が設けられている。換気ファン31は定格40Wのものを使用した。ダクト室30には上記した開口部以外の開口部は存在しない。本実施形態ではダクト室30はエンジン2の上方に設けられている。
【0019】
制御室40はエンジン室10の上に設けられている。制御室40は、ダクト室33に隣接するとともにラジエータ室20の反対側に設けられ、エンジン室10、ラジエータ室20、ダクト室30から隔離されている。制御室40にはインバータ41と制御装置42が収納されている。制御装置42はコジェネレーション装置全体を制御している。
【0020】
次にコージェネレーション装置の動作について説明する。エンジン2が起動すると、エンジン2によって発電機3が駆動され、発電機3で発電された電気がインバータ41を介して電力消費機器に送られる。エンジン2が起動されるとともにポンプ4も起動され、エンジン冷却水が冷却水回路5を、排ガス熱交換器2b、エンジン2、熱交換器6、ラジエータ21の順に循環される。冷却水温度が予め決められた所定温度以上になるとラジエータファン22が起動され、外気をラジエータ室20内に取り入れ、ラジエータ21を冷却する。これにより冷却水温度を所定温度以下に冷却する。冷却水温度が予め決められた所定温度より低くなったらラジエータファン22が停止される。ラジエータ21で冷却水温度を冷却しすぎると熱の回収効率が低下するが、ラジエータファン22の停止によって、それを防止する。ラジエータファン22を起動する所定温度と、停止する所定温度とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
温度センサ8によって検知されたエンジン室10の室内温度が所定温度以上になったとき、換気ファン31が起動される。換気ファン31によってエンジン室10内の空気が吸引され、外気がエンジン室10の底部より取り入れられる。これによりエンジン室10内が冷却される。換気ファン31によって吸引された空気はダクト室30を通り、開口部33、庇状部材32と仕切壁1cとの間の空間を通りラジエータ室20に送り込まれる。換気ファン31が起動しているときには、基本的に冷却水温度も高くなっており、ラジエータファン22が動作中である。換気ファン31によってラジエータ室20に送り込まれた空気は、ラジエータ21側からラジエータ室20に取り込まれた空気と一緒にラジエータファン22によって大気中に放出される。
【0022】
温度センサ8によって検知されたエンジン室10の室内温度が所定温度より低くなった場合、換気ファン31が停止される。このとき、ラジエータファン22が動作中であればラジエータファン22によってエンジン室10の空気が換気ファン31の隙間、ダクト室30、ラジエータ室20を介して吸引され、外気がエンジン室10の底部より取り入れられ、エンジン室10内が冷却される。なお、換気ファン31を起動する所定温度と、停止する所定温度とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。実施形態では同じ78℃に設定されている。
【0023】
エンジン室10内のエンジン2、発電機3などの構造や配置をまったく同じにして、特許文献1にあるように換気ファンをエンジン室10の外気取り入れ口に配置して換気ファンによって外気をエンジン室10に送り込む試験を行った。エンジン室10内の風速を測定したところ、この場合の風速は実施形態の場合の約1/2であった。このため、特許文献1の方法では、定格消費電力の大きな換気ファンを使用して常時動作させておくことが必要である。反対に、本発明の場合、定格消費電力の小さな換気ファン31を使用しても、換気ファン31を停止できるほど冷却効率が優れていた。実際の試験でかなりの停止時間を確保できることがわかっている。これにより本発明では自己消費電力が低減できる。
【0024】
実施形態ではダクト室30がエンジン2の上方に設けられているが、エンジン2の上方よりずれた位置に設けてもよい。しかし、ダクト室をエンジンの上方に設ければ、エンジン室内の空気の流れをスムーズにできエンジン室内冷却に適した流れにすることができる。特に発熱の大きなエンジンの周囲に空気が流れやすいので、効率的な冷却ができる。これにより冷却効率を向上でき、その結果、換気ファンに使用する消費電力が節約でき、自己消費電力を低減できる。
【0025】
実施形態では換気ファン31はエンジン室10とダクト室30の接続部分に設けられているが、エンジン室10の空気を吸引しダクト室30を介してラジエータ室に送風できれば、どこに設けてもよい。例えば、図2のようにダクト室30とラジエータ室20の接続部分すなわち開口部33の部分に換気ファン34を設けてもよい。またダクト室30内の適当な位置に設けてもよいし、ダクト室30からエンジン室10に突き出した位置に設けてもよい。しかし、換気ファンをエンジン室とダクト室の接続部分に設ければ、換気ファンによってエンジン室内の空気が効率的に吸引され、冷却効率をさらに向上できる。
【0026】
換気ファン31は常時動作させても定格消費電力が小さいファンを使用することができるので、自己消費電力を低減できる、しかし、本発明の構成では冷却効率がよいので、室内温度が所定温度以下の時に換気ファン31を停止することによって、換気ファンに使用する消費電力をさらに低減でき、自己消費電力をさらに低減できる。また冷却しすぎることがないので、エンジン2の熱を有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態のコージェネレーション装置を説明する説明図
【図2】本発明の別の実施形態のコージェネレーション装置を説明する説明図
【符号の説明】
【0028】
1…パッケージ
2…エンジン
3…発電機
5…冷却水回路
8…温度センサ
10…エンジン室
20…ラジエータ室
21…ラジエータ
22…ラジエータファン
30…ダクト室
31…換気ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより発電機を駆動するとともに前記エンジンで発生する熱を利用するコージェネレーション装置において、
前記エンジンと前記発電機を収納するエンジン室と、
該エンジン室の上方に配置され前記エンジンの冷却水回路に設けられたラジエータおよび該ラジエータを空冷するラジエータファンが設けられたラジエータ室と、
前記エンジン室の上方に配置され前記ラジエータ室に隣接し、前記エンジン室と前記ラジエータ室との間の通路となるダクト室と、
前記エンジン室の空気を吸引し前記ダクト室を介して前記ラジエータ室に送風する換気ファンが設けられていることを特徴とするコージェネレーション装置。
【請求項2】
前記ダクト室は前記エンジンの上方に設けられていることを特徴とする請求項1記載のコージェネレーション装置。
【請求項3】
前記換気ファンは前記エンジン室と前記ダクト室の接続部分に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコージェネレーション装置。
【請求項4】
前記エンジン室内に室内温度を検知する温度センサが設けられ、前記室内温度が所定温度以下の時には前記換気ファンを停止するように制御されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコージェネレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−9678(P2006−9678A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187344(P2004−187344)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)