説明

コーティング組成物

本発明は、アルカリ酸化されたゲル化デンプンと蛋白質の水性混合物を含んで成り、粘度が1〜100センチポイズであり、pHが7.5〜9である水性コーティング組成物、特には、上記のアルカリ酸化されたゲル化デンプンと蛋白質の水性混合物中の固形分含量が3〜50%(w/w)である上記組成物に関する。また、上記組成物の製造方法、および紙またはファイバーボードの製造における上記組成物の使用方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物、特に紙用コーティング組成物、紙用コーティング組成物の製造方法、並びに、処理を施した紙及びそのほかの製品に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工程において紙力剤を加えることによって、紙の強度を上げることができる。例えば紙力剤を、製紙機のウエットエンドといわれる所で完成紙料(furnish)に添加し、あるいは製紙機のドライエンドに位置するサイズプレスユニットまたはコーターの所でコーティング剤として添加することができる。両適用において種々のタイプのデンプンが用いられる。すなわちウェットエンドでの添加では、カチオン性もしくは両性デンプンが用いられ、サイズプレスでは酸化デンプンもしくは酸修飾デンプンが用いられる。紙を強くするためにデンプンを加える別の方法は、マルチワイヤー式製紙機のプレイ(plys)間でデンプンスラリーをスプレーするものである。また、不透明度、白色度および強度を高めるために、製紙機のコーティングエンドの所で、特に色素と組み合わせて、カゼインおよび/またはラテックスも用いられている。
【0003】
製紙業で要求されるようにデンプンを加水分解し、その粘度を低下させるためには、デンプンは酸性条件下で酸化される。
【0004】
紙用コーティング剤に用いられるデンプンは、ゲル化したもの、加水分解したもの、酸化したもの、又はそのほかの修飾を受けたもののいずれにおいても、散発的な予測不可能な挙動を示し、そのため一般的には一貫しない、バッチ毎の変動を伴うコーティング特性を生じる。例えば、水害を被った小麦から調製したデンプンは、酸化した場合、低粘度のコーティング剤を形成することがある。
【0005】
デンプンは、種々の農産物、例えばトウモロコシ、ポテト、小麦及びタピオカなどから得られ、大規模に化学精製された生産物である。例えば、トウモロコシデンプンは、蛋白質構成成分を柔らかくするために重亜硫酸ナトリウム中にトウモロコシを浸すことにより、トウモロコシから調製できる。続いて、浸漬したトウモロコシをローラーミルに通して蛋白質を分離し、湿らせて製粉し又はすりつぶしてデンプンスラリーを作り、濾過して繊維分を除き、そしてフラッシュ乾燥する。
【0006】
デンプンの製造は、多量にエネルギーを使用し、老廃物を生み出し、従って高コストな製造となる。
【0007】
ゲル化、加水分解、および修飾されたデンプンの問題点を克服するために、Bassie et al.(米国特許6,517,625)は、クレー、炭酸カルシウム、タルク、非ゲル化デンプンまたはそれらの混合物などの増量剤を20〜45重量%、および小麦グルテンを16〜18%含有する、紙ストックをコーティングするための水性分散液を開示している。Bassie et alでは、グルテンを、酸性還元剤、例えばアルカリ金属の亜硫酸塩、アルカリ金属の重亜硫酸塩、アルカリ金属のメタ重亜硫酸塩、二酸化硫黄、メルカプタンおよびシステインを用いて還元し、そのジスルフィド結合の一部を開裂する。グルテン水溶液に水酸化ナトリウムを加えた後、還元剤を加える。次に、その分散液に、非ゲル化デンプンである顆粒デンプンを加える。最終組成物のpHは9〜12、例えば9.5〜11である。Bassie et alでは、重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を使用するので、重亜硫酸ナトリウムやその他の還元剤に関連するアレルギー問題が生じる。Bassie et alでは、精製成分の供給、それに続く還元工程にかかったコストは、製紙方法の改善に結びつかないばかりか、製造された紙の強度や耐久性の改善も保証されない。さらにまた、Bassie et al.に記載のように最終組成物のpHが9を超えると、紙の特性、特に紙の強度に悪い影響が及ぶ。
【0008】
また、製紙の最初の段階で小麦粉を添加剤として用いること、特に未調理(uncooked)の形態でウエットパルプに添加することが提案されている。このような方法では、小麦粉の保留率はしばしば60%未満となり、これは非経済的であった。
【0009】
さらに、製紙のサイジング工程において、調理済みフラワー(cooked flour)を用いることも提案されている。しかし、不溶性グルテンにより製紙機が汚れる結果となる。このような方法における別の問題点は、含有グルテンにより、製造された紙の仕上がりが粘着性を示すことである。
【0010】
米国特許6,022,450 (Van Kessel et al.)は、線維マトリックスおよびフラワーから紙またはポール紙を製造する方法であって、フラワーに脱アミド化反応および/または部分加水分解処理を施すことを含んで成る方法を開示している。フラワーを、例えば酢酸またはクエン酸の添加により酸性条件下で、過硫酸アンモニウムと混同する。フラワーの分解は、Van Kessel et alの記載に従って、アミラーゼ酵素、またはアミラーゼ酵素と過硫酸アンモニウムとの組み合わせにより処理して行ってもよい。
【0011】
従来のデンプンコーティングとの対比試験では、Van Kessel et alは、彼らの方法によって処理した紙の性能が、従来のデンプンコーティングによって得られる特性と同じか、または幾分低いことを見出した。例えば、Van Kessel et alの方法によって処理した紙の破裂強度および破壊強度は、標準的なデンプンコーティング処理に比べて各々13%および17%ほど低かった。
【0012】
紙の強度および耐久性を上げるために、そして印刷適性、不透明度および白色度を高めるために、多くの種類の紙用サイズ剤が開発されてきた。例えば、米国特許5,122,568および5,139,614は、サイジングおよびインク印刷コントラストを高めるために、スチレンアクリルコポリマーの使用を開示している。米国特許3,562,102は、紙基材のサイジングに用いるアルキルグリシジル混合エステルのアミン反応生産物を開示している。米国特許4,294,704は、乾式および湿式の引き裂き抵抗を高めるために、例えばスチレン−ブタジエンコポリマー、カルボキシルスチレン−ブタジエンコポリマーなどの合成ポリマーの水性ラテックスバインダーを含んだ紙およびボール紙用のコーティング剤を開示している。米国特許6,494,990は、親水性ポリアクリルアミドおよび種々のコポリマーに基づいたコーティング剤を開示している。このような組成物に関して経費上および健康上の問題が生じている。例えば、ポリアクリルアミドは神経毒性が指摘されている。
【0013】
依然として、低コスト、高性能、無毒性である紙用コーティング剤が求められている。
【0014】
本発明は、特には、製紙の最後のステージ、例えばサイズプレスコーティングステージにおいて、さらに紙、板紙およびボール紙その他の製品の製造における他のステージにおいて用いられる。また本コーティング組成物は、接着剤としても使用される。従って、本発明は、接着剤の分野、例えばガムテープの製造に用いられ、またライナーと石膏コアとの結合を高めるために石膏ボードに添加剤として用いられる。
【発明の概要】
【0015】
驚くことに、蛋白質とデンプンの混合物をアルカリ酸化し、そして粘性を下げるために調理(cooking)することにより、特に紙用コーティング剤として適する非常に有益なコーティング組成物が提供されることが判った。このようなコーティング剤は、紙の強度および耐久性を高めることが判った。
【0016】
本発明の一態様によれば、アルカリ酸化された(alkali oxidised)ゲル化(gelatinised)デンプン/蛋白質の水性混合物を含んで成る水性コーティング組成物であって、その粘性が約1〜約100センチポイズ(cps)であり、好ましくは約5〜約80、より好ましくは約5〜約60であり、かつそのpHが約7.5〜約9のアルカリ性であり、好ましくは約7.8〜約8.8である上記組成物が提供される。
【0017】
本発明に用いられる蛋白質は植物蛋白質であり、植物由来の蛋白質を含む。
【0018】
本組成物の固形分含量は、好ましくは約3%(w/w)〜約50%(w/w)であり、より好ましくは約3%(w/w)〜約30%(w/w)であり、特には5%(w/w)〜約30%(w/w)である。本組成物の蛋白質含量は、好ましくは固形分の約4%(w/w)〜約50%(w/w)であり、より好ましくは約6%(w/w)〜約50%(w/w)であり、特には8%(w/w)〜約25%(w/w)である。
【0019】
デンプンと蛋白質の混合物は、好ましくはフラワーであり、またはその他の製粉または粉砕(crushed)された穀物生産物である。本組成物は、好ましくは、例えば紙用サイズ剤または紙用コーティング組成物として紙の処理に用いることができる。本発明の組成物は、例えばリングクラッシュ試験により測定されるように、紙の強度を著しく増加させる。
【0020】
本発明の一態様によれば、本水性コーティング組成物は、水中にデンプンと植物蛋白質の混合物を含んで成り、その固形含量が3%(w/w)〜30%(w/w)であり、蛋白質含量が総固形分の4%(w/w)〜50%(w/w)であり、粘度が約1〜約100センチポイズであり、そしてpHが約7.5〜約9であり、該デンプンがゲル化されており、かつ混合物中のデンプンと蛋白質が共にpH約8〜約13で、約5〜約30分間、約70〜約150℃の温度でアルカリ酸化されている。
【0021】
本発明の別の態様によれば、コーティング組成物、例えば紙用コーティング組成物の製造方法であって、水中で植物蛋白質と植物デンプンの混合物を、好ましくは約3〜50%の固形分含量となるように生成し;その混合物を、アルカリpHで酸化剤により酸化し;そしてその酸化混合物を、約70〜約150℃の温度で、その粘度が1〜100cpsに低下するまで加熱する工程を含んで成る上記製造方法が提供される。上記溶液のpHは、上記方法の完了時で通常約7.5〜約9である。上記方法の完了時にpHがこの範囲外である場合には、適当なpH調整を行う。
【0022】
上記方法において、アルカリ性pHは、好ましくは約8〜約13であり、より好ましくは約9〜約12である。組成物中の固形分含量は、好ましくは約3%(w/w)〜約30%(w/w)であり、より好ましくは約5%(w/w)〜約30%(w/w)である。組成物中の蛋白質含量は、好ましくは固形分の約4%(w/w)〜約50%(w/w)であり、より好ましくは約6%(w/w)〜約50%(w/w)であり、特には8%(w/w)〜約25%(w/w)である。
【0023】
本発明のさらに別の態様によれば、紙の強度および耐久性を高める方法であって、紙の表面に、アルカリ酸化されたゲル化デンプン/蛋白質の混合物を含んで成る水性コーティング組成物を適用することを含んで成る、ただし該組成物の粘度は1〜100cpsであり、そのpHは約7.5〜約9であるという上記方法が提供される。
【0024】
本発明のさらに別の態様では、アルカリ酸化されたゲル化デンプン/蛋白質の混合物を含んで成り、該組成物の粘度が約1〜約100cpsであり、そのpHが約7.5〜約9であるという接着性組成物が提供される。
【0025】
本発明の別の態様では、特に前記のごとくアルカリ酸化されたゲル化デンプン/蛋白質混合物をボード中に含んで成る、プラスターボード(plasterboard)などのファイバーボード(fibreboard)が提供される。
【0026】
本発明の別の態様によれば、アルカリ酸化されたゲル化デンプン/蛋白質の混合物を含んで成り、粘度が約1〜100cpsであり、pHが約7.5〜約9である水性コーティング組成物によってコーティングされた紙が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
このように、本発明は、コーティング組成物の製造方法であって、
(a) 水中で少なくとも1つの植物蛋白質およびデンプンを含んで成る混合物を、アルカリ性pHで酸化する工程;および
(b) 酸化と同時に、または酸化に続いて、上記混合物を加熱して、粘度が1〜100センチポイズであり、pHが7.5〜9である組成物を生成する工程
を含んで成る、上記方法を提供する。
【0028】
本発明はまた、上記方法によって得られる、すなわち上記方法により生産される、紙、板紙またはボール紙をコーティングするための組成物を提供する。
【0029】
上記方法は、紙、板紙またはボール紙をコーティングするための、流動性を有する水性コーティング組成物であって、デンプンおよび蛋白質を含有する混合物の酸化物を含有し、該混合物がゲル化されており、そして組成物のpHが7.5〜9であり、その粘度が1〜100センチポイズであるという上記組成物を提供する。
【0030】
本発明のコーティング組成物は、紙を処理するために、例えばサイズ剤として用いうる。本発明の組成物は、紙に強度および耐久性を付与し、また紙の印刷適性を高めうる。標準的なリングクラッシュ試験(TAPPIテストT822 OM-89)によって測定すると、紙の強度は、本発明の組成物を用いることによって20%以上有利に増加する。
【0031】
本コーティング組成物は、当業者に周知のコーティング技術、例えばローラーコーター、ブレードコーターまたは巻線型ロッドコーターによるコーティングに用いうる。本発明は、最も広範な態様の一つとして、アルカリ酸化したゲル化デンプン/蛋白質の水性混合物を含んで成り、粘度が約1〜約100cpsであり、pHが約7〜約9であるコーティング組成物、特に紙用コーティング組成物に関する。
【0032】
本発明において「ゲル化」とは、偏光およびニコルプリズムに晒した場合にその物質がバイフリンジェンス(bifringence)を示さないこと指す。デンプンは、天然のゲル化温度(約70℃)を超えた温度に加熱した場合にゲル化される(すなわちデンプン粒が破裂する)。顆粒デンプンの顕微鏡分析によると、個々のデンプン顆粒は、偏光に晒した場合にバイフリンジェンスを示す。
【0033】
上記蛋白質は、小麦、ライ麦、サトウモロコシ(sorghum)、ライ小麦、トウモロコシ(maize)、オート麦、大麦、またはその他の植物に由来する植物蛋白質を含んでよい。好ましい植物蛋白質は、酸化した際にジスルフィド結合を形成しうるものであり、例えばグルテン、グルテネンおよびゼインである。該植物蛋白質は、1または複数の植物蛋白質の混合物であってよい。例えば、該植物蛋白質は、トウモロコシからのゼイン蛋白質、または他の穀物からの植物蛋白質、あるいは複数の植物蛋白質の混合物であってよい。該植物蛋白質は、当業界に周知である方法に従って植物材料から抽出した植物蛋白質を含んでよい。例えば、デンプンを除くために多量の水でフラワー生地を穏やかに洗い、そして粘着質な塊として蛋白質を残し、これをリングドライヤーで乾燥して粉末にするという方法を用いて、小麦粉からグルテンを抽出することができる。この方法はマーチン(Martin)法として知られており、米国特許3,119,719に記載されている。あるいは、低含水抽出法、例えば当業者にラシオ(Rasio)法として知られている方法を用いることもできる。
【0034】
デンプン成分は、小麦、サトウモロコシ、ライ小麦、トウモロコシ、オート麦、大麦(ワキシ型および高アミロース型デンプンを含む)、タピオカ、ポテト、サゴ、またはライ麦に由来する植物デンプンを含んでよい。本発明では、任意の植物デンプン、例えば、穀物植物からのワキシ(waxy)型および高アミロース型のデンプン、特に小麦デンプン、トウモロコシデンプン、およびタピオカデンプンを用いてよい。小麦デンプンは大粒子および細粒子デンプンの両方を含み、その両方または一方が当該使用に適する。本発明の実施において、ワキシ型トウモロコシやその他のワキシ型穀物から抽出されたデンプンを用いてもよい。
【0035】
植物蛋白質および植物デンプンを一緒に混ぜて、植物デンプンと植物蛋白質の混合物を形成してよい。一般に、得られた混合物は、約4%(w/w)〜約20%(w/w)または50%までの植物蛋白質と、残りの植物デンプンとを含有する。
【0036】
デンプン/蛋白質混合物は、好ましくはフラワーであり、すなわちシリアルなどの穀物を製粉することによって製造された粉である。穀物中の蛋白質含量は約2%(w/w)〜約20%(w/w)、好ましくは約5%(w/w)〜約18%(w/w)であってよい。フラワーは、高または低アミロース含量の穀物、または中程度アミロース含量の穀物から製造してよい。高アミロースデンプンは通常ほぼ50〜70%(w/w)のアミロースを含有し、他方、低アミロースデンプンは通常ほぼ40%またはそれ未満のアミロースを含有する。本発明に用いうるフラワーの例として、小麦粉、サトウモロコシ粉、ライ小麦粉、トウモロコシ粉、オート麦粉、大麦粉、およびライ麦粉が挙げられる。そのほかの製粉または粉砕された穀物製品、例えばミール(例えばコーンミール)、グリッツ(例えばコーングリッツ)、あるいは他の植物蛋白質/デンプン製品もまた本発明に使用してよい。このようなフラワー中の蛋白質量は通常約2〜約20%である。蛋白質総量を、例えば50%まで上げるために、植物蛋白質をフラワーに追加してもよい。この植物蛋白質は、フラワーを製造したものと同じ穀物に由来するものであっても、または別の植物の蛋白質であってもよい。
【0037】
固形分含量が約3%(w/w)〜約50%(w/w)、好ましくは約3%(w/w)〜約30%(w/w)、特には約5%(w/w)〜約30%(w/w)となるように、フラワーまたはその他のデンプン/蛋白質混合物を水と混合してよい。このような混合物は通常スラリーまたはペースト状である。フラワーと水のスラリーは、慣用の酸化剤、例えばデンプンやフラワーの酸化に用いられる酸化剤、例えば過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムまたは過ホウ酸ナトリウムなどの過酸化物を用いて、アルカリ条件下で容易に酸化される。この混合物を、酸化中に、例えばかき混ぜることによって、攪拌してよい。フラワー/水混合物のアルカリ酸化は、酸化工程を促すために、調理(cooking)前に、約25〜50℃、好ましくは約30〜45℃の反応温度で、約5〜30分間、好ましくは約6〜20分間行ってよい。あるいは、下記のとおり、酸化と調理を同時に、すなわち一緒に(すなわち併用して)行う。
【0038】
フラワーと水の混合物の酸化、または任意の植物蛋白質と植物デンプンの水中混合物の酸化を、本発明に従ってアルカリ条件下で、例えばpH約8〜約13、好ましくはpH9〜12で行う。上記pHは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ、またはその他のアルカリによって上記範囲に調整する。酸化は、金属触媒、例えばバナジウム、第1鉄または銅イオンの存在下で行ってもよい。添加量は約50〜100ppmである。理論に拘束されることを望むわけではないが、このような条件下で特に酸化を受けるものは、フラワー中の、例えばデンプン中の炭水化物の基であると考えられる。蛋白質もまた酸化される。酸化は、通常約5〜約150分間、好ましくは約6〜約120分間行われ、下記のごとく調理(加熱)される場合には粘度が約1〜約100cps、好ましくは約5〜約80cpsに成るまで行われる。
【0039】
アルカリ酸化されたフラワーまたはその他のデンプン/蛋白質混合物を加熱して、その水性組成物の粘度を約1〜約100cps、好ましくは約5〜約80cpsに低下させる。例えば、約50〜約150℃、好ましくは約70〜約145℃の温度で、約5〜約150分間、好ましくは約6〜約120分間加熱することにより、該組成物の粘性は所望の範囲まで低下する。アルカリ酸化された混合物は、バッチ式調理器により、例えば約95℃まで、またはジェット式調理器により(例えば約140〜約150℃まで)加熱してよく、これによりデンプン成分の粘度が所望のレベルまで低下する。アルカリおよび酸化剤を、ジェット式調理器に入れる直前に、フラワースラリー中にまたはその他のデンプン/フラワー混合物中に直接注入してもよく、これにより酸化と加熱の工程が同時に行われる。該組成物中の蛋白質は溶液状態のままであり、ゲル化デンプンと共に紙上に塗布された場合、該組成物による強度増加を促すことが判っている。本発明の組成物は、有利には流動性、水性の組成物であり、これにより組成物の使用性が高まる。
【0040】
粘度が約1〜約100cps、好ましくは約5〜約80cpsであるアルカリ酸化されたデンプン/蛋白質の水性混合物のpHは、加熱終了時に通常約7.5〜約9の範囲内にある。該pHは、より好ましくは約7.5〜約8.7であり、例えば約7.8〜8.7である。
【0041】
本組成物は、蛋白質の溶解を促すために用いられる広範な添加剤、例えば、アセテート(フラワー中例えば約1〜2%)、ウレア(フラワー中例えば約3〜5%)、安息香酸ナトリウム(フラワー中例えば約1〜2%)、界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(フラワー中例えば約0.01〜0.02%)、アルカリ、例えば水酸化ナトリウム、カリウムもしくはカルシウム(フラワー中例えば約0.5〜1.5%)、およびガム類、例えばカルボン酸末端基を有するガム類、例えばキサンタンガム、グアーガムなど(フラワー中例えば約0.05〜0.1%)を含んでもよい。
【0042】
本組成物は、1または複数の消泡剤、例えばシリコンまたはオイルベースの消泡剤を、約0.005 %(w/w)〜約0.1 %(w/w)、好ましくは約0.05 %(w/w)〜約0.1 %(w/w)の量で含んでもよい。また、線維を除くために当該サイジング剤を濾過する必要もありうる。
【0043】
本コーティング組成物は、リングドライヤー(ring dryer)またはその他の標準的なドライヤー、例えばデンプン乾燥に用いられるドライヤーにより乾燥してもよい。この乾燥物質は水により容易に再構成される。
【0044】
本発明の別の態様によれば、コーティング組成物、例えば紙用コーティング組成物の製造方法であって、水中で植物蛋白質と植物デンプンの混合物を、好ましくは約3%(w/w)〜約50%(w/w)の固形分含量となるように生成し;その混合物を、アルカリpHで酸化剤により酸化し;そしてその酸化混合物を、約70〜約150℃の温度で、その粘度が約1〜約100cpsに低下するまで加熱する工程を含んで成る上記製造方法が提供される。上記溶液のpHは、上記方法の完了時で通常約7.5〜約9である。上記方法の完了時にpHがこの範囲外である場合には、適当なpH調整を行う。酸化を行う場合のアルカリpHは、好ましくは約8〜約13であり、特には約9〜約12である。該組成物中の固形分含量は、好ましくは約3%(w/w)〜約30%(w/w)であり、特には約5%(w/w)〜約30%(w/w)である。該組成物中の蛋白質含量は、好ましくは固形分の約4%(w/w)〜約50%(w/w)である。
【0045】
本発明の方法は簡単に実行することができ、製紙工場やその他の工業施設において容易に実行される。
【0046】
理論に拘束されることを望むわけではないが、アルカリ酸化によりジスルフィド結合が形成されると考えられる。このジスルフィド結合は、当該処理のより早い段階で破壊され、また米国特許6,517,625の指摘とは反対に、それを含有する本組成物の特性にとって有利であると、本発明者は信じている。
【0047】
本発明のコーティング組成物を、サイズ剤の適用技術において周知である方法に従って、例えばサイズ処理ローラーまたはブレードコーターにおいて、紙または板紙、例えば段ボール原紙もしくは段ボール用中芯に適用することができる。例えば、本組成物は、製紙機において使用することができ、例えばサイズプレスユニットまたはコーターにおいてコーティング剤として使用することができる。本発明の組成物の有利な特性により、機械が汚れる、または詰まるという問題点が最小限に抑えられ、従ってこれらの問題点のために失われる時間とコストが減少する。
【0048】
本発明の目的のために、「紙」とは、全ての等級の紙、並びにボール紙などの板紙を含んで意味する。そのほかの紙の例には、再生紙および非再生紙、クラフト紙、高品質印刷紙、プラスターボードのライナー、ボール紙もしくはその他のファイバーボード、印画紙、および雑誌用紙がある。
【0049】
本発明は、別の態様として、本発明のコーティング組成物によりコーティングされた紙に関する。この紙は、アルカリ酸化されたゲル化デンプン/蛋白質の水性混合物を含んで成り、粘度が約1〜約100センチポイズであり、pHが約7.5〜約9である水性コーティング組成物によってコーティングされる。
【0050】
紙に塗布される蛋白質/デンプン溶液の量は、所望の強度条件に依存する。特にコーティング剤中に多量の色素が含まれる場合、線維あたりの乾燥コーティング量(dry coating on fibre)として約2%(w/w)〜約30%(w/w)の量を適用しうる。
【0051】
粘度が約1〜約100cpsであるアルカリ酸化されたゲル化デンプン/蛋白質の水性混合物、例えばデンプン/蛋白質混合物がフラワーである上記水性混合物は、接着性組成物として、例えばガムテープなどの接着テープの製造において、また接着性を必要とするその他の産業上の用途において使用することができる。
【0052】
本発明の別の態様によれば、アルカリ酸化されたゲル化デンプン/蛋白質の混合物をボード中に含んで成る、プラスターボード(plasterboard)、コンポジットボード(composite board)、またはパーティクルボード(particle board)などのファイバーボードが提供される。
【0053】
プラスターボードなどのファイバーボードを製造する方法は、水中で植物蛋白質と植物デンプンの混合物を、好ましくは約5〜50%(w/w)の固形分含量となるように生成し;その混合物を、アルカリ性pHで、約25〜約50℃で、24〜48時間まで、好ましくは約5〜約30分間、酸化剤により酸化し;そのアルカリ酸化された混合物を、ファイバーボードの成分、例えば石膏、空気およびワックス乳液と混合し;その後、生成した混合物を、シート状に形成してもよく、オーブン内で、約50〜約150℃の温度で、約20〜約150分間加熱する工程を含んで成る。上記の植物デンプン/植物蛋白質の混合物中のデンプンは、上記条件下でゲル化される。上記のアルカリpHは、好ましくは約8〜約13であり、特には約9〜約12である。
【0054】
上記混合物が熱い場合、例えば約80℃である場合、粘度は、固形分5〜12%(w/w)の範囲で慣用的に測定される。
【0055】
本発明はまた、紙の製造または処理のため、特に未処理紙に比べて高い強度および耐久性を備えた紙を調製するための上記組成物の使用にも及ぶ。
本発明を、非限定的な下記実施例により説明する。
【実施例1】
【0056】
3種類のサイズコーティング剤の試験溶液を、(a)小麦デンプン、(b) ASWフラワー(オーストラリア標準白小麦粉、蛋白質10.1%)、および(c) HPF(蛋白質13.1%である高蛋白質フラワー)を用いて調製した。
【0057】
(a)小麦デンプンに水を加え、乾燥固形分が10%となるスラリー溶液を調製し、そこに1.0 %(w/w)の過硫酸アンモニウムを加え、続いて95℃で10分間調理した。調理前のpHは6.0であった。調理後のpHは2.1であり、これを1NのNaOH溶液でpH5.2に調整した。固形分を屈折率計により検査した(10.5%)。80℃(湯浴)でブルックフィールド粘度(1番スピンドル、20 rpm)を測定したところ、27.5 cpsであった。
【0058】
(b) ASWフラワー(蛋白質10.1%)に40℃で水を加え、乾燥固形分が10〜11%となるスラリー混合物を調製し、そこに1NのNaOH溶液を加えてpHを11.5に調整した。さらに30%過酸化水素水を2.6%ほど加えた。この混合物を40℃で30分間放置し、その後95℃で10分間調理した。次にこの溶液を80℃の湯浴につけ、その粘度を、ブルックフィールド粘度計(1番スピンドル、20 rpm)で測定したところ、17.5 cpsであった。測定の結果、pHは8.7であり、固形分は11.0%であった。
【0059】
(c) HPF(蛋白質13.1%のフラワー)を上記(b)と同じように調製し、80℃の湯浴につけた。pHは9.2であり、固形分は11.8%であり、粘度は17.5cpsであった。
【0060】
試料の調製
単位重量122gsm(グラム/平方メートル)である段ボール用中芯の未処理(すなわち未サイズ処理)サンプルをテープ状に切断し、2つの異なるサイズの巻線ロッド(wire−wound rod)を用いて2種類の塗布量にてコーティングを行った。80℃のサイズ溶液でコーティングした後、その紙サンプルをオーブン内で110℃で20分間乾燥した。次にそのサンプルを、条件調整のため、空気調整された室内でさらに24時間放置した後、強度試験のために紙試験室に移した。また、正確なコーティング量比を計算するために、サンプルの重量を注意深く測定した。リングクラッシャ試験、破裂試験およびコンコラ試験を行った。
【0061】
上記試験は、紙の強度を測定するものであり、十分に確立された標準的な試験であり、TAPPI(パルプ製紙業界技術協会)の試験基準に従って行われる。リングクラッシャ試験、破裂試験およびコンコラ試験は、それぞれTAPPI試験 T822 OM-89, T403 OM-02及びT808に従って行われる。リングクラッシャ試験は、圧縮試験であり、紙箱の圧縮特性、並びに紙の強度と耐久性を予測するものである。破裂試験は、紙及び板紙の引っ張り強度の試験である。コンコラ試験は、平面圧縮耐性、特に段ボール用中芯の平面圧縮耐性を評価するための試験である。結果を表1に示す。
【0062】
結果
実際に比較を行うために、それぞれコーティング量1%あたりの強度の増加%として結果を再計算した。図1、2及び3は、それぞれのサイズコーティングにおける強度の増加を示す。
【0063】
この結果、酸化したフラワーは、酸化した小麦デンプンよりもかなり効果的であり、さらにこの増加は、フラワー中の蛋白質の増加に伴って高くなることが明らかに示された。
【0064】
【表1】

【0065】
結果の要約
RCT(リングクラッシュ)(塗布量1%あたりのRCTの増加%)
デンプン ASWフラワー HPF
5.4 7.0 7.56 Kgf
対照デンプンと比べて、ASWフラワー及びHPFの組成物では、それぞれ29.6%及び40%ほどRCTが増加した。
【0066】
破裂(塗布量1%あたりの破裂値の増加%)
デンプン ASWフラワー HPF
6.34 7.76 7.96 Kg/cm
対照デンプンと比べて、ASWフラワー及びHPFの組成物では、それぞれ22.4%及び26%ほど破裂値が増加した。
【0067】
コンコラ(CMT)(塗布量1%あたりのCMTの増加%)
デンプン ASWフラワー HPF
3.2 4.4 4.1
対照デンプンと比べて、ASWフラワー及びHPFの組成物では、それぞれ37.5%及び28.1%ほどCMTが増加した。
リングクラッシュ試験が特にすぐれた紙強度の指標であることがわかった。
【実施例2】
【0068】
種々の穀物フラワーから調製したコーティング剤について試験し、紙の強度を決定した。
方法
下記のスラリーを調製及び調理し、120gmsの段ボール用中芯リサイクル紙に塗布した。その紙を乾燥し、評価のために切り揃えた。
ペースト1:小麦デンプン 10% dsb(乾燥固形分ベース)
デンプン57 g、水438 g、NaOH 4.5 g、H2O2 2 g、及びオイルベース消泡剤1ml。
ペースト2:ASWフラワー 10% dsb
ASWフラワー57 g、水436 g、NaOH 7.2 g、H2O2 2 g、及びオイルベース消泡剤1ml。
ペースト3:コーンミール 10% dsb
コーンミール57 g、水430 g、NaOH 13 g、H2O2 2 g、及びオイルベース消泡剤1ml。
【0069】
NaOHを加えて、ペースト3以外のスラリーのpHを11.5に、ペースト3のpHを11.7に調整した。
すべてのスラリーを、ビスコアミログラフを用いて調理した(80℃で10分間、固形分7.0%(w/w))。
調理後、粘度、固形分及びpHを測定して、予め重量を測った切断したシートに塗布した。
【0070】
結果の要約
【表2】

コーティングした紙に対してリングクラッシュ試験を行った。試験結果を表2に示す。ペースト2及び3の試験結果は平均した。
【0071】
【表3】

これらの結果から、小麦及びコーンミールから調製した組成物は、小麦デンプンに比べて特に効果的であることが判る。
【実施例3】
【0072】
下記ペーストを、ビスコアミログラフを用いて調理し、120gmsの段ボール用中芯リサイクル紙にコーティングした。
1.Promax(高蛋白質フラワー)−10% dsb、H2O2 2 g添加、pH11。
2.ASWフラワー−10% dsb、ルピナス蛋白質11%添加、H2O2 2 g添加、pH11。
3.ASWフラワー−10% dsb、H2O2 2 g添加、pH11。
4.タピオカデンプン−10% dsb、過酸化アンモニウム1%添加、pH 6。このpHは調理時にpH2まで下がり、NaOHでpH5に調整した。
【0073】
紙をコーティングする前に、最終粘度(調理後)、pH及び固形分を測定した。各ペーストごとに3枚の紙をコーティングし、そして乾燥し、各ペーストごとのコーティング量比を決定した。コーティングした紙についてリングクラッシュ試験を行った。
【0074】
結果の要約
【表4】

【0075】
この実験では、未処理紙に比べてリングクラッシュ値の増加を測定した。これらの結果から、各組成物により紙の強度が増加したことが判る。コントロールとして、pH約2〜約6の酸性条件でAPSを加えて調理したタピオカデンプンから得られた結果と比べると、本発明の組成物を用いて得られた利点が驚くべきものであり、かつ最高であることが強調される。例えば、ペースト1は、対照デンプンのペースト4と比べて80%超ほど紙の強度を高めた。
【実施例4】
【0076】
リサイクル用製紙機により100gsm(グラム/平方メートル)の段ボール用中芯を操作して、工場条件下で試験を行った。
調製
下記のコーティング組成物を3バッチ分、以下のとおり調製した。
379 l 水(リサイクルした、pH=6.6)
0.7 kg 硫酸第一鉄
1.5 kg 乾燥水酸化ナトリウム
144 kg 9.9%蛋白質の小麦フラワー
0.01kg オイルベースの消泡剤
【0077】
塊を無くすために上記スラリーを十分に撹拌し、35%過酸化水素の希釈液(5%)を注入し、すぐにジェット式調理器に入れ、その温度を142℃に上げ、その後、希釈水を加えて、乾燥固形分7.2%、粘度30 cps(80℃、7.0%(w/w)固形分)及びpH 8.4であるサイズ溶液を得た。この溶液を、ポンプでサイズプレスの再循環システムに入れ、そこでさらに水を追加して固形分4.3%に希釈した。この製紙機を750MPM(メートル/分)で運転した。生成した紙をリングクラッシュ試験及びショートスパン圧縮試験により検査した。
【0078】
固形分5.8%の標準的な小麦デンプンサイズ剤を用いて、次のリール紙を操作し、続いて比較強度試験を行った。上記の2つのサイズ剤の固形分量の違いを補正するために計算を行ったところ、修飾フラワーのサイズ剤は、標準的デンプン組成物と比べて、リングクラッシュ増加では+20.2%、及びショートスパン圧縮では+51.1%を示した。
【0079】
本発明の組成物を用いて製造したリール紙を、より小さなリールに切断し、段ボール製造機において200MPMで芯材として操作したところ問題なかった。
製紙機械における経済的な利点に関し、このことから、フラワーとデンプンのコストの違いを考慮すると、サイジングのコストが29%減ること、また同程度のリングクラッシュ値を与える場合には使用量が20%減ることが判った。
【実施例5】
【0080】
固形分8%のペーストを作り、紙にコーティングし、実施例2に従って紙の強度を検査した(リングクラッシュ試験)。
ペースト1:小麦デンプン45.6 g、過硫酸アンモニウム0.46 g、及び水453.9 g(30℃)。
ペースト2:ASWフラワー(蛋白質10.2%)45.9 g、過硫酸アンモニウム0.46 g、及び水453.6 g(30℃)。
ペースト3:ASWフラワー45.9 g、NaOH(1M) 11 g、H2O2 1.8 g、水441.3 g(30℃)。
調理は95℃で10分間行った。
【0081】
結果の要約
【表5】

【0082】
【表6】

【0083】
コーティング剤2は、コーティング剤1(慣用デンプン)及び3(本発明品)と異なり、混濁しており、蛋白質が沈殿していた。
この実験から、リングクラッシュ試験で検査した通り、酸性過硫酸アンモニウム(APS)処理を行ったフラワー(コーティング剤2)は、同条件下で処理したデンプン(コーティング剤1)よりも28%ほど紙の強度を弱めたことが判る。本発明に従って処理したフラワー、すなわちアルカリ条件下で酸化及び調理したフラワー(コーティング剤3)は、酸性APS処理デンプンコーティング剤に比べて46%、そして酸性APS処理フラワーコーティング剤(コーティング剤2)に比べて74%ほど紙の強度を高めた。これは、非常に有益かつ意外な結果である。
【0084】
酸性条件下でAPSによりデンプンを酸化することは、製紙業界で用いられている一般的なデンプン酸化の条件を反映している。APS及びHの両者による酸性酸化は、デンプンの酸性薄化(acid thinning)及び酸化を同時に達成するために、紙のコーティング業界において行われている。
コーティング剤2は、米国特許6,022,450の実施例1に従って調製した。得られた結果から、紙のコーティング分野で用いられている従来のデンプン組成物に比べて、該コーティング剤の欠点が判った。
【実施例6】
【0085】
プラスターボードの製造
下記のスラリーを調製した。
270 g 水(25℃)
171.8 g 蛋白質9.7%の小麦フラワー
25 g 水酸化カルシウム(pH 11.7)
0.05 g 硫酸第一鉄
22.45 g 30%過酸化水素
これを25℃で24時間反応させ、その後チオ硫酸ナトリウム1gを加えて、未反応の過酸化物を取り除き、1M硫酸を用いてpHを9.0に調整した。
【0086】
アルカリ性流動試験により、74.7mlの結果において、この製品は、プラスターボードの製造においてデンプンの代わりとして適していることが確認された。この修飾したフラワースラリーを石膏に混ぜ、できたボードをオーブン内で130℃に加熱し、フラワー内のデンプンをゲル化した。ライナーと石膏との結合は、酸化デンプンを用いて製造されたものと同程度に良かった。
【0087】
本明細書及び特許請求の範囲では、特に指摘しない限り、用語「含む」とその変形語は、記載した数字や工程を包含することを意味し、他の数字や工程を排除するものではない。
本明細書における従来技術の引用は、その従来技術がオーストラリアにおける一般的な技術常識であることを認めるものでも、示唆するものでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物の製造方法であって、
(a) 水中で少なくとも1つの植物蛋白質およびデンプンを含んで成る混合物を、アルカリ性pHで酸化する工程;および
(b) 酸化と同時に、または酸化に続いて、上記混合物を加熱して、その粘度が1〜100センチポイズで、かつそのpHが7.5〜9である組成物を生成する工程
を含んで成る、上記方法。
【請求項2】
上記混合物が3〜50%の固形分を含有する、請求項1の方法。
【請求項3】
70〜150℃で加熱を行う、請求項1または2の方法。
【請求項4】
コーティング組成物の製造方法であって、
水中で植物蛋白質と植物デンプンとの混合物を、固形分含量が3〜50%となるように生成し;
その混合物を、アルカリ性pHで酸化剤により酸化し;そして
その酸化混合物を、70〜150℃の温度で、その粘度が1〜100センチポイズに低下するまで加熱する工程を含んで成る、上記方法。
【請求項5】
工程(a)のアルカリ性pHが8〜13である、請求項1〜4のいずれかの方法。
【請求項6】
工程(a)のアルカリ性pHが9〜12である、請求項5の方法。
【請求項7】
上記蛋白質が、小麦、ライ麦、ライ小麦、トウモロコシ、オート麦、および大麦の蛋白質からなる群から選択される植物蛋白質である、請求項1〜6のいずれかの方法。
【請求項8】
上記蛋白質が、小麦、ライ麦、ライ小麦、トウモロコシ、オート麦、および大麦の蛋白質からなる群から選択される2種類以上の異なる植物蛋白質の混合物である、請求項1〜6のいずれかの方法。
【請求項9】
上記デンプンが、小麦、ライ麦、サトウモロコシ、ライ小麦、トウモロコシ、オート麦、大麦、タピオカ、ポテト、サゴおよびコメのデンプンからなる群から選択される植物デンプンである、請求項1〜8のいずれかの方法。
【請求項10】
上記デンプンが、ワキシ型デンプンおよび高アミロース型デンプンから選択される、請求項1〜9のいずれかの方法。
【請求項11】
上記デンプンと蛋白質の混合物が4〜50%(w/w)の植物蛋白質を含有する、請求項1〜10のいずれかの方法。
【請求項12】
上記デンプン/蛋白質混合物が、フラワー、ミール、グリッツ、および製粉もしくは粉砕された穀物からなる群から選択される、請求項1〜11のいずれかの方法。
【請求項13】
上記混合物が、小麦、ライ麦、ライ小麦、トウモロコシ、オート麦、および大麦のフラワーからなる群から選択されるフラワーである、請求項12の方法。
【請求項14】
上記フラワーが2〜20%の蛋白質を含有する、請求項13の方法。
【請求項15】
蛋白質量を増すために、追加の植物蛋白質をフラワーに添加する、請求項1〜14のいずれかの方法。
【請求項16】
上記の追加植物蛋白質が、フラワーの製造原料と同じ穀物に由来するか、または別の植物種に由来する植物蛋白質である、請求項15の方法。
【請求項17】
上記デンプンと蛋白質の混合物が3〜50%(w/w)の固形分を含有する、請求項1〜16のいずれかの方法。
【請求項18】
上記酸化を25〜50℃の温度で5〜30分間行い、それに続いて、組成物の粘度が1〜100センチポイズに成るまで5〜150分間、50〜150℃の温度で加熱を行う、請求項1〜17のいずれかの方法。
【請求項19】
上記組成物をドライヤーで乾燥し、流動性の粒子状態にする、請求項1〜18のいずれかの方法。
【請求項20】
酸化と加熱を同時に行う、請求項1〜19のいずれかの方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかの方法により得られる、紙をコーティングするための組成物。
【請求項22】
請求項21の組成物を紙に適用する工程を含んで成る、紙をコーティングする方法。
【請求項23】
紙をコーティングする方法であって、
(a)請求項1〜20のいずれかの方法により、コーティング用組成物を調製する工程;および
(b)その組成物を紙に適用する工程
を含んで成る、上記方法。
【請求項24】
請求項23の方法により得られる生産物。
【請求項25】
アルカリ酸化されたゲル化(gelatinised)デンプン/蛋白質の混合物を含んで成り、粘度が1〜100センチポイズであり、pHが7.5〜9である水性コーティング組成物によりコーティングされた紙。
【請求項26】
アルカリ酸化されたゲル化デンプン/蛋白質の混合物を含んで成り、粘度が1〜100センチポイズであり、pHが7.5〜9である、紙もしくは板紙をコーティングするための水性組成物。
【請求項27】
粘度が5〜80センチポイズである、請求項26の組成物。
【請求項28】
粘度が5〜60センチポイズである、請求項27の組成物。
【請求項29】
pHが7.8〜8.8である、請求項26〜28のいずれかの組成物。
【請求項30】
上記蛋白質が、小麦、ライ麦、ライ小麦、トウモロコシ、オート麦、および大麦の蛋白質からなる群から選択される植物蛋白質である、請求項26〜29のいずれかの組成物。
【請求項31】
上記蛋白質が、小麦、ライ麦、ライ小麦、トウモロコシ、オート麦、および大麦の蛋白質からなる群から選択される2種類以上の異なる植物蛋白質の混合物である、請求項26〜29のいずれかの組成物。
【請求項32】
上記デンプンが植物デンプンを含有する、請求項26〜31のいずれかの組成物。
【請求項33】
上記デンプンが、小麦、ライ麦、サトウモロコシ、ライ小麦、トウモロコシ、オート麦、大麦、タピオカ、ポテト、サゴおよびコメのデンプンからなる群から選択される植物デンプンである、請求項26〜32のいずれかの組成物。
【請求項34】
上記デンプンが、ワキシ型デンプンおよび高アミロース型デンプンから選択される、請求項26〜33のいずれかの組成物。
【請求項35】
上記のゲル化デンプンと蛋白質の混合物が6〜50%(w/w)の植物蛋白質を含有する、請求項26〜34のいずれかの組成物。
【請求項36】
上記のゲル化デンプンと蛋白質の混合物が8〜25%(w/w)の植物蛋白質を含有する、請求項35の組成物。
【請求項37】
上記のデンプンと蛋白質の混合物が、フラワー、ミール、グリッツ、および製粉もしくは粉砕された穀物からなる群から選択される、請求項26〜36のいずれかの組成物。
【請求項38】
上記穀物が、小麦、ライ麦、ライ小麦、トウモロコシ、オート麦、および大麦の穀物からなる群から選択される、請求項37の組成物。
【請求項39】
上記フラワーが2〜20%(w/w)の蛋白質を含有する、請求項37の組成物。
【請求項40】
蛋白質量を増すために、追加の植物蛋白質をフラワーに添加する、請求項37〜39のいずれかの組成物。
【請求項41】
上記の追加植物蛋白質が、フラワーの製造原料と同じ穀物に由来するか、または別の植物種に由来する植物蛋白質である、請求項40の組成物。
【請求項42】
上記のアルカリ酸化されたゲル化デンプンと蛋白質の水性混合物が3〜50%(w/w)の固形分を含有する、請求項26〜41のいずれかの組成物。
【請求項43】
植物デンプンと植物蛋白質の混合物を、アルカリ性条件下で酸化剤により酸化し、そしてその酸化混合物を、70〜150℃の温度で、粘度が1〜100センチポイズになるまで加熱することによって、上記のアルカリ酸化されたゲル化デンプンと蛋白質の水性混合物が得られる、請求項26〜42のいずれかの組成物。
【請求項44】
酸化を25〜50℃の温度で5〜30分間行い、それに続いて、組成物の粘度が1〜100センチポイズに成るまで5〜150分間、50〜150℃の温度で加熱を行う、請求項43の組成物。
【請求項45】
組成物の粘度が1〜100センチポイズに成るまで5〜150分間、50〜150℃の温度で加熱するという条件下で、酸化を行う、請求項43または44の組成物。
【請求項46】
酸化と加熱を同時に行う、請求項43の組成物。
【請求項47】
ドライヤーにより乾燥し、流動性の粒子状態にする、請求項26〜46のいずれかの組成物。
【請求項48】
デンプンと植物蛋白質の水中混合物を含んで成り、その固形含量が3〜30%(w/w)であり、蛋白質含量が4〜50%(w/w)であり、粘度が1〜100センチポイズであり、そしてpHが7.5〜9であり、該デンプンはゲル化されており、かつ混合物中のデンプンと蛋白質が共にpH8〜13でアルカリ酸化されている、水性コーティング組成物。
【請求項49】
請求項26〜48のいずれかの組成物を、紙、板紙またはボール紙に適用する工程を含んで成る、紙をコーティングする方法。
【請求項50】
請求項49の方法により得られる生産物。
【請求項51】
アルカリ酸化されたゲル化デンプン/蛋白質の混合物をその中に含んで成るファイバーボード(fibreboard)。
【請求項52】
上記ファイバーボードが、プラスターボード(plasterboard)、コンポジットボード(composite board)、およびパーティクルボード(particle board)からなる群から選択される、請求項51のファイバーボード。
【請求項53】
水中で植物蛋白質と植物デンプンの混合物を、好ましくは3〜50%(w/w)の固形分含量となるように生成し;
その混合物を、アルカリ性pHで、25〜50℃で、5〜30分間または24〜48時間まで酸化剤により酸化し;
そのアルカリ酸化された混合物を、ファイバーボードの成分と混合し;その後、
生成した混合物を、シート状に形成してもよく、オーブン内で、50〜150℃の温度で、20〜150分間加熱することを含んで成る、ファイバーボードの製造方法。
【請求項54】
上記ファイバーボード成分が、石膏、ウッドパーティクル、および線維成分からなる群から選択される、請求項48の方法。

【公表番号】特表2006−520831(P2006−520831A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503968(P2006−503968)
【出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000338
【国際公開番号】WO2004/083324
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(504333846)ジョージ ウエストン フーズ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】GEORGE WESTON FOODS LTD
【Fターム(参考)】