説明

コーティング組成物

【課題】透明で、超撥水性、耐久性を有する被膜を形成するコーティング組成物を提供すること。
【解決手段】コーティング組成物は、シリコーン系溶媒含有の溶媒中に、(A)表面が疎水性で平均一次粒子径が100nm以下の微粒子と、(B)カップリング剤とが配合されている。ただし、(A)微粒子/(B)カップリング剤は、20/1以上、1/20未満の範囲内の割合で配合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物に関し、特に、建築物の外壁や屋根、航空機、船舶、車両等のボディー、ガラス、ホイール等、乗用車のサイドミラー、エアコンの熱交換器、パラボラアンテナ、電線等に使用されるコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車のサイドミラーやガラス、家屋の窓ガラス等のように、屋外に設置されたり、屋外で使用されるガラスやミラーは、雨滴等が付着すると、視覚的に識別しにくくなり、視認性が低下する。また、建築物の外壁、屋根等に雨滴が付着すると美観を損ねる。さらにまた、パラボラアンテナ、電線等に結露や着氷が生じると、あるいは、エアコンの熱交換器に水滴が付着すると種々の問題が発生する。そのため、建築物の外壁等、パラボラアンテナ、電線、ガラスやミラー、熱交換器等の表面に撥水性を付与する技術の開発が行われている。
【0003】
例えば、特開平11−29722号公報には、微粒子と、該微粒子表面の官能基と化学結合可能な官能基を有するカップリング剤と、バインダー樹脂と、溶媒として酢酸ブチル等の有機溶媒とを含んでなる撥水塗料が開示されている。しかしながら、この撥水塗料では、撥水性が不十分であり、超撥水性を実現することはできなかった。また、バインダー樹脂を必須成分とするため、透明性に劣るものであり、ミラーやガラスの表面等に適用することは困難であった。特開2003−306670号公報、特開2004−149700号公報および特開2004−149701号公報では、十分な透明性および耐久性を同時に実現することができない。
【0004】
【特許文献1】特開平11−29722号公報
【特許文献2】特開2003−306670号公報
【特許文献3】特開2004−149700号公報
【特許文献4】特開2004−149701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、透明性に優れ、かつ、耐久性に優れた、超撥水性のコーティング組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明のコーティング組成物は、シリコーン系溶媒含有の溶媒中に、(A)表面が疎水性で、平均一次粒子径が100nm以下の微粒子と、(B)カップリング剤とが、(A)/(B)が20/1以上、1/20未満の範囲内の割合で配合されていることを特徴とする。
【0007】
本発明において、前記表面が疎水性の微粒子は、疎水性シリカであることが好ましい。
【0008】
本発明において、前記カップリング剤はシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、および、ジルコニア系カップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種類であることができる。
【0009】
本発明において、前記シリコーン系溶媒含有の溶媒は、シリコーン系溶媒および有機溶媒を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透明性かつ耐久性を有する超撥水性膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のコーティング組成物は、シリコーン系溶媒含有の溶媒中に、表面が疎水性の微粒子とカップリング剤とが配合されている。ただし、(A)表面が疎水性の微粒子と(B)カップリング剤との配合割合は、(A)/(B)が20/1以上、1/20未満であることが必要である。(A)/(B)が20/1未満では、超撥水性を実現することはできるが、耐久性に劣り、(A)/(B)が1/20以上では初期撥水性に劣ったり、場合によっては更に透明性に劣る場合もある。
【0012】
本発明においては、(A)/(B)は10/1以上であることが好ましく、5/1以上であることが更に好ましい。また、(A)/(B)は1/15以下であることが好ましく、1/10以下であることが更に好ましく、1/5以下であることが特に好ましい。
【0013】
本発明に使用される微粒子は、表面が疎水性であり、また、平均一次粒子径が100nm以下であることが必要である。微粒子の平均一次粒子径は、1〜100nmの範囲内であることが好ましく、5nm〜100nmの範囲内であることが更に好ましい。微粒子の粒子径が100nmを越えると、コーティング膜表面で光の散乱が生じ、透明性を保持することができなくなることがあるからである。すなわち、微粒子をガラス等の表面に付着させたコーティング膜は、この微粒子と同等の大きさや高さの凹凸を有するので、平均粒径が100nm以下の微粒子を付着させれば、可視光線の波長(主に、400〜800nm程度)より小さな凹凸となり、コーティング膜表面で光の散乱が生じず、透明性を保持することができる。したがって、本発明のコーティング組成物が適用される対象物がガラス、ミラー等である場合には透明性が有効に生かされ特に効果的である。
【0014】
微粒子の形状は、厳密な意味での球状に限定されることはない。例えば、その結晶形態や凝集状態の形態が、ほぼ球状、円柱状、鱗片状、繊維状、不定形状、多面体形状等であってもよい。
【0015】
表面が疎水性である微粒子は、珪素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、アンチモン、スズ、タングステン、亜鉛、鉄、セリウム、マンガン、銅、マグネシウム、ホルミウム、ニッケル等の酸化物、または、炭素を主成分とすることが好ましいが、特に酸化ケイ素であることが好ましい。本発明においては、これらを単独で、あるいは2種類以上を混合して使用することができる。微粒子が酸化亜鉛を用いて形成された場合には、コーティング膜表面に、さらに抗菌、抗カビ作用を付与することができる。
【0016】
本発明においては、表面が疎水性の微粒子が、疎水性シリカであることが好ましい。ここで「シリカ」とは、厳密にSiOの状態で存在するものだけではなく、珪素酸化物も含むことを意味する。表面が疎水性の微粒子とは、微粒子表面が疎水化処理されているものをいい、例えば、疎水性シリカとは、シリカの表面が疎水化処理されているものを意味する。
【0017】
微粒子表面を疎水化する方法としては、微粒子表面に疎水性を付与することができれば特に限定されることはなく、適宜採用される。例えば、表面にフッ素やアルキル基を含有させることが好ましい。微粒子表面にフッ素やアルキル基を含有させる方法としては、シリル化剤、シランカップリング剤、アルキルアルミニウム等の有機金属化合物を用いる方法等が挙げられる。ここでシリル化剤とは、無機材料に対して親和性あるいは反応性を有する加水分解性シリル基に、アルキル基、アリル基、フッ素を含有したフルオロアルキル基等を結合させた化合物である。珪素に結合した加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン、アセトキシ基等が挙げられるが、通常、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、塩素が好ましく使用される。例えば、トリメチルシリル化剤、アルキルシラン類、アリールシラン類、フルオロアルキルシラン類等を挙げることができる。
【0018】
本発明においては、親水性の微粒子に疎水化処理を行って、表面を疎水性にしてもよい。
【0019】
本発明においては、乾式による疎水化処理を行うことが好ましい。ここで、乾式による疎水化処理とは、気相中で親水性微粒子と疎水化剤とを反応させることをいう。疎水化剤としては、モノメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイル等を使用することができる。例えば、高熱合成した二酸化珪素を、ジメチルジクロルシランを用いて流動床中で疎水化することができる。なお、疎水化反応は、400〜600℃の温度で実施することが好ましい。また、湿式による疎水化処理とは、溶液中で親水性微粒子と疎水化剤とを反応させることをいう。
なお、表面が疎水性の微粒子の疎水化度については、塗布等する対象である被コーティング物体の材質や、使用される有機溶媒の種類に応じて、適宜、設計されることが好ましい。
【0020】
シリカ表面にメチル基を含有する疎水性シリカとしては、例えば、商品名「レオロシールHM20S」((株)トクヤマ製、平均一次粒子径12nm)、商品名「レオロシールHM30S」((株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)、商品名「レオロシールHM40S」((株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)、商品名「レオロシールDM30S」((株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)、商品名「レオロシールZD30S」((株)トクヤマ製、平均一次粒子径7nm)等を商業的に入手することができる。
【0021】
本発明に使用されるカップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコニア系カップリング剤等が挙げられる。これらのカップリング剤は、単独で使用してもよいが、2種類以上を併用してもよい。例えば、シランカップリング剤としては、フルオロアルキルシラン(ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等)、アルキルシラン(デシルトリメトキシシラン等)などが挙げられ、アルミネート系カップリング剤としては、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0022】
例えば、シランカップリング剤としては、商品名「TSL8233」(ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、モメンティブ社製)、商品名「KBM−7103」(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)、商品名「KBM−3103」(デシルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)等を商業的に入手することができる。
【0023】
例えば、チタネート系カップリング剤としては、商品名「プレンアクト38S」(味の素ファインテクノ(株)製)、アルミネート系カップリング剤としては、商品名「プレンアクトAL−M」(アルキルアセテートアルミニウムジイソプロピレート、味の素ファインテクノ(株)製)、ジルコニア系カップリング剤としては、商品名「ケンリアクトNZ01」(ケンリッチ社製)等を商業的に入手することができる。
【0024】
本発明において、微粒子およびカップリング剤の含有量は、コーティング組成物中、0.1〜50質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.5〜20質量%であることが好ましい。
【0025】
微粒子の添加量は、コーティング組成物中、0.1質量%以上、15.0質量%以下の範囲内であることが好ましく、1質量%以上、5質量%以下の範囲内であることが更に好ましい。微粒子の添加量が0.1質量%未満であると十分な撥水性が得られないことがあり、15.0質量%を超えると透明感に劣る場合があるからである。
【0026】
本発明のコーティング組成物は、シリコーン系溶媒を使用することが必要である。シリコーン系溶媒を使用すれば、形成された撥水膜の干渉縞を減らすことができ、かつ、白い曇りも生じさせない。また、摺動に対する耐久性も高いという利点もある。本発明に使用されるシリコーン系溶媒としては、例えば、環状シリコーン(デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等)、低粘度シリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイル等)等が挙げられる。例えば、環状シリコーンとしては、商品名「TSF405」(デカメチルシクロペンタシロキサン、モメンティブ社製)、商品名「TSF404」(オクタメチルシクロテトラシロキサン、モメンティブ社製)、商品名「KF995」(デカメチルシクロペンタシロキサン、信越化学工業(株)製)等が、また、ジメチルシリコーンオイルとしては、商品名「KF96−1.5cst」(信越化学工業(株)製)などを商業的に入手することができる。
【0027】
本発明においては、さらに有機溶媒を使用することが好ましい。有機溶媒は、微粒子等を安定に分散させるための溶媒として機能する。本発明に用いられる有機溶媒としては、極性を有する有機溶媒でも非極性の有機溶媒でも使用することができる。本発明に好ましく使用される有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類等、のような極性溶媒、ヘキサン、n−ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の非極性溶媒が挙げられる。また、経時的安定性および超撥水性等の性能を損なわない範囲内で、有機溶媒に水を添加することもできる。
【0028】
本発明においては、溶媒中に、シリコーン系溶媒を1質量%以上、99質量%以下含有することが好ましく、20質量%以上、95質量%以下含有することが更に好ましい。
【0029】
また、溶媒中の有機溶媒の含有量は、コーティング等の方法に応じて、適当な濃度や粘度となるように、適宜選択されることが好ましいが、例えば、有機溶媒を1質量%以上、99質量%以下含有することが好ましく、5質量%以上、80質量%以下含有することが更に好ましい。
【0030】
本発明においては、バインダーは含有していないこと(バインダーの含有量は実質0%)が好ましい。ただし、本発明の効果を阻害しない程度のバインダー量ならば含有していてもよい。一般的には、バインダーや酸類などを配合すると、耐久性は向上するが透明性が低下するという欠点がある。透明性を確保するためにはバインダーを配合しないことが理想的であるが、バインダーを配合しないと耐久性が低くなりすぎてしまう。ところが本発明においては、カップリング剤がバインダー的役割を果たしているらしく、バインダーを含有しなくても、十分な耐久性を実現することができた。
【0031】
本発明のコーティング組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、一般的なコーティング液等に通常使用される添加剤等を添加することができ、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、香料、防腐剤、酸、アルカリ類等を添加することができる。
【0032】
本発明においては、表面が疎水性で、平均一次粒子径が100nm以下の微粒子を、有機溶媒中で、キャビテーション作用により分散させることが好ましい。ここで、キャビテーション作用を起こさせるためには、例えば、微粒子を有機溶媒に入れて、超音波分散機等を用いて分散させることにより達成される。キャビテーション作用により分散させられた上記微粒子は予想外の超撥水性を発揮するが、このメカニズムは明らかではない。有機溶媒に超音波を照射すると、圧力の高い部分と低い部分が現れ、水に溶けていた気体がキャビティ(気泡)となって発生する。この気泡が瞬間的に収縮破壊して、疎水性の微粒子を良好な状態で分散させたり、あるいは、更に何らかの作用を微粒子自体に及ぼすと考えられる。なお、ホモジナイザー等の分散機によって分散させても超撥水性を発揮することがあるが、形成される被膜の透明性との兼ね合いで調整が必要である。
【0033】
例えば、表面が疎水性の微粒子と、カップリング剤等をシリコーン系溶媒含有の溶媒に分散させたコーティング組成物を、ガラス、鏡面等の被コーティング物体の表面に塗布等した後、乾燥させることによって、被コーティング物体に撥水性を付与することができる。ここで、微粒子は、被コーティング物体の表面に付着して凹凸を形成する。この凹凸は、ガラスと水滴との接点を小さくする働きをする。したがって、水滴の接触角度が150゜〜175゜であるような超撥水性を実現することができる。また、本発明のコーティング組成物は、ワイパーを5回摺動させた後でも水滴の接触角度が142°以上であり、ワイパーを10回摺動させた後でも140°以上である。
【0034】
本発明のコーティング組成物を塗布する方法は、特に限定されることなく一般的な方法を採用することができる。例えば、フローコート法、ディップコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。また、これらを適宜、組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本発明のコーティング組成物を上記方法によって被コーティング物体にコーティングした後、乾燥させるが、乾燥温度は0℃〜100℃であり、乾燥時間は1分〜1時間であることが好ましい。
【0036】
本発明のコーティング組成物は、種々の被コーティング物体に対して適用することができる。塗工される被コーティング物体としては、例えば、強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等のガラス、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の金属、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート等のプラスチック、石類、コンクリート等が挙げられる。
【0037】
本発明のコーティング組成物を、例えば、建築物の窓ガラス、外灯のガラス、車両の窓ガラス、自動車のサイドミラー、サングラス、各種計器等の窓ガラス、浴室用鏡等にコーティングすることができ、また、建物の外壁や屋根、塀、自動車・航空機・船舶のボディや鏡、ホイール等に使用することができる。本発明のコーティング組成物をコーティングし、乾燥させて形成された皮膜面には、超撥水性の膜が形成されるので、水滴、ごみ等の付着を防止し、美観の維持や視界の確保を実現することができる。また、エアコンの熱交換器等のように不必要に水滴のつきやすい部品の表面に超撥水性の被膜を形成すれば、水滴の付着を防止し、気流の抵抗を抑え、水の付着による熱伝導率の低下を防ぐことができる。また、パラボラアンテナや電線等に超撥水性被膜を形成すれば、結露や着氷を防止することができる。さらにまた、本発明によれば、透明なコーティング膜を形成することができるので、高層住宅の窓ガラス、道路鏡、道路標識、看板等にも好ましく使用することができる。
【0038】
本発明によれば、カップリング剤を配合しても撥水機能を低下させることはなく、優れた超撥水性を実現することができる。また、バインダー樹脂を配合しなくても優れた耐久性を発揮することができ、超撥水性を10回摺動後でも十分維持することができる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、各実施例及び各比較例は以下に示す方法で測定および評価を行った。
【0040】
(1)初期水滴接触角の測定
協和界面科学(株)製のCA−DT型接触角計を用い、大気中(約25℃)で2μLの水滴をサンプルガラスの撥水性膜に滴下して、水滴の静的接触角を測定した。
【0041】
(2)ウォッシャビリティーテスト
ワイパーによる摺動を想定した試験方法であり、具体的には、ウォッシャビリティーテスター((株)東洋精機製作所製)に市販のワイパー(ノーマルゴム)をセットし、サンプルガラスの撥水性膜面を荷重38g/cmの条件で、所定回数往復させた。ワイパー5回摺動後、および、ワイパー10回摺動後に、上記(1)と同様にして水滴の静的接触角を測定した。
【0042】
(3)仕上り性(透明性)の評価
撥水性膜を目視観察して、透明性の評価を行った。但し、評価基準は下記の5段階評価とした。
(評価基準)
5 完全に透明である
4 わずかに曇りが認められる
3 斜めから見ると曇りが認められる
2 正面から見ると曇りが認められる
1 白く見える
【0043】
なお、下記実施例および比較例では下記材料を使用した。
「レオロシールHM20S」: 疎水性シリカ、固形分100%、平均一次粒子径12nm、(株)トクヤマ製
「レオロシールHM30S」: 疎水性シリカ、固形分100%、平均一次粒子径7nm、(株)トクヤマ製
「レオロシールHM40S」: 疎水性シリカ、固形分100%、平均一次粒子径7nm、(株)トクヤマ製
「レオロシールDM30S」: 疎水性シリカ、固形分100%、平均一次粒子径7nm、(株)トクヤマ製
「レオロシールZD30S」: 疎水性シリカ、固形分100%、平均一次粒子径7nm、(株)トクヤマ製
「TSL8233」: ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、モメンティブ社製
「KBM−7103」: トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製
「プレンアクト38S」: チタネート系カップリング剤、味の素ファインテクノ(株)製
「プレンアクトAL−M」: アルミネート系カップリング剤(アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート)、味の素ファインテクノ(株)製
「ケンリアクトNZ01」: ネオアルコキシジルコニア系カップリング剤、ケンリッチ社製
「TSF405」: 環状シリコーン(デカメチルシクロペンタシロキサン)、モメンティブ社製
「TSF404」: 環状シリコーン(オクタメチルシクロテトラシロキサン)、モメンティブ社製
「KF995」: 環状シリコーン(デカメチルシクロペンタシロキサン)、信越化学工業(株)製
「KF96−1.5cst」: ジメチルシリコーンオイル、信越化学工業(株)製
IPA: アルコール系溶媒(イソプロピルアルコール)
n−デカン: 石油系溶媒(ノルマルデカン)
【0044】
(実施例1)
表面が疎水性で、粒子径が約7nmの疎水性シリカ(商品名「レオロシールHM30S」、固形分100%、(株)トクヤマ製)2.5質量%と、シランカップリング剤としてヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(商品名「TSL8233」、モメンテイブ社製)2.5質量%とを、デカメチルシクロペンタシロキサン(商品名「TSF405」、モメンティブ社製)72.5質量%およびイソプロピルアルコール(以下「IPA」と表記することもある)22.5質量%に入れ、超音波分散機を用い、周波数44kHzで1時間分散して疎水性シリカ分散液を作製した。
作製した疎水性シリカ分散液を、厚さ1.1mmのスライドガラス板(硼珪酸ガラス)上に、フローコート法によって塗工し、室温で乾燥させて被膜を形成し、撥水性膜を有するガラス基材(サンプルガラス)を作製した。
【0045】
得られたサンプルガラスの撥水性膜について、目視により初期の仕上り性(透明性)の評価を行った。また、上記測定方法等に基づいて、初期の撥水性の評価として初期水滴接触角の測定を行い、ウォッシャビリティーテストによるワイパー5回摺動後の水滴接触角の測定、および、ワイパー10回摺動後の水滴接触角の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0046】
(実施例2〜5)
レオロシールHM30S、TSL8233、および、TSF405の配合割合いを表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして疎水性シリカ分散液(コーティング組成物)を作製し、次いで、サンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて、実施例1と同様の測定および評価等を行った。その結果を表1に示す。
【0047】
(実施例6)
表面が疎水性で、粒子径が約12nmの疎水性シリカ(商品名「レオロシールHM20S」、固形分100%、(株)トクヤマ製)を使用し、レオロシールHM20S、TSL8233、および、TSF405の配合割合いを表1に示すように変更し、かつ、シリコーン系溶媒としてTSF405を78質量%およびIPAを18質量%を使用した以外は実施例1と同様にして疎水性シリカ分散液(コーティング組成物)を作製した。また、次いで、サンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて、実施例1と同様の測定および評価等を行った。その結果を表1に示す。
【0048】
(実施例7〜10)
微粒子の種類および使用量と、カップリング剤の種類および使用量と、溶媒の種類および使用量とを表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、コーティング組成物を作製した。また、次いで、サンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて、実施例1と同様の測定および評価等を行った。その結果を表2に示す。
【0049】
(実施例11〜16)
微粒子の種類および使用量と、カップリング剤の種類および使用量と、溶媒の種類および使用量とを表3に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、疎水性シリカ分散液(コーティング組成物)を作製した。また、次いで、サンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて、実施例1と同様の測定および評価等を行った。その結果を表3に示す。
【0050】
(実施例17〜21)
微粒子の種類および使用量と、カップリング剤の種類および使用量と、溶媒の種類および使用量とを表4に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、疎水性シリカ分散液(コーティング組成物)を作製した。また、次いで、サンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて、実施例1と同様の測定および評価等を行った。その結果を表4に示す。
【0051】
(比較例1〜4)
シリコーン系溶媒含有の溶媒を配合せずにコーティング組成物を作製した。すなわち、微粒子の種類および使用量と、カップリング剤の種類と使用量と、IPA等溶媒の使用量とを表5に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、コーティング組成物を作製した。また、次いで、サンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて、実施例1と同様の測定および評価等を行った。その結果を表5に示す。
【0052】
(比較例5)
カップリング剤を配合せずにコーティング組成物を作製した。すなわち、表5に示すように、疎水性微粒子として商品名「レオロシールHM30S」(平均一次粒子径7nm、(株)トクヤマ製)を2質量%、商品名「TSF405」を80質量%、IPAを18質量%配合した以外は実施例1と同様にして、コーティング組成物を作製し、次いで、サンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて、実施例1と同様の測定および評価等を行った。その結果を表5に示す。
【0053】
(比較例6)
表5に示すように、疎水性微粒子として商品名「レオロシールHM30S」を2.5質量%、商品名「TSL8233」を0.06質量%、商品名「TSF405」を74.94質量%、IPAを22.5質量%配合した以外は実施例1と同様にして、コーティング組成物を作製し、次いで、サンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて、実施例1と同様の測定および評価等を行った。その結果を表5に示す。
【0054】
(比較例7)
表5に示すように、疎水性微粒子として商品名「レオロシールHM30S」を2質量%、商品名「KBM−7103」を40質量%、商品名「TSF405」を40質量%、IPAを18質量%配合した以外は実施例1と同様にして、コーティング組成物を作製し、次いで、サンプルガラスを作製した。得られたサンプルガラスについて、実施例1と同様の測定および評価等を行った。その結果を表5に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
表1から明らかなように、実施例1〜21のコーティング組成物を用いてなる被膜は、透明性に優れており、かつ、超撥水性を有することが分かった。また、実施例1〜21のコーティング組成物を用いてなる被膜は、ワイパー5回摺動後の水接触角が142°以上であり、ワイパー10回摺動後でも140°以上であることが分かった。
【0061】
一方、比較例1および比較例3のコーティング組成物を用いてなる被膜は仕上り性が非常に劣っており、比較例2のコーティング組成物では、液が弾かれて被膜を形成することができなかった。また、比較例4,5,7のコーティング組成物を用いてなる被膜は、ワイパー10回摺動後では水接触角が104°以下になってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のコーティング組成物は、建物、自動車、航空機、船舶等に超撥水性を付与する必要がある箇所に有効に使用することができる。また、さらに透明性を保持する必要がある部分に特に有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン系溶媒含有の溶媒中に、(A)表面が疎水性で、平均一次粒子径が100nm以下の微粒子と、(B)カップリング剤とが、(A)/(B)が20/1以上、1/20未満の範囲内の割合で配合されていることを特徴とするコーティング組成物。
【請求項2】
前記表面が疎水性の微粒子が疎水性シリカであることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記カップリング剤がシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、および、ジルコニア系カップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記シリコーン系溶媒含有の溶媒が、シリコーン系溶媒および有機溶媒を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング組成物。

【公開番号】特開2009−161579(P2009−161579A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339443(P2007−339443)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(391021226)株式会社カーメイト (100)
【Fターム(参考)】