コードされたライブラリーの合成のための方法
本発明は、コード化オリゴヌクレオチドタグを含む分子のライブラリーを合成する方法を提供する。この方法は、「分割および混合」ストラテジーを使用し、イニシエーター(コード化オリゴヌクレオチドに連結した第一の構成要素を含む)を含む溶液を、多数の画分に分割される。各画分において、そのイニシエーターは、第二の独特な構成要素、およびその第二の構成要素を同定する第二の独特なオリゴヌクレオチドと反応される。これらの反応は、同時または連続的であり得、連続的である場合、一方の反応が他方の反応に先行し得る。各画分において産生される二量体分子は、合併され、次に多数の画分に再び分割される。次に、これらの画分はそれぞれ、第三の独特な(画分特異的な)構成要素、およびその構成要素をコードする第三の独特なオリゴヌクレオチドと反応される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2004年12月17日に出願された係属中の米国特許出願第11/015458号の一部継続出願であり、その出願は、2003年12月17日に出願された米国仮特許出願第60/530854号、2004年1月30日に出願された米国仮特許出願第60/540681号、2004年3月15日に出願された米国仮特許出願第60/553,715号、および2004年7月16日に出願された米国仮特許出願第60/588,672号に関連している。本出願はまた、2005年6月9日に出願された米国仮特許出願第60/689,466号、および2005年10月28日に出願された米国仮特許出願第60/731,041号への優先権を主張している。それぞれの前述の出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
有用な生物学的活性を有する化合物を同定する、より効果的な方法の捜索は、コンビナトリアルライブラリーと呼ばれる収集物中に存在する、膨大な数の異なる化合物をスクリーニングするための方法の開発をもたらした。そのようなライブラリーは、105種またはそれより多い異なる化合物を含み得る。コンビナトリアルライブラリーを産生するための多くの方法が存在し、そしてペプチド、擬似ペプチド(peptidomimetic)、および小さな有機分子のコンビナトリアル合成が報告されている。
【0003】
薬物発見におけるコンビナトリアル方法の使用における二つの主要な課題は、十分な複雑性を有するライブラリーの合成、および用いられるスクリーニングにおいて活性な分子の同定である。ライブラリーの複雑性の程度(すなわち、ライブラリー中に存在する異なる構造の数)が大きくなればなるほど、ライブラリーが、関心を引く活性を有する分子を含む確率が高くなることが、一般的に認められる。したがって、ライブラリー合成において用いられる化学は、合理的な時間の枠内で、膨大な数の化合物を産生することが可能でなければならない。しかしながら、所定の形式的な、または全体の濃度に対して、ライブラリー内の異なるメンバーの数の増加は、任意の特定のライブラリーのメンバーの濃度を低下させる。このことは、高い複雑性を有するライブラリーからの活性な分子の同定を困難にしている。
【0004】
これらの障害を克服する一つの方法は、コードされたライブラリー、特に各化合物が増幅可能なタグを含むライブラリーの開発である。そのようなライブラリーはDNAでコードされたライブラリーを含み、ライブラリーのメンバーを同定しているDNAタグは、分子生物学の技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)を用いて増幅され得る。しかしながら、非常に大きなライブラリーを産生するためのそのような方法の使用は、いまだに実証されておらず、そして、そのようなライブラリーを産生するための改良方法が、薬物発見に対するこの方法の可能性の実現のために必要とされることは明らかである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、コード化オリゴヌクレオチドタグを含む分子のライブラリーを合成する方法を提供する。その方法は、「分割(split)および混合(pool)」ストラテジーを使用し、イニシエーター(コード化オリゴヌクレオチドに連結した第一の構成要素(building block)を含む)を含む溶液は、多数の画分に分割(「分割(split)」)される。各画分において、そのイニシエーターは、第二の独特な構成要素、およびその第二の構成要素を同定する第二の独特なオリゴヌクレオチドと反応される。これらの反応は、同時または連続的であり得、連続的である場合、一方の反応が他方の反応に先行し得る。各画分において産生される二量体分子は、合併(「混合(pool)」)され、次に多数の画分に再び分割される。次に、これらの画分はそれぞれ、第三の独特な(画分特異的な)構成要素、およびその構成要素をコードする第三の独特なオリゴヌクレオチドと反応される。生成物のライブラリー中に存在する独特な分子の数は、(1)その合成の各工程で用いられる異なる構成要素の数、および(2)混合および分割が繰り返される時間の数の関数である。
【0006】
一つの実施形態において、本発明はコード化オリゴヌクレオチドに作動可能に連結する機能的部分を含むか、またはその機能的部分からなる分子を合成する方法を提供する。その方法は、(1)n個の構成要素を含む機能的部分からなるイニシエーター化合物を提供する工程(ここでnは1または1より大きい整数であり、その機能的部分は、少なくとも一つの反応基(reactive group)を含み、そしてその機能的部分は、元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する);(2)そのイニシエーター化合物を、少なくとも一つの相補的反応基(ここで、その少なくとも一つの相補的反応基は、工程(1)の反応基と相補的である)を含む構成要素と、その反応基およびその相補的反応基の反応に対して適切な条件下で、反応させ共有結合を形成させる工程;(3)その元のオリゴヌクレオチドを、酵素の存在下で工程(b)の構成要素を同定する入来(incoming)オリゴヌクレオチドと(ここで、その酵素はその元のオリゴヌクレオチドおよびその入来オリゴヌクレオチドのライゲーションを触媒する)、その入来オリゴヌクレオチドおよびその元のオリゴヌクレオチドのライゲーションに対して適切な条件下で、反応させ、それによりコード化オリゴヌクレオチドに作動可能に連結するn+1個の構成要素を含む機能的部分を含むか、またはそれらからなる分子を産生する工程を包含する。工程(3)の機能的部分が、反応基を含む場合、工程1〜3は、一回または一回より多く繰り返され得、それによってサイクル1〜iを形成し(ここでiは2または2より大きい整数である)、サイクルsの工程(3)の生成物は(ここで、sはi−1またはi−1より小さい整数である)、サイクルs+1のイニシエーター化合物となる。
【0007】
一つの実施形態において、本発明は、化合物のライブラリーを合成する方法を提供し、ここで、その化合物は機能的部分を含み、これは、その機能的部分の構造を同定するオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する二つまたは二つより多い構成要素を含む。その方法は、(1)m個のイニシエーター化合物を含む溶液を提供する工程、ここでmは1または1より大きい整数であり、そのイニシエーター化合物はn個の構成要素を含む機能的部分からなり(ここで、nは1または1より大きい整数である)、その機能的部分は、n個の構成要素を同定する元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する;(2)工程(1)の溶液をr個の画分に分割する工程、ここでrは2または2より大きい整数である;(3)各画分におけるイニシエーター化合物を、r個の構成要素のうちの一つと反応させ、それによって、その元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結するn+1個の構成要素を含む機能的部分からなる化合物を含むr個の画分を産生する工程;(4)各画分における元のオリゴヌクレオチドを、酵素の存在下でr個の異なる入来オリゴヌクレオチドのセットのうちの一つと(ここで、その酵素は入来オリゴヌクレオチドおよび元のオリゴヌクレオチドのライゲーションを触媒する)、その入来オリゴヌクレオチドおよびその元のオリゴヌクレオチドの酵素的ライゲーションに対して適切な条件下で、反応させ、それによりn+1個の構成要素をコードする伸長されたオリゴヌクレオチドに作動可能に連結するn+1個の構成要素を含む機能的部分からなる分子を含むr個のアリコートを産生する工程を包含する。必要に応じて、その方法は、工程(4)で産生されたr個の画分を再合併し、それによりn+1個の構成要素を含む機能的部分(これは、伸長されたオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する)からなる化合物を含む溶液を生成する(5)の工程をさらに包含する。工程(1)〜(5)は、一回または一回より多く行われ得、サイクル1〜iを生成し得る(ここで、iは2または2より大きい整数である)。サイクルs+1において(ここで、sはi−1またはi−1より小さい整数である)、工程(1)のm個のイニシエーター化合物を含む溶液は、サイクルsの工程(5)の溶液である。同様に、サイクルs+1の工程(1)のイニシエーター化合物は、サイクルsの工程(5)の化合物である。
【0008】
好ましい実施形態において、上記構成要素は、従来の化学反応を用いて各工程で結合される。その構成要素は結合され得、線状もしくは分枝状のポリマーまたはオリゴマー(例えば、ペプチド、擬似ペプチド、およびペプトイド)、あるいは非オリゴマー分子(例えば、一つまたは一つより多いさらなる化学部分に結合する骨格構造を含む分子)を産生し得る。例えば、その構成要素がアミノ酸残基である場合、その構成要素は、標準的なペプチド合成ストラテジー(例えば、当該分野で公知の、適切な保護/脱保護ストラテジーを用いる溶液相または固相合成)を用いて結合され得る。好ましくは、その構成要素は、溶液相化学を用いて結合され得る。上記コード化オリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチドであり、好ましくは、二本鎖のオリゴヌクレオチドである。そのコード化オリゴヌクレオチドは、一構成要素当たり、4個〜12個の塩基または塩基対のオリゴヌクレオチドであり;そのコード化オリゴヌクレオチドは、標準的な溶液相または固相オリゴヌクレオチド合成方法論を用いて結合され得るが、好ましくは溶液相酵素的プロセスを用いて結合される。例えば、そのオリゴヌクレオチドは、トポイソメラーゼ、リガーゼ、DNAポリメラーゼを用いて結合され得る(コード化オリゴヌクレオチドの配列が、これらの酵素のうちの一つによるライゲーションのための開始配列を含む場合)。コード化オリゴヌクレオチドの酵素的結合は、(1)標準的合成(非酵素)結合と比較して、より正確な付加;および(2)より簡単な保護/脱保護ストラテジーの使用の利点を提供する。
【0009】
別の局面において、本発明は、式I:
【0010】
【化13】
の化合物を提供し、
ここで、Xは、一つまたは一つより多い構成要素を含む機能的部分であり;Zは、その3’末端でBに結合したオリゴヌクレオチドであり;Yは、その5’末端でCに結合したオリゴヌクレオチドであり;Aは、Xと共有結合を形成する官能基であり;Bは、Zの3’末端と結合を形成する官能基であり;Cは、Yの5’末端と結合を形成する官能基であり;D、F、およびEは、それぞれ独立して、二官能性結合基であり;そして、Sは、原子または分子骨格である。そのような化合物は、本発明の方法を使用して合成される化合物を含む。
【0011】
本発明はさらに、オリゴヌクレオチドに作動可能に連結した二つまたは二つより多い構成要素を含む機能的部分を含む化合物を含む化合物のライブラリーに関し、そのオリゴヌクレオチドは、その機能的部分の構造をコードする。そのようなライブラリーは、約102個〜約1012個またはそれより多い異なるメンバー(例えば、102個、103個、104個、105個、106個、107個、108個、109個、1010個、1011個、1012個、またはそれより多い異なるメンバー)、すなわち異なる分子構造を含み得る。
【0012】
一つの実施形態において、化合物のライブラリーは、それぞれが独立して式I:
【0013】
【化14】
である化合物を含み、
ここで、Xは、一つまたは一つより多い構成要素を含む機能的部分であり;Zは、その3’末端でBに結合したオリゴヌクレオチドであり;Yは、その5’末端でCに結合したオリゴヌクレオチドであり;Aは、Xと共有結合を形成する官能基であり;Bは、Zの3’末端と結合を形成する官能基であり;Cは、Yの5’末端と結合を形成する官能基であり;D、F、およびEは、それぞれ独立して、二官能性結合基であり;そして、Sは、原子または分子骨格である。そのようなライブラリーは、本発明の方法を使用して合成されるライブラリーを含む。
【0014】
別の局面において、本発明は、生物学的標的に結合する化合物を同定するための方法を提供し、上記方法は、(a)その生物学的標的を、本発明の化合物のライブラリーと接触させる工程(ここで、その化合物のライブラリーは、オリゴヌクレオチドに作動可能に連結した二つまたは二つより多い構成要素を含む機能的部分を含む化合物を含み、そのオリゴヌクレオチドは、その機能的部分の構造をコードする。この工程は、その標的へ結合する化合物のライブラリーの少なくとも一つのメンバーに対して適切な条件下で行われる);(2)その標的に結合しないライブラリーのメンバーを除去する工程;(3)その標的に結合する化合物のライブラリーの少なくとも一つのメンバーのコード化オリゴヌクレオチドを増幅する工程;(4)工程(3)のコード化オリゴヌクレオチドを配列決定する工程;ならびに、工程(5)において決定された配列を用いて、その生物学的標的に結合する化合物のライブラリーのメンバーの機能的部分の構造を決定する工程を包含する。
【0015】
本発明は、所望の特性を有する分子の同定において、種々の利点を提供する。例えば、本発明の方法は、オリゴヌクレオチドタグの存在下で、その分子を構築するためのさまざまな化学反応の使用を可能にする。本発明の方法はまた、オリゴヌクレオチドタグを、そのように産生された化学構造に組み込む、忠実度の高い手段を提供する。さらに、それらは、各メンバーの多くの複製を有するライブラリーの合成を可能にし、それにより、生物学的標的に対する多数のラウンド(round)の選択を与える一方、そのオリゴヌクレオチドタグの増幅および配列決定(sequence)についての最後のラウンドの後に多くの数の分子を残す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
本発明は、化合物およびコンビナトリアル化合物のライブラリーを産生するための方法、本発明の方法により産生される化合物およびライブラリー、ならびに所望の特性(例えば、所望の生物学的活性)を有する化合物を同定するためにこのライブラリーを使用するための方法に関する。本発明はさらに、これらの方法を用いて同定される化合物に関する。
【0017】
コンビナトリアル化学的ライブラリーを産生およびスクリーニングするために、種々の方法が行われている。例として、そのライブラリーの個々のメンバーを互いに物理的に分離する(例えば、単一の化合物が、多数の反応容器のそれぞれにおいて合成される場合)方法が挙げられる。しかしながら、代表的にこれらのライブラリーは、一度に一つの化合物を、またはたいていは、一度に数種の化合物をスクリーニングされ、したがって、最も効率的なスクリーニングプロセスをもたらさない。他の方法において、化合物は、固体の支持体上で合成される。そのような固体の支持体としては、チップ(特定の化合物が、そのチップまたは膜(「位置特定可能(addressable)」)の特定の領域を占有する)が挙げられる。他の方法において、化合物はビーズ上で合成され、各ビースは異なる化学構造を含む。
【0018】
大きなライブラリーをスクリーニングする際に生じる二つの難点は、(1)スクリーニングされ得る異なる化合物の数;および(2)そのスクリーニングにおいて活性である化合物の同定である。一つの方法において、そのスクリーニングにおいて活性である化合物は、元のライブラリーを、いっそう小さな画分および副画分(subfraction)に狭め、各場合において、活性な化合物を含む画分または副画分を選択し、さらにサブセットの全てのメンバーが、個々に合成され得、そして所望の活性のために評価され得る十分に小さい化合物のセットを含む活性な副画分を達成するまで、再分割することで、同定される。これは冗長で、時間を消費する行為である。
【0019】
コンビナトリアルライブラリーのスクリーニングの結果を解析する別の方法は、ライブラリーのメンバーが同定標識でタグ化されるライブラリーを用いることである。すなわち、ライブラリー中に存在する各標識は、その標識の同定からタグ化された分子の構造がわかるように、ライブラリー中に存在する目立たない(discreet)化合物の構造と結合される。タグ化されたライブラリーへの一つの方法は、米国特許第5,573,905号;同第5,708,153号;同第5,723,598号,同第6,060,596号、公開されたPCT出願 WO 93/06121;WO 93/20242;WO 94/13623;WO 00/23458;WO 02/074929、およびWO 02/103008で、ならびにBrenner and Lerner(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,5381−5383(1992);Nielsen and Janda(Methods:A Companion to Methods in Enzymology 6,361−371(1994);およびNielsen,Brenner and Janda(J.Am.Chem.Soc.115,9812−9813(1993))(それぞれは、その全体が本明細書中に参考として援用される)により記載されるように、オリゴヌクレオチドタグを用いる。そのようなタグは、(例えばポリメラーゼ連鎖反応を用いて)増幅され、そのタグの多くの複製を産生し得、そして配列決定によりそのタグを同定し得る。次に、そのタグの配列は、結合分子の構造を同定し、それは純粋な形態で合成され得、そして試験され得る。本発明は、DNAでコードされた分子のライブラリーを産生するための方法における改善点、ならびに、機能的部分が溶液相合成方法を用いて合成される、DNAでコードされた分子の大きな(105個のメンバーまたはそれより多いメンバー)ライブラリーの最初の例を提供している。
【0020】
本発明は、オリゴヌクレオチドでコードされたコンビナトリアルライブラリーの容易な合成を可能にし、そして、そのようなオリゴヌクレオチドタグを、分子の莫大な収集物の各メンバーに添加する、効率的で、忠実度の高い手段を可能にする方法を提供する。
【0021】
本発明の方法は、構成要素からなる第一の部分(「機能的部分」)、ならびにその第一の部分に作動可能に連結した第二の部分を含む二官能性分子を合成するための方法を包含し、その第二の部分は、その第一の部分の構造を同定するオリゴヌクレオチドタグを含む。すなわち、そのオリゴヌクレオチドは、どの構成要素がその第一の部分の構築において用いられたか、ならびに構成要素が連結された順序を示す。一般的に、オリゴヌクレオチドタグにより提供される情報は、活性部分を構築するために用いられる構成要素を決定するために十分である。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドタグの配列は、その機能的部分における構成要素の配列(例えば、ペプチド部分に対して、アミノ酸配列)を決定するために十分である。
【0022】
用語「機能的部分」は、本明細書中で用いられる場合、一つまたは一つより多い構成要素を含む化学的部分のことをいう。好ましくは、機能的部分における構成要素は、核酸ではない。機能的部分は、線状もしくは分枝状のもしくは環状のポリマーまたはオリゴマーまたは小さな有機分子であり得る。
【0023】
用語「構成要素」は、本明細書中で用いられる場合、他の化学構造単位に連結されるか、または他のそのような単位に連結され得る化学構造単位である。上記機能的部分が、ポリマーまたはオリゴマーである場合、構成要素は、ポリマーまたはオリゴマーの単量体単位である。構成要素はまた、骨格構造(「骨格構成要素」)を含み得、それに、一つまたは一つより多いさらなる構造(「辺縁構成要素」)が結合されるか、または結合され得る。
【0024】
用語「構成要素」は、機能的部分中に存在し、また機能的部分の合成のために用いられる反応形態中に存在するような化学構造単位のことをいうために、本明細書中で用いられることが理解されるべきである。機能的部分内で、構成要素は、任意の部分の構成要素(これは、その構成要素を、その機能的部分に取り込む結果として失われる)なしで存在する。例えば、結合形成反応が、小分子を放出する場合(以下を参照のこと)、機能的部分中に存在するような構成要素は、「構成要素残基」、すなわち、放出される分子をもたらす原子の損失に続く、その合成において用いられる構成要素の残りである。
【0025】
構成要素は、相補的である任意の化合物であり得、すなわち、構成要素は、二つまたは二つより多い構成要素を含む構造を形成するために、ともに反応できなければならない。代表的に、用いられるすべての構成要素は、少なくとも二つの反応基を有するが、用いられるいくつかの構成要素(例えば、オリゴマー機能的部分における最後の構成要素)は、一つの反応基のみをそれぞれ有する。二つの異なる構成要素上の反応基は、相補的でなければならない。すなわち、ともに反応して共有結合を形成する(必要に応じて、小分子(例えば、水、HCl、HFなど)の損失を付随して)ことができなければならない。
【0026】
本発明の目的のために、二つの反応基は、それらがともに反応して、共有結合を形成することができる場合、相補的である。好ましい実施形態において、結合形成反応は、副生成物の実質的な形成なしで、周囲の状況下で迅速に起こる。好ましくは、所定の反応基は、所定の相補的反応基とちょうど一回反応する。一つの実施形態において、二つの構成要素の相補的反応基は、例えば、求核置換を介して反応して、共有結合を形成する。一つの実施形態において、一対の相補的反応基の一方のメンバーは求電子基であり、そしてその対の他方のメンバーは求核基である。
【0027】
相補的求電子基および求核基としては、適切な条件下で求核置換により反応して、共有結合を形成する任意の二つの基が挙げられる。種々の適切な結合形成反応が当該分野で公知である。例えば、March,Advanced Organic Chemistry,第4版,New York:John Wiley and Sons(1992),10〜16章;Carey and Sundberg,Advanced Organic Chemistry,Part B,Plenum(1990),1〜11章;およびCollman et al.,Principles and Applications of Organotransition Metal Chemistry,University Science Books,Mill Valley,Calif.(1987),13〜20章(それぞれは、その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。適切な求電子基の例としては、反応性カルボニル基(例えば、塩化アシル基)、エステル基(カルボニルペンタフルオロフェニルエステルおよびスクシンイミドエステルが挙げられる)、ケトン基、およびアルデヒド基;反応性スルホニル基(例えば、塩化スルホニル基)、ならびに反応性ホスホニル基が挙げられる。他の求電子基としては、末端エポキシド基、イソシアネート基、およびアルキルハライド基が挙げられる。適切な求核基としては、第一級アミノ基、および第二級アミノ基、およびヒドロキシル基、およびカルボキシル基が挙げられる。
【0028】
適切な相補的反応基が以下に示される。当業者は、本方法で用いられ得る他の反応基の対を容易に決定し得、そして本明細書中で提供される例は、制限するものと意図されない。
【0029】
第一の実施形態において、相補的反応基としては、活性化カルボキシル基、反応性スルホニル基、または反応性ホスホニル基、あるいはそれらの組み合わせ、および第一級アミノ基または第二級アミノ基が挙げられる。この実施形態において、相補的反応基は、適切な条件下で反応し、アミド結合、スルホンアミド結合、またはホスホンアミデート結合を形成する。
【0030】
第二の実施形態において、相補的反応基としては、エポキシド基、および第一級アミノ基または第二級アミノ基が挙げられる。エポキシド基を含む構成要素は、アミンを含む構成要素と、適切な条件下で反応し、炭素−窒素結合を形成し、β−アミノアルコールをもたらす。
【0031】
別の実施形態において、相補的反応基としては、アジリジン基、および第一級アミノ基または第二級アミノ基が挙げられる。適切な条件下で、アジリジンを含む構成要素は、アミンを含む構成要素と反応して、炭素−窒素結合を形成し、1,2−ジアミンをもたらす。第三の実施形態において、相補的反応基としては、イソシアネート基、および第一級アミノ基または第二級アミノ基が挙げられる。イソシアネートを含む構成要素は、アミノを含む構成要素と、適切な条件下で反応し、炭素−窒素結合を形成し、尿素基をもたらす。
【0032】
第四の実施形態において、相補的反応基としては、イソシアネート基およびヒドロキシル基が挙げられる。イソシアネートを含む構成要素は、ヒドロキシルを含む構成要素と、適切な条件下で反応し、炭素−酸素結合を形成し、カルバメート基をもたらす。
【0033】
第五の実施形態において、相補的反応基としては、アミノ基およびカルボニルを含む基(例えば、アルデヒド基またはケトン基)が挙げられる。アミンは、還元的アミノ化により、そのような基と反応して、新規の炭素−窒素結合を形成する。
【0034】
第六の実施形態において、相補的反応基としては、リンイリド基、およびアルデヒド基またはケトン基が挙げられる。リンイリドを含む構成要素は、適切な条件下で、アルデヒドまたはケトンを含む構成要素と反応して、炭素−炭素二重結合を形成し、アルケンをもたらす。
【0035】
第七の実施形態において、相補的反応基は、付加環化を介して反応し、環状構造を形成する。そのような相補的反応基の一つの例としては、アルキン、および有機アジドであり、それらは、適切な条件下で反応して、トリアゾール環構造を形成する。二つの構成要素を連結するこの反応の使用の例は、図8で説明される。そのような反応のための適切な条件は、当該分野で公知であり、そしてWO 03/101972に開示されるものが挙げられる(その全体の内容は、本明細書中で参考として援用される)。
【0036】
第八の実施形態において、相補的反応基は、アルキルハライド、および求核試薬(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基)である。そのような基は、適切な条件下で反応し、炭素−窒素(アルキルハライドとアミン)または炭素−酸素(アルキルハライドと、ヒドロキシル基またはカルボキシル基)を形成する。
【0037】
第九の実施形態において、相補的官能基は、ハロゲン化ヘテロ芳香族(heteroaromatic)基および求核試薬であり、そして構成要素は、適切な条件下で、芳香族求核置換により連結される。適切なハロゲン化ヘテロ芳香族基としては、塩素化ピリミジン、塩素化トリアジン、および塩素化プリンが挙げられ、それらは水溶液中の穏和な条件下で求核試薬(例えば、アミン)と反応する。オリゴヌクレオチドでタグ化されたトリクロロトリアジンの、アミンとの反応の代表的な例は、図9および図10に示される。適切な塩素化ヘテロ芳香族基の例は、図11に示される。
【0038】
本発明の分子およびライブラリーの合成における構成要素を結合するために用いられ得るさらなる結合形成反応としては、以下に示されるものが挙げられる。以下に示される反応は、反応性官能基を強調している。種々の置換基が、反応物質中に存在し得、R1、R2、R3、およびR4と名前を付けたものが挙げられる。置換され得る可能な位置としては、R1、R2、R3、およびR4で示される位置が挙げられるが、それらに限定されない。これらの置換基は、任意の適切な化学的部分を含み得るが、指示される反応を妨げず、そして著しくは阻害しないものに好ましくは限定される。そして、他に明記されない限り、その化学部分は、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、アミノ、置換されたアミノ、および当該分野で公知である他の化学的部分を含み得る。これらの基上の適切な置換基としては、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、メルカプト、カルボキシル、およびカルボキサミドが挙げられる。明記される場合、適切な電子求引基としては、ニトロ、カルボキシル、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、および当該分野で公知である他の基が挙げられる。適切な電子供与基の例としては、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、ハロゲン、アセトアミド、および当該分野で公知の他の基が挙げられる。
アルケンへの第一級アミンの付加:
【0039】
【化15】
求核置換:
【0040】
【化16】
アミンの還元的アルキル化:
【0041】
【化17】
パラジウムで触媒された炭素−炭素結合形成反応:
【0042】
【化18】
Ugi縮合反応:
【0043】
【化19】
求電子芳香族置換反応:
【0044】
【化20】
Xは、電子供与基である。
イミン/イミニウム/エナミン形成反応:
【0045】
【化21】
付加環化反応
ディールス・アルダー付加環化
【0046】
【化22】
1,3−双極性付加環化、X−Y−Z=C−N−O、C−N−S、N3、
【0047】
【化23】
求核芳香族置換反応:
【0048】
【化24】
Wは、電子求引基である。
【0049】
【化25】
適切な置換基XおよびYの例としては、置換または非置換のアミノ、置換または非置換のアルコキシ、置換または非置換のチオアルコキシ、置換または非置換のアリールオキシ、および置換または非置換のチオアリールオキシが挙げられる。
【0050】
【化26】
ヘック(Heck)反応:
【0051】
【化27】
アセタール形成:
【0052】
【化28】
適切な置換基XおよびYの例としては、置換または非置換のアミノ、ヒドロキシ、およびスルフヒドリル(sulhydryl)であり:Yは、XとYを結合させるリンカーであり、そしてその反応の生成物中に見出される環構造を形成するために適切である。
アルドール反応:
【0053】
【化29】
適切な置換基Xの例としては、O、S、およびNR3が挙げられる。
【0054】
本発明の分子およびライブラリーを形成させるために用いられ得る骨格構成要素としては、二つまたは二つより多い官能基を有するものが挙げられ、それらは、例えば、上で考察される一つまたは一つより多い結合形成反応を用いて、辺縁構成要素前駆体との結合形成反応に関与し得る。骨格部分はまた、例えば、特定の方法で反応して、中心の分子部分(辺縁官能基は、これらに付加される)を含む分子を形成し得る構成要素前駆体を用いて、本発明のライブラリーおよび分子の構築中に合成され得る。一つの実施形態において、本発明のライブラリーは、定常骨格部分(しかし、異なる辺縁部分、または辺縁部分の異なる配列)を含む分子を含む。特定のライブラリーにおいて、すべてのライブラリーのメンバーは、定常骨格部分を含み;他のライブラリーは、二つまたは二つより多い異なる骨格部分を有する分子を含み得る。本発明の分子およびライブラリーの構築において用いられ得る骨格部分形成反応の例は、表8に示される。その表において引用される文献は、その全体が本明細書中で参考として援用される。R1基、R2基、R3基、およびR4基は、指示される反応を妨害せず、そして著しくは阻害しないはずであるという点のみで制限され、そしてこれらは水素、アルキル、置換されたアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換されたアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、置換されたアミノ、および当該分野で公知である他の基を含み得る。適切な置換基としては、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、アリールオキシ、アリール−S−、ハロゲン、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、シアノ、シアネート、ニトリル、イソシアネート、チオシアネート、カルバミル、および置換されたカルバミルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
機能的部分の合成は、一つの特定の型のカップリング(coupling)反応(例えば、上で考察された反応のうちのひとつ(しかし、それに限定されない))により、あるいは二つまたは二つより多いカップリング反応の組み合わせ(例えば、上で考察された二つまたは二つより多いカップリング反応)により進行し得ることが理解されるべきである。例えば、一つの実施形態において、構成要素は、アミド結合形成(アミノおよびカルボン酸の相補的基)ならびに還元アミノ化(アミノおよびアルデヒドまたはケトンの相補的基)の組み合わせにより結合される。任意のカップリング化学が用いられ得るが、ただし、それはオリゴヌクレオチドの存在と共存できる。本発明の特定の実施形態において用いられ得るような、二本鎖(二重鎖(duplex))のオリゴヌクレオチドタグは、一本鎖のタグよりも化学的に頑丈であり、したがって、幅広い範囲の反応条件に耐え、一本鎖のタグでは可能でない結合形成反応の使用を可能にする。
【0056】
構成要素は、機能的部分を形成させるために用いられる反応基(単数または複数)に加えて、一つまたは一つより多い官能基を含み得る。一つまたは一つより多いこれらのさらなる官能基は、保護されて、これらの官能基の望ましくない反応を妨げ得る。適切な保護基は、種々の官能基に対して当該分野で公知である(Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第二版,New York:John Wiley and Sons(1991)(本明細書中に参考として援用される))。特に有用な保護基としては、t−ブチルエステルおよびエーテル、トリチルエーテルおよびアミン、アセチルエステル、トリメチルシリルエーテル、アセタール、トリクロロエチルエーテルおよびエステル、ならびにカルバマートが挙げられる。
【0057】
一つの実施形態において、各構成要素は、二つの反応基を含み、それらは同じであっても異なっていてもよい。例えば、サイクルsで加えられる各構成要素は、同じである二つの反応基を含み得るが、それらは双方とも、工程s+1およびs−1で加えられる構成要素の二つの反応基に対して相補的である。別の実施形態において、各構成要素は、二つの反応基を含み、これらはそれら自身が相補的である。例えば、ポリアミド分子を含むライブラリーは、二つの第一級アミノ基を含む構成要素と、二つの活性化カルボキシル基を含む構成要素との間の反応により、生成され得る。生じた化合物において、交互のアミド基が反対の方向性を有するために、N末端もC末端も存在しない。あるいは、ポリアミドライブラリーは、それぞれがアミノ基および活性化カルボキシル基を有する構成要素を用いて生成され得る。この実施形態において、サイクルの工程nで加えられる構成要素は、n−1の構成要素上の利用可能な反応基に対して相補的である遊離反応基を有するが、好ましくはn番目の構成要素上のその他の反応基は保護される。例えば、ライブラリーのメンバーが、C方向からN方向へと合成される場合、加えられる構成要素は、活性化カルボキシル基および保護されたアミノ基を含む。
【0058】
機能的部分は、ポリマー部分またはオリゴマー部分(例えば、ペプチド、擬似ペプチド、ペプチド核酸、またはペプトイド)であり得るか、あるいはそれらは小さな非ポリマー分子(例えば、中心骨格およびその骨格の辺縁部の周りに配置された構造を含む構造を有する分子)であり得る。線状のポリマーライブラリーまたはオリゴマーライブラリーは、二個の反応基を有する構成要素の使用に起因するが、一方、分枝状のポリマーライブラリーまたはオリゴマーライブラリーは、三個または三個より多い反応基を有する構成要素(必要に応じて、二個の反応基のみを有する構成要素と組み合わせて)の使用に起因する。そのような分子は、一般式X1X2…Xnにより表され得、ここで、各Xはn個の単量体単位を含むポリマーの単量体単位であり、nは1より大きい整数である。オリゴマー化合物またはポリマー化合物の場合、末端の構成要素は、二つの官能基を含む必要はない。例えば、ポリアミドライブラリーの場合、C末端の構成要素は、アミノ基を含み得るが、カルボキシル基の存在は任意である。同様に、N末端での構成要素は、カルボキシル基を含み得るが、アミノ基含む必要はない。
【0059】
分枝状のオリゴマー化合物またはポリマー化合物はまた、少なくとも一つの構成要素が、他の構成要素と反応性の三個の官能基を含むという条件で合成され得る。本発明のライブラリーは、線状の分子、分枝状の分子、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0060】
ライブラリーはまた、例えば、二個または二個より多い反応基を有する骨格構成要素を、一つの利用可能な反応基のみを有する他の構成要素と組み合わせて、用いることにより構築され得、ここで、例えば、任意のさらなる反応基は、保護されるか、またはその骨格構成要素中に存在するその他の反応基に対して反応性ではないかのいずれかである。一つの実施形態において、例えば、合成される分子は、一般式X(Y)nにより表され得、ここで、Xは骨格構成要素であり;各Yは、Xに連結した構成要素であり、そしてnは、少なくとも2である整数であり、好ましくは2〜約6の整数である。一つの好ましい実施形態において、サイクル1の元の構成要素は、骨格構成要素である。式X(Y)nの分子において、各Yは、同じであっても、異なっていてもよいが、代表的なライブラリーのたいていのメンバーにおいて、各Yは異なっている。
【0061】
一つの実施形態において、本発明のライブラリーは、ポリアミド化合物を含む。ポリアミド化合物は、任意のアミノ酸から誘導される構成要素で構成され得、そのアミノ酸としては、20種類の天然に存在するα−アミノ酸(例えば、アラニン(Ala;A)、グリシン(Gly;G)、アスパラギン(Asn;N)、アスパラギン酸(Asp;D)、グルタミン酸(Glu;E)、ヒスチジン(His;H)、ロイシン(Leu;L)、リシン(Lys;K)、フェニルアラニン(Phe;F)、チロシン(Tyr;Y)、トレオニン(Thr;T)、セリン(Ser;S)、アルギニン(Arg;R)、バリン(Val;V)、グルタミン(Gln;Q)、イソロイシン(Ile;I)、システイン(Cys;C)、メチオニン(Met;M)、プロリン(Pro;P)およびトリプトファン(Trp;W)、ここで各アミノ酸に対する三文字および一文字のコードが与えられる)が挙げられる。それらの天然に存在する形態において、前述のアミノ酸はそれぞれ、L配置で存在し、他に述べられない限り、本明細書中において、そうであることを前提にする。しかしながら、本発明の方法において、これらのアミノ酸のD配置形態もまた用いられ得る。これらのDアミノ酸は、本明細書中において三文字または一文字の小文字のコード(すなわち、ala(a)、gly(g)、leu(l)、gln(q)、thr(t)、ser(s)など)で示される。構成要素はまた、他のα−アミノ酸(3−アリールアラニン(例えば、ナフチルアラニン)、フェニル置換されたフェニルアラニン(4−フルオロ−、4−クロロ、4−ブロモ、および4−メチルフェニルアラニンが挙げられる);3−ヘテロアリールアラニン(例えば、3−ピリジルアラニン、3−チエニルアラニン、3−キノリルアラニン、および3−イミダゾリルアラニン);オルニチン;シトルリン;ホモシトルリン;サルコシン;ホモプロリン;ホモシステイン;置換されたプロリン(例えば、ヒドロキシプロリンおよびフルオロプロリン);デヒドロプロリン;ノルロイシン;O−メチルチロシン;O−メチルセリン;O−メチルトレオニン、ならびに3−シクロヘキシルアラニンが挙げられるが、それらに限定されない)から誘導され得る。その前述のアミノ酸はそれぞれ、D配置またはL配置のいずれかで用いられ得る。
【0062】
構成要素はまた、α−アミノ酸ではないアミノ酸(例えば、α−アゾアミノ酸;β、γ、δ、ε−アミノ酸);ならびにN置換アミノ酸(例えば、N置換グリシン)であり得、ここでN置換基は、例えば、置換もしくは非置換のアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり得る。一つの実施形態において、N置換基は、天然に存在するα−アミノ酸、または天然に存在しないα−アミノ酸由来の側鎖である。
【0063】
構成要素はまた、擬似ペプチド構造(例えば、擬似ジペプチド、擬似トリペプチド、擬似テトラペプチド、または擬似ペンタペプチド)であり得る。そのような擬似ペプチド構成要素は、好ましくは、アミノアシル化合物に(増大するポリ(アミノアシル)基へのこれらの構成要素の付加の化学が、他の構成要素に対して用いられる化学と同じであるか、または類似しているように)由来する。構成要素はまた、ペプチド結合と等配電子性(isosteric)である結合を形成し、ペプチド骨格(backbone)改変(例えば、ψ[CH2S]、ψ[CH2NH]、ψ[CSNH2]、ψ[NHCO]、ψ[COCH2]、およびψ[(E)または(Z)CH=CH])を含む擬似ペプチド機能的部分を形成することのできる分子であり得る。上で用いられる命名において、ψはアミド結合の非存在を示す。そのアミド基を置換する構造は、括弧内に明記される。
【0064】
一つの実施形態において、本発明はコード化オリゴヌクレオチドに作動可能に連結する機能的部分を含むか、またはその機能的部分からなる分子を合成する方法を提供する。その方法は、(1)n個の構成要素を含む元の機能的部分からなるイニシエーター化合物を提供する工程(ここでnは1または1より大きい整数であり、その機能的部分は、少なくとも一つの反応基を含み、そしてその元の機能的部分は、n個の構成要素をコードする元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する);(2)そのイニシエーター化合物を、少なくとも一つの相補的反応基(ここで、その少なくとも一つの相補的反応基は、工程(1)の反応基と相補的である)を含む構成要素と、その反応基およびその相補的反応基の反応に対して適切な条件下で、反応させ共有結合を形成させる工程;(3)元のオリゴヌクレオチドと入来オリゴヌクレオチドとを、元のオリゴヌクレオチドおよび入来オリゴヌクレオチドのライゲーションを触媒する酵素の存在下で、その入来オリゴヌクレオチドおよびその元のオリゴヌクレオチドのライゲーションに対して適切な条件下で、反応させ、それによりコード化オリゴヌクレオチドに作動可能に連結するn+1個の構成要素を含む機能的部分を含むか、またはそれらからなる分子を産生する工程を包含する。工程(3)の機能的部分が、反応基を含む場合、工程1〜3は、一回または一回より多く繰り返され得、それによってサイクル1〜iを形成し(ここでiは2または2より大きい整数である)、サイクルs−1の工程(3)の生成物は(ここで、sはiまたはiより小さい整数である)、サイクルsの工程(1)のイニシエーター化合物となる。各サイクルにおいて、一つの構成要素は、増大する機能的部分に加えられ、新しい構成要素をコードする一つのオリゴヌクレオチド配列は、増大するコード化オリゴヌクレオチドに加えられる。
【0065】
一つの実施形態において、上記元のイニシエーター化合物は、第一の構成要素を、オリゴヌクレオチド(例えば、PCRプライマー配列または元のオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド)あるいはリンカー(そのようなオリゴヌクレオチドがそのリンカーに結合する)と反応させることにより、生成される。図5で示される実施形態において、そのリンカーは、第一の構成要素の結合のための反応基を含み、元のオリゴヌクレオチドに結合する。この実施形態において、構成要素、または多数のアリコートのそれぞれにおける、構成要素の収集物の一つの、そのリンカーの反応基との反応、そして、その元のオリゴヌクレオチドへの、その構成要素をコードするオリゴヌクレオチドの添加は、上で示されるプロセスの一つまたは一つより多い元のイニシエーター化合物を産生する。
【0066】
好ましい実施形態において、個々の構成要素はそれぞれ、所定のサイクルで加えられるオリゴヌクレオチド中のヌクレオチド配列が、同じサイクルで加えられる構成要素を同定するように、異なるオリゴヌクレオチドと関連している。
【0067】
構成要素のカップリングおよび、オリゴヌクレオチドのライゲーションは、出発物質および出発試薬の同様な濃度で一般的に起こる。例えば、マイクロモル濃度からミリモル濃度のオーダーの反応物質の濃度(例えば、約10μM〜約10mM)が、構成要素の効果的なカップリングを有するために好まれる。
【0068】
特定の実施形態において、上記方法は、次の工程(2)、あらゆる未反応の元の機能的部分を捕捉(scavenge)する工程をさらに包含する。特定のサイクルにおいて、あらゆる未反応の元の機能的部分を捕捉することは、そのサイクルの元の機能的部分が、より後のサイクルで加えられる構成要素と反応することを妨げる。そのような反応は、一つまたは一つ以上の構成要素を欠く機能的部分の生成につながり得、それは潜在的に、特定のオリゴヌクレオチド配列に対応するさまざまな機能的部分の構造につながる。そのような捕捉は、あらゆる残存する元の機能的部分を、工程(2)の反応基と反応する化合物と反応させることにより達成され得る。好ましくは、その捕捉化合物は、工程(2)の反応基と迅速に反応し、より後の工程で加えられる構成要素と反応し得るさらなる反応基を含まない。例えば、工程(2)の反応基がアミノ基である化合物の合成において、適切な捕捉化合物は、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば、酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)である。
【0069】
別の実施形態において、本発明は、化合物のライブラリーを産生する方法を提供し、その化合物はそれぞれ、オリゴヌクレオチドに作動可能に連結した二つまたは二つより多い構成要素の残基を含む機能的部分を含む。好ましい実施形態において、各分子中に存在するオリゴヌクレオチドは、その分子中の構成要素を同定するための十分な情報、および必要に応じてその構成要素の付加の順序を提供する。この実施形態において、本発明の方法は、化合物のライブラリーを合成する方法を包含し、ここで、その化合物は機能的部分を含み、これは、その機能的部分の構造を同定するオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する二つまたは二つより多い構成要素を含む。その方法は、(1)m個のイニシエーター化合物を含む溶液を提供する工程、ここでmは1または1より大きい整数であり、そのイニシエーター化合物はn個の構成要素を含む機能的部分からなり(ここで、nは1または1より大きい整数である)、その機能的部分は、n個の構成要素を同定する元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する;(2)工程(1)の溶液を、少なくともr個の画分に分割する工程、ここでrは2または2より大きい整数である;(3)各画分を、r個の構成要素のうちの一つと反応させ、それによって、その元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結するn+1個の構成要素を含む機能的部分からなる化合物を含むr個の画分を産生する工程;(4)工程(3)のr個の各画分を、r個の異なる入来オリゴヌクレオチドのセットのうちの一つと、その入来オリゴヌクレオチドとその元のオリゴヌクレオチドの酵素的ライゲーションに対して適切な条件下で、反応させ、それによりn+1個の構成要素をコードする伸長されたオリゴヌクレオチドに作動可能に連結するn+1個の構成要素を含む機能的部分からなる分子を含むr個の画分を産生する工程を包含する。必要に応じて、その方法は、工程(4)で産生されたr個の画分を再合併し、それによりn+1個の構成要素を含む機能的部分(これは、そのn+1個の構成要素をコードする伸長されたオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する)からなる分子を含む溶液を生成する(5)の工程を包含し得る。工程(1)〜(5)は、一回または一回より多く行われ、サイクル1〜iを生成し得る(ここで、iは2または2より大きい整数である)。サイクルs+1において(ここで、sはi−1またはi−1より小さい整数である)、工程(1)のm個のイニシエーター化合物を含む溶液は、サイクルsの工程(5)の溶液である。同様に、サイクルs+1の工程(1)のイニシエーター化合物は、サイクルsの工程(4)の産物である。
【0070】
好ましくは、工程(2)の溶液は、上記ライブラリーの合成の各サイクルにおいて、r個の画分に分割される。この実施形態において、各画分は、独特な構成要素と反応される。
【0071】
本発明の方法において、上記構成要素および上記入来オリゴヌクレオチドの付加の順序は、重要ではなく、そして分子の合成の工程(2)と工程(3)、ならびにそのライブラリー合成における工程(3)と(4)は、逆にされ得る(すなわち、その入来オリゴヌクレオチドは、新しい構成要素が加えられる前に、元のオリゴヌクレオチドとライゲーションされ得る。特定の実施形態において、これらの工程を同時に行うことは可能であり得る。
【0072】
特定の実施形態において、上記方法は、次の工程(2)、あらゆる未反応の元の機能的部分を捕捉する工程をさらに包含する。特定のサイクルにおいて、あらゆる未反応の元の機能的部分を捕捉することは、あるサイクルの元の機能的部分が、より後のサイクルで加えられる構成要素と反応することを妨げる。そのような反応は、一つまたは一つ以上の構成要素を欠く機能的部分の生成につながり得、それは潜在的に、特定のオリゴヌクレオチド配列に対応するさまざまな機能的部分の構造につながる。そのような捕捉は、あらゆる残存する元の機能的部分を、工程(2)の反応基と反応する化合物と反応させることにより達成され得る。好ましくは、その捕捉化合物は、工程(2)の反応基と迅速に反応し、より後の工程で加えられる構成要素と反応し得るさらなる反応基を含まない。例えば、工程(2)の反応基がアミノ基である化合物の合成において、適切な捕捉化合物は、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば、酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)である。
【0073】
一つの実施形態において、ライブラリーの合成で用いられる構成要素は、候補構成要素が、そのライブラリーの合成のために用いられる条件下で、適切な相補的官能基と反応する能力を評価することにより、その候補構成要素のセットから選択される。次に、そのような条件下で適切に反応性であると示される構成要素が、そのライブラリーへの取り込みのために選択され得る。所定のサイクルの産物は、必要に応じて、精製され得る。そのサイクルが中間的なサイクル(すなわち、最後のサイクルよりも前の任意のサイクル)である場合、これらの産物は中間体であり、そして次のサイクルの開始の前に精製され得る。そのサイクルが最後のサイクルである場合、そのサイクルの産物は最終的な産物であり、その化合物の任意の使用の前に精製され得る。この精製工程は、例えば、未反応の、または過剰な反応物質およびオリゴヌクレオチドのライゲーションのために用いられる酵素を除去し得る。その産物を溶液中に存在する他の種から分離するために適切な任意の方法が用いられ得、その方法としては、液体クロマトグラフィー(例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、および適切な共溶媒(例えば、エタノール)による沈殿が挙げられる。精製のための適切な方法は、その産物の性質および合成のために用いられる溶媒系に依存する。
【0074】
上記反応は、好ましくは、水溶液(例えば、緩衝水溶液)中で行われるが、構成要素、オリゴヌクレオチド、中間体、および最終産物、ならびにオリゴヌクレオチドのライゲーションを触媒するために用いられる酵素の溶解度特性と一致した、混合された水性/有機媒体中でもまた行われ得る。
【0075】
上で記載された方法において、所定のサイクルにより産生された理論的な数の化合物は、そのサイクルで用いられる異なるイニシエーター化合物の数、m、およびそのサイクルで加えられる異なる構成要素の数、rの積である。そのサイクルで産生される異なる化合物の実際の数は、rおよびmの積(r×m)と同じくらい高くなり得るが、特定の構成要素の、特定の他の構成要素との反応性の差異を考慮すると、それより低くなり得る。例えば、特定のイニシエーター化合物への、特定の構成要素の付加の動力学は、その合成のサイクルの時間的尺度で、その反応の産物がほとんどまたは全く生成され得ないようなものであり得る。
【0076】
特定の実施形態において、一般的な構成要素は、サイクル1の前、最後のサイクルの後、または任意の二つのサイクルの間に、加えられる。例えば、機能的部分がポリアミドの場合、一般的なN末端キャップ構成要素が、最後のサイクルの後に加えられ得る。一般的な構成要素はまた、任意の二つのサイクルの間に導入され、例えば、官能基(例えば、アルキン基またはアジド基)を付加し得、これは、ライブラリー合成の後に、機能的部分を改変する(例えば、環化により)ために用いられ得る。
【0077】
用語「作動可能に連結される」は、本明細書中で用いられる場合、二つの化学構造が、受けることが予想される種々の操作を通して連結されたままであるような方法で、一緒になって連結されることを意味する。代表的に、機能的部分およびコード化オリゴヌクレオチドは、適切な結合基(linking group)により共有結合される。その結合基は、オリゴヌクレオチドのための結合部位、および機能的部分のための結合部位を有する、二価の部分である。例えば、機能的部分がポリアミド化合物である場合、そのポリアミド化合物は、そのN末端、そのC末端で、または、側鎖のうちの一つにある官能基により、その結合基と結合され得る。その結合基は、ポリアミド化合物とオリゴヌクレオチドを、少なくとも一個の原子により、そして好ましくは一個より多い原子(例えば、少なくとも二個の原子、少なくとも三個の原子、少なくとも四個の原子、少なくとも五個の原子、または少なくとも六個の原子)により、分離するのに十分である。好ましくは、その結合基は、ポリアミド化合物が、オリゴヌクレオチドには依存しない方法で、標的分子に結合することを可能にするほど十分に柔軟である。
【0078】
一つの実施形態において、上記結合基は、ポリアミド化合物のN末端、およびオリゴヌクレオチドの5’−リン酸基と結合される。例えば、その結合基は、一方の末端に活性化カルボキシル基を、そして他方の末端に活性化エステルを含む結合基前駆体から誘導され得る。その結合基前駆体の、そのN末端窒素原子との反応は、その結合基を、そのポリアミド化合物またはN末端構成要素に結びつけるアミド結合を形成するが、一方、その結合基前駆体の、オリゴヌクレオチドの5’−ヒドロキシル基との反応は、エステル結合(linkage)によるその結合基へのオリゴヌクレオチドの結合をもたらす。その結合基は、例えば、ポリメチレン鎖、(例えば、−(CH2)n−鎖)、またはポリ(エチレングリコール)鎖(例えば、−(CH2CH2O)n鎖)を含み得、ここで、どちらの場合も、nは1〜約20の整数である。好ましくは、nは2〜約12であり、さらに好ましくは約4〜約10である。一つの実施形態において、その結合基は、ヘキサメチレン(−(CH2)6−)基を含む。
【0079】
構成要素が、アミノ酸残基である場合、生じる機能的部分は、ポリアミドである。アミノ酸は、アミド結合の形成のための任意の適切な化学を用いて結合され得る。好ましくはアミノ酸構成要素のカップリングは、オリゴヌクレオチドの酵素的ライゲーションと適合する条件下で(例えば、中性のpHまたは中性に近いpHで、そして水溶液中で)行われる。一つの実施形態において、ポリアミド化合物は、C末端からN末端の方向に合成される。この実施形態において、第一の、またはC末端の構成要素は、そのカルボキシル基にて、適切な結合基を通してオリゴヌクレオチドに結合される。その第一の構成要素は、第二の構成要素と反応され、これは、好ましくは、活性化カルボキシル基および保護されたアミノ基を有する。溶液相アミド結合形成に適切な任意の活性化/保護基ストラテジーが用いられ得る。例えば、適切な活性化カルボキシル種としては、フッ化アシル(米国特許第5,360,928号(その全体は、本明細書中に参考として援用される))、対称無水物(symmetrical anhydride)およびN−ヒドロキシスクシンイミドエステルが挙げられる。アシル基はまた、当該分野で公知であるように、適切な活性化化合物との反応により、原位置で(in situ)活性化され得る。適切な活性化化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、n−プロパン−ホスホン酸無水物(PPA)、塩化N,N−ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)イミド−ホスホリル(BOP−Cl)、ブロモ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBrop)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、Castro試薬(BOP,PyBop)、O−ベンゾトリアゾリル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム塩(HBTU)、ジエチルホスホニルシアニド(DEPCN)、2,5−ジフェニル−2,3−ジヒドロ−3−オキソ−4−ヒドロキシ−チオフェンジオキシド(Steglich試薬;HOTDO)、1,1’−カルボニル−ジイミダゾール(CDI)、および塩化4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム(DMT−MM)が挙げられる。カップリング試薬は、単独で、または添加物(例えば、N.N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)、N−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOBt)、N−ヒドロキシベンゾトリアジン(HOOBt)、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、N−ヒドロキシアザベンゾトリアゾール(HOAt)、アザベンゾトリアゾリル−テトラメチルウロニウム塩(HATU、HAPyU)、または2−ヒドロキシピリジン)と組み合わせて用いられ得る。特定の実施形態において、ライブラリーの合成は、構造的に多様な構成要素のセットの使用を可能にするために、二つまたは二つより多い活性化ストラテジーの使用を必要とする。各構成要素に対して、当業者は、適切な活性化ストラテジーを決定し得る。
【0080】
N末端保護基は、上記プロセスの条件と適合である任意の保護基(例えば、溶液相合成条件に対して適切である保護基)であり得る。好ましい保護基は、フルオレニルメトキシカルボニル(「Fmoc」)基である。アミノアシル構成要素の側鎖上の任意の潜在的に反応性の官能基もまた、適切に保護される必要があり得る。好ましくは、その側鎖保護基は、N末端保護基と直角であり、すなわち、その側鎖保護基は、N末端保護基の除去に必要である条件とは異なる条件下で除去される。適切な側鎖保護基としては、ニトロベラトリル基が挙げられ、それは側鎖カルボキシル基および側鎖アミノ基の双方を保護するために用いられ得る。別の適切な側鎖アミン保護基は、N−ペント−4−エノイル基である。
【0081】
構成要素は、機能的部分への取り込みの後に、例えば、一つまたは一つより多い構成要素上の官能基を含む適切な反応により、改変され得る。構成要素の改変は、最後の構成要素の添加の後に、または機能的部分の合成における任意の中間点(例えば、合成プロセスの任意のサイクルの後)で、起こり得る。本発明の二官能性分子のライブラリーが合成される場合、構成要素の改変は、全体のライブラリー上で、またはそのライブラリーの一部分上で行われ得、それにより、ライブラリーの複雑性の程度を増加させる。適切な構成要素改変反応としては、機能的部分およびコード化オリゴヌクレオチドと適合する条件下で行われ得る反応が挙げられる。そのような反応の例としては、アミノ基またはヒドロキシル基のアシル化およびスルホン化、アミノ基のアルキル化、カルボキシル基のエステル化またはチオエステル化、カルボキシル基のアミド化、アルケンのエポキシド化、ならびに当該分野で公知の他の反応が挙げられる。機能的部分が、アルキンまたはアジド官能基を有する構成要素を含む場合、アジド/アルキン付加環化反応が、構成要素を誘導するために用いられ得る。例えば、アルキンを含む構成要素は、有機アジドと反応され得るか、またはアジドを含む構成要素は、アルケンと反応され得、いずれの場合も、トリアゾールを形成する。構成要素改変反応は、最後の構成要素付加の後で、または合成プロセスの中間点で起こり得、種々の化学構造(炭水化物、金属結合部位、および特定の生体分子または組織型を標的にするための構造が挙げられる)を、機能的部分に付加するために用いられ得る。
【0082】
別の実施形態において、機能的部分は、構成要素の線状の連続物を含み、この線状の連続物は、適切な反応を用いて環化される。例えば、その線状の配列(array)中の少なくとも二つの構成要素が、スルフヒドリル基を含む場合、そのスルフヒドリル基は、酸化されてジスルフィド結合を形成し得、それにより、その線状の配列を環化する。例えば、機能的部分は、二つあるいは二つより多いL−システインもしくはD−システイン、および/またはL−ホモシステインもしくはD−ホモシステイン部分を含むオリゴヌクレオチドであり得る。構成要素はまた、ともに反応して、線状の配列を環化することのできる他の官能基(例えば、カルボキシル基、およびアミノ基またはヒドロキシル基)を含み得る。
【0083】
好ましい実施形態において、線状の配列中の構成要素のうちの一つは、アルキン基を含み、その線状の配列中の別の構成要素は、アジド基を含む。そのアジド基およびアルキン基は、付加環化により反応するように誘導され得、大環状構造をもたらす。図9で説明される例において、機能的部分は、そのC末端にプロパルギルグリシン構成要素を、そしてそのN末端にアジドアセチル基を含むポリペプチドである。適切な条件下でのアルキン基およびアジド基の反応は、環式化合物(大きな環のトリアゾール構造を含む)の形成をもたらす。ライブラリーの場合、一つの実施形態において、そのライブラリーの各メンバーは、アルキンおよびアジドを含む構成要素を含み、この方法で環化され得る。第二の実施形態において、ライブラリーのすべてのメンバーは、アルキンおよびアジドを含む構成要素を含むが、そのライブラリーの一部分のみが環化される。第三の実施形態において、特定の機能的部分のみが、アルキンおよびアジドを含む構成要素を含み、これらの分子のみが環化される。前述の第二の実施形態および第三の実施形態において、付加環化反応の後のライブラリーは、環状および線状の機能的部分の双方を含む。
【0084】
特定の合成工程の間、同じ機能的部分(例えば、トリアジン)がライブラリーのそれぞれの、そして全ての画分に加えられる、本発明のいくつかの実施形態において、その機能的部分をコードするオリゴヌクレオチドタグを付加することは必要ではない可能性がある。
【0085】
オリゴヌクレオチドは化学的方法または酵素的方法によりライゲーションされ得る。一つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、化学的方法によりライゲーションされる。DNAおよびRNAの化学的ライゲーションは、例えば、Shabarova,et al.(1991)Nucleic Acids Research,19,4247−4251、Federova,et al.(1996)Nucleosides and Nucleotides,15,1137−1147、およびCarriero and Damha(2003)Journal of Organic Chemistry,68,8328−8338により教示されるように水溶性のカルボジイミドおよび臭化シアンのような試薬を用いて行われ得る。一つの実施形態において、化学的ライゲーションは、pH7.6緩衝液(1M MES+20mM MgCl2)中の臭化シアン(アセトニトリル中5M)を、5’リン酸化オリゴヌクレオチドと1:10v/vの比で、0℃で1〜5分間、使用することで、行われる。別の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、酵素的方法を用いてライゲーションされる。いずれの実施形態においても、オリゴヌクレオチドは二本鎖であり得、好ましくは約5個〜約14個の塩基のオーバーハング(overhang)を有し得る。いずれの場合も、ライゲーションされる各オリゴヌクレオチドに、約6個の塩基のオーバーラップを有するスプリント(splint)が、反応性5’および3’部分を互いに近接するように位置を定めるために用いられる場合、オリゴヌクレオチドはまた、一本鎖であり得る。
【0086】
一つの実施形態において、元の構成要素は、元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結される。第二の構成要素の元の構成要素へのカップリングの前に、または後に、第二の構成要素を同定する第二のオリゴヌクレオチド配列が、その元のオリゴヌクレオチドにライゲーションされる。元のオリゴヌクレオチド配列および入来オリゴヌクレオチド配列をライゲーションするための方法が、図1および図2に示される。図1において、元のオリゴヌクレオチドは、二本鎖であり、そして、一本の鎖は、第二のオリゴヌクレオチドの一つの末端に対して相補的であるオーバーハング配列を含み、その第二のオリゴヌクレオチドを、その元のオリゴヌクレオチドと接触させる。好ましくは、その元のオリゴヌクレオチドのオーバーハング配列、およびその第二のオリゴヌクレオチドの相補的配列は、双方とも少なくとも約4個の塩基であり;さらに好ましくは、双方の配列は、ともに同じ長さである。その元のオリゴヌクレオチドおよびその第二のオリゴヌクレオチドは、適切な酵素を用いてライゲーションされ得る。その元のオリゴヌクレオチドが、鎖のうちの一本(「トップ鎖(top strand)」)の5’末端にて、第一の構成要素と連結される場合、そのトップ鎖と相補的な鎖(「ボトム鎖(bottom strand)」)は、その5’末端にオーバーハング配列を含み、そして第二のオリゴヌクレオチドは、その5’末端に相補的配列を含む。第二のオリゴヌクレオチドのライゲーションの後に、第二のオリゴヌクレオチド(これは、3’にオーバーハング相補的配列を有し、さらなるオーバーハング配列を含む)の配列と相補的な鎖が加えられ得る。
【0087】
一つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、図2に示されるように伸長される。増大する機能的部分および入来オリゴヌクレオチドに結合したオリゴヌクレオチドは、「スプリント」配列(これは、元のオリゴヌクレオチドの3’末端と相補的な領域、および入来オリゴヌクレオチドの5’末端と相補的な領域)の使用によりライゲーションのために位置付けられる。そのスプリントは、そのオリゴヌクレオチドの5’末端を、入来オリゴの3’末端に近接させ、そしてライゲーションは、酵素的ライゲーションを用いて遂行される。図2で説明される例において、元のオリゴヌクレオチドは、16個の核酸塩基からなり、スプリントはその3’末端での6個の塩基と相補的である。入来オリゴヌクレオチドは、12個の核酸塩基からなり、そしてスプリントはその5’末端での6個の塩基と相補的である。そのスプリントの長さおよびその相補的領域の長さは重要ではない。しかしながら、その相補的領域は、ライゲーションの条件下で、安定な二量体の形成を可能にするほど十分に長くなければならない(しかし、最後の分子において、過剰に大きなコード化ヌクレオチドを生成するほど長くなるべきではない)。好ましくは、相補的領域は、約4塩基〜約12塩基長であり、さらに好ましくは約5塩基〜約10塩基長であり、最も好ましくは約5塩基〜約8塩基長である。
【0088】
本明細書中に示されるライブラリーの合成のための方法に用いられる分割および混合方法は、独特な機能的部分がそれぞれ、その機能的部分を同定する少なくとも一つの独特なオリゴヌクレオチド配列に作動可能に連結することを保証する。2つまたは2つより多い異なるオリゴヌクレオチドタグが、合成サイクルのうちの少なくとも一つで、少なくとも一つの構成要素のために用いられる場合、その構成要素を含む異なる機能的部分はそれぞれ、多数のオリゴヌクレオチドによりコードされる。例えば、2つのオリゴヌクレオチドタグが、4回のサイクルのライブラリーの合成の間、各構成要素のために用いられる場合、独特な機能的部分をそれぞれコードする16(24)種の配列が存在する。独特な機能的部分を、多数の配列で、それぞれコードするための数種の潜在的な利点が存在する。第一に、同じ機能的部分をコードするタグ配列の異なる組み合わせの選択は、これらの分子が独立して選択されたことを保証する。第二に、同じ機能的部分をコードするタグ配列の異なる組み合わせの選択は、その選択が、オリゴヌクレオチドの配列に基づいていた可能性を排除する。第三に、技術的人工物は、配列分析により、特定の機能的部分が高度に富んでいるが、多くの可能性からの一つの配列の組み合わせのみが現れることを示唆される場合、認識され得る。多数のタグ化は、同じ構成要素との(しかし、異なるオリゴヌクレオチドタグとの)独立した分割反応を受けることで成し遂げられ得る。あるいは、多数のタグ化は、単独のタグ化反応において、適切な割合の各タグを、個々の構成要素と混合させることで、成し遂げられ得る。
【0089】
一つの実施形態において、元のオリゴヌクレオチドは、二本鎖であり、そして二本の鎖は共有結合される。二本の鎖を共有結合する一つの方法は、図3に示され、ここで、連結部分(例えば、リンカー)が、二本の鎖と機能的部分を連結するために用いられる。その連結部分は、構成要素と反応するように適合される第一の官能基、オリゴヌクレオチドの3’末端と反応するように適合される第二の官能基、オリゴヌクレオチドの5’末端と反応するように適合される第三の官能基を含む、任意の化学構造であり得る。好ましくは、その第二の官能基および第三の官能基は、二本のオリゴヌクレオチド鎖のハイブリッド形成を可能にする相対配向に、その二本の鎖を位置づけるように配向される。例えば、連結部分(例えば、リンカー)は、一般構造(I):
【0090】
【化30】
を有し得、
ここで、Aは、構成要素と共有結合を形成し得る官能基であり、Bは、オリゴヌクレオチドの5’末端と結合を形成し得る官能基であり、そしてCは、オリゴヌクレオチドの3’末端と結合を形成し得る官能基である。D、F、およびEは、官能基A、官能基C、および官能基Bを、核となる原子または骨格であるSに連結する化学的基である。好ましくは、D、E、およびFは、それぞれ独立して原子の鎖(例えば、アルキレン鎖またはオリゴ(エチレングリコール)鎖)であり、そして、D、E、およびFは、同じであっても、異なっていてもよく、好ましくは、二本のオリゴヌクレオチドのハイブリッド形成および機能的部分の合成を可能にするほど効果的である。一つの実施形態において、三価の連結部分は、構造
【0091】
【化31】
を有するリンカーである。この実施形態において、NH基は、構成要素への結合に対して利用可能であり、一方、末端のリン酸基は、オリゴヌクレオチドへの結合に対して利用可能である。
【0092】
元のオリゴヌクレオチドが二本鎖である実施形態において、入来オリゴヌクレオチドもまた二本鎖である。図3で示されるように、元のオリゴヌクレオチドは、他方の鎖より長い一本の鎖を有し得、これは、オーバーハング配列を提供する。この実施形態において、入来オリゴヌクレオチドは、元のオリゴヌクレオチドのオーバーハング配列に相補的であるオーバーハング配列を含む。その二本の相補的なオーバーハング配列のハイブリッド形成は、入来オリゴヌクレオチドを、元のオリゴヌクレオチドへのライゲーションのための位置に至らせる。このライゲーションは、DNAリガーゼまたはRNAリガーゼを用いて酵素的に行われ得る。入来オリゴヌクレオチドおよび元のオリゴヌクレオチドのオーバーハング配列は、好ましくは同じ長さであり、二個または二個より多いヌクレオチド、好ましくは2個〜約10個のヌクレオチド、さらに好ましくは2個〜約6個のヌクレオチドからなる。一つの好ましい実施形態において、入来オリゴヌクレオチドは、各末端にオーバーハング配列を有する二本鎖オリゴヌクレオチドである。一方の末端でのオーバーハング配列は、元のオリゴヌクレオチドのオーバーハング配列に相補的であり、一方、入来オリゴヌクレオチドと元のオリゴヌクレオチドとのライゲーションの後、他方の末端でのオーバーハング配列は、次のサイクルの元のオリゴヌクレオチドのオーバーハング配列となる。一つの実施形態において、その三本のオーバーハング配列は、すべて2個〜6個のヌクレオチド長であり、入来オリゴヌクレオチドのコード化配列は、3個〜10個のヌクレオチド長、好ましくは3個〜6個のヌクレオチド長である。特定の実施形態において、オーバーハング配列は、すべて2個のヌクレオチド長であり、コード化配列は5個のヌクレオチド長である。
【0093】
図4で説明される実施形態において、入来鎖は、その3’末端に、元のオリゴヌクレオチドの3’末端と相補的である領域を有し、双方の鎖の5’末端でのオーバーハングを残す。その5’末端は、例えば、DNAポリメラーゼ(例えば、ventポリメラーゼ)を用いて満たされ得、二本鎖の伸長されたオリゴヌクレオチドをもたらす。このオリゴヌクレオチドのボトム鎖は、除去され得、そしてさらなる配列が、同じ方法を用いて、トップ鎖の3’末端に加えられ得る。
【0094】
コード化オリゴヌクレオチドタグは、連続した構成要素をそれぞれ同定する、オリゴヌクレオチドの連続した付加の結果として、形成される。本発明の方法の一つの実施形態において、連続したオリゴヌクレオチドタグは、酵素的ライゲーションにより結合されて、コード化オリゴヌクレオチドを生成し得る。
【0095】
オリゴヌクレオチドの酵素で触媒されたライゲーションは、核酸フラグメントをライゲーションする能力を有する任意の酵素を用いて行われ得る。例示的な酵素としては、リガーゼ、ポリメラーゼ、およびトポイソメラーゼが挙げられる。本発明の特定の実施形態において、DNAリガーゼ(EC 6.5.1.1)、DNAポリメラーゼ(EC 2.7.7.7)、RNAポリメラーゼ(EC 2.7.7.6)、またはトポイソメラーゼ(EC 5.99.1.2)が、オリゴヌクレオチドをライゲーションするために用いられる。各ECクラス中に含まれる酵素は、例えば、Bairoch(2000)Nucleic Acids Research 28:304−5に記載されるように、見出され得る。
【0096】
好ましい実施形態において、本発明の方法で用いられ用いられるオリゴヌクレオチドは、オリゴデオキシヌクレオチドであり、そしてそのオリゴヌクレオチドのライゲーションを触媒するために用いられる酵素は、DNAリガーゼである。リガーゼの存在下でライゲーションが起こるために、すなわち、ホスホジエステル結合が二本のオリゴヌクレオチドの間で形成されるために、一方のオリゴヌクレオチドは、遊離5’リン酸基を有さなければならず、そして他方のオリゴヌクレオチドは、遊離3’ヒドロキシル基を有さなければならない。本発明の方法で用いられ得る例示的なDNAリガーゼとしては、T4 DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、T4 RNAリガーゼ、DNAリガーゼ(E.coli)(全ては、例えば、New England Biolabs,MAより入手可能)が挙げられる。
【0097】
当業者は、ライゲーションのために用いられる各酵素は、特異的な条件(例えば、温度、緩衝液の濃度、pH、および時間)下で、最適な活性を有すことを理解する。こららの条件はぞれぞれ、例えば、製造者の指示にしたがって、オリゴヌクレオチドタグの最適なライゲーションを得るために調整され得る。
【0098】
入来オリゴヌクレオチドは、任意の望ましい長さであり得るが、好ましくは少なくとも3個の核塩基長である。さらに好ましくは、入来オリゴヌクレオチドは、4個または4個より多い核塩基長である。一つの実施形態において、入来オリゴヌクレオチドは、3個〜約12個の核塩基長である。本発明のライブラリー中の分子のオリゴヌクレオチドは、当該分野で公知であるような、PCRためのプライマーとして役立ち得る一般的な末端配列を有することが好ましい。そのような一般的な末端配列は、ライブラリー合成の最後のサイクルで加えられる入来オリゴヌクレオチドの末端として取り込まれ得るか、例えば、本明細書中に開示される酵素的ライゲーション方法を用いて、ライブラリー合成の後に加えられ得る。
【0099】
本発明の方法の好ましい実施形態が、図5に示される。そのプロセスは、その5’末端で、アミノ基で終結するリンカーに結合した合成DNA配列を用いて始まる。工程1において、この出発DNA配列は、スプリントDNA鎖、DNAリガーゼ、およびTris緩衝液中のジチオトレイトールの存在下で、入来DNA配列にライゲーションされる。これにより、タグ化DNA配列を生成し、これは、次の工程で直接用いられ得るか、または、次の工程に進む前に、例えば、HPLCまたはエタノール沈殿を用いて、精製され得る。工程2において、タグ化DNAは、保護された活性化アミノ酸と反応され、この例において、Fmocで保護されたフッ化アミノ酸は、保護されたアミノ酸−DNA結合体を生成する。工程3において、保護されたアミノ酸−DNA結合体は脱保護され、例えば、ピペリジンの存在下で、生じた脱保護された結合体は、必要に応じて、例えば、HPLCまたはエタノール沈殿により精製される。脱保護された結合体は、第一の合成サイクルの産物であり、そして第二のサイクルのための出発物質(これは、脱保護された結合体の遊離アミノ基へ、第二のアミノ基を付加する)となる。
【0100】
PCRが、選択された分子のコード化オリゴヌクレオチドを増幅および/または配列決定するために用いられる実施形態において、コード化オリゴヌクレオチドは、例えば、PCRプライマー配列および/または配列決定プライマー(例えば、3’−GACTACCGCGCTCCCTCCG−5’および3’−GACTCGCCCGACCGTTCCG−5’のようなプライマー)を含み得る。PCRプライマー配列は、例えば、合成の最初のサイクルの前の元のオリゴヌクレオチドに含まれ得、そして/または、最初の入来オリゴヌクレオチドとともに含まれ得、そして/または、ライブラリー合成の最後のサイクルの後に、コード化オリゴヌクレオチドにライゲーションされ得、そして/または、最後のサイクルの入来オリゴヌクレオチドに含まれ得る。ライブラリー合成の最後のサイクルの後で、および/またはその最後のサイクルの入来オリゴヌクレオチド中に加えられるPCRプライマー配列は、本明細書中で「キャップ配列(capping sequence)」と言及される。
【0101】
一つの実施形態において、PCRプライマー配列は、コード化オリゴヌクレオチドタグ中に設計(design)される。例えば、PCRプライマー配列は、元のオリゴヌクレオチドタグ中に取り込まれ得、そして/または最後のオリゴヌクレオチドタグ中に取り込まれ得る。一つの実施形態において、同じPCRプライマー配列は、元のオリゴヌクレオチドタグおよび最後のオリゴヌクレオチドタグ中に取り込まれる。別の実施形態において、第一のプライマー配列は、元のオリゴヌクレオチドタグ中に取り込まれ、そして、第二のプライマー配列は、最後のオリゴヌクレオチドタグ中に取り込まれる。あるいは、第二のプライマー配列は、本明細書中に記載されるキャップ配列中に取り込まれ得る。好ましい実施形態において、PCRプライマー配列は、少なくとも、約5、約7、約10、約13、約15、約17、約20、約22、または約25ヌクレオチド長である。
【0102】
本発明のライブラリーにおける使用のために適切なPCRプライマー配列は、当該分野で公知であり;適切なプライマーおよび方法は、例えば、Innis,et al.,eds.,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,San Diego:Academic Press(1990)(その内容は、その全体が本明細書中で参考として援用される)で説明される。本明細書中に記載されたライブラリーの構築における使用のための他の適切なプライマーは、PCT公開 WO 2004/069849、およびWO 2005/003375(それらの全体の内容は、明確に本明細書中で参考として援用される)に記載されたプライマーである。
【0103】
プライマー伸長により合成されるプライマー、プローブ、および核酸フラグメントまたはセグメントに関する、用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書中で用いられる場合、二個または二個より多いデオキシリボヌクレオチド、好ましくは三個より多いデオキシリボヌクレオチドで構成される分子と定義される。
【0104】
用語「プライマー」は、本明細書中で用いられる場合、核酸制限消化物から精製されようと、または合成的に産生されようと、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が、誘発される、すなわちヌクレオチドおよび重合化のための物質(例えば、DNAポリメラーゼ、逆トランスクリプターゼなど)の存在下であり、そして適切な温度およびpHである条件下に置かれた場合、核酸合成の開始点として作用することのできるポリヌクレオチドのことをいう。プライマーは、好ましくは、最大限の効用のため一本鎖であるが、また二本鎖の形態であり得る。二本鎖の場合、プライマーは最初に、伸長産物を調製するために使用される前にその相補的鎖から分離するために、処理される。好ましくは、プライマーは、ポリデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、重合化のための物質の存在下で、伸長産物の合成を始めるために十分に長くなければならない。プライマーの正確な長さは、多くの要因(温度、およびプライマーの供給源が挙げられる)に依存する。
【0105】
本明細書中で用いられるプライマーは、増幅される特異的な配列のそれぞれの異なる鎖に対して「著しく」相補的であるように選択される。このことは、プライマーは、その反応性テンプレート鎖と非無作為的にハイブリッド形成するように、十分に相補的でなければならない。したがって、プライマー配列は、そのテンプレートの正確な配列を反映しても、しなくてもよい。
【0106】
ポリヌクレオチドプライマーは、任意の適切な方法(例えば、Narang et al.,(1979)Meth.Enzymol.,68:90;米国特許第4,356,270号、米国特許第4,458,066号、米国特許第4,416,988号、米国特許第4,293,652号;およびBrown et al.,(1979)Meth.Enzymol.,68:109に記載されるホスホトリエステルまたはホスホジエステル法)を用いて、調製され得る。前述の文書の内容はすべて、本明細書中に参考として援用される。
【0107】
PCRプライマー配列が、入来オリゴヌクレオチドに含まれる場合、これらの入来オリゴヌクレオチドは、コード化配列およびPCRプライマー配列の双方を含むため、他のサイクルで加えられる入来オリゴヌクレオチドよりも十分に長い。
【0108】
一つの実施形態において、キャップ配列は、最後の構成要素および最後の入来オリゴヌクレオチドの付加の後に加えられ、本明細書中で示されるライブラリーの合成は、実質的にすべてのライブラリーのメンバーのオリゴヌクレオチド部分が、PCRプライマー配列を含む配列で終結するように、キャップ配列をコード化配列にライゲーションする工程を包含する。好ましくは、キャップ配列は、最後の合成サイクルの産物である混合された画分へのライゲーションにより付加される。キャップ配列は、ライブラリーの構築において用いられる酵素的プロセスを用いて加えられ得る。
【0109】
一つの実施形態において、同じキャップ配列は、ライブラリーのすべてのメンバーにライゲーションされる。別の実施形態において、多数のキャップ配列が用いられる。この実施形態において、可変塩基を含むオリゴヌクレオチドキャップ配列は、例えば、最後の合成サイクルの後に、ライブラリーのメンバー上へとライゲーションされる。一つの実施形態において、最後の合成サイクルに次いで、画分は混合され、次に再び画分に分割され、異なるキャップ配列を有する各画分が加えられる。あるいは、多数のキャップ配列は、最後のサイクルの後に、混合されたライブラリーに加えられ得る。双方の実施形態において、最後のライブラリーのメンバーは、二つまたは二つより多い異なるキャップ配列を含む同定(identifying)オリゴヌクレオチドに連結した特異的な機能的部分を含む分子を含む。
【0110】
一つの実施形態において、キャッププライマー(capping primer)は、可変(すなわち、変質した)ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を含む。キャッププライマー内のそのような変質した塩基は、構成要素の組み合わせが、PCR重複(同一の配列)の結果であるか、または分子の独立した出現(異なる配列)であるかどうかを決定することで、関心を引くライブラリー分子の同定を可能にする。例えば、そのような変質した塩基は、コード化ライブラリーの生物学的スクリーニングの間同定される、偽陽性の潜在的な数を減少させ得る。
【0111】
一つの実施形態において、変質したキャッププライマーは、次の配列を含むか、または有する:
【0112】
【化32】
ここで、Nはいずれかの4個の塩基であり得、1024(45)種の異なる配列を可能にする。そのプライマーは、ライブラリー上へのライゲーションおよびプライマー伸長の後に、次の配列を有する:
【0113】
【化33】
別の実施形態において、キャッププライマーは、以下の配列を含むか、または有する:
【0114】
【化34】
ここで、BはC、G、またはTのいずれかであり得、19,683(39)種の異なる配列を可能にする。このプライマーにおける変質した領域の設計は、変質した塩基Bに隣接し、そして区切りをつける(punctuate)塩基Aが、3塩基より多いのホモポリマー伸長を妨げ、配列の一直線化を促進するため、DNA配列分析を改善させる。
【0115】
一つの実施形態において、変質したキャップオリゴヌクレオチドは、適切な酵素を用いて、ライブラリーのメンバーにライゲーションされ、そして変質したキャップオリゴヌクレオチドの上部の鎖は、適切な酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)を用いて、後で重合化される。
【0116】
別の実施形態において、PCRプライミング配列は、「ユニバーサル(universal)アダプタ」または「ユニバーサルプライマー」である。本明細書中で用いられる場合、「ユニバーサルアダプタ」または「ユニバーサルプライマー」は、独特なPCRプライミング領域(すなわち、例えば、長さが約5、約7、約10、約13、約15、約17、約20、約22、または約25のヌクレオチド)を含み、独特な配列決定プライミング領域(すなわち、例えば、長さが約5、約7、約10、約13、約15、約17、約20、約22、または約25のヌクレオチド)に隣接するように位置し、そして、4種のデオキシリボヌクレオチド(すなわち、A、C、G、T)のそれぞれのうちの少なくとも一つからなる独特の識別可能な鍵となる配列(または試料同定因子(sample identifier)配列)が、必要に応じて、後に続くオリゴヌクレオチドである。
【0117】
本明細書中で用いられる場合、用語「識別可能な鍵となる配列」または「試料同定因子配列」は、試料由来の分子の集団を独特にタグ化するために用いられ得る配列のことをいう。それぞれが、独特な試料同定因子配列を含む多数の試料は、個々の試料の分析のためのDNA配列決定の後に、混合、配列決定、そして再分類され得る。同じ識別可能な配列が、全体のライブラリーのために用いられ得るか、あるいは異なる識別可能な鍵となる配列が、異なるライブラリーを追跡するために、用いられ得る。一つの実施形態において、識別可能な鍵となる配列は、5’PCRプライマー上、または3’PCRプライマー上、あるいは両方のプライマー上にある。両方のPCRプライマーが、試料同定因子配列を含む場合、独特な試料同定因子配列と混合され得る異なる試料の数は、各プライマー上の試料同定因子配列の数の産物である。したがって、10種の異なる5’試料同定配列プライマーは、10種の異なる3’試料同定因子配列プライマーと合併されて、100種の異なる試料同定因子配列の組み合わせを生成し得る。
【0118】
識別可能な鍵となる配列を含む、独特な5’および3’PCRプライマーの非限定的な例としては、以下:
5’プライマー(可変位置がボールド体かつイタリック体):
【0119】
【化35】
3’SIDプライマー(可変位置がボールド体かつイタリック体):
【0120】
【化36】
が挙げられる。
【0121】
一つの実施形態において、識別可能な鍵となる配列は、長さが約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10ヌクレオチド長である。別の実施形態において、識別可能な鍵となる配列は約1〜4個のヌクレオチドの組み合わせである。なおも別の実施形態において、各ユニバーサルアダプタは、長さが約44ヌクレオチド長である。一つの実施形態において、ユニバーサルアダプタは、T4 DNAリガーゼを用いて、コード化ヌクレオチドの末端上にライゲーションされる。異なるユニバーサルアダプタは、各ライブラリーの調製のために設計され得、したがって、各ライブラリーに対する独特な同定因子を提供する。ユニバーサルアダプタの大きさおよび配列は、当業者により必要であると考えられる場合、改変され得る。
【0122】
上で示されるように、本発明の方法の一部分としてのオリゴヌクレオチドタグは、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)の使用により決定され得る。
【0123】
オリゴヌクレオチドタグは、本明細書中に記載される機能的部分を作る構成要素を同定するポリヌクレオチドで構成される。オリゴヌクレオチドタグの核酸配列は、オリゴヌクレオチドタグを、以下のようにPCR反応に供することで決定される。適切な試料は、PCRプライマー対と接触され、その対のメンバーはそれぞれ、事前選択されたヌクレオチド配列を有し得る。PCRプライマーの対は、コード化オリゴヌクレオチドタグ上のPCRプライマー結合部位へとハイブリッド形成することにより、プライマー伸長反応を開始することができる。PCRプライマー結合部位は、好ましくは、コード化オリゴヌクレオチドタグ中に設計される。例えば、PCRプライマー結合部位は、その元のオリゴヌクレオチドタグに取り込まれ得、そして、第二のPCRプライマー結合部位は、最後のオリゴヌクレオチドタグに取り込まれ得る。あるいは、第二のPCRプライマー結合部位は、本明細書中に記載されるキャップ配列に取り込まれ得る。好ましい実施形態において、PCRプライマー結合部位は、少なくとも、長さが約5、約7、約10、約13、約15、約17、約20、約22、または約25ヌクレオチド長である。
【0124】
PCR反応は、PCRプライマーの対(好ましくは、その既定の量)を、コード化ヌクレオチドタグの核酸(好ましくは、その既定の量)と、PCR緩衝液中で混合することで行われ、PCR反応混合物を形成する。その混合物は、PCR反応産物の形成のために十分な数のサイクル(これは、代表的に既定である)にわたって、熱サイクルされる。十分な量の産物は、DNA配列決定を可能にするために十分な量で単離され得る産物のことである。
【0125】
PCRは代表的に、熱サイクルにより(すなわち、下限が約30℃〜約55℃、上限が約90℃〜約100℃の温度の範囲で、PCR反応混合物の温度を上昇させ、そして下降させることを繰り返すことで)行われる。上昇および下降は連続的であり得るが、好ましくは、ポリヌクレオチドの合成、変性、およびハイブリッド形成に好都合な各温度で、相対的な温度安定性の期間に段階的に作用する。
【0126】
PCR反応は、任意の適切な方法を用いて行われる。一般的にそれは、緩衝水溶液(すなわち、PCR緩衝液)中で、好ましくは7〜9のpHで起こる。好ましくは、モル濃度が過剰なプライマーが望ましい。相当過剰量のモル濃度が、そのプロセスの効用を改善させるために好ましい。
【0127】
PCR緩衝液は、またデオキシリボヌクレオチドトリホスフェート(ポリヌクレオチド合成基質)であるdATP、dCTP、dGTPおよびdTTPならびにポリメラーゼを、すべてプライマー伸張(ポリヌクレオチド合成)反応のために十分な量で含み、代表的に熱安定である。生じた溶液(PCR混合物)を、約1〜約10分間、好ましくは1〜4分間にわたって、約90℃〜100℃まで加熱する。この加熱期間の後、その溶液を54℃(これは、プライマーハイブリッド形成に好ましい)まで冷却させる。その合成反応は、室温から、ある温度(それより高い温度で、ポリメラーゼ(誘発物質)がもはや有効に機能しない)までの範囲の温度で起こり得る。したがって、例えば、DNAポリメラーゼが用いられる場合、温度は一般的に約40℃以下である。熱サイクルは、所望の量のPCR産物が産生されるまで、繰り返される。例示的なPCR緩衝液は次の試薬:50mM KCl;pH8.3で10mM Tris−HCl;1.5mM MgCl.sub.2;0.001%(wt/vol)ゼラチン、200μM dATP;200μM dTTP;200μM dCTP;200μM dGTP;および100マイクロリットルの緩衝液当たり、2.5ユニットのThermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼIを含む。
【0128】
プライマー配列を伸長するための適切な酵素としては、例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、Taq DNAポリメラーゼ、E.coli DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメント、T4 DNAポリメラーゼ、他の入手可能なDNAポリメラーゼ、逆転写酵素、ならびに他の酵素(熱安定性酵素を含む)(これは、適切な方法でヌクレオチドの組み合わせを促進し、核酸鎖それぞれに相補的なプライマー伸長産物を形成する)が挙げられる。一般的に、合成は、各プライマーの3’末端で開始され、合成が終結するまで、テンプレート鎖に沿って5’方向に進行し、異なる長さの分子を産生する。
【0129】
新しく合成されたDNA鎖およびその相補的鎖は、分析プロセスの次の工程で用いられ得る二本鎖の分子を形成する。
【0130】
PCR増幅方法は、米国特許第4,683,192号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、および同第4,965,188号で詳細に、そして少なくともPCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification,H. Erlich,ed.,Stockton Press,New York(1989);およびPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innis et al.,eds.,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に記載されている。すべての前述の文書の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0131】
一旦、コード化オリゴヌクレオチドが増幅されると、そのタグの配列、そして最終的に選択された分子の組成物は、核酸配列分析(これは、ヌクレオチド配列の配列を決定するための周知の手順である)を用いて決定され得る。核酸配列分析は、(a)プローブ鎖とその相補的鎖のハイブリッド形成または変性に基づく物理化学的技術、ならびに(b)ポリメラーゼとの酵素的反応により達せられる。
【0132】
本発明はさらに、化学構造のライブラリーを形成するために、単離された種として、または混合された種のいずれかとして、本発明の方法を用いて産生され得る化合物、およびそのような化合物の収集物に関する。本発明の化合物は、式
【0133】
【化37】
の化合物を含み、
ここで、Xは、一つまたは一つより多い構成要素を含む機能的部分であり、Zは、その3’末端でBに結合したオリゴヌクレオチドであり、そしてYは、その5’末端でCに結合したオリゴヌクレオチドである。Aは、Xと共有結合を形成する官能基であり、Bは、Zの3’末端と結合を形成する官能基であり、そしてCは、Yの5’末端と結合を形成する官能基である。D、F、およびEは、官能基A、官能基C、および官能基Bを、核となる原子または骨格であるSに連結させる化学的基である。好ましくは、D、E、およびFは、それぞれ独立して原子の鎖(例えば、アルキレン鎖またはオリゴ(エチレングリコール)鎖)であり、そして、D、E、およびFは、同じであっても、異なっていてもよく、好ましくは、二本のオリゴヌクレオチドのハイブリッド形成および機能的部分の合成を可能にするほど効果的である。
【0134】
好ましくは、YおよびZは実質的に相補的であり、適切な条件下でワトソン−クリック塩基対および二重鎖形成を可能にするような化合物中に配向される。YおよびZは同じ長さまたは異なる長さである。好ましくは、YおよびZは同じ長さであるか、またはYおよびZのうちの一つは、他方よりも1〜10塩基長い。好ましい実施形態において、YおよびZは長さがそれぞれ10または10より多い塩基長であり、10または10より多い塩基対の相補的領域を有する。さらに好ましくは、YおよびZは、それの全長にわたって相補的である(すなわち、各10塩基対あたり、わずかに一つのミスマッチを有する)。最も好ましくは、それらの全長にわたって相補的である(すなわち、YまたはZ上の任意のオーバーハング領域を除いて、ワトソンクリック塩基対によりハイブリッド形成する鎖は、それらの全長にわたって、ミスマッチが一つもない)。
【0135】
Sは、単独の原子または分子骨格であり得る。例えば、Sは、炭素原子、ホウ素原子、窒素原子、もしくはリン原子、または多原子骨格(例えば、リン酸基、環式基(例えば、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、またはヘテロアリール基)であり得る。一つの実施形態において、リンカーは、構造
【0136】
【化38】
の基であり、
ここで、n、m、およびpはそれぞれ、独立して、約1〜約20、好ましくは2〜8、さらに好ましくは3〜6の整数である。一つの特定の実施形態において、リンカーは以下に示される構造を有する。
【0137】
【化39】
一つの実施形態において、本発明のライブラリーは、構成要素で構成される機能的部分からなる分子を含み、各機能的部分は、コード化オリゴヌクレオチドに作動可能に連結する。そのコード化オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列は、その構成要素が、その機能的部分中に存在することを示し、いくつかの実施形態において、その構成要素の結合性(connectivity)または配置を示す。本発明は、その機能的部分を構築するために用いられる方法論、およびそのオリゴヌクレオチドタグを構築するために用いられる方法論は、同じ反応媒体(好ましくは、水性媒体)中で行われ得、したがって、より前の技術における方法と比較して、ライブラリーを調製する方法を簡素化するという利点を提供する。オリゴヌクレオチドのライゲーション工程および構成要素付加工程が、双方とも水性媒体中で行われ得る特定の実施形態において、各反応は、異なるpH最適条件を有する。これらの実施形態において、構成要素付加反応は、適切な水性緩衝液中で、適切なpHおよび温度で行われ得る。次にその緩衝液は、オリゴヌクレオチドのライゲーションのために適切なpHを提供する水性緩衝液と交換され得る。
【0138】
別の実施形態において、本発明は、式II
【0139】
【化40】
の化合物、およびそのような化合物を含むライブラリーを提供し、
ここで、Xは分子骨格であり、各Yは、独立して辺縁部分であり、そしてnは1〜6の整数である。各Yは、独立して構成要素であり、そしてnは0〜約5の整数である。Lは連結部分であり、Zは構造−At−X(Y)nを同定する一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチドである。その構造X(Y)nは、例えば、表8(以下を参照のこと)で示される骨格構造のうちの一つであり得る。一つの実施形態において、本発明は、式III
【0140】
【化41】
の化合物、およびそのような化合物を含むライブラリーを提供し、
ここで、tは0〜約5、好ましくは0〜3の整数であり、そして各Aは、独立して構成要素である。Lは連結部分であり、そしてZは各AならびにR1、R2、R3およびR4を同定する一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチドである。R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換されたアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、および置換されたアミノから選択される置換基である。一つの実施形態において、各Aはアミノ酸残基である。
【0141】
式IIまたは式IIIの化合物を含むライブラリーは、式IIまたは式IIIの少なくとも約100;約1000;約10,000;約100,000;約1,000,000;約10,000,000種の化合物を含み得る。一つの実施形態において、ライブラリーは、式IIまたは式IIIの少なくとも約100;約1000;約10,000;約100,000;約1,000,000;約10,000,000種の化合物を含むライブラリーを産生するために設計された方法を介して調製される。
【0142】
【化42】
【0143】
【化43】
【0144】
【化44】
【0145】
【化45】
【0146】
【化46】
【0147】
【化47】
【0148】
【化48】
本発明の方法の一つの利点は、それらが莫大な数の化合物を含むライブラリーを調製するために用いられ得ることである。公知の方法(例えば、ポリメラーゼ鎖反応(「PCR」))を用いてコード化オリゴヌクレオチド配列を増幅する能力は、選択された分子が、比較的わずかな複製しか回収されなくても、同定され得ることを意味する。このことは、非常に大きなライブラリーの実用的な使用を可能にし、それらの高い程度の複雑性の結果として、それらは、任意の所定のライブラリーのメンバーの比較的わずかな複製を含むか、または非常に大きな容積の使用を必要とするかのいずれかである。例えば、108種の独特な構造(ここで、各構造は1×1012個の複製を有する)からなるライブラリー(約1ピコモル)は、1μMの効果的な濃度で約100Lの溶液を必要とする。同じライブラリーに対して、各メンバーは、1,000,000個の複製により表される場合、必要とされる容積は、1μMの効果的な濃度で100μLである。
【0149】
好ましい実施形態において、ライブラリーは、各ライブラリーメンバーの約103個〜約1015個の複製を含む。ライブラリーメンバーの間の合成の効率における差異を考慮すると、異なるライブラリーメンバーは、任意の所定のライブラリー中に、異なる数の複製を有する。したがって、ライブラリー中に理論的に存在する各メンバーの複製の数は、同じであり得るが、任意の所定のライブラリーメンバーの複製の実際の数は、任意の他のメンバーの複製の数と独立している。より好ましくは、本発明の化合物のライブラリーは、各ライブラリーのメンバーの、または実質的にすべてのイブラリーのメンバーの少なくとも約105、約106、または約107個の複製を含む。「実質的にすべての」ライブラリーのメンバーは、少なくとも約85%のライブラリーのメンバー、好ましくは少なくとも約90%、そしてさらに好ましくは少なくとも約95%のライブラリーのメンバーを意味する。
【0150】
好ましくは、ライブラリーは、生物学的標的に対する複数の(すなわち二つまたは二つより多い)ラウンドの選択が行われ得る、各メンバーの多くの数の複製を含み、残留分子のオリゴヌクレオチドタグを増幅することを可能にする(したがって、結合分子の機能的部分を同定する)最後のラウンドの選択の後に、十分な量の結合分子を残す。そのような選択プロセスの図式的な表現は、図6で説明される。ここで、1および2は、ライブラリーメンバーを表し、Bは標的分子であり、XはBに作動可能に連結する部分であり、選択媒体からのBの除去を可能にする。この例において、化合物1はBに結合し、一方、化合物2はBに結合しない。この選択プロセスは、ラウンド1に描かれるように、(I)化合物1および2を含むライブラリーを、化合物1のBへの結合に対して適切な条件下で、B−Xと接触させる工程;(II)結合していない化合物2を除去する工程、(III)化合物1をBから分離し、その反応媒体からBXを除去する工程を包含する。ラウンド1の結果は、化合物2と比較して化合物1に富む分子の収集物である。工程I〜IIIを用いる次のラウンドは、化合物2と比較して化合物1のさらなる富化をもたらす。三回のラウンドの選択が図6に示されるが、実際は任意の数のラウンド(例えば、1ラウンド〜10ラウンド)が用いられ、非結合分子と比較して、結合分子の所望の富化を達成し得る。
【0151】
図6に示される実施形態において、いずれかのラウンドの選択の後に、化合物の増幅(さらなる複製の合成)の余地は全くない。そのような増幅は、選択の後に残留している相対的な量の化合物に一致しない化合物の混合物をもたらし得る。この不一致は、特定の化合物は、他の化合物よりも容易に合成され得るという事実によるものであり、したがって、選択後に、それらの存在に比例しない方法で増幅され得る。例えば、化合物2は化合物1よりも容易に合成され、ラウンド2の後に残留している分子の増幅は、化合物1と比較して化合物2の比例しない増幅をもたらし、生じた化合物の混合物は、化合物2と比較して化合物1の富化が(もしあるとしても)非常に軽度である。
【0152】
一つの実施形態において、上記標的は、任意の公知の固定化技術により、固体の支持体上で固定化される。その固体の支持体は、例えば、クロマトグラフィーカラムまたは膜中に含まれる水に不溶のマトリクスであり得る。コード化されたライブラリーは、クロマトグラフィーカラム中に含まれる水に不溶のマトリクスに加えられ得る。次にそのカラムは、非特異的な結合剤を除去するために、洗浄される。次に標的に結合した化合物は、pH,塩濃度、有機溶媒濃度を変えることで、または他の方法(例えば、その標的への公知のリガンドとの競合)により分離され得る。
【0153】
別の実施形態において、上記標的は、溶液中で遊離であり、コード化されたライブラリーでインキュベートされる。その標的(また、本明細書中で「リガンド」と言及される)に結合する化合物は、サイズ分離工程(例えば、ゲル濾過、または限外濾過)により選択的に単離される。一つの実施形態において、コード化された化合物および標的生体分子の混合物は、サイズ排除クロマトグラフィーカラム(ゲル濾過)を通過し、これは、結合していない化合物から任意のリガンド標的複合体を分離する。リガンド標的複合体は、逆相クロマトグラフィーカラムに移され、これは、その標的からそのリガンドを分離する。次にその分離されたリガンドは、PCR増幅およびコード化オリゴヌクレオチドの配列分析により分析される。この手法は、その標的の固定化が活性の損失をもたらし得る場合、特に都合がよい。
【0154】
本発明の特定の実施形態において、上記選択方法は、配列決定の前に標的に結合する化合物のライブラリーの少なくとも一つのメンバーのコード化オリゴヌクレオチドを増幅する工程を包含し得る。
【0155】
一つの実施形態において、コード化オリゴヌクレオチドを含む化合物のライブラリーは、選択されたライブラリー混合物中に存在するDNA分子の集団分布における任意の潜在的なゆがみ(skew)を最小化するために、配列分析の前に増幅される。例えば、少量のライブラリーのみが、選択工程後に回収され、配列分析の前にPCRを用いて増幅される。PCRは、選択されたライブラリー混合物中に存在するDNA分子の集団分布におけるゆがみを生成する潜在力を有している。このことは、入力(input)分子数が少なく、その入力分子が、不十分なPCRテンプレートである場合、特に問題がある。初期の段階で産生されるPCR産物は、共有結合の二重鎖ライブラリーよりも効果的なテンプレートであり、したがって最後の増幅された集団におけるこれらの分子の頻度は、元の入力テンプレートにおける頻度よりも、ずっと高くなり得る。
【0156】
したがって、この潜在的なゆがみを最小化するために、本発明の一つの実施形態において、個々のライブラリーのメンバーに対応する一本鎖オリゴヌクレオチドの集団は、反応における一つのプライマーを用いて産生され、続いて、二つのプライマーを用いてPCRで増幅される。そうすることで、PCRを用いる指数関数的な増加の前に、一本鎖プライマー伸長産物の線形の蓄積が生じ、そして蓄積されたプライマー伸長産物中の分子の多様性および分布は、元の入力テンプレート中に存在する分子の多様性および分布を、より正確に反映している。なぜなら、増幅の指数関数相は、存在する元の分子の多様性の多くが、プライマー伸長反応中に産生される分子の集団中に表される後にのみ起こるからである。
【0157】
一旦、一本鎖が上に記載されたプロセスにより同定されると、種々のレベルの分析が適応され、構造活性関係の情報を生成し得、そしてリガンドの親和性、特異性、および生物活性のさらなる最適化を導き得る。同じ骨格から誘導されるリガンドに対して、三次元分子モデリングが用いられ、そのリガンドに共通の重要な構造の特徴を同定し得、それにより、標的の生体分子上の共通の部位でおそらく結合する小分子リガンドのファミリーを産生し得る。
【0158】
種々のスクリーニング手法が、一つの標的に高い親和性を有するが、別の密接に関連した標的に対して弱い親和性を有するリガンドを得るために、用いられ得る。一つのスクリーニングストラテジーは、同様の実験における双方の生体分子に対するリガンドを同定し、次に相互参照比較により、共通のリガンドを連続的に除去することである。この方法において、各生体分子に対するリガンドは、上に開示されるように別々に同定され得る。この方法は、固定化された標的生体分子および溶液中で遊離の標的生体分子の双方と適合である。
【0159】
固定化された標的生体分子に対して、別のストラテジーは、非標的生体分子に結合するすべてのリガンドを、ライブラリーから除去する事前選択工程を加えることである。例えば、第一の生体分子は、上で記載されるように、コード化ライブラリーと接触され得る。次に、その第一の生体分子に結合しない化合物は、形成する任意の第一の生体分子−リガンド複合体から分離される。第二の生体分子に結合する化合物は、上に記載されるように同定され得、第一の生体分子よりも第二の生体分子に対して、強い親和性を有する。
【0160】
上で開示される方法により同定される生体分子の未知の機能に対するリガンドは、その生体分子の生物学的機能を決定するために用いられ得る。このことは、新規の遺伝子配列が引き続き同定されるが、これらの配列によりコードされるタンパク質の機能、ならびに新規の薬物の発見および開発のための標的としての、これらのタンパク質の有効性は、決定することが難しく、ゲノムの情報を疾患の処置に適用するためのおそらく最も重要な障害を表すので、都合がよい。本発明で記載されたプロセスを通して得られた標的特異的リガンドは、治療的介入のための標的タンパク質の機能および標的タンパク質の双方の機能を理解するために、全細胞生物学的アッセイで、または適切な動物モデルで用いられ得る。この手法はまた、その標的は小分子薬物発見に特異的にかなうことを確認し得る。
【0161】
一つの実施形態において、本発明のライブラリー中の一つまたは一つより多い化合物は、特定の生体分子のためのリガンドとして同定される。次に、これらの化合物は、その生体分子へ結合する能力に対するインビトロアッセイで評価され得る。好ましくは、結合分子の機能的部分は、オリゴヌクレオチドタグなしで合成され、これらの機能的部分は、その生体分子への結合に対する能力に対して評価される。
【0162】
生体分子への機能的部分の結合の、生体分子の機能への効果は、インビトロ無細胞または細胞ベースのアッセイを用いて評価され得る。公知の機能を有する生体分子に対して、アッセイは、例えば、その活性の直接的な測定(例えば、酵素活性)、あるいは間接的な方法(例えば、その生体分子により影響される細胞機能)により、リガンドの存在下、そして非存在下でのその生体分子の活性の比較を包含し得る。その生体分子が未知である場合、その生体分子を発現する細胞は、リガンドと接触され得、そのリガンドの、その細胞の生存能力、機能、表現型、および/または遺伝子発現への影響が測定される。インビトロアッセイは、例えば、細胞死アッセイ、細胞増殖アッセイ、またはウイルス複製アッセイであり得る。例えば、その生体分子がウイルスで表現されるタンパク質である場合、そのウイルスに感染した細胞は、そのタンパク質に対するリガンドと接触され得る。次に、そのタンパク質へのリガンドの結合の、ウイルス生存能力への影響(affect)が評価され得る。
【0163】
本発明の方法により同定されるリガンドは、インビトロモデルで、またはヒトで評価され得る。例えば、動物または生体分子を産生する生体内で評価され得る。その動物または生体の健康状態の任意の生じた変化(例えば、疾患の進行)が決定され得る。
【0164】
未知の機能の生体分子(例えば、タンパク質、または核酸分子)に対して、生体分子に結合するリガンドの、生体分子を産生する細胞または臓器上への影響は、その生体分子の生物学的機能に関する情報を提供し得る。例えば、特定の細胞プロセスが、リガンドの存在下で阻害されるという観察は、そのプロセスが、少なくとも一部分は、その生体分子の機能に依存することを示す。
【0165】
本発明の方法を用いて同定されるリガンドはまた、それらが結合する生体分子に対する親和性試薬として用いられ得る。一つの実施形態において、そのようなリガンドは、例えば、一つまたは一つより多いそのようなリガンドが結合する固相を用いる、その生体分子を含む溶液のクロマトグラフィーにより、その生体分子の親和性精製に影響を与えるために用いられる。
【0166】
本発明は、次の実施例によりさらに説明されるが、それは制限するものと解釈されるべきではない。本出願にわたって引用されるすべての参考文献、特許、および公開された特許出願、ならびに図面および配列表は、本明細書中に参考として援用される。
【実施例】
【0167】
(実施例1:105のオーダーのメンバーでのライブラリーの合成および説明)
105のオーダーの異なるメンバーを含むライブラリーの合成を、以下の試薬を用いて成し遂げた:
化合物1:
【0168】
【化49】
デオキシリボヌクレオチドに対する一文字コード
A=アデノシン
C=シトシン
G=グアノシン
T=チミジン。
【0169】
構成要素前駆体:
【0170】
【化50】
【0171】
【化51】
【0172】
【化52】
【0173】
【化53】
【0174】
【化54】
【0175】
【化55】
1× リガーゼ緩衝液:50mM Tris、pH7.5;10mM ジチオトレイトール;10mM MgCl2;2.5mM ATP;50mM NaCl
10× リガーゼ緩衝液:500mM Tris、pH7.5;100mMジチオトレイトール;100mM MgCl2;25mM ATP;500mM NaCl。
【0176】
(サイクル1)
12個の各PCRチューブに、50μLの水中の化合物1の1mM溶液;75μLのタグ1.1〜1.12のうちの一つの0.80mM溶液;10×リガーゼ緩衝液、および10μL脱イオン水を加えた。そのチューブを、95℃まで1分間にわたって加熱し、次に10分間にわたって16℃まで冷却した。各チューブに50μl 1×リガーゼ緩衝液中の5000ユニットのT4 DNAリガーゼ(2,000,000ユニット/mL溶液の2.5μL(New England Biolabs,カタログ番号.M0202))を加え、生じた溶液を16時間にわたって16℃でインキュベートした。
【0177】
ライゲーションの後、試料を1.5mlのEppendorfチューブに移し、20μLの5M NaCl水溶液および500μLの冷(−20℃)エタノールで処理し、1時間にわたって20℃に保持した。遠心分離の後、上澄みを除去し、ペレットを−20℃で70%エタノール水溶液で洗浄した。次にペレットはそれぞれ、150μLの150mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.4)に溶解させた。
【0178】
各構成要素前駆体BB1〜BB12の一つ、N,N−ジイソプロピルエタノールアミンおよびO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートを、それぞれ0.25Mの濃度で含むストック溶液をDMFで調製し、室温で20分間にわたって撹拌した。その構成要素前駆体溶液を、上に記載された各ペレット溶液に加え、リンカーと比較して10倍の過剰量の構成要素をもたらした。生じた溶液を撹拌した。さらに10当量の構成要素前駆体を20分後に反応混合物に加え、40分後に別の10当量を加えた。反応混合物中のDMFの最終濃度は22%であった。次に反応溶液を一晩中4℃で撹拌した。反応の進行を、50mMの酢酸テトラエチルアンモニウム水溶液(pH=7.5)およびアセトニトリル、ならびに14分間にわたる2〜46%アセトニトリルの勾配を用いて、RP−HPLCによりモニターした。反応を、約95%の出発物質(リンカー)がアシル化されると、中止した。アシル化の後、反応混合物を混合し、凍結乾燥して、乾燥させた。次に、凍結乾燥した物質をHPLCにより精製し、そしてライブラリー(アシル化された生成物)に対応する画分を混合し、そして凍結乾燥した。
【0179】
上記ライブラリーを、2.5mlの0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH=8.2)に溶解させ、0.1mlのピペリジン(4% v/v)をそれに加えた。ピペリジンの添加は、混合で溶解しない混濁をもたらす。反応混合物を室温で50分間にわたって撹拌し、次にその混濁溶液を遠心分離し(14000rpm)、上澄みを200μlのピペットを用いて除去し、ペレットを0.1mlの水に再懸濁した。洗浄水を上澄みと合わせ、ペレットを捨てた。脱保護されたライブラリーを、その反応におけるエタノールの最終濃度が70%v/vとなるような、過剰量の冷氷エタノールの添加により溶液から沈殿させた。エタノール水溶液の混合物の遠心分離により、ライブラリーを含む白色のペレットを得た。そのペレットを冷70%エタノール水溶液で一度洗浄した。溶媒の除去後、ペレットを空気中で乾燥させ(約5分)、極微量のエタノールを除去し、次にサイクル2で用いた。ラウンド1で用いたタグおよび対応する構成要素前駆体を以下の表1に示す。
【0180】
【化56】
(サイクル2〜5)
これらの各サイクルに対して、前のサイクルから生じた合わせた溶液を、それぞれ50μlの12個の等しいアリコートに分割し、PCRチューブ内に置いた。各チューブに、異なるタグを含む溶液を加え、そしてライゲーション、精製、およびアシル化をサイクル1に関して記載される通りに(サイクル3〜5に対しては、サイクル1に関して記載されるHPLC精製工程を省略したことを除き)行った。サイクル2〜5に関するタグおよび構成要素の対応を表2に示す。
【0181】
サイクル5の産物を、タグのライゲーションのために上に記載された方法を用いて、以下に示す近接(closing)プライマーでライゲーションした。
【0182】
【化57】
【0183】
【化58】
結果:
上で記述した合成手順は、125(約249,000)種の異なる構造を含むライブラリーを産生する能力を有する。そのライブラリーの合成を、各サイクルの生成物のゲル電気泳動によりモニターした。5サイクルのぞれぞれ、および近接プライマーのライゲーション後の最後のライブラリーの結果を図7で説明する。「ヘッドピース(head piece)」と標識される化合物は、化合物1である。その図は、各サイクルが期待された分子量の増加をもたらし、各サイクルの産物が、分子量に関して実質的に同質であることを示している。
【0184】
(実施例2:108のオーダーのメンバーでのライブラリーの合成および説明)
108のオーダーの異なるメンバーを含むライブラリーの合成を、以下の試薬を用いて成し遂げた:
化合物2:
【0185】
【化59】
デオキシリボヌクレオチドに対する一文字コード
A=アデノシン
C=シトシン
G=グアノシン
T=チミジン
構成要素前駆体:
【0186】
【化60】
【0187】
【化61】
【0188】
【化62】
【0189】
【化63】
【0190】
【化64】
【0191】
【化65】
【0192】
【化66】
【0193】
【化67】
【0194】
【化68】
【0195】
【化69】
【0196】
【化70】
【0197】
【化71】
【0198】
【化72】
【0199】
【化73】
【0200】
【化74】
【0201】
【化75】
【0202】
【化76】
【0203】
【化77】
【0204】
【化78】
【0205】
【化79】
【0206】
【化80】
【0207】
【化81】
【0208】
【化82】
【0209】
【化83】
【0210】
【化84】
【0211】
【化85】
1× リガーゼ緩衝液:50mM Tris、pH7.5;10mM ジチオトレイトール;10mM MgCl2;2mM ATP;50mM NaCl
10× リガーゼ緩衝液:500mM Tris、pH7.5;100mM ジチオトレイトール;100mM MgCl2;20mMATP;500mM NaCl。
【0212】
(水溶性スペーサーの化合物2への結合)
4℃まで冷やしたホウ酸ナトリウム(150mM、pH9.4)中の化合物2の溶液(60mL、1mM)に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中の、40当量のN−Fmoc−15−アミノ−4,7,10,13−テトラオキサオクタデカン酸(S−Ado)(16mL、0.15M)、続いて40当量の、水中の塩化4−(4,6−ジメトキシ[1.3.5]トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム水和物(DMTMM)(9.6mL、0.25M)を加えた。混合物を2時間にわたって4℃で穏やかに振とうし、その後さらに40当量のS−AdoおよびDMTMMを加え、そして16時間にわたって4℃でさらに振とうした。
【0213】
アシル化の後、0.1×容量の5MのNaCl水溶液および2.5×容量の冷(−20℃)エタノールを加え、混合物を−20℃で少なくとも1時間にわたって放置した。次に混合物を4℃の遠心機中で、15分間にわたって14,000rpmで遠心分離し、白色のペレットを得た。それを、冷EtOHで洗浄し、次に室温で30分間にわたって凍結乾燥機で乾燥させた。固形物を40mLの水に溶解させ、Waters Xterra RP18カラムを用いる逆相HPLCにより精製した。二元移動相勾配(binary mobile phase gradient)プロフィルを用いて、50mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝水溶液(pH7.5)および99%アセトニトリル/1%水の溶液を使用し、生成物を溶出した。精製した物質を凍結乾燥により濃縮し、生じた残渣を5mLの水に溶解させた。0.1×容積のピペリジンを溶液に加え、混合物を室温で45分間にわたって穏やかに振とうした。次に、生成物を上に記載したようにエタノール沈殿により精製し、遠心分離により単離した。生じたペレットを冷EtOHで2回洗浄し、凍結乾燥により乾燥させ、精製化合物3を得た。
【0214】
(サイクル1)
96ウェルプレートの各ウェルに、12.5μLの、化合物3の4mM水溶液;100μLの、表3に示されるオリゴヌクレオチドタグ1.1〜1.96のうちの一つの1mM溶液(化合物3とタグのモル比は1:2であった)に加えた。プレートを1分間にわたって95℃まで加熱し、次に10分間にわたって16℃まで冷却した。各ウェルに10μLの10×リガーゼ緩衝液、30ユニットのT4 DNAリガーゼ(30ユニット/μL溶液の1μL(FermentasLife Science、カタログ番号EL0013))。76.5μLの水を加え、生じた溶液を16℃で16時間にわたってインキュベートした。
【0215】
ライゲーション反応の後、20μLの5M NaCl水溶液、続いて500μLの冷(−20℃)エタノールを各ウェルに直接加え、−20℃で1時間にわたって保持した。プレートをBeckman Microplus Carriersを用いて、Beckman Coulter Allegra 6R遠心分離機中で、3200gで1時間にわたって遠心分離した。上澄みを、プレートを逆さまにすることで注意深く除去し、ペレットを、−20℃で70%の冷エタノール水溶液で洗浄した。次に各ペレットを、ホウ酸ナトリウム緩衝液(50μL、150mM、pH9.4)に、1mMの濃度まで溶解させ、4℃まで冷やした。
【0216】
各溶液に、40当量の、DMF中の96個の構成要素前駆体のうちの一つ(13μL、0.15M)、続いて40当量の、水中のDMT−MM(8μL、0.25M)を加え、そして溶液を4℃で緩やかに振とうした。2時間後に、さらに40当量の各構成要素前駆体のうちの一つおよびDMTMMを加え、溶液を16時間にわたって4℃で緩やかに振とうした。アシル化の後、10当量の、DMF中の酢酸−N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル(2μL、0.25M)を各溶液に加え、緩やかに10分間にわたって振とうした。
【0217】
アシル化の後、96種の反応混合物を混合し、0.1容量の5M NaCl水溶液および2.5容量の無水冷エタノールを加え、溶液を−20℃で少なくとも1時間にわたって放置した。次に混合物を遠心分離した。遠心分離の後、上澄みを可能な限りマイクロピペットで除去し、ペレットを冷エタノールで洗浄し、再び遠心分離した。上澄みを200マμLピペットで除去した。冷70%エタノールを上記チューブに加え、そして生じた混合物を4℃で5分間にわたって遠心分離した。
【0218】
上澄みを除去し、残留エタノールを室温で10分間にわたって凍結乾燥により除去した。次にペレットを2mLの水に溶解させ、Waters Xterra RP18カラムを用いる逆相HPLCにより精製した。二元移動相勾配プロフィルを用いて、50mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝水溶液(pH7.5)および99%アセトニトリル/1%水の溶液を使用し、ライブラリーを溶出した。ライブラリーを含む画分を収集し、混合し、そして凍結乾燥した。生じた残渣を2.5mLの水に溶解させ、250μLのピペリジンを加えた。溶液を室温で45分間にわたって穏やかに振とうし、前述の通りにエタノールで沈殿させた。生じたペレットを凍結乾燥により乾燥させ、ホウ酸ナトリウム緩衝水溶液(4.8mL、150mM、pH9.4)に、1mMの濃度まで溶解させた。
【0219】
溶液を4℃まで冷やし、40当量の、DMF(1.2mL、0.15M)中のN−Fmoc−プロパルギルグリシン(1.2mL、0.15M)および水中のDMT−MM(7.7mL、0.25M)をそれぞれ加えた。混合物を2時間にわたって4℃で緩やかに振とうし、その後、さらに40当量のN−Fmoc−プロパルギルグリシンおよび40当量のDMT−MMをそれぞれ加え、溶液をさらに16時間にわたって振とうした。その後、混合物をEtOH沈殿および上で記載した逆相HPLCにより精製し、N−Fmoc基を、前述の通りにピペリジンを用いる処理により除去した。EtOH沈殿による最終精製後、生じたペレットを凍結乾燥により乾燥させ、合成の次のサイクルに移した。
【0220】
サイクル2〜4
これらのサイクルのそれぞれに対して、前のサイクルからの乾燥させたペレットを水に溶解させ、そしてライブラリーの濃度を、ライブラリーのDNA成分の消衰係数に基づいて、分光測定法により測定した。ここで、化合物2の元の消衰係数は、131,500L/(モル.cm)である。ライブラリーの濃度は、次のライゲーション反応における最終濃度が0.25mMとなるように水で調整した。ライブラリーを96ウェルプレート中の96個の等量のアリコートに分割した。各ウェルに、異なるタグを含む溶液を加え(そのライブラリーとタグのモル比は1:2であった)、ライゲーションをサイクル1に関して記述した通りに行った。サイクル2、サイクル3、およびサイクル4で用いたオリゴヌクレオチドタグは、それぞれ表4、表5、および表6に示される。サイクル1〜4のそれぞれに対するタグと構成要素前駆体との間の対応を、表7に提供する。ライブラリーは、サイクル1に関して上で記述した通りに、さらなるエタノールの添加により沈殿させ、ホウ酸ナトリウム緩衝液(150mM、pH9.4)に、1mMの濃度まで溶解させた。次にアシル化および精製を、サイクル1に関して記述したように(サイクル3の間、HPLC精製は省略した点を除いて)行った。
【0221】
サイクル4の生成物を、タグのライゲーションに関して上に記述した方法を用いて、以下に示される近接プライマーでライゲーションした。
【0222】
【化86】
結果:
上で記述した合成手順は、964(約108)種の異なる構造を含むライブラリーを産生する能力を有する。そのライブラリーの合成を、各サイクルの生成物のゲル電気泳動およびLC/MSによりモニターした。完成後、ライブラリーを種々の技術を用いて分析した。図13aは、近接プライマーのライゲーションの前から、サイクル4の後のライブラリーのクロマトグラフであり;図13bは、同じ合成段階での、ライブラリーのマススペクトルである。平均分子量を、負イオンLC/MS分析により決定した。イオンシグナルをProMassソフトウェアを用いて解析した。この結果は、予測されたライブラリーの平均分子量と一致する。
【0223】
ライブラリーのDNA成分を、アガロースゲル電気泳動により分析し、これによりライブラリー物質の大多数は、正しいサイズのライゲーションされた生成物に対応することが示された。ライブラリーのサンプリングから得られるPCR生成物の分子クローンのDNA配列分析は、DNAのライゲーションが高い忠実度で、そして完成に近い程度まで起まで起こったことを示す。
【0224】
(ライブラリーの環化)
サイクル4の完了時に、ライブラリーの一部を、通常のアシル化条件下で、アジド酢酸を用いてN末端をキャップした。EtOH沈殿による精製後の生成物を、1mMの濃度まで、リン酸ナトリウム緩衝液(150mM、pH8)中に溶解させ、4当量の水中のCuSO4(200mM)、4当量の水中のアスコルビン酸(200mM)をそれぞれ、そしてDMF中の溶液(200mM)として以下に示される触媒量の化合物を加えた。反応混合物を2時間にわたって室温で緩やかに振とうした。
【0225】
【化87】
環化の程度をアッセイするため、ライブラリー環化反応からの5μLのアリコートを取り出し、実施例4で記述する通りに調製した蛍光標識されたアジドまたはアルケン(100mM DMFストックの1μL)で処理した。16時間後、アルキン標識およびアジド標識のいずれも、500nmでのHPLC分析により、ライブラリー中に取り込まれなかった。この結果により、ライブラリーはもはや、付加環化可能なアジド基またはアルキン基を含まず、したがってライブラリーは環化または分子間反応のいずれかによりそれら自身と反応したにちがいないことが示された。環化されたライブラリーは、前述の通りに逆相HPLCにより精製した。環化されていないライブラリーを用いる対照実験は、上に述べた蛍光タグの完全な取り込みを示した。
【0226】
(実施例4:環化アッセイに対する蛍光タグの調製)
別々のチューブで、プロパルギルグリシンまたは2−アミノ−3−フェニルプロピルアジド(それぞれ8μmol)を、pH9.4のホウ酸緩衝液(250μL)中のFAM−OSu(Molecular Probes Inc.)(1.2当量)と合わせた。反応を3時間にわたって室温で続け、次に一晩中凍結乾燥した。HPLCによる精製は、定量可能な収率で所望の蛍光アルキンおよびアジドをもたらした。
【0227】
【化88】
(実施例5:アジド/アルキン付加環化を用いる個々の化合物の環化)
アジドアセチル−Gly−Pro−Phe−Pra−NH2の調製
0.3mmolのRink−アミド樹脂を用いて、示された配列を標準固相合成技術を用いて、Fmocで保護されたアミノ酸および活性化物質としてのHATU(Pra=C−プロパルギルグリシン)を用いて、合成した。アジド酢酸を用いて、テトラペプチドをキャップした。そのペプチドを、20% TFA/DCMを用いて、4時間にわたってその樹脂から切断した。RP HPLCによる精製により、白色の固形物(75mg、51%)としての生成物を得た。1H NMR(DMSO−d6,400MHz):8.4−7.8(m,3H)、7.4−7.1(m,7H)、4.6−4.4(m,1H)、4.4−4.2(m,2H)、4.0−3.9(m,2H)、3.74(dd,1H,J=6Hz,17Hz)、3.5−3.3(m,2H)、3.07(dt,1H,J=5Hz,14Hz)、2.92(dd,1H,J=5Hz,16Hz)、2.86(t,1H,J=2Hz)、2.85−2.75(m,1H)、2.6−2.4(m,2H)、2.2−1.6(m,4H)。IR(mull)2900,2100,1450,1300cm−1。ESIMS 497.4([M+H],100%)、993.4([2M+H],50%)。イオン源フラグメンテーションを用いるESIMS:519.3([M+Na],100%)、491.3(100%)、480.1([M−NH2],90%)、452.2([M−NH2−CO],20%)、424.2(20%)、385.1([M−Pra],50%)、357.1([M−Pra−CO],40%),238.0([M−Pra−Phe],100%)。
【0228】
アジドアセチル−Gly−Pro−Phe−Pra−NH2の環化
【0229】
【化89】
アジドアセチルペプチド(31mg、0.62mmol)をMeCN(30mL)に溶解させた。ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、1mL)およびCu(MeCN)4PF6(1mg)を加えた。1.5時間にわたって撹拌した後、溶液をエバポレートし、生じた残渣を20%MeCN/H2Oに採った。不溶の塩を除去するための遠心分離の後、溶液を分取用逆相HPLCに供した。所望の環式ペプチドを、白色の固形物(10mg、32%)として単離した。1H NMR(DMSO−d6,400MHz):8.28(t,1H,J=5Hz)、7.77(s,1H)、7.2−6.9(m,9H)、4.98(m,2H)、4.48(m,1H)、4.28(m,1H)、4.1−3.9(m,2H)、3.63(dd,1H,J=5Hz,16Hz)、3.33(m,2H),3.0(m,3H),2.48(dd,1H,J=11Hz,14Hz)、1.75(m,1H0,1.55(m,1H)、1.32(m,1H)、1.05(m,1H)。IR(mull)2900,1475,1400cm−1。ESIMS 497.2([M+H],100%)、993.2([2M+H],30%)、1015.2([2M+Na],15%)。イオン源フラグメンテーションを用いるESIMS:535.2(70%)、519.3([M+Na],100%),497.2([M+H],80%),480.1([M−NH2],30%),452.2([M−NH2−CO],40%),208.1(60%)。
【0230】
アジドアセチル−Gly−Pro−Phe−Pra−Gly−OHの調製:
0.3mmolのグリシン−Wang樹脂を用いて、示された配列を、Fmocで保護されたアミノ酸および活性化物質としてのHATUを用いて合成した。アジド酢酸を最後のカップリング工程で用いて、ペンタペプチドをキャップした。そのペプチドの切断を、50% TFA/DCMを用いて、2時間に達成した。RP HPLCによる精製により、白色の固形物(83mg、50%)としてのペプチドを得た。1H NMR(DMSO−d6,400MHz):8.4−7.9(m,4H)、7.2(m,5H)、4.7−4.2(m,3H)、4.0−3.7(m,4H)、3.5−3.3(m,2H)、3.1(m,1H)、2.91(dd,1H,J=4Hz,16Hz)、2.84(t,1H,J=2.5Hz)、2.78(m,1H)、2.6−2.4(m,2H)、2.2−1.6(m,4H)。IR(mull)2900,2100,1450,1350cm−1。ESIMS 555.3([M+H],100%)。イオン源フラグメンテーションを用いるESIMS:577.1([M+Na],90%)、555.3([M+H],80%)、480.1([M−Gly],100%)、385.1([M−Gly−Pra],70%)、357.1([M−Gly−Pra−CO],40%)、238.0([M−Gly−Pra−Phe],80%)。
【0231】
アジドアセチル−Gly−Pro−Phe−Pra−Gly−OHの環化:
ペプチド(32mg、0.058mmol)をMeCN(60mL)に溶解させた。ジイソプロピルエチルアミン(1mL)およびCu(MeCN)4PF6(1mg)を加え、溶液を2時間にわたって撹拌した。溶媒をエバポレートし、粗生成物をRP HPLCに供し、二量体および三量体を除去した。環式の単量体を無色のガラス(6mg、20%)として単離した。ESIMS 555.6([M+H],100%)、1109.3([2M+H],20%)、1131.2([2M+Na],15%)。イオン源フラグメンテーションを用いるESIMS:555.3([M+H],100%)、480.4([M−Gly],30%)、452.2([M−Gly−CO],25%)、424.5([M−Gly−2CO],10%,環式構造でのみ可能)。
【0232】
線状のペプチドのDNAへの結合体化:
化合物2(45nmol)を45μLのホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.4;150mM)に溶解させた。4℃で線状ペプチド(DMF中、18μLの100mMストック;180nmol;40当量)、続いて、DMT−MM(水中、3.6μLの500mMストック;180nmol;40当量)を加えた。2時間にわたって撹拌した後、LCMSは反応の完了、および生成物がエタノール沈殿により単離されたことを示した。ESIMS 1823.0([M−3H]/3,20%)、1367.2([M−4H]/4,20%)、1093.7([M−5H]/5,40%),911.4([M−6H]/6,100%)。
【0233】
環式ペプチドのDNAへの結合体化:
化合物2(20nmol)を20μLのホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.4;150mM)に溶解させた。4℃で線状ペプチド(DMF中、8μLの100mMストック;80nmol;40当量)、続いて、DMT−MM(水中、1.6μLの500mMストック;80nmol;40当量)を加えた。2時間にわたって撹拌した後、LCMSは反応の完了、および生成物がエタノール沈殿により単離されたことを示した。ESIMS 1823.0([M−3H]/3,20%)、1367.2([M−4H]/4,20%)、1093.7([M−5H]/5,40%)、911.4([M−6H]/6,100%)。
【0234】
DNAで連結されたペプチドの環化:
線状のペプチド−DNA結合体(10nmol)を、pH8のリン酸ナトリウム緩衝液(10μL、150mm)に溶解させた。室温で、各々4当量のCuSO4、アスコルビン酸、およびSharplessリガンドをすべて加えた(0.2μLの200mMストック)。反応を一晩中続けた。RP HPLCは、線状のペプチド−DNAは存在せず、そして生成物は、真の環状ペプチド−DNAとともに溶出されたことを示した。二量体および他のオリゴマーの痕跡は全く観察されなかった。
【0235】
【化90】
(実施例6:芳香族求核置換反応の機能的部分の合成への適用)
塩化シアヌルを用いる化合物3のアリール化のための一般的手順
化合物2を、濃度1mMで、pH9.4のホウ酸ナトリウム緩衝液に溶解させた。溶液を4℃まで冷却し、次に20当量の塩化シアヌルを、MeCN中500mM溶液として加えた。2時間後、反応の完了をLCMSにより確認し、生じたジクロロトリアジン−DNA結合体をエタノール沈殿により単離する。
【0236】
ジクロロトリアジン−DNAのアミン置換のための手順
ジクロロトリアジン−DNA結合体を、1mMの濃度で、pH9.5のホウ酸緩衝液に溶解させる。室温で、40当量の脂肪族アミンをDMF溶液として加える。反応をLCMSにより追跡し、通常は2時間後に完了する。生じたアルキルアミノ−モノクロロトリアジン−DNA結合体を、エタノール沈殿により単離する。
【0237】
モノクロロトリアジン−DNAのアミン置換のための手順
アルキルアミノ−モノクロロトリアジン−DNA結合体を、1mMの濃度で、pH9.5のホウ酸緩衝液に溶解させる。42℃で、40当量の第二級脂肪族アミンを、DMF溶液として加える。反応をLCMSにより追跡し、通常は2時間後に完了する。生じたジアミノトリアジン−DNA結合体を、エタノール沈殿により単離する。
【0238】
(実施例7:還元アミノ化反応の機能的部分合成への適用)
アルデヒド構成要素による第二級アミンを含むDNA−リンカーの還元アミノ化の一般的手順:
化合物2をN末端プロリン残基に結合させた。生じた化合物をリン酸ナトリウム緩衝液(50μL、150mM、pH5.5)に、1mMの濃度で溶解させた。この溶液に、40当量の、DMF中アルデヒド構成要素(8μL、0.25M)およびDMF中ナトリウムシアノボロヒドリド(8μL、0.25M)をそれぞれ加え、溶液を2時間にわたって80℃で加熱した。アルキル化の後、溶液をエタノール沈殿により精製した。
【0239】
アミン構成要素によるアルデヒドを含むDNA−リンカーの還元アミノ化の一般的手順:
アルデヒド基を含む構成要素に結合させた化合物2を、リン酸ナトリウム緩衝液(50μL、250mM、pH5.5)に、1mMの濃度で溶解させた。この溶液に、40当量の、DMF中アミン構成要素(8μL、0.25M)およびDMF中ナトリウムシアノボロヒドリド(8μL、0.25M)をそれぞれ加え、溶液を2時間にわたって80℃で加熱した。アルキル化の後、溶液をエタノール沈殿により精製した。
【0240】
(実施例8:ペプトイド構築反応の機能的部分合成への適用)
DNA−リンカー上のペプトイド合成に関する一般的手順
【0241】
【化91】
化合物2を、ホウ酸ナトリウム緩衝液(50μL、150mM、pH9.4)に、1mMの濃度で溶解させ、4℃まで冷やした。この溶液に、40当量の、DMF中N−ヒドロキシスクシンイミジルブロモアセテート(13μL、0.15M)を加え、溶液を4℃で2時間にわたって緩やかに振とうした。アシル化の後、DNA−リンカーをエタノール沈殿により精製し、ホウ酸ナトリウム緩衝液(50μL、150mM、pH9.4)に、1mMの濃度で再溶解させ、4℃まで冷やした。この溶液に、40当量のDMF中アミン構成要素(13μL、0.15M)を加え、溶液を4℃で16時間にわたって緩やかに振とうした。アルキル化の後に、そのDNA−リンカーをエタノール沈殿により精製し、ホウ酸ナトリウム緩衝液(50μL、150mM、pH9.4)に、1mMの濃度で再溶解させ、4℃まで冷やした。ペプトイド合成を、N−ヒドロキシスクシンイミジルブロモアセテートの段階的な添加により続け、その後アミン構成要素を添加する。
【0242】
(実施例9:アジド−アルキン付加環化反応の機能的部分合成への適用)
一般的手順
アルキンを含むDNA結合体を、約1mMの濃度で、pH8.0のリン酸緩衝液に溶解させる。この混合物に、10当量の有機アジドおよび5当量の硫酸銅(II)、5当量のアスコルビン酸、および5当量のリガンド(トリス−((1−ベンジルトリアゾール−4−イル)メチル)アミンをそれぞれ、すべて室温で加える。反応をLCMSにより追跡し、通常は1〜2時間後に完了する。生じたトリアゾール−DNA結合体は、エタノール沈殿により単離され得る。
【0243】
(実施例10:コード化ライブラリー内からのAB1キナーゼに対するリガンドの同定)
望ましくないライブラリーメンバーを超えて、DNAでコードされたライブラリー中で、関心を引く分子を富化する能力は、関心を引く治療標的に対する定められた特性を有する化合物を同定することに卓越する。この富化能力を証明するために、rhAb1キナーゼ(GenBank U07563)への公知の結合分子(Shah et al.,Science 305,399−401(2004)(本明細書中に参考として援用される)に記載される)を合成した。この化合物を、実施例1および実施例2に記述した方法により生成される分子と類似の分子(オリゴヌクレオチドに連結した機能的部分)を生成するために、標準化学方法を用いて、前述の実施例に記述したリンカーにより、二本鎖オリゴヌクレオチドに結合させた。実施例2に記述した通りに一般的に生成されるライブラリーおよび、DNAと連結したAb1キナーゼ結合剤は、両方の種のqPCR分析を可能にする独特のDNA配列で設計した。そのDNAと連結したAb1キナーゼを、ライブラリーと1:1000の比で混合した。この混合物をrhAbleキナーゼと平衡化させ、酵素を固相上に捕捉し、結合していないライブラリーのメンバーを除去するために洗浄し、結合分子を溶出した。溶出液中のライブラリー分子とDNAで連結されたAb1キナーゼの比は、1:1であった。これは、1000倍過剰なライブラリー分子中で、DNAで結合されたAb1キナーゼ結合剤の500倍より大きい富化を示している。
【0244】
(等価物)
当業者は、定型にすぎない実験を用いて、本明細書中に記載された本発明の特定の実施形態への多くの等価物を認識するか、または確かめることができる。そのような等価物は、上記の特許請求の範囲内に包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】図1は、二本鎖オリゴヌクレオチドのライゲーションの図式的な表現であり、ここで、元のオリゴヌクレオチドは、入来オリゴヌクレオチドのオーバーハングと相補的であるオーバーハングを有する。元の鎖は、遊離であるか、アミノヘキシルリンカーに結合体化されるか、アミノヘキシルリンカーを介してフェニルアラニン残基に結合体化されるかのいずれかとして表現される。
【図2】図2は、スプリント鎖を用いるオリゴヌクレオチドのライゲーションの図式的な表現である。この実施形態において、スプリントは、一本鎖の元のオリゴヌクレオチドおよび一本鎖の入来オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有する12マーのオリゴヌクレオチドである。
【図3】図3は、元のオリゴヌクレオチドが共有結合された鎖を有する二本鎖であり、入来オリゴヌクレオチドが二本鎖である場合、元のオリゴヌクレオチドおよび入来オリゴヌクレオチドのライゲーションの図式的な表現である。
【図4】図4は、ポリメラーゼを用いるオリゴヌクレオチド伸長の図式的な表現である。元の鎖は、遊離であるか、アミノヘキシルリンカーに結合体化されるか、アミノヘキシルリンカーを介してフェニルアラニン残基に結合体化されるかのいずれかとして表現される。
【図5】図5は、本発明の一つの実施形態の合成サイクルの図式的な表現である。
【図6】図6は、本発明のライブラリーを用いる多数のラウンドの選択プロセスの図式的な表現である。
【図7】図7は、実施例1で記述されたサイクル1〜5のそれぞれ、および次の近接プライマーのライゲーションの産物の電気泳動から得られるゲルである。分子量の標準がレーン1に示され、DNA定量のためのHyperladderの表示される量が、レーン9〜12に示される。
【図8】図8は、アジド−アルキン付加環化を用いる構成要素のカップリングの描写である。
【図9】図9は、芳香族求核置換を介する、塩素化トリアジンへ上への構成要素のカップリングを説明している。
【図10】図10は、芳香族求核置換を介する、塩素化トリアジンへ上への構成要素のカップリングを説明している。
【図11】図11は、機能的部分の合成に使用するために適切な塩素化されたヘテロ芳香族の構造を示す。
【図12】図12は、アジド/アルキン付加環化反応を用いる線状のペプチドの環化を示す。
【図13】図13aは、サイクル4の後の実施例2で記述される通りに産生されたライブラリーのクロマトグラフである。図13bは、サイクル4の後の実施例2で記述される通りに産生されたライブラリーのマススペクトルである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2004年12月17日に出願された係属中の米国特許出願第11/015458号の一部継続出願であり、その出願は、2003年12月17日に出願された米国仮特許出願第60/530854号、2004年1月30日に出願された米国仮特許出願第60/540681号、2004年3月15日に出願された米国仮特許出願第60/553,715号、および2004年7月16日に出願された米国仮特許出願第60/588,672号に関連している。本出願はまた、2005年6月9日に出願された米国仮特許出願第60/689,466号、および2005年10月28日に出願された米国仮特許出願第60/731,041号への優先権を主張している。それぞれの前述の出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
有用な生物学的活性を有する化合物を同定する、より効果的な方法の捜索は、コンビナトリアルライブラリーと呼ばれる収集物中に存在する、膨大な数の異なる化合物をスクリーニングするための方法の開発をもたらした。そのようなライブラリーは、105種またはそれより多い異なる化合物を含み得る。コンビナトリアルライブラリーを産生するための多くの方法が存在し、そしてペプチド、擬似ペプチド(peptidomimetic)、および小さな有機分子のコンビナトリアル合成が報告されている。
【0003】
薬物発見におけるコンビナトリアル方法の使用における二つの主要な課題は、十分な複雑性を有するライブラリーの合成、および用いられるスクリーニングにおいて活性な分子の同定である。ライブラリーの複雑性の程度(すなわち、ライブラリー中に存在する異なる構造の数)が大きくなればなるほど、ライブラリーが、関心を引く活性を有する分子を含む確率が高くなることが、一般的に認められる。したがって、ライブラリー合成において用いられる化学は、合理的な時間の枠内で、膨大な数の化合物を産生することが可能でなければならない。しかしながら、所定の形式的な、または全体の濃度に対して、ライブラリー内の異なるメンバーの数の増加は、任意の特定のライブラリーのメンバーの濃度を低下させる。このことは、高い複雑性を有するライブラリーからの活性な分子の同定を困難にしている。
【0004】
これらの障害を克服する一つの方法は、コードされたライブラリー、特に各化合物が増幅可能なタグを含むライブラリーの開発である。そのようなライブラリーはDNAでコードされたライブラリーを含み、ライブラリーのメンバーを同定しているDNAタグは、分子生物学の技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)を用いて増幅され得る。しかしながら、非常に大きなライブラリーを産生するためのそのような方法の使用は、いまだに実証されておらず、そして、そのようなライブラリーを産生するための改良方法が、薬物発見に対するこの方法の可能性の実現のために必要とされることは明らかである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、コード化オリゴヌクレオチドタグを含む分子のライブラリーを合成する方法を提供する。その方法は、「分割(split)および混合(pool)」ストラテジーを使用し、イニシエーター(コード化オリゴヌクレオチドに連結した第一の構成要素(building block)を含む)を含む溶液は、多数の画分に分割(「分割(split)」)される。各画分において、そのイニシエーターは、第二の独特な構成要素、およびその第二の構成要素を同定する第二の独特なオリゴヌクレオチドと反応される。これらの反応は、同時または連続的であり得、連続的である場合、一方の反応が他方の反応に先行し得る。各画分において産生される二量体分子は、合併(「混合(pool)」)され、次に多数の画分に再び分割される。次に、これらの画分はそれぞれ、第三の独特な(画分特異的な)構成要素、およびその構成要素をコードする第三の独特なオリゴヌクレオチドと反応される。生成物のライブラリー中に存在する独特な分子の数は、(1)その合成の各工程で用いられる異なる構成要素の数、および(2)混合および分割が繰り返される時間の数の関数である。
【0006】
一つの実施形態において、本発明はコード化オリゴヌクレオチドに作動可能に連結する機能的部分を含むか、またはその機能的部分からなる分子を合成する方法を提供する。その方法は、(1)n個の構成要素を含む機能的部分からなるイニシエーター化合物を提供する工程(ここでnは1または1より大きい整数であり、その機能的部分は、少なくとも一つの反応基(reactive group)を含み、そしてその機能的部分は、元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する);(2)そのイニシエーター化合物を、少なくとも一つの相補的反応基(ここで、その少なくとも一つの相補的反応基は、工程(1)の反応基と相補的である)を含む構成要素と、その反応基およびその相補的反応基の反応に対して適切な条件下で、反応させ共有結合を形成させる工程;(3)その元のオリゴヌクレオチドを、酵素の存在下で工程(b)の構成要素を同定する入来(incoming)オリゴヌクレオチドと(ここで、その酵素はその元のオリゴヌクレオチドおよびその入来オリゴヌクレオチドのライゲーションを触媒する)、その入来オリゴヌクレオチドおよびその元のオリゴヌクレオチドのライゲーションに対して適切な条件下で、反応させ、それによりコード化オリゴヌクレオチドに作動可能に連結するn+1個の構成要素を含む機能的部分を含むか、またはそれらからなる分子を産生する工程を包含する。工程(3)の機能的部分が、反応基を含む場合、工程1〜3は、一回または一回より多く繰り返され得、それによってサイクル1〜iを形成し(ここでiは2または2より大きい整数である)、サイクルsの工程(3)の生成物は(ここで、sはi−1またはi−1より小さい整数である)、サイクルs+1のイニシエーター化合物となる。
【0007】
一つの実施形態において、本発明は、化合物のライブラリーを合成する方法を提供し、ここで、その化合物は機能的部分を含み、これは、その機能的部分の構造を同定するオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する二つまたは二つより多い構成要素を含む。その方法は、(1)m個のイニシエーター化合物を含む溶液を提供する工程、ここでmは1または1より大きい整数であり、そのイニシエーター化合物はn個の構成要素を含む機能的部分からなり(ここで、nは1または1より大きい整数である)、その機能的部分は、n個の構成要素を同定する元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する;(2)工程(1)の溶液をr個の画分に分割する工程、ここでrは2または2より大きい整数である;(3)各画分におけるイニシエーター化合物を、r個の構成要素のうちの一つと反応させ、それによって、その元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結するn+1個の構成要素を含む機能的部分からなる化合物を含むr個の画分を産生する工程;(4)各画分における元のオリゴヌクレオチドを、酵素の存在下でr個の異なる入来オリゴヌクレオチドのセットのうちの一つと(ここで、その酵素は入来オリゴヌクレオチドおよび元のオリゴヌクレオチドのライゲーションを触媒する)、その入来オリゴヌクレオチドおよびその元のオリゴヌクレオチドの酵素的ライゲーションに対して適切な条件下で、反応させ、それによりn+1個の構成要素をコードする伸長されたオリゴヌクレオチドに作動可能に連結するn+1個の構成要素を含む機能的部分からなる分子を含むr個のアリコートを産生する工程を包含する。必要に応じて、その方法は、工程(4)で産生されたr個の画分を再合併し、それによりn+1個の構成要素を含む機能的部分(これは、伸長されたオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する)からなる化合物を含む溶液を生成する(5)の工程をさらに包含する。工程(1)〜(5)は、一回または一回より多く行われ得、サイクル1〜iを生成し得る(ここで、iは2または2より大きい整数である)。サイクルs+1において(ここで、sはi−1またはi−1より小さい整数である)、工程(1)のm個のイニシエーター化合物を含む溶液は、サイクルsの工程(5)の溶液である。同様に、サイクルs+1の工程(1)のイニシエーター化合物は、サイクルsの工程(5)の化合物である。
【0008】
好ましい実施形態において、上記構成要素は、従来の化学反応を用いて各工程で結合される。その構成要素は結合され得、線状もしくは分枝状のポリマーまたはオリゴマー(例えば、ペプチド、擬似ペプチド、およびペプトイド)、あるいは非オリゴマー分子(例えば、一つまたは一つより多いさらなる化学部分に結合する骨格構造を含む分子)を産生し得る。例えば、その構成要素がアミノ酸残基である場合、その構成要素は、標準的なペプチド合成ストラテジー(例えば、当該分野で公知の、適切な保護/脱保護ストラテジーを用いる溶液相または固相合成)を用いて結合され得る。好ましくは、その構成要素は、溶液相化学を用いて結合され得る。上記コード化オリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチドであり、好ましくは、二本鎖のオリゴヌクレオチドである。そのコード化オリゴヌクレオチドは、一構成要素当たり、4個〜12個の塩基または塩基対のオリゴヌクレオチドであり;そのコード化オリゴヌクレオチドは、標準的な溶液相または固相オリゴヌクレオチド合成方法論を用いて結合され得るが、好ましくは溶液相酵素的プロセスを用いて結合される。例えば、そのオリゴヌクレオチドは、トポイソメラーゼ、リガーゼ、DNAポリメラーゼを用いて結合され得る(コード化オリゴヌクレオチドの配列が、これらの酵素のうちの一つによるライゲーションのための開始配列を含む場合)。コード化オリゴヌクレオチドの酵素的結合は、(1)標準的合成(非酵素)結合と比較して、より正確な付加;および(2)より簡単な保護/脱保護ストラテジーの使用の利点を提供する。
【0009】
別の局面において、本発明は、式I:
【0010】
【化13】
の化合物を提供し、
ここで、Xは、一つまたは一つより多い構成要素を含む機能的部分であり;Zは、その3’末端でBに結合したオリゴヌクレオチドであり;Yは、その5’末端でCに結合したオリゴヌクレオチドであり;Aは、Xと共有結合を形成する官能基であり;Bは、Zの3’末端と結合を形成する官能基であり;Cは、Yの5’末端と結合を形成する官能基であり;D、F、およびEは、それぞれ独立して、二官能性結合基であり;そして、Sは、原子または分子骨格である。そのような化合物は、本発明の方法を使用して合成される化合物を含む。
【0011】
本発明はさらに、オリゴヌクレオチドに作動可能に連結した二つまたは二つより多い構成要素を含む機能的部分を含む化合物を含む化合物のライブラリーに関し、そのオリゴヌクレオチドは、その機能的部分の構造をコードする。そのようなライブラリーは、約102個〜約1012個またはそれより多い異なるメンバー(例えば、102個、103個、104個、105個、106個、107個、108個、109個、1010個、1011個、1012個、またはそれより多い異なるメンバー)、すなわち異なる分子構造を含み得る。
【0012】
一つの実施形態において、化合物のライブラリーは、それぞれが独立して式I:
【0013】
【化14】
である化合物を含み、
ここで、Xは、一つまたは一つより多い構成要素を含む機能的部分であり;Zは、その3’末端でBに結合したオリゴヌクレオチドであり;Yは、その5’末端でCに結合したオリゴヌクレオチドであり;Aは、Xと共有結合を形成する官能基であり;Bは、Zの3’末端と結合を形成する官能基であり;Cは、Yの5’末端と結合を形成する官能基であり;D、F、およびEは、それぞれ独立して、二官能性結合基であり;そして、Sは、原子または分子骨格である。そのようなライブラリーは、本発明の方法を使用して合成されるライブラリーを含む。
【0014】
別の局面において、本発明は、生物学的標的に結合する化合物を同定するための方法を提供し、上記方法は、(a)その生物学的標的を、本発明の化合物のライブラリーと接触させる工程(ここで、その化合物のライブラリーは、オリゴヌクレオチドに作動可能に連結した二つまたは二つより多い構成要素を含む機能的部分を含む化合物を含み、そのオリゴヌクレオチドは、その機能的部分の構造をコードする。この工程は、その標的へ結合する化合物のライブラリーの少なくとも一つのメンバーに対して適切な条件下で行われる);(2)その標的に結合しないライブラリーのメンバーを除去する工程;(3)その標的に結合する化合物のライブラリーの少なくとも一つのメンバーのコード化オリゴヌクレオチドを増幅する工程;(4)工程(3)のコード化オリゴヌクレオチドを配列決定する工程;ならびに、工程(5)において決定された配列を用いて、その生物学的標的に結合する化合物のライブラリーのメンバーの機能的部分の構造を決定する工程を包含する。
【0015】
本発明は、所望の特性を有する分子の同定において、種々の利点を提供する。例えば、本発明の方法は、オリゴヌクレオチドタグの存在下で、その分子を構築するためのさまざまな化学反応の使用を可能にする。本発明の方法はまた、オリゴヌクレオチドタグを、そのように産生された化学構造に組み込む、忠実度の高い手段を提供する。さらに、それらは、各メンバーの多くの複製を有するライブラリーの合成を可能にし、それにより、生物学的標的に対する多数のラウンド(round)の選択を与える一方、そのオリゴヌクレオチドタグの増幅および配列決定(sequence)についての最後のラウンドの後に多くの数の分子を残す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
本発明は、化合物およびコンビナトリアル化合物のライブラリーを産生するための方法、本発明の方法により産生される化合物およびライブラリー、ならびに所望の特性(例えば、所望の生物学的活性)を有する化合物を同定するためにこのライブラリーを使用するための方法に関する。本発明はさらに、これらの方法を用いて同定される化合物に関する。
【0017】
コンビナトリアル化学的ライブラリーを産生およびスクリーニングするために、種々の方法が行われている。例として、そのライブラリーの個々のメンバーを互いに物理的に分離する(例えば、単一の化合物が、多数の反応容器のそれぞれにおいて合成される場合)方法が挙げられる。しかしながら、代表的にこれらのライブラリーは、一度に一つの化合物を、またはたいていは、一度に数種の化合物をスクリーニングされ、したがって、最も効率的なスクリーニングプロセスをもたらさない。他の方法において、化合物は、固体の支持体上で合成される。そのような固体の支持体としては、チップ(特定の化合物が、そのチップまたは膜(「位置特定可能(addressable)」)の特定の領域を占有する)が挙げられる。他の方法において、化合物はビーズ上で合成され、各ビースは異なる化学構造を含む。
【0018】
大きなライブラリーをスクリーニングする際に生じる二つの難点は、(1)スクリーニングされ得る異なる化合物の数;および(2)そのスクリーニングにおいて活性である化合物の同定である。一つの方法において、そのスクリーニングにおいて活性である化合物は、元のライブラリーを、いっそう小さな画分および副画分(subfraction)に狭め、各場合において、活性な化合物を含む画分または副画分を選択し、さらにサブセットの全てのメンバーが、個々に合成され得、そして所望の活性のために評価され得る十分に小さい化合物のセットを含む活性な副画分を達成するまで、再分割することで、同定される。これは冗長で、時間を消費する行為である。
【0019】
コンビナトリアルライブラリーのスクリーニングの結果を解析する別の方法は、ライブラリーのメンバーが同定標識でタグ化されるライブラリーを用いることである。すなわち、ライブラリー中に存在する各標識は、その標識の同定からタグ化された分子の構造がわかるように、ライブラリー中に存在する目立たない(discreet)化合物の構造と結合される。タグ化されたライブラリーへの一つの方法は、米国特許第5,573,905号;同第5,708,153号;同第5,723,598号,同第6,060,596号、公開されたPCT出願 WO 93/06121;WO 93/20242;WO 94/13623;WO 00/23458;WO 02/074929、およびWO 02/103008で、ならびにBrenner and Lerner(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,5381−5383(1992);Nielsen and Janda(Methods:A Companion to Methods in Enzymology 6,361−371(1994);およびNielsen,Brenner and Janda(J.Am.Chem.Soc.115,9812−9813(1993))(それぞれは、その全体が本明細書中に参考として援用される)により記載されるように、オリゴヌクレオチドタグを用いる。そのようなタグは、(例えばポリメラーゼ連鎖反応を用いて)増幅され、そのタグの多くの複製を産生し得、そして配列決定によりそのタグを同定し得る。次に、そのタグの配列は、結合分子の構造を同定し、それは純粋な形態で合成され得、そして試験され得る。本発明は、DNAでコードされた分子のライブラリーを産生するための方法における改善点、ならびに、機能的部分が溶液相合成方法を用いて合成される、DNAでコードされた分子の大きな(105個のメンバーまたはそれより多いメンバー)ライブラリーの最初の例を提供している。
【0020】
本発明は、オリゴヌクレオチドでコードされたコンビナトリアルライブラリーの容易な合成を可能にし、そして、そのようなオリゴヌクレオチドタグを、分子の莫大な収集物の各メンバーに添加する、効率的で、忠実度の高い手段を可能にする方法を提供する。
【0021】
本発明の方法は、構成要素からなる第一の部分(「機能的部分」)、ならびにその第一の部分に作動可能に連結した第二の部分を含む二官能性分子を合成するための方法を包含し、その第二の部分は、その第一の部分の構造を同定するオリゴヌクレオチドタグを含む。すなわち、そのオリゴヌクレオチドは、どの構成要素がその第一の部分の構築において用いられたか、ならびに構成要素が連結された順序を示す。一般的に、オリゴヌクレオチドタグにより提供される情報は、活性部分を構築するために用いられる構成要素を決定するために十分である。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドタグの配列は、その機能的部分における構成要素の配列(例えば、ペプチド部分に対して、アミノ酸配列)を決定するために十分である。
【0022】
用語「機能的部分」は、本明細書中で用いられる場合、一つまたは一つより多い構成要素を含む化学的部分のことをいう。好ましくは、機能的部分における構成要素は、核酸ではない。機能的部分は、線状もしくは分枝状のもしくは環状のポリマーまたはオリゴマーまたは小さな有機分子であり得る。
【0023】
用語「構成要素」は、本明細書中で用いられる場合、他の化学構造単位に連結されるか、または他のそのような単位に連結され得る化学構造単位である。上記機能的部分が、ポリマーまたはオリゴマーである場合、構成要素は、ポリマーまたはオリゴマーの単量体単位である。構成要素はまた、骨格構造(「骨格構成要素」)を含み得、それに、一つまたは一つより多いさらなる構造(「辺縁構成要素」)が結合されるか、または結合され得る。
【0024】
用語「構成要素」は、機能的部分中に存在し、また機能的部分の合成のために用いられる反応形態中に存在するような化学構造単位のことをいうために、本明細書中で用いられることが理解されるべきである。機能的部分内で、構成要素は、任意の部分の構成要素(これは、その構成要素を、その機能的部分に取り込む結果として失われる)なしで存在する。例えば、結合形成反応が、小分子を放出する場合(以下を参照のこと)、機能的部分中に存在するような構成要素は、「構成要素残基」、すなわち、放出される分子をもたらす原子の損失に続く、その合成において用いられる構成要素の残りである。
【0025】
構成要素は、相補的である任意の化合物であり得、すなわち、構成要素は、二つまたは二つより多い構成要素を含む構造を形成するために、ともに反応できなければならない。代表的に、用いられるすべての構成要素は、少なくとも二つの反応基を有するが、用いられるいくつかの構成要素(例えば、オリゴマー機能的部分における最後の構成要素)は、一つの反応基のみをそれぞれ有する。二つの異なる構成要素上の反応基は、相補的でなければならない。すなわち、ともに反応して共有結合を形成する(必要に応じて、小分子(例えば、水、HCl、HFなど)の損失を付随して)ことができなければならない。
【0026】
本発明の目的のために、二つの反応基は、それらがともに反応して、共有結合を形成することができる場合、相補的である。好ましい実施形態において、結合形成反応は、副生成物の実質的な形成なしで、周囲の状況下で迅速に起こる。好ましくは、所定の反応基は、所定の相補的反応基とちょうど一回反応する。一つの実施形態において、二つの構成要素の相補的反応基は、例えば、求核置換を介して反応して、共有結合を形成する。一つの実施形態において、一対の相補的反応基の一方のメンバーは求電子基であり、そしてその対の他方のメンバーは求核基である。
【0027】
相補的求電子基および求核基としては、適切な条件下で求核置換により反応して、共有結合を形成する任意の二つの基が挙げられる。種々の適切な結合形成反応が当該分野で公知である。例えば、March,Advanced Organic Chemistry,第4版,New York:John Wiley and Sons(1992),10〜16章;Carey and Sundberg,Advanced Organic Chemistry,Part B,Plenum(1990),1〜11章;およびCollman et al.,Principles and Applications of Organotransition Metal Chemistry,University Science Books,Mill Valley,Calif.(1987),13〜20章(それぞれは、その全体が本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。適切な求電子基の例としては、反応性カルボニル基(例えば、塩化アシル基)、エステル基(カルボニルペンタフルオロフェニルエステルおよびスクシンイミドエステルが挙げられる)、ケトン基、およびアルデヒド基;反応性スルホニル基(例えば、塩化スルホニル基)、ならびに反応性ホスホニル基が挙げられる。他の求電子基としては、末端エポキシド基、イソシアネート基、およびアルキルハライド基が挙げられる。適切な求核基としては、第一級アミノ基、および第二級アミノ基、およびヒドロキシル基、およびカルボキシル基が挙げられる。
【0028】
適切な相補的反応基が以下に示される。当業者は、本方法で用いられ得る他の反応基の対を容易に決定し得、そして本明細書中で提供される例は、制限するものと意図されない。
【0029】
第一の実施形態において、相補的反応基としては、活性化カルボキシル基、反応性スルホニル基、または反応性ホスホニル基、あるいはそれらの組み合わせ、および第一級アミノ基または第二級アミノ基が挙げられる。この実施形態において、相補的反応基は、適切な条件下で反応し、アミド結合、スルホンアミド結合、またはホスホンアミデート結合を形成する。
【0030】
第二の実施形態において、相補的反応基としては、エポキシド基、および第一級アミノ基または第二級アミノ基が挙げられる。エポキシド基を含む構成要素は、アミンを含む構成要素と、適切な条件下で反応し、炭素−窒素結合を形成し、β−アミノアルコールをもたらす。
【0031】
別の実施形態において、相補的反応基としては、アジリジン基、および第一級アミノ基または第二級アミノ基が挙げられる。適切な条件下で、アジリジンを含む構成要素は、アミンを含む構成要素と反応して、炭素−窒素結合を形成し、1,2−ジアミンをもたらす。第三の実施形態において、相補的反応基としては、イソシアネート基、および第一級アミノ基または第二級アミノ基が挙げられる。イソシアネートを含む構成要素は、アミノを含む構成要素と、適切な条件下で反応し、炭素−窒素結合を形成し、尿素基をもたらす。
【0032】
第四の実施形態において、相補的反応基としては、イソシアネート基およびヒドロキシル基が挙げられる。イソシアネートを含む構成要素は、ヒドロキシルを含む構成要素と、適切な条件下で反応し、炭素−酸素結合を形成し、カルバメート基をもたらす。
【0033】
第五の実施形態において、相補的反応基としては、アミノ基およびカルボニルを含む基(例えば、アルデヒド基またはケトン基)が挙げられる。アミンは、還元的アミノ化により、そのような基と反応して、新規の炭素−窒素結合を形成する。
【0034】
第六の実施形態において、相補的反応基としては、リンイリド基、およびアルデヒド基またはケトン基が挙げられる。リンイリドを含む構成要素は、適切な条件下で、アルデヒドまたはケトンを含む構成要素と反応して、炭素−炭素二重結合を形成し、アルケンをもたらす。
【0035】
第七の実施形態において、相補的反応基は、付加環化を介して反応し、環状構造を形成する。そのような相補的反応基の一つの例としては、アルキン、および有機アジドであり、それらは、適切な条件下で反応して、トリアゾール環構造を形成する。二つの構成要素を連結するこの反応の使用の例は、図8で説明される。そのような反応のための適切な条件は、当該分野で公知であり、そしてWO 03/101972に開示されるものが挙げられる(その全体の内容は、本明細書中で参考として援用される)。
【0036】
第八の実施形態において、相補的反応基は、アルキルハライド、および求核試薬(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基)である。そのような基は、適切な条件下で反応し、炭素−窒素(アルキルハライドとアミン)または炭素−酸素(アルキルハライドと、ヒドロキシル基またはカルボキシル基)を形成する。
【0037】
第九の実施形態において、相補的官能基は、ハロゲン化ヘテロ芳香族(heteroaromatic)基および求核試薬であり、そして構成要素は、適切な条件下で、芳香族求核置換により連結される。適切なハロゲン化ヘテロ芳香族基としては、塩素化ピリミジン、塩素化トリアジン、および塩素化プリンが挙げられ、それらは水溶液中の穏和な条件下で求核試薬(例えば、アミン)と反応する。オリゴヌクレオチドでタグ化されたトリクロロトリアジンの、アミンとの反応の代表的な例は、図9および図10に示される。適切な塩素化ヘテロ芳香族基の例は、図11に示される。
【0038】
本発明の分子およびライブラリーの合成における構成要素を結合するために用いられ得るさらなる結合形成反応としては、以下に示されるものが挙げられる。以下に示される反応は、反応性官能基を強調している。種々の置換基が、反応物質中に存在し得、R1、R2、R3、およびR4と名前を付けたものが挙げられる。置換され得る可能な位置としては、R1、R2、R3、およびR4で示される位置が挙げられるが、それらに限定されない。これらの置換基は、任意の適切な化学的部分を含み得るが、指示される反応を妨げず、そして著しくは阻害しないものに好ましくは限定される。そして、他に明記されない限り、その化学部分は、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルキル、置換されたアリールアルキル、アミノ、置換されたアミノ、および当該分野で公知である他の化学的部分を含み得る。これらの基上の適切な置換基としては、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、メルカプト、カルボキシル、およびカルボキサミドが挙げられる。明記される場合、適切な電子求引基としては、ニトロ、カルボキシル、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、および当該分野で公知である他の基が挙げられる。適切な電子供与基の例としては、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、ハロゲン、アセトアミド、および当該分野で公知の他の基が挙げられる。
アルケンへの第一級アミンの付加:
【0039】
【化15】
求核置換:
【0040】
【化16】
アミンの還元的アルキル化:
【0041】
【化17】
パラジウムで触媒された炭素−炭素結合形成反応:
【0042】
【化18】
Ugi縮合反応:
【0043】
【化19】
求電子芳香族置換反応:
【0044】
【化20】
Xは、電子供与基である。
イミン/イミニウム/エナミン形成反応:
【0045】
【化21】
付加環化反応
ディールス・アルダー付加環化
【0046】
【化22】
1,3−双極性付加環化、X−Y−Z=C−N−O、C−N−S、N3、
【0047】
【化23】
求核芳香族置換反応:
【0048】
【化24】
Wは、電子求引基である。
【0049】
【化25】
適切な置換基XおよびYの例としては、置換または非置換のアミノ、置換または非置換のアルコキシ、置換または非置換のチオアルコキシ、置換または非置換のアリールオキシ、および置換または非置換のチオアリールオキシが挙げられる。
【0050】
【化26】
ヘック(Heck)反応:
【0051】
【化27】
アセタール形成:
【0052】
【化28】
適切な置換基XおよびYの例としては、置換または非置換のアミノ、ヒドロキシ、およびスルフヒドリル(sulhydryl)であり:Yは、XとYを結合させるリンカーであり、そしてその反応の生成物中に見出される環構造を形成するために適切である。
アルドール反応:
【0053】
【化29】
適切な置換基Xの例としては、O、S、およびNR3が挙げられる。
【0054】
本発明の分子およびライブラリーを形成させるために用いられ得る骨格構成要素としては、二つまたは二つより多い官能基を有するものが挙げられ、それらは、例えば、上で考察される一つまたは一つより多い結合形成反応を用いて、辺縁構成要素前駆体との結合形成反応に関与し得る。骨格部分はまた、例えば、特定の方法で反応して、中心の分子部分(辺縁官能基は、これらに付加される)を含む分子を形成し得る構成要素前駆体を用いて、本発明のライブラリーおよび分子の構築中に合成され得る。一つの実施形態において、本発明のライブラリーは、定常骨格部分(しかし、異なる辺縁部分、または辺縁部分の異なる配列)を含む分子を含む。特定のライブラリーにおいて、すべてのライブラリーのメンバーは、定常骨格部分を含み;他のライブラリーは、二つまたは二つより多い異なる骨格部分を有する分子を含み得る。本発明の分子およびライブラリーの構築において用いられ得る骨格部分形成反応の例は、表8に示される。その表において引用される文献は、その全体が本明細書中で参考として援用される。R1基、R2基、R3基、およびR4基は、指示される反応を妨害せず、そして著しくは阻害しないはずであるという点のみで制限され、そしてこれらは水素、アルキル、置換されたアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換されたアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、置換されたアミノ、および当該分野で公知である他の基を含み得る。適切な置換基としては、アルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、ニトロ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、アリールオキシ、アリール−S−、ハロゲン、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、シアノ、シアネート、ニトリル、イソシアネート、チオシアネート、カルバミル、および置換されたカルバミルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
機能的部分の合成は、一つの特定の型のカップリング(coupling)反応(例えば、上で考察された反応のうちのひとつ(しかし、それに限定されない))により、あるいは二つまたは二つより多いカップリング反応の組み合わせ(例えば、上で考察された二つまたは二つより多いカップリング反応)により進行し得ることが理解されるべきである。例えば、一つの実施形態において、構成要素は、アミド結合形成(アミノおよびカルボン酸の相補的基)ならびに還元アミノ化(アミノおよびアルデヒドまたはケトンの相補的基)の組み合わせにより結合される。任意のカップリング化学が用いられ得るが、ただし、それはオリゴヌクレオチドの存在と共存できる。本発明の特定の実施形態において用いられ得るような、二本鎖(二重鎖(duplex))のオリゴヌクレオチドタグは、一本鎖のタグよりも化学的に頑丈であり、したがって、幅広い範囲の反応条件に耐え、一本鎖のタグでは可能でない結合形成反応の使用を可能にする。
【0056】
構成要素は、機能的部分を形成させるために用いられる反応基(単数または複数)に加えて、一つまたは一つより多い官能基を含み得る。一つまたは一つより多いこれらのさらなる官能基は、保護されて、これらの官能基の望ましくない反応を妨げ得る。適切な保護基は、種々の官能基に対して当該分野で公知である(Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第二版,New York:John Wiley and Sons(1991)(本明細書中に参考として援用される))。特に有用な保護基としては、t−ブチルエステルおよびエーテル、トリチルエーテルおよびアミン、アセチルエステル、トリメチルシリルエーテル、アセタール、トリクロロエチルエーテルおよびエステル、ならびにカルバマートが挙げられる。
【0057】
一つの実施形態において、各構成要素は、二つの反応基を含み、それらは同じであっても異なっていてもよい。例えば、サイクルsで加えられる各構成要素は、同じである二つの反応基を含み得るが、それらは双方とも、工程s+1およびs−1で加えられる構成要素の二つの反応基に対して相補的である。別の実施形態において、各構成要素は、二つの反応基を含み、これらはそれら自身が相補的である。例えば、ポリアミド分子を含むライブラリーは、二つの第一級アミノ基を含む構成要素と、二つの活性化カルボキシル基を含む構成要素との間の反応により、生成され得る。生じた化合物において、交互のアミド基が反対の方向性を有するために、N末端もC末端も存在しない。あるいは、ポリアミドライブラリーは、それぞれがアミノ基および活性化カルボキシル基を有する構成要素を用いて生成され得る。この実施形態において、サイクルの工程nで加えられる構成要素は、n−1の構成要素上の利用可能な反応基に対して相補的である遊離反応基を有するが、好ましくはn番目の構成要素上のその他の反応基は保護される。例えば、ライブラリーのメンバーが、C方向からN方向へと合成される場合、加えられる構成要素は、活性化カルボキシル基および保護されたアミノ基を含む。
【0058】
機能的部分は、ポリマー部分またはオリゴマー部分(例えば、ペプチド、擬似ペプチド、ペプチド核酸、またはペプトイド)であり得るか、あるいはそれらは小さな非ポリマー分子(例えば、中心骨格およびその骨格の辺縁部の周りに配置された構造を含む構造を有する分子)であり得る。線状のポリマーライブラリーまたはオリゴマーライブラリーは、二個の反応基を有する構成要素の使用に起因するが、一方、分枝状のポリマーライブラリーまたはオリゴマーライブラリーは、三個または三個より多い反応基を有する構成要素(必要に応じて、二個の反応基のみを有する構成要素と組み合わせて)の使用に起因する。そのような分子は、一般式X1X2…Xnにより表され得、ここで、各Xはn個の単量体単位を含むポリマーの単量体単位であり、nは1より大きい整数である。オリゴマー化合物またはポリマー化合物の場合、末端の構成要素は、二つの官能基を含む必要はない。例えば、ポリアミドライブラリーの場合、C末端の構成要素は、アミノ基を含み得るが、カルボキシル基の存在は任意である。同様に、N末端での構成要素は、カルボキシル基を含み得るが、アミノ基含む必要はない。
【0059】
分枝状のオリゴマー化合物またはポリマー化合物はまた、少なくとも一つの構成要素が、他の構成要素と反応性の三個の官能基を含むという条件で合成され得る。本発明のライブラリーは、線状の分子、分枝状の分子、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0060】
ライブラリーはまた、例えば、二個または二個より多い反応基を有する骨格構成要素を、一つの利用可能な反応基のみを有する他の構成要素と組み合わせて、用いることにより構築され得、ここで、例えば、任意のさらなる反応基は、保護されるか、またはその骨格構成要素中に存在するその他の反応基に対して反応性ではないかのいずれかである。一つの実施形態において、例えば、合成される分子は、一般式X(Y)nにより表され得、ここで、Xは骨格構成要素であり;各Yは、Xに連結した構成要素であり、そしてnは、少なくとも2である整数であり、好ましくは2〜約6の整数である。一つの好ましい実施形態において、サイクル1の元の構成要素は、骨格構成要素である。式X(Y)nの分子において、各Yは、同じであっても、異なっていてもよいが、代表的なライブラリーのたいていのメンバーにおいて、各Yは異なっている。
【0061】
一つの実施形態において、本発明のライブラリーは、ポリアミド化合物を含む。ポリアミド化合物は、任意のアミノ酸から誘導される構成要素で構成され得、そのアミノ酸としては、20種類の天然に存在するα−アミノ酸(例えば、アラニン(Ala;A)、グリシン(Gly;G)、アスパラギン(Asn;N)、アスパラギン酸(Asp;D)、グルタミン酸(Glu;E)、ヒスチジン(His;H)、ロイシン(Leu;L)、リシン(Lys;K)、フェニルアラニン(Phe;F)、チロシン(Tyr;Y)、トレオニン(Thr;T)、セリン(Ser;S)、アルギニン(Arg;R)、バリン(Val;V)、グルタミン(Gln;Q)、イソロイシン(Ile;I)、システイン(Cys;C)、メチオニン(Met;M)、プロリン(Pro;P)およびトリプトファン(Trp;W)、ここで各アミノ酸に対する三文字および一文字のコードが与えられる)が挙げられる。それらの天然に存在する形態において、前述のアミノ酸はそれぞれ、L配置で存在し、他に述べられない限り、本明細書中において、そうであることを前提にする。しかしながら、本発明の方法において、これらのアミノ酸のD配置形態もまた用いられ得る。これらのDアミノ酸は、本明細書中において三文字または一文字の小文字のコード(すなわち、ala(a)、gly(g)、leu(l)、gln(q)、thr(t)、ser(s)など)で示される。構成要素はまた、他のα−アミノ酸(3−アリールアラニン(例えば、ナフチルアラニン)、フェニル置換されたフェニルアラニン(4−フルオロ−、4−クロロ、4−ブロモ、および4−メチルフェニルアラニンが挙げられる);3−ヘテロアリールアラニン(例えば、3−ピリジルアラニン、3−チエニルアラニン、3−キノリルアラニン、および3−イミダゾリルアラニン);オルニチン;シトルリン;ホモシトルリン;サルコシン;ホモプロリン;ホモシステイン;置換されたプロリン(例えば、ヒドロキシプロリンおよびフルオロプロリン);デヒドロプロリン;ノルロイシン;O−メチルチロシン;O−メチルセリン;O−メチルトレオニン、ならびに3−シクロヘキシルアラニンが挙げられるが、それらに限定されない)から誘導され得る。その前述のアミノ酸はそれぞれ、D配置またはL配置のいずれかで用いられ得る。
【0062】
構成要素はまた、α−アミノ酸ではないアミノ酸(例えば、α−アゾアミノ酸;β、γ、δ、ε−アミノ酸);ならびにN置換アミノ酸(例えば、N置換グリシン)であり得、ここでN置換基は、例えば、置換もしくは非置換のアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、またはヘテロアリールアルキル基であり得る。一つの実施形態において、N置換基は、天然に存在するα−アミノ酸、または天然に存在しないα−アミノ酸由来の側鎖である。
【0063】
構成要素はまた、擬似ペプチド構造(例えば、擬似ジペプチド、擬似トリペプチド、擬似テトラペプチド、または擬似ペンタペプチド)であり得る。そのような擬似ペプチド構成要素は、好ましくは、アミノアシル化合物に(増大するポリ(アミノアシル)基へのこれらの構成要素の付加の化学が、他の構成要素に対して用いられる化学と同じであるか、または類似しているように)由来する。構成要素はまた、ペプチド結合と等配電子性(isosteric)である結合を形成し、ペプチド骨格(backbone)改変(例えば、ψ[CH2S]、ψ[CH2NH]、ψ[CSNH2]、ψ[NHCO]、ψ[COCH2]、およびψ[(E)または(Z)CH=CH])を含む擬似ペプチド機能的部分を形成することのできる分子であり得る。上で用いられる命名において、ψはアミド結合の非存在を示す。そのアミド基を置換する構造は、括弧内に明記される。
【0064】
一つの実施形態において、本発明はコード化オリゴヌクレオチドに作動可能に連結する機能的部分を含むか、またはその機能的部分からなる分子を合成する方法を提供する。その方法は、(1)n個の構成要素を含む元の機能的部分からなるイニシエーター化合物を提供する工程(ここでnは1または1より大きい整数であり、その機能的部分は、少なくとも一つの反応基を含み、そしてその元の機能的部分は、n個の構成要素をコードする元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する);(2)そのイニシエーター化合物を、少なくとも一つの相補的反応基(ここで、その少なくとも一つの相補的反応基は、工程(1)の反応基と相補的である)を含む構成要素と、その反応基およびその相補的反応基の反応に対して適切な条件下で、反応させ共有結合を形成させる工程;(3)元のオリゴヌクレオチドと入来オリゴヌクレオチドとを、元のオリゴヌクレオチドおよび入来オリゴヌクレオチドのライゲーションを触媒する酵素の存在下で、その入来オリゴヌクレオチドおよびその元のオリゴヌクレオチドのライゲーションに対して適切な条件下で、反応させ、それによりコード化オリゴヌクレオチドに作動可能に連結するn+1個の構成要素を含む機能的部分を含むか、またはそれらからなる分子を産生する工程を包含する。工程(3)の機能的部分が、反応基を含む場合、工程1〜3は、一回または一回より多く繰り返され得、それによってサイクル1〜iを形成し(ここでiは2または2より大きい整数である)、サイクルs−1の工程(3)の生成物は(ここで、sはiまたはiより小さい整数である)、サイクルsの工程(1)のイニシエーター化合物となる。各サイクルにおいて、一つの構成要素は、増大する機能的部分に加えられ、新しい構成要素をコードする一つのオリゴヌクレオチド配列は、増大するコード化オリゴヌクレオチドに加えられる。
【0065】
一つの実施形態において、上記元のイニシエーター化合物は、第一の構成要素を、オリゴヌクレオチド(例えば、PCRプライマー配列または元のオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド)あるいはリンカー(そのようなオリゴヌクレオチドがそのリンカーに結合する)と反応させることにより、生成される。図5で示される実施形態において、そのリンカーは、第一の構成要素の結合のための反応基を含み、元のオリゴヌクレオチドに結合する。この実施形態において、構成要素、または多数のアリコートのそれぞれにおける、構成要素の収集物の一つの、そのリンカーの反応基との反応、そして、その元のオリゴヌクレオチドへの、その構成要素をコードするオリゴヌクレオチドの添加は、上で示されるプロセスの一つまたは一つより多い元のイニシエーター化合物を産生する。
【0066】
好ましい実施形態において、個々の構成要素はそれぞれ、所定のサイクルで加えられるオリゴヌクレオチド中のヌクレオチド配列が、同じサイクルで加えられる構成要素を同定するように、異なるオリゴヌクレオチドと関連している。
【0067】
構成要素のカップリングおよび、オリゴヌクレオチドのライゲーションは、出発物質および出発試薬の同様な濃度で一般的に起こる。例えば、マイクロモル濃度からミリモル濃度のオーダーの反応物質の濃度(例えば、約10μM〜約10mM)が、構成要素の効果的なカップリングを有するために好まれる。
【0068】
特定の実施形態において、上記方法は、次の工程(2)、あらゆる未反応の元の機能的部分を捕捉(scavenge)する工程をさらに包含する。特定のサイクルにおいて、あらゆる未反応の元の機能的部分を捕捉することは、そのサイクルの元の機能的部分が、より後のサイクルで加えられる構成要素と反応することを妨げる。そのような反応は、一つまたは一つ以上の構成要素を欠く機能的部分の生成につながり得、それは潜在的に、特定のオリゴヌクレオチド配列に対応するさまざまな機能的部分の構造につながる。そのような捕捉は、あらゆる残存する元の機能的部分を、工程(2)の反応基と反応する化合物と反応させることにより達成され得る。好ましくは、その捕捉化合物は、工程(2)の反応基と迅速に反応し、より後の工程で加えられる構成要素と反応し得るさらなる反応基を含まない。例えば、工程(2)の反応基がアミノ基である化合物の合成において、適切な捕捉化合物は、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば、酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)である。
【0069】
別の実施形態において、本発明は、化合物のライブラリーを産生する方法を提供し、その化合物はそれぞれ、オリゴヌクレオチドに作動可能に連結した二つまたは二つより多い構成要素の残基を含む機能的部分を含む。好ましい実施形態において、各分子中に存在するオリゴヌクレオチドは、その分子中の構成要素を同定するための十分な情報、および必要に応じてその構成要素の付加の順序を提供する。この実施形態において、本発明の方法は、化合物のライブラリーを合成する方法を包含し、ここで、その化合物は機能的部分を含み、これは、その機能的部分の構造を同定するオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する二つまたは二つより多い構成要素を含む。その方法は、(1)m個のイニシエーター化合物を含む溶液を提供する工程、ここでmは1または1より大きい整数であり、そのイニシエーター化合物はn個の構成要素を含む機能的部分からなり(ここで、nは1または1より大きい整数である)、その機能的部分は、n個の構成要素を同定する元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する;(2)工程(1)の溶液を、少なくともr個の画分に分割する工程、ここでrは2または2より大きい整数である;(3)各画分を、r個の構成要素のうちの一つと反応させ、それによって、その元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結するn+1個の構成要素を含む機能的部分からなる化合物を含むr個の画分を産生する工程;(4)工程(3)のr個の各画分を、r個の異なる入来オリゴヌクレオチドのセットのうちの一つと、その入来オリゴヌクレオチドとその元のオリゴヌクレオチドの酵素的ライゲーションに対して適切な条件下で、反応させ、それによりn+1個の構成要素をコードする伸長されたオリゴヌクレオチドに作動可能に連結するn+1個の構成要素を含む機能的部分からなる分子を含むr個の画分を産生する工程を包含する。必要に応じて、その方法は、工程(4)で産生されたr個の画分を再合併し、それによりn+1個の構成要素を含む機能的部分(これは、そのn+1個の構成要素をコードする伸長されたオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する)からなる分子を含む溶液を生成する(5)の工程を包含し得る。工程(1)〜(5)は、一回または一回より多く行われ、サイクル1〜iを生成し得る(ここで、iは2または2より大きい整数である)。サイクルs+1において(ここで、sはi−1またはi−1より小さい整数である)、工程(1)のm個のイニシエーター化合物を含む溶液は、サイクルsの工程(5)の溶液である。同様に、サイクルs+1の工程(1)のイニシエーター化合物は、サイクルsの工程(4)の産物である。
【0070】
好ましくは、工程(2)の溶液は、上記ライブラリーの合成の各サイクルにおいて、r個の画分に分割される。この実施形態において、各画分は、独特な構成要素と反応される。
【0071】
本発明の方法において、上記構成要素および上記入来オリゴヌクレオチドの付加の順序は、重要ではなく、そして分子の合成の工程(2)と工程(3)、ならびにそのライブラリー合成における工程(3)と(4)は、逆にされ得る(すなわち、その入来オリゴヌクレオチドは、新しい構成要素が加えられる前に、元のオリゴヌクレオチドとライゲーションされ得る。特定の実施形態において、これらの工程を同時に行うことは可能であり得る。
【0072】
特定の実施形態において、上記方法は、次の工程(2)、あらゆる未反応の元の機能的部分を捕捉する工程をさらに包含する。特定のサイクルにおいて、あらゆる未反応の元の機能的部分を捕捉することは、あるサイクルの元の機能的部分が、より後のサイクルで加えられる構成要素と反応することを妨げる。そのような反応は、一つまたは一つ以上の構成要素を欠く機能的部分の生成につながり得、それは潜在的に、特定のオリゴヌクレオチド配列に対応するさまざまな機能的部分の構造につながる。そのような捕捉は、あらゆる残存する元の機能的部分を、工程(2)の反応基と反応する化合物と反応させることにより達成され得る。好ましくは、その捕捉化合物は、工程(2)の反応基と迅速に反応し、より後の工程で加えられる構成要素と反応し得るさらなる反応基を含まない。例えば、工程(2)の反応基がアミノ基である化合物の合成において、適切な捕捉化合物は、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば、酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)である。
【0073】
一つの実施形態において、ライブラリーの合成で用いられる構成要素は、候補構成要素が、そのライブラリーの合成のために用いられる条件下で、適切な相補的官能基と反応する能力を評価することにより、その候補構成要素のセットから選択される。次に、そのような条件下で適切に反応性であると示される構成要素が、そのライブラリーへの取り込みのために選択され得る。所定のサイクルの産物は、必要に応じて、精製され得る。そのサイクルが中間的なサイクル(すなわち、最後のサイクルよりも前の任意のサイクル)である場合、これらの産物は中間体であり、そして次のサイクルの開始の前に精製され得る。そのサイクルが最後のサイクルである場合、そのサイクルの産物は最終的な産物であり、その化合物の任意の使用の前に精製され得る。この精製工程は、例えば、未反応の、または過剰な反応物質およびオリゴヌクレオチドのライゲーションのために用いられる酵素を除去し得る。その産物を溶液中に存在する他の種から分離するために適切な任意の方法が用いられ得、その方法としては、液体クロマトグラフィー(例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、および適切な共溶媒(例えば、エタノール)による沈殿が挙げられる。精製のための適切な方法は、その産物の性質および合成のために用いられる溶媒系に依存する。
【0074】
上記反応は、好ましくは、水溶液(例えば、緩衝水溶液)中で行われるが、構成要素、オリゴヌクレオチド、中間体、および最終産物、ならびにオリゴヌクレオチドのライゲーションを触媒するために用いられる酵素の溶解度特性と一致した、混合された水性/有機媒体中でもまた行われ得る。
【0075】
上で記載された方法において、所定のサイクルにより産生された理論的な数の化合物は、そのサイクルで用いられる異なるイニシエーター化合物の数、m、およびそのサイクルで加えられる異なる構成要素の数、rの積である。そのサイクルで産生される異なる化合物の実際の数は、rおよびmの積(r×m)と同じくらい高くなり得るが、特定の構成要素の、特定の他の構成要素との反応性の差異を考慮すると、それより低くなり得る。例えば、特定のイニシエーター化合物への、特定の構成要素の付加の動力学は、その合成のサイクルの時間的尺度で、その反応の産物がほとんどまたは全く生成され得ないようなものであり得る。
【0076】
特定の実施形態において、一般的な構成要素は、サイクル1の前、最後のサイクルの後、または任意の二つのサイクルの間に、加えられる。例えば、機能的部分がポリアミドの場合、一般的なN末端キャップ構成要素が、最後のサイクルの後に加えられ得る。一般的な構成要素はまた、任意の二つのサイクルの間に導入され、例えば、官能基(例えば、アルキン基またはアジド基)を付加し得、これは、ライブラリー合成の後に、機能的部分を改変する(例えば、環化により)ために用いられ得る。
【0077】
用語「作動可能に連結される」は、本明細書中で用いられる場合、二つの化学構造が、受けることが予想される種々の操作を通して連結されたままであるような方法で、一緒になって連結されることを意味する。代表的に、機能的部分およびコード化オリゴヌクレオチドは、適切な結合基(linking group)により共有結合される。その結合基は、オリゴヌクレオチドのための結合部位、および機能的部分のための結合部位を有する、二価の部分である。例えば、機能的部分がポリアミド化合物である場合、そのポリアミド化合物は、そのN末端、そのC末端で、または、側鎖のうちの一つにある官能基により、その結合基と結合され得る。その結合基は、ポリアミド化合物とオリゴヌクレオチドを、少なくとも一個の原子により、そして好ましくは一個より多い原子(例えば、少なくとも二個の原子、少なくとも三個の原子、少なくとも四個の原子、少なくとも五個の原子、または少なくとも六個の原子)により、分離するのに十分である。好ましくは、その結合基は、ポリアミド化合物が、オリゴヌクレオチドには依存しない方法で、標的分子に結合することを可能にするほど十分に柔軟である。
【0078】
一つの実施形態において、上記結合基は、ポリアミド化合物のN末端、およびオリゴヌクレオチドの5’−リン酸基と結合される。例えば、その結合基は、一方の末端に活性化カルボキシル基を、そして他方の末端に活性化エステルを含む結合基前駆体から誘導され得る。その結合基前駆体の、そのN末端窒素原子との反応は、その結合基を、そのポリアミド化合物またはN末端構成要素に結びつけるアミド結合を形成するが、一方、その結合基前駆体の、オリゴヌクレオチドの5’−ヒドロキシル基との反応は、エステル結合(linkage)によるその結合基へのオリゴヌクレオチドの結合をもたらす。その結合基は、例えば、ポリメチレン鎖、(例えば、−(CH2)n−鎖)、またはポリ(エチレングリコール)鎖(例えば、−(CH2CH2O)n鎖)を含み得、ここで、どちらの場合も、nは1〜約20の整数である。好ましくは、nは2〜約12であり、さらに好ましくは約4〜約10である。一つの実施形態において、その結合基は、ヘキサメチレン(−(CH2)6−)基を含む。
【0079】
構成要素が、アミノ酸残基である場合、生じる機能的部分は、ポリアミドである。アミノ酸は、アミド結合の形成のための任意の適切な化学を用いて結合され得る。好ましくはアミノ酸構成要素のカップリングは、オリゴヌクレオチドの酵素的ライゲーションと適合する条件下で(例えば、中性のpHまたは中性に近いpHで、そして水溶液中で)行われる。一つの実施形態において、ポリアミド化合物は、C末端からN末端の方向に合成される。この実施形態において、第一の、またはC末端の構成要素は、そのカルボキシル基にて、適切な結合基を通してオリゴヌクレオチドに結合される。その第一の構成要素は、第二の構成要素と反応され、これは、好ましくは、活性化カルボキシル基および保護されたアミノ基を有する。溶液相アミド結合形成に適切な任意の活性化/保護基ストラテジーが用いられ得る。例えば、適切な活性化カルボキシル種としては、フッ化アシル(米国特許第5,360,928号(その全体は、本明細書中に参考として援用される))、対称無水物(symmetrical anhydride)およびN−ヒドロキシスクシンイミドエステルが挙げられる。アシル基はまた、当該分野で公知であるように、適切な活性化化合物との反応により、原位置で(in situ)活性化され得る。適切な活性化化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、n−プロパン−ホスホン酸無水物(PPA)、塩化N,N−ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)イミド−ホスホリル(BOP−Cl)、ブロモ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBrop)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、Castro試薬(BOP,PyBop)、O−ベンゾトリアゾリル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム塩(HBTU)、ジエチルホスホニルシアニド(DEPCN)、2,5−ジフェニル−2,3−ジヒドロ−3−オキソ−4−ヒドロキシ−チオフェンジオキシド(Steglich試薬;HOTDO)、1,1’−カルボニル−ジイミダゾール(CDI)、および塩化4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム(DMT−MM)が挙げられる。カップリング試薬は、単独で、または添加物(例えば、N.N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)、N−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOBt)、N−ヒドロキシベンゾトリアジン(HOOBt)、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、N−ヒドロキシアザベンゾトリアゾール(HOAt)、アザベンゾトリアゾリル−テトラメチルウロニウム塩(HATU、HAPyU)、または2−ヒドロキシピリジン)と組み合わせて用いられ得る。特定の実施形態において、ライブラリーの合成は、構造的に多様な構成要素のセットの使用を可能にするために、二つまたは二つより多い活性化ストラテジーの使用を必要とする。各構成要素に対して、当業者は、適切な活性化ストラテジーを決定し得る。
【0080】
N末端保護基は、上記プロセスの条件と適合である任意の保護基(例えば、溶液相合成条件に対して適切である保護基)であり得る。好ましい保護基は、フルオレニルメトキシカルボニル(「Fmoc」)基である。アミノアシル構成要素の側鎖上の任意の潜在的に反応性の官能基もまた、適切に保護される必要があり得る。好ましくは、その側鎖保護基は、N末端保護基と直角であり、すなわち、その側鎖保護基は、N末端保護基の除去に必要である条件とは異なる条件下で除去される。適切な側鎖保護基としては、ニトロベラトリル基が挙げられ、それは側鎖カルボキシル基および側鎖アミノ基の双方を保護するために用いられ得る。別の適切な側鎖アミン保護基は、N−ペント−4−エノイル基である。
【0081】
構成要素は、機能的部分への取り込みの後に、例えば、一つまたは一つより多い構成要素上の官能基を含む適切な反応により、改変され得る。構成要素の改変は、最後の構成要素の添加の後に、または機能的部分の合成における任意の中間点(例えば、合成プロセスの任意のサイクルの後)で、起こり得る。本発明の二官能性分子のライブラリーが合成される場合、構成要素の改変は、全体のライブラリー上で、またはそのライブラリーの一部分上で行われ得、それにより、ライブラリーの複雑性の程度を増加させる。適切な構成要素改変反応としては、機能的部分およびコード化オリゴヌクレオチドと適合する条件下で行われ得る反応が挙げられる。そのような反応の例としては、アミノ基またはヒドロキシル基のアシル化およびスルホン化、アミノ基のアルキル化、カルボキシル基のエステル化またはチオエステル化、カルボキシル基のアミド化、アルケンのエポキシド化、ならびに当該分野で公知の他の反応が挙げられる。機能的部分が、アルキンまたはアジド官能基を有する構成要素を含む場合、アジド/アルキン付加環化反応が、構成要素を誘導するために用いられ得る。例えば、アルキンを含む構成要素は、有機アジドと反応され得るか、またはアジドを含む構成要素は、アルケンと反応され得、いずれの場合も、トリアゾールを形成する。構成要素改変反応は、最後の構成要素付加の後で、または合成プロセスの中間点で起こり得、種々の化学構造(炭水化物、金属結合部位、および特定の生体分子または組織型を標的にするための構造が挙げられる)を、機能的部分に付加するために用いられ得る。
【0082】
別の実施形態において、機能的部分は、構成要素の線状の連続物を含み、この線状の連続物は、適切な反応を用いて環化される。例えば、その線状の配列(array)中の少なくとも二つの構成要素が、スルフヒドリル基を含む場合、そのスルフヒドリル基は、酸化されてジスルフィド結合を形成し得、それにより、その線状の配列を環化する。例えば、機能的部分は、二つあるいは二つより多いL−システインもしくはD−システイン、および/またはL−ホモシステインもしくはD−ホモシステイン部分を含むオリゴヌクレオチドであり得る。構成要素はまた、ともに反応して、線状の配列を環化することのできる他の官能基(例えば、カルボキシル基、およびアミノ基またはヒドロキシル基)を含み得る。
【0083】
好ましい実施形態において、線状の配列中の構成要素のうちの一つは、アルキン基を含み、その線状の配列中の別の構成要素は、アジド基を含む。そのアジド基およびアルキン基は、付加環化により反応するように誘導され得、大環状構造をもたらす。図9で説明される例において、機能的部分は、そのC末端にプロパルギルグリシン構成要素を、そしてそのN末端にアジドアセチル基を含むポリペプチドである。適切な条件下でのアルキン基およびアジド基の反応は、環式化合物(大きな環のトリアゾール構造を含む)の形成をもたらす。ライブラリーの場合、一つの実施形態において、そのライブラリーの各メンバーは、アルキンおよびアジドを含む構成要素を含み、この方法で環化され得る。第二の実施形態において、ライブラリーのすべてのメンバーは、アルキンおよびアジドを含む構成要素を含むが、そのライブラリーの一部分のみが環化される。第三の実施形態において、特定の機能的部分のみが、アルキンおよびアジドを含む構成要素を含み、これらの分子のみが環化される。前述の第二の実施形態および第三の実施形態において、付加環化反応の後のライブラリーは、環状および線状の機能的部分の双方を含む。
【0084】
特定の合成工程の間、同じ機能的部分(例えば、トリアジン)がライブラリーのそれぞれの、そして全ての画分に加えられる、本発明のいくつかの実施形態において、その機能的部分をコードするオリゴヌクレオチドタグを付加することは必要ではない可能性がある。
【0085】
オリゴヌクレオチドは化学的方法または酵素的方法によりライゲーションされ得る。一つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、化学的方法によりライゲーションされる。DNAおよびRNAの化学的ライゲーションは、例えば、Shabarova,et al.(1991)Nucleic Acids Research,19,4247−4251、Federova,et al.(1996)Nucleosides and Nucleotides,15,1137−1147、およびCarriero and Damha(2003)Journal of Organic Chemistry,68,8328−8338により教示されるように水溶性のカルボジイミドおよび臭化シアンのような試薬を用いて行われ得る。一つの実施形態において、化学的ライゲーションは、pH7.6緩衝液(1M MES+20mM MgCl2)中の臭化シアン(アセトニトリル中5M)を、5’リン酸化オリゴヌクレオチドと1:10v/vの比で、0℃で1〜5分間、使用することで、行われる。別の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、酵素的方法を用いてライゲーションされる。いずれの実施形態においても、オリゴヌクレオチドは二本鎖であり得、好ましくは約5個〜約14個の塩基のオーバーハング(overhang)を有し得る。いずれの場合も、ライゲーションされる各オリゴヌクレオチドに、約6個の塩基のオーバーラップを有するスプリント(splint)が、反応性5’および3’部分を互いに近接するように位置を定めるために用いられる場合、オリゴヌクレオチドはまた、一本鎖であり得る。
【0086】
一つの実施形態において、元の構成要素は、元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結される。第二の構成要素の元の構成要素へのカップリングの前に、または後に、第二の構成要素を同定する第二のオリゴヌクレオチド配列が、その元のオリゴヌクレオチドにライゲーションされる。元のオリゴヌクレオチド配列および入来オリゴヌクレオチド配列をライゲーションするための方法が、図1および図2に示される。図1において、元のオリゴヌクレオチドは、二本鎖であり、そして、一本の鎖は、第二のオリゴヌクレオチドの一つの末端に対して相補的であるオーバーハング配列を含み、その第二のオリゴヌクレオチドを、その元のオリゴヌクレオチドと接触させる。好ましくは、その元のオリゴヌクレオチドのオーバーハング配列、およびその第二のオリゴヌクレオチドの相補的配列は、双方とも少なくとも約4個の塩基であり;さらに好ましくは、双方の配列は、ともに同じ長さである。その元のオリゴヌクレオチドおよびその第二のオリゴヌクレオチドは、適切な酵素を用いてライゲーションされ得る。その元のオリゴヌクレオチドが、鎖のうちの一本(「トップ鎖(top strand)」)の5’末端にて、第一の構成要素と連結される場合、そのトップ鎖と相補的な鎖(「ボトム鎖(bottom strand)」)は、その5’末端にオーバーハング配列を含み、そして第二のオリゴヌクレオチドは、その5’末端に相補的配列を含む。第二のオリゴヌクレオチドのライゲーションの後に、第二のオリゴヌクレオチド(これは、3’にオーバーハング相補的配列を有し、さらなるオーバーハング配列を含む)の配列と相補的な鎖が加えられ得る。
【0087】
一つの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、図2に示されるように伸長される。増大する機能的部分および入来オリゴヌクレオチドに結合したオリゴヌクレオチドは、「スプリント」配列(これは、元のオリゴヌクレオチドの3’末端と相補的な領域、および入来オリゴヌクレオチドの5’末端と相補的な領域)の使用によりライゲーションのために位置付けられる。そのスプリントは、そのオリゴヌクレオチドの5’末端を、入来オリゴの3’末端に近接させ、そしてライゲーションは、酵素的ライゲーションを用いて遂行される。図2で説明される例において、元のオリゴヌクレオチドは、16個の核酸塩基からなり、スプリントはその3’末端での6個の塩基と相補的である。入来オリゴヌクレオチドは、12個の核酸塩基からなり、そしてスプリントはその5’末端での6個の塩基と相補的である。そのスプリントの長さおよびその相補的領域の長さは重要ではない。しかしながら、その相補的領域は、ライゲーションの条件下で、安定な二量体の形成を可能にするほど十分に長くなければならない(しかし、最後の分子において、過剰に大きなコード化ヌクレオチドを生成するほど長くなるべきではない)。好ましくは、相補的領域は、約4塩基〜約12塩基長であり、さらに好ましくは約5塩基〜約10塩基長であり、最も好ましくは約5塩基〜約8塩基長である。
【0088】
本明細書中に示されるライブラリーの合成のための方法に用いられる分割および混合方法は、独特な機能的部分がそれぞれ、その機能的部分を同定する少なくとも一つの独特なオリゴヌクレオチド配列に作動可能に連結することを保証する。2つまたは2つより多い異なるオリゴヌクレオチドタグが、合成サイクルのうちの少なくとも一つで、少なくとも一つの構成要素のために用いられる場合、その構成要素を含む異なる機能的部分はそれぞれ、多数のオリゴヌクレオチドによりコードされる。例えば、2つのオリゴヌクレオチドタグが、4回のサイクルのライブラリーの合成の間、各構成要素のために用いられる場合、独特な機能的部分をそれぞれコードする16(24)種の配列が存在する。独特な機能的部分を、多数の配列で、それぞれコードするための数種の潜在的な利点が存在する。第一に、同じ機能的部分をコードするタグ配列の異なる組み合わせの選択は、これらの分子が独立して選択されたことを保証する。第二に、同じ機能的部分をコードするタグ配列の異なる組み合わせの選択は、その選択が、オリゴヌクレオチドの配列に基づいていた可能性を排除する。第三に、技術的人工物は、配列分析により、特定の機能的部分が高度に富んでいるが、多くの可能性からの一つの配列の組み合わせのみが現れることを示唆される場合、認識され得る。多数のタグ化は、同じ構成要素との(しかし、異なるオリゴヌクレオチドタグとの)独立した分割反応を受けることで成し遂げられ得る。あるいは、多数のタグ化は、単独のタグ化反応において、適切な割合の各タグを、個々の構成要素と混合させることで、成し遂げられ得る。
【0089】
一つの実施形態において、元のオリゴヌクレオチドは、二本鎖であり、そして二本の鎖は共有結合される。二本の鎖を共有結合する一つの方法は、図3に示され、ここで、連結部分(例えば、リンカー)が、二本の鎖と機能的部分を連結するために用いられる。その連結部分は、構成要素と反応するように適合される第一の官能基、オリゴヌクレオチドの3’末端と反応するように適合される第二の官能基、オリゴヌクレオチドの5’末端と反応するように適合される第三の官能基を含む、任意の化学構造であり得る。好ましくは、その第二の官能基および第三の官能基は、二本のオリゴヌクレオチド鎖のハイブリッド形成を可能にする相対配向に、その二本の鎖を位置づけるように配向される。例えば、連結部分(例えば、リンカー)は、一般構造(I):
【0090】
【化30】
を有し得、
ここで、Aは、構成要素と共有結合を形成し得る官能基であり、Bは、オリゴヌクレオチドの5’末端と結合を形成し得る官能基であり、そしてCは、オリゴヌクレオチドの3’末端と結合を形成し得る官能基である。D、F、およびEは、官能基A、官能基C、および官能基Bを、核となる原子または骨格であるSに連結する化学的基である。好ましくは、D、E、およびFは、それぞれ独立して原子の鎖(例えば、アルキレン鎖またはオリゴ(エチレングリコール)鎖)であり、そして、D、E、およびFは、同じであっても、異なっていてもよく、好ましくは、二本のオリゴヌクレオチドのハイブリッド形成および機能的部分の合成を可能にするほど効果的である。一つの実施形態において、三価の連結部分は、構造
【0091】
【化31】
を有するリンカーである。この実施形態において、NH基は、構成要素への結合に対して利用可能であり、一方、末端のリン酸基は、オリゴヌクレオチドへの結合に対して利用可能である。
【0092】
元のオリゴヌクレオチドが二本鎖である実施形態において、入来オリゴヌクレオチドもまた二本鎖である。図3で示されるように、元のオリゴヌクレオチドは、他方の鎖より長い一本の鎖を有し得、これは、オーバーハング配列を提供する。この実施形態において、入来オリゴヌクレオチドは、元のオリゴヌクレオチドのオーバーハング配列に相補的であるオーバーハング配列を含む。その二本の相補的なオーバーハング配列のハイブリッド形成は、入来オリゴヌクレオチドを、元のオリゴヌクレオチドへのライゲーションのための位置に至らせる。このライゲーションは、DNAリガーゼまたはRNAリガーゼを用いて酵素的に行われ得る。入来オリゴヌクレオチドおよび元のオリゴヌクレオチドのオーバーハング配列は、好ましくは同じ長さであり、二個または二個より多いヌクレオチド、好ましくは2個〜約10個のヌクレオチド、さらに好ましくは2個〜約6個のヌクレオチドからなる。一つの好ましい実施形態において、入来オリゴヌクレオチドは、各末端にオーバーハング配列を有する二本鎖オリゴヌクレオチドである。一方の末端でのオーバーハング配列は、元のオリゴヌクレオチドのオーバーハング配列に相補的であり、一方、入来オリゴヌクレオチドと元のオリゴヌクレオチドとのライゲーションの後、他方の末端でのオーバーハング配列は、次のサイクルの元のオリゴヌクレオチドのオーバーハング配列となる。一つの実施形態において、その三本のオーバーハング配列は、すべて2個〜6個のヌクレオチド長であり、入来オリゴヌクレオチドのコード化配列は、3個〜10個のヌクレオチド長、好ましくは3個〜6個のヌクレオチド長である。特定の実施形態において、オーバーハング配列は、すべて2個のヌクレオチド長であり、コード化配列は5個のヌクレオチド長である。
【0093】
図4で説明される実施形態において、入来鎖は、その3’末端に、元のオリゴヌクレオチドの3’末端と相補的である領域を有し、双方の鎖の5’末端でのオーバーハングを残す。その5’末端は、例えば、DNAポリメラーゼ(例えば、ventポリメラーゼ)を用いて満たされ得、二本鎖の伸長されたオリゴヌクレオチドをもたらす。このオリゴヌクレオチドのボトム鎖は、除去され得、そしてさらなる配列が、同じ方法を用いて、トップ鎖の3’末端に加えられ得る。
【0094】
コード化オリゴヌクレオチドタグは、連続した構成要素をそれぞれ同定する、オリゴヌクレオチドの連続した付加の結果として、形成される。本発明の方法の一つの実施形態において、連続したオリゴヌクレオチドタグは、酵素的ライゲーションにより結合されて、コード化オリゴヌクレオチドを生成し得る。
【0095】
オリゴヌクレオチドの酵素で触媒されたライゲーションは、核酸フラグメントをライゲーションする能力を有する任意の酵素を用いて行われ得る。例示的な酵素としては、リガーゼ、ポリメラーゼ、およびトポイソメラーゼが挙げられる。本発明の特定の実施形態において、DNAリガーゼ(EC 6.5.1.1)、DNAポリメラーゼ(EC 2.7.7.7)、RNAポリメラーゼ(EC 2.7.7.6)、またはトポイソメラーゼ(EC 5.99.1.2)が、オリゴヌクレオチドをライゲーションするために用いられる。各ECクラス中に含まれる酵素は、例えば、Bairoch(2000)Nucleic Acids Research 28:304−5に記載されるように、見出され得る。
【0096】
好ましい実施形態において、本発明の方法で用いられ用いられるオリゴヌクレオチドは、オリゴデオキシヌクレオチドであり、そしてそのオリゴヌクレオチドのライゲーションを触媒するために用いられる酵素は、DNAリガーゼである。リガーゼの存在下でライゲーションが起こるために、すなわち、ホスホジエステル結合が二本のオリゴヌクレオチドの間で形成されるために、一方のオリゴヌクレオチドは、遊離5’リン酸基を有さなければならず、そして他方のオリゴヌクレオチドは、遊離3’ヒドロキシル基を有さなければならない。本発明の方法で用いられ得る例示的なDNAリガーゼとしては、T4 DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、T4 RNAリガーゼ、DNAリガーゼ(E.coli)(全ては、例えば、New England Biolabs,MAより入手可能)が挙げられる。
【0097】
当業者は、ライゲーションのために用いられる各酵素は、特異的な条件(例えば、温度、緩衝液の濃度、pH、および時間)下で、最適な活性を有すことを理解する。こららの条件はぞれぞれ、例えば、製造者の指示にしたがって、オリゴヌクレオチドタグの最適なライゲーションを得るために調整され得る。
【0098】
入来オリゴヌクレオチドは、任意の望ましい長さであり得るが、好ましくは少なくとも3個の核塩基長である。さらに好ましくは、入来オリゴヌクレオチドは、4個または4個より多い核塩基長である。一つの実施形態において、入来オリゴヌクレオチドは、3個〜約12個の核塩基長である。本発明のライブラリー中の分子のオリゴヌクレオチドは、当該分野で公知であるような、PCRためのプライマーとして役立ち得る一般的な末端配列を有することが好ましい。そのような一般的な末端配列は、ライブラリー合成の最後のサイクルで加えられる入来オリゴヌクレオチドの末端として取り込まれ得るか、例えば、本明細書中に開示される酵素的ライゲーション方法を用いて、ライブラリー合成の後に加えられ得る。
【0099】
本発明の方法の好ましい実施形態が、図5に示される。そのプロセスは、その5’末端で、アミノ基で終結するリンカーに結合した合成DNA配列を用いて始まる。工程1において、この出発DNA配列は、スプリントDNA鎖、DNAリガーゼ、およびTris緩衝液中のジチオトレイトールの存在下で、入来DNA配列にライゲーションされる。これにより、タグ化DNA配列を生成し、これは、次の工程で直接用いられ得るか、または、次の工程に進む前に、例えば、HPLCまたはエタノール沈殿を用いて、精製され得る。工程2において、タグ化DNAは、保護された活性化アミノ酸と反応され、この例において、Fmocで保護されたフッ化アミノ酸は、保護されたアミノ酸−DNA結合体を生成する。工程3において、保護されたアミノ酸−DNA結合体は脱保護され、例えば、ピペリジンの存在下で、生じた脱保護された結合体は、必要に応じて、例えば、HPLCまたはエタノール沈殿により精製される。脱保護された結合体は、第一の合成サイクルの産物であり、そして第二のサイクルのための出発物質(これは、脱保護された結合体の遊離アミノ基へ、第二のアミノ基を付加する)となる。
【0100】
PCRが、選択された分子のコード化オリゴヌクレオチドを増幅および/または配列決定するために用いられる実施形態において、コード化オリゴヌクレオチドは、例えば、PCRプライマー配列および/または配列決定プライマー(例えば、3’−GACTACCGCGCTCCCTCCG−5’および3’−GACTCGCCCGACCGTTCCG−5’のようなプライマー)を含み得る。PCRプライマー配列は、例えば、合成の最初のサイクルの前の元のオリゴヌクレオチドに含まれ得、そして/または、最初の入来オリゴヌクレオチドとともに含まれ得、そして/または、ライブラリー合成の最後のサイクルの後に、コード化オリゴヌクレオチドにライゲーションされ得、そして/または、最後のサイクルの入来オリゴヌクレオチドに含まれ得る。ライブラリー合成の最後のサイクルの後で、および/またはその最後のサイクルの入来オリゴヌクレオチド中に加えられるPCRプライマー配列は、本明細書中で「キャップ配列(capping sequence)」と言及される。
【0101】
一つの実施形態において、PCRプライマー配列は、コード化オリゴヌクレオチドタグ中に設計(design)される。例えば、PCRプライマー配列は、元のオリゴヌクレオチドタグ中に取り込まれ得、そして/または最後のオリゴヌクレオチドタグ中に取り込まれ得る。一つの実施形態において、同じPCRプライマー配列は、元のオリゴヌクレオチドタグおよび最後のオリゴヌクレオチドタグ中に取り込まれる。別の実施形態において、第一のプライマー配列は、元のオリゴヌクレオチドタグ中に取り込まれ、そして、第二のプライマー配列は、最後のオリゴヌクレオチドタグ中に取り込まれる。あるいは、第二のプライマー配列は、本明細書中に記載されるキャップ配列中に取り込まれ得る。好ましい実施形態において、PCRプライマー配列は、少なくとも、約5、約7、約10、約13、約15、約17、約20、約22、または約25ヌクレオチド長である。
【0102】
本発明のライブラリーにおける使用のために適切なPCRプライマー配列は、当該分野で公知であり;適切なプライマーおよび方法は、例えば、Innis,et al.,eds.,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,San Diego:Academic Press(1990)(その内容は、その全体が本明細書中で参考として援用される)で説明される。本明細書中に記載されたライブラリーの構築における使用のための他の適切なプライマーは、PCT公開 WO 2004/069849、およびWO 2005/003375(それらの全体の内容は、明確に本明細書中で参考として援用される)に記載されたプライマーである。
【0103】
プライマー伸長により合成されるプライマー、プローブ、および核酸フラグメントまたはセグメントに関する、用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書中で用いられる場合、二個または二個より多いデオキシリボヌクレオチド、好ましくは三個より多いデオキシリボヌクレオチドで構成される分子と定義される。
【0104】
用語「プライマー」は、本明細書中で用いられる場合、核酸制限消化物から精製されようと、または合成的に産生されようと、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が、誘発される、すなわちヌクレオチドおよび重合化のための物質(例えば、DNAポリメラーゼ、逆トランスクリプターゼなど)の存在下であり、そして適切な温度およびpHである条件下に置かれた場合、核酸合成の開始点として作用することのできるポリヌクレオチドのことをいう。プライマーは、好ましくは、最大限の効用のため一本鎖であるが、また二本鎖の形態であり得る。二本鎖の場合、プライマーは最初に、伸長産物を調製するために使用される前にその相補的鎖から分離するために、処理される。好ましくは、プライマーは、ポリデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、重合化のための物質の存在下で、伸長産物の合成を始めるために十分に長くなければならない。プライマーの正確な長さは、多くの要因(温度、およびプライマーの供給源が挙げられる)に依存する。
【0105】
本明細書中で用いられるプライマーは、増幅される特異的な配列のそれぞれの異なる鎖に対して「著しく」相補的であるように選択される。このことは、プライマーは、その反応性テンプレート鎖と非無作為的にハイブリッド形成するように、十分に相補的でなければならない。したがって、プライマー配列は、そのテンプレートの正確な配列を反映しても、しなくてもよい。
【0106】
ポリヌクレオチドプライマーは、任意の適切な方法(例えば、Narang et al.,(1979)Meth.Enzymol.,68:90;米国特許第4,356,270号、米国特許第4,458,066号、米国特許第4,416,988号、米国特許第4,293,652号;およびBrown et al.,(1979)Meth.Enzymol.,68:109に記載されるホスホトリエステルまたはホスホジエステル法)を用いて、調製され得る。前述の文書の内容はすべて、本明細書中に参考として援用される。
【0107】
PCRプライマー配列が、入来オリゴヌクレオチドに含まれる場合、これらの入来オリゴヌクレオチドは、コード化配列およびPCRプライマー配列の双方を含むため、他のサイクルで加えられる入来オリゴヌクレオチドよりも十分に長い。
【0108】
一つの実施形態において、キャップ配列は、最後の構成要素および最後の入来オリゴヌクレオチドの付加の後に加えられ、本明細書中で示されるライブラリーの合成は、実質的にすべてのライブラリーのメンバーのオリゴヌクレオチド部分が、PCRプライマー配列を含む配列で終結するように、キャップ配列をコード化配列にライゲーションする工程を包含する。好ましくは、キャップ配列は、最後の合成サイクルの産物である混合された画分へのライゲーションにより付加される。キャップ配列は、ライブラリーの構築において用いられる酵素的プロセスを用いて加えられ得る。
【0109】
一つの実施形態において、同じキャップ配列は、ライブラリーのすべてのメンバーにライゲーションされる。別の実施形態において、多数のキャップ配列が用いられる。この実施形態において、可変塩基を含むオリゴヌクレオチドキャップ配列は、例えば、最後の合成サイクルの後に、ライブラリーのメンバー上へとライゲーションされる。一つの実施形態において、最後の合成サイクルに次いで、画分は混合され、次に再び画分に分割され、異なるキャップ配列を有する各画分が加えられる。あるいは、多数のキャップ配列は、最後のサイクルの後に、混合されたライブラリーに加えられ得る。双方の実施形態において、最後のライブラリーのメンバーは、二つまたは二つより多い異なるキャップ配列を含む同定(identifying)オリゴヌクレオチドに連結した特異的な機能的部分を含む分子を含む。
【0110】
一つの実施形態において、キャッププライマー(capping primer)は、可変(すなわち、変質した)ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド配列を含む。キャッププライマー内のそのような変質した塩基は、構成要素の組み合わせが、PCR重複(同一の配列)の結果であるか、または分子の独立した出現(異なる配列)であるかどうかを決定することで、関心を引くライブラリー分子の同定を可能にする。例えば、そのような変質した塩基は、コード化ライブラリーの生物学的スクリーニングの間同定される、偽陽性の潜在的な数を減少させ得る。
【0111】
一つの実施形態において、変質したキャッププライマーは、次の配列を含むか、または有する:
【0112】
【化32】
ここで、Nはいずれかの4個の塩基であり得、1024(45)種の異なる配列を可能にする。そのプライマーは、ライブラリー上へのライゲーションおよびプライマー伸長の後に、次の配列を有する:
【0113】
【化33】
別の実施形態において、キャッププライマーは、以下の配列を含むか、または有する:
【0114】
【化34】
ここで、BはC、G、またはTのいずれかであり得、19,683(39)種の異なる配列を可能にする。このプライマーにおける変質した領域の設計は、変質した塩基Bに隣接し、そして区切りをつける(punctuate)塩基Aが、3塩基より多いのホモポリマー伸長を妨げ、配列の一直線化を促進するため、DNA配列分析を改善させる。
【0115】
一つの実施形態において、変質したキャップオリゴヌクレオチドは、適切な酵素を用いて、ライブラリーのメンバーにライゲーションされ、そして変質したキャップオリゴヌクレオチドの上部の鎖は、適切な酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)を用いて、後で重合化される。
【0116】
別の実施形態において、PCRプライミング配列は、「ユニバーサル(universal)アダプタ」または「ユニバーサルプライマー」である。本明細書中で用いられる場合、「ユニバーサルアダプタ」または「ユニバーサルプライマー」は、独特なPCRプライミング領域(すなわち、例えば、長さが約5、約7、約10、約13、約15、約17、約20、約22、または約25のヌクレオチド)を含み、独特な配列決定プライミング領域(すなわち、例えば、長さが約5、約7、約10、約13、約15、約17、約20、約22、または約25のヌクレオチド)に隣接するように位置し、そして、4種のデオキシリボヌクレオチド(すなわち、A、C、G、T)のそれぞれのうちの少なくとも一つからなる独特の識別可能な鍵となる配列(または試料同定因子(sample identifier)配列)が、必要に応じて、後に続くオリゴヌクレオチドである。
【0117】
本明細書中で用いられる場合、用語「識別可能な鍵となる配列」または「試料同定因子配列」は、試料由来の分子の集団を独特にタグ化するために用いられ得る配列のことをいう。それぞれが、独特な試料同定因子配列を含む多数の試料は、個々の試料の分析のためのDNA配列決定の後に、混合、配列決定、そして再分類され得る。同じ識別可能な配列が、全体のライブラリーのために用いられ得るか、あるいは異なる識別可能な鍵となる配列が、異なるライブラリーを追跡するために、用いられ得る。一つの実施形態において、識別可能な鍵となる配列は、5’PCRプライマー上、または3’PCRプライマー上、あるいは両方のプライマー上にある。両方のPCRプライマーが、試料同定因子配列を含む場合、独特な試料同定因子配列と混合され得る異なる試料の数は、各プライマー上の試料同定因子配列の数の産物である。したがって、10種の異なる5’試料同定配列プライマーは、10種の異なる3’試料同定因子配列プライマーと合併されて、100種の異なる試料同定因子配列の組み合わせを生成し得る。
【0118】
識別可能な鍵となる配列を含む、独特な5’および3’PCRプライマーの非限定的な例としては、以下:
5’プライマー(可変位置がボールド体かつイタリック体):
【0119】
【化35】
3’SIDプライマー(可変位置がボールド体かつイタリック体):
【0120】
【化36】
が挙げられる。
【0121】
一つの実施形態において、識別可能な鍵となる配列は、長さが約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10ヌクレオチド長である。別の実施形態において、識別可能な鍵となる配列は約1〜4個のヌクレオチドの組み合わせである。なおも別の実施形態において、各ユニバーサルアダプタは、長さが約44ヌクレオチド長である。一つの実施形態において、ユニバーサルアダプタは、T4 DNAリガーゼを用いて、コード化ヌクレオチドの末端上にライゲーションされる。異なるユニバーサルアダプタは、各ライブラリーの調製のために設計され得、したがって、各ライブラリーに対する独特な同定因子を提供する。ユニバーサルアダプタの大きさおよび配列は、当業者により必要であると考えられる場合、改変され得る。
【0122】
上で示されるように、本発明の方法の一部分としてのオリゴヌクレオチドタグは、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)の使用により決定され得る。
【0123】
オリゴヌクレオチドタグは、本明細書中に記載される機能的部分を作る構成要素を同定するポリヌクレオチドで構成される。オリゴヌクレオチドタグの核酸配列は、オリゴヌクレオチドタグを、以下のようにPCR反応に供することで決定される。適切な試料は、PCRプライマー対と接触され、その対のメンバーはそれぞれ、事前選択されたヌクレオチド配列を有し得る。PCRプライマーの対は、コード化オリゴヌクレオチドタグ上のPCRプライマー結合部位へとハイブリッド形成することにより、プライマー伸長反応を開始することができる。PCRプライマー結合部位は、好ましくは、コード化オリゴヌクレオチドタグ中に設計される。例えば、PCRプライマー結合部位は、その元のオリゴヌクレオチドタグに取り込まれ得、そして、第二のPCRプライマー結合部位は、最後のオリゴヌクレオチドタグに取り込まれ得る。あるいは、第二のPCRプライマー結合部位は、本明細書中に記載されるキャップ配列に取り込まれ得る。好ましい実施形態において、PCRプライマー結合部位は、少なくとも、長さが約5、約7、約10、約13、約15、約17、約20、約22、または約25ヌクレオチド長である。
【0124】
PCR反応は、PCRプライマーの対(好ましくは、その既定の量)を、コード化ヌクレオチドタグの核酸(好ましくは、その既定の量)と、PCR緩衝液中で混合することで行われ、PCR反応混合物を形成する。その混合物は、PCR反応産物の形成のために十分な数のサイクル(これは、代表的に既定である)にわたって、熱サイクルされる。十分な量の産物は、DNA配列決定を可能にするために十分な量で単離され得る産物のことである。
【0125】
PCRは代表的に、熱サイクルにより(すなわち、下限が約30℃〜約55℃、上限が約90℃〜約100℃の温度の範囲で、PCR反応混合物の温度を上昇させ、そして下降させることを繰り返すことで)行われる。上昇および下降は連続的であり得るが、好ましくは、ポリヌクレオチドの合成、変性、およびハイブリッド形成に好都合な各温度で、相対的な温度安定性の期間に段階的に作用する。
【0126】
PCR反応は、任意の適切な方法を用いて行われる。一般的にそれは、緩衝水溶液(すなわち、PCR緩衝液)中で、好ましくは7〜9のpHで起こる。好ましくは、モル濃度が過剰なプライマーが望ましい。相当過剰量のモル濃度が、そのプロセスの効用を改善させるために好ましい。
【0127】
PCR緩衝液は、またデオキシリボヌクレオチドトリホスフェート(ポリヌクレオチド合成基質)であるdATP、dCTP、dGTPおよびdTTPならびにポリメラーゼを、すべてプライマー伸張(ポリヌクレオチド合成)反応のために十分な量で含み、代表的に熱安定である。生じた溶液(PCR混合物)を、約1〜約10分間、好ましくは1〜4分間にわたって、約90℃〜100℃まで加熱する。この加熱期間の後、その溶液を54℃(これは、プライマーハイブリッド形成に好ましい)まで冷却させる。その合成反応は、室温から、ある温度(それより高い温度で、ポリメラーゼ(誘発物質)がもはや有効に機能しない)までの範囲の温度で起こり得る。したがって、例えば、DNAポリメラーゼが用いられる場合、温度は一般的に約40℃以下である。熱サイクルは、所望の量のPCR産物が産生されるまで、繰り返される。例示的なPCR緩衝液は次の試薬:50mM KCl;pH8.3で10mM Tris−HCl;1.5mM MgCl.sub.2;0.001%(wt/vol)ゼラチン、200μM dATP;200μM dTTP;200μM dCTP;200μM dGTP;および100マイクロリットルの緩衝液当たり、2.5ユニットのThermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼIを含む。
【0128】
プライマー配列を伸長するための適切な酵素としては、例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、Taq DNAポリメラーゼ、E.coli DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメント、T4 DNAポリメラーゼ、他の入手可能なDNAポリメラーゼ、逆転写酵素、ならびに他の酵素(熱安定性酵素を含む)(これは、適切な方法でヌクレオチドの組み合わせを促進し、核酸鎖それぞれに相補的なプライマー伸長産物を形成する)が挙げられる。一般的に、合成は、各プライマーの3’末端で開始され、合成が終結するまで、テンプレート鎖に沿って5’方向に進行し、異なる長さの分子を産生する。
【0129】
新しく合成されたDNA鎖およびその相補的鎖は、分析プロセスの次の工程で用いられ得る二本鎖の分子を形成する。
【0130】
PCR増幅方法は、米国特許第4,683,192号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、および同第4,965,188号で詳細に、そして少なくともPCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification,H. Erlich,ed.,Stockton Press,New York(1989);およびPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innis et al.,eds.,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に記載されている。すべての前述の文書の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0131】
一旦、コード化オリゴヌクレオチドが増幅されると、そのタグの配列、そして最終的に選択された分子の組成物は、核酸配列分析(これは、ヌクレオチド配列の配列を決定するための周知の手順である)を用いて決定され得る。核酸配列分析は、(a)プローブ鎖とその相補的鎖のハイブリッド形成または変性に基づく物理化学的技術、ならびに(b)ポリメラーゼとの酵素的反応により達せられる。
【0132】
本発明はさらに、化学構造のライブラリーを形成するために、単離された種として、または混合された種のいずれかとして、本発明の方法を用いて産生され得る化合物、およびそのような化合物の収集物に関する。本発明の化合物は、式
【0133】
【化37】
の化合物を含み、
ここで、Xは、一つまたは一つより多い構成要素を含む機能的部分であり、Zは、その3’末端でBに結合したオリゴヌクレオチドであり、そしてYは、その5’末端でCに結合したオリゴヌクレオチドである。Aは、Xと共有結合を形成する官能基であり、Bは、Zの3’末端と結合を形成する官能基であり、そしてCは、Yの5’末端と結合を形成する官能基である。D、F、およびEは、官能基A、官能基C、および官能基Bを、核となる原子または骨格であるSに連結させる化学的基である。好ましくは、D、E、およびFは、それぞれ独立して原子の鎖(例えば、アルキレン鎖またはオリゴ(エチレングリコール)鎖)であり、そして、D、E、およびFは、同じであっても、異なっていてもよく、好ましくは、二本のオリゴヌクレオチドのハイブリッド形成および機能的部分の合成を可能にするほど効果的である。
【0134】
好ましくは、YおよびZは実質的に相補的であり、適切な条件下でワトソン−クリック塩基対および二重鎖形成を可能にするような化合物中に配向される。YおよびZは同じ長さまたは異なる長さである。好ましくは、YおよびZは同じ長さであるか、またはYおよびZのうちの一つは、他方よりも1〜10塩基長い。好ましい実施形態において、YおよびZは長さがそれぞれ10または10より多い塩基長であり、10または10より多い塩基対の相補的領域を有する。さらに好ましくは、YおよびZは、それの全長にわたって相補的である(すなわち、各10塩基対あたり、わずかに一つのミスマッチを有する)。最も好ましくは、それらの全長にわたって相補的である(すなわち、YまたはZ上の任意のオーバーハング領域を除いて、ワトソンクリック塩基対によりハイブリッド形成する鎖は、それらの全長にわたって、ミスマッチが一つもない)。
【0135】
Sは、単独の原子または分子骨格であり得る。例えば、Sは、炭素原子、ホウ素原子、窒素原子、もしくはリン原子、または多原子骨格(例えば、リン酸基、環式基(例えば、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、またはヘテロアリール基)であり得る。一つの実施形態において、リンカーは、構造
【0136】
【化38】
の基であり、
ここで、n、m、およびpはそれぞれ、独立して、約1〜約20、好ましくは2〜8、さらに好ましくは3〜6の整数である。一つの特定の実施形態において、リンカーは以下に示される構造を有する。
【0137】
【化39】
一つの実施形態において、本発明のライブラリーは、構成要素で構成される機能的部分からなる分子を含み、各機能的部分は、コード化オリゴヌクレオチドに作動可能に連結する。そのコード化オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列は、その構成要素が、その機能的部分中に存在することを示し、いくつかの実施形態において、その構成要素の結合性(connectivity)または配置を示す。本発明は、その機能的部分を構築するために用いられる方法論、およびそのオリゴヌクレオチドタグを構築するために用いられる方法論は、同じ反応媒体(好ましくは、水性媒体)中で行われ得、したがって、より前の技術における方法と比較して、ライブラリーを調製する方法を簡素化するという利点を提供する。オリゴヌクレオチドのライゲーション工程および構成要素付加工程が、双方とも水性媒体中で行われ得る特定の実施形態において、各反応は、異なるpH最適条件を有する。これらの実施形態において、構成要素付加反応は、適切な水性緩衝液中で、適切なpHおよび温度で行われ得る。次にその緩衝液は、オリゴヌクレオチドのライゲーションのために適切なpHを提供する水性緩衝液と交換され得る。
【0138】
別の実施形態において、本発明は、式II
【0139】
【化40】
の化合物、およびそのような化合物を含むライブラリーを提供し、
ここで、Xは分子骨格であり、各Yは、独立して辺縁部分であり、そしてnは1〜6の整数である。各Yは、独立して構成要素であり、そしてnは0〜約5の整数である。Lは連結部分であり、Zは構造−At−X(Y)nを同定する一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチドである。その構造X(Y)nは、例えば、表8(以下を参照のこと)で示される骨格構造のうちの一つであり得る。一つの実施形態において、本発明は、式III
【0140】
【化41】
の化合物、およびそのような化合物を含むライブラリーを提供し、
ここで、tは0〜約5、好ましくは0〜3の整数であり、そして各Aは、独立して構成要素である。Lは連結部分であり、そしてZは各AならびにR1、R2、R3およびR4を同定する一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチドである。R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、ヘテロアルキル、置換されたヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換されたシクロアルキル、置換されたヘテロシクロアルキル、アリール、置換されたアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、置換されたアリールアルキル、置換されたヘテロアリールアルキル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、および置換されたアミノから選択される置換基である。一つの実施形態において、各Aはアミノ酸残基である。
【0141】
式IIまたは式IIIの化合物を含むライブラリーは、式IIまたは式IIIの少なくとも約100;約1000;約10,000;約100,000;約1,000,000;約10,000,000種の化合物を含み得る。一つの実施形態において、ライブラリーは、式IIまたは式IIIの少なくとも約100;約1000;約10,000;約100,000;約1,000,000;約10,000,000種の化合物を含むライブラリーを産生するために設計された方法を介して調製される。
【0142】
【化42】
【0143】
【化43】
【0144】
【化44】
【0145】
【化45】
【0146】
【化46】
【0147】
【化47】
【0148】
【化48】
本発明の方法の一つの利点は、それらが莫大な数の化合物を含むライブラリーを調製するために用いられ得ることである。公知の方法(例えば、ポリメラーゼ鎖反応(「PCR」))を用いてコード化オリゴヌクレオチド配列を増幅する能力は、選択された分子が、比較的わずかな複製しか回収されなくても、同定され得ることを意味する。このことは、非常に大きなライブラリーの実用的な使用を可能にし、それらの高い程度の複雑性の結果として、それらは、任意の所定のライブラリーのメンバーの比較的わずかな複製を含むか、または非常に大きな容積の使用を必要とするかのいずれかである。例えば、108種の独特な構造(ここで、各構造は1×1012個の複製を有する)からなるライブラリー(約1ピコモル)は、1μMの効果的な濃度で約100Lの溶液を必要とする。同じライブラリーに対して、各メンバーは、1,000,000個の複製により表される場合、必要とされる容積は、1μMの効果的な濃度で100μLである。
【0149】
好ましい実施形態において、ライブラリーは、各ライブラリーメンバーの約103個〜約1015個の複製を含む。ライブラリーメンバーの間の合成の効率における差異を考慮すると、異なるライブラリーメンバーは、任意の所定のライブラリー中に、異なる数の複製を有する。したがって、ライブラリー中に理論的に存在する各メンバーの複製の数は、同じであり得るが、任意の所定のライブラリーメンバーの複製の実際の数は、任意の他のメンバーの複製の数と独立している。より好ましくは、本発明の化合物のライブラリーは、各ライブラリーのメンバーの、または実質的にすべてのイブラリーのメンバーの少なくとも約105、約106、または約107個の複製を含む。「実質的にすべての」ライブラリーのメンバーは、少なくとも約85%のライブラリーのメンバー、好ましくは少なくとも約90%、そしてさらに好ましくは少なくとも約95%のライブラリーのメンバーを意味する。
【0150】
好ましくは、ライブラリーは、生物学的標的に対する複数の(すなわち二つまたは二つより多い)ラウンドの選択が行われ得る、各メンバーの多くの数の複製を含み、残留分子のオリゴヌクレオチドタグを増幅することを可能にする(したがって、結合分子の機能的部分を同定する)最後のラウンドの選択の後に、十分な量の結合分子を残す。そのような選択プロセスの図式的な表現は、図6で説明される。ここで、1および2は、ライブラリーメンバーを表し、Bは標的分子であり、XはBに作動可能に連結する部分であり、選択媒体からのBの除去を可能にする。この例において、化合物1はBに結合し、一方、化合物2はBに結合しない。この選択プロセスは、ラウンド1に描かれるように、(I)化合物1および2を含むライブラリーを、化合物1のBへの結合に対して適切な条件下で、B−Xと接触させる工程;(II)結合していない化合物2を除去する工程、(III)化合物1をBから分離し、その反応媒体からBXを除去する工程を包含する。ラウンド1の結果は、化合物2と比較して化合物1に富む分子の収集物である。工程I〜IIIを用いる次のラウンドは、化合物2と比較して化合物1のさらなる富化をもたらす。三回のラウンドの選択が図6に示されるが、実際は任意の数のラウンド(例えば、1ラウンド〜10ラウンド)が用いられ、非結合分子と比較して、結合分子の所望の富化を達成し得る。
【0151】
図6に示される実施形態において、いずれかのラウンドの選択の後に、化合物の増幅(さらなる複製の合成)の余地は全くない。そのような増幅は、選択の後に残留している相対的な量の化合物に一致しない化合物の混合物をもたらし得る。この不一致は、特定の化合物は、他の化合物よりも容易に合成され得るという事実によるものであり、したがって、選択後に、それらの存在に比例しない方法で増幅され得る。例えば、化合物2は化合物1よりも容易に合成され、ラウンド2の後に残留している分子の増幅は、化合物1と比較して化合物2の比例しない増幅をもたらし、生じた化合物の混合物は、化合物2と比較して化合物1の富化が(もしあるとしても)非常に軽度である。
【0152】
一つの実施形態において、上記標的は、任意の公知の固定化技術により、固体の支持体上で固定化される。その固体の支持体は、例えば、クロマトグラフィーカラムまたは膜中に含まれる水に不溶のマトリクスであり得る。コード化されたライブラリーは、クロマトグラフィーカラム中に含まれる水に不溶のマトリクスに加えられ得る。次にそのカラムは、非特異的な結合剤を除去するために、洗浄される。次に標的に結合した化合物は、pH,塩濃度、有機溶媒濃度を変えることで、または他の方法(例えば、その標的への公知のリガンドとの競合)により分離され得る。
【0153】
別の実施形態において、上記標的は、溶液中で遊離であり、コード化されたライブラリーでインキュベートされる。その標的(また、本明細書中で「リガンド」と言及される)に結合する化合物は、サイズ分離工程(例えば、ゲル濾過、または限外濾過)により選択的に単離される。一つの実施形態において、コード化された化合物および標的生体分子の混合物は、サイズ排除クロマトグラフィーカラム(ゲル濾過)を通過し、これは、結合していない化合物から任意のリガンド標的複合体を分離する。リガンド標的複合体は、逆相クロマトグラフィーカラムに移され、これは、その標的からそのリガンドを分離する。次にその分離されたリガンドは、PCR増幅およびコード化オリゴヌクレオチドの配列分析により分析される。この手法は、その標的の固定化が活性の損失をもたらし得る場合、特に都合がよい。
【0154】
本発明の特定の実施形態において、上記選択方法は、配列決定の前に標的に結合する化合物のライブラリーの少なくとも一つのメンバーのコード化オリゴヌクレオチドを増幅する工程を包含し得る。
【0155】
一つの実施形態において、コード化オリゴヌクレオチドを含む化合物のライブラリーは、選択されたライブラリー混合物中に存在するDNA分子の集団分布における任意の潜在的なゆがみ(skew)を最小化するために、配列分析の前に増幅される。例えば、少量のライブラリーのみが、選択工程後に回収され、配列分析の前にPCRを用いて増幅される。PCRは、選択されたライブラリー混合物中に存在するDNA分子の集団分布におけるゆがみを生成する潜在力を有している。このことは、入力(input)分子数が少なく、その入力分子が、不十分なPCRテンプレートである場合、特に問題がある。初期の段階で産生されるPCR産物は、共有結合の二重鎖ライブラリーよりも効果的なテンプレートであり、したがって最後の増幅された集団におけるこれらの分子の頻度は、元の入力テンプレートにおける頻度よりも、ずっと高くなり得る。
【0156】
したがって、この潜在的なゆがみを最小化するために、本発明の一つの実施形態において、個々のライブラリーのメンバーに対応する一本鎖オリゴヌクレオチドの集団は、反応における一つのプライマーを用いて産生され、続いて、二つのプライマーを用いてPCRで増幅される。そうすることで、PCRを用いる指数関数的な増加の前に、一本鎖プライマー伸長産物の線形の蓄積が生じ、そして蓄積されたプライマー伸長産物中の分子の多様性および分布は、元の入力テンプレート中に存在する分子の多様性および分布を、より正確に反映している。なぜなら、増幅の指数関数相は、存在する元の分子の多様性の多くが、プライマー伸長反応中に産生される分子の集団中に表される後にのみ起こるからである。
【0157】
一旦、一本鎖が上に記載されたプロセスにより同定されると、種々のレベルの分析が適応され、構造活性関係の情報を生成し得、そしてリガンドの親和性、特異性、および生物活性のさらなる最適化を導き得る。同じ骨格から誘導されるリガンドに対して、三次元分子モデリングが用いられ、そのリガンドに共通の重要な構造の特徴を同定し得、それにより、標的の生体分子上の共通の部位でおそらく結合する小分子リガンドのファミリーを産生し得る。
【0158】
種々のスクリーニング手法が、一つの標的に高い親和性を有するが、別の密接に関連した標的に対して弱い親和性を有するリガンドを得るために、用いられ得る。一つのスクリーニングストラテジーは、同様の実験における双方の生体分子に対するリガンドを同定し、次に相互参照比較により、共通のリガンドを連続的に除去することである。この方法において、各生体分子に対するリガンドは、上に開示されるように別々に同定され得る。この方法は、固定化された標的生体分子および溶液中で遊離の標的生体分子の双方と適合である。
【0159】
固定化された標的生体分子に対して、別のストラテジーは、非標的生体分子に結合するすべてのリガンドを、ライブラリーから除去する事前選択工程を加えることである。例えば、第一の生体分子は、上で記載されるように、コード化ライブラリーと接触され得る。次に、その第一の生体分子に結合しない化合物は、形成する任意の第一の生体分子−リガンド複合体から分離される。第二の生体分子に結合する化合物は、上に記載されるように同定され得、第一の生体分子よりも第二の生体分子に対して、強い親和性を有する。
【0160】
上で開示される方法により同定される生体分子の未知の機能に対するリガンドは、その生体分子の生物学的機能を決定するために用いられ得る。このことは、新規の遺伝子配列が引き続き同定されるが、これらの配列によりコードされるタンパク質の機能、ならびに新規の薬物の発見および開発のための標的としての、これらのタンパク質の有効性は、決定することが難しく、ゲノムの情報を疾患の処置に適用するためのおそらく最も重要な障害を表すので、都合がよい。本発明で記載されたプロセスを通して得られた標的特異的リガンドは、治療的介入のための標的タンパク質の機能および標的タンパク質の双方の機能を理解するために、全細胞生物学的アッセイで、または適切な動物モデルで用いられ得る。この手法はまた、その標的は小分子薬物発見に特異的にかなうことを確認し得る。
【0161】
一つの実施形態において、本発明のライブラリー中の一つまたは一つより多い化合物は、特定の生体分子のためのリガンドとして同定される。次に、これらの化合物は、その生体分子へ結合する能力に対するインビトロアッセイで評価され得る。好ましくは、結合分子の機能的部分は、オリゴヌクレオチドタグなしで合成され、これらの機能的部分は、その生体分子への結合に対する能力に対して評価される。
【0162】
生体分子への機能的部分の結合の、生体分子の機能への効果は、インビトロ無細胞または細胞ベースのアッセイを用いて評価され得る。公知の機能を有する生体分子に対して、アッセイは、例えば、その活性の直接的な測定(例えば、酵素活性)、あるいは間接的な方法(例えば、その生体分子により影響される細胞機能)により、リガンドの存在下、そして非存在下でのその生体分子の活性の比較を包含し得る。その生体分子が未知である場合、その生体分子を発現する細胞は、リガンドと接触され得、そのリガンドの、その細胞の生存能力、機能、表現型、および/または遺伝子発現への影響が測定される。インビトロアッセイは、例えば、細胞死アッセイ、細胞増殖アッセイ、またはウイルス複製アッセイであり得る。例えば、その生体分子がウイルスで表現されるタンパク質である場合、そのウイルスに感染した細胞は、そのタンパク質に対するリガンドと接触され得る。次に、そのタンパク質へのリガンドの結合の、ウイルス生存能力への影響(affect)が評価され得る。
【0163】
本発明の方法により同定されるリガンドは、インビトロモデルで、またはヒトで評価され得る。例えば、動物または生体分子を産生する生体内で評価され得る。その動物または生体の健康状態の任意の生じた変化(例えば、疾患の進行)が決定され得る。
【0164】
未知の機能の生体分子(例えば、タンパク質、または核酸分子)に対して、生体分子に結合するリガンドの、生体分子を産生する細胞または臓器上への影響は、その生体分子の生物学的機能に関する情報を提供し得る。例えば、特定の細胞プロセスが、リガンドの存在下で阻害されるという観察は、そのプロセスが、少なくとも一部分は、その生体分子の機能に依存することを示す。
【0165】
本発明の方法を用いて同定されるリガンドはまた、それらが結合する生体分子に対する親和性試薬として用いられ得る。一つの実施形態において、そのようなリガンドは、例えば、一つまたは一つより多いそのようなリガンドが結合する固相を用いる、その生体分子を含む溶液のクロマトグラフィーにより、その生体分子の親和性精製に影響を与えるために用いられる。
【0166】
本発明は、次の実施例によりさらに説明されるが、それは制限するものと解釈されるべきではない。本出願にわたって引用されるすべての参考文献、特許、および公開された特許出願、ならびに図面および配列表は、本明細書中に参考として援用される。
【実施例】
【0167】
(実施例1:105のオーダーのメンバーでのライブラリーの合成および説明)
105のオーダーの異なるメンバーを含むライブラリーの合成を、以下の試薬を用いて成し遂げた:
化合物1:
【0168】
【化49】
デオキシリボヌクレオチドに対する一文字コード
A=アデノシン
C=シトシン
G=グアノシン
T=チミジン。
【0169】
構成要素前駆体:
【0170】
【化50】
【0171】
【化51】
【0172】
【化52】
【0173】
【化53】
【0174】
【化54】
【0175】
【化55】
1× リガーゼ緩衝液:50mM Tris、pH7.5;10mM ジチオトレイトール;10mM MgCl2;2.5mM ATP;50mM NaCl
10× リガーゼ緩衝液:500mM Tris、pH7.5;100mMジチオトレイトール;100mM MgCl2;25mM ATP;500mM NaCl。
【0176】
(サイクル1)
12個の各PCRチューブに、50μLの水中の化合物1の1mM溶液;75μLのタグ1.1〜1.12のうちの一つの0.80mM溶液;10×リガーゼ緩衝液、および10μL脱イオン水を加えた。そのチューブを、95℃まで1分間にわたって加熱し、次に10分間にわたって16℃まで冷却した。各チューブに50μl 1×リガーゼ緩衝液中の5000ユニットのT4 DNAリガーゼ(2,000,000ユニット/mL溶液の2.5μL(New England Biolabs,カタログ番号.M0202))を加え、生じた溶液を16時間にわたって16℃でインキュベートした。
【0177】
ライゲーションの後、試料を1.5mlのEppendorfチューブに移し、20μLの5M NaCl水溶液および500μLの冷(−20℃)エタノールで処理し、1時間にわたって20℃に保持した。遠心分離の後、上澄みを除去し、ペレットを−20℃で70%エタノール水溶液で洗浄した。次にペレットはそれぞれ、150μLの150mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.4)に溶解させた。
【0178】
各構成要素前駆体BB1〜BB12の一つ、N,N−ジイソプロピルエタノールアミンおよびO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートを、それぞれ0.25Mの濃度で含むストック溶液をDMFで調製し、室温で20分間にわたって撹拌した。その構成要素前駆体溶液を、上に記載された各ペレット溶液に加え、リンカーと比較して10倍の過剰量の構成要素をもたらした。生じた溶液を撹拌した。さらに10当量の構成要素前駆体を20分後に反応混合物に加え、40分後に別の10当量を加えた。反応混合物中のDMFの最終濃度は22%であった。次に反応溶液を一晩中4℃で撹拌した。反応の進行を、50mMの酢酸テトラエチルアンモニウム水溶液(pH=7.5)およびアセトニトリル、ならびに14分間にわたる2〜46%アセトニトリルの勾配を用いて、RP−HPLCによりモニターした。反応を、約95%の出発物質(リンカー)がアシル化されると、中止した。アシル化の後、反応混合物を混合し、凍結乾燥して、乾燥させた。次に、凍結乾燥した物質をHPLCにより精製し、そしてライブラリー(アシル化された生成物)に対応する画分を混合し、そして凍結乾燥した。
【0179】
上記ライブラリーを、2.5mlの0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH=8.2)に溶解させ、0.1mlのピペリジン(4% v/v)をそれに加えた。ピペリジンの添加は、混合で溶解しない混濁をもたらす。反応混合物を室温で50分間にわたって撹拌し、次にその混濁溶液を遠心分離し(14000rpm)、上澄みを200μlのピペットを用いて除去し、ペレットを0.1mlの水に再懸濁した。洗浄水を上澄みと合わせ、ペレットを捨てた。脱保護されたライブラリーを、その反応におけるエタノールの最終濃度が70%v/vとなるような、過剰量の冷氷エタノールの添加により溶液から沈殿させた。エタノール水溶液の混合物の遠心分離により、ライブラリーを含む白色のペレットを得た。そのペレットを冷70%エタノール水溶液で一度洗浄した。溶媒の除去後、ペレットを空気中で乾燥させ(約5分)、極微量のエタノールを除去し、次にサイクル2で用いた。ラウンド1で用いたタグおよび対応する構成要素前駆体を以下の表1に示す。
【0180】
【化56】
(サイクル2〜5)
これらの各サイクルに対して、前のサイクルから生じた合わせた溶液を、それぞれ50μlの12個の等しいアリコートに分割し、PCRチューブ内に置いた。各チューブに、異なるタグを含む溶液を加え、そしてライゲーション、精製、およびアシル化をサイクル1に関して記載される通りに(サイクル3〜5に対しては、サイクル1に関して記載されるHPLC精製工程を省略したことを除き)行った。サイクル2〜5に関するタグおよび構成要素の対応を表2に示す。
【0181】
サイクル5の産物を、タグのライゲーションのために上に記載された方法を用いて、以下に示す近接(closing)プライマーでライゲーションした。
【0182】
【化57】
【0183】
【化58】
結果:
上で記述した合成手順は、125(約249,000)種の異なる構造を含むライブラリーを産生する能力を有する。そのライブラリーの合成を、各サイクルの生成物のゲル電気泳動によりモニターした。5サイクルのぞれぞれ、および近接プライマーのライゲーション後の最後のライブラリーの結果を図7で説明する。「ヘッドピース(head piece)」と標識される化合物は、化合物1である。その図は、各サイクルが期待された分子量の増加をもたらし、各サイクルの産物が、分子量に関して実質的に同質であることを示している。
【0184】
(実施例2:108のオーダーのメンバーでのライブラリーの合成および説明)
108のオーダーの異なるメンバーを含むライブラリーの合成を、以下の試薬を用いて成し遂げた:
化合物2:
【0185】
【化59】
デオキシリボヌクレオチドに対する一文字コード
A=アデノシン
C=シトシン
G=グアノシン
T=チミジン
構成要素前駆体:
【0186】
【化60】
【0187】
【化61】
【0188】
【化62】
【0189】
【化63】
【0190】
【化64】
【0191】
【化65】
【0192】
【化66】
【0193】
【化67】
【0194】
【化68】
【0195】
【化69】
【0196】
【化70】
【0197】
【化71】
【0198】
【化72】
【0199】
【化73】
【0200】
【化74】
【0201】
【化75】
【0202】
【化76】
【0203】
【化77】
【0204】
【化78】
【0205】
【化79】
【0206】
【化80】
【0207】
【化81】
【0208】
【化82】
【0209】
【化83】
【0210】
【化84】
【0211】
【化85】
1× リガーゼ緩衝液:50mM Tris、pH7.5;10mM ジチオトレイトール;10mM MgCl2;2mM ATP;50mM NaCl
10× リガーゼ緩衝液:500mM Tris、pH7.5;100mM ジチオトレイトール;100mM MgCl2;20mMATP;500mM NaCl。
【0212】
(水溶性スペーサーの化合物2への結合)
4℃まで冷やしたホウ酸ナトリウム(150mM、pH9.4)中の化合物2の溶液(60mL、1mM)に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中の、40当量のN−Fmoc−15−アミノ−4,7,10,13−テトラオキサオクタデカン酸(S−Ado)(16mL、0.15M)、続いて40当量の、水中の塩化4−(4,6−ジメトキシ[1.3.5]トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム水和物(DMTMM)(9.6mL、0.25M)を加えた。混合物を2時間にわたって4℃で穏やかに振とうし、その後さらに40当量のS−AdoおよびDMTMMを加え、そして16時間にわたって4℃でさらに振とうした。
【0213】
アシル化の後、0.1×容量の5MのNaCl水溶液および2.5×容量の冷(−20℃)エタノールを加え、混合物を−20℃で少なくとも1時間にわたって放置した。次に混合物を4℃の遠心機中で、15分間にわたって14,000rpmで遠心分離し、白色のペレットを得た。それを、冷EtOHで洗浄し、次に室温で30分間にわたって凍結乾燥機で乾燥させた。固形物を40mLの水に溶解させ、Waters Xterra RP18カラムを用いる逆相HPLCにより精製した。二元移動相勾配(binary mobile phase gradient)プロフィルを用いて、50mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝水溶液(pH7.5)および99%アセトニトリル/1%水の溶液を使用し、生成物を溶出した。精製した物質を凍結乾燥により濃縮し、生じた残渣を5mLの水に溶解させた。0.1×容積のピペリジンを溶液に加え、混合物を室温で45分間にわたって穏やかに振とうした。次に、生成物を上に記載したようにエタノール沈殿により精製し、遠心分離により単離した。生じたペレットを冷EtOHで2回洗浄し、凍結乾燥により乾燥させ、精製化合物3を得た。
【0214】
(サイクル1)
96ウェルプレートの各ウェルに、12.5μLの、化合物3の4mM水溶液;100μLの、表3に示されるオリゴヌクレオチドタグ1.1〜1.96のうちの一つの1mM溶液(化合物3とタグのモル比は1:2であった)に加えた。プレートを1分間にわたって95℃まで加熱し、次に10分間にわたって16℃まで冷却した。各ウェルに10μLの10×リガーゼ緩衝液、30ユニットのT4 DNAリガーゼ(30ユニット/μL溶液の1μL(FermentasLife Science、カタログ番号EL0013))。76.5μLの水を加え、生じた溶液を16℃で16時間にわたってインキュベートした。
【0215】
ライゲーション反応の後、20μLの5M NaCl水溶液、続いて500μLの冷(−20℃)エタノールを各ウェルに直接加え、−20℃で1時間にわたって保持した。プレートをBeckman Microplus Carriersを用いて、Beckman Coulter Allegra 6R遠心分離機中で、3200gで1時間にわたって遠心分離した。上澄みを、プレートを逆さまにすることで注意深く除去し、ペレットを、−20℃で70%の冷エタノール水溶液で洗浄した。次に各ペレットを、ホウ酸ナトリウム緩衝液(50μL、150mM、pH9.4)に、1mMの濃度まで溶解させ、4℃まで冷やした。
【0216】
各溶液に、40当量の、DMF中の96個の構成要素前駆体のうちの一つ(13μL、0.15M)、続いて40当量の、水中のDMT−MM(8μL、0.25M)を加え、そして溶液を4℃で緩やかに振とうした。2時間後に、さらに40当量の各構成要素前駆体のうちの一つおよびDMTMMを加え、溶液を16時間にわたって4℃で緩やかに振とうした。アシル化の後、10当量の、DMF中の酢酸−N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル(2μL、0.25M)を各溶液に加え、緩やかに10分間にわたって振とうした。
【0217】
アシル化の後、96種の反応混合物を混合し、0.1容量の5M NaCl水溶液および2.5容量の無水冷エタノールを加え、溶液を−20℃で少なくとも1時間にわたって放置した。次に混合物を遠心分離した。遠心分離の後、上澄みを可能な限りマイクロピペットで除去し、ペレットを冷エタノールで洗浄し、再び遠心分離した。上澄みを200マμLピペットで除去した。冷70%エタノールを上記チューブに加え、そして生じた混合物を4℃で5分間にわたって遠心分離した。
【0218】
上澄みを除去し、残留エタノールを室温で10分間にわたって凍結乾燥により除去した。次にペレットを2mLの水に溶解させ、Waters Xterra RP18カラムを用いる逆相HPLCにより精製した。二元移動相勾配プロフィルを用いて、50mM酢酸トリエチルアンモニウム緩衝水溶液(pH7.5)および99%アセトニトリル/1%水の溶液を使用し、ライブラリーを溶出した。ライブラリーを含む画分を収集し、混合し、そして凍結乾燥した。生じた残渣を2.5mLの水に溶解させ、250μLのピペリジンを加えた。溶液を室温で45分間にわたって穏やかに振とうし、前述の通りにエタノールで沈殿させた。生じたペレットを凍結乾燥により乾燥させ、ホウ酸ナトリウム緩衝水溶液(4.8mL、150mM、pH9.4)に、1mMの濃度まで溶解させた。
【0219】
溶液を4℃まで冷やし、40当量の、DMF(1.2mL、0.15M)中のN−Fmoc−プロパルギルグリシン(1.2mL、0.15M)および水中のDMT−MM(7.7mL、0.25M)をそれぞれ加えた。混合物を2時間にわたって4℃で緩やかに振とうし、その後、さらに40当量のN−Fmoc−プロパルギルグリシンおよび40当量のDMT−MMをそれぞれ加え、溶液をさらに16時間にわたって振とうした。その後、混合物をEtOH沈殿および上で記載した逆相HPLCにより精製し、N−Fmoc基を、前述の通りにピペリジンを用いる処理により除去した。EtOH沈殿による最終精製後、生じたペレットを凍結乾燥により乾燥させ、合成の次のサイクルに移した。
【0220】
サイクル2〜4
これらのサイクルのそれぞれに対して、前のサイクルからの乾燥させたペレットを水に溶解させ、そしてライブラリーの濃度を、ライブラリーのDNA成分の消衰係数に基づいて、分光測定法により測定した。ここで、化合物2の元の消衰係数は、131,500L/(モル.cm)である。ライブラリーの濃度は、次のライゲーション反応における最終濃度が0.25mMとなるように水で調整した。ライブラリーを96ウェルプレート中の96個の等量のアリコートに分割した。各ウェルに、異なるタグを含む溶液を加え(そのライブラリーとタグのモル比は1:2であった)、ライゲーションをサイクル1に関して記述した通りに行った。サイクル2、サイクル3、およびサイクル4で用いたオリゴヌクレオチドタグは、それぞれ表4、表5、および表6に示される。サイクル1〜4のそれぞれに対するタグと構成要素前駆体との間の対応を、表7に提供する。ライブラリーは、サイクル1に関して上で記述した通りに、さらなるエタノールの添加により沈殿させ、ホウ酸ナトリウム緩衝液(150mM、pH9.4)に、1mMの濃度まで溶解させた。次にアシル化および精製を、サイクル1に関して記述したように(サイクル3の間、HPLC精製は省略した点を除いて)行った。
【0221】
サイクル4の生成物を、タグのライゲーションに関して上に記述した方法を用いて、以下に示される近接プライマーでライゲーションした。
【0222】
【化86】
結果:
上で記述した合成手順は、964(約108)種の異なる構造を含むライブラリーを産生する能力を有する。そのライブラリーの合成を、各サイクルの生成物のゲル電気泳動およびLC/MSによりモニターした。完成後、ライブラリーを種々の技術を用いて分析した。図13aは、近接プライマーのライゲーションの前から、サイクル4の後のライブラリーのクロマトグラフであり;図13bは、同じ合成段階での、ライブラリーのマススペクトルである。平均分子量を、負イオンLC/MS分析により決定した。イオンシグナルをProMassソフトウェアを用いて解析した。この結果は、予測されたライブラリーの平均分子量と一致する。
【0223】
ライブラリーのDNA成分を、アガロースゲル電気泳動により分析し、これによりライブラリー物質の大多数は、正しいサイズのライゲーションされた生成物に対応することが示された。ライブラリーのサンプリングから得られるPCR生成物の分子クローンのDNA配列分析は、DNAのライゲーションが高い忠実度で、そして完成に近い程度まで起まで起こったことを示す。
【0224】
(ライブラリーの環化)
サイクル4の完了時に、ライブラリーの一部を、通常のアシル化条件下で、アジド酢酸を用いてN末端をキャップした。EtOH沈殿による精製後の生成物を、1mMの濃度まで、リン酸ナトリウム緩衝液(150mM、pH8)中に溶解させ、4当量の水中のCuSO4(200mM)、4当量の水中のアスコルビン酸(200mM)をそれぞれ、そしてDMF中の溶液(200mM)として以下に示される触媒量の化合物を加えた。反応混合物を2時間にわたって室温で緩やかに振とうした。
【0225】
【化87】
環化の程度をアッセイするため、ライブラリー環化反応からの5μLのアリコートを取り出し、実施例4で記述する通りに調製した蛍光標識されたアジドまたはアルケン(100mM DMFストックの1μL)で処理した。16時間後、アルキン標識およびアジド標識のいずれも、500nmでのHPLC分析により、ライブラリー中に取り込まれなかった。この結果により、ライブラリーはもはや、付加環化可能なアジド基またはアルキン基を含まず、したがってライブラリーは環化または分子間反応のいずれかによりそれら自身と反応したにちがいないことが示された。環化されたライブラリーは、前述の通りに逆相HPLCにより精製した。環化されていないライブラリーを用いる対照実験は、上に述べた蛍光タグの完全な取り込みを示した。
【0226】
(実施例4:環化アッセイに対する蛍光タグの調製)
別々のチューブで、プロパルギルグリシンまたは2−アミノ−3−フェニルプロピルアジド(それぞれ8μmol)を、pH9.4のホウ酸緩衝液(250μL)中のFAM−OSu(Molecular Probes Inc.)(1.2当量)と合わせた。反応を3時間にわたって室温で続け、次に一晩中凍結乾燥した。HPLCによる精製は、定量可能な収率で所望の蛍光アルキンおよびアジドをもたらした。
【0227】
【化88】
(実施例5:アジド/アルキン付加環化を用いる個々の化合物の環化)
アジドアセチル−Gly−Pro−Phe−Pra−NH2の調製
0.3mmolのRink−アミド樹脂を用いて、示された配列を標準固相合成技術を用いて、Fmocで保護されたアミノ酸および活性化物質としてのHATU(Pra=C−プロパルギルグリシン)を用いて、合成した。アジド酢酸を用いて、テトラペプチドをキャップした。そのペプチドを、20% TFA/DCMを用いて、4時間にわたってその樹脂から切断した。RP HPLCによる精製により、白色の固形物(75mg、51%)としての生成物を得た。1H NMR(DMSO−d6,400MHz):8.4−7.8(m,3H)、7.4−7.1(m,7H)、4.6−4.4(m,1H)、4.4−4.2(m,2H)、4.0−3.9(m,2H)、3.74(dd,1H,J=6Hz,17Hz)、3.5−3.3(m,2H)、3.07(dt,1H,J=5Hz,14Hz)、2.92(dd,1H,J=5Hz,16Hz)、2.86(t,1H,J=2Hz)、2.85−2.75(m,1H)、2.6−2.4(m,2H)、2.2−1.6(m,4H)。IR(mull)2900,2100,1450,1300cm−1。ESIMS 497.4([M+H],100%)、993.4([2M+H],50%)。イオン源フラグメンテーションを用いるESIMS:519.3([M+Na],100%)、491.3(100%)、480.1([M−NH2],90%)、452.2([M−NH2−CO],20%)、424.2(20%)、385.1([M−Pra],50%)、357.1([M−Pra−CO],40%),238.0([M−Pra−Phe],100%)。
【0228】
アジドアセチル−Gly−Pro−Phe−Pra−NH2の環化
【0229】
【化89】
アジドアセチルペプチド(31mg、0.62mmol)をMeCN(30mL)に溶解させた。ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、1mL)およびCu(MeCN)4PF6(1mg)を加えた。1.5時間にわたって撹拌した後、溶液をエバポレートし、生じた残渣を20%MeCN/H2Oに採った。不溶の塩を除去するための遠心分離の後、溶液を分取用逆相HPLCに供した。所望の環式ペプチドを、白色の固形物(10mg、32%)として単離した。1H NMR(DMSO−d6,400MHz):8.28(t,1H,J=5Hz)、7.77(s,1H)、7.2−6.9(m,9H)、4.98(m,2H)、4.48(m,1H)、4.28(m,1H)、4.1−3.9(m,2H)、3.63(dd,1H,J=5Hz,16Hz)、3.33(m,2H),3.0(m,3H),2.48(dd,1H,J=11Hz,14Hz)、1.75(m,1H0,1.55(m,1H)、1.32(m,1H)、1.05(m,1H)。IR(mull)2900,1475,1400cm−1。ESIMS 497.2([M+H],100%)、993.2([2M+H],30%)、1015.2([2M+Na],15%)。イオン源フラグメンテーションを用いるESIMS:535.2(70%)、519.3([M+Na],100%),497.2([M+H],80%),480.1([M−NH2],30%),452.2([M−NH2−CO],40%),208.1(60%)。
【0230】
アジドアセチル−Gly−Pro−Phe−Pra−Gly−OHの調製:
0.3mmolのグリシン−Wang樹脂を用いて、示された配列を、Fmocで保護されたアミノ酸および活性化物質としてのHATUを用いて合成した。アジド酢酸を最後のカップリング工程で用いて、ペンタペプチドをキャップした。そのペプチドの切断を、50% TFA/DCMを用いて、2時間に達成した。RP HPLCによる精製により、白色の固形物(83mg、50%)としてのペプチドを得た。1H NMR(DMSO−d6,400MHz):8.4−7.9(m,4H)、7.2(m,5H)、4.7−4.2(m,3H)、4.0−3.7(m,4H)、3.5−3.3(m,2H)、3.1(m,1H)、2.91(dd,1H,J=4Hz,16Hz)、2.84(t,1H,J=2.5Hz)、2.78(m,1H)、2.6−2.4(m,2H)、2.2−1.6(m,4H)。IR(mull)2900,2100,1450,1350cm−1。ESIMS 555.3([M+H],100%)。イオン源フラグメンテーションを用いるESIMS:577.1([M+Na],90%)、555.3([M+H],80%)、480.1([M−Gly],100%)、385.1([M−Gly−Pra],70%)、357.1([M−Gly−Pra−CO],40%)、238.0([M−Gly−Pra−Phe],80%)。
【0231】
アジドアセチル−Gly−Pro−Phe−Pra−Gly−OHの環化:
ペプチド(32mg、0.058mmol)をMeCN(60mL)に溶解させた。ジイソプロピルエチルアミン(1mL)およびCu(MeCN)4PF6(1mg)を加え、溶液を2時間にわたって撹拌した。溶媒をエバポレートし、粗生成物をRP HPLCに供し、二量体および三量体を除去した。環式の単量体を無色のガラス(6mg、20%)として単離した。ESIMS 555.6([M+H],100%)、1109.3([2M+H],20%)、1131.2([2M+Na],15%)。イオン源フラグメンテーションを用いるESIMS:555.3([M+H],100%)、480.4([M−Gly],30%)、452.2([M−Gly−CO],25%)、424.5([M−Gly−2CO],10%,環式構造でのみ可能)。
【0232】
線状のペプチドのDNAへの結合体化:
化合物2(45nmol)を45μLのホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.4;150mM)に溶解させた。4℃で線状ペプチド(DMF中、18μLの100mMストック;180nmol;40当量)、続いて、DMT−MM(水中、3.6μLの500mMストック;180nmol;40当量)を加えた。2時間にわたって撹拌した後、LCMSは反応の完了、および生成物がエタノール沈殿により単離されたことを示した。ESIMS 1823.0([M−3H]/3,20%)、1367.2([M−4H]/4,20%)、1093.7([M−5H]/5,40%),911.4([M−6H]/6,100%)。
【0233】
環式ペプチドのDNAへの結合体化:
化合物2(20nmol)を20μLのホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.4;150mM)に溶解させた。4℃で線状ペプチド(DMF中、8μLの100mMストック;80nmol;40当量)、続いて、DMT−MM(水中、1.6μLの500mMストック;80nmol;40当量)を加えた。2時間にわたって撹拌した後、LCMSは反応の完了、および生成物がエタノール沈殿により単離されたことを示した。ESIMS 1823.0([M−3H]/3,20%)、1367.2([M−4H]/4,20%)、1093.7([M−5H]/5,40%)、911.4([M−6H]/6,100%)。
【0234】
DNAで連結されたペプチドの環化:
線状のペプチド−DNA結合体(10nmol)を、pH8のリン酸ナトリウム緩衝液(10μL、150mm)に溶解させた。室温で、各々4当量のCuSO4、アスコルビン酸、およびSharplessリガンドをすべて加えた(0.2μLの200mMストック)。反応を一晩中続けた。RP HPLCは、線状のペプチド−DNAは存在せず、そして生成物は、真の環状ペプチド−DNAとともに溶出されたことを示した。二量体および他のオリゴマーの痕跡は全く観察されなかった。
【0235】
【化90】
(実施例6:芳香族求核置換反応の機能的部分の合成への適用)
塩化シアヌルを用いる化合物3のアリール化のための一般的手順
化合物2を、濃度1mMで、pH9.4のホウ酸ナトリウム緩衝液に溶解させた。溶液を4℃まで冷却し、次に20当量の塩化シアヌルを、MeCN中500mM溶液として加えた。2時間後、反応の完了をLCMSにより確認し、生じたジクロロトリアジン−DNA結合体をエタノール沈殿により単離する。
【0236】
ジクロロトリアジン−DNAのアミン置換のための手順
ジクロロトリアジン−DNA結合体を、1mMの濃度で、pH9.5のホウ酸緩衝液に溶解させる。室温で、40当量の脂肪族アミンをDMF溶液として加える。反応をLCMSにより追跡し、通常は2時間後に完了する。生じたアルキルアミノ−モノクロロトリアジン−DNA結合体を、エタノール沈殿により単離する。
【0237】
モノクロロトリアジン−DNAのアミン置換のための手順
アルキルアミノ−モノクロロトリアジン−DNA結合体を、1mMの濃度で、pH9.5のホウ酸緩衝液に溶解させる。42℃で、40当量の第二級脂肪族アミンを、DMF溶液として加える。反応をLCMSにより追跡し、通常は2時間後に完了する。生じたジアミノトリアジン−DNA結合体を、エタノール沈殿により単離する。
【0238】
(実施例7:還元アミノ化反応の機能的部分合成への適用)
アルデヒド構成要素による第二級アミンを含むDNA−リンカーの還元アミノ化の一般的手順:
化合物2をN末端プロリン残基に結合させた。生じた化合物をリン酸ナトリウム緩衝液(50μL、150mM、pH5.5)に、1mMの濃度で溶解させた。この溶液に、40当量の、DMF中アルデヒド構成要素(8μL、0.25M)およびDMF中ナトリウムシアノボロヒドリド(8μL、0.25M)をそれぞれ加え、溶液を2時間にわたって80℃で加熱した。アルキル化の後、溶液をエタノール沈殿により精製した。
【0239】
アミン構成要素によるアルデヒドを含むDNA−リンカーの還元アミノ化の一般的手順:
アルデヒド基を含む構成要素に結合させた化合物2を、リン酸ナトリウム緩衝液(50μL、250mM、pH5.5)に、1mMの濃度で溶解させた。この溶液に、40当量の、DMF中アミン構成要素(8μL、0.25M)およびDMF中ナトリウムシアノボロヒドリド(8μL、0.25M)をそれぞれ加え、溶液を2時間にわたって80℃で加熱した。アルキル化の後、溶液をエタノール沈殿により精製した。
【0240】
(実施例8:ペプトイド構築反応の機能的部分合成への適用)
DNA−リンカー上のペプトイド合成に関する一般的手順
【0241】
【化91】
化合物2を、ホウ酸ナトリウム緩衝液(50μL、150mM、pH9.4)に、1mMの濃度で溶解させ、4℃まで冷やした。この溶液に、40当量の、DMF中N−ヒドロキシスクシンイミジルブロモアセテート(13μL、0.15M)を加え、溶液を4℃で2時間にわたって緩やかに振とうした。アシル化の後、DNA−リンカーをエタノール沈殿により精製し、ホウ酸ナトリウム緩衝液(50μL、150mM、pH9.4)に、1mMの濃度で再溶解させ、4℃まで冷やした。この溶液に、40当量のDMF中アミン構成要素(13μL、0.15M)を加え、溶液を4℃で16時間にわたって緩やかに振とうした。アルキル化の後に、そのDNA−リンカーをエタノール沈殿により精製し、ホウ酸ナトリウム緩衝液(50μL、150mM、pH9.4)に、1mMの濃度で再溶解させ、4℃まで冷やした。ペプトイド合成を、N−ヒドロキシスクシンイミジルブロモアセテートの段階的な添加により続け、その後アミン構成要素を添加する。
【0242】
(実施例9:アジド−アルキン付加環化反応の機能的部分合成への適用)
一般的手順
アルキンを含むDNA結合体を、約1mMの濃度で、pH8.0のリン酸緩衝液に溶解させる。この混合物に、10当量の有機アジドおよび5当量の硫酸銅(II)、5当量のアスコルビン酸、および5当量のリガンド(トリス−((1−ベンジルトリアゾール−4−イル)メチル)アミンをそれぞれ、すべて室温で加える。反応をLCMSにより追跡し、通常は1〜2時間後に完了する。生じたトリアゾール−DNA結合体は、エタノール沈殿により単離され得る。
【0243】
(実施例10:コード化ライブラリー内からのAB1キナーゼに対するリガンドの同定)
望ましくないライブラリーメンバーを超えて、DNAでコードされたライブラリー中で、関心を引く分子を富化する能力は、関心を引く治療標的に対する定められた特性を有する化合物を同定することに卓越する。この富化能力を証明するために、rhAb1キナーゼ(GenBank U07563)への公知の結合分子(Shah et al.,Science 305,399−401(2004)(本明細書中に参考として援用される)に記載される)を合成した。この化合物を、実施例1および実施例2に記述した方法により生成される分子と類似の分子(オリゴヌクレオチドに連結した機能的部分)を生成するために、標準化学方法を用いて、前述の実施例に記述したリンカーにより、二本鎖オリゴヌクレオチドに結合させた。実施例2に記述した通りに一般的に生成されるライブラリーおよび、DNAと連結したAb1キナーゼ結合剤は、両方の種のqPCR分析を可能にする独特のDNA配列で設計した。そのDNAと連結したAb1キナーゼを、ライブラリーと1:1000の比で混合した。この混合物をrhAbleキナーゼと平衡化させ、酵素を固相上に捕捉し、結合していないライブラリーのメンバーを除去するために洗浄し、結合分子を溶出した。溶出液中のライブラリー分子とDNAで連結されたAb1キナーゼの比は、1:1であった。これは、1000倍過剰なライブラリー分子中で、DNAで結合されたAb1キナーゼ結合剤の500倍より大きい富化を示している。
【0244】
(等価物)
当業者は、定型にすぎない実験を用いて、本明細書中に記載された本発明の特定の実施形態への多くの等価物を認識するか、または確かめることができる。そのような等価物は、上記の特許請求の範囲内に包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】図1は、二本鎖オリゴヌクレオチドのライゲーションの図式的な表現であり、ここで、元のオリゴヌクレオチドは、入来オリゴヌクレオチドのオーバーハングと相補的であるオーバーハングを有する。元の鎖は、遊離であるか、アミノヘキシルリンカーに結合体化されるか、アミノヘキシルリンカーを介してフェニルアラニン残基に結合体化されるかのいずれかとして表現される。
【図2】図2は、スプリント鎖を用いるオリゴヌクレオチドのライゲーションの図式的な表現である。この実施形態において、スプリントは、一本鎖の元のオリゴヌクレオチドおよび一本鎖の入来オリゴヌクレオチドに相補的な配列を有する12マーのオリゴヌクレオチドである。
【図3】図3は、元のオリゴヌクレオチドが共有結合された鎖を有する二本鎖であり、入来オリゴヌクレオチドが二本鎖である場合、元のオリゴヌクレオチドおよび入来オリゴヌクレオチドのライゲーションの図式的な表現である。
【図4】図4は、ポリメラーゼを用いるオリゴヌクレオチド伸長の図式的な表現である。元の鎖は、遊離であるか、アミノヘキシルリンカーに結合体化されるか、アミノヘキシルリンカーを介してフェニルアラニン残基に結合体化されるかのいずれかとして表現される。
【図5】図5は、本発明の一つの実施形態の合成サイクルの図式的な表現である。
【図6】図6は、本発明のライブラリーを用いる多数のラウンドの選択プロセスの図式的な表現である。
【図7】図7は、実施例1で記述されたサイクル1〜5のそれぞれ、および次の近接プライマーのライゲーションの産物の電気泳動から得られるゲルである。分子量の標準がレーン1に示され、DNA定量のためのHyperladderの表示される量が、レーン9〜12に示される。
【図8】図8は、アジド−アルキン付加環化を用いる構成要素のカップリングの描写である。
【図9】図9は、芳香族求核置換を介する、塩素化トリアジンへ上への構成要素のカップリングを説明している。
【図10】図10は、芳香族求核置換を介する、塩素化トリアジンへ上への構成要素のカップリングを説明している。
【図11】図11は、機能的部分の合成に使用するために適切な塩素化されたヘテロ芳香族の構造を示す。
【図12】図12は、アジド/アルキン付加環化反応を用いる線状のペプチドの環化を示す。
【図13】図13aは、サイクル4の後の実施例2で記述される通りに産生されたライブラリーのクロマトグラフである。図13bは、サイクル4の後の実施例2で記述される通りに産生されたライブラリーのマススペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コード化オリゴヌクレオチドに作動可能に連結した機能的部分を含む分子を合成する方法であって、該方法が:
(a)n個の構成要素を含む元の機能的部分からなるイニシエーター化合物を提供する工程であって、ここでnは1または1より大きい整数であり、該元の機能的部分は、少なくとも一つの反応基を含み、そして、元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する、工程;
(b)該イニシエーター化合物を、少なくとも一つの相補的反応基を含む構成要素と、該相補的反応基の反応に適切な条件下で、反応させ、共有結合を形成させる工程であって、ここで、該少なくとも一つの相補的反応基は、工程(a)の反応基と相補的である、工程;
(c)該元のオリゴヌクレオチドを、工程(b)の構成要素を同定する入来オリゴヌクレオチドと、該元のオリゴヌクレオチドおよび該入来オリゴヌクレオチドのライゲーションを触媒する酵素の存在下で、該入来オリゴヌクレオチドおよび該元のオリゴヌクレオチドのライゲーションに対して適切な条件下で、反応させ、コード化オリゴヌクレオチドを形成させる、工程;
を包含し、それによりコード化オリゴヌクレオチドに作動可能に連結する、n+1個の構成要素を含む機能的部分を含む分子を産生する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、工程(c)の機能的部分が、反応基を含み、そして工程(a)〜(c)が一回または一回より多く繰り返され、それにより、サイクル1〜iを形成し、サイクルsの工程(c)の産物が、サイクルs+1のイニシエーター化合物であり、ここで、iは2または2より大きい整数であり、sはi−1またはi−1より小さい整数である、方法。
【請求項3】
工程(c)が工程(b)に先行する、または工程(b)が工程(c)に先行する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つの前記構成要素が、アミノ酸または活性化アミノ酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応基および前記相補的反応基が、アミノ基;カルボキシル基;スルホニル基;ホスホニル基;エポキシド基;アジリジン基;およびイソシアネート基からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応基および前記相補的反応基が、ヒドロキシル基;カルボキシル基;スルホニル基;ホスホニル基;エポキシド基;アジリジン基;およびイソシアネート基からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応基および前記相補的反応基が、アミノ基およびアルデヒド基またはケトン基からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記反応基と前記相補的反応基との間の反応が、還元条件化で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応基および前記相補的反応基が、リンイリド基およびアルデヒド基またはケトン基からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記反応基および前記相補的反応基が、付加環化を介して反応し、環式構造を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記反応基および前記相補的反応基が、アルキンおよびアジドからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応基および前記相補的反応基が、ハロゲン化されたヘテロ芳香族基および求核試薬からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ハロゲン化されたヘテロ芳香族基が、塩素化されたピリミジン、塩素化されたトリアジン、および塩素化されたプリンからなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記求核試薬がアミノ基である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記酵素が、DNAリガーゼ、RNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、およびトポイソメラーゼからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記元のオリゴヌクレオチドが、二本鎖または一本鎖である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記元のオリゴヌクレオチドが、PCRプライマー配列を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記元のオリゴヌクレオチドが一本鎖であり、そして前記入来オリゴヌクレオチドが一本鎖であるか;または該元のオリゴヌクレオチドが二本鎖であり、そして該入来オリゴヌクレオチドが二本鎖である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記元の機能的部分および前記元のオリゴヌクレオチドが、連結部分により連結される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記元のオリゴヌクレオチドが、二本鎖であり、そして前記連結部分が、前記機能的部分および該元のオリゴヌクレオチドの双方の鎖に共有結合される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記入来オリゴヌクレオチドが、3個〜10個のヌクレオチド長である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
サイクルiの入来オリゴヌクレオチドが、PCR近接プライマーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
請求項2に記載の方法であって、サイクルiにおいて、(d)近接PCRプライマー配列を含むオリゴヌクレオチドを、前記コード化オリゴヌクレオチドにライゲーションする工程をさらに包含する、方法。
【請求項24】
近接PCRプライマー配列を含む前記オリゴヌクレオチドが、酵素の存在下で前記コード化オリゴヌクレオチドにライゲーションされる方法であって、ここで、該酵素は、該ライゲーションを触媒する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項2に記載の方法であって、サイクルiの後、(e)前記機能的部分を環化する工程をさらに包含する、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、前記機能的部分が、アルキニル基およびアジド基を含み、そして前記化合物が、アルキニル基およびアジド基の付加環化に対して適切な条件に供されて、トリアゾール基を形成し、それにより該機能的部分を環化する、方法。
【請求項27】
化合物のライブラリーを合成する方法であって、ここで、該化合物は機能的部分を含み、該機能的部分は、該機能的部分の構造を同定する元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する二つまたは二つより多い構成要素を含み、該方法は、
(a)m個のイニシエーター化合物を含む溶液を提供する工程、ここでmは1または1より大きい整数であり、該イニシエーター化合物はn個の構成要素を含む機能的部分からなり、該機能的部分は、該n個の構成要素を同定する元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結し、ここで、nは1または1より大きい整数である、工程;
(b)工程(a)の溶液をr個の反応容器に分割して、該溶液のr個のアリコートを産生する工程であって、ここでrは2または2より大きい整数である、工程;
(c)各反応容器における該イニシエーター化合物を、r個の構成要素のうちの一つと反応させ、それによって、該元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結するn+1個の構成要素を含む機能的部分からなる化合物を含むr個のアリコートを産生する、工程;ならびに
(d)各アリコートにおける該元のオリゴヌクレオチドを、r個の異なる入来オリゴヌクレオチドのセットのうちの一つと、該入来オリゴヌクレオチドおよび該元のオリゴヌクレオチドのライゲーションを触媒する酵素の存在下で、該入来オリゴヌクレオチドおよび該元のオリゴヌクレオチドの酵素的ライゲーションに対して適切な条件下で、反応させる工程;
を包含し、それによりn+1個の構成要素をコードする伸長されたオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する該n+1個の構成要素を含む機能的部分からなる分子を含むr個のアリコートを産生する、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、該方法が、(e)二個または二個より大きい前記r個のアリコートを合併し、それによりn+1個の構成要素を含む機能的部分からなる分子を含む溶液を生成する工程をさらに包含し、ここで該機能的部分は、該n+1個の構成要素をコードする伸長されたオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する、方法。
【請求項29】
r個のアリコートが合併される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記工程(a)〜(e)が一回または一回より多く行われ、サイクル1〜iを生成し、ここで、iは2または2より大きい整数であり、サイクルs+1において、工程(e)のm個のイニシエーター化合物を含む溶液は、サイクルsの工程(a)の溶液であり、ここでsはi−1またはi−1より小さい整数である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
サイクル1〜iのうちの少なくとも一つにおいて、工程(d)が工程(c)に先行する、請求項7または8のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
少なくとも一つの構成要素が、アミノ酸である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記酵素がDNAリガーゼ、RNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、またはトポイソメラーゼである、請求項7に記載の方法。
【請求項34】
前記元のオリゴヌクレオチドが、二本鎖オリゴヌクレオチドである、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記入来オリゴヌクレオチドが、二本鎖オリゴヌクレオチドである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記イニシエーター化合物が、構成要素と結合するように適合された第一の官能基、オリゴヌクレオチドの5’末端に結合するように適合された第二の官能基、およびオリゴヌクレオチドの3’末端に結合するように適合された第三の官能基を含むリンカー部分を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、前記リンカー部分が、
【化1】
の構造であり、ここで
Aは、構成要素に結合するように適合された官能基であり;
Bは、オリゴヌクレオチドの5’末端に結合するように適合された官能基であり;
Cは、オリゴヌクレオチドの3’末端に結合するように適合された官能基であり;
Sは、原子または骨格であり;
Dは、AとSを結びつける化学構造であり;
Eは、BとSを結びつける化学構造であり;そして
Fは、CとSを結びつける化学構造である、
方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって:
Aが、アミノ基であり;
Bが、リン酸基であり;
Cが、リン酸基である、
方法。
【請求項39】
D、E、およびFが、それぞれ独立して、アルキレン基またはオリゴ(エチレングリコール)基である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
Sが、炭素原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、リン酸基、環式基、または多環式基である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記リンカー部分が、
【化2】
の構造であり、ここで、
n、m、およびpは、それぞれ独立して、1〜約20の整数である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、2〜8の整数である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、3〜6の整数である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記リンカー部分が、
【化3】
の構造を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記イニシエーター化合物のそれぞれが、反応基を含み、ここで前記r個の構成要素のぞれぞれが、該反応基に相補的な相補的反応基を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項46】
前記反応基および前記相補的反応基が、アミノ基;カルボキシル基;スルホニル基;ホスホニル基;エポキシド基;アジリジン基;およびイソシアネート基からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記反応基および前記相補的反応基が、ヒドロキシル基;カルボキシル基;スルホニル基;ホスホニル基;エポキシド基;アジリジン基;およびイソシアネート基からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記反応基および前記相補的反応基が、アミノ基およびアルデヒド基またはケトン基からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記反応基と前記相補的反応基との間の反応が、還元条件化で行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記反応基および前記相補的反応基が、リンイリド基およびアルデヒド基またはケトン基からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記反応基および前記相補的反応基が、付加環化を介して反応し環式構造を形成する、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記反応基および前記相補的反応基が、アルキンおよびアジドからなる群より選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記反応基および前記相補的反応基が、ハロゲン化されたヘテロ芳香族基および求核試薬からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
前記ハロゲン化されたヘテロ芳香族基が、塩素化されたピリミジン、塩素化されたトリアジン、および塩素化されたプリンからなる群より選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記求核試薬がアミノ基である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
請求項28に記載の方法であって、該方法が、サイクルiの後に:
(f)一つまたは一つより多い前記機能的部分を環化する工程、
をさらに包含する、方法。
【請求項57】
工程(f)の機能的部分が、アジド基およびアルキニル基を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記機能的部分が、前記アジド基および前記アルキニル基の付加環化に対して適切な条件下で維持されて、トリアゾール基を形成し、それにより環式機能的部分を形成する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記付加環化反応が、銅触媒の存在下で行われる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
請求項59に記載の方法であって、工程(f)の一つまたは一つより多い機能的部分のうちの少なくとも一つが、少なくとも二つのスルフヒドリル基を含み、ここで、該機能的部分は、該二つのスルフヒドリル基の反応に対して適切な条件下で維持され、ジスルフィド基を形成し、それにより、該機能的部分を環化する、方法。
【請求項61】
前記元のオリゴヌクレオチドが、PCRプライマー配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項62】
サイクルiの入来オリゴヌクレオチドが、PCR近接プライマーを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項63】
請求項28に記載の方法であって、該方法が、サイクルiの後に、
(d)近接PCRプライマー配列を含むオリゴヌクレオチドを、前記コード化オリゴヌクレオチドにライゲーションする工程、
をさらに包含する、方法。
【請求項64】
近接PCRプライマー配列を含む前記オリゴヌクレオチドが、酵素の存在下で前記コード化オリゴヌクレオチドにライゲーションされ、ここで該酵素は、該ライゲーションを触媒する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
式
【化4】
の化合物であって、ここで、
Xは、一つまたは一つより多い構成要素を含む機能的部分であり;
Zは、その3’末端で、Bに結合したオリゴヌクレオチドであり;
Yは、その5’末端で、Cに結合したオリゴヌクレオチドであり;
Aは、Xと共有結合を形成する官能基であり;
Bは、Zの3’末端と結合を形成する官能基であり;
Cは、Yの5’末端と結合を形成する官能基であり;
D、FおよびEは、それぞれ、独立して二官能性結合基であり、そして
Sは、原子または分子骨格である、
化合物。
【請求項66】
D、FおよびEが、それぞれ独立して、アルキレン鎖またはオリゴ(エチレングリコール)鎖である、請求項65に記載の化合物。
【請求項67】
YおよびZが、実質的に相補的であり、適切な条件下でワトソン−クリック塩基対および二重鎖形成を可能にする化合物中に配向される、請求項65に記載の化合物。
【請求項68】
YおよびZが、同じ長さであるか、または異なる長さである、請求項65に記載の化合物。
【請求項69】
YおよびZが、同じ長さである、請求項68に記載の化合物。
【請求項70】
YおよびZが、それぞれ、10個または10個より多い塩基長であり、そして10個または10個より多い塩基対の相補的領域を有する、請求項65に記載の化合物。
【請求項71】
Sが、炭素原子、ホウ素原子、窒素原子、もしくはリン原子、または多原子骨格である、請求項65に記載の化合物。
【請求項72】
Sが、リン酸基または環式基である、請求項71に記載の化合物。
【請求項73】
Sが、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、またはヘテロアリール基である、請求項72に記載の化合物。
【請求項74】
前記リンカー部分が、
【化5】
の構造であり、
ここで、n、m、およびpが、それぞれ独立して、1〜約20の整数である、請求項65に記載の化合物。
【請求項75】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、2〜8の整数である、請求項74に記載の化合物。
【請求項76】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、3〜6の整数である、請求項75に記載の化合物。
【請求項77】
前記リンカー部分が、構造
【化6】
の構造を有する、請求項65に記載の化合物。
【請求項78】
XおよびYが、PCRプライマー配列を含む、請求項65に記載の化合物。
【請求項79】
少なくとも約102種の異なる化合物を含む化合物のライブラリーであって、該化合物が、二つまたは二つより多い構成要素を含む機能的部分を含み、ここで、該機能的部分は、該機能的部分の構造を同定するオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する、化合物のライブラリー。
【請求項80】
前記ライブラリーが、前記異なる化合物の各々について、少なくとも約105個の複製を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリー。
【請求項81】
前記ライブラリーが、前記異なる化合物の各々について、少なくとも約106個の複製を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリー。
【請求項82】
少なくとも約104種の異なる化合物を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリー。
【請求項83】
少なくとも約106種の異なる化合物を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリー。
【請求項84】
少なくとも約108種の異なる化合物を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリー。
【請求項85】
少なくとも約1010種の異なる化合物を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリー。
【請求項86】
少なくとも約1012種の異なる化合物を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリー。
【請求項87】
前記ライブラリーが、独立して式I:
【化7】
である多数の化合物を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリーであって、ここで:
Xは、一つまたは一つより多い構成要素を含む機能的部分であり;
Zは、その3’末端で、Bに結合したオリゴヌクレオチドであり;
Yは、その5’末端で、Cに結合したオリゴヌクレオチドであり;
Aは、Xと共有結合を形成する官能基であり;
Bは、Zの3’末端と結合を形成する官能基であり;
Cは、Yの5’末端と結合を形成する官能基であり;
D、FおよびEは、それぞれ、独立して二官能性結合基であり、そして
Sは、原子または分子骨格である、
化合物のライブラリー。
【請求項88】
A、B、C、D、E、FおよびSがそれぞれ、式Iの化合物のそれぞれに対して同じ正体を有する、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項89】
前記ライブラリーが、多数の式Iの化合物から本質的になる、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項90】
D、E、およびFが、それぞれ独立して、アルキレン鎖またはオリゴ(エチレングリコール)鎖である、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項91】
YおよびZが、実質的に相補的であり、適切な条件下でワトソン−クリック塩基対および二重鎖形成を可能にする化合物中に配向される、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項92】
YおよびZが、同じ長さであるか、または異なる長さである、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項93】
YおよびZが、同じ長さである、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項94】
YおよびZが、それぞれ、10個または10個より多い塩基長であり、そして10個または10個より多い塩基対の相補的領域を有する、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項95】
Sが、炭素原子、ホウ素原子、窒素原子、もしくはリン原子、または多原子骨格である、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項96】
Sが、リン酸基または環式基である、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項97】
Sが、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、またはヘテロアリール基である、請求項96に記載の化合物のライブラリー。
【請求項98】
請求項87に記載の化合物であって、前記リンカー部分が、構造
【化8】
であり、ここで、n、m、およびpが、それぞれ独立して、1〜約20の整数である、化合物のライブラリー。
【請求項99】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、2〜8の整数である、請求項98に記載の化合物のライブラリー。
【請求項100】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、3〜6の整数である、請求項99に記載の化合物。
【請求項101】
前記リンカー部分が、構造
【化9】
を有する、請求項87に記載の化合物。
【請求項102】
XおよびZが、PCRプライマー配列を含む、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項103】
請求項1に記載の方法により調製される化合物。
【請求項104】
請求項27に記載の方法により調製される化合物のライブラリー。
【請求項105】
生物学的標的に結合する一つまたは一つより多い化合物を同定するための方法であって、該方法が:
(a)該生物学的標的を、請求項27に記載の方法により調製される化合物のライブラリーと、該化合物のライブラリーの少なくとも一つのメンバーが該標的へ結合するために適切な条件下で、接触させる工程;
(b)該標的に結合しないライブラリーのメンバーを除去する工程;
(c)該標的に結合する化合物のライブラリーの少なくとも一つのメンバーのコード化オリゴヌクレオチドを増幅する工程;
(d)工程(c)のコード化オリゴヌクレオチドを配列決定する工程;ならびに、
(e)工程(d)において決定された配列を用いて、該生物学的標的に結合する化合物のライブラリーのメンバーの機能的部分の構造を決定する工程;
を包含し、それにより該生物学的標的に結合する一つまたは一つより多い化合物を同定する、方法。
【請求項106】
生物学的標的に結合する化合物を同定するための方法であって、該方法が:
(a)該生物学的標的を、少なくとも約102種の異なる化合物を含む化合物のライブラリーと接触させる工程であって、ここで該化合物は、オリゴヌクレオチドに作動可能に連結する二つまたは二つより多い構成要素を含む機能的部分を含み、該オリゴヌクレオチドは、少なくとも一つの該化合物のライブラリーが該標的へ結合するために適切な条件下で、該機能的部分の構造を同定する、工程;
(b)該標的に結合しないライブラリーのメンバーを除去する工程;
(c)該標的に結合する化合物のライブラリーの少なくとも一つのメンバーのコード化オリゴヌクレオチドを増幅する工程;
(d)工程(c)のコード化オリゴヌクレオチドを配列決定する工程;ならびに、
(e)工程(d)において決定された配列を用いて、該生物学的標的に結合する化合物のライブラリーのメンバーの機能的部分の構造を決定する工程
を包含し、それにより該生物学的標的に結合する一つまたは一つより多い化合物を同定する、方法。
【請求項107】
前記ライブラリーが、前記異なる化合物のそれぞれの少なくとも約105個の複製を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記ライブラリーが、前記異なる化合物のそれぞれの少なくとも約106個の複製を含む、請求項106に記載の化合物の方法。
【請求項109】
前記ライブラリーが、少なくとも約104種の異なる化合物を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項110】
前記ライブラリーが、少なくとも約106種の異なる化合物を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項111】
前記ライブラリーが、少なくとも約108種の異なる化合物を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項112】
前記ライブラリーが、少なくとも約1010種の異なる化合物を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項113】
前記化合物のライブラリーが、少なくとも約1012種の異なる化合物を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項114】
請求項106に記載の方法であって、ここで、前記化合物のライブラリーが、独立して式I:
【化10】
の多数の化合物を含み、ここで:
Xは、一つまたは一つより多い構成要素を含む機能的部分であり;
Zは、その3’末端で、Bに結合したオリゴヌクレオチドであり;
Yは、その5’末端で、Cに結合したオリゴヌクレオチドであり;
Aは、Xと共有結合を形成する官能基であり;
Bは、Zの3’末端と結合を形成する官能基であり;
Cは、Yの5’末端と結合を形成する官能基であり;
D、FおよびEは、それぞれ、独立して二官能性結合基であり、そして
Sは、原子または分子骨格である、
方法。
【請求項115】
A、B、C、D、E、FおよびSがそれぞれ、式Iの化合物のそれぞれに対して同じ正体を有する、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記化合物のライブラリーが、多数の式Iの化合物から本質的になる、請求項114に記載の方法。
【請求項117】
D、E、およびFが、それぞれ独立して、アルキレン鎖またはオリゴ(エチレングリコール)鎖である、請求項114に記載の方法。
【請求項118】
YおよびZが、実質的に相補的であり、適切な条件下でワトソン−クリック塩基対および二重鎖形成を可能にする化合物中に配向される、請求114に記載の方法。
【請求項119】
YおよびZが、同じ長さであるか、または異なる長さである、請求114に記載の方法。
【請求項120】
YおよびZが、同じ長さである、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
YおよびZが、それぞれ、10個または10個より多い塩基長であり、そして10個または10個より多い塩基対の相補的領域を有する、請求項114に記載の方法。
【請求項122】
Sが、炭素原子、ホウ素原子、窒素原子、もしくはリン原子、または多原子骨格である、請求項114に記載の方法。
【請求項123】
Sが、リン酸基または環式基である、請求項114に記載の方法。
【請求項124】
Sが、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、またはヘテロアリール基である、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
請求項114に記載の方法であって、前記リンカー部分が、構造
【化11】
であり、ここで、n、m、およびpが、それぞれ独立して、1〜約20の整数である、方法。
【請求項126】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、2〜8の整数である、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、3〜6の整数である、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記リンカー部分が、構造
【化12】
を有する、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
XおよびZが、PCRプライマー配列を含む、請求項114に記載の方法。
【請求項1】
コード化オリゴヌクレオチドに作動可能に連結した機能的部分を含む分子を合成する方法であって、該方法が:
(a)n個の構成要素を含む元の機能的部分からなるイニシエーター化合物を提供する工程であって、ここでnは1または1より大きい整数であり、該元の機能的部分は、少なくとも一つの反応基を含み、そして、元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する、工程;
(b)該イニシエーター化合物を、少なくとも一つの相補的反応基を含む構成要素と、該相補的反応基の反応に適切な条件下で、反応させ、共有結合を形成させる工程であって、ここで、該少なくとも一つの相補的反応基は、工程(a)の反応基と相補的である、工程;
(c)該元のオリゴヌクレオチドを、工程(b)の構成要素を同定する入来オリゴヌクレオチドと、該元のオリゴヌクレオチドおよび該入来オリゴヌクレオチドのライゲーションを触媒する酵素の存在下で、該入来オリゴヌクレオチドおよび該元のオリゴヌクレオチドのライゲーションに対して適切な条件下で、反応させ、コード化オリゴヌクレオチドを形成させる、工程;
を包含し、それによりコード化オリゴヌクレオチドに作動可能に連結する、n+1個の構成要素を含む機能的部分を含む分子を産生する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、工程(c)の機能的部分が、反応基を含み、そして工程(a)〜(c)が一回または一回より多く繰り返され、それにより、サイクル1〜iを形成し、サイクルsの工程(c)の産物が、サイクルs+1のイニシエーター化合物であり、ここで、iは2または2より大きい整数であり、sはi−1またはi−1より小さい整数である、方法。
【請求項3】
工程(c)が工程(b)に先行する、または工程(b)が工程(c)に先行する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つの前記構成要素が、アミノ酸または活性化アミノ酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応基および前記相補的反応基が、アミノ基;カルボキシル基;スルホニル基;ホスホニル基;エポキシド基;アジリジン基;およびイソシアネート基からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応基および前記相補的反応基が、ヒドロキシル基;カルボキシル基;スルホニル基;ホスホニル基;エポキシド基;アジリジン基;およびイソシアネート基からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応基および前記相補的反応基が、アミノ基およびアルデヒド基またはケトン基からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記反応基と前記相補的反応基との間の反応が、還元条件化で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応基および前記相補的反応基が、リンイリド基およびアルデヒド基またはケトン基からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記反応基および前記相補的反応基が、付加環化を介して反応し、環式構造を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記反応基および前記相補的反応基が、アルキンおよびアジドからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応基および前記相補的反応基が、ハロゲン化されたヘテロ芳香族基および求核試薬からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ハロゲン化されたヘテロ芳香族基が、塩素化されたピリミジン、塩素化されたトリアジン、および塩素化されたプリンからなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記求核試薬がアミノ基である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記酵素が、DNAリガーゼ、RNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、およびトポイソメラーゼからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記元のオリゴヌクレオチドが、二本鎖または一本鎖である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記元のオリゴヌクレオチドが、PCRプライマー配列を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記元のオリゴヌクレオチドが一本鎖であり、そして前記入来オリゴヌクレオチドが一本鎖であるか;または該元のオリゴヌクレオチドが二本鎖であり、そして該入来オリゴヌクレオチドが二本鎖である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記元の機能的部分および前記元のオリゴヌクレオチドが、連結部分により連結される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記元のオリゴヌクレオチドが、二本鎖であり、そして前記連結部分が、前記機能的部分および該元のオリゴヌクレオチドの双方の鎖に共有結合される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記入来オリゴヌクレオチドが、3個〜10個のヌクレオチド長である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
サイクルiの入来オリゴヌクレオチドが、PCR近接プライマーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
請求項2に記載の方法であって、サイクルiにおいて、(d)近接PCRプライマー配列を含むオリゴヌクレオチドを、前記コード化オリゴヌクレオチドにライゲーションする工程をさらに包含する、方法。
【請求項24】
近接PCRプライマー配列を含む前記オリゴヌクレオチドが、酵素の存在下で前記コード化オリゴヌクレオチドにライゲーションされる方法であって、ここで、該酵素は、該ライゲーションを触媒する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項2に記載の方法であって、サイクルiの後、(e)前記機能的部分を環化する工程をさらに包含する、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、前記機能的部分が、アルキニル基およびアジド基を含み、そして前記化合物が、アルキニル基およびアジド基の付加環化に対して適切な条件に供されて、トリアゾール基を形成し、それにより該機能的部分を環化する、方法。
【請求項27】
化合物のライブラリーを合成する方法であって、ここで、該化合物は機能的部分を含み、該機能的部分は、該機能的部分の構造を同定する元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する二つまたは二つより多い構成要素を含み、該方法は、
(a)m個のイニシエーター化合物を含む溶液を提供する工程、ここでmは1または1より大きい整数であり、該イニシエーター化合物はn個の構成要素を含む機能的部分からなり、該機能的部分は、該n個の構成要素を同定する元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結し、ここで、nは1または1より大きい整数である、工程;
(b)工程(a)の溶液をr個の反応容器に分割して、該溶液のr個のアリコートを産生する工程であって、ここでrは2または2より大きい整数である、工程;
(c)各反応容器における該イニシエーター化合物を、r個の構成要素のうちの一つと反応させ、それによって、該元のオリゴヌクレオチドに作動可能に連結するn+1個の構成要素を含む機能的部分からなる化合物を含むr個のアリコートを産生する、工程;ならびに
(d)各アリコートにおける該元のオリゴヌクレオチドを、r個の異なる入来オリゴヌクレオチドのセットのうちの一つと、該入来オリゴヌクレオチドおよび該元のオリゴヌクレオチドのライゲーションを触媒する酵素の存在下で、該入来オリゴヌクレオチドおよび該元のオリゴヌクレオチドの酵素的ライゲーションに対して適切な条件下で、反応させる工程;
を包含し、それによりn+1個の構成要素をコードする伸長されたオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する該n+1個の構成要素を含む機能的部分からなる分子を含むr個のアリコートを産生する、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、該方法が、(e)二個または二個より大きい前記r個のアリコートを合併し、それによりn+1個の構成要素を含む機能的部分からなる分子を含む溶液を生成する工程をさらに包含し、ここで該機能的部分は、該n+1個の構成要素をコードする伸長されたオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する、方法。
【請求項29】
r個のアリコートが合併される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記工程(a)〜(e)が一回または一回より多く行われ、サイクル1〜iを生成し、ここで、iは2または2より大きい整数であり、サイクルs+1において、工程(e)のm個のイニシエーター化合物を含む溶液は、サイクルsの工程(a)の溶液であり、ここでsはi−1またはi−1より小さい整数である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
サイクル1〜iのうちの少なくとも一つにおいて、工程(d)が工程(c)に先行する、請求項7または8のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
少なくとも一つの構成要素が、アミノ酸である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記酵素がDNAリガーゼ、RNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、またはトポイソメラーゼである、請求項7に記載の方法。
【請求項34】
前記元のオリゴヌクレオチドが、二本鎖オリゴヌクレオチドである、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記入来オリゴヌクレオチドが、二本鎖オリゴヌクレオチドである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記イニシエーター化合物が、構成要素と結合するように適合された第一の官能基、オリゴヌクレオチドの5’末端に結合するように適合された第二の官能基、およびオリゴヌクレオチドの3’末端に結合するように適合された第三の官能基を含むリンカー部分を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、前記リンカー部分が、
【化1】
の構造であり、ここで
Aは、構成要素に結合するように適合された官能基であり;
Bは、オリゴヌクレオチドの5’末端に結合するように適合された官能基であり;
Cは、オリゴヌクレオチドの3’末端に結合するように適合された官能基であり;
Sは、原子または骨格であり;
Dは、AとSを結びつける化学構造であり;
Eは、BとSを結びつける化学構造であり;そして
Fは、CとSを結びつける化学構造である、
方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって:
Aが、アミノ基であり;
Bが、リン酸基であり;
Cが、リン酸基である、
方法。
【請求項39】
D、E、およびFが、それぞれ独立して、アルキレン基またはオリゴ(エチレングリコール)基である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
Sが、炭素原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、リン酸基、環式基、または多環式基である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記リンカー部分が、
【化2】
の構造であり、ここで、
n、m、およびpは、それぞれ独立して、1〜約20の整数である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、2〜8の整数である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、3〜6の整数である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記リンカー部分が、
【化3】
の構造を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記イニシエーター化合物のそれぞれが、反応基を含み、ここで前記r個の構成要素のぞれぞれが、該反応基に相補的な相補的反応基を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項46】
前記反応基および前記相補的反応基が、アミノ基;カルボキシル基;スルホニル基;ホスホニル基;エポキシド基;アジリジン基;およびイソシアネート基からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記反応基および前記相補的反応基が、ヒドロキシル基;カルボキシル基;スルホニル基;ホスホニル基;エポキシド基;アジリジン基;およびイソシアネート基からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記反応基および前記相補的反応基が、アミノ基およびアルデヒド基またはケトン基からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記反応基と前記相補的反応基との間の反応が、還元条件化で行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記反応基および前記相補的反応基が、リンイリド基およびアルデヒド基またはケトン基からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記反応基および前記相補的反応基が、付加環化を介して反応し環式構造を形成する、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記反応基および前記相補的反応基が、アルキンおよびアジドからなる群より選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記反応基および前記相補的反応基が、ハロゲン化されたヘテロ芳香族基および求核試薬からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
前記ハロゲン化されたヘテロ芳香族基が、塩素化されたピリミジン、塩素化されたトリアジン、および塩素化されたプリンからなる群より選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記求核試薬がアミノ基である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
請求項28に記載の方法であって、該方法が、サイクルiの後に:
(f)一つまたは一つより多い前記機能的部分を環化する工程、
をさらに包含する、方法。
【請求項57】
工程(f)の機能的部分が、アジド基およびアルキニル基を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記機能的部分が、前記アジド基および前記アルキニル基の付加環化に対して適切な条件下で維持されて、トリアゾール基を形成し、それにより環式機能的部分を形成する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記付加環化反応が、銅触媒の存在下で行われる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
請求項59に記載の方法であって、工程(f)の一つまたは一つより多い機能的部分のうちの少なくとも一つが、少なくとも二つのスルフヒドリル基を含み、ここで、該機能的部分は、該二つのスルフヒドリル基の反応に対して適切な条件下で維持され、ジスルフィド基を形成し、それにより、該機能的部分を環化する、方法。
【請求項61】
前記元のオリゴヌクレオチドが、PCRプライマー配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項62】
サイクルiの入来オリゴヌクレオチドが、PCR近接プライマーを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項63】
請求項28に記載の方法であって、該方法が、サイクルiの後に、
(d)近接PCRプライマー配列を含むオリゴヌクレオチドを、前記コード化オリゴヌクレオチドにライゲーションする工程、
をさらに包含する、方法。
【請求項64】
近接PCRプライマー配列を含む前記オリゴヌクレオチドが、酵素の存在下で前記コード化オリゴヌクレオチドにライゲーションされ、ここで該酵素は、該ライゲーションを触媒する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
式
【化4】
の化合物であって、ここで、
Xは、一つまたは一つより多い構成要素を含む機能的部分であり;
Zは、その3’末端で、Bに結合したオリゴヌクレオチドであり;
Yは、その5’末端で、Cに結合したオリゴヌクレオチドであり;
Aは、Xと共有結合を形成する官能基であり;
Bは、Zの3’末端と結合を形成する官能基であり;
Cは、Yの5’末端と結合を形成する官能基であり;
D、FおよびEは、それぞれ、独立して二官能性結合基であり、そして
Sは、原子または分子骨格である、
化合物。
【請求項66】
D、FおよびEが、それぞれ独立して、アルキレン鎖またはオリゴ(エチレングリコール)鎖である、請求項65に記載の化合物。
【請求項67】
YおよびZが、実質的に相補的であり、適切な条件下でワトソン−クリック塩基対および二重鎖形成を可能にする化合物中に配向される、請求項65に記載の化合物。
【請求項68】
YおよびZが、同じ長さであるか、または異なる長さである、請求項65に記載の化合物。
【請求項69】
YおよびZが、同じ長さである、請求項68に記載の化合物。
【請求項70】
YおよびZが、それぞれ、10個または10個より多い塩基長であり、そして10個または10個より多い塩基対の相補的領域を有する、請求項65に記載の化合物。
【請求項71】
Sが、炭素原子、ホウ素原子、窒素原子、もしくはリン原子、または多原子骨格である、請求項65に記載の化合物。
【請求項72】
Sが、リン酸基または環式基である、請求項71に記載の化合物。
【請求項73】
Sが、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、またはヘテロアリール基である、請求項72に記載の化合物。
【請求項74】
前記リンカー部分が、
【化5】
の構造であり、
ここで、n、m、およびpが、それぞれ独立して、1〜約20の整数である、請求項65に記載の化合物。
【請求項75】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、2〜8の整数である、請求項74に記載の化合物。
【請求項76】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、3〜6の整数である、請求項75に記載の化合物。
【請求項77】
前記リンカー部分が、構造
【化6】
の構造を有する、請求項65に記載の化合物。
【請求項78】
XおよびYが、PCRプライマー配列を含む、請求項65に記載の化合物。
【請求項79】
少なくとも約102種の異なる化合物を含む化合物のライブラリーであって、該化合物が、二つまたは二つより多い構成要素を含む機能的部分を含み、ここで、該機能的部分は、該機能的部分の構造を同定するオリゴヌクレオチドに作動可能に連結する、化合物のライブラリー。
【請求項80】
前記ライブラリーが、前記異なる化合物の各々について、少なくとも約105個の複製を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリー。
【請求項81】
前記ライブラリーが、前記異なる化合物の各々について、少なくとも約106個の複製を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリー。
【請求項82】
少なくとも約104種の異なる化合物を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリー。
【請求項83】
少なくとも約106種の異なる化合物を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリー。
【請求項84】
少なくとも約108種の異なる化合物を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリー。
【請求項85】
少なくとも約1010種の異なる化合物を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリー。
【請求項86】
少なくとも約1012種の異なる化合物を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリー。
【請求項87】
前記ライブラリーが、独立して式I:
【化7】
である多数の化合物を含む、請求項79に記載の化合物のライブラリーであって、ここで:
Xは、一つまたは一つより多い構成要素を含む機能的部分であり;
Zは、その3’末端で、Bに結合したオリゴヌクレオチドであり;
Yは、その5’末端で、Cに結合したオリゴヌクレオチドであり;
Aは、Xと共有結合を形成する官能基であり;
Bは、Zの3’末端と結合を形成する官能基であり;
Cは、Yの5’末端と結合を形成する官能基であり;
D、FおよびEは、それぞれ、独立して二官能性結合基であり、そして
Sは、原子または分子骨格である、
化合物のライブラリー。
【請求項88】
A、B、C、D、E、FおよびSがそれぞれ、式Iの化合物のそれぞれに対して同じ正体を有する、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項89】
前記ライブラリーが、多数の式Iの化合物から本質的になる、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項90】
D、E、およびFが、それぞれ独立して、アルキレン鎖またはオリゴ(エチレングリコール)鎖である、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項91】
YおよびZが、実質的に相補的であり、適切な条件下でワトソン−クリック塩基対および二重鎖形成を可能にする化合物中に配向される、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項92】
YおよびZが、同じ長さであるか、または異なる長さである、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項93】
YおよびZが、同じ長さである、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項94】
YおよびZが、それぞれ、10個または10個より多い塩基長であり、そして10個または10個より多い塩基対の相補的領域を有する、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項95】
Sが、炭素原子、ホウ素原子、窒素原子、もしくはリン原子、または多原子骨格である、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項96】
Sが、リン酸基または環式基である、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項97】
Sが、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、またはヘテロアリール基である、請求項96に記載の化合物のライブラリー。
【請求項98】
請求項87に記載の化合物であって、前記リンカー部分が、構造
【化8】
であり、ここで、n、m、およびpが、それぞれ独立して、1〜約20の整数である、化合物のライブラリー。
【請求項99】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、2〜8の整数である、請求項98に記載の化合物のライブラリー。
【請求項100】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、3〜6の整数である、請求項99に記載の化合物。
【請求項101】
前記リンカー部分が、構造
【化9】
を有する、請求項87に記載の化合物。
【請求項102】
XおよびZが、PCRプライマー配列を含む、請求項87に記載の化合物のライブラリー。
【請求項103】
請求項1に記載の方法により調製される化合物。
【請求項104】
請求項27に記載の方法により調製される化合物のライブラリー。
【請求項105】
生物学的標的に結合する一つまたは一つより多い化合物を同定するための方法であって、該方法が:
(a)該生物学的標的を、請求項27に記載の方法により調製される化合物のライブラリーと、該化合物のライブラリーの少なくとも一つのメンバーが該標的へ結合するために適切な条件下で、接触させる工程;
(b)該標的に結合しないライブラリーのメンバーを除去する工程;
(c)該標的に結合する化合物のライブラリーの少なくとも一つのメンバーのコード化オリゴヌクレオチドを増幅する工程;
(d)工程(c)のコード化オリゴヌクレオチドを配列決定する工程;ならびに、
(e)工程(d)において決定された配列を用いて、該生物学的標的に結合する化合物のライブラリーのメンバーの機能的部分の構造を決定する工程;
を包含し、それにより該生物学的標的に結合する一つまたは一つより多い化合物を同定する、方法。
【請求項106】
生物学的標的に結合する化合物を同定するための方法であって、該方法が:
(a)該生物学的標的を、少なくとも約102種の異なる化合物を含む化合物のライブラリーと接触させる工程であって、ここで該化合物は、オリゴヌクレオチドに作動可能に連結する二つまたは二つより多い構成要素を含む機能的部分を含み、該オリゴヌクレオチドは、少なくとも一つの該化合物のライブラリーが該標的へ結合するために適切な条件下で、該機能的部分の構造を同定する、工程;
(b)該標的に結合しないライブラリーのメンバーを除去する工程;
(c)該標的に結合する化合物のライブラリーの少なくとも一つのメンバーのコード化オリゴヌクレオチドを増幅する工程;
(d)工程(c)のコード化オリゴヌクレオチドを配列決定する工程;ならびに、
(e)工程(d)において決定された配列を用いて、該生物学的標的に結合する化合物のライブラリーのメンバーの機能的部分の構造を決定する工程
を包含し、それにより該生物学的標的に結合する一つまたは一つより多い化合物を同定する、方法。
【請求項107】
前記ライブラリーが、前記異なる化合物のそれぞれの少なくとも約105個の複製を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記ライブラリーが、前記異なる化合物のそれぞれの少なくとも約106個の複製を含む、請求項106に記載の化合物の方法。
【請求項109】
前記ライブラリーが、少なくとも約104種の異なる化合物を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項110】
前記ライブラリーが、少なくとも約106種の異なる化合物を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項111】
前記ライブラリーが、少なくとも約108種の異なる化合物を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項112】
前記ライブラリーが、少なくとも約1010種の異なる化合物を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項113】
前記化合物のライブラリーが、少なくとも約1012種の異なる化合物を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項114】
請求項106に記載の方法であって、ここで、前記化合物のライブラリーが、独立して式I:
【化10】
の多数の化合物を含み、ここで:
Xは、一つまたは一つより多い構成要素を含む機能的部分であり;
Zは、その3’末端で、Bに結合したオリゴヌクレオチドであり;
Yは、その5’末端で、Cに結合したオリゴヌクレオチドであり;
Aは、Xと共有結合を形成する官能基であり;
Bは、Zの3’末端と結合を形成する官能基であり;
Cは、Yの5’末端と結合を形成する官能基であり;
D、FおよびEは、それぞれ、独立して二官能性結合基であり、そして
Sは、原子または分子骨格である、
方法。
【請求項115】
A、B、C、D、E、FおよびSがそれぞれ、式Iの化合物のそれぞれに対して同じ正体を有する、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記化合物のライブラリーが、多数の式Iの化合物から本質的になる、請求項114に記載の方法。
【請求項117】
D、E、およびFが、それぞれ独立して、アルキレン鎖またはオリゴ(エチレングリコール)鎖である、請求項114に記載の方法。
【請求項118】
YおよびZが、実質的に相補的であり、適切な条件下でワトソン−クリック塩基対および二重鎖形成を可能にする化合物中に配向される、請求114に記載の方法。
【請求項119】
YおよびZが、同じ長さであるか、または異なる長さである、請求114に記載の方法。
【請求項120】
YおよびZが、同じ長さである、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
YおよびZが、それぞれ、10個または10個より多い塩基長であり、そして10個または10個より多い塩基対の相補的領域を有する、請求項114に記載の方法。
【請求項122】
Sが、炭素原子、ホウ素原子、窒素原子、もしくはリン原子、または多原子骨格である、請求項114に記載の方法。
【請求項123】
Sが、リン酸基または環式基である、請求項114に記載の方法。
【請求項124】
Sが、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、またはヘテロアリール基である、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
請求項114に記載の方法であって、前記リンカー部分が、構造
【化11】
であり、ここで、n、m、およびpが、それぞれ独立して、1〜約20の整数である、方法。
【請求項126】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、2〜8の整数である、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
n、m、およびpが、それぞれ独立して、3〜6の整数である、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記リンカー部分が、構造
【化12】
を有する、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
XおよびZが、PCRプライマー配列を含む、請求項114に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−543289(P2008−543289A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515983(P2008−515983)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/022555
【国際公開番号】WO2006/135786
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(399043691)プリーシス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】PRAECIS PHARMACEUTICALS,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/022555
【国際公開番号】WO2006/135786
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(399043691)プリーシス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】PRAECIS PHARMACEUTICALS,INC.
【Fターム(参考)】
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