説明

コーナ部材およびそれを用いた既設構造物の面の更生方法

【課題】コーナ部材が隣接する更生パネルの継目を気密的かつ水密的に塞ぐため、隣接する更生パネルの継目にシーリング材等による止水処理が不要である。したがって、施工性に優れる。
【解決手段】コーナ部材10は、コンクリート製の開水路100の入隅部分において、底面に設けられる第1更生パネル102と、側面に設けられる第2更生パネル104との継目を塞ぐために用いられる。コーナ部材10は、第1部14と第2部16とを含む本体12を備え、隣接する更生パネル102,104にまたがる幅を有し、所定の角度をなしている。第1部14におけるシール部と第2部16におけるシール部とを、角度を有して隣接する更生パネル102,104の各々に当接させることによって、更生パネル102,104の継目を気密的かつ水密的に塞ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コーナ部材およびそれを用いた既設構造物の面の更生方法に関し、特にたとえば、角度を有して隣接する更生パネルの継目を塞ぐために用いられる、コーナ部材およびそれを用いた既設構造物の面の更生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の更生パネルを用いた劣化した構造物の更生方法の一例が、特許文献1に開示されている。この特許文献1の水路内面のライニング工法では、既設の水路底面に固定部材を固定した後にモルタルを敷設し、その上にライニング板を載せて、ライニング板を固定部材にビス止めする。それから、底面用のライニング板の両端にコーナ部材を当てがい、このコーナ部材と水路側面に固定した固定部材とによって側面用のライニング板を固定する。そして、水路側面とライニング板と開水路の内面との間にモルタルを注入し、各ライニング板の継目部分をシーリング材で止水している。
【特許文献1】特開2002−294665号[E02B 5/02]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の技術では、底面用のライニング板と側面用のライニング板との継目部分において、コーナ部材とライニング板とをビスによって固定する作業に加え、シーリング材によって上述の継目部分に止水処理を施す作業が必要であり、施工に手間と時間がかかる。また、一般的にシーリング材は対候性に劣るため、シーリング材によって止水処理を施した上述の継目部分のメンテナンスを頻繁に行わなければならず、そのためにメンテナンスの頻度が高まる。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、コーナ部材およびそれを用いた既設構造物の面の更生方法を提供することである。
【0005】
この発明の他の目的は、施工性に優れる、コーナ部材およびそれを用いた既設構造物の面の更生方法を提供することである。
【0006】
また、この発明のさらに他の目的は、メンテナンスの頻度を可及的抑制することができる、コーナ部材およびそれを用いた既設構造物の面の更生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0008】
第1の発明は、角度を有して隣接する更生パネルの継目を塞ぐためのコーナ部材であって、全体として前記隣接する更生パネルにまたがる幅を有するかつ所定の角度をなす第1部と第2部とを含む本体、および本体の裏面に設けられるシール部を備える、コーナ部材である。
【0009】
第1の発明では、コーナ部材(10)は、角度を有して隣接する更生パネル(102,104)の継目を塞ぐために用いられ、実施例では、コーナ部材は、コンクリート製の開水路(100)の入隅部分において、開水路の底面に設けられる第1更生パネル(102)と、側面に設けられる第2更生パネル(104)との継目を塞ぐために用いられる。コーナ部材は、第1部(14)と第2部(16)とを含む本体(12)を備え、本体の裏面(12b)すなわち第1部および第2部の裏面には、シール部(20)が設けられる。第1部と第2部とは、たとえば隣接する更生パネルのなす角度に合わせて設定される所定の角度をなしている。また、第1部と第2部とは、全体として隣接する更生パネルにまたがる幅を有している。このようなコーナ部材では、第1部におけるシール部と第2部におけるシール部とを、角度を有して隣接する更生パネルの各々に当接させることによって、当該角度を有して隣接する更生パネルの継目を気密的かつ水密的に塞ぐことができる。
【0010】
第1の発明によれば、裏込め充填材の打設後に、更生パネルの継目にシーリング材等による止水処理が不要であり、施工性に優れる。さらに、シーリング材は更生パネルと比較して対候性に劣るため、コーナ部材によって更生パネルの継目を塞ぐことによって、メンテナンスの頻度も抑制される。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、本体は、第1部と第2部とを角度可変に連結する手段を含む。
【0012】
第2の発明では、コーナ部材(10)の本体(12)は、第1部(14)と第2部(16)とを角度可変に連結する手段を含み、第1部と第2部とがなす角度は可変である。上述の手段として、実施例では、本体が柔軟性を有する合成樹脂によって形成される。また、他の実施例では、軟質プラスチック板やゴム板で形成される軟質材の接続部(56)によって第1部と第2部とが接続される。さらに、他の実施例では、第1部に形成される嵌合受部(58)と第2部に形成される嵌合部(60)とが回動自在に嵌合される。このため、第1部と第2部とが、隣接する更生パネル(102,104)のなしている角度にフレキシブルに対応することができる。したがって、コーナ部材を、たとえばハンチのない開水路(100)のみならず、ハンチが形成されている開水路(108)など幅広い形状の構造物に対応することができる。
【0013】
第3の発明は、第1または2の発明に従属し、本体の裏面に設けられる係止部をさらに備える。
【0014】
第3の発明では、コーナ部材(10)の本体(12)の裏面には、係止部(18,54,62,64)が設けられる。たとえば、実施例では、係止部(18)は、第1更生パネル(102)の側面に係止して、コーナ部材を一定位置に位置決めする。また、他の実施例では、係止部(54)は、第2更生パネル(104)の側面に係止するとともに、裏込め充填材の打設時に裏込め充填材にも係止して投錨効果を示す。
【0015】
第3の発明によれば、コーナ部材が一定位置に位置決めされることにより、容易かつ円滑に支保工によって本体の表面を押さえることができる。また、裏込め充填材の打設時に裏込め充填材に係止する場合には、裏込め充填材の打設後にコーナ部材と裏込め充填材とが強固に固定される。
【0016】
第4の発明は、第1ないし3のいずれかに記載のコーナ部材を用いた既設構造物の面の更生方法であって、(a)既設構造物の第1の面に第1の更生パネルを設けるステップ、(b)既設構造物の第1の面と所定の角度をなす、別の第2の面に第2の更生パネルを設けるステップ、(c)第1の更生パネルと第2の更生パネルとの継目に設けられるコーナ部材を配置するステップ、(d)コーナ部材を押さえるように、第1の更生パネルおよび第2の更生パネルの表面上に支保工を渡し、当該支保工を固定するステップ、(e)第1の面および第2の面と、第1の更生パネルおよび第2の更生パネルの裏面との間に充填材を充填するステップ、および(f)支保工を除去するステップを含む、既設構造物の面の更生方法である。
【0017】
第4の発明では、ステップ(a)において、既設構造物の第1の面に第1の更生パネルを設ける。実施例では、開水路(100)の底面にアンカ等のパネル用固定具(42)でパネル部材(22)を固定し、当該パネル部材に他のパネル部材を連結することによって、第1更生パネル(102)を設ける。ステップ(b)において、既設構造物の第1の面と所定の角度をなす別の第2の面に第2の更生パネルを設ける。実施例では、開水路の側面に、第2更生パネル(104)を設ける。ただし、ハンチが形成される開水路(106)の場合には、第1の更生パネルが開水路の底面および側面に設けられる更生パネル(102,104)であり、第2の更生パネルがハンチ部分に設けられる更生パネル(108)である。ステップ(c)において、コーナ部材(10)を第1の更生パネルと第2の更生パネルとの継目に配置する。実施例では、コーナ部材における第1部(14)のシール部(20)を第1の更生パネルに当接させ、第2部(16)のシール部を第2の更生パネルに当接させる。ステップ(d)において、コーナ部材を押さえるように、第1の更生パネルおよび第2の更生パネルの表面上に支保工(46,52)を渡し、当該支保工を固定する。実施例では、開水路の底面および側面に予め打ち込んでおいたアンカ(50)に支保工用固定具(48)を螺合し、それから、支保工用固定具に支保工を取り付け、支保工用固定具で支保工を固定する。そして、この際には、支保工(46)によってコーナ部材を押さえる。実施例では、コーナ部材の本体(12)の表面(12a)の上に支保工を配置し、当該支保工に直交するように配置した別の支保工(52)を支保工用固定具で固定することによって、第1部を第1の更生パネルに、かつ第2部を第2の更生パネルにそれぞれ押さえる。ステップ(e)において、第1の面および第2の面と、第1の更生パネルおよび第2の更生パネルとの間に、充填材を充填する。ステップ(f)において、裏込め充填材がある程度に固化すると、支保工を除去する。実施例では、支保工を支保工用固定具から取り外し、さらに支保工用固定具を開水路から取り外す。
【0018】
第4の発明によれば、隣接する更生パネルの継目にシーリング材等による止水処理が不要であり、施工性に優れる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、コーナ部材が隣接する更生パネルの継目を気密的かつ水密的に塞ぐため、当該隣接する更生パネルの継目にシーリング材等による止水処理が不要である。したがって、施工性に優れる。
【0020】
さらに、シーリング材は更生パネルと比較して対候性に劣るため、コーナ部材によって更生パネルの継目を塞ぐことによって、メンテナンスの頻度も抑制される。
【0021】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明の一実施例であるコーナ部材10は、たとえば、農業用あるいは下水用の開水路、下水暗渠、下水処理場の沈殿池あるいは貯水槽、上水施設の貯水池あるいは配水池などの構造物の壁面を更生パネルによって補修するときに、角度を有して隣接する更生パネルの継目を塞ぐために用いられる。
【0023】
図1に示すように、この実施例においては、コーナ部材10は、コンクリート製の開水路100の入隅部分において、開水路100の底面に設けられる第1更生パネル102と側面に設けられる第2更生パネル104との継目を塞ぐために用いられるが、これに限定される必要はない。
【0024】
図2に示すように、コーナ部材10は、たとえば塩素化ポリエチレンを混入した硬質塩化ビニルなど柔軟性を有する合成樹脂によって形成され、第1部14と第2部16とを含む本体12を備える。
【0025】
本体12の開水路100の幅方向における長さ、すなわち幅Wは、少なくとも隣接する第1更生パネル102と第2更生パネル104とにまたがる長さを有しており、たとえば62mmである。また、本体12の開水路100の長手方向の長さLは、たとえば、コーナ部材10を用いる開水路100の目地の間隔に対応して設定され、5000mmである。ただし、本体12の長さLは、後述するパネル部材22の同方向における長さに対応させて設定してもよい。
【0026】
図3に示すように、第1部14は、矩形の板状に形成され、その長さはたとえば38mmである。第1部14の一方端部には、第1更生パネル102の側面に係止させるための係止部18が一体的に形成される。係止部18は、第1部14の一方端部から下方向に突出する板状体であり、その長さはたとえば12mmである。
【0027】
また、第2部16は、第1部14の表面の略中央部から斜め上側に向かって湾曲する矩形の板状に形成され、その曲率半径は、第1更生パネル102と第2更生パネル104とのなす角度に合わせて適宜設定され、たとえば100mmである。このように、第1部14と第2部16とは、第1更生パネル102と第2更生パネル104とのなす角度に合わせて設定される所定の角度をなしている。
【0028】
本体12の表面12aは、たとえばアクリル樹脂など耐候性を有する樹脂でコーティングされている。また、本体12の裏面12b、すなわち第1部および第2部の裏面には、複数のシール部20が間隔を隔てて設けられる。シール部20は、軟質塩化ビニルなどの合成樹脂によって形成され、第1部14ないし第2部16の裏面から少し突出する突起状に形成される。
【0029】
上述したように、このようなコーナ部材10は、開水路100の底面に設けられる第1更生パネル102と側面に設けられる第2更生パネル104との継目を塞ぐために用いられる。第1更生パネル102および第2更生パネル104には、図4および図5に示すようなパネル部材22と、図7に示すようなキャップ部材40とを含む更生パネルを用いることができる。ただし、以下に示す更生パネル(パネル部材22やキャップ部材40)の構成は、単なる例示であり、これに限定される必要はない。
【0030】
図4および図5に示すように、パネル部材22は、硬質塩化ビニルなどの合成樹脂からなり、矩形の板状に形成される。パネル部材22は、互いに平行に延びる第1端24と第2端26とを有し、第1端24と隣接する他のパネル部材22の第2端26とを接合して更生パネルを形成する。第1端24および第2端26の長さは、構造物の面の短い方の長さ、すなわち、この実施例における開水路100の幅であって、たとえば1000mmに設定され、第1端24および第2端26と直交する長さは、たとえば300mmに設定される。
【0031】
また、パネル部材22は、平面部28および窪み部30を有する。平面部28は、矩形の板状体であって、平らな第1面32とそれに対向する第2面34とを含み、第1面32が更生された構造物の表面を形成し、第2面34が既設構造物の表面、すなわち、この実施例における開水路100の底面や側面と対向してこれを覆う。たとえば、第1面32の表面は、アクリル樹脂など耐候性を有する樹脂でコーティングされている。
【0032】
また、第2面34には、複数の突起部36が間隔を隔てて設けられる。突起部36は、既設構造物の表面と第2面34との間に裏込め充填材を充填した際に、裏込め充填材に嵌まって投錨効果を示す部位であって、その断面形状はT字状などで、第1端24に平行にパネル部材22の全長に亘って延びる。
【0033】
窪み部30は、第2面34よりへこんだ部分であって、パネル部材22の第1端24および第2端26のそれぞれに設けられ、第1端24を含む第1窪み部30aと第2端26を含む第2窪み部30bとを備える。具体的には、図6に示すように、パネル部材22の第1端24と、隣接する他のパネル部材22の第2端26とを接合することにより、第1窪み部30aと第2窪み部30bとが接続されて、断面形状がU字状の窪み部30が形成される。
【0034】
窪み部30は、第1端24ないし第2端26と平行に設けられ、パネル部材22の全長に亘って連続する。窪み部30の幅は、たとえば50mmに設定され、その深さは、後述する固定具取付部に取り付けたパネル用固定具の頭部などをキャップ部材40で覆うことができる深さであって、たとえば7mmに設定される。
【0035】
窪み部30には、固定具取付部が設けられる。固定具取付部は、たとえば第2窪み部30bの底に設けられる貫通孔38であり、後述する、パネル部材22を固定するためのパネル用固定具42ないしパネル部材22を所定高さに保持する支保工46を固定するための支保工用固定具48の少なくとも一方が取り付け可能である。
【0036】
図7に示すように、キャップ部材40は、硬質塩化ビニルなどの合成樹脂で形成される矩形の板状体であり、パネル部材22の第1端24と、隣接する他のパネル部材22の第2端26とを連結した後に窪み部30を覆う部材である。
【0037】
キャップ部材40の長手方向の長さは、パネル部材22の第1端24および第2端26と等しく、たとえば300mmに設定され、短い方の長さは、窪み部30の幅に相当し、窪み部30の全体を覆うように設定される。たとえば、キャップ部材40の表面は、アクリル樹脂など耐候性を有する樹脂でコーティングされている。また、キャップ部材40の表面は、平らであって、キャップ部材40が窪み部30を覆った際にパネル部材22の第1面32と面一になって、更生パネルの表面を形成する(図1参照)。
【0038】
図8−図14を参照して、この実施例のコーナ部材10を用いて、図8に示すような開水路100の底面と側面とを更生パネルによって更生する方法を以下に示す。
【0039】
先ず、開水路100の施工部分より上流側にコンクリートパネルなどで水を予め堰き止めて、水中ポンプなどにより堰き止められた水を施工部分より下流側に放流する。そして、開水路100の底面および側面の泥などを高圧洗浄機などで除去し、特に突き出た部分をディスクサンダーなどで除去する。
【0040】
そして、更生パネルを形成するための複数のパネル部材22と、開水路100の底面および側面のそれぞれにパネル部材22を固定するためのアンカ等のパネル用固定具42とを用意する。
【0041】
次に、パネル部材22の第2面34を開水路100の底面側に向け、第1端24および第2端26が開水路100の長手方向に対して直角になるようにして、パネル部材22を開水路100の底面に配置し、パネル用固定具42を貫通孔38に挿入し、開水路100の底面に打ち込む。なお、この際には、図9に示すように、パネル部材22のたわみを防止するためのスペーサ44をパネル用固定具42に適宜取り付ける。これにより、貫通孔38に取り付けられるパネル用固定具42でパネル部材22が開水路100の底面と間隔を隔てて固定される。
【0042】
そして、固定されたパネル部材22の第1端24に次のパネル部材22を配置し、次のパネル部材22をパネル用固定具42で開水路100に固定せずに、第1端24と隣接するパネル部材22の第2端26とを接合する。これにより、隣り合うパネル部材22どうしが連結されて、さらに、次のパネル部材22も先のパネル部材22と同様に、パネル用固定具42で開水路100に固定せずに、第1端24と隣接するパネル部材22の第2端26とを接合する。
【0043】
なお、全てのパネル部材22をパネル用固定具42で開水路100に固定するのではなく、たとえば、3つのパネル部材22ごとにパネル用固定具42で開水路100に固定する程度が好適である。また、その固定するパネル部材22においても全ての貫通孔38にパネル用固定具42を取り付けるのではなく、たとえば5つの貫通孔38が形成されていれば、その内の3つの貫通孔38にパネル用固定具42を取り付ける程度が好適である。
【0044】
上述のとおりパネル部材22どうしの連結を繰り返して、図10に示すように、開水路100の底面をパネル部材22で覆い、開水路100の底面に第1更生パネル102を形成する。
【0045】
続いて、第1更生パネル102と同様の方法で、開水路100の側面をパネル部材22で覆い、開水路100の側面に第2更生パネル104を形成する。
【0046】
次に、図11に示すように、開水路100の入隅部分における、第1更生パネル102と第2更生パネル104との継目にコーナ部材10を配置する。ただし、コーナ部材10は、第1更生パネル102を設けた後、第2更生パネル104を設ける前に配置しておいてもよい。
【0047】
具体的には、第2更生パネル104を形成するパネル部材22の第1面32に第2部16のシール部20を当接させた状態で、第1更生パネル102と第2更生パネル104との継目に係止部18を挿入する。そして、係止部18を第1更生パネル102の側面に係止させるとともに、第1部14のシール部20を当該パネル部材22の第1面32に当接させる。
【0048】
それから、支保工46,52および支保工用固定具48を用意する。支保工46,52は、長尺部材であって、たとえば丸パイプなどの鋼管が用いられる。支保工用固定具48は、支保工46を一定の高さに支え固定するものであって、パイプクランプなどが用いられる。
【0049】
それから、図12に示すように、隣接するパネル部材22をまたいで、これらの表面上に支保工46を渡し、支保工用固定具48を貫通孔38に取り付ける。
【0050】
具体的には、図13に示すように、先ず、開水路100の底面に予め打ち込んでおいたアンカ50に支保工用固定具48を螺合し、支保工用固定具48を固定する。それから、支保工用固定具48に支保工46を取り付け、用途に合わせて開水路100の底面に対して平行にまたは一定の勾配になるように支保工46の高さを調整し、支保工用固定具48で支保工46を固定する。
【0051】
ただし、開水路100の側面を覆うパネル部材22、すなわち第2更生パネル104においては、先ず、開水路100の長手方向に長い複数の支保工52を配置しておき、当該支保工52に直交するように配置した支保工46を支保工用固定具48で固定する(図12参照)。そして、この際には、図14に示すように、支保工52をコーナ部材10の本体12の表面12a上にも配置して、第1部14を第1更生パネル102に、かつ第2部16を第2更生パネル104にそれぞれ押さえる。
【0052】
これにより、支保工用固定具48で支保工46は開水路100の底面および側面に固定され、支保工46,52によりパネル部材22は所定の高さに保持される。また、支保工46,52により、コーナ部材10が第1更生パネル102と第2更生パネル104との継目に固定的に配置される。
【0053】
なお、支保工用固定具48は、パネル用固定具42を取り付けたパネル部材22ではなく、そのパネル部材22に連結されるパネル部材22の貫通孔38に取り付けると好適である。
【0054】
次に、支保工46,52でパネル部材22が開水路100の底面ないし側面から所定の高さより浮き上がらないようにした状態で、連結されたパネル部材22と開水路100の底面および側面との間に裏込め充填材を充填し、全体に裏込め充填材が満たされた後、養生する。
【0055】
このとき、裏込め充填材の充填圧などによりパネル部材22に浮き上がる方向の力が作用しても、パネル部材22は、パネル用固定具42および支保工46,52によって浮き上がる方向への動きが抑えられているため、所定の高さに保持される。また、コーナ部材10も、支保工46,52によって浮き上がる方向への動きが抑えられているため、各更生パネル102,104から外れない。
【0056】
それから、裏込め充填材がある程度に固化すると、支保工46,52を支保工用固定具48から取り外し、さらに支保工用固定具48を開水路100から取り外す。ただし、支保工用固定具48のアンカ50だけは開水路100に残してもよい。
【0057】
そして、隣接するパネル部材22では第1窪み部30aと隣接する第2窪み部30bとが連結されてU字状の窪み部30が形成されているため、キャップ部材40で覆う。これにより、第1面32はキャップ部材40の表面と面一になり揃い、更生パネルが形成されて、開水路100の底面および側面が更生パネルで更生される(図1参照)。
【0058】
この実施例によれば、コーナ部材10の第1部14におけるシール部20を第1更生パネル102に当接させ、さらに第2部16におけるシール部20を第2更生パネル104に当接させることによって、第1更生パネル102と第2更生パネル104との継目を気密的かつ水密的に塞ぐことができる。また、コーナ部材10の本体12の表面12aを支保工46によって押さえることで、第1部14を第1更生パネル102に、かつ第2部16を第2更生パネル104にそれぞれ押さえることができ、裏込め充填材の打設時に充填圧などでコーナ部材10が浮き上がることがない。このため、裏込め充填材の打設後に、第1更生パネル102と第2更生パネル104との継目にシーリング材等による止水処理が不要である。したがって、施工性に優れる。
【0059】
さらに、シーリング材は更生パネルと比較して対候性に劣るため、たとえば第1更生パネル102と第2更生パネル104との継目にシーリング材による止水処理を施すと、第1更生パネル102と第2更生パネル104との継目のみ頻繁にメンテナンスをする必要性が生じる。これに対し、この実施例によれば、メンテナンスの頻度が抑制される。
【0060】
また、コーナ部材10は、第1部14におけるシール部20を第1更生パネル102に当接させ、第2部16におけるシール部を第2更生パネル104にそれぞれ当接させることができれば、パネル部材22の形状に関わらず、第1更生パネル102と第2更生パネル104との継目を気密的かつ水密的に塞ぐことができる。このため、パネル部材22の形状ごとに合わせたコーナ部材10を用意する必要がなく、コーナ部材10に汎用性を持たせることで、製品の種類および在庫量の削減、ならびに生産の効率化につながり、経済性に優れる。
【0061】
さらに、コーナ部材10の本体12の裏面には、係止部18が設けられる。係止部18は、第1更生パネル102の側面に係止することによって、コーナ部材10を一定位置に位置決めすることができる。これにより、容易かつ円滑に支保工46,52によって本体12の表面12aを押さえることができる。
【0062】
さらにまた、この実施例によれば、コーナ部材10の本体12が柔軟性を有する合成樹脂によって形成されるため、第1部14と第2部16とのなす角度を変えることができる。したがって、図8に示すような開水路100の底面に設けられる第1更生パネル102と側面に設けられる第2更生パネル104との継目のみならず、図15に示すような、入隅部分にハンチが形成された開水路106においても、開水路106の底面に設けられる第1更生パネル102とハンチ部分に設けられる第3更生パネル108との継目、および当該第3更生パネル108と開水路106の側面に設けられる第2更生パネル104との継目を、それぞれコーナ部材10によって塞ぐこともできる。
【0063】
ここで、図16を参照して、コーナ部材10によって、第1更生パネル102と第3更生パネル108との継目、および第3更生パネル108と第2更生パネル104との継目を塞ぐ方法を以下に示す。ただし、開水路106のハンチに設けられる第3更生パネル108には、第1端24および第2端26の長さがハンチ部分の長さより少し短く設定されたパネル部材22を用いる。
【0064】
先ず、コーナ部材10の第1部14におけるシール部20と第1更生パネル102の第1面32とを、および第2部16におけるシール部20と第3更生パネル108の第1面32とを、それぞれ当接させる。そして、もう1つのコーナ部材10の第1部14におけるシール部20と第2更生パネル104の第1面32とを、および第2部16におけるシール部20と第3更生パネル108の第1面32とを、それぞれ当接させる。
【0065】
次に、第1更生パネル102と第3更生パネル108との継目を塞ぐコーナ部材10の第2部16と、第3更生パネル108と第2更生パネル104との継目を塞ぐコーナ部材10の第2部16とに亘るベニヤ等の合板110を、それぞれのコーナ部材10の第2部16を挟み込むように第3更生パネル108の第1面32上に敷設する。そして、その合板110上に支保工112を配置し、支保工用固定具48(図示せず)によって固定する。これにより、第1更生パネル102と第3更生パネル108との継目を塞ぐコーナ部材10の第2部16、および第2更生パネル104と第3更生パネル108との継目を塞ぐコーナ部材10の第2部16が第3更生パネル108に押さえられる。
【0066】
なお、図16に示すように、支保工112には、開水路108のハンチ部分の長さを考慮して、他の支保工46,52と干渉しないように、第3更生パネル108の面と直交する方向に長い長方形状の桟木を用いると好適である。
【0067】
次に、開水路106の底面に設けられる第1更生パネル102、および側面に設けられる第2更生パネル104の上に、開水路100の長手方向に長い複数の支保工52を配置して、当該支保工52に直交するように配置した別の支保工46を支保工用固定具48で固定する。
【0068】
この際には、支保工52を第1更生パネル102と第3更生パネル108との継目を塞ぐコーナ部材10の第1部14の上にも配置し、第1部14を第1更生パネル102に押さえる。同様に、支保工52を第2更生パネル104と第3更生パネル108との継目を塞ぐコーナ部材10の第1部14の上にも配置し、第1部14を第2更生パネル104に押さえる。
【0069】
これにより、第1更生パネル102と第3更生パネル108との継目、および第3更生パネル108と第2更生パネル104との継目がコーナ部材10によって塞がれる。
【0070】
なお、他の工程については、図8に示す開水路100の場合と同じであるため、重複した説明は省略する。
【0071】
図17―図21に示すこの発明の他の一実施例であるコーナ部材10は、図1の実施例におけるコーナ部材10と本体12の形状が異なる。以下、図1の実施例におけるコーナ部材10と同様である部分に関しては、詳細な説明は省略する。
【0072】
図17に示すように、コーナ部材10は、第1部14と第2部16とを含む本体12を備える。本体12の幅は、少なくとも隣接する第1更生パネル102と第2更生パネル104とにまたがる長さを有しており、たとえば70mmである。
【0073】
図18に示すように、第1部14は、矩形の板状に形成され、その長さはたとえば40mmである。また、第2部16は、第1部14の端部から斜め上側に延びる矩形の板状に形成され、その長さはたとえば40mmである。第1部14と第2部16とは、第1更生パネル102と第2更生パネル104とのなす角度に合わせて設定される所定の角度をなしており、その角度はたとえば135°である。
【0074】
第2部16の裏面には、係止部54が一体的に形成される。係止部54は、第2部14の裏面から第2部14と直交する方向に突出して、その先端部がさらに第2部14と平行方向に突出する。このように、この実施例における係止部54は、断面が略L字形状を有する板状に形成されており、第2更生パネル104の側面に係止するとともに、裏込め充填材の打設時に裏込め充填材に係止して投錨効果を示す部位としても機能する。
【0075】
本体12の表面12aは、たとえばアクリル樹脂など耐候性を有する樹脂でコーティングされている。また、本体12の裏面12b、すなわち第1部14および第2部16の裏面には、複数のシール部20が間隔を隔てて設けられる。シール部20は、軟質塩化ビニルなどの合成樹脂によって形成され、第1部14ないし第2部16の裏面から少し突出する突起状に形成される。
【0076】
このようなコーナ部材10を、第1更生パネル102と第2更生パネル104との継目に配置する際には、図19に示すように、第2更生パネル104の側面に係止部54を係止させた状態で、第1部14のシール部20と第1更生パネル102の第1面32とを当接させ、第2部16のシール部20と第2更生パネル104の第1面32とを当接させる。そして、支保工52をコーナ部材10の本体12の表面12a上に配置して、支保工46および支保工用固定具48(図示せず)によって第1部14を第1更生パネル102に、かつ第2部16を第2更生パネル104にそれぞれ押さえる。
【0077】
なお、他の工程については、図1の実施例と同じであるため、重複した説明は省略する。
【0078】
このように、この実施例では、コーナ部材10の係止部54は、断面が略L字形状を有する板状に形成されており、第2更生パネル104の側面に係止するだけでなく、裏込め充填材の打設時に裏込め充填材にも係止して、投錨効果を示す。このため、裏込め充填材の打設後にコーナ部材10と裏込め充填材とがしっかりと固定される。したがって、支保工46,52や支保工用固定具48の取外し後にコーナ部材10に外力が加わっても、コーナ部材10の位置は固定的に保持される。
【0079】
なお、この実施例では、係止部54は、第2更生パネル104の側面と裏込め充填材とに係止したが、これに限定される必要はない。たとえば、係止部54は、裏込め充填材にのみ係止する部位であってもよい。この場合には、コーナ部材10によって第1更生パネル102と第2更生パネル104との継目を塞ぐ際に、第1更生パネル102と第2更生パネル104との継目に挿入できる位置であれば、本体12の裏面12bの適宜の位置に係止部54を形成することができる。さらに、たとえば、図20に示すように、本体12の裏面12bに複数の係止部54を形成してもよい。また、図示は省略するが、係止部54は、断面がT字形状を有する板状に形成することもできる。
【0080】
また、図21に示すように、ハンチが形成された開水路108(図15参照)において、開水路108の底面に設けられる第1更生パネル102とハンチ部分に設けられる第3更生パネル108との継目、および当該第3更生パネル108と開水路106の側面に設けられる第2更生パネル104との継目を、それぞれコーナ部材10によって塞ぐこともできる。
【0081】
図22―図24に示すこの発明の他の一実施例であるコーナ部材10は、図1の実施例におけるコーナ部材10と本体12の形状が異なる。以下、図1の実施例におけるコーナ部材10と同様である部分に関しては、詳細な説明は省略する。
【0082】
図22に示すように、コーナ部材10は、第1部14と第2部16と接続部56とを含む本体12を備え、第1部14と第2部16とが接続部56によって接続されている。
【0083】
第1部14および第2部16は、同形状または略同形状の矩形の板状に形成され、その長さはたとえば45mmである。第1部14および第2部16の裏面には、それぞれ第1更生パネル102ないし第2更生パネル104の側面に係止させるための係止部18が一体的に形成される。係止部18は、それぞれ第1部14ないし第2部16の裏面から、第1部14ないし第2部16と直交する方向に突出する板状に形成される。
【0084】
第1部14と第2部16とは、接続部56によって接続される。接続部56は、たとえば軟質プラスチック板やゴム板で形成される軟質材であり、第1部14の裏面の一方端部と第2部16の裏面の一方端部とを接続する略半円筒状に形成される。
【0085】
本体12の表面12aは、たとえばアクリル樹脂など耐候性を有する樹脂でコーティングされている。また、本体12の裏面12b、すなわち第1部14および第2部16の裏面には、複数のシール部20が間隔を隔てて設けられる。シール部20は、軟質塩化ビニルなどの合成樹脂によって形成され、第1部14ないし第2部16の裏面から少し突出する突起状に形成される。
【0086】
このようなコーナ部材10を、第1更生パネル102と第2更生パネル104との継目に配置する際には、図23に示すように、第1更生パネル102の側面に第1部14の係止部18を係止させて、第1部14のシール部20と第1更生パネル102の第1面32とを当接させる。そして、第2更生パネル104の側面に第2部16の係止部18を係止させて、第2部16のシール部20と第2更生パネル104の第1面32とを当接させる。それから、支保工52をコーナ部材10の本体12の表面12a上に配置して、支保工46および支保工用固定具48(図示せず)によって第1部14を第1更生パネル102に、かつ第2部16を第2更生パネル104にそれぞれ押さえる。
【0087】
ここで、接続部56は、更生パネルや各当接部14,16と比較して対候性に劣るため、第2部16と第2更生パネル104とを当接させる際に、第2部16の接続部56が形成される側の一方端部と第1部14の表面とをさらに当接させて、更生後の構造物の表面から隠れる位置に接続部56を収納すると好適である。
【0088】
なお、他の工程については、図1の実施例と同じであるため、重複した説明は省略する。
【0089】
このように、この実施例では、第1部14と第2部16とが軟質材である接続部56によって接続される。このため、コーナ部材10では、本体12が備える第1部14と第2部16とがなす角度を無理なく容易に変化させることができる。したがって、第1更生パネル102と第2更生パネル104とからなる入隅部分の形状に対して、よりフレキシブルな対応が可能である。
【0090】
なお、この実施例では、第1部14と第2部16とを接続部56によって接続したが、これに限定される必要はない。たとえば、図示は省略するが、第2部16の一方端部或いは第1部14の表面にもシール部20を設けて、第2部16の一方端部と第1部14の表面とを当接させて、第1部14と第2部16との隙間を水密的かつ気密的に塞ぐことができるのであれば、接続部56を形成せずに、第1部14と第2部16とを分割することもできる。
【0091】
また、図24に示すように、ハンチが形成された開水路100(図15参照)において、開水路106の底面に設けられる第1更生パネル102とハンチ部分に設けられる第3更生パネル108との継目、および当該第3更生パネル108と開水路106の側面に設けられる第2更生パネル104との継目を、それぞれコーナ部材10によって塞ぐこともできる。
【0092】
図25―図27に示すこの発明の他の一実施例であるコーナ部材10は、図1の実施例におけるコーナ部材10と本体12の形状が異なる。以下、図1の実施例におけるコーナ部材10と同様である部分に関しては、詳細な説明は省略する。
【0093】
図25に示すように、コーナ部材10は、第1部14と第2部16とを含む本体12を備え、第1部14と第2部16とは回動自在に嵌合されている。
【0094】
第1部14は、矩形の板状に形成され、その長さはたとえば51mmである。第1部14の幅方向の一方端部は、斜め上側に向かって湾曲しており、その曲率半径はたとえば25mmである。そして、その湾曲する第1部14の一方端部には、嵌合受部58が形成される。
【0095】
嵌合受部58は、後述する第2部16の嵌合部60と嵌合するための部位であり、第1部14と一体的に形成される。嵌合受部58は、周方向の一部に軸方向に延びるスリットを有する略円筒状に形成され、その内径はたとえば4mmである。
【0096】
第2部16は、矩形の板状に形成され、その長さはたとえば46mmである。第2部16の一方端部には、嵌合部60が形成される。嵌合部60は、嵌合受部58と嵌合する部位であり、第2部16と一体的に形成される。嵌合部60は、嵌合受部58の内径と略等しい外径を有する円筒状に形成され、嵌合受部58の内部に嵌め込まれる。
【0097】
第2部16の裏面には、係止部62が形成される。係止部62は、裏込め充填材の打設時に裏込め充填材に係止して投錨効果を示す部位であり、第2部16と一体的に形成される。係止部62は、第2部14の裏面から第2部14と直交する方向に突出して、その先端部がさらに第2部14と平行方向に突出して、断面が略L字形状を有する板状に形成される。
【0098】
本体12の表面12aは、たとえばアクリル樹脂など耐候性を有する樹脂でコーティングされている。また、本体12の裏面12bには、第1シール部20aと第2シール部20bとが設けられる。第1シール部20aは、湾曲する第1部14の裏面に設けられ、第1部14とは逆方向に突出する板状に形成される。第2シール部20bは、第2部16の裏面の略中央部に設けられ、第2部16と直交する方向に少し突出する突起状に形成される。
【0099】
このようなコーナ部材10を、第1更生パネル102と第2更生パネル104との継目に配置する際には、図26に示すように、先ず、第1部14の第1シール部20aと第1更生パネル102の第1面32とを当接させる。そして、嵌合受部58の内部で嵌合部60を回動させることによって、第1部14と第2部16とがなす角度を変化させて、係止部54を第1更生パネル102と第2更生パネル104との継目に挿入させるとともに、第2部16の第2シール部20bと第2更生パネル104を形成するパネル部材22の第1面32とを当接させる。それから、支保工52をコーナ部材10の本体12の表面12a上に配置して、支保工46および支保工用固定具48(図示せず)によって第1部14を第1更生パネル102に、かつ第2部16を第2更生パネル104にそれぞれ押さえる。
【0100】
なお、他の工程については、図1の実施例と同じであるため、重複した説明は省略する。
【0101】
このように、この実施例では、嵌合受部58の内部で嵌合部60を回動させることによって、本体12の形状を変化させなくても、第1部14と第2部16とがなす角度を変えることができる。このため、第1部14と第2部16とがなす角度を変える際に、コーナ部材10の本体12にかかる負担が低減される。
【0102】
なお、この実施例では、第2部16の裏面に係止部62が形成されたが、これに限定される必要はなく、裏込め充填材の打設時に裏込め充填材に嵌まって投錨効果を示すのであれば、適宜の位置、数、形状の係止部62を形成することができる。また、係止部62をさらに第1更生パネル102ないし第2更生パネル104の側面に係止させてもよい。
【0103】
また、この実施例では、第1部14ないし第2部16の裏面に、第1シール部20aおよび第2シール部20bが設けられたが、これに限定される必要はない。たとえば他の実施例のようなシール部20を設けることもできる。これと同様に、他の実施例のコーナ部材10の第1部14ないし第2部16の裏面に、第1シール部20aおよび第2シール部20bを設けることもできる。
【0104】
また、図27に示すように、ハンチが形成された開水路106(図15参照)において、開水路106の底面に設けられる第1更生パネル102とハンチ部分に設けられる第3更生パネル108との継目、および当該第3更生パネル108と開水路106の側面に設けられる第2更生パネル104との継目を、それぞれコーナ部材10によって塞ぐこともできる。
【0105】
図28に示すこの発明の他の一実施例であるコーナ部材10は、図1の実施例におけるコーナ部材10と本体12の形状が異なる。以下、図1の実施例におけるコーナ部材10と同様である部分に関しては、詳細な説明は省略する。
【0106】
コーナ部材10は、第1部14と第2部16とを含む本体12を備える。
【0107】
第1部14は、矩形の板状に形成され、その一方端部には、第1更生パネル102の側面に係止させるための係止部18が一体的に形成される。係止部18は、それぞれ第1部14の裏面から当該第1部14と直交する方向に突出する板状に形成される。
【0108】
また、第2部16は、第1部14の係止部18が形成される側の一方端部から斜め上側に向かって突出する板状に形成される。
【0109】
第2部16の、第1部14側の一方端部には、第2更生パネル104の側面および裏面に係止するための係止部64が一体的に形成される。係止部64は、第2部16の端部から、当該第2部16と直交する方向に突出して、その先端部がさらに第2部16と平行方向に突出して、断面が略L字形状を有する板状に形成される。係止部64は、第2部16とともに凹形状の受部66を形成する。
【0110】
また、本体12の裏面12bには、第1シール部20aと第2シール部20bとが設けられる。第1シール部20aは、第1部14の裏面から少し突出する突起状に形成される。第2シール部20bは、受部66の形成する凹形状の底部に形成される。
【0111】
このようなコーナ部材10を、第1更生パネル102と第2更生パネル104との継目に配置する際には、図28に示すように、係止部18を第1更生パネル102の入隅部分側の側面に係止させて、第1部14の第1シール部20aと第1更生パネル102の第1面32とを当接させる。そして、第2更生パネル104の下端部を受部66によって覆い、第2更生パネル104の下端と第2シール部20bとを当接させる。このため、この実施例におけるコーナ部材10は、第1更生パネル102を設けた後、第2更生パネル104を設ける前に配置すると好適である。それから、支保工52をコーナ部材10の本体12の表面12a上に配置して、支保工46および支保工用固定具48(図示せず)によって第1部14を第1更生パネル102に、かつ第2部16を第2更生パネル104にそれぞれ押さえる。
【0112】
なお、他の工程については、図1の実施例と同じであるため、重複した説明は省略する。
【0113】
このように、この実施例では、第2更生パネル104の下端部がコーナ部材10の受部66によって覆われる。このため、裏込め充填材の充填圧などによりパネル部材22に浮き上がる方向の力が作用しても、第2更生パネル104の裏側と係止部64とが係止するため、コーナ部材10の浮き上がる方向への動きが抑えられる。したがって、たとえ支保工46,52によって本体12を各更生パネル102,104に押さえつけて固定することができない場合であっても、裏込め充填材の打設時にコーナ部材10が各更生パネル102,104から外れない。
【0114】
なお、上述の各実施例ではいずれも、丸パイプなどの鋼管を支保工46,52として用いたが、これに限定される必要はない。たとえば、角パイプ等の鋼管を支保工46,52として用いることができる。ただし、この場合には、支保工52によってコーナ部材10の第2部16を第2更生パネル104に押さえると、第1部14を第1更生パネル102に押さえることが難しくなる。このため、図29に示すように、支保工52とコーナ部材10の第1部14との間にベニヤ等の合板110を挟むと好適である。ただし、図29では、図1の実施例におけるコーナ部材10によって図示したが、他の実施例のコーナ部材10でも同様である。また、図示は省略するが、丸棒ないし角棒などの棒鋼を支保工46,52として用いることもできる。
【0115】
さらに、上述の実施例ではいずれも、コーナ部材10は、開水路100,106における各更生パネル102,104,108の継目を塞ぐために用いられたが、これに限定される必要はない。たとえば、図30に示すように、コンクリート製の管渠114の底面に設けられる第1更生パネル102とハンチ部分に設けられる第3更生パネル108との継目、第3更生パネル108と管渠114の側面に設けられる第2更生パネル104との継目、さらに第3更生パネル108と管渠114の天面に設けられる第4更生パネル116との継目を塞ぐために用いることもできる。なお、図示は省略するが、ハンチが形成されない矩形の管渠でも同様である。また、図30では、図1の実施例におけるコーナ部材10によって図示したが、他の実施例のコーナ部材10でも同様である。
【0116】
さらにまた、上述の各実施例ではいずれも、ハンチが形成された開水路106において第3更生パネル108の第1面32上に合板110を敷設したが、これに限定される必要はない。たとえば、図示は省略するが、開水路106におけるハンチ部分の長さが十分にあって他の支保工46,52と干渉しないのであれば、第3更生パネル108の上に、開水路100の長手方向に長い複数の支保工52を配置しておき、当該支保工52に直交するように配置した別の支保工46を支保工用固定具48で固定してもよい。
【0117】
さらに、上述の各実施例ではいずれも、コーナ部材10の本体12の表面12aをアクリル樹脂などの対候性を有する合成樹脂で覆ったが、これに限定される必要はない。たとえば、コーナ部材10の本体12を対候性を有する合成樹脂によって形成する、或いはコーナ部材10の本体12を対候性を有する樹脂を混入した合成樹脂によって形成することによって、コーナ部材10の本体12の表面12aと各更生パネル102,104の表面とに同等の対候性を確保することもできる。
【0118】
また、上述の各実施例ではいずれも、開水路100,108の長手方向に長い複数の支保工52を配置し、当該支保工52に直交するように配置した別の支保工46を支保工用固定具48で固定することによってコーナ部材10の本体12の表面12aを押さえつけて固定したが、これに限定される必要はない。たとえば、支保工46と支保工52とを二重に使用せずに、開水路100,108の幅方向に長い支保工46によって直接コーナ部材10の本体12の表面12aを押さえつけて固定してもよい。
【0119】
なお、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】この発明の一実施例のコーナ部材によって開水路の底面に設けた第1更生パネルと側面に設けた第2更生パネルとの継目を塞いだ状態を示す図解図である。
【図2】図1のコーナ部材を示す斜視図である。
【図3】図1のコーナ部材を示す平面図である。
【図4】図1のパネル部材を示す斜視図である。
【図5】図1のパネル部材を示す断面図である。
【図6】第1連結部に隣接するパネル部材の第2連結部を接続して、パネル部材どうしを連結した状態を示す断面図である。
【図7】図1のキャップ部材を示す斜視図である。
【図8】図1の開水路の形状を示す図解図である。
【図9】パネル部材と隣接するパネル部材を連結して、それらのパネル部材を開水路に固定した状態を示す図解図である。
【図10】図8の開水路の底面に第1更生パネルを設けた様子を示す斜視図である。
【図11】図1のコーナ部材によって第1更生パネルと第2更生パネルとの継目を塞いだ状態を示す断面図である。
【図12】(A)は貫通孔に挿入した支保工用固定具に支保工を取り付け、この支保工でパネル部材を所定高さに保持した状態を示す第1端に垂直な断面図であり、(B)は図14の状態を示す第1端に平行な断面図である。
【図13】第1更生パネルおよび第2更生パネル支保工および支保工用固定具によって固定した状態を示す斜視図である。
【図14】図1のコーナ部材によって第1更生パネルと第2更生パネルとの継目を塞ぎ、そのコーナ部材を支保工によって固定した状態を示す断面図である。
【図15】2つの入隅部分にハンチが形成された開水路の形状を示す図解図である。
【図16】図1のコーナ部材によって、図8の開水路の底面に設けた第1更生パネルとハンチ部分に設けた第3更生パネルとの継目、およびその第3更生パネルと側面に設けた第2更生パネルとの継目をそれぞれ塞ぎ、そのコーナ部材を支保工によって固定した状態を示す断面図である。
【図17】この発明の別の実施例のコーナ部材によって開水路の底面に設けた第1更生パネルと側面に設けた第2更生パネルとの継目を塞いだ状態を示す図解図である。
【図18】図17のコーナ部材を示す平面図である。
【図19】図17のコーナ部材によって第1更生パネルと第2更生パネルとの継目を塞ぎ、そのコーナ部材を支保工によって固定した状態を示す断面図である。
【図20】この発明のさらに別の実施例のコーナ部材を示す平面図である。
【図21】図17のコーナ部材によって、図8の開水路の底面に設けた第1更生パネルとハンチ部分に設けた第3更生パネルとの継目、およびその第3更生パネルと側面に設けた第2更生パネルとの継目をそれぞれ塞ぎ、そのコーナ部材を支保工によって固定した状態を示す断面図である。
【図22】この発明のさらに別の実施例のコーナ部材を示す平面図である。
【図23】図22のコーナ部材によって第1更生パネルと第2更生パネルとの継目を塞ぎ、そのコーナ部材を支保工によって固定した状態を示す断面図である。
【図24】図22のコーナ部材によって、図8の開水路の底面に設けた第1更生パネルとハンチ部分に設けた第3更生パネルとの継目、およびその第3更生パネルと側面に設けた第2更生パネルとの継目をそれぞれ塞ぎ、そのコーナ部材を支保工によって固定した状態を示す断面図である。
【図25】この発明のさらに別の実施例のコーナ部材を示す断面図である。
【図26】図25のコーナ部材によって第1更生パネルと第2更生パネルとの継目を塞ぎ、そのコーナ部材を支保工によって固定した状態を示す断面図である。
【図27】図25のコーナ部材によって、図8の開水路の底面に設けた第1更生パネルとハンチ部分に設けた第3更生パネルとの継目、およびその第3更生パネルと側面に設けた第2更生パネルとの継目をそれぞれ塞ぎ、そのコーナ部材を支保工によって固定した状態を示す断面図である。
【図28】この発明のさらに別の実施例のコーナ部材によって第1更生パネルと第2更生パネルとの継目を塞いだ状態を示す断面図である。
【図29】図1のコーナ部材によって第1更生パネルと第2更生パネルとの継目を塞ぎ、そのコーナ部材を図16とは別の形状の支保工によって固定した状態を示す断面図である。
【図30】図1のコーナ部材によって、管渠の底面に設けた第1更生パネルとハンチ部分に設けた第3更生パネルとの継目、第3更生パネルと管渠の側面に設けた第2更生パネルとの継目、および第3更生パネルと管渠の天面に設けた第4更生パネルとの継目をそれぞれ塞いだ状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0121】
10 …コーナ部材
12 …本体
14 …第1部
16 …第2部
20 …シール部
22 …パネル部材
40 …キャップ部材
46,52 …支保工
48 …支保工用固定具
100,106 …開水路
102 …第1更生パネル
104 …第2更生パネル
108 …第3更生パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角度を有して隣接する更生パネルの継目を塞ぐためのコーナ部材であって、
全体として前記隣接する更生パネルにまたがる幅を有するかつ所定の角度をなす第1部と第2部とを含む本体、および
前記本体の裏面に設けられるシール部を備える、コーナ部材。
【請求項2】
前記本体は、前記第1部と前記第2部とを角度可変に連結する手段を含む、請求項1記載のコーナ部材。
【請求項3】
前記本体の裏面に設けられる係止部をさらに備える、請求項1または2記載のコーナ部材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のコーナ部材を用いた既設構造物の面の更生方法であって、
(a)前記既設構造物の第1の面に第1の更生パネルを設けるステップ、
(b)前記既設構造物の第1の面と所定の角度をなす、別の第2の面に第2の更生パネルを設けるステップ、
(c)前記第1の更生パネルと前記第2の更生パネルとの継目に設けられる前記コーナ部材を配置するステップ、
(d)前記コーナ部材を押さえるように、前記第1の更生パネルおよび前記第2の更生パネルの表面上に支保工を渡し、当該支保工を固定するステップ、
(e)前記第1の面および前記第2の面と、前記第1の更生パネルおよび第2の更生パネルの裏面との間に充填材を充填するステップ、および
(f)前記支保工を除去するステップを含む、既設構造物の面の更生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2009−191553(P2009−191553A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34866(P2008−34866)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【Fターム(参考)】