説明

ゴミを軽減する上部タイプレートおよびそれを用いる燃料バンドル

【課題】ゴミを軽減するための上部タイプレート(100)、およびその上部タイプレート(100)を使用する燃料バンドル(1000)を提供すること。
【解決手段】例示的な実施形態のタイプレート(100)は、燃料バンドル(1000)の上に落ちてくる粒子状のゴミに対するゴミトラップを作成するように、互いに重なる複数のゴミ捕捉機構(120)を含むことができる。例示的な実施形態の燃料バンドル(1000)は、ゴミを軽減するために上部タイプレート(100)を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示的な実施形態は、一般に、原子力プラントで使用される燃料構造および材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力プラントは、核分裂により原子力を発生するために燃料が配置された炉心を含む。原子力プラントにおける一般的な設計は、燃料を、炉心内に配置される燃料集合体、すなわち燃料バンドルとして共に束ねた複数の燃料棒に構成することである。これらの燃料棒は、通常、集合体全体にわたる様々な軸方向位置において燃料棒を集合体コンポーネントに接合するいくつかの要素を含む。
【0003】
図1で示すように、沸騰水型原子炉(BWR)などの原子炉の従来の燃料バンドル10は、上部タイプレート14および下部タイプレート16を囲む外側チャンネル12を含むことができる。複数の標準長さの燃料棒18、および/または部分的な長さの燃料棒19が、燃料バンドル10内で格子状に配置され、かつ複数のスペーサ15を貫通することができる。燃料棒18および19は、概して、同じ垂直位置から始まり、同じ垂直位置で終了し、標準長さの棒18より低い垂直位置ですべてが終了する部分的な長さの棒19以外のすべての棒は、燃料バンドル10の長さにわたり連続的に延びている。上端プラグ20および/または下端プラグ30は、燃料棒18および19を上部および下部タイプレート14、16に接合することができるが、部分的な長さの棒19の場合、下端プラグ30だけが使用される。
【0004】
図2Aおよび2Bで示すように、従来の上部および下部タイプレート14、16は、概して、一体化しかつ平坦にすることができる。ボスと呼ばれる複数の穴25は、集合体の下部タイプレート16中にすべての棒の下端プラグを受け入れることができる。同様に、複数のボス25は、上部タイプレート14中に、すべての標準長さの棒の上端プラグを受け入れることができる。部分的な長さの棒は、タイプレートで終わらないことがある。この方法では、上部および下部タイプレート14、16は、燃料棒を燃料集合体に軸方向で接合し、また燃料棒を、炉心中で一定かつ共有された軸方向変位で保持することができる。ボスおよび対応する燃料棒は、バンドル内の同じ軸方向位置で開始し、かつ/または終了するので、流体の流れをこの軸位置で規制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原子炉の運転中における継続的な問題は、様々な寸法のゴミが存在することである。このようなゴミの例には、小さな締結具、金属クリップ、溶接のスラグ、針金の破片などが含まれうる。ゴミは、炉心を最初に構築した結果として、その後の原子炉運転の結果として、および/または計画されたまたは未計画の点検停止中に行われる修理により生成される可能性がある。現在の燃料設計は、粒子状のゴミが燃料バンドルの上部に侵入することを防止していない。作業は停止中に行われるので、ゴミが燃料バンドルの上部に侵入して燃料の障害を引き起こす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示的な実施形態は、ゴミを軽減するための上部タイプレートを対象とする。例示的な実施形態の上部タイプレートは、複数のボスの上方にあり、かつ互いに重なるように構成された複数のゴミ捕捉機構を有することができる。この方法では、複数のゴミ捕捉機構は、ゴミが燃料バンドルの上部に侵入するのを防止または低減することができる。
【0007】
例示的な実施形態の燃料バンドルは、複数のゴミ捕捉機構を含む上部タイプレートを使用することができ、したがって、粒子状のゴミが、下にある燃料バンドル中に連続的に落下し、燃料棒の不具合を引き起こすのを防止または低減することができる。
【0008】
例示的な実施形態は、添付の図面を詳細に述べることによりさらに明らかとなろう。図中、同様の要素は、同様の参照番号により表されるが、その参照番号は、例示のために付与されるに過ぎず、したがって、本明細書における例示的な諸実施形態を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】垂直位置を共有する燃料棒に固定された平坦なタイプレートを有する従来技術の燃料集合体を示す図である。
【図2】図2Aおよび図2Bは従来の平坦な上部および下部タイプレートを示す図である。
【図3】例示的な実施形態のゴミを軽減する上部タイプレートの等角図である。
【図4】図3で示された例示的な実施形態のゴミを軽減する上部タイプレート100の側面図である。
【図5】図3で示された例示的な実施形態のゴミを軽減する上部タイプレート100の平面図である。
【図6】例示的な実施形態のゴミを軽減する上部タイプレートを含む燃料集合体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、詳細に説明する例示的な実施形態が開示される。しかし、本明細書で開示される特有の構造的かつ機能的な細部は、例示的な諸実施形態を記述するための代表的なものに過ぎない。しかし、例示的な諸実施形態は、多くの代替形態で実施することが可能であり、本明細書に記載される例示的な実施形態だけに限定されるものと解釈すべきではない。
【0011】
第1、第2などの用語を、様々な要素を述べるために本明細書で使用することがあるが、これらの要素は、これらの用語により限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、ある要素を他のものから区別するために使用されるに過ぎない。例えば例示的な実施形態の範囲を逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことも可能であり、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶことも可能である。本明細書で使用される場合、用語「および(かつ)/または」は、1つまたは複数の関連する列挙された項目のうちの任意の組合せ、およびすべての組合せを含む。
【0012】
ある要素が、他の要素に「接続される」、「結合される」、「対合される(mated)」、「取り付けられる」、または「固定される」と称されるとき、それは、他の要素に直接的に接続または結合されうるが、介在する要素が存在する可能性のあることも理解されよう。それとは反対に、ある要素が、他の要素に「直接接続される」、または「直接結合される」と称される場合、介在する要素は何も存在しない。要素間の関係を記述するために使用される他の用語(例えば、「〜の間で」に対して「直接〜の間で」、「隣接する」に対して「すぐ隣の」など)も同様に解釈されるべきである。
【0013】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を記述するためだけのものであり、例示的な実施形態を限定することを意図していない。本明細書で使用される場合、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」は、文言がその他の形で明示的に示さない限り、同様に複数形を含むことが意図される。用語「comprises(含む/備える)」、「comprising(含む/備える)」、「includes(含む)」、および/または「including(含む)」は、本明細書で使用される場合、述べられた機能、整数、ステップ、オペレーション、要素、および/またはコンポーネントが存在することを指定するが、1つまたは複数の他の機能、整数、ステップ、オペレーション、要素、コンポーネント、および/またはそれらのグループが存在すること、もしくは追加することを除外するものではないことをさらに理解されよう。
【0014】
いくつかの代替の実施形態では、述べられた機能/行為(act)は、数字で述べられた順序から変えて行うことも可能であることに留意されたい。例えば、連続して示された2つの数字を、実際には、実質的に同時に実行することができるが、時には、含まれる機能性/行為に応じて、逆の順序で実行することもできる。
【0015】
図3は、例示的な実施形態のゴミを軽減する上部タイプレートの等角図である。図3で示すように、例示的な実施形態の上部タイプレート100は、複数のボス115をその中に有する本体110を含む。複数のボスのいくつか117は、他のボス116の長さよりも長くすることができる。複数のゴミ捕捉機構120が、複数のボス117上で形成され、またはそれに接続される、あるいは上部タイプレート100のハンドル140上に形成される。複数のゴミ捕捉機構120は、燃料バンドル上に落ちてくる粒子状のゴミに対するゴミトラップを作成するように、互いに重ねることができる。
【0016】
複数のゴミ捕捉機構120は、様々な構成をとることができる。例えば、複数のゴミ捕捉機構120は、トラフ、円錐形の機構、および/またはゴミを捕捉する任意の他の形状のうちの1つとすることができる。複数のゴミ捕捉機構120は、一端でゴミを収集することが可能なように垂直方向に対して角度を付けることができ、また複数のボス117の上方で様々な高さにすることができる。ゴミ捕捉機構120の側面は、三角形、長方形、台形、および/または何らかの他の不規則な形状のうちの1つとすることができる。
【0017】
複数のゴミ捕捉機構120のうちの少なくとも2つは、複数のゴミ捕捉機構120の間の流れ領域130だけ互いにオフセットされ、それにより、ゴミ捕捉機構120により生ずる圧力低下が最小化または低減される。複数のゴミ捕捉機構120は、上部タイプレート100と一体化することができるが、あるいは共に結合して、上部タイプレート100の上部に取り付けられる別個のアセンブリとすることができる。例示的な実施形態による複数のゴミ捕捉機構120の上述の構成により、落下するゴミをその内部に収集することが可能になる。したがって、ゴミ捕捉機構120は、粒子状のゴミが、下方にある燃料バンドル(図示せず)中に連続的に落下し、それにより、燃料棒の不具合を引き起こすのを防止または低減することができる。
【0018】
図4は、図3で示された例示的な実施形態のゴミを軽減する上部タイプレート100の側面図である。図4で分かるように、複数のゴミ捕捉機構120を、y軸に沿って、交互に配置することができる。複数のゴミ捕捉機構120のうちの少なくとも1つは、y軸に沿って高さH1で配置することができる。複数のゴミ捕捉機構120のうちの少なくとも他の1つは、y軸に沿って、高さH1よりも大きい高さH2で配置することができる。
【0019】
図5は、図3で示された例示的な実施形態のゴミを軽減する上部タイプレート100の平面図である。図5で分かるように、複数のゴミ捕捉機構120は、バンドル上に落ちてくる粒子状のゴミに対するゴミトラップを作成するように、互いにかつハンドル140と完全に重なることができる。
【0020】
図6は、例示的な実施形態のゴミを軽減する上部タイプレートを含む燃料集合体を示す図である。図6で示すように、原子炉の燃料バンドル1000は、例示的な実施形態による上部タイプレート100と、下部タイプレート106とを囲む外側チャンネル102を含むことができる。複数の標準長さの燃料棒108、および/または部分的な長さの燃料棒109が、燃料バンドル1000内で格子状に配置され、かつ複数のスペーサ105を貫通することができる。燃料棒108および109は、概して、同じ垂直位置で開始し、かつ終了し、標準長さの棒108より低い垂直位置ですべてが終了する部分的な長さの棒109以外のすべての棒は、燃料バンドル1000の長さにわたり連続的に延びている。
【0021】
例示的な実施形態の上部タイプレート100は、複数のボス115をその中に有する本体110を含む。複数のボスのいくつか117は、他のボス116の長さよりも長くすることができる。複数のゴミ捕捉機構120が、複数のボス117上に形成され、またはそれに接続される、あるいは上部タイプレート100のハンドル140上に形成される。複数のゴミ捕捉機構120は、燃料バンドル上に落ちてくる粒子状のゴミに対するゴミトラップを作成するように、互いに重ねることができる。複数のゴミ捕捉機構120のうちの少なくとも2つは、複数のゴミ捕捉機構120の間の流れ領域130だけ互いにオフセットされ、それにより、ゴミ捕捉機構120により生ずる圧力低下が最小化または低減される。
【0022】
上記で述べたように、ゴミを軽減する上部タイプレートの例示的な実施形態は、落下するゴミをその中に収集することのできる複数のゴミ捕捉機構を含む。したがって、複数のゴミ捕捉機構は、粒子状のゴミが燃料バンドルの燃料棒へと落下し、損傷を与えることを防止または低減することができる。
【0023】
例示的な諸実施形態がこのように述べられているが、例示的な諸実施形態は、日常的な実験を介して、またさらなる発明的な活動を行うことなく変更できることが当業者であれば理解されよう。例えば、他の燃料タイプ、形状、および構成を、例示的な実施形態の燃料バンドルおよび階層化されたタイプレートと共に使用することができる。変更することを、例示的な実施形態の趣旨および範囲からの逸脱と見なすべきではなく、当業者にとって自明であるはずのこのような修正はすべて、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0024】
10 従来の燃料バンドル
12 外側チャンネル
14 上部タイプレート
15 複数のスペーサ
16 下部タイプレート
18 複数の標準長さの燃料棒
19 部分的な長さの燃料棒
20 上端プラグ
25 ボス
30 下端プラグ
100 例示的な実施形態の上部タイプレート
102 外側チャンネル
105 複数のスペーサ
106 下部タイプレート
108 標準長さの燃料棒
109 部分的な長さの燃料棒
110 本体
115 複数のボス
116 長さが短いボス
117 長さが長いボス
120 複数のゴミ捕捉機構
130 流れ領域
140 ハンドル
1000 燃料バンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴミの軽減に使用するための上部タイプレート(100)であって、
核燃料棒(108/109)の端部を受け入れるようにそれぞれが形成された複数のボス(115)と、
前記複数のボス(115)の上方にあり、かつ重なるように構成され、したがって、流れ領域(130)がその間に形成される複数のゴミ捕捉機構(120)と
を備える上部タイプレート(100)。
【請求項2】
前記複数のゴミ捕捉機構(120)が、前記複数のボスの少なくともいくつか(117)の上に形成され、またはそれに接続される、あるいは前記上部タイプレート(100)のハンドル(140)上に形成される、請求項1記載の上部タイプレート。
【請求項3】
前記複数のゴミ捕捉機構(120)が、トラフおよび円錐の一方として形成される、請求項1記載の上部タイプレート。
【請求項4】
前記複数のゴミ捕捉機構(120)が、ゴミを一端で収集することを可能にするように、垂直方向に対して角度を付けて構成される、請求項1記載の上部タイプレート。
【請求項5】
前記ゴミ捕捉機構(120)の側面が、三角形、長方形、台形、および不規則な形状のうちの少なくとも1つを有する、請求項1記載の上部タイプレート。
【請求項6】
前記複数のゴミ捕捉機構(120)の少なくとも2つが、前記流れ領域(130)だけ互いにオフセットされる、請求項1記載の上部タイプレート。
【請求項7】
前記複数のゴミ捕捉機構(120)が、前記上部タイプレート(100)と一体に形成される、請求項1記載の上部タイプレート。
【請求項8】
前記複数のゴミ捕捉機構(120)が、前記上部タイプレート(100)の上部に取り付けられる別個のアセンブリとして共に結合される、請求項1記載の上部タイプレート。
【請求項9】
前記複数のゴミ捕捉機構(120)が、垂直方向に対して交互に配置される、請求項1記載の上部タイプレート。
【請求項10】
前記複数のゴミ捕捉機構(120)の少なくとも1つが、垂直方向に高さH1で配置され、前記複数のゴミ捕捉機構(120)の他の少なくとも1つが、垂直方向に高さH2で配置され、かつ
H2>H1
である、請求項9記載の上部タイプレート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−47939(P2011−47939A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187726(P2010−187726)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(301068310)グローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ・エルエルシー (56)