説明

ゴム組成物およびタイヤ

【課題】硬度を維持しつつタイヤの低燃費性を改善するゴム組成物、及びそれを用いたタイヤを提供する。
【解決手段】ジエン系ゴムからなるゴム成分に充填剤を配合したゴム組成物であって、上記の課題を解決するために、ゴム成分100質量部に対してトコフェロール1〜20質量部とベタイン系界面活性剤0.1質量部以上とを配合したものとする。ベタイン系界面活性剤は、トコフェロールとの質量比で、トコフェロール/ベタイン系界面活性剤=9/1〜1/9である割合で配合することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに用いられるゴム組成物、およびそのゴム組成物を用いて作製したタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の低燃費化の要求は近年ますます高まり、タイヤについても低燃費化が強く求められている。低燃費化には、ゴム組成物のヒステリシスロスを低減すること、すなわち、損失係数(tanδ)を低く抑えることが効果的であることが知られている。その目的のため、タイヤ用ゴム組成物について様々な検討がなされている。
【0003】
また、タイヤ用ゴム組成物には低燃費化以外にも種々の性能上の要請があり、そのために種々の添加物を添加することが知られている。そのような添加物の中で、α−トコフェロールは酸化防止剤として作用することが知られている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、ハロゲン化ブチルゴム組成物に使用可能な酸化防止剤の一つとして、d,l−α−トコフェロールが例示されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、ジエン系ゴム組成物にトコフェロールを6C等の芳香族第2級アミン系老化防止剤と組み合わせて使用することにより、耐老化性・耐摩耗性の改良が可能であることが記載されている。
【0006】
さらに、下記特許文献3にも、天然ゴム組成物の酸化防止剤の一つとしてトコフェロールが記載され、所定の条件で添加・乾燥することにより、天然ゴムの臭気を低減する効果も得られることが記載されている。
【0007】
そこで本発明者は、トコフェロールのタイヤ組成物用添加剤としての可能性について検討したところ、充填剤の分散剤としての作用効果も有することを見出し、その結果として低燃費化を改善し得ることに想到した。
【0008】
しかしながら、トコフェロールを添加すると、タイヤの低燃費性が改善される一方で、硬度の低下等の問題が生じることも明らかになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−2744号公報
【特許文献2】特開2006−265313号公報
【特許文献3】特開2006−176593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、硬度を維持しつつタイヤの低燃費性を改善するゴム組成物、及びそれを用いたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムからなるゴム成分に充填剤を配合したゴム組成物であって、上記の課題を解決するために、ゴム成分100質量部に対してトコフェロール1〜20質量部とベタイン系界面活性剤0.1質量部以上とを配合したものとする。ベタイン系界面活性剤は、トコフェロールとの質量比で、トコフェロール/ベタイン系界面活性剤=9/1〜1/9である割合で配合することが好ましい。充填剤としてはカーボンブラックを用いることができる。
【0012】
本発明のタイヤは、上記本発明のゴム組成物を用いて作製したものとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トコフェロールとベタイン系界面活性剤を併用したことにより、タイヤの硬度を維持しつつ、低燃費性を改善することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0015】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記のとおり、ジエン系ゴムからなるゴム成分に充填剤を配合したゴム組成物において、充填剤の分散剤としてのトコフェロールと、ベタイン系界面活性剤とを併用することを特徴とするものである。
【0016】
トコフェロールは、ビタミンEとして知られるトコールのメチル化誘導体であり、メチル基の位置により、α、β、γ、δの4種があり、本発明ではいずれも使用が可能であるが、入手が容易な点からα−トコフェロールを好適に用いることができる。トコフェロールはカーボンブラック等の充填剤の分散剤として作用していると考えられ、結果としてタイヤの低燃費化に寄与する。
【0017】
トコフェロールの配合量は、ゴム成分100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。1質量部未満では、所望の低燃費化効果が得られ難い。一方、10質量部を超える場合、低燃費化効果は低下しないが、配合量の増加に比例した効果は得られ難くなり、コスト面で不利になるため、通常は10質量部以下で使用するのが好ましい。
【0018】
本発明で用いるベタイン系界面活性剤とは、正電荷と負電荷を同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷をもつ原子には解離しうる水素原子が結合しておらず、分子全体では電荷をもたない化合物の形態をとる界面活性剤(両性界面活性剤)である。本発明においては、ベタイン系界面活性剤をトコフェロールと併用することにより、トコフェロール添加による加硫物性への悪影響を最小限に抑えることができ、よって、タイヤの硬度を維持しつつ、タイヤの低燃費性を改善することができる。しかもタイヤの低燃費性は、トコフェロール単独使用の場合と比較して、より向上させることが可能となる。
【0019】
ベタイン系界面活性剤の具体例としては、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、無水ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
ベタイン系界面活性剤の配合量はその種類にもよるが、トコフェロールとの質量比で、トコフェロール/ベタイン系界面活性剤=9/1〜1/9である割合が好ましく、9/1〜5/5がより好ましい。配合量が上記範囲より少ないと、添加による効果が得られず、タイヤの硬度が低下し、一方、配合量が上記範囲より多いと加工性の悪化がみられる。また、ゴム成分に対する配合量では、ゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部であるのが好ましい。これらベタイン系界面活性剤は市販されているものを使用することができ、また公知の方法で製造することができる。
【0021】
本発明に係るゴム組成物においては、上記トコフェロール及びベタイン系界面活性剤を使用する以外は、従来のタイヤ用ジエン系ゴム組成物に準じた組成を採用することができる。
【0022】
本発明で使用可能なジエン系ゴムとしては、各種天然ゴム(NR)、各種ポリイソプレンゴム(IR)、各種スチレンブタジエンゴム(SBR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)等が挙げられ、これらはいずれか一種を用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましくは、天然ゴム及び/又はイソプレンゴムを用いる。
【0023】
充填剤としては、カーボンブラック及び/又はシリカを用いることができる。好ましくは、カーボンブラック単独使用、又はカーボンブラックとシリカの併用であり、カーボンブラック単独使用がさらに好ましい。
【0024】
カーボンブラックのゴム組成物中での配合量はゴム成分100質量部に対して25〜 125質量部であることが好ましく、30〜80質量部であることがより好ましい。
【0025】
シリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸),乾式シリカ(無水ケイ酸),ケイ酸カルシウム,ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、中でも湿式シリカが好ましい。シリカを使用する場合のゴム組成物中での含有量はゴム成分100質量部に対して120質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましい。
【0026】
なお、シリカを配合する場合は、スルフィドシラン、メルカプトシランなどのシランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100質量部に対して5〜15質量部であることが好ましい。
【0027】
本発明に係るゴム組成物には、上記の各成分の他に、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、タイヤ用ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。上記加硫剤としては、硫黄、硫黄含有化合物等が挙げられ、特に限定するものではないが、その配合量は上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。また、加硫促進剤の配合量としては、上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。該ゴム組成物は、通常のバンバリーミキサーやニーダーなどのゴム用混練機を用いて、常法に従い混練することで調製される。
【0028】
以上よりなるゴム組成物はタイヤのトレッドゴムやサイドウォールゴムとして用いることができ、このゴム組成物を、常法に従い、例えば140〜180℃で加硫成形することにより、タイヤを形成することができる。
【0029】
本発明のタイヤは、上記本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従い、まず、第一混合段階で、硫黄と加硫促進剤を除く成分を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で硫黄と加硫促進剤を添加混合してタイヤ用ゴム組成物を調製した。表1中の各配合物の詳細は以下の通りである。
【0032】
・NR:天然ゴム(RSS#3)
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3号」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS20」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「5%油処理粉末硫黄」
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーNS−G」
・トコフェロール:東京化成工業(株)製「トコフェロール」
・無水ベタイン:東京化成工業(株)製「無水ベタイン」
・ラウリルベタイン:花王ケミカル(株)製「アンヒトール20BS」
・ソルビタンモノオレート:花王ケミカル(株)製「レオドールSP−O10V」
【0033】
得られた各ゴム組成物について、150℃で30分間加硫した所定形状の試験片を用いて、硬度と損失係数tanδとを測定した。各測定方法は以下の通りである。
【0034】
・硬度:JIS K6253に準拠したタイプAデュロメータを使用し、23℃で測定し、比較例1の値を100とした指数で示した。数値が大きいほど硬度が高いことを意味する。
【0035】
・損失係数tanδ:JIS K6394に準拠し、東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、周波数10Hz,静歪10%,動歪2%,温度70℃で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で示した。数値が小さいほど、低燃費性に優れることを示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示された結果から分かるように、本発明に係る実施例1〜4のゴム組成物は、従来品に相当する比較例1と同程度の硬度を維持しながら、低燃費性が顕著に向上しているのが認められた。これに対し、トコフェロールの配合量が少ない比較例2及び無水ベタインを単独使用した比較例4では低燃費化効果が実質的に得られず、トコフェロールを単独使用した比較例3及びトコフェロールをノニオン系界面活性剤であるソルビタンモノオレートと併用した比較例5では、ある程度の低燃費化効果が得られたが、硬度が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の組成物は、乗用車、ライトトラック、トラック・バス等の各種タイヤに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムからなるゴム成分に充填剤を配合したゴム組成物であって、
前記ゴム成分100質量部に対してトコフェロール1〜20質量部とベタイン系界面活性剤0.1質量部以上とを配合したことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ベタイン系界面活性剤を、前記トコフェロールとの質量比で、トコフェロール/ベタイン系界面活性剤=9/1〜1/9である割合で配合したことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記充填剤がカーボンブラックであることを特徴とする、請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて作製したタイヤ。

【公開番号】特開2012−184336(P2012−184336A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48613(P2011−48613)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】