説明

ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ

【課題】タイヤの低温での柔軟性を維持しつつ、乾燥路面上でのグリップ性及び湿潤路面上でのグリップ性を向上させることが可能なゴム組成物を提供する。
【解決手段】ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が150,000〜3,000,000の天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの内の少なくとも一種からなるゴム成分(A)100質量部に対し、芳香族ビニル化合物の結合量が5質量%以上で、ゲル浸透クロマトグラフィーで変性停止なしの状態を測定したポリスチレン換算重量平均分子量が50,000以上で且つ150,000未満の低分子量共役ジエン系重合体(B)を1〜60質量部配合してなり、更にゴムマトリクス中に気泡を含有していることを特徴とするゴム組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及び該ゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いたタイヤに関し、特にタイヤの低温での柔軟性を維持しつつ、乾燥路面及び湿潤路面上でのグリップ性を向上させることが可能なゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スタッドレスタイヤのトレッド部に適用するゴム組成物は、一般に、低温(ここで、低温とは、氷雪路面上走行時の温度であり、-20〜0℃程度である)での柔軟性を確保するため、ポリブタジエンゴム(BR)や天然ゴム(NR)等のガラス転移温度(Tg)が低いポリマーをゴム成分として用いたものが多い。しかしながら、ポリブタジエンゴムや天然ゴム等のガラス転移温度が低いポリマーを配合したゴム組成物は、損失正接(tanδ)が低く、乾燥路面上でのグリップ性(ドライ性能)や湿潤路面上でのグリップ性(ウェット性能)を十分に確保できない問題があった。
【0003】
この問題に対して、ポリブタジエンゴムや天然ゴム等のガラス転移温度が低いゴム成分に、重量平均分子量が数万の低分子量重合体を配合したゴム組成物を用いることで、低温での柔軟性(氷雪上性能)に加えて、乾燥路面上でのグリップ性を向上できることが知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、かかるゴム組成物に用いる低分子量共役ジエン系重合体は、低温での柔軟性を維持するため、ガラス転移温度が比較的低いものが使用されている。従って、乾燥路面上でのグリップ性については改善されるものの、湿潤路面上でのグリップ性については依然として改良の余地がある。
【0004】
【特許文献1】特開2007−326942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、タイヤのトレッド部の少なくとも接地部分に用いることで、タイヤの低温での柔軟性(氷雪上性能)を維持しつつ、乾燥路面上でのグリップ性(ドライ性能)及び湿潤路面上でのグリップ性(ウェット性能)を向上させることが可能なゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、該ゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いた、氷雪上性能、ドライ性能及びウェット性能に優れたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の重量平均分子量を有するゴム成分(A)に対して、従来の低分子量重合体に比べて重量平均分子量及び芳香族ビニル化合物の結合量が高い低分子量共役ジエン系重合体(B)を特定量配合し、更にゴムマトリクス中に気泡を含有させることで、タイヤの氷雪上性能を維持しつつ、ドライ性能及びウェット性能を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明のゴム組成物は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が150,000〜3,000,000の天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの内の少なくとも一種からなるゴム成分(A)100質量部に対し、芳香族ビニル化合物の結合量が5質量%以上で、ゲル浸透クロマトグラフィーで変性停止なしの状態を測定したポリスチレン換算重量平均分子量が50,000以上で且つ150,000未満の低分子量共役ジエン系重合体(B)を1〜60質量部配合してなるゴム組成物であって、該ゴム組成物がゴムマトリクス中に気泡を含有していることを特徴とする。
【0008】
なお、「変性停止なしの状態を測定」とは、重合反応終了後に変性剤を添加して変性反応、又は分子量ジャンプ等が発生する重合体同士のカップリング反応をすることなく、アルコール等の停止剤により活性末端を失活させることにより重合体を得、該重合体の重量平均分子量を測定することを意味する。このことは、開始剤に窒素等を含む官能基が含まれる場合も同様である。従って、本発明において規定される低分子量共役ジエン系重合体(B)の重量平均分子量は、重合反応終了後に変性剤を用いて重合体に官能基を導入しない場合は重合体(B)そのものの重量平均分子量を指し、一方、重合反応終了後に変性剤を用いて重合体に官能基を導入する場合は重合反応終了後に変性反応又はカップリング反応を行わず、停止剤により重合反応を停止させて得た重合体の重量平均分子量を指す。
【0009】
本発明のゴム組成物の好適例においては、前記低分子量共役ジエン系重合体(B)が、充填剤と相互作用する官能基を少なくとも一つ有する。ここで、前記低分子量共役ジエン系重合体(B)の充填剤と相互作用する官能基としては、スズ含有官能基、ケイ素含有官能基及び窒素含有官能基が好ましい。この場合、前記低分子量共役ジエン系重合体(B)は、重合活性部位をスズ含有化合物、ケイ素含有化合物又は窒素含有化合物で変性されたものであることが更に好ましい。
【0010】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、更に充填剤(C)を20〜100質量部含有する。ここで、前記充填剤(C)としては、カーボンブラック及びシリカが好ましい。
【0011】
また、本発明のタイヤは、上記ゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いたことを特徴とし、スタッドレスタイヤ又はオールシーズン用タイヤとして好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定の重量平均分子量を有するゴム成分(A)に対して、従来の低分子量重合体に比べて重量平均分子量及び芳香族ビニル化合物の結合量が高い低分子量共役ジエン系重合体(B)を特定量配合し、更にゴムマトリクス中に気泡を含有させることで、タイヤの低温での柔軟性(氷雪上性能)を維持しつつ、乾燥路面上でのグリップ性(ドライ性能)及び湿潤路面上でのグリップ性(ウェット性能)を向上させることが可能なゴム組成物を提供することができる。また、かかるゴム組成物をトレッド部の接地部分に用いた、氷雪上性能、ドライ性能及びウェット性能に優れたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のゴム組成物は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が150,000〜3,000,000の天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの内の少なくとも一種からなるゴム成分(A)100質量部に対し、芳香族ビニル化合物の結合量が5質量%以上で、ゲル浸透クロマトグラフィーで変性停止なしの状態を測定したポリスチレン換算重量平均分子量が50,000以上で且つ150,000未満の低分子量共役ジエン系重合体(B)を1〜60質量部配合してなるゴム組成物であって、該ゴム組成物がゴムマトリクス中に気泡を含有していることを特徴とする。
【0014】
一般に、タイヤのグリップ性能を向上させるには、ゴム組成物に用いるゴム成分等の重合体のガラス転移温度(Tg)を高めて、損失正接(tanδ)を大きくすることが有効である。しかしながら、従来のスタッドレスタイヤのトレッド部に適用するゴム組成物は、低温での柔軟性を確保するため、ガラス転移温度が高い重合体を用いることが困難であった。そこで、重合体のガラス転移温度を高める手法とは異なる方法により、即ち、重量平均分子量が数万の低分子量重合体をゴム成分に配合することで、乾燥路面上でのグリップ性を補っていた。
【0015】
このような状況下、本発明者らが検討したところ、低分子量共役ジエン系重合体(B)の重量平均分子量及び芳香族ビニル化合物の結合量を所定の範囲に制御した場合、該低分子量共役ジエン系重合体(B)のガラス転移温度(Tg)を高めつつ、低温での柔軟性の低下を最小限に抑えることができることが分かった。この理由は、低分子量共役ジエン系重合体(B)が天然ゴム、ポリブタジエンゴム等のゴム成分と相溶化することにより、ガラス転移温度(Tg)と低温での柔軟性のバランスが改善されるためだと考えられる。このため、かかる低分子量共役ジエン系重合体(B)を配合したゴム組成物は、タイヤの低温での柔軟性(氷雪上性能)の低下を抑えつつ、乾燥路面上でのグリップ性(ドライ性能)及び湿潤路面上でのグリップ性(ウェット性能)を向上させることできる。また、本発明のゴム組成物は、ゴムマトリクス中に気泡を含有するため、湿潤路面及び氷雪路面に対する除水効果及びエッジ効果により、ウェット性能及び氷雪上性能が向上し、これにより、該低分子量共役ジエン系重合体(B)を用いたことに伴う氷雪上性能の低下を補うことができる。
【0016】
本発明のゴム組成物のゴム成分(A)は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が150,000〜3,000,000であることを要し、200,000〜2,000,000であることが好ましい。上記ゴム成分(A)の重量平均分子量を上記特定範囲にすれば、低分子量共役ジエン系重合体(B)を配合する際にゴム組成物のムーニー粘度の低下や、破壊特性及び耐摩耗性の低下を抑制しつつ、優れた加工性を得ることができる。また、ゴム成分(A)の重量平均分子量が150,000未満では、未加硫粘度が下がりすぎ、混練り時のトルクがかからず、練り不十分となる可能性が考えられる。一方、ゴム成分(A)の重量平均分子量が3,000,000を超えると、粘度が高くなり過ぎ、製造時の作業性が低下する傾向がある。
【0017】
本発明のゴム組成物のゴム成分(A)は、天然ゴム(NR)及び合成ジエン系ゴムの内の少なくとも一種からなり、該ゴム成分(A)としては、未変性のゴム及び変性ゴムのいずれを用いてもよい。ここで、合成ジエン系ゴムとしては、乳化重合又は溶液重合で合成されたものが好ましい。また、上記合成ジエン系ゴムとして、具体的には、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、イソブチレンイソプレンゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル−ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。上記ゴム成分(A)としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、イソブチレンイソプレンゴムが好ましい。なお、上記ゴム成分(A)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0018】
本発明のゴム組成物は、芳香族ビニル化合物の結合量が5質量%以上で、ゲル浸透クロマトグラフィーで変性停止なしの状態を測定したポリスチレン換算重量平均分子量が50,000以上で且つ150,000未満の低分子量共役ジエン系重合体(B)を上記ゴム成分(A)100質量部に対して1〜60質量部含有する。該低分子量共役ジエン系重合体(B)の含有量が1質量部未満では、タイヤの氷雪上性能、ドライ性能及びウェット性能を十分に改良することができず、一方、60質量部を超えると、加硫ゴムの破壊特性及び耐摩耗性が低下してしまう。
【0019】
上記低分子量共役ジエン系重合体(B)は、ゲル浸透クロマトグラフィーで変性停止なしの状態を測定したポリスチレン換算重量平均分子量が50,000以上で且つ150,000未満であることを要し、50,000〜120,000であることが好ましい。ポリスチレン換算重量平均分子量が上記特定範囲内にある低分子量共役ジエン系重合体(B)を配合したゴム組成物をタイヤのトレッド部の少なくとも接地部分に用いた場合、タイヤの氷上性能の低下を抑えつつ、ドライ性能及びウェット性能を向上させることができる。ここで、上記ポリスチレン換算重量平均分子量が50,000未満では、ウェット性能を十分に確保することができず、一方、150,000以上では、ゴム組成物の作業性が低下する。
【0020】
上記低分子量共役ジエン系重合体(B)は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体が好ましい。ここで、単量体としての共役ジエン化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられ、これらの中でも、1,3-ブタジエンが好ましい。一方、単量体としての芳香族ビニル化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらの中でも、スチレンが好ましい。なお、これら単量体は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記低分子量共役ジエン系重合体(B)は、芳香族ビニル化合物の結合量が5質量%以上であることを要し、5〜40質量%であることが好ましい。芳香族ビニル化合物の結合量が5質量%以上であれば、氷雪上性能の低下を抑えつつ、ドライ性能及びウェット性能を向上させることができる。また、芳香族ビニル化合物の結合量が5質量%未満では、ウェット性能を十分に確保することができない。
【0022】
また、上記低分子量共役ジエン系重合体(B)は、共役ジエン化合物部分のビニル結合量が0〜80%であることが好ましい。共役ジエン化合物部分のビニル結合量が80%を超えると、低温での貯蔵弾性率(G')が大幅に上昇し、氷雪上性能を低下する傾向がある。
【0023】
更に、上記低分子量共役ジエン系重合体(B)は、充填剤と相互作用する官能基を少なくとも一つ有することが好ましく、ここで、該官能基としては、カーボンブラック、シリカ等の充填剤と親和性を有する官能基が好ましく、スズを含む官能基、ケイ素を含む官能基及び窒素を含む官能基が更に好ましい。低分子量共役ジエン系重合体(B)が充填剤と相互作用する官能基を一つ以上有する場合、該官能基を有しない低分子量共役ジエン系重合体(B)に比べて、充填剤に対する親和性が高くなる。このため、充填剤の分散性が向上して、氷雪上性能を大幅に向上できる上、高温でのtanδが低下し、ゴム組成物自体の発熱を抑制できる。なお、低分子量共役ジエン系重合体(B)が充填剤と相互作用する官能基を一つ以上有する場合、上記低分子量共役ジエン系重合体(B)は、スズ含有化合物、ケイ素含有化合物又は窒素含有化合物等の変性剤で変性され、スズ含有官能基、ケイ素含有官能基又は窒素含有官能基等を導入したものが好ましい。
【0024】
上記低分子量共役ジエン系重合体(B)は、特に制限されず、例えば、重合反応に不活性な炭化水素溶媒中で、単量体である芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との混合物を重合して得ることができるが、該低分子量共役ジエン系重合体(B)の分子中に充填剤と相互作用する官能基を一つ以上導入する場合においては、(1)単量体を重合開始剤を用いて重合させ、重合活性部位を有する重合体を生成させた後、該重合活性部位を各種変性剤で変性する方法や、(2)単量体を官能基を有する重合開始剤を用いて重合させる方法で得ることができる。
【0025】
上記重合体(B)の合成に用いる重合開始剤としては、有機リチウム化合物が好ましく、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が更に好ましい。なお、重合開始剤として有機リチウム化合物を用いた場合、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とは、アニオン重合で重合される。重合開始剤としてヒドロカルビルリチウムを用いる場合、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、他方の末端が重合活性部位である重合体が得られる。一方、重合開始剤としてリチウムアミド化合物を用いる場合、重合開始末端に窒素含有官能基を有し、他方の末端が重合活性部位である重合体が得られ、該重合体は、変性剤で変性することなく、本発明における充填剤と相互作用する官能基を少なくとも一つ有する低分子量共役ジエン系重合体(B)として用いることができる。なお、重合開始剤の使用量は、単量体100g当り0.2〜20mmolの範囲が好ましい。
【0026】
上記ヒドロカルビルリチウムとしては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチル-フェニルリチウム、4-フェニル-ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等が挙げられ、これらの中でも、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム等のアルキルリチウムが好ましく、n-ブチルリチウムが特に好ましい。
【0027】
一方、上記リチウムアミド化合物としては、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチムジ-2-エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム-N-メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムメチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられ、これらの中でも、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド等の環状のリチウムアミド化合物が好ましく、リチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが特に好ましい。
【0028】
上記重合開始剤を用いて、低分子量共役ジエン系重合体(B)を製造する方法としては、上述のとおり、特に制限はなく、例えば、重合反応に不活性な炭化水素溶媒中で、単量体を重合させることで該重合体(B)を製造することができる。ここで、重合反応に不活性な炭化水素溶媒としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1-ブテン、イソブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
上記重合反応は、ランダマイザーの存在下で実施してもよい。該ランダマイザーは、重合体の共役ジエン化合物部分のミクロ構造を制御することができ、より具体的には、重合体の共役ジエン化合物部分のビニル結合量を制御したり、重合体中の共役ジエン化合物単位と芳香族ビニル化合物単位とをランダム化する等の作用を有する。上記ランダマイザーとしては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン、カリウム-t-アミレート、カリウム-t-ブトキシド、ナトリウム-t-アミレート等が挙げられる。これらランダマイザーの使用量は、重合開始剤1モル当り0.01〜100モル当量の範囲が好ましい。
【0030】
上記アニオン重合は、溶液重合で実施することが好ましく、重合反応溶液中の上記単量体の濃度は、5〜50質量%の範囲が好ましく、10〜30質量%の範囲が更に好ましい。また、重合形式は特に限定されず、回分式でも連続式でもよい。更に、上記アニオン重合の重合温度は、0〜150℃の範囲が好ましく、20〜130℃の範囲が更に好ましい。また更に、該重合は、発生圧力下で実施できるが、通常は、使用する単量体を実質的に液相に保つのに十分な圧力下で行うことが好ましい。ここで、重合反応を発生圧力より高い圧力下で実施する場合、反応系を不活性ガスで加圧することが好ましい。また、重合に使用する単量体、重合開始剤、溶媒等の原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物等の反応阻害物質を予め除去したものを用いることが好ましい。
【0031】
更に、上記重合活性部位を有する重合体の重合活性部位を変性剤で変性するにあたって、使用する変性剤としては、窒素含有化合物、ケイ素含有化合物及びスズ含有化合物が好ましい。この場合、変性反応により、窒素含有官能基、ケイ素含有官能基又はスズ含有官能基を導入することができる。
【0032】
上記変性剤として用いることができる窒素含有化合物は、置換若しくは非置換のアミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ニトリル基又はピリジル基を有することが好ましい。該変性剤として好適な窒素含有化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードMDI、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物,4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ジメチルアミノベンジリデンアニリン、4-ジメチルアミノベンジリデンブチルアミン、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0033】
また、上記変性剤として用いることができるケイ素含有化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、2-(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、2-(トリエトキシシリルエチル)ピリジン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。これらケイ素含有化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、該ケイ素含有化合物のの部分縮合物も用いることができる。
【0034】
更に、上記変性剤としては、下記式(I):
1aZXb ・・・ (I)
[式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基からなる群から選択され;Zは、スズ又はケイ素であり;Xは、それぞれ独立して塩素又は臭素であり;aは0〜3で、bは1〜4で、但し、a+b=4である]で表される変性剤も好ましい。式(I)の変性剤で変性することで、重合体(B)の耐コールドフロー性を改良することができる。なお、式(I)の変性剤で変性して得られる重合体(B)は、少なくとも一種のスズ−炭素結合又はケイ素−炭素結合を有する。
【0035】
式(I)のR1として、具体的には、メチル基、エチル基、n-ブチル基、ネオフィル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。また、式(I)の変性剤として、具体的には、SnCl4、R1SnCl3、R12SnCl2、R13SnCl、SiCl4、R1SiCl3、R12SiCl2、R13SiCl等が好ましく、SnCl4及びSiCl4が特に好ましい。
【0036】
上記変性剤による重合活性部位の変性反応は、溶液反応で行うことが好ましく、該溶液中には、重合時に使用した単量体が含まれていてもよい。また、変性反応の反応形式は特に制限されず、バッチ式でも連続式でもよい。更に、変性反応の反応温度は、反応が進行する限り特に限定されず、重合反応の反応温度をそのまま採用してもよい。なお、変性剤の使用量は、重合体の製造に使用した重合開始剤1molに対し、0.25〜3.0molの範囲が好ましく、0.5〜1.5molの範囲が更に好ましい。
【0037】
本発明においては、上記重合体(B)を含む反応溶液を乾燥して重合体(B)を分離した後、得られた重合体(B)を上記ゴム成分(A)に配合してもよいし、重合体(B)を含む反応溶液を上記ゴム成分(A)のゴムセメントに溶液状態で混合した後、乾燥して、ゴム成分(A)及び重合体(B)の混合物を得てもよい。
【0038】
本発明のゴム組成物は、ゴムマトリクス中に気泡を含有する。本発明おいて、ゴムマトリクス中に気泡を含有するゴム組成物は、例えば、通常のゴム配合物に予め発泡剤を加えて混練し、得られたゴム組成物を通常の条件で加硫することにより、発泡剤が発泡し、気泡が形成される。ここで、ゴム組成物中の気泡率(Vs)は、5〜35%の範囲であるのが好ましい。気泡率が5%未満であると、氷上性能が低下し、35%を超えると、破壊特性及び耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0039】
上記気泡率(Vs)(%)は、下記式(II):
Vs = {(ρ0−ρg)/(ρ1−ρg)−1} × 100 ・・・ (II)
[式中、ρ1はゴム組成物の密度(g/cm3)、ρ0はゴム組成物における固相部の密度(g/cm3)、ρgはゴム組成物における気泡部の密度(g/cm3)である]により算出できる。また、気泡部の密度ρgは無視できる程度に小さいので、上記気泡率(Vs)(%)を、下記式(III):
Vs =(ρ0/ρ1−1)× 100 ・・・ (III)
により算出してもよい。
【0040】
本発明のゴム組成物に用いることができる発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、p,p'-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、p,p'-オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。これら発泡剤の中でも、製造加工性の観点から、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等が好ましい。また、これら発泡剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上記発泡剤の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて粒子状、液状等の中から適宜選択することができる。なお、発泡剤の形態は、例えば顕微鏡を用いて観察することができる。また、粒子状の発泡剤の平均粒径は、例えば、コールターカウンター等を用いて測定することができる。
【0042】
本発明のゴム組成物においては、上記ゴム成分(A)100質量部に対して、上記発泡剤を1〜20質量部含有することが好ましく、2〜10質量部の割合で配合することが更に好ましい。
【0043】
また、上記発泡剤には、発泡助剤として尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛、亜鉛華等を併用するのが好ましい。これら発砲助剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。発泡助剤を併用することにより、発泡反応を促進して反応の完結度を高め、経時的に不要な劣化を抑制することができる。
【0044】
本発明のゴム組成物においては、更に充填剤(C)を上記ゴム成分(A)100質量部に対して20〜100質量部含有することが好ましい。充填剤(C)の配合量がゴム成分(A)100質量部に対して20質量部未満では、加硫ゴムの破壊特性及び耐摩耗性が十分でなく、一方、100質量部を超えると、作業性が悪化する傾向がある。ここで、充填剤(C)としては、カーボンブラック及びシリカが好ましい。なお、カーボンブラックとしては、FEF,SRF,HAF,ISAF,SAFグレードのものが好ましく、HAF,ISAF,SAFグレードのものが更に好ましい。一方、シリカとしては、湿式シリカ及び乾式シリカ等が好ましく、湿式シリカが更に好ましい。これら補強性の充填剤(C)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
本発明のゴム組成物は、上記ゴム成分(A)に、低分子量共役ジエン系重合体(B)、発泡剤、発泡助剤、充填剤(C)の他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、シランカップリング剤、軟化剤、ステアリン酸、老化防止剤、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0046】
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いたことを特徴とする。上記ゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いたタイヤは、氷雪上性能、ドライ性能及びウェット性能に優れる。このため、本発明のタイヤを、スタッドレスタイヤ、特に夏季においてもタイヤを交換することなく冬季と同様に使用できるスタッドレスタイヤ、所謂オールシーズン用タイヤに用いることが好ましい。なお、本発明のタイヤは、上述のゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0048】
<重合体(B-1)の製造例>
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16質量%)、スチレンのシクロへキサン溶液(21質量%)を、1,3-ブタジエン単量体40g、スチレン単量体10gとなるように注入し、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.66mmolを注入し、更にn-ブチルリチウム(n-BuLi)3.96mmolを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。その後、重合反応系に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを添加し、重合反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して重合体(B-1)を得た。
【0049】
<重合体(B-2)の製造例>
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16質量%)、スチレンのシクロへキサン溶液(21質量%)を、1,3-ブタジエン単量体40g、スチレン単量体10gとなるように注入し、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.66mmolを注入し、更にn-ブチルリチウム(n-BuLi)0.33mmolを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。その後、重合反応系に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.4mLを添加し、重合反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して重合体(B-2)を得た。
【0050】
<重合体(B-3)の製造例>
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16質量%)、スチレンのシクロへキサン溶液(21質量%)を、1,3-ブタジエン単量体40g、スチレン単量体1.0gとなるように注入し、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.66mmolを注入し、更にn-ブチルリチウム(n-BuLi)1.32mmolを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。その後、重合反応系に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを添加し、重合反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して重合体(B-3)を得た。
【0051】
<重合体(B-4)の製造例>
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16質量%)、スチレンのシクロへキサン溶液(21質量%)を、1,3-ブタジエン単量体40g、スチレン単量体10gとなるように注入し、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.66mmolを注入し、更にn-ブチルリチウム(n-BuLi)1.32mmolを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。その後、重合反応系に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを添加し、重合反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して重合体(B-4)を得た。
【0052】
<重合体(B-5)の製造例>
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16質量%)、スチレンのシクロへキサン溶液(21質量%)を、1,3-ブタジエン単量体40g、スチレン単量体10gとなるように注入し、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.66mmolを注入し、更にn-ブチルリチウム(n-BuLi)1.32mmolを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合反応を行った。次に、重合反応系に変性剤として四塩化スズ(SnCl4)0.33mmolを速やかに加え、更に50℃で30分間変性反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。その後、重合反応系に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを添加し、重合反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して重合体(B-5)を得た。
【0053】
<重合体(B-6)の製造例>
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16質量%)、スチレンのシクロへキサン溶液(21質量%)を、1,3-ブタジエン単量体40g、スチレン単量体1.0gとなるように注入し、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.66mmolを注入し、更にインサイチューで調製したリチウムへキサンメチレンイミド[HMI−Li;ヘキサメチレンイミン(HMI)/リチウム(Li)モル比=0.9]をリチウム当量で1.06mmolを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。その後、重合反応系に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを添加し、重合反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して重合体(B-6)を得た。
【0054】
上記のようにして製造した重合体(B-1)〜(B-6)の重量平均分子量(Mw)、ミクロ構造及び結合スチレン量を下記の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0055】
(1)重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8020、カラム:東ソー製GMH−XL(2本直列)、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、各重合体の変性停止なしの状態でのポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0056】
(2)ミクロ構造及び結合スチレン量
重合体のミクロ構造を赤外法(モレロ法)で求め、重合体の結合スチレン量を1H-NMRスペクトルの積分比より求めた。
【0057】
【表1】

【0058】
次に、表2に示す配合処方のゴム組成物を調製し、更に、該ゴム組成物を160℃で15分間加硫して加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムに関し、気泡率については上記式(III)により算出し、貯蔵弾性率(G')及び損失正接(tanδ)については下記の方法により測定した。結果を表3に示す。
【0059】
(3)貯蔵弾性率(G')
レオメトリックス社製の粘弾性測定装置を用いて、周波数15Hz、歪1.0%の条件で、温度-20℃,50℃での貯蔵弾性率(G')を測定した。-20℃での貯蔵弾性率(G')については、比較例1のゴム組成物の貯蔵弾性率(G')の逆数を100として指数表示し、指数値が大きい程、氷雪上性能に優れることを示す。一方、50℃での貯蔵弾性率(G')については、比較例1のゴム組成物の貯蔵弾性率(G')を100として指数表示し、指数値が大きい程、ドライ性能に優れることを示す。
【0060】
(4)損失正接(tanδ)
レオメトリックス社製の粘弾性測定装置を用い、周波数10Hz、歪0.1%、温度0℃の条件でtanδを測定し、比較例1のゴム組成物のtanδを100として指数表示した。指数値が大きい程、ウェット性能に優れることを示す。
【0061】
【表2】

【0062】
*1 RSS#1,ポリスチレン換算重量平均分子量=200万.
*2 シス-1,4-ポリブタジエン,UBEPOL BR150L(商品名),宇部興産社製,ポリスチレン換算重量平均分子量=50万.
*3 Nipsil AQ(商品名),日本シリカ社製.
*4 Si69(商品名),デグッサ社製.
*5 重合体(B-1)〜(B-6),使用した重合体(B)の種類を表3に示す.
*6 N-イソプロピル-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン.
*7 ジベンゾチアジルジスルフィド.
*8 N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾジルスルフェンアミド.
*9 ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT):尿素=1:1(質量比).

【0063】
【表3】

【0064】
比較例1、比較例2及び実施例1の比較から、氷雪上性能、ドライ性能及びウェット性能といった要求性能のバランスを改良するには、低分子量共役ジエン系重合体(B)の分子量を最適化する必要があることが分かる。また、比較例3及び実施例1の比較から、結合スチレン量を高め、低分子量共役ジエン系重合体(B)のガラス転移温度(Tg)を上昇させることにより、上記要求性能のバランスの改良効果が高くなることが分かる。更に、実施例1〜3の比較から、低分子量共役ジエン系重合体(B)に、充填剤と相互作用する官能基を導入することで、特に氷雪上性能が向上し、更に上記要求性能を高度にバランスさせることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が150,000〜3,000,000の天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの内の少なくとも一種からなるゴム成分(A)100質量部に対し、芳香族ビニル化合物の結合量が5質量%以上で、ゲル浸透クロマトグラフィーで変性停止なしの状態を測定したポリスチレン換算重量平均分子量が50,000以上で且つ150,000未満の低分子量共役ジエン系重合体(B)を1〜60質量部配合してなるゴム組成物であって、
該ゴム組成物がゴムマトリクス中に気泡を含有していることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記低分子量共役ジエン系重合体(B)が、充填剤と相互作用する官能基を少なくとも一つ有することを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記低分子量共役ジエン系重合体(B)の充填剤と相互作用する官能基が、スズ含有官能基、ケイ素含有官能基及び窒素含有官能基からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記低分子量共役ジエン系重合体(B)が、重合活性部位をスズ含有化合物、ケイ素含有化合物又は窒素含有化合物で変性されたものであることを特徴とする請求項3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分(A)100質量部に対して、更に充填剤(C)を20〜100質量部含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記充填剤(C)がカーボンブラック及びシリカの少なくとも一方であることを特徴とする請求項5に記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物を、トレッド部の少なくとも接地部分に用いたことを特徴とするタイヤ。
【請求項8】
スタッドレスタイヤ又はオールシーズン用タイヤであることを特徴とする請求項7に記載のタイヤ。

【公開番号】特開2009−256532(P2009−256532A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110050(P2008−110050)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】