説明

ゴム組成物

【課題】 ウェットグリップ、耐摩耗性及び転動抵抗並びに経時安定性に優れるゴム組成物の提供。
【解決手段】 (A)1,3−ブタジエン単位30〜99.9%、イソプレン単位0.1〜10%及び芳香族ビニル単量体単位0〜60%からなる共役ジエン系ゴム並びに(B)シス含量5〜95%で重量平均分子量6,000〜60,000のジエン化合物の重合体を含む、シス含量80〜99%で重量平均分子量500,000〜1,000,000のジエン系ゴム含有ゴム組成物であって、前記共役ジエン系ゴム(A)が、重合に使用する単量体のうち、1,3−ブタジエンの80%以上、イソプレンの80%以下及び芳香族ビニル単量体の80%以上からなる単量体混合物を重合し、次に残りのイソプレンを添加重合し、更に残りの1,3−ブタジエン及び芳香族ビニル単量体を添加重合し、そして得られたポリマーにカップリング剤を反応させて得られるゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物に関し、更に詳しくは湿潤面でのグリップ力に優れ、耐摩耗性及び転がり抵抗が改良され、かつ耐経時変化に優れたゴム組成物に関する。この組成物はタイヤ用、特にタイヤトレッド用として使用するのに適している。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には末端にSi基を化学結合させたSBRを用いてシリカとの反応性に優れ、空気入りタイヤとしても低燃費性とグリップ性に優れるゴム組成物が開示されているが、この提案にはポリマー自身が水分との反応性が高く、経時の安定性も良好でないという問題がある。また、グリーンタイヤとしてすでに認知され、ポリマーとして、ハイビニル含有スチレン−ブタジエン共重合体(SSBR)とポリブタジエンゴム(BR)とを組み合わせたものもあるが、これはグリップ性が十分でないという問題がある。更に特許文献2には特定のイソプレンを含有する共役ジエン系ゴムについて記載されているが、これにはシリカとの相互作用が低いという問題がある。
【0003】
【特許文献1】特開平4−277539号公報
【特許文献2】特開2002−338741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、例えばタイヤ用として用いた場合に、ウェットグリップ、耐摩耗性及び転がり抵抗に優れ、しかも経時安定性に優れたゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従えば、(A)1,3−ブタジエン単位30〜99.9重量%、イソプレン単位0.1〜10重量%及び芳香族ビニル単量体単位0〜60重量%からなる共役ジエン系ゴム並びに(B)シス含量が5〜95重量%で重量平均分子量が6,000〜60,000のジエン化合物の重合体を含む、シス含量が80〜99重量%で重量平均分子量が500,000〜1,000,000のジエン系ゴム含有ゴム組成物であって、前記共役ジエン系ゴム(A)が、重合に使用する単量体のうち、1,3−ブタジエンの80重量%以上、イソプレンの80重量%以下及び芳香族ビニル単量体の80重量%以上からなる単量体混合物を先ず重合し、次にこれに残りのイソプレンを添加して重合し、更に残りの1,3−ブタジエン及び芳香族ビニル単量体を添加して重合し、そして得られたポリマーにカップリング剤を反応させて得られるゴム組成物が提供される。
【発明の効果】
【0006】
表Iの結果からも明らかなように、本発明に従えば、湿潤面でのグリップ力の増加、耐摩耗性の向上及び転がり抵抗の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係るゴム組成物は、前述の如く、特定量の1,3−ブタジエン単位、イソプレン単位及び芳香族ビニル単量体単位からなる共役ジエン系ゴム(A)に、低分子量のジエン成分を含むジエン系ゴム(B)を配合してなるゴム組成物である。
【0008】
本発明のゴム組成物に配合される共役ジエン系ゴム(A)は1,3−ブタジエン単位30〜99.9重量%、好ましくは60〜85重量%、イソプレン単位0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、及び芳香族ビニル単量体単位0〜60重量%、好ましくは0〜40重量%からなり、これは、1,3−ブタジエンの80重量%以上、イソプレン80重量%以下及び芳香族ビニル単量体(例えばスチレン)80重量%以上からなる単量体混合物を先ず重合した後、これに残りのイソプレンを添加して重合し、更に残りの1,3−ブタジエン及び芳香族ビニル単量体を添加して重合し、そして得られたポリマーの活性末端とカップリング剤とを反応させて得られる重合体である。
【0009】
本発明のゴム組成物に配合されるジエン系ゴム(B)は、シス含量が5〜95重量%、好ましくは60〜90重量%で、重量平均分子量が6,000〜60,000、好ましくは7,000〜30,000のジエン化合物の重合体を含有する、シス含量が80〜99重量%、好ましくは95〜99重量%で重量平均分子量が500,000〜1,000,000、好ましくは600,000〜900,000のジエン化合物の重合体で、本発明のゴム組成物は少なくともかかるゴム成分(A)及び(B)から構成される。ゴム成分(A)はシリカとの相互作用がすぐれ、シリカの分散が向上し、湿潤面でのグリップや、転がり抵抗、耐摩耗性を改良する作用をする。一方ゴム成分(B)は低分子成分が可塑剤と同様に作用し、しかも、経時での変化が少なく、安定した性能を維持でき、特に耐摩耗性を改良する作用を有する本発明のゴム組成物は、好ましくはゴム成分(A)60〜95重量部、更に好ましくは70〜90重量部及びゴム成分(B)5〜40重量部、更に好ましくは10〜30重量部を配合する。この範囲を外れると、耐摩耗性や経時変化性に劣るおそれがある。
【0010】
本発明のゴム組成物は、前記共役ジエン系ゴム(A)及び(B)以外のその他のゴムを含んでいてもよい。そのようなゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、乳化重合SBR(スチレン−ブタジエン共重合ゴム)、溶液重合ランダムSBR(結合スチレン5〜50重量%、ブタジエン部分の1,2−結合含有量10〜80%)、高トランスSBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70〜95%)、低シスBR(ポリブタジエンゴム)、高シスBR、高トランスBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70〜95%)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、乳化重合スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、高ビニルSBR−低ビニルSBRブロック共重合体ゴム、ポリイソプレン−SBRブロック共重合体ゴム、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。なかでも、NR,BR,IR,SBRが好ましく用いられる。これらのゴムは、それぞれ、単独又は任意の2種以上を組合せて使用することができる。
【0011】
本発明のゴム組成物が、前記共役ジエン系ゴム(A)及び(B)以外のその他のゴムを含む場合には、前記の共役ジエン系ゴムの割合を、ゴム成分の全量に対して、10重量%以上とすることが好ましく、20〜90重量%の範囲とすることがより好ましく、30〜80重量%の範囲とすることが特に好ましい。この割合が低すぎると、十分な改善効果を得ることができなくなる。
【0012】
本発明に従えば、前記ゴム成分100重量部に対し、カーボンブラック及び/又はシリカ30〜120重量部、更に好ましくは50〜95重量部を配合する。カーボンブラックの配合量は、好ましくは1〜110重量部、更に好ましくは5〜50重量部であり、シリカの配合量は、好ましくは10〜110重量部、更に好ましくは30〜95重量部である。カーボンブラック及び/又はシリカを30〜120重量部配合することにより、本発明の目的を好ましく達成することができる。
【0013】
本発明において配合するカーボンブラック及びシリカは従来からタイヤ用などのゴム組成物に配合されている従来のカーボンブラックやシリカを配合することができるが、本発明で使用するのに好ましいカーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積(N2SA)が50〜200m2/g、更に好ましくは80〜180m2/gであり、シリカとしては、窒素吸着比表面積(N2SA)が100〜300m2/g、更に好ましくは130〜250m2/gである。なお、ここで窒素吸着比表面積(N2SA)はJIS K6221に準拠して測定したものである。
【0014】
本発明に係るゴム組成物には、前記した必須成分に加えて、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑性剤などのタイヤ用、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0016】
実施例1〜4及び比較例1〜3
共役ジエン系ゴム(A)の調製
特願2002−338741号公報の段落[0019]〜[0046]に記載の方法、特に実施例1に従って製造した。
【0017】
サンプルの調製
表Iに示す配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を3リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、150℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。
【0018】
次に得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で160℃で20分間加硫して加硫ゴムシートを調製し、以下に示す試験法でゴム物性測定した。結果は表Iに示す。
【0019】
【表1】

【0020】
表I脚注
*1:日本ゼオン(株)製SBR(Nipol SBR1721)
*2:SBR(St 20/Vn 60、イソプレン0.9重量% 分子量49万 ML1+4 55)
*3:日本ゼオン(株)製BR(Nipol BR1220)
*4:天然ゴム(TSR20)
*5:日本ゼオン(株)製BR(BRX5000、低分子量分40phr (シス88重量%、分子量25,000)を含むポリブタジエンゴム、分子量62万、シス96重量%)
*6:Rhodia(株)製シリカ(N2SA:165m2/g)
*7:デグッサ社製シランカップリング剤
*8:正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種
*9:昭和キャボット(株)製N234(N2SA:119m2/g)
*10:昭和キャボット(株)製N339(N2SA:72m2/g)
*11:日本油脂(株)製工業用ステアリン酸
*12:フレキシス社製SANTOFLEX 6PPD
*13:フレキシス社製FLECTOL TMQ
*14:日本精蝋(株)製パラフィンワックス
*15:昭和シェル石油(株)製アロマオイル
*16:鶴見化学工業(株)製5%油入微粉硫黄
*17:フレキシス社製N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
*18:フレキシス社製ジフェニルグアニジン
【0021】
物性評価試験法
硬度:70℃×168時間の老化試験前後の試験片の硬度をJIS 6253に準拠して測定した。
300%モジュラス:JIS 6251に準拠して測定した。
tanδ(0℃及び60℃):粘弾性スペクトロメータ(東洋精機製作所)を用い、0℃及び60℃でそれぞれ初期歪10%、動的歪:±2%、周波数20Hzの条件下で測定した。
ランボーン摩耗:ランボーン試験機(岩本製作所)を用いて、温度20℃、スリップ率50%条件下で摩耗減量を測定し、比較例1の値を100として指数表示した。この数字が大きい程、耐摩耗性が良好であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1,3−ブタジエン単位30〜99.9重量%、イソプレン単位0.1〜10重量%及び芳香族ビニル単量体単位0〜60重量%からなる共役ジエン系ゴム並びに(B)シス含量が5〜95重量%で重量平均分子量が6,000〜60,000のジエン化合物の重合体を含む、シス含量が80〜99重量%で重量平均分子量が500,000〜1,000,000のジエン系ゴム含有ゴム組成物であって、前記共役ジエン系ゴム(A)が、重合に使用する単量体のうち、1,3−ブタジエンの80重量%以上、イソプレンの80重量%以下及び芳香族ビニル単量体の80重量%以上からなる単量体混合物を先ず重合し、次にこれに残りのイソプレンを添加して重合し、更に残りの1,3−ブタジエン及び芳香族ビニル単量体を添加して重合し、そして得られたポリマーにカップリング剤を反応させて得られるゴム組成物。
【請求項2】
共役ジエン系ゴム(A)60〜95重量部及びジエン系ゴム(B)5〜40重量部を含むゴム成分100重量部並びにカーボンブラック及び/又はシリカ30〜120重量部を含む請求項1に記載のゴム組成物。

【公開番号】特開2006−143818(P2006−143818A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333438(P2004−333438)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】