説明

ゴム組成物

【課題】優れた引裂強度と優れた耐油性、耐老化性等を兼ね備えたゴム製品を提供することを主な目的とする。
【解決手段】ニトリルゴム及びトバモライトを含むゴム組成物であって、ニトリルゴム及びトバモライトの合計量が組成物中70〜100重量%であって、ニトリルゴムとトバモライトとの重量比が1:0.4〜1.1であることを特徴とするゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴム製品(ゴム組成物)には、各種の特性を改善するためにさまざまな添加剤が配合されている。特に、強度等を改善するために、カーボンブラックをはじめとする充填剤が用いられている。
【0003】
例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)等の加硫特性を高めるため、平均粒径5μm以下のケイ酸カルシウム水和物からなるゴムの充填剤が提案されている(特許文献1)。特許文献1では、実施例としてALCの粉砕物をSBRに配合して得られたゴム製品が示されている。
【0004】
また、機械的強度、反撥弾性、耐発熱性等を付与することを目的として、ゴム成分100重量部、窒素吸着によるBET法比表面積が21m/g以上である繊維状ゾノトライト1〜70重量部及びカーボンブラック5〜70重量部からなることを特徴とするゴム組成物が提案されている(特許文献2)。特許文献2の実施例では、天然ゴムに繊維状ゾノトライト及びカーボンブラックを配合してなるゴム製品が示されている。
【0005】
さらに、補強用フィラーとして、低結晶性又は結晶性のケイ酸カルシウムとスメクタイト族粘土鉱物との複合体よりなることを特徴とするフィラー材料が提案されている(特許文献3)。特許文献3では、実施例として低結晶性ケイ酸カルシウム(C−S−H)とスメクタイト族粘土鉱物を補強性ゴムフィラーとしてSBRに添加することによりゴム製品を製造することが記載されている。
【特許文献1】特開平6−256583
【特許文献2】特開平9−249771
【特許文献3】特開平11−124513
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術で提供されるゴム製品を機械的特性と化学的特性が同時に要求される用途に用いる場合、十分に満足できる性能が得られない。とりわけ、前者の特性として引裂強度、後者の特性として耐油性、耐老化性等を兼ね備えたゴム製品を得るためには、さらなる改良が必要である。
【0007】
従って、本発明の主な目的は、特に、優れた引裂強度と優れた耐油性、耐老化性等を兼ね備えたゴム製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定のゴムと特定の充填剤との組み合わせによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記のゴム組成物に係る。
1.ニトリルゴム及びトバモライトを含むゴム組成物であって、
ニトリルゴム及びトバモライトの合計量が組成物中70〜100重量%であり、ニトリルゴムとトバモライトとの重量比が1:0.4〜1.1であることを特徴とするゴム組成物。
2.シランカップリング剤をさらに含む、前記項1に記載のゴム組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ニトリルゴムとトバモライトという限られた組み合わせを採用することによって、優れた引裂強度とともに高い耐油性、耐老化性等を兼ね備えたゴム組成物を提供することができる。
【0011】
これにより、引裂強度と耐油性等の両者が要求される用途に好適に用いることができる。例えば、オイルシール、ガスケット、耐油ホース、コンベアゴム、ベルト、印刷ロール、紡績用トップロール、ゴルフクラブ用グリップ等の用途に本発明ゴム組成物は有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のゴム組成物は、ニトリルゴム及びトバモライトを含むゴム組成物であって、ニトリルゴム及びトバモライトの合計量が組成物中70〜100重量%であり、ニトリルゴムとトバモライトとの重量比が1:0.4〜1.1であることを特徴とする。
【0013】
ニトリルゴム
ニトリルゴムは、ブタジエンとアクリロニトリルとの共重合体である。また、本発明は、水素化ニトリルゴムも包含する。本発明では、これらのニトリルゴム自体は、公知又は市販のものを使用することができる。
【0014】
ニトリルゴムは、アクリロニトリル含有量(AN量)によって、低ニトリル品:24重量%以下、中ニトリル品:25〜30重量%、中高ニトリル品:31〜35重量%、高ニトリル品:36〜42重量%、極高ニトリル品:43重量%以上に区別される。本発明では、ゴム組成物の所望の特性等に応じて適宜選択することができる。
【0015】
本発明のゴム組成物では、本発明の効果を妨げない範囲内でニトリルゴム以外のゴム成分が含まれていても良い。例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、クロルスルホン化ポリエチレン等のゴム;ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、1,2−ポリブタジエン、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等のエラストマーなどを挙げることができる。
【0016】
トバモライト
トバモライトは、公知又は市販のものを使用することができる。これらは天然品又は合成品のいずれであってもよい。合成品の場合には、公知の製法に従って得ることができる。また、単結晶(1次粒子)であってもよいし、1次粒子が三次元的に絡み合った凝集物(2次粒子)であってもよく、さらには、これらを造粒したものでもよい。
【0017】
トバモライトの粒径は、特に制限されない。例えば、単結晶の場合、通常、長さ0.1μm〜50μm程度、幅0.1μm〜20μm程度、厚さ0.01μm〜0.5μm程度の板状である。凝集物の場合、粒径は、通常5μm〜150μm程度である。
【0018】
本発明のゴム組成物中に占めるニトリルゴム及びトバモライトの合計量は、70〜100重量%である。好ましくは、75〜100重量%である。
【0019】
また、ニトリルゴムとトバモライトとの重量比は1:0.4〜1.1である。好ましくは1:0.5〜1.0である。トバモライトの比率が0.4未満の場合では、トバモライトによる補強効果が発揮されなくなるおそれがある。一方、トバモライトの比率が1.1を超える場合には、粘性が高くなって均一に混合ができなくなるおそれがある。
【0020】
添加剤
本発明では、必要に応じてシランカップリング剤を添加することもできる。シランカップリング剤を配合することにより、ニトリルゴムとトバモライトとが互いに馴染みやすくなり、引裂強度等の向上に寄与することができる。シランカップリング剤の種類は限定的ではないが、特に、アミノ基、メルカプト基及びスルフィド基の少なくとも1種を有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。シランカップリング剤を添加する場合、その添加量は、用いるシランカップリング剤の種類等に応じて適宜設定することができるが、通常はトバモライト100重量部に対して0.1〜20重量部程度、特に1〜15重量部とすることが好ましい。
【0021】
また、本発明では、必要に応じて公知のゴム製品で使用されている各種の添加剤を配合することもできる。例えば、加硫剤、加硫促進剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、加工助剤、発泡剤、架橋用配合剤等が挙げられる。
【0022】
特に、充填剤として、本発明の効果を妨げない範囲内でトバモライト以外のものが含まれていても良い。例えば、カーボンブラック、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、胡粉、補強用短繊維等を用いることができる。
【0023】
ゴム組成物の製造
本発明のゴム組成物は、これらの各成分を均一に混合できる限り、その製法は特に限定されない。例えば、ニーダー、ミキサー等の公知の装置を用いる、これに各成分を投入し、均一に混合すれば良い。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0025】
実施例1〜2及び比較例1〜3
表1に示す組成となるように各成分を配合し、ニーダーで均一に混練することによりゴム組成物を製造した。
【0026】
【表1】

【0027】
なお、表1中の各成分は、以下のとおりである。
(1)ニトリルゴム (日本ゼオン製、中高ニトリル)
(2)スチレンブタジエンゴム (JSR製、#1502)
(3)カーボンブラック (旭カーボン製、SRF、平均粒径0.08μm)
(4)トバモライト
(5)ゾノトライト
(6)シランカップリング剤:ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド (信越化学工業製、KBE846)
(7)DOP(ジオクチルフタレート):可塑剤 (大八化学製)
(8)酸化亜鉛:加硫促進剤 (三井金属鉱業製)
(9)ステアリン酸:軟化剤 (日本油脂製)
(10)ノクセラーIT(製品名)、テトラメチルチウラムジスルフィド:超加硫促進剤 (大内新興化学製)
(11)ノクセラーDM(製品名)、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド:遅効性加硫促進剤 (大内新興化学製)
(12)硫黄 (川越化学製)
【0028】
(4)のトバモライトは以下のようにして製造した。
石灰質原料(市販品)、珪酸質原料(市販品)及び水を、CaO/SiO(モル)比が0.8、水が固形分量(上記石灰質原料及び珪酸質原料)の12重量倍になるように、混合した。次いで、混合物をオートクレーブ中で攪拌しながら175℃で4時間加熱することにより、水熱合成を行った。得られたスラリーを乾燥することにより、板状の単結晶(1次粒子)が凝集した球状の凝集物(2次粒子)であるトバモライト粉体を得た。凝集物の粒径は10μm〜50μm程度であった。
【0029】
(5)のゾノトライトは以下のようにして製造した。
上記(4)において、モル比を1.0とし、190℃で8時間加熱した以外は同様にして、針状の単結晶が凝集した球状の凝集物であるゾノトライト粉体を得た。凝集物の粒径は20μm〜100μm程度であった。
【0030】
試験例1
各実施例及び比較例で得られたサンプルについて、引裂強度、耐油性、耐老化性等を調べた。その結果を表2等に示す。
【0031】
なお、各試験は、以下の方法に従って実施した。
(a)引裂強度:JIS K6252による方法に従った。
(b)耐油性 :JIS K6258による方法に従った。
(c)耐老化性:JIS K6257による方法に従った。
【0032】
ここで、耐油性は、試験油に浸漬(120℃、70時間)する前後の硬さ(JIS K 6253)の変化率であり、以下の式(1)により求めた。数値が小さい方が耐油性に優れている。
【0033】
【数1】

【0034】
また、耐老化性は120℃の大気雰囲気中で70時間放置する前後の硬さ(JIS K 6253)の変化率であり、以下の式(2)により求めた。数値が小さい方が耐老化性に優れている。
【0035】
【数2】

【0036】
【表2】

【0037】
また、比較例3のゴム組成物の引裂強度は41.1(N/mm)であり、実施例1及び2のような良好な引裂強度を得ることはできなかった。
【0038】
評価
実施例1及び2のゴム組成物は、引裂強度が格段に向上していた。耐油性については、試験油に浸漬(120℃、70時間)する前後の硬さの変化率が低く、耐油性に優れていた。耐老化性についても、120℃の大気雰囲気中で70時間放置する前後の硬さの変化率が低く、耐老化性に優れていた。さらには、難燃性を示す酸素指数が高く、難燃性も良好であった。
【0039】
これらのことから、実施例1及び2のゴム組成物は、優れた引裂強度とともに良好な耐油性、耐老化性、難燃性等を兼ね備えたゴム組成物であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリルゴム及びトバモライトを含むゴム組成物であって、
ニトリルゴム及びトバモライトの合計量が組成物中70〜100重量%であり、ニトリルゴムとトバモライトとの重量比が1:0.4〜1.1であることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
シランカップリング剤をさらに含む、請求項1に記載のゴム組成物。