説明

ゴム製品用組成物、及びゴム製品

【課題】耐油性、及び耐候性に優れた少ないゴム製品を製造可能なゴム製品用組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも(a−1)不飽和ニトリル単量体、及び(a−2)共役ジエン単量体を重合させて得られる(A)不飽和ニトリル・共役ジエン系共重合体存在下で、(b−1)不飽和ニトリル単量体、(b−2)(メタ)アクリル酸系単量体、及び(b−3)芳香族ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも一種を含む(B)単量体成分、を重合させて得られる(C)共重合体と、エチレン、炭素数3〜10のα−オレフィン系単量体及び非共役ジエン系単量体を重合させて得られる(D)共重合体とを含有し、前記(C)共重合体の、下記式(1)で表されるαの値が、1.0以下であるゴム製品用組成物。
α=[tanδ(150℃)−tanδ(60℃)]/tanδ(60℃)・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製品用組成物、及びゴム製品に関する。更に詳しくは、耐油性、及び耐候性に優れたゴム製品を製造可能なゴム製品用組成物、及びこのようなゴム製品用組成物を架橋して得られる架橋ゴムを使用して製造されるゴム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐油性が必要なゴム部品には、例えば、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(以下、「NBR」ということがある)等が用いられている。しかし、このようなNBRは不飽和結合を有するため耐候性に課題があることから、NBRに耐候性を付与するための種々の方法が提案されている。例えば、NBRとエチレン・プロピレン・ジエンゴム(以下、「EPDM」ということがある)とを含有するゴム(例えば、特許文献1参照)などが知られている。
【0003】
【特許文献1】特公平6−47635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すようなNBRとEPDMとを含有するゴムは、耐油性が大きく低下してしまうという問題があった。
【0005】
このように、耐油性、及び耐候性に優れたゴム製品を製造可能な材料は見出されておらず、このようなゴム製品用組成物の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、耐油性、及び耐候性に優れたゴム製品を製造可能なゴム製品用組成物、及びこのようなゴム製品用組成物を架橋して得られる架橋ゴムを使用して製造されるゴム製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、60℃と150℃における損失係数(tanδ)が特定の関係を満たす共重合体と、エチレン、炭素数3〜10のα−オレフィン系単量体及び非共役ジエン系単量体を重合させて得られる共重合体とを含有した組成物を用いることによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、以下に示すゴム製品用組成物、及びゴム製品が提供される。
【0009】
[1] 少なくとも(a−1)不飽和ニトリル単量体、及び(a−2)共役ジエン単量体を重合させて得られる(A)不飽和ニトリル・共役ジエン系共重合体存在下で、(b−1)不飽和ニトリル単量体、(b−2)(メタ)アクリル酸系単量体、及び(b−3)芳香族ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも一種を含む(B)単量体成分を重合させて得られる(C)共重合体と、エチレン、炭素数3〜10のα−オレフィン系単量体及び非共役ジエン系単量体を重合させて得られる(D)共重合体とを含有し、前記(C)共重合体の、下記式(1)で表されるαの値が、1.0以下であるゴム製品用組成物。
【0010】
α=[tanδ(150℃)−tanδ(60℃)]/tanδ(60℃)・・・(1)
【0011】
前記式(1)中、tanδ(150℃)は、前記(C)共重合体の150℃における損失係数を示し、tanδ(60℃)は、前記(C)共重合体の60℃における損失係数を示す。
【0012】
[2] 前記(C)共重合体が、前記(A)不飽和ニトリル・共役ジエン系共重合体の水分散体に、(B)単量体成分を添加し、その系内に存する全単量体に対する共役ジエン単量体の比率を、10モル%以下とした状態で重合させたものである前記[1]に記載のゴム製品用組成物。
【0013】
[3] 前記(b−1)不飽和ニトリル単量体がアクリロニトリルであるとともに、前記(b−3)芳香族ビニル単量体がスチレンである前記[1]又は[2]に記載のゴム製品用組成物。
【0014】
[4] 前記(C)共重合体が、前記(A)不飽和ニトリル・共役ジエン系共重合体20〜98質量部と、前記(B)単量体成分2〜80質量部(但し、(A)+(B)=100質量部)と、を重合させたものである前記[1]〜[3]のいずれかに記載のゴム製品用組成物。
【0015】
[5] 前記(a−1)不飽和ニトリル単量体がアクリロニトリルであるとともに、前記(a−2)共役ジエン単量体がブタジエンであり、前記(A)不飽和ニトリル・共役ジエン系共重合体が、前記(a−1)不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位(i)を10〜60質量%、前記(a−2)共役ジエン単量体に由来する構造単位(ii)を10〜90質量%、及び(a−3)その他の単量体に由来する構造単位(iii)を0〜80質量%(但し、(i)+(ii)+(iii)=100質量%)を有するものである前記[1]〜[4]のいずれかに記載のゴム製品用組成物。
【0016】
[6] 前記(C)共重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)が、10〜200である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂改質用組成物。
【0017】
[7] 前記(D)共重合体に対する前記(C)共重合体の質量割合(C/D)が、30/70〜90/10である前記[1]〜[6]のいずれかに記載のゴム製品用組成物。
【0018】
[8] 補強剤、可塑剤、及び架橋剤からなる群より選択される少なくとも一種を更に含有する前記[1]〜[7]のいずれかに記載のゴム製品用組成物。
【0019】
[9] 前記[1]〜[8]のいずれかに記載のゴム製品用組成物を架橋して得られる架橋ゴムを使用して製造されるゴム製品。
【発明の効果】
【0020】
本発明のゴム製品用組成物は、耐油性、及び耐候性に優れたゴム製品を製造することができる。
【0021】
また、本発明のゴム製品は、上記したゴム製品用組成物を架橋して得られる架橋ゴムからなるものであり、耐油性、耐候性が良好であるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0023】
1.ゴム製品用組成物:
本発明のゴム製品用組成物の一の実施形態は、少なくとも(a−1)不飽和ニトリル単量体、及び(a−2)共役ジエン単量体を重合させて得られる(A)不飽和ニトリル・共役ジエン系共重合体存在下で、(b−1)不飽和ニトリル単量体、(b−2)(メタ)アクリル酸系単量体、及び(b−3)芳香族ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも一種を含む(B)単量体成分を重合させて得られる(C)共重合体と、エチレン、炭素数3〜10のα−オレフィン系単量体及び非共役ジエン系単量体を重合させて得られる(D)共重合体とを含有するゴム製品用組成物である。
【0024】
そして、このゴム製品用組成物は、上記(C)共重合体の、下記式(1)で表されるαの値が、1.0以下である。
【0025】
α=[tanδ(150℃)−tanδ(60℃)]/tanδ(60℃)・・・(1)
【0026】
但し、式(1)中、tanδ(150℃)は、150℃における損失係数を示し、tanδ(60℃)は、60℃における損失係数を示す。
【0027】
本発明のゴム製品用組成物は、上記損失係数の値から算出される特定のαの値を満たす(C)共重合体と、エチレン、炭素数3〜10のα−オレフィン系単量体及び非共役ジエン系単量体を重合させて得られる(D)共重合体とを含有させることによって、耐油性、及び耐候性を満足するゴム製品を製造することができる。このようなゴム製品用組成物は、ホース、パッキン等を形成するために好適に用いることができる。
【0028】
本発明のゴム製品用組成物においては、(D)共重合体に対する(C)共重合体の質量割合(C/D)が、30/70〜90/10であることが好ましく、40/60〜80/20であることが更に好ましく、60/40〜80/20であることが特に好ましい。このように構成することによって、耐油性、耐候性のバランスが良好なゴム製品を製造可能となる。なお、上記質量割合(C/D)が30/70未満であると、耐油性が劣ることがあり、一方、上記質量割合(C/D)が90/10を超えると、耐侯性が劣ることがある。
【0029】
また、本発明のゴム製品用組成物のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、10〜200であることが好ましく、20〜190であることが更に好ましく、30〜180であることが特に好ましい。ムーニー粘度を、10以上とすることにより、ゴム製品用組成物に十分な強度を付与することができる。一方、ムーニー粘度を200以下とすることにより、ゴム製品用組成物の加工性を更に向上させることができる。
【0030】
1A.(A)不飽和ニトリル・共役ジエン系共重合体:
(A)不飽和ニトリル・共役ジエン系共重合体(以下、「(A)成分」ともいう)は、少なくとも(a−1)不飽和ニトリル単量体、及び(a−2)共役ジエン単量体を重合させて得られる共重合体であり、(a−1)不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位(i)と、(a−2)共役ジエン単量体に由来する構造単位(ii)とを含む共重合体である。上述した(C)共重合体は、この(A)不飽和ニトリル・共役ジエン系共重合体を、上記(B)単量体成分によって改質した共重合体である。このような(A)成分を用いることにより、得られるゴム製品に、耐油性が付与される。
【0031】
1A−1.(a−1)不飽和ニトリル単量体:
本明細書にいう「不飽和ニトリル単量体」とは、重合性二重結合とニトリル基(シアノ基)とを一分子内に有する化合物をいう。
【0032】
(a−1)不飽和ニトリル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、メチルα−イソプロピルアクリロニトリル、メチルα−n−ブチルアクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル類;2−シアノエチル(メタ)アクリレート、2−(2−シアノエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(2−シアノエトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、4−(2−シアノエトキシ)ブチル(メタ)アクリレート、2−〔2−(2−シアノエトキシ)エトキシ〕エチル(メタ)アクリレート等のシアノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類の他、フマロニトリル、2−メチレングルタロニトリル等を挙げることができる。
【0033】
(a−1)不飽和ニトリル単量体の種類について特に制限はないが、アクリロニトリルが好ましい。なお、(A)成分は、構造単位(i)として、一種の構造単位(i)のみを含む共重合体であってもよいし、二種以上の構造単位(i)を含む共重合体であってもよい。
【0034】
1A−2.(a−2)共役ジエン単量体:
本明細書にいう「共役ジエン単量体」とは、2つの炭素−炭素二重結合が1つの炭素−炭素単結合により結合された構造を含む化合物をいう。(a−2)共役ジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、クロロプレン(2−クロロ−1,3−ブタジエン)等を挙げることができる。
【0035】
(a−2)共役ジエン単量体の種類について特に制限はないが、1,3−ブタジエン、イソプレン、1、3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが更に好ましい。なお、(A)成分は、構造単位(ii)として、一種の構造単位(ii)のみを含む共重合体であってもよいし、二種以上の構造単位(ii)を含む共重合体であってもよい。
【0036】
1A−3.(a−3)その他の単量体:
(A)成分は、(a−1)不飽和ニトリル単量体、及び(a−2)共役ジエン単量体以外の(a−3)その他の単量体に由来する構造単位(iii)を含むものであってもよい。この(a−3)その他の単量体は、重合性二重結合を有し、(a−1)不飽和ニトリル単量体及び(a−2)共役ジエン単量体と共重合可能な化合物であればよい。
【0037】
このような(a−3)その他の単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン等の芳香族ビニル化合物;後述する(b−2)(メタ)アクリル酸系単量体等を挙げることができる。なお、(A)成分は、構造単位(iii)として、(a−3)その他の単量体に由来する一種の構造単位(iii)のみを含む共重合体であってもよいし、二種以上の構造単位(iii)を含む共重合体であってもよい。
【0038】
(A)成分が、構造単位(i)と構造単位(ii)のみによって構成されている場合において、全構造単位中の構造単位(i)の含有割合は、10〜60質量%であることが好ましく、10〜55質量%であることが更に好ましい。構造単位(i)の含有割合が60質量%超であると、ゴム製品用組成物を架橋して得られるゴム製品の硬度が高くなり、ゴムとしての性質を損なう場合がある。一方、構造単位(i)の含有割合の含有割合が10質量%未満であると、重合反応が極めて遅くなる場合がある。
【0039】
また、(A)成分が、構造単位(i)と構造単位(ii)のみによって構成されている場合において、全構造単位中の構造単位(ii)の含有割合は、40〜90質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることが更に好ましく、50〜85質量%であることが特に好ましい。
【0040】
このように、(A)成分を構造単位(i)と構造単位(ii)のみによって構成する場合には、(a−1)不飽和ニトリル単量体としてアクリロニトリル、(a−2)共役ジエン単量体としてブタジエンを選択することが好ましい。即ち、(A)成分は、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)であることが好ましい。
【0041】
(A)成分が、構造単位(i)と構造単位(ii)に加えて、構造単位(iii)を含んで構成されている場合において、全構造単位中の構造単位(iii)の含有割合は、80質量%以下であることが好ましい。構造単位(iii)の含有割合を80質量%以下とすると、ゴム製品用組成物の加工性が悪化することなく、構造単位(iii)に由来する特性を付与することができる。
【0042】
(A)成分が、構造単位(i)と構造単位(ii)に加えて、構造単位(iii)を含んで構成されている場合においては、全構造単位中の構造単位(i)の含有割合は、10〜60質量%であることが好ましく、10〜55質量%であることが更に好ましい。また、全構造単位中の構造単位(ii)の含有割合は、10〜90質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることが更に好ましい。但し、(i)+(ii)+(iii)=100質量%である。
【0043】
このように、(A)成分を構造単位(i)、構造単位(ii)、及び構造単位(iii)により構成する場合には、(a−1)不飽和ニトリル単量体としてアクリロニトリル、(a−2)共役ジエン単量体としてブタジエン、(a−3)その他の単量体として(メタ)アクリル酸エステルを選択することが好ましい。即ち、(A)成分は、アクリロニトリル・ブタジエン・(メタ)アクリル酸エステルゴムであることが好ましい。
【0044】
1A−4.(A)不飽和ニトリル・共役ジエン系共重合体の調製:
(A)成分は、例えば、(a−1)不飽和ニトリル単量体、及び(a−2)共役ジエン単量体、並びに必要に応じて(a−3)その他の単量体を重合させることで調製することができる。この(A)成分の調製を行う際の重合反応については特に制限はなく、従来公知の重合方法を採用することができる。例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等を挙げることができ、特に、ラジカル重合開始剤の存在下で共重合することにより調製するラジカル重合が好ましい。以下、(A)成分の調製方法について、ラジカル重合を例に具体的に説明する。
【0045】
ラジカル重合に用いるラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、パラメンタンヒドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸カリウム等の無機過酸化物;前記過酸化物と還元剤(硫酸第一鉄等)とを組み合わせたレドックス系触媒等を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体の全量100質量部に対し、0.001〜2質量部とすることが好ましい。重合方法としては塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法を採用することができる。なかでも、乳化重合が特に好ましい。
【0047】
乳化重合に使用する乳化剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができ、フッ素系の界面活性剤を使用してもよい。前記乳化剤のなかでも、アニオン系界面活性剤を好適に用いることができる。より具体的には、スルホン酸塩、炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩、ロジン酸塩等を用いることが好ましく、これらの塩のなかでもカリウム塩、ナトリウム塩、又はこれらを組み合わせて用いることが更に好ましい。その他の乳化剤についても、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
重合に際しては、得られる(A)成分の分子量を調節するために、連鎖移動剤を用いることもできる。この連鎖移動剤としては、例えば、tert−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、四塩化炭素、チオグリコール類、ジテルペン、ターピノーレン、γ−テルピネン類等を用いることができる。
【0049】
(a−1)不飽和ニトリル単量体及び(a−2)共役ジエン単量体等の単量体、乳化剤、ラジカル重合開始剤、並びに連鎖移動剤等は、反応容器に全量を一括投入してから重合を開始してもよいし、反応継続中に連続的に又は間欠的に追加投入してもよい。重合方式は、連続式であっても回分式であってもよい。また、重合反応は、酸素を除去した反応器を用いて行うことが好ましい。重合反応温度は、0〜100℃とすることが好ましく、0〜80℃とすることが更に好ましい。重合反応途中で、原料の添加法、温度、撹拌等の条件等を適宜変更してもよい。
【0050】
重合反応時間は、通常、0.01〜30時間程度である。重合反応の停止は、所定の重合転化率に達した時点で、重合停止剤を添加する等によって行うことができる。重合停止剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン等のアミン化合物;ヒドロキノン等のキノン化合物等を用いることができる。
【0051】
重合反応停止後、得られた乳化液(ラテックス)から必要に応じて水蒸気蒸留等の方法により未反応単量体を除去し、目的とする(A)成分を得ることができる。
【0052】
なお、(A)成分存在下で、(B)単量体成分を重合させて(A)成分の改質を行う際には、(A)成分の水分散体中で行うことが可能である。従って、(A)成分として、上記した(A)成分の乳化液(ラテックス)をそのまま使用することができる。
【0053】
1B.(B)単量体成分:
(B)単量体成分は、(A)成分を(C)共重合体に改質するための単量体成分である。この(B)単量体成分(以下、「(B)成分」ともいう)には、(b−1)不飽和ニトリル単量体、(b−2)(メタ)アクリル酸系単量体、及び(b−3)芳香族ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも一種が含まれる。
【0054】
1B−1.(b−1)不飽和ニトリル単量体:
(b−1)不飽和ニトリル単量体の具体例としては、先に例示した「(a−1)不飽和ニトリル単量体」の具体例と同様のものを挙げることができる。なかでも、アクリロニトリルが好ましい。
【0055】
1B−2.(b−2)(メタ)アクリル酸系単量体:
(b−2)(メタ)アクリル酸系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸とアルコールのエステル((メタ)アクリル酸エステル)を挙げることができる。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸又はメタクリル酸」のことをいう。この(メタ)アクリル酸エステルの具体例を以下に示す。
【0056】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;
【0057】
2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、3,3,3,2,2−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、4,4,4,3,3,2,2−ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;
【0058】
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;
【0059】
メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、エトキシポリプロピレングリコール等のアルコキシポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数:2〜23程度)の(メタ)アクリレート類;2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のアリーロキシアルキル(メタ)アクリレート類;
【0060】
フェノキシポリエチレングリコール、フェノキシポリプロピレングリコール等のアリーロキシポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数:通常2〜23)のモノ(メタ)アクリレート類;2−シアノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノプロピル(メタ)アクリレート、3−シアノプロピル(メタ)アクリレート等のシアノアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコールのモノ−(メタ)アクリレート類又はジ−(メタ)アクリレート類;
【0061】
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数:通常2〜23)のモノ−又はジ−(メタ)アクリレート類;グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールアルカン(アルカンの炭素数:通常1〜3)、テトラメチロールアルカン(アルカンの炭素数:通常1〜3)等の3価以上の多価アルコール類のモノ−又はオリゴ−(メタ)アクリレート類;前記3価以上の多価アルコールのポリアルキレングリコール付加物(アルキレングリコール単位数:通常2〜23)のモノ−(メタ)アクリレート類又はオリゴ−(メタ)アクリレート類;
【0062】
4−シクロヘキサンジオール、1,4−ベンゼンジオール、1,4−ジ−(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン等の環式ポリオールのモノ−(メタ)アクリレート類又はオリゴ−(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;
【0063】
2−(ジメチルアミノエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノエトキシ)エチル(メタ)アクリレート等の(ジアルキルアミノアルコキシ)アルキル(メタ)アクリレート類等のカルボキシル基のエステル化されたもの;ラクトン変性(メタ)アクリレート。
【0064】
なかでも、炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、炭素数2〜6のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数2〜6のアルキル(メタ)アクリレートが更に好ましい。これらの(b−2)(メタ)アクリル酸系単量体は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
1B−3.(b−3)芳香族ビニル単量体:
(b−3)芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン等を挙げることができる。なかでも、スチレンが好ましい。これらの(b−3)芳香族ビニル単量体は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、(b−1)不飽和ニトリル単量体としてアクリロニトリルを用いるとともに、(b−3)芳香族ビニル単量体としてスチレンを用いることが好ましい。
【0066】
1C.(C)共重合体:
(C)共重合体は、(A)成分存在下で、(B)成分を重合させることで得られる共重合体である。この(C)共重合体は、上記した式(1)で表されるαの値が1.0以下のものである。なお、上記αの値は、固形ゴムにおける測定値を示すものであり、具体的には、(A)成分存在下で、(A)成分と(B)成分とを重合させ、その後、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム等の塩;塩酸、硝酸、硫酸等の酸を添加して共重合体を凝固させ、次いで、この共重合体を水洗及び乾燥することにより得られた共重合体におけるαの値が1.0以下のものである。
【0067】
このように、このαの値が1.0以下であることによって、ラテックスの安定性を向上させることができるとともに、(C)共重合体の粘弾性の温度依存性を小さくし、広範な環境下で使用可能なゴム製品を製造することが可能となる。このαの値は、0.8以下であることが更に好ましく、0.6以下であることが特に好ましい。また、αの値の下限値は特に限定されるものではない。なお、αの値が1.0を超えると、得られるゴム製品の耐油性が低下してしまう。
【0068】
1C−1.(C)共重合体の調製方法:
(C)共重合体は、(A)成分、例えば、(a−1)不飽和ニトリル単量体、及び(a−2)共役ジエン単量体等を乳化重合して得られる(A)成分の乳化液(ラテックスA)に、(B)成分を添加して重合させる(以下、「改質反応」ともいう)ことによって得ることができる。なお、このラテックスAとしては、水蒸気蒸留等により未反応単量体を除去したものを用いてもよいし、未反応単量体を除去していないもの(未反応単量体が残存したままの状態のもの)を用いてもよい。
【0069】
なお、この改質反応は、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等がある。また、改質方法としては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等がある。
【0070】
この改質反応を行う際には、(A)成分に対して(B)成分を添加した状態において、その系内に存する全単量体に対する共役ジエン単量体の比率を、10モル%以下とした状態で改質反応を行うことが好ましく、5モル%以下とした状態で改質反応を行うことが更に好ましい。この比率が10モル%超であると、(A)成分の改質が不十分となり、(C)共重合体のαの値が1.0超となる場合がある。なお、系内(反応系内)に存する全単量体に対する共役ジエン単量体の比率は、例えば、乳化重合反応終了時における乳化液(ラテックスA)中の未反応の共役ジエン単量体の残留量と、この乳化液に添加する(B)成分に含まれる共役ジエン単量体の量から算出することができる。
【0071】
ここで、この「系内に存する全単量体」には、(A)成分に対して添加した(B)成分の他、(A)成分の系内に残存する未反応の単量体も含む。このように改質反応を行う際の共役ジエン単量体の比率を精密に制御することによって、(C)共重合体を得る改質反応終了時に得られる乳化液(ラテックスB)の安定性を向上させることができる。
【0072】
なお、上記したように、共役ジエン単量体の比率を10モル%以下に制御するためには、例えば、乳化重合して得られる(A)成分の乳化液(ラテックスA)から、水蒸気蒸留等の方法により未反応単量体を除去する方法を挙げることができる。このように、(A)成分中の未反応共役ジエン単量体の量を減少させることで、共役ジエン単量体の量を10モル%以下に制御することができる。
【0073】
(C)共重合体は、(A)成分20〜98質量部と、(B)成分2〜80質量部(但し、(A)+(B)=100質量部)とを重合させたものであることが好ましく、(A)成分50〜95質量部と、(B)成分5〜50質量部(但し、(A)+(B)=100質量部)とを重合させたものであることが更に好ましい。(B)成分を2質量部以上とすることで、期待する強度のゴム製品を製造することができる。一方、80質量部以下とすることで、ラテックスの安定性を維持することができる。
【0074】
(A)成分と(B)成分の反応は、通常の乳化重合で行うことができ、0〜50℃の温度条件下、酸素を除去した反応器中で行うことが好ましい。重合方式は、連続式、回分式のいずれであってもよい。単量体、乳化剤、開始剤、分子量調節剤及びその他の重合薬剤は反応開始前に全量添加してもよく、また反応開始後任意に分割添加してもよく、また反応途中に温度や撹拌等の操作条件を任意に変更することもできる。
【0075】
以上のようにして、(A)成分である共重合体を(B)成分によって改質した(C)共重合体を調製することができる。なお、(C)共重合体は、上記式(1)で表されるαの値が1.0以下であるため、上述のように、共役ジエン単量体の比率を10モル%以下に制御し、得られる(C)共重合体の前記αの値が1.0以下となるようにする。
【0076】
本明細書における、60℃及び150℃における損失係数(tanδ(60℃)及びtanδ(150℃))は、共重合体(生ゴム、未架橋ゴム)を測定対象とし、周波数10Hz、歪5.02%の条件下、所定のゴム加工性解析装置を使用して、それぞれの温度で測定した値である。なお、このtanδは、例えば、アルファテクノロジーズ社製のゴム加工性解析装置(商品名「RPA2000」)を用いて、上記条件にて測定することができる。
【0077】
(C)共重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、10〜200であることが好ましく、20〜200であることが更に好ましい。ムーニー粘度を10以上とすることにより、この(C)共重合体を用いて得られるゴム製品用組成物に十分な強度を付与することができる。一方、ムーニー粘度を200以下とすることにより、ゴム製品用組成物の加工性を向上させることができる。
【0078】
1D.(D)共重合体:
(D)共重合体は、エチレン、炭素数3〜10のα−オレフィン系単量体及び非共役ジエン系単量体を重合させて得られる共重合体、即ち、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン三元共重合体である。具体的には、例えば、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合(EPDM)、エチレン・1−ブテン・非共役ジエン共重合体等を挙げることができる。このような(D)共重合体を含有することによって、耐侯性を付与できる。
【0079】
(D)共重合体の重合に用いられる炭素数3〜10のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等を挙げることができる。これらの中でも、工業的な入手が容易であるという観点から、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。
【0080】
非共役ジエン系単量体としては、例えば、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘキサジエン等の直鎖の非環状ジエン化合物;5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、5,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、7−メチルオクタ−1,6−ジエン、ジヒドロミルセン等の分岐連鎖の非環状ジエン化合物;テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−2,5−ジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン等の脂環式ジエン化合物等を挙げることができる。なかでも、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましい。
【0081】
(D)共重合体における、エチレンに由来する構造単位の含有割合は、全構造単位に対して、40〜85質量%であることが好ましく、45〜80質量%であることが更に好ましく、50〜75質量%であることが特に好ましい。上記含有割合が40質量%未満であると、強度が劣ることがあり、一方、85質量%超であると、低温性に劣ることがある。
【0082】
また、(D)共重合体における、炭素数3〜10のα−オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、全構造単位に対して、10〜50質量%であることが好ましく、15〜45質量%であることが更に好ましく、20〜40質量%であることが特に好ましい。
【0083】
1E.その他の成分:
本発明のゴム製品用組成物には、前述の(C)共重合体及び(D)共重合体以外の成分として、補強剤、可塑剤、及び架橋剤からなる群より選択される少なくとも一種を更に含有させることができる。
【0084】
1E−1.補強剤:
補強剤は、ゴム製品用組成物に強靭さを付与するための添加剤である。即ち、補強剤を添加することにより、このゴム製品用組成物を用いて得られるゴム製品を、高強度なものにすることができる。
【0085】
補強剤の具体例としては、カーボンブラック、シリカ、ハードクレー等を挙げることができる。なかでも、補強効果が高いという理由からカーボンブラックが好ましい。これらの補強剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
カーボンブラックの具体例としては、SAFカーボンブラック、ISAFカーボンブラック、HAFカーボンブラック、FEFカーボンブラック、GPFカーボンブラック、SRFカーボンブラック、FTカーボンブラック、MTカーボンブラック、アセチレンカーボンブラック、ケッチェンブラック等を挙げることができる。
【0087】
補強剤の配合量は、(C)共重合体100質量部に対して、0〜200質量部であることが好ましく、5〜100質量部であることが更に好ましい。補強剤を200質量部以下とすることで、ゴム製品用組成物の加工性を好適に確保することができる。なお、補強剤を5質量部以上とすることで、ゴム製品により高い強度を付与することができる。
【0088】
1E−2.可塑剤:
可塑剤は、ゴム製品用組成物の加工性を改良するとともに、ゴム製品に対して耐寒性を付与するための添加剤である。即ち、可塑剤を添加することにより、ゴム製品用組成物の加工性が更に改良され、柔軟性に富むゴム製品を製造可能となるために好ましい。
【0089】
可塑剤の具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の脂肪酸エステル類;トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸系イソノニルエステル等のトリメリット酸エステル類;の他、ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジエチレングリコールモノオレート、グリセリルモノリシノレート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、エポキシ化大豆油、ポリエーテルエステル等を挙げることができる。これらの可塑剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
可塑剤の配合量は、(C)共重合体100質量部に対して、0〜80質量部であることが好ましく、10〜60質量部であることが更に好ましい。可塑剤を配合することで、得られるゴム製品に優れた耐寒性を付与することができる。一方、80質量部以下とすることで、ゴム製品の強度の低下を抑制することができる。
【0091】
1E−3.架橋剤:
架橋剤の具体例としては、硫黄、有機過酸化物等を挙げることができるが、なかでも硫黄が好ましい。硫黄の具体例としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等を挙げることができる。なお、架橋剤として硫黄を用いる場合における、硫黄の配合量は、(C)共重合体100質量部に対して、0.05〜5質量部であることが好ましく、0.1〜3質量部であることが更に好ましい。架橋剤を0.05質量部以上とすることで得られるゴム製品の強度を良好に向上させることができる。一方、5質量部以下とすることで、架橋されたゴムの表面への硫黄のブルーム発生による品質の悪化を抑制することができる。
【0092】
また、架橋剤として硫黄を用いる場合においては、架橋助剤(以下、「加硫促進剤」ともいう)を併用することが好ましい。加硫促進剤としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系化合物;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(2’,4’−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系化合物;ジフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン、オルソニトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレート等のグアニジン化合物;アセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミン又はアルデヒド−アンモニア系化合物;
【0093】
2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;チオカルバニリド、ジエチルチオユリア、ジブチルチオユリア、トリメチルチオユリア、ジオルソトリルチオユリア等のチオユリア系化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系化合物;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系化合物;ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のザンテ−ト系化合物;亜鉛華、活性亜鉛華、表面処理亜鉛華、炭酸亜鉛、複合亜鉛華、複合活性亜鉛華等の無機系亜鉛化合物等を挙げることができる。これらの加硫促進剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
有機過酸化物の具体例としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、1,3ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ベイゾイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−イソプロピルカーボナート、t−ブチルパーオキシアリルカーボナート等を挙げることができる。これらの有機過酸化物は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
架橋剤として有機過酸化物を用いる場合における、有機過酸化物の配合量は、(C)共重合体100質量部に対して、0.2〜5質量部であることが好ましく、0.3〜4質量部であることが更に好ましい。架橋剤(有機過酸化物)を0.2質量部以上とすると、得られる架橋ゴムに高い強度を付与することができる。一方、5質量部超であると架橋効率が低下し易く、これ以上増量する意義が薄れる。
【0096】
1E−4.その他の添加剤:
本発明のゴム製品用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、充填剤、加工助剤、軟化剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、防菌・防かび剤、着色剤等の添加剤を必要に応じて更に添加することができる。
【0097】
充填剤の具体例としては、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、極微細活性化炭酸カルシウム、特殊炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、カオリンクレー、焼成クレー、パイロフライトクレー、シラン処理クレー、合成ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、カオリン、セリサイト、タルク、微粉タルク、ウォラスナイト、ゼオライト、ゾーノトナイト、アスベスト、PMF(Processed Mineral Fiber)、胡粉、セピオライト、チタン酸カリウム、エレスタダイト、石膏繊維、ガラスバルン、シリカバルン、ハイドロタルサイト、フライアシュバルン、シラスバルン、カーボン系バルン、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン等を挙げることができる。これらの充填剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。充填剤の配合量は、(C)共重合体100質量部に対して、0〜200質量部であることが好ましく、0〜100質量部であることが更に好ましい。
【0098】
加工助剤の具体例としては、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸、ステアリン酸亜鉛、市販の各種加工助剤等を挙げることができる。これらの加工助剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、加工助剤の配合量は、(C)共重合体100質量部に対して、0〜20質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることが更に好ましい。
【0099】
軟化剤の具体例としては、石油系軟化剤、植物油系軟化剤、サブ等を挙げることができる。これらの軟化剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。石油系軟化剤の具体例としては、アロマティック系、ナフテン系、又はパラフィン系軟化剤等を挙げることができる。また、植物系軟化剤の具体例としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、木ろう等を挙げることができる。サブの具体例としては、黒サブ、白サブ、飴サブ等を挙げることができる。また、軟化剤の配合量は、(C)共重合体100質量部に対して、0〜50質量部であることが好ましく、0〜30質量部であることが更に好ましい。
【0100】
老化防止剤の具体例としては、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン誘導体系、モノ、ビス、トリス、ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダードフェノール系、亜リン酸エステル系、イミダゾール系、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系、リン酸系の老化防止剤等を挙げることができる。これらの老化防止剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。老化防止剤の配合量は、(C)共重合体100質量部に対して、0〜10質量部であることが好ましく、0〜7質量部であることが更に好ましい。
【0101】
紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等を挙げることができる。これらの紫外線吸収剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。紫外線吸収剤の配合量は、(C)共重合体100質量部に対して、0〜10質量部であることが好ましく、0〜7質量部であることが更に好ましい。
【0102】
1F.ゴム製品用組成物の製造方法:
本発明のゴム製品用組成物は、例えば、以下のようにして製造することができる。先ず、(C)共重合体、(D)共重合体、カーボンブラック等の補強剤、及び各種添加剤(架橋剤及び架橋助剤を除く)を、バンバリーミキサー等の混練機に投入し、温度70〜180℃で混練することにより混練物(未架橋の配合ゴム組成物)を得ることができる。なお、硫黄等の架橋剤、及び架橋助剤(加硫促進剤等)等については、得られた混練物を冷却した後にバンバリーミキサー、ミキシングロール等を使用して混合・混練すればよい。
【0103】
なお、(C)共重合体、(D)共重合体、及びカーボンブラック等の補強剤を、それぞれ凝固後の固体状態で混練してもよい。一方、固体状態とする前の乳化液(ラテックス)の状態の(C)共重合体及び(D)共重合体と、上記カーボンブラック等の補強剤とを所定割合で混合して混合液を得、得られた混合液から重合体成分を凝固・分離することにより得られた複合体(複合ゴム)を用いて、前述の混練を行ってもよい。
【0104】
2.ゴム製品:
本発明のゴム製品は、前述のゴム製品用組成物を架橋して得られる架橋ゴムからなるものである。即ち、ゴム製品用組成物に含まれる重合体成分((C)共重合体、及び(D)共重合体)を架橋することで、重合体成分に、優れた耐油性、及び耐候性を付与することができる。
【0105】
本発明のゴム製品は、これまで述べてきた特性を生かし、例えば、ゴムホース、パッキン、ダイヤフラム等を製造するための材料として好適である。
【0106】
2−1.架橋ゴムの製造方法:
架橋ゴムは、ゴム製品用組成物、例えば、(C)共重合体、(D)共重合体、架橋剤、及び架橋助剤(加硫促進剤)等を、バンバリーミキサー、ミキシングロール等を使用して混合・混練し、温度130〜200℃で架橋することにより得ることができる。なお、混練後にそのまま成形体とする場合には、上記の温度で金型成形、押出成形、射出成形等を実施すればよい。
【0107】
上述のようにして得られる架橋ゴム、及びこの架橋ゴムからなるゴム製品の耐油性は、例えば、JIS K6258に準拠して浸せき試験による体積変化を測定することによって算出することができる。
【0108】
また、本発明のゴム製品の耐候性は、例えば、JIS K6259に準拠した耐オゾン性によって評価することができる。具体的には、上記ゴム製品用組成物を架橋して厚さ2mmのゴムシートを得、得られたゴムシートをJIS K6251に規定されるダンベル状1号形に打ち抜くことによって試験片を作製する。試験片を60%伸張し、伸張24時間後にオゾン試験機(80pphm、40℃)に投入し、200時間経過後の試験片のクラックの発生の有無を確認する。本発明のゴム製品においては、上記評価において、試験片にクラックが生じていないことが好ましい。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
【0110】
[単量体成分に由来する構造単位の含有割合]:アクリロニトリル単位の含有割合(AN含有割合)については、元素分析により測定した窒素含有量から算出した。また、スチレン単位の含有割合(ST含有割合)については、熱分解ガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0111】
[tanδ及びα]:ゴム加工性解析装置(型番「RPA2000」、アルファテクノロジーズ社製)を使用し、周波数10Hz、歪5.02%の条件で、60℃及び150℃における生ゴム(共重合体)のtanδ(tanδ(60℃)及びtanδ(150℃))を測定した。また、測定したtanδの値からαを算出した。
【0112】
[ムーニー粘度(ML1+4,100℃)]:JIS K6300に準拠し、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃の条件で測定した。
【0113】
[引張破断強度(TB)及び引張破断伸び(EB)]:JIS K6251に準拠して測定した。
【0114】
[デュロA硬度(Hs)]:JIS K6253(1997)に準拠し、デュロメーター タイプAを用いて測定した。
【0115】
[耐油性]:JIS K6258に準拠して浸せき試験による体積変化を測定した。具体的には、先ず、各実施例及び比較例にて得られたゴム製品用組成物を架橋して厚さ2mmのゴムシートを得、得られたゴムシートを、20mm角に打ち抜くことによって試験片を作製した。次いで、作製した試験片を100℃の試験油(IRM903)に70時間浸せきし、体積変化率(ΔV={(「浸せき前の試験片の体積」−「浸せき後の試験片の体積」)/「浸せき前の試験片の体積」}×100(%))を測定した。
【0116】
[耐侯性(耐オゾン性)]:JIS K6259に準拠して評価した。具体的には、先ず、先ず、各実施例及び比較例にて得られたゴム製品用組成物を架橋して厚さ2mmのゴムシートを得、得られたゴムシートを、JIS K6251に規定されるダンベル状1号形に打ち抜くことによって試験片を作製した。次いで、作製した試験片を60%伸張し、伸張24時間後にオゾン試験機(80pphm、40℃)に投入した。200時間経過後にオゾン試験機から試験片を取り出し、クラックの発生の有無を確認した。試験片にクラックが生じていない場合を「○」と評価し、クラックが生じた場合を「×」と評価した。
【0117】
(合成例1:(C−1)共重合体の合成)
(a−1)不飽和ニトリル単量体としてのアクリロニトリル70部、(a−2)共役ジエン単量体としてのブタジエン30部、ラウリル硫酸ナトリウム4部、過硫酸カリウム0.2部、及び水200部を窒素置換したステンレス製反応器に仕込み、40℃で重合させた。
【0118】
重合転化率がほぼ60%に達したところで、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン0.5部を反応系に添加して反応を停止させ、(A)共重合体を含むラテックスを得た(反応時間:8時間)。
【0119】
得られたラテックスにスチームを投入して残ったモノマーを留出させた。窒素置換した後、(b−1)不飽和ニトリル単量体としてのアクリロニトリル16.8部、(b−3)芳香族ビニル単量体としてのスチレン8.4部、及び過硫酸カリウム0.2部を添加して、40℃で重合させた。重合転化率がほぼ60%に達したところで、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン0.5部を反応系に添加して反応を停止させた(反応時間:4時間)。
【0120】
0.25%塩化カルシウム水溶液を添加して共重合体((C)共重合体)を凝固させ、凝固物を得た。得られた凝固物を十分に水洗した後、約90℃で3時間乾燥させることにより、(C)共重合体を得た。得られた(C)共重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は80、AN含有割合は50%、ST含有割合は10%、及びαは−0.4であった。結果を表1に示す。なお、この合成例1にて得られた(C)共重合体を(C−1)共重合体とする。
【0121】
【表1】

【0122】
(合成例2:(C−2)共重合体の合成)
(a−1)不飽和ニトリル単量体としてのアクリロニトリル46部、(a−2)共役ジエン単量体としてのブタジエン54部、ラウリル硫酸ナトリウム4部、過硫酸カリウム0.2部、及び水200部を窒素置換したステンレス製反応器に仕込み、40℃で重合させた。重合転化率がほぼ70%に達したところで、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン0.5部を反応系に添加して反応を停止させ、(A)共重合体を含むラテックスを得た(反応時間:8時間)。
【0123】
得られたラテックスにスチームを投入して残ったモノマーを留出させた。窒素置換した後、(b−1)不飽和ニトリル単量体としてのアクリロニトリル19.5部、(b−3)芳香族ビニル単量体としてのスチレン9.7部、及び過硫酸カリウム0.2部を添加して、40℃で重合させた。重合転化率がほぼ60%に達したところで、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン0.5部を反応系に添加して反応を停止させた(反応時間:4時間)。
【0124】
0.25%塩化カルシウム水溶液を添加して共重合体((C)共重合体)を凝固させ、凝固物を得た。得られた凝固物を十分に水洗した後、約90℃で3時間乾燥させることにより、(C)共重合体を得た。得られた(C)共重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)、AN含有割合、ST含有割合、及びαを表1に示す。この合成例2にて得られた(C)共重合体を(C−2)共重合体とする。
【0125】
(合成例3:(C’)共重合体の合成)
(a−1)不飽和ニトリル単量体としてのアクリロニトリル70部、(a−2)共役ジエン単量体としてのブタジエン30部、ラウリル硫酸ナトリウム4部、過硫酸カリウム0.2部、及び水200部を窒素置換したステンレス製反応器に仕込み、40℃で重合させた。
【0126】
重合転化率がほぼ60%に達したところで、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン0.5部を反応系に添加して反応を停止させた(反応時間:8時間)。0.25%塩化カルシウム水溶液を添加して共重合体を凝固させ、凝固物を得た。得られた凝固物を十分に水洗した後、約90℃で3時間乾燥させることにより、共重合体を得た。得られた共重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)、AN含有割合、及びαを表1に示す。この合成例2にて得られた共重合体を(C’)共重合体とする。
【0127】
(実施例1)
(C−1)共重合体70部、(D)共重合体としてのEPDM(1)30部、カーボンブラック(補強剤、商品名「シースト3」、東海カーボン社製)55部、ステアリン酸(加工助剤、商品名「ルナックS−30」、花王社製)1部、アジピン酸エーテルエステル系可塑剤(商品名「RS107」、旭電化工業社製)10部、オイル(商品名「N2050」、社製)10部、硫黄(架橋剤、商品名「粉末硫黄」、鶴見化学社製)1.2部、及び亜鉛華(架橋助剤、商品名「酸化亜鉛2種」、正同化学社製)5部を、バンバリーミキサーを使用して70〜180℃で混練することにより混練物を得た。得られた混練物を冷却したものに、テトラメチルチウラムジスルフィド(加硫促進剤、商品名「ノクセラーTT」、大内新興化学工業社製)0.2部、及びN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(加硫促進剤、商品名「ノクセラーCZ」、大内新興化学工業社製)3部をロールで練り込むことにより未架橋のゴム製品用組成物を得た。得られたゴム製品用組成物のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は75であった。
【0128】
得られたゴム製品用組成物を160℃、20分プレス加硫することにより加硫ゴムシート(ゴム製品)を作製した。作製した加硫ゴムシートの引張破断強度(TB)は15.5MPa、引張破断伸び(EB)は250%、及びデュロA硬度(Hs)は88であった。また、この加硫ゴムシートの耐油性、及び耐侯性(耐オゾン性)の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0129】
【表2】

【0130】
(実施例2,3、比較例1〜3)
表2に示す配合処方としたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして未架橋のゴム製品用組成物を得た。得られたゴム製品用組成物のムーニー粘度(ML1+4,100℃)の測定結果を表2に示す。また、実施例1と同様にして加硫ゴムシート(ゴム製品)を作製した。作製した加硫ゴムシートの引張破断強度(TB)、引張破断伸び(EB)、デュロA硬度(Hs)、耐油性、及び耐侯性(耐オゾン性)の測定結果を表2に示す。
【0131】
(結果)
αの値が1.5と高い(A)共重合体のみからなる(C’)共重合体と、(D)共重合体とを含有するゴム製品用組成物を用いた比較例1及び2のゴム製品は、耐油性が低いものであった。また、比較例1のゴム製品は、デュロA硬度についても低いという結果が得られた。比較例2及び3のゴム製品については、耐侯性(対オゾン性)が悪かった。
【0132】
一方、実施例1〜3のゴム製品は、引張破断強度、引張破断伸び、デュロA硬度、耐油性、耐侯性(耐オゾン性)の全てに優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明のゴム製品用組成物は、ホース、シール等のゴム製品の製造に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(a−1)不飽和ニトリル単量体、及び(a−2)共役ジエン単量体を重合させて得られる(A)不飽和ニトリル・共役ジエン系共重合体存在下で、
(b−1)不飽和ニトリル単量体、(b−2)(メタ)アクリル酸系単量体、及び(b−3)芳香族ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも一種を含む(B)単量体成分を重合させて得られる(C)共重合体と、
エチレン、炭素数3〜10のα−オレフィン系単量体及び非共役ジエン系単量体を重合させて得られる(D)共重合体とを含有し、
前記(C)共重合体の、下記式(1)で表されるαの値が、1.0以下であるゴム製品用組成物。
α=[tanδ(150℃)−tanδ(60℃)]/tanδ(60℃)・・・(1)
(前記式(1)中、tanδ(150℃)は、前記(C)共重合体の150℃における損失係数を示し、tanδ(60℃)は、前記(C)共重合体の60℃における損失係数を示す)
【請求項2】
前記(C)共重合体が、
前記(A)不飽和ニトリル・共役ジエン系共重合体の水分散体に、(B)単量体成分を添加し、その系内に存する全単量体に対する共役ジエン単量体の比率を、10モル%以下とした状態で重合させたものである請求項1に記載のゴム製品用組成物。
【請求項3】
前記(b−1)不飽和ニトリル単量体がアクリロニトリルであるとともに、前記(b−3)芳香族ビニル単量体がスチレンである請求項1又は2に記載のゴム製品用組成物。
【請求項4】
前記(C)共重合体が、前記(A)不飽和ニトリル・共役ジエン系共重合体20〜98質量部と、前記(B)単量体成分2〜80質量部(但し、(A)+(B)=100質量部)と、を重合させたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴム製品用組成物。
【請求項5】
前記(a−1)不飽和ニトリル単量体がアクリロニトリルであるとともに、前記(a−2)共役ジエン単量体がブタジエンであり、
前記(A)不飽和ニトリル・共役ジエン系共重合体が、前記(a−1)不飽和ニトリル単量体に由来する構造単位(i)を10〜60質量%、前記(a−2)共役ジエン単量体に由来する構造単位(ii)を10〜90質量%、及び(a−3)その他の単量体に由来する構造単位(iii)を0〜80質量%(但し、(i)+(ii)+(iii)=100質量%)を有するものである請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴム製品用組成物。
【請求項6】
前記(C)共重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)が、10〜200である請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂改質用組成物。
【請求項7】
前記(D)共重合体に対する前記(C)共重合体の質量割合(C/D)が、30/70〜90/10である請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴム製品用組成物。
【請求項8】
補強剤、可塑剤、及び架橋剤からなる群より選択される少なくとも一種を更に含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載のゴム製品用組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のゴム製品用組成物を架橋して得られる架橋ゴムを使用して製造されるゴム製品。

【公開番号】特開2009−242554(P2009−242554A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90391(P2008−90391)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】