ゴルフクラブシャフトの角度調節具
【課題】 ゴルフクラブシャフトについて、曲げ変形させる部位を正確に特定することによって、曲げ角度を精度良く調節できるようにしたゴルフクラブシャフトの角度調整具を提供することにある。
【解決手段】
2つの押圧受部4間に向けて進退可能に押圧部3を備え、押圧受部4には、ゴルフクラブシャフトGが当接する受け溝16が形成され、該シャフトGを前記受け溝16に当接させた状態で、ベント部分Vを前記押圧部3で押圧することによって、2つの押圧受部4間でベント部分Vに曲げ力を加えるようにしたことを特徴とするものである。
【解決手段】
2つの押圧受部4間に向けて進退可能に押圧部3を備え、押圧受部4には、ゴルフクラブシャフトGが当接する受け溝16が形成され、該シャフトGを前記受け溝16に当接させた状態で、ベント部分Vを前記押圧部3で押圧することによって、2つの押圧受部4間でベント部分Vに曲げ力を加えるようにしたことを特徴とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブシャフトのベント部分の曲げ角度を調節するための角度調節具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9、図10は、ゴルフクラブシャフトのベント部分の曲げ角度を調節するための角度調節具100の背景技術を示す。当該背景技術においては、図9に示すように、ゴルフクラブヘッド101をクランプしてセットするためのクランプ部102と、該クランプ部102でゴルフクラブヘッド101がセットされたゴルフクラブシャフトGの曲げ角度を調節するためのベンディングバー103とを備えている。
【0003】
クランプ部102は、水平位置決め部104、104と、押さえ部105とを備えている。水平位置決め部104、104は、互いに対面するように一対設けられ、これら一対の水平位置決め部104、104同士の間でゴルフクラブヘッド101が挟持されるようにして水平方向の位置決めが成される構成になっている。又、押さえ部105は、ゴルフクラブヘッド101の上面に当接するように設けられている。
【0004】
図10に示すように、前記ベンディングバー103は、把持棒106と該把持棒106の先端に設けられた操作棒107とから略T字状に形成されると共に該操作棒107の両端に円柱状の当接部108,109が設けられた構成である。
【0005】
そして、このように構成された角度調節具100を用いてゴルフクラブシャフトGの曲げ角度を調節する場合、先ず、図9に示すように、一対の水平位置決め部104,104によってゴルフクラブヘッド101を挟持するようにしてゴルフクラブシャフトGの水平方向の位置決めを行う。次に、押さえ部105でゴルフクラブヘッド101の上面を下方へ押さえ付けるようにしてゴルフクラブシャフトGの位置を固定する。
【0006】
次に、図10中、二点鎖線で示すように、ベンディングバー103の2つの当接部108,109の間にゴルフクラブシャフトGを位置させるようにして、ベンディングバー103の2つの当接部108,109をゴルフクラブシャフトGに当接させる。その後、ベンディングバー103の把持部106の基端側を作業者が把持し、下側の当接部109を前方(図10中、矢示A方向)へ押し出し、上側の当接部108を手前方向(図10中、矢示B方向)へ引き寄せるようにして、該ベンディングバー103の基端側を下方(図10中、矢示C方向)へ押し下げる。
【0007】
すると、ゴルフクラブシャフトGは、下側の当接部109が当接する部位Sにおいて、下方(図10中、矢示C方向)へ屈曲するように曲げられる。この際、ベンディングバー103の基端側を作業者が下方へ押し下げる力の入れ具合によって、ゴルフクラブシャフトGの当該部位Sにおいての曲げ角度を調節する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図10に示すように、ベンディングバー103を下方へ押し下げた場合、ゴルフクラブシャフトGのネック部位Nには、前方(図10中、矢示D方向)へ向けた押圧力が発生する。そして、当該ネック部位Nが、当該押圧力によって折れたり、偏平に潰れたり、又は、接着が取れたりして、損傷するといった問題があった。
【0009】
そこで、本発明は前記背景技術の問題点に鑑みて成されたもので、その目的は、ゴルフクラブシャフトのネック部分に負担を掛けない状態で、ゴルフクラブシャフトのベント部位を精度良く適確に曲げることができるようにしたゴルフクラブシャフトの角度調節具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、ゴルフクラブシャフトのベント部分の曲げ角度を調節するためのゴルフクラブシャフトの角度調節具であって、
基台と、該基台に設けられた2つの押圧受部と、これら2つの押圧受部間に向けて進退可能に該基台に設けられた押圧部とを備え、
前記押圧受部には、前記ゴルフクラブシャフトが当接する受け溝が形成され、
該シャフトを前記受け溝に当接させた状態で、前記ベント部分を前記押圧部で押圧することによって、2つの押圧受部間でベント部分に曲げ力を加えるようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧受部を多面体で形成して前記基台に回転可能に設け、該多面体の各面に前記受け溝を形成すると共に、各面に形成された受け溝の軸芯の傾きを互いに異ならせたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、
前記押圧受部の配置位置は、前記基台上おいて前記押圧部の進退方向とほぼ直交する方向において位置調整可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧受部は、前記基台に対して接近又は離間する方向へ位置調整可能であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧部には、前記ベント部分に当接する湾曲面状の押圧面が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧部には、前記ベント部分に当接するほぼ平坦な押圧面が設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧部は、前記クラブシャフトよりも軟質の素材で形成されることにより、前記クラブシャフトとの当接によって変形可能であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧面には、前記ゴルフクラブシャフトの一部が嵌り込む溝が形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項5乃至請求項7の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧部は、前記基台に設けられた支持部に支持された回転軸と、軸孔が形成されると共に該軸孔に該回転軸の先端が回転自在に嵌合されることにより該回転軸の先端に着脱自在に取り付けられた押圧当接部とから構成され、該押圧当接部には前記押圧面が形成され、
前記回転軸の回転量を調整することにより、前記回転軸の進退量を調節して前記ベント部分に加える押圧力を調節できることを特徴とするものである。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧当接部は、硬質樹脂で形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、ゴルフクラブシャフトのベント部分の両側を各押圧受部で受け止めた状態で、これら押圧受部間において、押圧部でベント部分に押圧力を加えるようにしたため、該ベント部分は押圧部に当接する部位において正確に曲げられることができ、該ベント部分の曲げる部位を正確に特定することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、ゴルフクラブシャフトの形状に相応した押圧受部を選択することができるため、ゴルフクラブシャフトを的確に受け止めることができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、2つの押圧受部の位置を最も好ましい位置に設定することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、押圧受部の基台からの接近、離間、即ち、高さを調整することによって、該押圧受部を最も好ましい高さに設定することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、押圧面がベント部分に密接することができるため、該押圧面でベント部分を効率よく押圧することができる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、押圧面が平坦面状に形成されているため、該押圧面で、任意の角度のベント部分を効率よく押圧することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、押圧部はベント部分との当接によって、該ベント部分の形状に馴染むように変形しながら、該ベント部分を押圧して曲げ変形させることができる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、ゴルフクラブシャフトの一部が溝に嵌り込むようにして、押圧面で受け止められる。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、回転軸の回転量を調節することで、押圧部の進退量を調節することができ、ベント部分の曲げ角度を調節することができる。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、押圧当接部が硬質樹脂で形成されているため、適度の硬度を確保しながら、ベント部分との当接によって、該ベント部分の形状に馴染むように変形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1乃至図8は、本発明の第一実施形態を示す。図1乃至図8は、ゴルフクラブシャフトの角度調節具を示す。
【0031】
該角度調節具1は、鋼製の基台2と、該基台2上に立設される押圧部3、及び2つの押圧受部4とを備え、図中、二点鎖線で示すように、これら押圧部3と、2つの押圧受部4との間に、ゴルフクラブシャフトGを配置できる構成になっている。
【0032】
前記基台2は、押圧部3、及び2つの押圧受部4が配設される部材であって、その形状は限定されないが、図1に示す実施例のように全体をT字状とし、該文字の下端に相当する位置に押圧部3を設け、該文字の上部両端に相当する位置に押圧受部4を設けると全体をコンパクトに構成することができる。この場合、基台2は、例えば、直方体状の基台本体5と、該基台本体5の先端に該基台本体5の軸芯Lと直交する方向へ延設された延設部6とから構成され、上方から観た場合、T字状を成した形状に形成されることができる。該基台2は、作業者が把持できる太さに形成されて作業者が持ち運びできるようにすることができる。
【0033】
前記基台2には、押圧部3が、前後方向(図1中、矢示方向)へ進退自在に設けられている。該押圧部3は、前後方向へ進退可能であれば、その構造は限定されないが、該押圧部3は、例えば、図1に示すように、雄螺子が螺刻された回転軸7と該回転軸7の先端に設けられた押圧当接部8とから構成することができる。該回転軸7は、基台本体5の後端に立設された支持部9の螺子孔に回転可能に支持されて、正方向への回転、及び逆方向への回転によって、前後方向へ進退可能になっている。該回転軸7の基端に六角柱状の操作部10を設けることにより、回転軸7を容易に回転操作できるように構成することができる。該回転軸7は、前記基台本体5の軸芯Lに沿って前後方向へ進退可能に設けることができる。該押圧部3は、前記延設部6の位置より前方にまで前進できるように形成されている。
【0034】
前記押圧当接部8の表面には押圧面11が形成され、背面には、図2に示すように、嵌合凹部12が形成されている。該押圧面11は、図1中、二点鎖線で示すように、ゴルフクラブシャフトGを横に倒した状態で該ゴルフクラブシャフトGのベント部分Vに当接して押圧力を加えることができる形状に形成されているものであって、該ベント部分Vの形状や該ベント部分Vに当接する向きに応じて複数種のものが用意されている。押圧当接部8は、このように、複数種のものが用意され、背面の嵌合凹部12を前記回転軸7の先端に嵌合するようにして、適宜、付け替えできるようになっている。
【0035】
図1は、押圧当接部8が、ベント部分Vの凹んでいる側から当接できる形状に形成されている場合であり、図3は、押圧当接部8が、ベント部分Vの突出している側から当接できる形状に形成されている場合を示す。
【0036】
図1に示す押圧当接部8の表面には、ゴルフクラブシャフトGのベント部分Vが嵌り込む湾曲溝13が形成されている。該湾曲溝13は、該ベント部分Vが嵌り込む溝幅であって、且つ、該ベント部分Vが嵌り込むように該ベント部分Vの曲がりに相応した形状に湾曲している。このように、押圧当接部8の表面に湾曲溝13を形成した場合には、該湾曲溝13の溝底面によって、前記押圧面11が形成される。
【0037】
図1に示す押圧当接部8については、溝底面の曲率半径Rが30mmから50mmのものを用いることにより、ベント部分Vの角度を約2度から6度の範囲で調節することが可能である。特に、30mmと50mmとのものを組み合わせて使用すると、50mmによって弱めにゴルフクラブシャフトGを曲げ変形させてから30mmのものを用いて局部的に更に強めにゴルフクラブシャフトGを曲げ変形させることで、ゴルフクラブシャフトGを一気に曲げすぎて該ゴルフクラブシャフトGを折損するといったことを、習熟度が低く、作業に不慣れな初心者であっても勘に頼ることなく効果的に防ぐことができる。
【0038】
図3に示す押圧当接部8の表面には、平坦な押圧面11が形成されている。該押圧面11には、ゴルフクラブシャフトGの一部が嵌り込む溝14が形成されている。該溝14は1つでも良く、又は、縦横に形成されることにより、十字に形成しても良く、更には、該溝14を縦横に複数設けることにより、格子状に形成しても良い。又、前記溝14の溝幅は、1mmから3mmの間が好ましいが、特に、溝幅が2mmであって、その溝によって形成される複数の各押圧面11が4mm角となるものが好適である。図4は、当該押圧当接部8の斜視図を示し、図5は該押圧当接部8の溝14でゴルフシャフトGのベント部分Vを受け止めた状態を示す。
【0039】
前記押圧当接部8は、ゴルフクラブシャフトGとの当接の際に、該ゴルフクラブシャフトGの形状に馴染むことができるように、該ゴルフクラブシャフトGの材質よりも軟質の材質の部材で形成されることが好ましい。該押圧当接部8は、ショア硬度が90以上のウレタン(登録商標)、テフロン(登録商標)、木などで形成することができる。
【0040】
図1、図3に示すように、前記押圧受部4は、前記延設部6に設けられている。該押圧受部4は2つ設けられており、その中間位置に前記押圧部3の先端が前進して到達できるように、これら2つの押圧受部4は互いに離間して設けられている。
【0041】
又、前記押圧受部4は、六面体で形成され、上下面を貫通するようにしてピン15が設けられている。そして、該押圧受部4は、ピン15の軸方向へ移動することで、基台2に対して接近、離間を調節することができて、ゴルフクラブシャフトGの曲がり具合、曲げ方向などに応じて、当該ゴルフクラブシャフトGの曲げ作業を適確に行うことができるようにするために、該ピン15の軸方向への高さ調整をできるようになっていると共に、該ピン15を中心に回転できるようになっている。該押圧受部4の4つの各側面には、受け溝16が形成されている。該受け溝16は、図1、図3に示すように、ゴルフクラブシャフトGが横に倒された状態で該ゴルフクラブシャフトGが嵌り込んで受け止められる溝である。
【0042】
図6に示すように、前記押圧受部4の各側面に設けられた受け溝16の軸芯Mは、水平線Sを基準にして互いに傾きを異ならせている。即ち、図6(a),(b),(c)には、該軸芯Mが水平線Sを基準にして反時計方向へ傾くように形成された場合であって、各押圧受部4に設けられた受け溝16の形成位置が上下方向へ異ならせた場合を示し、図6(d)には、該軸芯Mが水平線Sにほぼ一致した場合を示している。
【0043】
そして、図7は、一方の押圧受部4の受け溝16の傾きとして、図6(a)に示す状態を選択し、他方の押圧受部4の受け溝16の傾きとして、図6(d)に示す状態を選択しており、同図7に示す場合には、例えば、ロフト角方向の角度が同図中二点鎖線で示す状態のゴルフクラブシャフトGが2つの押圧受部4,4によって受け止められるようにしてセットされた状態を示している。同図7は、2つの押圧受部4,4を押圧部3側から観た状態を示す。
【0044】
又、図1及び図3に示すように、前記基台2の延設部6には、前記押圧受部4のピン15がネジ込まれるピン孔17が複数個設けられており、これら複数個のピン孔17の内から任意の2つのピン孔17を選択して、2つの押圧受部4,4のピン15を差し込むことにより、これら2つの押圧受部4,4の位置調整がなされる。これらピン孔17は、前記基台本体5の軸芯Lを中心にして左右に等間隔に、例えば、24mm間隔で複数個設けられている。従って、押圧受部4、4の間隔を適宜選択することで、ゴルフクラブシャフトGに加える変形位置、及び変形量を適確に調整することができる。
【0045】
次に、ゴルフクラブシャフトGのライ角方向の角度を調整する場合の作用について説明する。尚、ゴルフクラブシャフトGのロフト角方向の角度は既に調整済みであるとする。この場合、図1において、押圧受部4を回転させて、当該ロフト角方向の曲がりに合致して、ゴルフクラブシャフトGを横に倒した状態で受け止めることのできる受け溝16を選択する。図1、図7は、ゴルフクラブシャフトG(二点鎖線で示す)をセットした状態を示す。
【0046】
次に、押圧部4の操作部10を操作して、回転軸7を前進させ、押圧当接部8をゴルフクラブシャフトGのベント部分Vに接近させて、該押圧当接部8の湾曲溝13に該ベント部Vを嵌まり込ませる。
【0047】
その後、操作部10を操作することにより、押圧当接部8をゴルフクラブシャフトGに更に接近させて該ベント部分Vに押圧力を加える。ゴルフクラブシャフトGは、ベント部分Vの両側が押圧受部4に受け止められた状態で、該ベント部分Vが押圧部3によって押圧されることによって、該ベント部分Vの角度が更に小さくなるように該ベント部分Vが曲げられて該ベント部分Vの角度調節がなされる。
【0048】
この場合、ゴルフクラブシャフトGは、図1、図3に示すように、押圧部3が当接して押圧力が加えられる部位において、曲がることができるため、作業者はゴルフクラブシャフトGの曲げる部位を正確に特定できる。
【0049】
又、ゴルフクラブシャフトGは、押圧受部4に当接している状態であって把持されてはいない。又、前記押圧当接部8は前記ゴルフクラブシャフトGよりも軟質の部材で形成されているため、前記押圧当接部8で、前記ベント部分Vを押圧する際、押圧当接部8は、ベント部分Vからの反力によって、該ベント部分Vの形状に馴染むように変形しながら、該ベント部分Vに曲げ力を加えることができる。
【0050】
更に、押圧受部4は、ピン15を中心として回転できると共に、該ピン15の軸方向、即ち、高さ方向へ自在に移動できる。このため、ゴルフクラブシャフトGのベント部分Vが押圧部3で押圧されながら変形する際、当該変形に伴って、該押圧受部4は、ピン15の軸方向及び周方向へ移動して姿勢を変えつつ、該ベント部分Vの形状にフィットしながら該ベント部分Vを受け止めることができる。特に、ゴルフクラブシャフトGの形状、硬さ、角度に応じて、ベント部分Vの変形の程度が異なるため、前述のように、押圧受部4が、該ベント部分Vの変形に追従してその姿勢を変化できることは、ベント部分Vの曲げ角度を精度良く調節する上において極めて好ましいものである。又、押圧受部4が、ベント部分Vの変形に追従してその姿勢を変化させながら該ベント部分Vを無理なく支承できるため、ゴルフクラブGの損傷を押さえることができる。
【0051】
尚、前記ベント部分Vの角度を大きくするように、即ち、曲げを小さくするように角度調節する場合には、図1に示す状態から、操作部10を操作して、回転軸7を後退させた後、押圧当接部8を取り外す一方、新たな押圧当接部8に付け替えることにより図8に示す状態にする。同図8には、二点鎖線で示すように、ゴルフクラブシャフトGのベント部分Vの突出側が押圧当接部8に対面するようにゴルフクラブシャフトGがセットされた状態を示す。そして、図8に示す状態において、押圧部3の操作部10を操作して、回転軸7を前進させることによって、押圧当接部8によってベント部分Vを押圧する。この場合には、ベント部分Vは、図1に示す場合とは反対方向へ曲げられることによって、ベント部分Vの角度が大きくなるように、即ち、ベント部分Vの曲げ角度が小さくなるように角度調節される。
【0052】
以上の説明では、ライ角の角度を調節する場合について説明したが、図1又は図3に示すように、ゴルフクラブシャフトGを押圧受部4にセットした状態から、該ゴルフクラブシャフトGを押圧受部4にセットする姿勢を変更することによって、ロフト角やそれ以外の任意の角度を調節することができるものである。
【0053】
本願のゴルフクラブシャフトの角度調節具1は、前記の実施例に限定されるものではなく、例えば、操作部10の形状をT字状又は十字状といったハンドル状に形成すれば、例えば、スパナを用いることなく、操作部10を容易に操作することができる。又、基台2、押圧部3,押圧受部4,回転軸7、押圧当接部8、押圧面11、受け溝16の形状、材質、大きさ等を適宜変更できることは勿論である。
【0054】
又、前記延設部6に設けられているピン孔17の個数以上の多数の数の押圧受部4を備え、各押圧受部4に設けられている受け溝16の傾斜角が大きいものから小さなものまで、多数、用意しておくことによって、任意の傾斜角の受け溝16を備えた押圧受部4を適宜選択してピン孔17に差し込んで組み合わせることによって、様々な曲がり角度のゴルフクラブシャフトGを受け溝16で無理なく支承できるようにすることが好ましい。
【0055】
更に、前記押圧部3の回転軸7、支持部9をステンレスで形成したり、該回転軸7、支持部9の螺子を角ねじ、台形ねじで形成することによって、回転軸7、支持部9の耐久性を高めることができる。
【0056】
又、該押圧部3をラックとピニオンで構成し、ピニオンの回転をラックの前後移動に変換し、該ラックに押圧当接部8を設けるように構成しても良い。
【0057】
図9は、第二実施形態を示す。第二実施形態の特徴は、支持部9に軸受21を設け、該軸受21によって、回転軸7を回転自在に支持できるようにした点にある。該軸受21は筒状の小径部21aと大径部21bとから構成できる。該軸受21には、螺子孔が形成されて、該螺子孔に回転軸7が螺合する構成になっている。そして、該軸受21は、その小径部21aが支持部9に設けられた軸孔を貫通し、大径部21bが支持部9の裏面に当接するようにして、図9に示すように、支持部9に設けられる。
【0058】
前記回転軸7を鉄、又はその合金で製造し、且つ、前記軸受21を真鍮で製造するように、軸受21を回転軸7の熱膨張率よりも大きな熱膨張率の素材で製造しても良い。このように素材を選択した場合、鉄よりも真鍮の熱膨張率が大きいことに基づいて以下の作用効果を奏する。即ち、回転軸7を繰り返し螺回操作することによって、該回転軸7と軸受21とが発熱した場合、当該発熱によって回転軸7が熱膨張するが、該回転軸7の体積膨張よりも大きく、軸受21の螺子孔が拡大することになって、回転軸7の雄螺子と、軸受21の螺子孔との間にクリアランスが確保される。このため、回転軸7を繰り返し螺回操作して発熱し易い状況下であっても、回転軸7のスムーズな螺回操作が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ゴルフクラブシャフトの角度調節具の斜視図である。(本発明の第一実施形態)
【図2】押圧当接部を背面側から観た状態の斜視図である。(本発明の第一実施形態)
【図3】ゴルフクラブシャフトの角度調節具の斜視図である。(本発明の第一実施形態)
【図4】押圧当接部を前面側から観た状態の斜視図である。(本発明の第一実施形態)
【図5】押圧当接部の表面にゴルフクラブシャフトが当接した状態の一部側面図である。(本発明の第一実施形態)
【図6】押圧受部の側面を示す側面図である。(本発明の第一実施形態)
【図7】押圧受部でゴルフクラブシャフトを受け止めた状態を示す図である。(本発明の第一実施形態)
【図8】ゴルフクラブシャフトの角度調節具の斜視図である。(本発明の第一実施形態)
【図9】ゴルフクラブシャフトの角度調節具の斜視図である。(本発明の第二実施形態)
【図10】背景技術の角度調節具を示す斜視図である。(背景技術)
【図11】図10の一部を拡大して示す図である。(背景技術)
【符号の説明】
【0060】
1 ゴルフクラブシャフトの角度調節具
2 基台
3 押圧部
4 押圧受部
7 回転軸
8 押圧当接部
10 操作部
11 押圧面
16 受け溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブシャフトのベント部分の曲げ角度を調節するための角度調節具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9、図10は、ゴルフクラブシャフトのベント部分の曲げ角度を調節するための角度調節具100の背景技術を示す。当該背景技術においては、図9に示すように、ゴルフクラブヘッド101をクランプしてセットするためのクランプ部102と、該クランプ部102でゴルフクラブヘッド101がセットされたゴルフクラブシャフトGの曲げ角度を調節するためのベンディングバー103とを備えている。
【0003】
クランプ部102は、水平位置決め部104、104と、押さえ部105とを備えている。水平位置決め部104、104は、互いに対面するように一対設けられ、これら一対の水平位置決め部104、104同士の間でゴルフクラブヘッド101が挟持されるようにして水平方向の位置決めが成される構成になっている。又、押さえ部105は、ゴルフクラブヘッド101の上面に当接するように設けられている。
【0004】
図10に示すように、前記ベンディングバー103は、把持棒106と該把持棒106の先端に設けられた操作棒107とから略T字状に形成されると共に該操作棒107の両端に円柱状の当接部108,109が設けられた構成である。
【0005】
そして、このように構成された角度調節具100を用いてゴルフクラブシャフトGの曲げ角度を調節する場合、先ず、図9に示すように、一対の水平位置決め部104,104によってゴルフクラブヘッド101を挟持するようにしてゴルフクラブシャフトGの水平方向の位置決めを行う。次に、押さえ部105でゴルフクラブヘッド101の上面を下方へ押さえ付けるようにしてゴルフクラブシャフトGの位置を固定する。
【0006】
次に、図10中、二点鎖線で示すように、ベンディングバー103の2つの当接部108,109の間にゴルフクラブシャフトGを位置させるようにして、ベンディングバー103の2つの当接部108,109をゴルフクラブシャフトGに当接させる。その後、ベンディングバー103の把持部106の基端側を作業者が把持し、下側の当接部109を前方(図10中、矢示A方向)へ押し出し、上側の当接部108を手前方向(図10中、矢示B方向)へ引き寄せるようにして、該ベンディングバー103の基端側を下方(図10中、矢示C方向)へ押し下げる。
【0007】
すると、ゴルフクラブシャフトGは、下側の当接部109が当接する部位Sにおいて、下方(図10中、矢示C方向)へ屈曲するように曲げられる。この際、ベンディングバー103の基端側を作業者が下方へ押し下げる力の入れ具合によって、ゴルフクラブシャフトGの当該部位Sにおいての曲げ角度を調節する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図10に示すように、ベンディングバー103を下方へ押し下げた場合、ゴルフクラブシャフトGのネック部位Nには、前方(図10中、矢示D方向)へ向けた押圧力が発生する。そして、当該ネック部位Nが、当該押圧力によって折れたり、偏平に潰れたり、又は、接着が取れたりして、損傷するといった問題があった。
【0009】
そこで、本発明は前記背景技術の問題点に鑑みて成されたもので、その目的は、ゴルフクラブシャフトのネック部分に負担を掛けない状態で、ゴルフクラブシャフトのベント部位を精度良く適確に曲げることができるようにしたゴルフクラブシャフトの角度調節具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、ゴルフクラブシャフトのベント部分の曲げ角度を調節するためのゴルフクラブシャフトの角度調節具であって、
基台と、該基台に設けられた2つの押圧受部と、これら2つの押圧受部間に向けて進退可能に該基台に設けられた押圧部とを備え、
前記押圧受部には、前記ゴルフクラブシャフトが当接する受け溝が形成され、
該シャフトを前記受け溝に当接させた状態で、前記ベント部分を前記押圧部で押圧することによって、2つの押圧受部間でベント部分に曲げ力を加えるようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧受部を多面体で形成して前記基台に回転可能に設け、該多面体の各面に前記受け溝を形成すると共に、各面に形成された受け溝の軸芯の傾きを互いに異ならせたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、
前記押圧受部の配置位置は、前記基台上おいて前記押圧部の進退方向とほぼ直交する方向において位置調整可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧受部は、前記基台に対して接近又は離間する方向へ位置調整可能であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧部には、前記ベント部分に当接する湾曲面状の押圧面が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧部には、前記ベント部分に当接するほぼ平坦な押圧面が設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧部は、前記クラブシャフトよりも軟質の素材で形成されることにより、前記クラブシャフトとの当接によって変形可能であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧面には、前記ゴルフクラブシャフトの一部が嵌り込む溝が形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項5乃至請求項7の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧部は、前記基台に設けられた支持部に支持された回転軸と、軸孔が形成されると共に該軸孔に該回転軸の先端が回転自在に嵌合されることにより該回転軸の先端に着脱自在に取り付けられた押圧当接部とから構成され、該押圧当接部には前記押圧面が形成され、
前記回転軸の回転量を調整することにより、前記回転軸の進退量を調節して前記ベント部分に加える押圧力を調節できることを特徴とするものである。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具において、前記押圧当接部は、硬質樹脂で形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、ゴルフクラブシャフトのベント部分の両側を各押圧受部で受け止めた状態で、これら押圧受部間において、押圧部でベント部分に押圧力を加えるようにしたため、該ベント部分は押圧部に当接する部位において正確に曲げられることができ、該ベント部分の曲げる部位を正確に特定することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、ゴルフクラブシャフトの形状に相応した押圧受部を選択することができるため、ゴルフクラブシャフトを的確に受け止めることができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、2つの押圧受部の位置を最も好ましい位置に設定することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、押圧受部の基台からの接近、離間、即ち、高さを調整することによって、該押圧受部を最も好ましい高さに設定することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、押圧面がベント部分に密接することができるため、該押圧面でベント部分を効率よく押圧することができる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、押圧面が平坦面状に形成されているため、該押圧面で、任意の角度のベント部分を効率よく押圧することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、押圧部はベント部分との当接によって、該ベント部分の形状に馴染むように変形しながら、該ベント部分を押圧して曲げ変形させることができる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、ゴルフクラブシャフトの一部が溝に嵌り込むようにして、押圧面で受け止められる。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、回転軸の回転量を調節することで、押圧部の進退量を調節することができ、ベント部分の曲げ角度を調節することができる。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、押圧当接部が硬質樹脂で形成されているため、適度の硬度を確保しながら、ベント部分との当接によって、該ベント部分の形状に馴染むように変形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1乃至図8は、本発明の第一実施形態を示す。図1乃至図8は、ゴルフクラブシャフトの角度調節具を示す。
【0031】
該角度調節具1は、鋼製の基台2と、該基台2上に立設される押圧部3、及び2つの押圧受部4とを備え、図中、二点鎖線で示すように、これら押圧部3と、2つの押圧受部4との間に、ゴルフクラブシャフトGを配置できる構成になっている。
【0032】
前記基台2は、押圧部3、及び2つの押圧受部4が配設される部材であって、その形状は限定されないが、図1に示す実施例のように全体をT字状とし、該文字の下端に相当する位置に押圧部3を設け、該文字の上部両端に相当する位置に押圧受部4を設けると全体をコンパクトに構成することができる。この場合、基台2は、例えば、直方体状の基台本体5と、該基台本体5の先端に該基台本体5の軸芯Lと直交する方向へ延設された延設部6とから構成され、上方から観た場合、T字状を成した形状に形成されることができる。該基台2は、作業者が把持できる太さに形成されて作業者が持ち運びできるようにすることができる。
【0033】
前記基台2には、押圧部3が、前後方向(図1中、矢示方向)へ進退自在に設けられている。該押圧部3は、前後方向へ進退可能であれば、その構造は限定されないが、該押圧部3は、例えば、図1に示すように、雄螺子が螺刻された回転軸7と該回転軸7の先端に設けられた押圧当接部8とから構成することができる。該回転軸7は、基台本体5の後端に立設された支持部9の螺子孔に回転可能に支持されて、正方向への回転、及び逆方向への回転によって、前後方向へ進退可能になっている。該回転軸7の基端に六角柱状の操作部10を設けることにより、回転軸7を容易に回転操作できるように構成することができる。該回転軸7は、前記基台本体5の軸芯Lに沿って前後方向へ進退可能に設けることができる。該押圧部3は、前記延設部6の位置より前方にまで前進できるように形成されている。
【0034】
前記押圧当接部8の表面には押圧面11が形成され、背面には、図2に示すように、嵌合凹部12が形成されている。該押圧面11は、図1中、二点鎖線で示すように、ゴルフクラブシャフトGを横に倒した状態で該ゴルフクラブシャフトGのベント部分Vに当接して押圧力を加えることができる形状に形成されているものであって、該ベント部分Vの形状や該ベント部分Vに当接する向きに応じて複数種のものが用意されている。押圧当接部8は、このように、複数種のものが用意され、背面の嵌合凹部12を前記回転軸7の先端に嵌合するようにして、適宜、付け替えできるようになっている。
【0035】
図1は、押圧当接部8が、ベント部分Vの凹んでいる側から当接できる形状に形成されている場合であり、図3は、押圧当接部8が、ベント部分Vの突出している側から当接できる形状に形成されている場合を示す。
【0036】
図1に示す押圧当接部8の表面には、ゴルフクラブシャフトGのベント部分Vが嵌り込む湾曲溝13が形成されている。該湾曲溝13は、該ベント部分Vが嵌り込む溝幅であって、且つ、該ベント部分Vが嵌り込むように該ベント部分Vの曲がりに相応した形状に湾曲している。このように、押圧当接部8の表面に湾曲溝13を形成した場合には、該湾曲溝13の溝底面によって、前記押圧面11が形成される。
【0037】
図1に示す押圧当接部8については、溝底面の曲率半径Rが30mmから50mmのものを用いることにより、ベント部分Vの角度を約2度から6度の範囲で調節することが可能である。特に、30mmと50mmとのものを組み合わせて使用すると、50mmによって弱めにゴルフクラブシャフトGを曲げ変形させてから30mmのものを用いて局部的に更に強めにゴルフクラブシャフトGを曲げ変形させることで、ゴルフクラブシャフトGを一気に曲げすぎて該ゴルフクラブシャフトGを折損するといったことを、習熟度が低く、作業に不慣れな初心者であっても勘に頼ることなく効果的に防ぐことができる。
【0038】
図3に示す押圧当接部8の表面には、平坦な押圧面11が形成されている。該押圧面11には、ゴルフクラブシャフトGの一部が嵌り込む溝14が形成されている。該溝14は1つでも良く、又は、縦横に形成されることにより、十字に形成しても良く、更には、該溝14を縦横に複数設けることにより、格子状に形成しても良い。又、前記溝14の溝幅は、1mmから3mmの間が好ましいが、特に、溝幅が2mmであって、その溝によって形成される複数の各押圧面11が4mm角となるものが好適である。図4は、当該押圧当接部8の斜視図を示し、図5は該押圧当接部8の溝14でゴルフシャフトGのベント部分Vを受け止めた状態を示す。
【0039】
前記押圧当接部8は、ゴルフクラブシャフトGとの当接の際に、該ゴルフクラブシャフトGの形状に馴染むことができるように、該ゴルフクラブシャフトGの材質よりも軟質の材質の部材で形成されることが好ましい。該押圧当接部8は、ショア硬度が90以上のウレタン(登録商標)、テフロン(登録商標)、木などで形成することができる。
【0040】
図1、図3に示すように、前記押圧受部4は、前記延設部6に設けられている。該押圧受部4は2つ設けられており、その中間位置に前記押圧部3の先端が前進して到達できるように、これら2つの押圧受部4は互いに離間して設けられている。
【0041】
又、前記押圧受部4は、六面体で形成され、上下面を貫通するようにしてピン15が設けられている。そして、該押圧受部4は、ピン15の軸方向へ移動することで、基台2に対して接近、離間を調節することができて、ゴルフクラブシャフトGの曲がり具合、曲げ方向などに応じて、当該ゴルフクラブシャフトGの曲げ作業を適確に行うことができるようにするために、該ピン15の軸方向への高さ調整をできるようになっていると共に、該ピン15を中心に回転できるようになっている。該押圧受部4の4つの各側面には、受け溝16が形成されている。該受け溝16は、図1、図3に示すように、ゴルフクラブシャフトGが横に倒された状態で該ゴルフクラブシャフトGが嵌り込んで受け止められる溝である。
【0042】
図6に示すように、前記押圧受部4の各側面に設けられた受け溝16の軸芯Mは、水平線Sを基準にして互いに傾きを異ならせている。即ち、図6(a),(b),(c)には、該軸芯Mが水平線Sを基準にして反時計方向へ傾くように形成された場合であって、各押圧受部4に設けられた受け溝16の形成位置が上下方向へ異ならせた場合を示し、図6(d)には、該軸芯Mが水平線Sにほぼ一致した場合を示している。
【0043】
そして、図7は、一方の押圧受部4の受け溝16の傾きとして、図6(a)に示す状態を選択し、他方の押圧受部4の受け溝16の傾きとして、図6(d)に示す状態を選択しており、同図7に示す場合には、例えば、ロフト角方向の角度が同図中二点鎖線で示す状態のゴルフクラブシャフトGが2つの押圧受部4,4によって受け止められるようにしてセットされた状態を示している。同図7は、2つの押圧受部4,4を押圧部3側から観た状態を示す。
【0044】
又、図1及び図3に示すように、前記基台2の延設部6には、前記押圧受部4のピン15がネジ込まれるピン孔17が複数個設けられており、これら複数個のピン孔17の内から任意の2つのピン孔17を選択して、2つの押圧受部4,4のピン15を差し込むことにより、これら2つの押圧受部4,4の位置調整がなされる。これらピン孔17は、前記基台本体5の軸芯Lを中心にして左右に等間隔に、例えば、24mm間隔で複数個設けられている。従って、押圧受部4、4の間隔を適宜選択することで、ゴルフクラブシャフトGに加える変形位置、及び変形量を適確に調整することができる。
【0045】
次に、ゴルフクラブシャフトGのライ角方向の角度を調整する場合の作用について説明する。尚、ゴルフクラブシャフトGのロフト角方向の角度は既に調整済みであるとする。この場合、図1において、押圧受部4を回転させて、当該ロフト角方向の曲がりに合致して、ゴルフクラブシャフトGを横に倒した状態で受け止めることのできる受け溝16を選択する。図1、図7は、ゴルフクラブシャフトG(二点鎖線で示す)をセットした状態を示す。
【0046】
次に、押圧部4の操作部10を操作して、回転軸7を前進させ、押圧当接部8をゴルフクラブシャフトGのベント部分Vに接近させて、該押圧当接部8の湾曲溝13に該ベント部Vを嵌まり込ませる。
【0047】
その後、操作部10を操作することにより、押圧当接部8をゴルフクラブシャフトGに更に接近させて該ベント部分Vに押圧力を加える。ゴルフクラブシャフトGは、ベント部分Vの両側が押圧受部4に受け止められた状態で、該ベント部分Vが押圧部3によって押圧されることによって、該ベント部分Vの角度が更に小さくなるように該ベント部分Vが曲げられて該ベント部分Vの角度調節がなされる。
【0048】
この場合、ゴルフクラブシャフトGは、図1、図3に示すように、押圧部3が当接して押圧力が加えられる部位において、曲がることができるため、作業者はゴルフクラブシャフトGの曲げる部位を正確に特定できる。
【0049】
又、ゴルフクラブシャフトGは、押圧受部4に当接している状態であって把持されてはいない。又、前記押圧当接部8は前記ゴルフクラブシャフトGよりも軟質の部材で形成されているため、前記押圧当接部8で、前記ベント部分Vを押圧する際、押圧当接部8は、ベント部分Vからの反力によって、該ベント部分Vの形状に馴染むように変形しながら、該ベント部分Vに曲げ力を加えることができる。
【0050】
更に、押圧受部4は、ピン15を中心として回転できると共に、該ピン15の軸方向、即ち、高さ方向へ自在に移動できる。このため、ゴルフクラブシャフトGのベント部分Vが押圧部3で押圧されながら変形する際、当該変形に伴って、該押圧受部4は、ピン15の軸方向及び周方向へ移動して姿勢を変えつつ、該ベント部分Vの形状にフィットしながら該ベント部分Vを受け止めることができる。特に、ゴルフクラブシャフトGの形状、硬さ、角度に応じて、ベント部分Vの変形の程度が異なるため、前述のように、押圧受部4が、該ベント部分Vの変形に追従してその姿勢を変化できることは、ベント部分Vの曲げ角度を精度良く調節する上において極めて好ましいものである。又、押圧受部4が、ベント部分Vの変形に追従してその姿勢を変化させながら該ベント部分Vを無理なく支承できるため、ゴルフクラブGの損傷を押さえることができる。
【0051】
尚、前記ベント部分Vの角度を大きくするように、即ち、曲げを小さくするように角度調節する場合には、図1に示す状態から、操作部10を操作して、回転軸7を後退させた後、押圧当接部8を取り外す一方、新たな押圧当接部8に付け替えることにより図8に示す状態にする。同図8には、二点鎖線で示すように、ゴルフクラブシャフトGのベント部分Vの突出側が押圧当接部8に対面するようにゴルフクラブシャフトGがセットされた状態を示す。そして、図8に示す状態において、押圧部3の操作部10を操作して、回転軸7を前進させることによって、押圧当接部8によってベント部分Vを押圧する。この場合には、ベント部分Vは、図1に示す場合とは反対方向へ曲げられることによって、ベント部分Vの角度が大きくなるように、即ち、ベント部分Vの曲げ角度が小さくなるように角度調節される。
【0052】
以上の説明では、ライ角の角度を調節する場合について説明したが、図1又は図3に示すように、ゴルフクラブシャフトGを押圧受部4にセットした状態から、該ゴルフクラブシャフトGを押圧受部4にセットする姿勢を変更することによって、ロフト角やそれ以外の任意の角度を調節することができるものである。
【0053】
本願のゴルフクラブシャフトの角度調節具1は、前記の実施例に限定されるものではなく、例えば、操作部10の形状をT字状又は十字状といったハンドル状に形成すれば、例えば、スパナを用いることなく、操作部10を容易に操作することができる。又、基台2、押圧部3,押圧受部4,回転軸7、押圧当接部8、押圧面11、受け溝16の形状、材質、大きさ等を適宜変更できることは勿論である。
【0054】
又、前記延設部6に設けられているピン孔17の個数以上の多数の数の押圧受部4を備え、各押圧受部4に設けられている受け溝16の傾斜角が大きいものから小さなものまで、多数、用意しておくことによって、任意の傾斜角の受け溝16を備えた押圧受部4を適宜選択してピン孔17に差し込んで組み合わせることによって、様々な曲がり角度のゴルフクラブシャフトGを受け溝16で無理なく支承できるようにすることが好ましい。
【0055】
更に、前記押圧部3の回転軸7、支持部9をステンレスで形成したり、該回転軸7、支持部9の螺子を角ねじ、台形ねじで形成することによって、回転軸7、支持部9の耐久性を高めることができる。
【0056】
又、該押圧部3をラックとピニオンで構成し、ピニオンの回転をラックの前後移動に変換し、該ラックに押圧当接部8を設けるように構成しても良い。
【0057】
図9は、第二実施形態を示す。第二実施形態の特徴は、支持部9に軸受21を設け、該軸受21によって、回転軸7を回転自在に支持できるようにした点にある。該軸受21は筒状の小径部21aと大径部21bとから構成できる。該軸受21には、螺子孔が形成されて、該螺子孔に回転軸7が螺合する構成になっている。そして、該軸受21は、その小径部21aが支持部9に設けられた軸孔を貫通し、大径部21bが支持部9の裏面に当接するようにして、図9に示すように、支持部9に設けられる。
【0058】
前記回転軸7を鉄、又はその合金で製造し、且つ、前記軸受21を真鍮で製造するように、軸受21を回転軸7の熱膨張率よりも大きな熱膨張率の素材で製造しても良い。このように素材を選択した場合、鉄よりも真鍮の熱膨張率が大きいことに基づいて以下の作用効果を奏する。即ち、回転軸7を繰り返し螺回操作することによって、該回転軸7と軸受21とが発熱した場合、当該発熱によって回転軸7が熱膨張するが、該回転軸7の体積膨張よりも大きく、軸受21の螺子孔が拡大することになって、回転軸7の雄螺子と、軸受21の螺子孔との間にクリアランスが確保される。このため、回転軸7を繰り返し螺回操作して発熱し易い状況下であっても、回転軸7のスムーズな螺回操作が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ゴルフクラブシャフトの角度調節具の斜視図である。(本発明の第一実施形態)
【図2】押圧当接部を背面側から観た状態の斜視図である。(本発明の第一実施形態)
【図3】ゴルフクラブシャフトの角度調節具の斜視図である。(本発明の第一実施形態)
【図4】押圧当接部を前面側から観た状態の斜視図である。(本発明の第一実施形態)
【図5】押圧当接部の表面にゴルフクラブシャフトが当接した状態の一部側面図である。(本発明の第一実施形態)
【図6】押圧受部の側面を示す側面図である。(本発明の第一実施形態)
【図7】押圧受部でゴルフクラブシャフトを受け止めた状態を示す図である。(本発明の第一実施形態)
【図8】ゴルフクラブシャフトの角度調節具の斜視図である。(本発明の第一実施形態)
【図9】ゴルフクラブシャフトの角度調節具の斜視図である。(本発明の第二実施形態)
【図10】背景技術の角度調節具を示す斜視図である。(背景技術)
【図11】図10の一部を拡大して示す図である。(背景技術)
【符号の説明】
【0060】
1 ゴルフクラブシャフトの角度調節具
2 基台
3 押圧部
4 押圧受部
7 回転軸
8 押圧当接部
10 操作部
11 押圧面
16 受け溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブシャフトのベント部分の曲げ角度を調節するためのゴルフクラブシャフトの角度調節具であって、
基台と、該基台に設けられた2つの押圧受部と、これら2つの押圧受部間に向けて進退可能に該基台に設けられた押圧部とを備え、
前記押圧受部には、前記ゴルフクラブシャフトが当接する受け溝が形成され、
該シャフトを前記受け溝に当接させた状態で、前記ベント部分を前記押圧部で押圧することによって、2つの押圧受部間でベント部分に曲げ力を加えるようにしたことを特徴とするゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項2】
前記押圧受部を多面体で形成して前記基台に回転可能に設け、該多面体の各面に前記受け溝を形成すると共に、各面に形成された受け溝の軸芯の傾きを互いに異ならせたことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項3】
前記押圧受部の配置位置は、前記基台上おいて前記押圧部の進退方向とほぼ直交する方向において位置調整可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項4】
前記押圧受部は、前記基台に対して接近又は離間する方向へ位置調整可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項5】
前記押圧部には、前記ベント部分に当接する湾曲面状の押圧面が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項6】
前記押圧部には、前記ベント部分に当接するほぼ平坦な押圧面が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項7】
前記押圧部は、前記クラブシャフトよりも軟質の素材で形成されることにより、前記クラブシャフトとの当接によって変形可能であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のゴルフクラブシャフトの角度調整具。
【請求項8】
前記押圧面には、前記ゴルフクラブシャフトの一部が嵌り込む溝が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項9】
前記押圧部は、前記基台に設けられた支持部に支持された回転軸と、軸孔が形成されると共に該軸孔に該回転軸の先端が回転自在に嵌合されることにより該回転軸の先端に着脱自在に取り付けられた押圧当接部とから構成され、該押圧当接部には前記押圧面が形成され、
前記回転軸の回転量を調整することにより、前記回転軸の進退量を調節して前記ベント部分に加える押圧力を調節できることを特徴とする請求項5乃至請求項7の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項10】
前記押圧当接部は、硬質樹脂で形成されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項1】
ゴルフクラブシャフトのベント部分の曲げ角度を調節するためのゴルフクラブシャフトの角度調節具であって、
基台と、該基台に設けられた2つの押圧受部と、これら2つの押圧受部間に向けて進退可能に該基台に設けられた押圧部とを備え、
前記押圧受部には、前記ゴルフクラブシャフトが当接する受け溝が形成され、
該シャフトを前記受け溝に当接させた状態で、前記ベント部分を前記押圧部で押圧することによって、2つの押圧受部間でベント部分に曲げ力を加えるようにしたことを特徴とするゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項2】
前記押圧受部を多面体で形成して前記基台に回転可能に設け、該多面体の各面に前記受け溝を形成すると共に、各面に形成された受け溝の軸芯の傾きを互いに異ならせたことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項3】
前記押圧受部の配置位置は、前記基台上おいて前記押圧部の進退方向とほぼ直交する方向において位置調整可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項4】
前記押圧受部は、前記基台に対して接近又は離間する方向へ位置調整可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項5】
前記押圧部には、前記ベント部分に当接する湾曲面状の押圧面が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項6】
前記押圧部には、前記ベント部分に当接するほぼ平坦な押圧面が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項7】
前記押圧部は、前記クラブシャフトよりも軟質の素材で形成されることにより、前記クラブシャフトとの当接によって変形可能であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のゴルフクラブシャフトの角度調整具。
【請求項8】
前記押圧面には、前記ゴルフクラブシャフトの一部が嵌り込む溝が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項9】
前記押圧部は、前記基台に設けられた支持部に支持された回転軸と、軸孔が形成されると共に該軸孔に該回転軸の先端が回転自在に嵌合されることにより該回転軸の先端に着脱自在に取り付けられた押圧当接部とから構成され、該押圧当接部には前記押圧面が形成され、
前記回転軸の回転量を調整することにより、前記回転軸の進退量を調節して前記ベント部分に加える押圧力を調節できることを特徴とする請求項5乃至請求項7の何れか1項に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【請求項10】
前記押圧当接部は、硬質樹脂で形成されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のゴルフクラブシャフトの角度調節具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−125826(P2008−125826A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314365(P2006−314365)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(303011275)株式会社ジャパーナ (43)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(303011275)株式会社ジャパーナ (43)
【Fターム(参考)】
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