説明

ゴルフクラブシャフト及びその製造方法

【課題】シャフト長手方向の重量バランスを再現性良く容易に設定でき、低コストで、耐久性が高いゴルフクラブシャフト及びその製造方法を得る。
【解決手段】繊維強化樹脂からなる中空筒状のシャフト本体と、該シャフト本体の筒状空間に設けられた重量付加用筒状体とを有し、前記重量付加用筒状体の外径側の少なくとも一部は、前記シャフト本体の内壁の埋没凹円筒部内に埋没されていて、前記重量付加用筒状体の手元側円筒端面と前記シャフト本体の埋没凹円筒部の手元側円筒端面が当接していることを特徴とするゴルフクラブシャフト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン製のゴルフクラブシャフト(カーボンシャフト)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、カーボンシャフトの重心位置は、スチールシャフトの重心位置よりも手元側(バット側)にあることが知られている。近年、スチールシャフトのフィーリングをカーボンシャフトに求めて、カーボンシャフトの重心位置(バランスポイント)を先端側に移動させる試みがなされている。カーボンシャフトの重心位置を先端側に移動させるためには、先端側(チップ側)に巻き付ける層の数を増やしてシャフト先端部の重量を増大させることが考えられる。ところがこの構成では、シャフト先端部の剛性が高くなり、キックポイントの位置が従来のカーボンシャフトのそれと大きく異なって、ボールの打ち出し条件に影響を及ぼすという問題が発生する。
【0003】
このような問題を解決するために、ゴルフクラブシャフトの重量バランスの調整を図るための様々な工夫が提案されている。例えば特許文献1には、金属繊維又は金属粉末を含有させた金属含有プリプレグをシャフト先端部の内層に巻回して加熱硬化したゴルフクラブシャフトが開示されている。また特許文献2には、シャフト先端部の内層に金属コアチューブを接着したゴルフクラブシャフトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−120696号公報
【特許文献2】米国特許公開2006/0046867A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載のゴルフクラブシャフトにあっては、金属含有プリプレグをシャフト長手方向の所定の位置に位置決めして巻回するため、その位置調整が難しく再現性も悪い。また、金属含有プリプレグは高価であるため、ゴルフクラブシャフト全体が高コストとなる。
【0006】
特許文献2記載のゴルフクラブシャフトにあっては、単にシャフト先端部の内層に金属コアチューブを接着しただけであるため、スイング時あるいは打突時の衝撃により金属コアチューブがシャフト先端部の内層から剥離するおそれがあり、耐久性が悪い。
【0007】
本発明は、以上の問題意識に基づき、シャフト長手方向の重量バランス(重心位置)を再現性良く容易に設定でき、低コストで、耐久性が高いゴルフクラブシャフト及びその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のゴルフクラブシャフトは、繊維強化樹脂からなる中空筒状のシャフト本体と、該シャフト本体の筒状空間に設けられた重量付加用筒状体とを有し、前記重量付加用筒状体の外径側の少なくとも一部は、前記シャフト本体の内壁の埋没凹円筒部内に埋没されていて、前記重量付加用筒状体の手元側円筒端面と前記シャフト本体の埋没凹円筒部の手元側円筒端面が当接している(シャフト長手方向に突き合わされている)ことを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、例えば、重量付加用筒状体をシャフト本体の先端側の内壁の埋没凹円筒部内に埋没させるだけで、ゴルフクラブシャフトの重心位置をシャフト先端側にシフトして、スチールシャフトのフィーリングに近いカーボン製ゴルフクラブシャフトを得ることができる。また、重量付加用筒状体は汎用部品を用いることができるため、低コストである。そして、重量付加用筒状体がシャフト本体の埋没凹円筒部に埋没し、かつ重量付加用筒状体の手元側円筒端面とシャフト本体の埋没凹円筒部の手元側円筒端面が当接している(シャフト長手方向に突き合わされている)ため、スイング時あるいは打突時の衝撃が加わっても重量付加用筒状体がシャフト本体から手元側に抜けることがなく、耐久性が高い。
【0010】
本発明のゴルフクラブシャフトは、その一態様では、前記重量付加用筒状体の先端側円筒端面が、前記シャフト本体の先端側端面に露出している。この構成によれば、シャフト本体の先端側端面を目視することでシャフト先端側に重量付加用筒状体が埋没しているのを確認することができる。また、重量付加用筒状体がゴルフクラブシャフトの重心位置をシャフト先端側にシフトする作用を顕著に発現することができる。
【0011】
本発明のゴルフクラブシャフトは、別の態様では、前記重量付加用筒状体の先端側円筒端面が、前記シャフト本体の埋没凹円筒部の先端側円筒端面に当接している。この構成によれば、スイング時あるいは打突時の衝撃が加わっても重量付加用筒状体がシャフト本体から手元側に抜けることがないだけでなく、さらにシャフト本体から先端側に抜けるのを確実に防止することができる。
【0012】
前記シャフト本体は、未硬化熱硬化性樹脂プリプレグを複数層巻回し熱硬化させて形成したFRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)製とすることができる。
【0013】
この場合、前記重量付加用筒状体は、該重量付加用筒状体の上層に位置する、長繊維方向がシャフト長手方向と平行をなす0°プリプレグ層によって覆われていることが好ましい。この構成によれば、シャフト製造時には重量付加用筒状体の上層にプリプレグを巻回しやすくなり、シャフト完成時には重量付加用筒状体とその上層に位置する繊維強化樹脂層との結合強度を高めることができる。
【0014】
前記重量付加用筒状体の手元側円筒端面と前記シャフト本体の埋没凹円筒部の手元側円筒端面との径方向の当接長は、0.05mm〜0.5mmの範囲内とすることが好ましい。この当接長が0.05mmより小さいと、スイング時あるいは打突時の衝撃が加わったときに重量付加用筒状体がシャフト本体から手元側に抜けるおそれが生じる。この当接長が0.5mmより大きいと、シャフト本体が薄くなりすぎ、この当接部においてシャフト本体の繊維強化樹脂層が凹んだり、切れたり折れたりするおそれが生じる。
【0015】
前記重量付加用筒状体は、金属材料から構成するのが実際的である。
【0016】
本発明のゴルフクラブシャフトの製造方法は、その一態様では、繊維強化樹脂からなる中空筒状のシャフト本体と、該シャフト本体の筒状空間に設けられた重量付加用筒状体とを有するゴルフクラブシャフトの製造方法において、先端部に、大径部との段差をもって形成した小径部を有するマンドレルを準備するステップ;前記マンドレルの小径部に、前記大径部の外径よりも大径の外径を有する重量付加用筒状体を嵌めるステップ;前記重量付加用筒状体を嵌めたマンドレルに未硬化熱硬化性樹脂プリプレグを複数層巻回して熱硬化させ前記シャフト本体を成形するステップ;及び前記マンドレルを引き抜いて、前記重量付加用筒状体の外径側の少なくとも一部が前記シャフト本体の内壁に形成された埋没凹円筒部に埋没され、前記重量付加用筒状体の手元側円筒端面と前記シャフト本体の埋没凹円筒部の手元側円筒端面が当接しているゴルフクラブシャフトを取り出すステップ;を有することを特徴としている。
【0017】
本発明のゴルフクラブシャフトの製造方法は、その別の態様では、繊維強化樹脂からなる中空筒状のシャフト本体と、該シャフト本体の筒状空間に設けられた重量付加用筒状体とを有するゴルフクラブシャフトの製造方法において、先端部に、大径部との段差をもって形成した小径部を有するマンドレルを準備するステップ;前記マンドレルの小径部に、前記大径部との径差を埋めるように長繊維方向がシャフト長手方向と平行をなす0°プリプレグを巻回するステップ;前記マンドレルの小径部の前記0°プリプレグ巻回円筒の先端側に、該0°プリプレグ巻回円筒の外径と略同一の外径を有する重量付加用筒状体を嵌めて、該重量付加用筒状体の手元側円筒端面と該0°プリプレグ巻回円筒を突き合わせるステップ;前記0°プリプレグ巻回円筒に前記重量付加用筒状体を突き合わせたマンドレルに未硬化熱硬化性樹脂プリプレグを複数層巻回して熱硬化させ前記シャフト本体を成形するステップ;及び前記マンドレルを引き抜いて、前記重量付加用筒状体の外径側の少なくとも一部が、前記0°プリプレグ巻回層を含むシャフト本体の内壁に形成された埋没凹円筒部に埋没され、前記重量付加用筒状体の手元側円筒端面と前記シャフト本体の埋没凹円筒部の手元側円筒端面が当接しているゴルフクラブシャフトを取り出すステップ;を有することを特徴としている。
【0018】
本発明のゴルフクラブシャフトの製造方法は、さらに別の態様では、繊維強化樹脂からなる中空筒状のシャフト本体と、該シャフト本体の筒状空間に設けられた重量付加用筒状体とを有するゴルフクラブシャフトの製造方法において、先端部に、大径部との段差をもって形成した小径部を有するマンドレルを準備するステップ;前記マンドレルの小径部に、前記大径部の外径よりも大径の外径を有し、前記小径部の軸方向長よりも短い軸方向長を有する重量付加用筒状体を嵌めるステップ;前記重量付加用筒状体を嵌めたマンドレルの小径部の先端側に前記重量付加用筒状体の大径部との径差を埋めるように長繊維方向がシャフト長手方向と平行をなす0°プリプレグを巻回するステップ;前記重量付加用筒状体に前記0°プリプレグ巻回円筒を突き合わせたマンドレルに未硬化熱硬化性樹脂プリプレグを複数層巻回して熱硬化させ前記シャフト本体を成形するステップ;及び前記マンドレルを引き抜いて、前記重量付加用筒状体の外径側の少なくとも一部が前記シャフト本体の内壁に形成された埋没凹円筒部に埋没され、前記重量付加用筒状体の手元側円筒端面と前記シャフト本体の埋没凹円筒部の手元側円筒端面が当接しており、かつ前記重量付加用筒状体の先端側円筒端面と前記シャフト本体の埋没凹円筒部の先端側円筒端面が当接しているゴルフクラブシャフトを取り出すステップ;を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シャフト長手方向の重量バランスを再現性良く容易に設定でき、低コストで、耐久性が高いゴルフクラブシャフト及びその製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係るゴルフクラブシャフトの全体を示す図である。
【図2】図1のシャフト本体と金属円筒の当接部を拡大して示す図である。
【図3】図1のゴルフクラブシャフトをシャフト先端側から見た図である。
【図4】本発明によるゴルフクラブシャフトの製造方法に用いるマンドレルの構成を示す図である。
【図5】図4のマンドレルに金属円筒を嵌めた状態を示す図である。
【図6】図5の金属円筒とマンドレルの当接部を拡大して示す図である。
【図7】シャフト本体をなすプリプレグ構造を示す図である。
【図8】未硬化熱硬化性樹脂プリプレグを熱硬化させてシャフト本体を成形した状態を示す図である。
【図9】ゴルフクラブシャフトの別の製造方法に用いるマンドレルの構成を示す図である。
【図10】図9のマンドレルに0°プリプレグ巻回円筒を形成した状態を示す図である。
【図11】図10のマンドレルに金属円筒を嵌めた状態を示す図である。
【図12】図11の金属円筒と0°プリプレグ巻回円筒とマンドレルの当接部を拡大して示す図である。
【図13】シャフト本体をなすプリプレグ構造を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係るゴルフクラブシャフトの全体を示す図である。
【図15】図14のシャフト本体と金属円筒の当接部を拡大して示す図である。
【図16】図9のマンドレルに金属円筒を嵌めた状態を示す図である。
【図17】図16のマンドレルに0°プリプレグ巻回円筒を形成した状態を示す図である。
【図18】図17の0°プリプレグ巻回円筒と金属円筒とマンドレルの当接部を拡大して示す図である。
【図19】シャフト本体をなすプリプレグ構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態1)
図1ないし図3は、本発明の実施の形態1に係るゴルフクラブシャフト100を示している。このゴルフクラブシャフト100は、繊維強化樹脂からなる中空筒状のシャフト本体10と、このシャフト本体10の先端側端部に設けられた金属円筒(重量付加用筒状体)20とを有している。シャフト本体10はテーパ状に形成され、その先端小径側(チップ側)から手元大径側(バット側)に向かって漸次外径が大きくなっている。シャフト本体10の先端側端部にはクラブヘッド(図示せず)が装着され、シャフト本体10の手元側端部にはグリップ(図示せず)が装着される。
【0022】
シャフト本体10は、未硬化熱硬化性樹脂プリプレグを複数層巻回し熱硬化させて形成したFRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)製である。金属円筒20を構成する材料は、例えば鉄、アルミニウム、タングステン等が挙げられるが、重量を付加できる物質であれば良く、これらに限られるものではない。
【0023】
シャフト本体10の先端側端部に設けられた金属円筒20は、ゴルフクラブシャフト100の重心位置(バランスポイント)をシャフト先端側にシフトする作用を持つ。一般的に、カーボンシャフトの重心位置はスチールシャフトの重心位置よりも手元側にあるので、金属円筒20の作用によりゴルフクラブシャフト100の重心位置をシャフト先端側にシフトすることができ、スチールシャフトのフィーリングに近いカーボン製ゴルフクラブシャフト100を得ることができる。
【0024】
図2に示すように、シャフト本体10の内壁11の先端側端部には、埋没凹円筒部12が形成されている。この埋没凹円筒部12内には金属円筒20の外径側の一部が埋没され、金属円筒20の手元側円筒端面21と埋没凹円筒部12の手元側円筒端面13とがシャフト長手方向に突き合わされて当接している。これにより、スイング時あるいは打突時の衝撃が加わっても金属円筒20がシャフト本体10から手元側に抜けることがなく、ゴルフラブシャフト100の耐久性を高めることができる。シャフト本体10の先端側端部にはクラブヘッド(図示せず)が装着されているため、スイング時あるいは打突時の衝撃が加わっても金属円筒20がシャフト本体10から先端側に抜けることはない。
【0025】
金属円筒20の手元側円筒端面21と埋没凹円筒部12の手元側円筒端面13の当接長Aは、0.05mm〜0.5mmの範囲内とすることが好ましい。この当接長Aが0.05mmより小さいと、スイング時あるいは打突時の衝撃が加わったときに金属円筒20がシャフト本体10から手元側に抜けるおそれが生じる。この当接長Aが0.5mmより大きいと、シャフト本体10が薄くなりすぎ、金属円筒20の手元側円筒端面21と埋没凹円筒部12の手元側円筒端面13の当接部においてシャフト本体10の繊維強化樹脂層が凹んだり、切れたり折れたりするおそれが生じる。
【0026】
図3に示すように、金属円筒20の先端側円筒端面22は、シャフト本体10のシャフト先端側端面14に露出している。これにより、シャフト本体10のシャフト先端側端面14を目視することでシャフト先端側に金属円筒20が埋没しているのを確認することができる。また、金属円筒20がゴルフクラブシャフト100の重心をシャフト先端側にシフトする作用を顕著に発現することができる。
【0027】
続いて、図4ないし図8を参照して、以上のように構成されたゴルフクラブシャフト100の製造方法を説明する。
【0028】
まず、図4に示すように、手元側から先端側に向けて縮径するテーパ状の大径部31と、この大径部31の最も小径な先端部31aより小径の円柱状(一定径)の小径部32と、この大径部31と小径部32とを段差をもって接続する段差接続部33とを有するマンドレル30を準備する。小径部32の軸方向長は金属円筒20の軸方向長と略同一である。
【0029】
次いで、図5に示すように、マンドレル30の小径部32に、大径部31の最も小径部32側の先端部31aの外径よりも大径の外径を有する金属円筒20を嵌める。この状態では、図6に拡大して示すように、金属円筒20の内径部23がマンドレル30の小径部32に最小のクリアランスで嵌まっており、金属円筒20の手元側円筒端面21が段差接続部33を越えて、金属円筒20の外径部24とマンドレル30の大径部31の間に径方向の段差が生じている。
【0030】
次いで、図7に示すように、金属円筒20及びマンドレル30の大径部31の外周面に接着剤を塗布し、未硬化熱硬化性樹脂プリプレグPを複数層巻回する。具体的には、金属円筒20を嵌めたマンドレル30に対して、下層から順に、金属円筒被覆プリプレグP1と、バイアスプリプレグP2、P3と、ストレートプリプレグP4と、先端補強プリプレグP5とを巻回する。金属円筒被覆プリプレグP1は、長繊維方向がシャフト長手方向と平行をなす0°プリプレグであり、マンドレル30の先端側に金属円筒20の外径部24を覆って巻回される。バイアスプリプレグP2、P3は、長繊維方向がシャフト長手方向に対して±45°をなし、マンドレル30の全長に巻回される。ストレートプリプレグP4は、長繊維方向がシャフト長手方向と平行をなし、マンドレル30の全長に巻回される。先端補強プリプレグ(三角プリプレグ)P5は、長繊維方向がシャフト長手方向と平行をなし、マンドレル30の先端側に巻回される。全長層であるバイアスプリプレグP2、P3及びストレートプリプレグP4は、マンドレル30に巻回したときに同じ巻数になるように、手元大径側から先端小径側に向かって狭くなる台形状に形成されている。
【0031】
次いで、図8に示すように、金属円筒20を嵌めたマンドレル30に巻回した未硬化熱硬化性樹脂プリプレグPを熱硬化させてシャフト本体10を成形する。すると、未硬化熱硬化性樹脂プリプレグPが熱硬化したプリプレグ巻回層が金属円筒20の外径部24とマンドレル30の大径部31の間の径方向の段差部に入り込んで、埋没凹円筒部12及び手元側円筒端面13が形成される。
【0032】
最後に、マンドレル30を手元側に引き抜くと、図1ないし図3で説明したような、金属円筒20の外径側の一部がシャフト本体10の埋没凹円筒部12に埋没され、金属円筒20の手元側円筒端面21とシャフト本体10の埋没凹円筒部12の手元側円筒端面13が当接してシャフト長手方向に突き合わされたゴルフクラブシャフト100が完成する。
【0033】
金属円筒20の外径部24を、長繊維方向がシャフト長手方向と平行をなす0°プリプレグである金属円筒被覆プリプレグP1で覆うことにより、シャフト製造時には金属円筒20の上層に未硬化熱硬化性樹脂プリプレグPを巻回しやすくなり、シャフト完成時には金属円筒20とその上層に位置する繊維強化樹脂からなるシャフト本体10との結合強度を高めることができる。金属円筒被覆プリプレグP1を除いた未硬化熱硬化性樹脂プリプレグPの構成には自由度があり、種々の設計変更が可能である。
【0034】
図9ないし図13を参照して、ゴルフクラブシャフト100の別の製造方法を説明する。
【0035】
まず、図9に示すように、図4の構成において、小径部32の軸方向長を金属円筒20の軸方向長よりも長くしたマンドレル30を準備する。
【0036】
次いで、図10に示すように、マンドレル30の小径部32に接着剤を塗布し、大径部31との径差を埋めるように(段差接続部33を埋めるように)、長繊維方向がシャフト長手方向と平行をなす0°プリプレグを巻回して0°プリプレグ巻回円筒40を形成する。0°プリプレグ巻回円筒40の外径は金属円筒20の外径と略同一である。
【0037】
次いで、図11に示すように、マンドレル30の小径部32の0°プリプレグ巻回円筒40の先端側に金属円筒20を嵌める。この状態では、図12に拡大して示すように、金属円筒20の内径部23がマンドレル30の小径部32に最小のクリアランスで嵌まっており、金属円筒20の手元側円筒端面21が0°プリプレグ巻回円筒40の先端側円筒端面41に突き合わされる。マンドレル30の大径部31の先端部31aと、0°プリプレグ巻回円筒40の外径部42と、金属円筒20の外径部24との間には段差が生じていない。
【0038】
次いで、図13に示すように、金属円筒20及びマンドレル30の大径部31の外周面に接着剤を塗布し、図7と同様の未硬化熱硬化性樹脂プリプレグP(金属円筒被覆プリプレグP1、バイアスプリプレグP2、P3、ストレートプリプレグP4、先端補強プリプレグP5)を複数層巻回する。
【0039】
次いで、0°プリプレグ巻回円筒40に金属円筒20を突き合わせたマンドレル30に巻回した未硬化熱硬化性樹脂プリプレグPを熱硬化させてシャフト本体10を成形する。すると、0°プリプレグ巻回円筒40及び未硬化熱硬化性樹脂プリプレグPが熱硬化したプリプレグ巻回層が金属円筒20の手元側円筒端面21よりも手元側に入り込んで、埋没凹円筒部12及び手元側円筒端面13が形成される。
【0040】
最後に、マンドレル30を手元側に引き抜くと、図1ないし図3で説明したような、金属円筒20の外径側の一部がシャフト本体10の埋没凹円筒部12に埋没され、金属円筒20の手元側円筒端面21とシャフト本体10の埋没凹円筒部12の手元側円筒端面13が当接してシャフト長手方向に突き合わされたゴルフクラブシャフト100が完成する。
【0041】
(実施の形態2)
図14、図15は、本発明の実施の形態2に係るゴルフクラブシャフト200を示している。実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0042】
図14に示すように、ゴルフクラブシャフト200は、繊維強化樹脂からなる中空筒状のシャフト本体10と、このシャフト本体10の先端側端部よりやや手元側(先端側端部と手元側端部の間)に設けられた金属円筒(重量付加用筒状体)20とを有している。図15に示すように、シャフト本体10の内壁11の先端側端部よりやや手元側(先端側端部と手元側端部の間)には、埋没凹円筒部12が形成されている。この埋没凹円筒部12内には、金属円筒20の外径側の一部が埋没され、金属円筒20の手元側円筒端面21と埋没凹円筒部12の手元側円筒端面13とがシャフト長手方向に突き合わされて当接しており、かつ金属円筒20の先端側円筒端面22と埋没凹円筒部12の先端側円筒端面15とがシャフト長手方向に突き合わされて当接している。
【0043】
図6、図9、及び図16ないし図18を参照して、ゴルフクラブシャフト200の製造方法を説明する。
【0044】
まず、図9に示すように、図4の構成において、小径部32の軸方向長を金属円筒20の軸方向長よりも長くしたマンドレル30を準備する。
【0045】
次いで、図16に示すように、マンドレル30の小径部32に、大径部31の先端部31aの外径よりも大径の外径を有する金属円筒20を嵌める。この状態では、図6に拡大して示すように、金属円筒20の内径部23がマンドレル30の小径部32に最小のクリアランスで嵌まっており、金属円筒20の手元側円筒端面21が段差接続部33を越えて、金属円筒20の外径部24とマンドレル30の大径部31の間に径方向の段差が生じている。
【0046】
次いで、図17に示すように、マンドレル30の小径部32の金属円筒20の先端側に接着剤を塗布し、金属円筒20の外径部24との径差を埋めるように、長繊維方向がシャフト長手方向と平行をなす0°プリプレグを巻回して0°プリプレグ巻回円筒50を形成する。この状態では、図18に拡大して示すように、0°プリプレグ巻回円筒50の手元側円筒端面51が金属円筒20の先端側円筒端面22に突き合わされる。金属円筒20の外径部24と0°プリプレグ巻回円筒50の外径部52との間には段差が生じていない。
【0047】
次いで、図19に示すように、金属円筒20及びマンドレル30の大径部31の外周面に接着剤を塗布し、図7、図13と同様の未硬化熱硬化性樹脂プリプレグP(金属円筒被覆プリプレグP1、バイアスプリプレグP2、P3、ストレートプリプレグP4、先端補強プリプレグP5)を複数層巻回する。
【0048】
次いで、金属円筒20に0°プリプレグ巻回円筒50を突き合わせたマンドレル30に巻回した未硬化熱硬化性樹脂プリプレグPを熱硬化させてシャフト本体10を成形する。すると、未硬化熱硬化性樹脂プリプレグPが熱硬化したプリプレグ巻回層が金属円筒20の外径部24とマンドレル30の大径部31の間の径方向の段差部に入り込んで、埋没凹円筒部12及び手元側円筒端面13が形成される。また、0°プリプレグ巻回円筒50及び未硬化熱硬化性樹脂プリプレグPが熱硬化したプリプレグ巻回層が金属円筒20の先端側円筒端面22よりも先端側に入り込んで、埋没凹円筒部12及び先端側円筒端面15が形成される。
【0049】
最後に、マンドレル30を手元側に引き抜くと、図14、図15で説明したような、金属円筒20の外径側の一部がシャフト本体10の埋没凹円筒部12に埋没され、金属円筒20の手元側円筒端面21とシャフト本体10の埋没凹円筒部12の手元側円筒端面13が当接してシャフト長手方向に突き合わされ、かつ金属円筒20の先端側円筒端面22と埋没凹円筒部12の先端側円筒端面15とが当接してシャフト長手方向に突き合わされたゴルフクラブシャフト200が完成する。
【0050】
以上のように、本実施の形態1、2によれば、金属円筒(重量付加用筒状体)20をシャフト本体10の先端側の内壁11の埋没凹円筒部12内に埋没させるだけで、ゴルフクラブシャフト100、200の重心位置をシャフト先端側にシフトして、スチールシャフトのフィーリングに近いカーボン製ゴルフクラブシャフト100、200を得ることができる。また、金属円筒20は汎用部品を用いることができるため、低コストである。そして、金属円筒20がシャフト本体10の埋没凹円筒部12に埋没し、かつ金属円筒20の手元側円筒端面21とシャフト本体10の埋没凹円筒部12の手元側円筒端面13が当接している(シャフト長手方向に突き合わされている)ため、スイング時あるいは打突時の衝撃が加わっても金属円筒20がシャフト本体10から手元側に抜けることがなく、ゴルフクラブシャフト100、200の耐久性を高めることができる。
【0051】
以上の実施形態1、2では、金属円筒(重量付加用筒状体)20をシャフト本体10の先端側の内壁11の埋没凹円筒部12内に埋没させることで、ゴルフクラブシャフト100、200の重心位置をシャフト先端側にシフトさせている。しかし、金属円筒(重量付加用筒状体)20を埋没させる位置はシャフト本体10の先端側に限定されず、シャフト本体10の長手方向の任意の位置(例えばシャフト後端側)とすることができる。これにより、ゴルフクラブシャフト100、200のシャフト長手方向の重量バランスを自在に再現良く容易に設定することができる。
【0052】
以上の実施の形態1、2では、マンドレル30の小径部32を円柱形状とし、金属円筒20を円筒形状としているが、マンドレル30の小径部32を先端側に向かって縮径するテーパ形状とし、金属円筒20の外径部24をこれに合わせたテーパ形状とすることも可能である。
【0053】
以上の実施の形態1、2では、シャフト本体を、未硬化熱硬化性樹脂プリプレグを複数層巻回し熱硬化させて形成したFRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)製とした場合を例示して説明したが、本発明は、シャフト本体をフィラメントワインディング法によって製造した場合にも同様に適用可能である。
【0054】
以上の実施の形態1、2では、重量付加用筒状体として金属円筒を用いた場合を例示して説明したが、金属円筒に代えて、例えばセラミック製の円筒を用いることもできる。
【符号の説明】
【0055】
100 200 ゴルフクラブシャフト
10 シャフト本体
11 内壁
12 埋没凹円筒部
13 手元側円筒端面
14 シャフト先端側端面
15 先端側円筒端面
20 金属円筒(重量付加用筒状体)
21 手元側円筒端面
22 先端側円筒端面
23 内径部
24 外径部
30 マンドレル
31 大径部
31a 先端部
32 小径部
33 段差接続部
40 0°プリプレグ巻回円筒
41 先端側円筒端面
42 外径部
50 0°プリプレグ巻回円筒
51 手元側円筒端面
52 外径部
P 未硬化熱硬化性樹脂プリプレグ
P1 金属円筒被覆プリプレグ
P2 P3 バイアスプリプレグ
P4 ストレートプリプレグ
P5 先端補強プリプレグ(三角プリプレグ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂からなる中空筒状のシャフト本体と、該シャフト本体の筒状空間に設けられた重量付加用筒状体とを有し、
前記重量付加用筒状体の外径側の少なくとも一部は、前記シャフト本体の内壁の埋没凹円筒部内に埋没されていて、前記重量付加用筒状体の手元側円筒端面と前記シャフト本体の埋没凹円筒部の手元側円筒端面が当接していることを特徴とするゴルフクラブシャフト。
【請求項2】
請求項1記載のゴルフクラブシャフトにおいて、前記重量付加用筒状体の先端側円筒端面は、前記シャフト本体の先端側端面に露出しているゴルフクラブシャフト。
【請求項3】
請求項1記載のゴルフクラブシャフトにおいて、前記重量付加用筒状体の先端側円筒端面は、前記シャフト本体の埋没凹円筒部の先端側円筒端面に当接しているゴルフクラブシャフト。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載のゴルフクラブシャフトにおいて、前記シャフト本体は、未硬化熱硬化性樹脂プリプレグを複数層巻回し熱硬化させてなるゴルフクラブシャフト。
【請求項5】
請求項4記載のゴルフクラブシャフトにおいて、前記重量付加用筒状体は、該重量付加用筒状体の上層に位置する、長繊維方向がシャフト長手方向と平行をなす0°プリプレグ層によって覆われているゴルフクラブシャフト。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載のゴルフクラブシャフトにおいて、前記重量付加用筒状体の手元側円筒端面と前記シャフト本体の埋没凹円筒部の手元側円筒端面との径方向の当接長は、0.05mm〜0.5mmであるゴルフクラブシャフト。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項記載のゴルフクラブシャフトにおいて、前記重量付加用筒状体は、金属材料からなるゴルフラブシャフト。
【請求項8】
繊維強化樹脂からなる中空筒状のシャフト本体と、該シャフト本体の筒状空間に設けられた重量付加用筒状体とを有するゴルフクラブシャフトの製造方法において、
先端部に、大径部との段差をもって形成した小径部を有するマンドレルを準備するステップ;
前記マンドレルの小径部に、前記大径部の外径よりも大径の外径を有する重量付加用筒状体を嵌めるステップ;
前記重量付加用筒状体を嵌めたマンドレルに未硬化熱硬化性樹脂プリプレグを複数層巻回して熱硬化させ前記シャフト本体を成形するステップ;及び
前記マンドレルを引き抜いて、前記重量付加用筒状体の外径側の少なくとも一部が前記シャフト本体の内壁に形成された埋没凹円筒部に埋没され、前記重量付加用筒状体の手元側円筒端面と前記シャフト本体の埋没凹円筒部の手元側円筒端面が当接しているゴルフクラブシャフトを取り出すステップ;
を有することを特徴とするゴルフクラブシャフトの製造方法。
【請求項9】
繊維強化樹脂からなる中空筒状のシャフト本体と、該シャフト本体の筒状空間に設けられた重量付加用筒状体とを有するゴルフクラブシャフトの製造方法において、
先端部に、大径部との段差をもって形成した小径部を有するマンドレルを準備するステップ;
前記マンドレルの小径部に、前記大径部との径差を埋めるように長繊維方向がシャフト長手方向と平行をなす0°プリプレグを巻回するステップ;
前記マンドレルの小径部の前記0°プリプレグ巻回円筒の先端側に、該0°プリプレグ巻回円筒の外径と略同一の外径を有する重量付加用筒状体を嵌めて、該重量付加用筒状体の手元側円筒端面と該0°プリプレグ巻回円筒を突き合わせるステップ;
前記0°プリプレグ巻回円筒に前記重量付加用筒状体を突き合わせたマンドレルに未硬化熱硬化性樹脂プリプレグを複数層巻回して熱硬化させ前記シャフト本体を成形するステップ;及び
前記マンドレルを引き抜いて、前記重量付加用筒状体の外径側の少なくとも一部が、前記0°プリプレグ巻回層を含むシャフト本体の内壁に形成された埋没凹円筒部に埋没され、前記重量付加用筒状体の手元側円筒端面と前記シャフト本体の埋没凹円筒部の手元側円筒端面が当接しているゴルフクラブシャフトを取り出すステップ;
を有することを特徴とするゴルフクラブシャフトの製造方法。
【請求項10】
繊維強化樹脂からなる中空筒状のシャフト本体と、該シャフト本体の筒状空間に設けられた重量付加用筒状体とを有するゴルフクラブシャフトの製造方法において、
先端部に、大径部との段差をもって形成した小径部を有するマンドレルを準備するステップ;
前記マンドレルの小径部に、前記大径部の外径よりも大径の外径を有し、前記小径部の軸方向長よりも短い軸方向長を有する重量付加用筒状体を嵌めるステップ;
前記重量付加用筒状体を嵌めたマンドレルの小径部の先端側に前記重量付加用筒状体の大径部との径差を埋めるように長繊維方向がシャフト長手方向と平行をなす0°プリプレグを巻回するステップ;
前記重量付加用筒状体に前記0°プリプレグ巻回円筒を突き合わせたマンドレルに未硬化熱硬化性樹脂プリプレグを複数層巻回して熱硬化させ前記シャフト本体を成形するステップ;及び
前記マンドレルを引き抜いて、前記重量付加用筒状体の外径側の少なくとも一部が前記シャフト本体の内壁に形成された埋没凹円筒部に埋没され、前記重量付加用筒状体の手元側円筒端面と前記シャフト本体の埋没凹円筒部の手元側円筒端面が当接しており、かつ前記重量付加用筒状体の先端側円筒端面と前記シャフト本体の埋没凹円筒部の先端側円筒端面が当接しているゴルフクラブシャフトを取り出すステップ;
を有することを特徴とするゴルフクラブシャフトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−110498(P2012−110498A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261707(P2010−261707)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【特許番号】特許第4880063号(P4880063)
【特許公報発行日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】