説明

ゴルフクラブシャフト

【課題】 標準的なシャフトの曲げ剛性、ねじり剛性及び整合性を振動吸収特性とともに提供できるゴルフクラブシャフトを得る。
【解決手段】 基端部12に位置する第1の端部22と先端部16からわずかに離れて位置する第2の端部24とを有する第1の部材20と、第1の部材20の第2の端部24に取り付ける第2の部材26とからゴルフクラブシャフト10を構成する。第2の部材26は、第1の部材20の第2の端部24から先端部16へ延びるように配設しており、第1の部材20の第2の端部24に結合する第1の端部28とゴルフクラブヘッド18に取り付ける第2の端部30とを有している。第1の部材20は、機械的な整合性を提供する剛性材料により形成し、第2の部材26はゴルフクラブヘッド18から伝わる望ましくない振動を吸収する振動吸収材料から形成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゴルフクラブシャフトに関するものであり、より詳細には、ゴルフボールを打撃したときに生ずる振動を減衰し、シャフトの先端部に取り付けられたクラブヘッドを安定にし、かつ、クラブヘッドに隣接するシャフト領域におけるねじり変位とシャフトの曲げを制御するように構成された2ピース構成の(two-piece)ゴルフクラブシャフトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ゴルフクラブはセットで製造されているので、クラブ間のばらつきが予測可能なパターンにおいて生ずるようにある程度の整合性を得ることは、ゴルフクラブの製造において目標となっている。ゴルフの初期においては、ほとんどはヒッコリからつくられていた木製のシャフトが、ゴルフクラブに使用されていた。ゴルフクラブのセットをこれらの木製のシャフトに合わせることは困難であった。勘の鋭いプレーヤは、適正な勘が得られるまで各クラブを個々にテストすることにより、ぴったりと合ったクラブセットを見つけることができる場合がある。
【0003】スチール製のゴルフクラブシャフトの出現により、木製のシャフトは過去のものとなった。スチールは等方性であるので、ゴルフクラブセットがプレーに特に適したものとすることができる機械的整合性(mechanical consistency)を提供することができる。
【0004】最近では、ゴルフクラブシャフトは、炭素繊維複合材から形成されており、グラファイトシャフトとして広く知られている。グラファイトシャフトは、強度が高く、シャフト、従って、ゴルフクラブを一層軽量にすることができる重量特性を発揮することができる。更に、グラファイトは、振動吸収能力が高いので、クラブがゴルフボールに衝突したときに、より柔らかい感じが得られる。ゴルフボールを打撃したときに発生する振動を吸収する炭素繊維複合シャフトの能力は、ゴルフクラブの全体的な感触(feel)を改善するうえで好都合であるだけでなく、関節炎あるいは腱炎をはじめとする種々の肉体的な不快を蒙っている者に広く評価されている。
【0005】グラファイトシャフトは一般に、樹脂含浸炭素繊維のフラッグ(flag)をマンドレルに巻き付け、樹脂を炉において適宜硬化させることによりつくられる。含浸炭素繊維のトウ(tow)をマンドレルに巻き付け、加熱してエポキシを硬化させることによりつくられるグラファイトシャフトもある。
【0006】炭素繊維複合シャフトは、これまでのスチール製シャフトと比べて一般に軽量であるが、これには種々の欠点がある。例えば、炭素繊維のシャフトは一般に、感触及び機械的特性に整合性がない。製造上の観点からすると、炭素繊維複合シャフトを利用したゴルフクラブの整合性のあるセットを製造することは、極めて困難でありかつ費用を要するものとなる。現時点では、上記した欠点を克服するシャフトを大量に製造する、コストの面で有効な方法はない。
【0007】従って、炭素繊維複合シャフトを利用することを希望する場合に、確実にプレーすることができるアイアンのセットを製造することは著しく困難である。炭素繊維複合材料には機械的不整合性が比較的あるので、これを用いてつくられるアイアンのセットは、プレー性に大きなばらつきを生ずるものとなる。かかる不整合性は、ゴルファが同じ感触と機械的特性とを有する、互いに関係のあるゴルフクラブのセットを利用することを所望する場合には、極めて望ましくないものとなる。
【0008】2ピース構成の複合ゴルフシャフトを製造することが、これまでに試みられてきた。例えば、ポンパ(Pompa)の米国特許第4,836,545号には、繊維樹脂複合体、即ち、ゴルフ産業の分野において広く使用されている語であるグラファイトから形成された、下部金属先端部と上部基端部とを有する2ピース構成の複合ゴルフシャフトが記載されている。これら2つの部分は互いに入れ子式に嵌合されて結合される。しかしながら、この米国特許に開示されている2ピース構成の複合ゴルフクラブは、所望の機械的整合性、振動減衰性、安定性及び種々のゴルファが所望する曲げ変動特性を発揮するゴルフシャフトを提供することができない。
【0009】更に、1970年代の中頃には、スチール/グラファイトシャフトを開発する試みが、パット・シモンズ(Pat Simmons)によりなされている。このシャフトは、スチールから構成された上部と、グラファイトから構成された下部とを有するものであった。下部は、ゴルフクラブの全長の約30%を占めている。しかしながら、このシモンズのシャフトは、スチールとグラファイトの特長から得られる利点を生かしていない。特に、下部の上記長さは、複合シャフトのグラファイトの負の特徴の多くを持ち込んでいるとともに、ゴルフボールの衝突力により容易に破損する構造をもたらしている。更に、下部の上記長さは、標準的なスチールシャフトが発揮する曲げ及び整合性を阻害している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】このように、多くのゴルファの要望を満たす種々の構成とするために、コストの面で有効に調整することができるようにして、標準的なスチールシャフトの曲げ剛性、ねじり剛性及び整合性を繊維強化樹脂の振動吸収特性とともに提供することができるゴルフクラブシャフトが待望されている。
【0011】本発明の目的は、かかるゴルフシャフトを提供するものである。
【0012】本発明の他の目的と利点は、本発明の実施の形態を記載する添付図面に関してなされている以下の説明から明らかになるものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明のゴルフクラブシャフトは、全てのゴルフクラブシャフトと同様に、ユーザがクラブを把持する基端部と、ゴルフクラブヘッドがシャフトに取り付けられ先端部とを有している。本発明のゴルフクラブシャフトは、ゴルフクラブシャフトの基端部に位置する第1の端部とゴルフクラブシャフトの先端部からわずかに離れて位置する第2の端部とを有する第1の部材を備えている。シャフトは更に、第1の部材の第2の端部に取り付けられた第2の部材を備えている。第2の部材は、第1の部材の第2の端部からゴルフクラブシャフトの先端部へ延びている。第2の部材は、第1の部材の第2の端部にしっかりと結合された第1の端部とゴルフクラブヘッドに最終的に取り付けられ第2の端部とを有している。第1の部材は、機械的整合性を提供する剛性材料から形成される。第2の部材は、ゴルフクラブヘッドから伝わる望ましくない振動を吸収する材料から形成されるとともに、種々の所望のねじり及び長手方向の曲げパラメータを形成するように構成することができる。ここでいう「機械的整合性を提供する剛性材料」とは、クラブセット等の複数のゴルフクラブシャフトを製造した場合、ほぼ同じ機械的特性を得ることができるように形成できる剛性材料であり、特にほぼ同じ曲げ特性が得られる剛性材料である。
【0014】本発明によればまた、第2の部材がゴルフボールを打撃したときにゴルフクラブシャフトの先端部の曲げ及びねじり剛性を制御(即ち、ゴルフクラブのねじり剛性を制御)して、ゴルフクラブシャフトの先端部に取り付けられたゴルフクラブヘッドを安定にする材料から形成されている構成のゴルフクラブシャフトが提供されている。
【0015】第2の部材は合成化学化合物またはガラス繊維強化樹脂から形成できる。ガラス繊維強化樹脂はとしては、例えば、ガラス繊維強化積層プラスチックを用いることができる。
【0016】第2の部材は炭素繊維強化樹脂から形成することができる。例えば、炭素繊維強化積層プラスチックを用いることができる。
【0017】第1の部材は金属により形成することができる。例えば、スチールから形成することができる。
【0018】第2の部材の露出長さは約5cm(約2インチ)とし、第2の部材は直径が約0.851cm乃至1.02cm(約0.335インチ乃至0.400インチ)の本体を有するように構成できる。
【0019】また、第2の部材は長さが約20cm(約8インチ)以下とし、第2の部材は中空構造とすることができる。
【0020】本発明によれば、更に、先端部と基端部とを有するゴルフクラブシャフトの製造方法が提供されている。この方法は、所定の機械的整合性を提供する第1の部材を選定し、特定のゴルフスイングに合うように選択された所定の構造特性を有する第2の部材を選定し、かつ、第2の部材の第1の端部を第1の部材の第2の端部にしっかり結合してゴルフクラブの組立を完成することにより行われる。
【0021】ここで構造特性は、ねじり剛性、曲げ剛性及び減衰よりなる群から選ばれる。
【0022】第2の部材を選定する工程は第2の部材をガラス繊維強化樹脂から製造する工程を含む。例えば、ガラス繊維強化積層プラスチックから製造する工程を含む。また、第2の部材を選定する工程は第2の部材を炭素繊維強化樹脂から製造する工程を含む。例えば、炭素繊維強化積層プラスチックから製造する工程を含む。
【0023】第1の部材はスチールから形成することができる。
【0024】より具体的なゴルフクラブシャフトは、先端部と、基端部とを有するゴルフクラブシャフトであって、ゴルフクラブシャフトの基端部に位置する第1の端部とゴルフクラブシャフトの先端部から離れて位置する第2の端部とを有する第1の部材と、第1の部材の第2の端部に取り付けられた第2の部材とを備え、第2の部材は第1の部材の第2の端部からゴルフクラブシャフトの先端部へ延びるように配設されかつ第1の部材の第2の端部にしっかりと結合された第1の端部と、ゴルフクラブヘッドに最終的に取り付けられた第2の端部とを有している。第2の部材は長さが約20cm(約8インチ)未満であり、第1の部材は機械的整合性を提供する剛性材料から形成され、第2の部材は繊維樹脂複合材から形成されている。
【0025】第2の部材はガラス繊維強化樹脂、炭素繊維強化樹脂から形成することができる。
【0026】第1の部材はスチールから形成することができる。
【0027】第2の部材の露出長さは約14cm(約51/2インチ)未満とし、第2の部材の露出長さは約5cm(約2インチ)とすることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を以下において説明する。しかしながら、開示する実施の形態は、本発明を単に例示するものであり、種々の形態で実施することができる。従って、開示する内容は、限定的に解釈されるべきではなく、単に、特許請求の範囲の解釈の根拠として及び発明を実施する態様を当業者に教示する根拠として理解されるべきである。
【0029】図1及び2について説明すると、本発明に係るゴルフクラブシャフト10が図示されている。シャフト10は、従来のゴルフクラブシャフトと略同様の形状とされており、グリップ14が取り付けられる基端部12と、ゴルフクラブヘッド18が取り付けられた先端部16とを有している。
【0030】本発明のゴルフクラブシャフト10は、第1の端部22と第2の端部24とを有する第1の部材20から構成されている。第1の部材20は、シャフト10の基端部12に位置する第1の端部22から、ゴルフクラブシャフト10の先端部16からわずかに離隔して、即ち、先端部16の上方に位置する第2の端部24へ延びるように配設されている。
【0031】第2の部材26が、第1の部材20の第2の端部24に取り付けられ、第1の部材20の第2の端部24からゴルフクラブシャフト10の先端部16へ軸線方向に延びるように配設されている。第2の部材26は、従って、第1の部材20の第2の端部24に直接取り付けられた第1の端部28と、ゴルフクラブヘッドに最終的に取り付けられた第2の端部30とを有している。
【0032】本発明のシャフト10の好ましい実施の形態においては、第2の部材26は、約5cm(約2インチ)の露出長さ、即ち、第1の部材20の第2の端部24とゴルフクラブヘッド18のホーゼル38との間で露出する第2の部材26の部分を有しており、一方、ゴルフクラブ10の残りの長さの部分は第1の部材20から構成されている。本発明の好ましい実施の形態に従って特定の長さが開示されているが、第2の部材の長さは本発明の精神から逸脱することなく、以下において説明するように変えることができる。例えば、以下において一層詳細に説明するように、露出部分は、約14cm(約51/2インチ)[組み立てたときにホーゼルと第1の部材にそれぞれ挿入される約3cm(11/4インチ)の部分を有する約20cm(8インチ)の第2の部材]未満であるのが好ましく、より好ましくは、露出部分は約2.5cm(1インチ)乃至約7.6cm(3インチ)である。
【0033】本発明の好ましい実施の形態によれば、第1の部材は標準的なゴルフシャフト等級の金属または金属マトリックス、好ましくは、炭素鋼から構成される。かくして、スチール製の第2の部材20の可撓性は、種々のゴルファのスイングに合うように選定することができる。更に、第1の部材は、本発明の精神の範囲内において種々の他の材料から製造することができるが、所定の曲げ特性を提供して機械的特徴が整合するように等方性の材料から製造するのが好ましい。
【0034】第1の部材20は、ゴルフクラブシャフト10の基端部12からゴルフクラブシャフト10の先端部16へ向けて延びるにつれて典型的なクラブシャフトと同様になるような形状と寸法に形成されている。唯一の相違は、第1の部材20がゴルフクラブシャフト10の先端部16から離隔した位置で終端することにより、第1の部材20とゴルフクラブヘッド18との間に第2の部材26を配置することができるスペースを提供することができる構成にある。実際に、本発明の好ましい実施の形態によれば、第1の部材20は、標準的なシャフトの先端部から所定の長さ部分、例えば、標準的なスチール製のゴルフシャフトから底部の約8.2cm(31/4インチ)を単に取り除くことにより形成される。
【0035】第2の部分26は、ゴルフボールに衝突したときにクラブヘッド18から伝わる振動を減衰するように選定された複合材料である。また、第2の部分26は、ゴルフボールを打撃したときにゴルフクラブシャフト10の先端部16の曲げ及びねじり剛性を制御してゴルフクラブシャフト10の先端部16に取り付けられたゴルフクラブヘッド18を安定にする材料から形成されている。合成化学化合物であるのが好ましい複合材料は、ゴルフボールに衝突したときにクラブヘッド18を安定にするとともに、種々のゴルファに合うようにゴルフクラブシャフト10の曲げ特性を変えることにより、ゴルフクラブの衝突特性を更に改善するように選定することができる。
【0036】第2の部材26は、第1の部材20を構成する管状のスチールシャフトの第2の端部24に配設された開口33に嵌合する形状と寸法に形成された雄型取り付け部材32を有している。開示の実施の形態においては、第2の部材26は、第1の部材20に配置するための雄型取り付け部材を有しているが、当業者であれば、本発明の精神の範囲内において使用することができる取り付け変形例(例えば、第2の部材に雌形取り付け部材を設ける変形例)を採用することができるものである。
【0037】本発明の好ましい実施の形態においては、取り付け部材32は、約0.851mm(約0.335インチ)の外径とすることができる。第2の部材26の残りの部分は本体34であり、ゴルフクラブシャフト(例えば、直径が約1.00乃至1.02cm(0.395−0.400インチ))の先端に隣接した位置において従来のゴルフクラブシャフトのプロファイルと合った形状に形成されている。かくして、本体34の自由端部36は、ゴルフクラブヘッド18のホーゼル38に嵌合して本発明のゴルフクラブシャフト10をクラブヘッド18に取り付けることができる形状及び寸法に形成されている。即ち、ホーゼルの開口は、第2の部材の本体の自由端部がホーゼルに挿入されてエポキシで取り付けられように、第2の部材の本体の直径よりもわずかに大きく形成されている。
【0038】雄型取り付け部材32は、第1の部材20の第2の端部24に設けられている開口33よりもわずかに小さく形成されているとともに、開口に圧縮嵌合される形状に形成されている。第1の部材20と第2の部材26との取り付け固定は、第1の部材20と第2の部材26とを連結する接合部にエポキシを被着することにより行われる。
【0039】本発明の好ましい実施の形態においては、図3に示すように、第2の部材は、カレント・ラミネイテッド・プラスチックス・インコーポレイテッド(Current Laminated Plastics, Inc.)製造の炭素繊維強化プラスチックから形成される。
【0040】この炭素繊維強化プラスチック材料は、幅が約2.4m(8フィート)で長さが約900m(1000ヤード)であり、炭素繊維が長手方向にだけ配向している炭素繊維布から形成されている。処理の一例を述べると、炭素繊維布を樹脂浴に通し、次いで炉に通して樹脂を硬化させる。次に、樹脂を被覆した布を約180m(200ヤード)の長さのロールに切断し、このロールから、シート形成機を使用して布を約2.4m(8フィート)の長さに切る。樹脂を被覆した布のこの2.4mの長さのシートを約1.3m(50インチ)の幅に切断し、約1.3cm(1/2インチ)の厚さに積み重ね、積み重ね体の寸法を約1.3m×約1.3cm×約2.4m(50インチ×1/2インチ×8フィート)とする。次いで、この積み重ねたシートを積層プレス機に入れ、加圧下で加熱して樹脂を活性化させるとともに、積み重ねたシートを約2時間プレス機内に放置する。
【0041】積層プレス機から取り出したラミネート材のブロックを約1.2m(4フィート)の長さに切り、次いで、積層された材料の細長いバーに切断する。このバーは、約1.3cm×約1.3cm×約1.2m(1/2インチ×1/2インチ×4フィート)の寸法を有し、各層はバーの長手方向と直交して延びている。次に、バーを旋盤上で回転させ、例えば直径が約1.00cm(約0.395インチ)の円筒状に機械加工する。次いで、円筒状バーの間隔のあいたセグメントの直径を、(雄型取り付け部材32を形成するために)例えば、約0.851cm(0.335インチ)に小さくする。円筒状のバーの直径が小さくなった部分は、例えば長さが約3.2cm(約11/4インチ)であり、例えば約8.2cm(約31/4インチ)の間隔で開いている。次に、円筒状のバーを、長さが約11cm(約41/2インチ)の複数の片に切断するが、切断は円筒状バーの直径が小さくなった部分の同じ端部で行われる。円筒バーから形成された個々の片は、本発明のゴルフシャフトの第2の部材26の好ましい形態を構成する。
【0042】このように、特定のゴルフスイングに合うように選択された所定の構造特性を有する第2の部材26を選定する工程と、機械的整合性を提供する第1の部材20を選定する工程と、第2の部材26の第1の端部28を第1の部材20の第2の端部24にしっかりと結合することによりゴルフクラブシャフト10の組立を完成させる工程とから本発明のゴルフシャフト10は製造する。
【0043】炭素繊維樹脂の積層されたプラスチックからは、振動が最小で、一層剛性のあるシャフトを所望するゴルファに望ましいものとすることができる著しく剛性のある第2の部材をつくることができる。ゴルフ産業界を通じてこれまで使用されていたグラファイトとは異なり、本発明に係る複合材料から形成された第2の部材は、著しく繰り返し性のある製品において特別の整合性を発揮することができる。
【0044】第2の部材26は、本発明の精神から逸脱することなく、他の繊維樹脂複合材料から形成することができる。本発明者によれば、同様の結果が、カレント・ラミネイテッド・プラスチックス・インコーポレイテッド製造のガラス繊維強化樹脂積層プラスチックであるG10から製造された第2の部材により得られることがわかった。このガラス繊維強化樹脂積層プラスチックからつくられる第2の部材は、上記した炭素繊維強化ラミネートプラスチックから製造される第2の部材と略同様の態様で製造することができる。
【0045】炭素繊維強化樹脂ラミネート素材から第2の部材を製造する特定の方法について説明したが、他の方法を、本発明の精神から逸脱することなく、第2の部材26の製造において使用することができる。例えば、炭素繊維またはガラス繊維強化の第2の部材は、射出成形、現存の中空グラファイトシャフトの製造において広く使用されているマンドレルラップあるいは樹脂ベースの製品の製造において広く使用されている他の技術により製造することができる。
【0046】簡単に上記したように、第2の部材には約5cm(約2インチ)の露出長さを形成するのが好ましい。従って、第2の部材は、長さが約3.2cm(約11/4インチ)の雄型取り付け部材32を有する約11cm(41/4インチ)の中空の円筒体として形成される。第2の部材26の自由端部36は、標準的なゴルフクラブヘッド18のホーゼル38に挿入されるように構成され、例えば、第2の部材26の約3.2cm(約11/4インチ)がホーゼル38に挿入されて、約5cm(約2インチ)の長さの部分を第2の部材の露出長さとして残す。
【0047】上記したように、第1の部材20と第2の部材26の正確な長さは、本発明の全体的な機能にとってそれほど重要ではなく、これらの長さは本発明の精神から逸脱することなく変えることができる。好ましい実施の形態においては、約11cm(41/2インチ)の長さの第2の部材26としたが、第2の部材は約20cm(約8インチ)未満の長さとすべきである。好ましい最大長さを約20cm(8インチ)としたのは、これがゴルフの場合には受け入れられる長さであるとともに、シャフトの(先端からの)最初の約20cm(8インチ)が衝突の際のプレー性(playability)を決定するという経験的な研究によるものである。実際に、約20cm(8インチ)を越えるシャフトの特性は、衝突の際のシャフトの性能に影響を及ぼしていない。
【0048】上記したように第1の部材20と第2の部材26から製造されたゴルフクラブシャフト10は、スチールシャフトの欠点を持つことなく、スチールシャフトの利点の多くを発揮することができる。特に、得られるゴルフクラブシャフト10は、多くのゴルファにとって所望されないと考えられる振動を生ずることなくスチールシャフトの整合性を発揮することができる。更に、ゴルフクラブシャフト10は、重量、バランスポイント、曲げ剛性(即ち、シャフトの曲げ)、ねじり剛性及び長手方向の剛性(即ち、シャフトの両端部からの引っ張りに対するシャフトの応答性)がスチールシャフトと同様である。従って、本発明のゴルフクラブシャフト10は、シャフトが曲がるポイントにおいてスチールの整合性を発揮するとともに、衝撃のほとんどを吸収することにより、シャフトからゴルファの手に伝わる振動を最小にすることができる繊維強化樹脂の感触とプレー性を発揮することができる。
【0049】振動試験を、上記したゴルフクラブシャフトに対して行ったところ、極めて良好な結果が得られた。試験に供したゴルフクラブシャフトは、シャフトの先端から約8cm(31/4インチ)のカット(第1の部材)と上記したようにG10から構成した約11cm(41/2インチ)の長さの中実円筒体(第2の部材)とを有するトゥルー・テンパー・ダイナミック・ゴルフS300(True Temper Dynamic Golf S300)テーパスチールシャフトを用いて構成した。第1と第2の部材は、第1の部材の第2の端部内に第2の部材の雄型取り付け部材を配置し、エポキシを使用して第1と第2の部材を互いにしっかりと結合することにより組み立てた。
【0050】試験の結果を、図4及び5に示す。図4は、完成されたスチールシャフトの振動プロファイルを示す。スチールシャフトが呈する狭いベースを持った高い振幅ピークは、大きな望ましくない振幅を示す。図5は、本発明に従って製造されたゴルフクラブシャフト10の振動プロファイルを示す。本発明のゴルフクラブシャフト10は、著しく幅広のベースを有するより低い振幅ピークを呈している。より低い振幅ピークとより広いベースは、本発明のゴルフクラブの使用により振動を明らかに少なくすることができることを示している。
【0051】本発明を好ましい実施の形態について説明したが、上記説明は本発明を限定するものではなく、特許請求の範囲に記載の本発明の精神と範囲に含まれる全ての変更及び代わりの構成を含むものである。
【0052】
【発明の効果】本発明においては、独特の構成の第1の部材と第2の部材を備えることにより、個々のゴルファの特定の要望に応じて構成されたゴルフクラブシャフトを製造することができる。特に、第2の部材は、ねじり剛性(トルク)、曲げ剛性(シャウトの曲げ)、長手方向の剛性及び減衰といったゴルフクラブの特性を変えるように、容易に変更することができる。例えば、第2の部材の材料は、ゴルフクラブの先端部において種々の整合した曲げ特性を提供するように組成することができる。従って、最適の性能を発揮するように第1の部材と第2の部材を変えることにより、本発明のシャフトの全体の感触を特定のゴルファのスイングに合わせることができる。
【0053】上記した多くの利点以外に、本発明は、グラファイトの特性を経済的な態様で取り扱うことができるという利点も有する。例えば、特定の整合した機械的特性を有するグラファイトシャフトの製造ラインが現れることを所望するとすると、何千ものシャフトを購入することを余儀なくされ、更には、互いに対して個々に試験を行ってできるだけ多くの合ったセットを試すとともに検討することになる。また、残ったシャフトは廃棄するか、損失を覚悟で売却することになる。本発明においては、スチールシャフト部材、小さな炭素繊維の第2の部材及び大きい整合性を有する炭素繊維の第2の部材を使用することにより、グラファイトの特性をより一層経済的な態様で発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るゴルフクラブシャフトを備えたゴルフクラブを示す分解図である。
【図2】ゴルフクラブの先端部を示す詳細図である。
【図3】第2の部材の部分を示す横断面図である。
【図4】振動試験の結果を示す比較チャート図である。
【図5】振動試験の結果を示す比較チャート図である。
【符号の説明】
10 ゴルフクラブシャフト
12 基端部
20 第1の部材
22 第1の端部
24 第2の端部
26 第2の部材
28 第1の端部
30 第2の端部
32 雄型取り付け部材
33 開口
34 本体
36 自由端部
38 ホーゼル

【特許請求の範囲】
【請求項1】先端部と、基端部とを有するゴルフクラブシャフトであって、前記ゴルフクラブシャフトの前記基端部に位置する第1の端部と前記ゴルフクラブシャフトの前記先端部からわずかに離れて位置する第2の端部とを有する第1の部材と、前記第1の部材の前記第2の端部に取り付けられた第2の部材とを備え、前記第2の部材は前記第1の部材の前記第2の端部から前記ゴルフクラブシャフトの前記先端部へ延びるように配設されかつ前記第1の部材の前記第2の端部にしっかり結合された第1の端部と前記ゴルフクラブヘッドに最終的に取り付けられる第2の端部とを有し、前記第1の部材は機械的整合性を提供する剛性材料から形成され、前記第2の部材は前記ゴルフクラブヘッドから伝わる望ましくない振動を吸収する振動吸収材料から形成されていることを特徴とするゴルフクラブシャフト。
【請求項2】前記第2の部材は合成化学化合物から形成されていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項3】前記第2の部材はガラス繊維強化樹脂から形成されていることを特徴とする請求項2に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項4】前記ガラス繊維強化樹脂はガラス繊維強化積層プラスチックであることを特徴とする請求項3に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項5】前記第2の部材は炭素繊維強化樹脂から形成されていることを特徴とする請求項2に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項6】前記炭素繊維強化樹脂は炭素繊維強化積層プラスチックであることを特徴とする請求項5に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項7】前記第1の部材は金属から形成されていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項8】前記第1の部材はスチールから形成されていることを特徴とする請求項7に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項9】前記第2の部材の露出長さは約5cm(約2インチ)であることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項10】前記第2の部材は直径が約0.851cm乃至1.02cm(約0.335インチ乃至0.400インチ)の本体を有することを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項11】前記第2の部材は長さが約20cm(約8インチ)以下であることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項12】前記第2の部材は中空構造であることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項13】先端部と、基端部とを有するゴルフクラブシャフトであって、前記ゴルフクラブシャフトの前記基端部に位置する第1の端部と前記ゴルフクラブシャフトの前記先端部からわずかに離れて位置する第2の端部とを有する第1の部材と、前記第1の部材の前記第2の端部に取り付けられた第2の部材とを備え、前記第2の部材は前記第1の部材の前記第2の端部から前記ゴルフクラブシャフトの先端部へ延びるように配設されかつ前記第1の部材の前記第2の端部にしっかりと結合された第1の端部と前記ゴルフクラブヘッドに最終的に取り付けられる第2の端部とを有し、前記第1の部材は機械的整合性を提供する剛性材料から形成され、前記第2の部材はゴルフボールを打撃したときに前記ゴルフクラブシャフトの前記先端部の曲げ及びねじり剛性を制御して前記ゴルフクラブシャフトの前記先端部に取り付けられた前記ゴルフクラブヘッドを安定にする材料から形成されていることを特徴とするゴルフクラブシャフト。
【請求項14】前記第2の部材は合成化学化合物から形成されていることを特徴とする請求項13に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項15】前記第2の部材はガラス繊維強化樹脂から形成されていることを特徴とする請求項14に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項16】前記ガラス繊維強化樹脂はガラス繊維強化積層プラスチックであることを特徴とする請求項15に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項17】前記第2の部材は炭素繊維強化樹脂から形成されていることを特徴とする請求項14に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項18】前記炭素繊維強化樹脂は炭素繊維強化積層プラスチックであることを特徴とする請求項17に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項19】前記第1の部材は金属から形成されていることを特徴とする請求項13に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項20】前記第1の部材はスチールから形成されていることを特徴とする請求項19に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項21】前記第2の部材の露出長さは約5cm(約2インチ)であることを特徴とする請求項13に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項22】前記第2の部材は直径が約0.851cm乃至1.02cm(約0.335インチ乃至0.400インチ)の本体を有することを特徴とする請求項13に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項23】前記第2の部材は長さが約20cm(約8インチ)以下であることを特徴とする請求項13に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項24】前記第2の部材は中空構造であることを特徴とする請求項13に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項25】先端部と基端部とを有するゴルフクラブシャフトの前記基端部に位置する第1の端部と前記ゴルフクラブシャフトの前記先端部からわずかに離れて位置する第2の端部とを有する第1の部材と、前記第1の部材の前記第2の端部に取り付けられた第2の部材とを備え、前記第2の部材は前記第1の部材の前記第2の端部から前記ゴルフクラブシャフトの前記先端部へ延びるように配設されかつ前記第1の部材の前記第2の端部にしっかりと結合された第1の端部と、ゴルフクラブヘッドに最終的に取り付けられた第2の端部とを有するゴルフクラブシャフトを製造する方法であって、機械的整合性を提供する前記第1の部材を選定する工程と、特定のゴルフスイングに合うように選択された所定の構造特性を有する前記第2の部材を選定する工程と、前記第2の部材の前記第1の端部を前記第1の部材の前記第2の端部にしっかりと結合することによりゴルフクラブの組立を完成させる工程とを備えることを特徴とする方法。
【請求項26】前記構造特性はねじり剛性、曲げ剛性及び減衰よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】前記第2の部材を選定する工程は前記第2の部材をガラス繊維強化樹脂から製造する工程を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】前記ガラス繊維強化樹脂はガラス繊維強化積層プラスチックであることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】前記第2の部材を選定する工程は前記第2の部材を炭素繊維強化樹脂から製造する工程を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項30】前記炭素繊維強化樹脂は炭素繊維強化積層プラスチックであることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】前記第1の部材はスチールから形成されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項32】先端部と、基端部とを有するゴルフクラブシャフトであって、前記ゴルフクラブシャフトの前記基端部に位置する第1の端部と前記ゴルフクラブシャフトの前記先端部から離れて位置する第2の端部とを有する第1の部材と、前記第1の部材の前記第2の端部に取り付けられた第2の部材とを備え、前記第2の部材は前記第1の部材の前記第2の端部から前記ゴルフクラブシャフトの前記先端部へ延びるように配設されかつ前記第1の部材の前記第2の端部にしっかりと結合された第1の端部と、前記ゴルフクラブヘッドに最終的に取り付けられた第2の端部とを有し、前記第2の部材は長さが約20cm(約8インチ)未満であり、前記第1の部材は機械的整合性を提供する剛性材料から形成され、前記第2の部材は繊維樹脂複合材から形成されていることを特徴とするゴルフクラブシャフト。
【請求項33】前記第2の部材はガラス繊維強化樹脂から形成されていることを特徴とする請求項32に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項34】前記第2の部材は炭素繊維強化樹脂から形成されていることを特徴とする請求項32に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項35】前記第1の部材はスチールから形成されていることを特徴とする請求項32に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項36】前記第2の部材の露出長さは約14cm(約51/2インチ)未満であることを特徴とする請求項32に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項37】前記第2の部材の露出長さは約5cm(約2インチ)であることを特徴とする請求項36に記載のゴルフクラブシャフト。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2001−87436(P2001−87436A)
【公開日】平成13年4月3日(2001.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−74299(P2000−74299)
【出願日】平成12年3月16日(2000.3.16)
【出願人】(599169704)アダムス ゴルフ アイピー リミテッド パートナーシップ (3)
【氏名又は名称原語表記】ADAMS GOLF IP,L.P.
【Fターム(参考)】