説明

ゴルフクラブシャフト

【課題】軽量で強度の向上および安定化を図ることのできるゴルフクラブシャフトを提供すること。
【解決手段】前部テーパ部22と後部テーパ部24との間に、勾配が急激に変化する中間テーパ部26を配置した先細状の芯金20に、繊維強化プリプレグを巻回して形成したゴルフクラブシャフトであって、芯金20の軸方向に対して強化繊維を+35度から+55度の範囲と−35から−55度の範囲との少なくとも一方範囲の角度で傾斜させたを積層して形成したバイアス層と、芯金20の軸方向に沿って強化繊維を配向させたプリプレグ38p,40p,42pを積層して形成したストレート層とを有する本体層を備え、バイアス層は、それぞれが中間テーパ部26の少なくとも一部を含む長さに分割された前部プリプレグ30p,32pと後部プリプレグ34p,36pとを、この中間テーパ部の位置で軸方向に重ねて巻回して形成されるゴルフクラブシャフト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回して形成したゴルフクラブシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
カーボン繊維、ガラス繊維、ボロン繊維等の強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグで形成されるゴルフクラブシャフトは、比強度、比剛性に優れている。このようなゴルフクラブシャフトは、主として、軸芯に対して強化繊維を傾斜方向とした傾斜方向プリプレグと、軸芯と平行方向とした軸長方向プリプレグと、軸芯に対して強化繊維を周方向とした周方向プリプレグとを任意に選択して芯金に巻回し、加熱焼成して形成する。
【0003】
このように形成したゴルフクラブシャフトは、巻回したそれぞれのプリプレグの強化繊維の引き揃え方向に応じて傾斜方向繊維層と軸長方向繊維層と周方向繊維層とが積層され、これらの強化繊維層を形成する強化繊維の方向および積層条件だけでなく、更に、ゴルフクラブシャフトの形状や肉厚によっても物性が大きく変化する。
【0004】
例えば、クラブヘッドを取り付ける先端側を小径部に形成し、グリップが設けられる後端側に大径部を形成し、小径部の後端部と大径部の先端部との間に、これらの小径部および大径部よりも勾配を大きく、例えば先端側と後端側との外径の差が2mm以上となる急傾斜部を形成し、しなりを大きくし、飛距離を増大することを可能としたゴルフクラブシャフトが開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、強化繊維をシャフトの軸方向に対してほぼ90度の角度で配向させたフープ層を、このフープ層を除く外径と肉厚との関係が、(外径/肉厚)≧14.0となる範囲内にのみ存在させ、シャフトの潰し強度を維持しながらシャフトの軽量化を図るゴルフクラブシャフトが開発されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3718559号公報
【特許文献2】特開2004−57673
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、先端側と後端側との外径の差が2mm以上の急傾斜部を形成したゴルフシャフトは、剛性バランスを崩さずに小型化(細身化)すると重量が増加する方向となり、逆に軽量化を図るために薄肉化すると、製造時のバラツキ、強度低下等を生じ易くなる。
【0007】
特に、傾斜方向繊維層は、勾配の変化に係わりなく、ゴルフクラブシャフトの軸長方向の全長にわたる長さのプリプレグを、互いに繊維方向が交差するように重ねた状態で芯金上に巻回する。このため、中間部位で勾配が急激に変化すると、製造時に、この勾配の変化部で強化繊維が蛇行し、繊維方向が所期の設定角度からずれ、強度のバラツキを生じ、あるいは、強度が低下し易くなる。
【0008】
また、外径と肉厚との比率が一定以上の範囲にのみフープ層を形成するゴルフクラブシャフトは、繊維強化プリプレグの繊維の方向、種類、層数等の繊維強化層の積層条件や実際の使用条件等によってシャフトに要求される潰し強度が変化するため、外径と肉厚の関係だけで強度を維持して軽量化を図ることはできない場合もある。特に、使用条件やフープ層の配置位置によっては、破損し易くなり、軽量化が図れなくなることもある。
【0009】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、外径形状の変化や負荷の作用する位置の変化による強度のバラツキを生じることなく、軽量で強度の向上および安定化を図ることのできるゴルフクラブシャフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明によると、軸方向前方部位の前部テーパ部と後方部位の後部テーパ部との間に、これらのテーパ部に対して勾配が急激に変化する中間テーパ部を配置した先細状の芯金に、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回して形成したゴルフクラブシャフトであって、前記芯金の軸方向に対して強化繊維を+35度から+55度の範囲と−35から−55度の範囲との少なくとも一方範囲の角度で傾斜させたプリプレグを積層して形成したバイアス層と、芯金の軸方向に沿って強化繊維を配向させたプリプレグを積層して形成したストレート層とを有する本体層を備え、前記バイアス層は、前記中間テーパ部の少なくとも一部に重なる長さで分割された少なくとも一方の前部プリプレグと後部プリプレグを、この中間テーパ部の位置で、前記前部プリプレグと後部プリプレグとの他方又は中間テーパ部よりも長さの長い補助プリプレグに軸方向に重ねて巻回して形成されるゴルフクラブシャフトが提供される。
【0011】
また、軸方向前方部位の前部テーパ部と後方部位の後部テーパ部との間に、これらのテーパ部に対して勾配が急激に変化する中間テーパ部を配置した先細状の芯金に、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回して形成したゴルフクラブシャフトであって、前記芯金の軸方向に対して強化繊維を+35度から+55度の範囲と−35から−55度の範囲との少なくとも一方範囲の角度で傾斜させたプリプレグを積層して形成したバイアス層と、芯金の軸方向に沿って強化繊維を配向させたプリプレグを積層して形成したストレート層とを有する本体層を備え、前記ストレート層は、前部テーパ部と後部テーパ部とにわたって連続する強化繊維を有しかつ芯金上に一周分巻回される幅に形成されたプリプレグを、一層ごとに巻回形成したゴルフクラブシャフトが提供される。
【0012】
前記本体層は、芯金の周方向に強化繊維を配向させたプリプレグを巻回して形成した周方向繊維層を有し、この周方向繊維層は、前記中間テーパ部を除き、クラブヘッドを取付ける前部テーパ部と、グリップを形成する後部テーパ部とに配置したものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
バイアス層が、前部プリプレグと後部プリプレグとの少なくとも一方を、中間テーパ部の位置で前部プリプレグと後部プリプレグとの他方又は中間テーパ部よりも長さの長い補助プリプレグに軸方向に重ねて巻回して形成されるゴルフクラブシャフトは、中間テーパ部が前部テーパ部又は後部テーパ部に対して勾配が大きく変化する場合であっても、強化繊維が蛇行したり傾斜角度が所期の位置からずれることが防止され、更に、中間テーパ部で前部プリプレグと後部プリプレグとの少なくとも一方と補助プリプレグとが重なるため、ゴルフクラブシャフトの強度の向上および軽量化を確実に図ることができる。
【0014】
また、ストレート層が、前部テーパ部と後部テーパ部とにわたって連続する強化繊維を有しかつ芯金上に一周分巻回される幅に形成されたプリプレグを、一層ごとに巻回形成したゴルフクラブシャフトは、ストレート層の強化繊維の蛇行やずれを防止し、強度の向上および軽量化を確実に図ることができる。
【0015】
また、本体層の周方向繊維層が、中間テーパ部を除き、クラブヘッドを取付ける前部テーパ部と、グリップを形成する後部テーパ部とに配置される場合には、特に勾配が緩やかな部分における必要最小限の部分でつぶれを防止して強度の向上および軽量化を確実に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるゴルフクラブシャフト10を備えたゴルフクラブ8を示す。このシャフト10は、先端部にクラブヘッド6を取付け、天然ゴムあるいは合成ゴム等の柔軟性や軟質材料で形成したグリップ4を後端部に取付けてある。図示のクラブヘッド6は、ウッドタイプに形成してあるが、これに限らず、アイアンヘッド、パターヘッド、ピッチングウェッジ、サンドウェッジ等種々のゴルフクラブに用いることが可能である。
【0017】
図2に示すように、本実施形態のシャフト10は、その全長が例えば1000〜1200mm程度の長さを有し、クラブヘッド6が取付けられる先端部に向けて全体的に外径を縮径させた先細状に形成してある。このシャフト10は、全長のほぼ1/2〜3/4程度の長さにわたる軸方向前方部位の前部テーパ部12と、全長のほぼ1/4〜1/3程度の長さにわたる後方部位の後部テーパ部14と、全長のほぼ1/20〜1/10程度の長さの中間テーパ部16とを有し、長手方向である軸長方向に貫通する内孔18が先端および後端で外方に開口する。
【0018】
このシャフト10は、クラブヘッド6を取り付ける前部テーパ部12をしなりが大きい小径構造に形成し、グリップが設けられる後部テーパ部14をグリップ性の良好な大径構造に形成してある。例えば、この前部テーパ部12の外面を、全体的に緩傾斜のテーパ面で、先端側外径を8.0〜9.0mm、後端側外径を10.0〜12.0mmに形成し、後部テーパ部14は、更に緩傾斜のテーパ面で、先端側外径を13.5〜15.0mm、後端側外径を14.5〜16.0mmの範囲に形成することが好ましい。
【0019】
このように形成される前部テーパ部12の後端部と後部テーパ部14の前端部との間には、外径の大きさに、例えば2.0〜5.0mm程度の差が形成される。そして、これらの前部テーパ部12と後部テーパ部14との間に位置する中間テーパ部16の外面を、シャフト10におけるテーパ面のうちで最も急勾配のテーパ面で形成し、前部テーパ部12と後部テーパ部14とを連結する。中間テーパ部16は、前部および後部テーパ部12,14に対して勾配が急激に変化する。この中間テーパ部16の位置、軸方向長さ、あるいは勾配を変更することにより、シャフト10全体の剛性分布を変化させることが可能である。
【0020】
また、前部テーパ部12は、クラブヘッド6を取付けるために肉厚t1に補強した厚肉部12a(長さ約100〜400mm)と、しなり感を向上させる肉厚t2の細身部12b(長さ約200〜600mm)とを有し、厚肉部12aの後端側で肉厚がt2からt1に次第に肉厚化してある。なお、しなり感を向上させるためには、細身部12bの肉厚t2を例えば1.2〜1.7mmの範囲でほぼ一定に形成すると共に、外周面を例えば0.0/1000〜6.0/1000程度(好ましくは2.0/1000〜5.0/1000程度)の緩傾斜面で形成し、クラブヘッド6に対する取付け強度を維持するために、肉厚t1は1.6mm以上とすることが好ましい。
【0021】
後部テーパ部14は、グリップ性を良好にするために、前部14aと後部14bとの勾配に僅かな差を設けてあり、前部14aの外周面を50〜300mm程度の軸方向長さにわたり、3.0/1000〜6.0/1000程度の勾配に形成し、後部14bの外周面を100〜300mm程度の軸方向長さにわたり、0.0/1000〜5.0/1000程度の勾配に形成してある。
【0022】
なお、前部14aの勾配は、後部14bの勾配より5.0/1000以内の範囲で大きくすることが好ましい。これにより、急テーパ部とのテーパの変化を小さくでき、強化繊維の蛇行を低減することができる。同様に、この前部14aと同様に、前部テーパ部12にも、細身部12bの勾配より5/1000以内の範囲で大きくした移行部12cを、細身部12bの後端側で、中間テーパ部16と隣接する部位に設け,中間テーパ部16が形成する急テーパ部との勾配の差を小さくし、強化繊維の蛇行を低減することが好ましい。
【0023】
このようなシャフト10は、上述のような勾配を外周部に形成した芯金20上に、基本的な曲げおよびねじり強度を確保した基本構造を形成するための本体層を、繊維強化プリプレグを巻回して形成し、更に、所要部位に種々の繊維強化プリプレグを巻回することで補強層が形成される。
【0024】
図3に示すように、本実施形態のシャフト10を形成する芯金20は、シャフト10の全長よりも長く、例えば約1400〜1600mmの全長を有し、繊維強化プリプレグを巻回する外周領域に、シャフト10の前部テーパ部12を形成するための前部テーパ部22と、シャフト10の後部テーパ部14を形成するための後部テーパ部24と、シャフト10の中間テーパ部16を形成するための中間テーパ部26とを有する。この芯金20の後端には、この芯金20を操作するための操作部28を配置してある。
【0025】
更に、芯金20の前部テーパ部22は、シャフトの厚肉部12aの内孔に対応した前部22aと、細身部12bの内孔に対応した後部22bとを外周部に有する。シャフト10の細身部12bに移行部12cを形成する場合には、これに対応した移行部22cをこの後部22bの後端側に配置する。また、後部テーパ部24は、シャフト10の後部テーパ部14の前部14aの内孔に対応した前部24aと後部14bの内孔に対応した後部24bとを外周部に有する。中間テーパ部26は、シャフト10の中間テーパ部16の内孔に対応した外周面に形成してある。
【0026】
前部テーパ部22の前部22aは、先端の外径を約8.0〜10.0mmの大きさに形成し、後方に向けて5.0/1000〜8.0/1000程度の勾配を形成し、この前部22aのほぼ2/3程度の中間位置で、10.0/1000〜20.0/1000程度の勾配に変化した後、外径が約8.0〜10.0mmに形成された後部22bの先端に連続する。この後部22bの勾配は、細身部12bにしなり特性を与えるために、3.0/1000〜6.0/1000程度に形成し、後部22bの後端の外径を10.0〜13.0mmの大きさに形成することが好ましい。この後部22bに移行部22cを形成する場合には、移行部22cを後部22bの全長の1/2以内(好ましくは1/3以内)の長さにわたって、この後部22bの勾配より、5/1000以内の範囲で大きな勾配に形成することが好ましい。
【0027】
また、後部テーパ部24の前部24aは、外径13.0〜15.0mmの先端から、外径14.0〜16.0mmの後端まで、3.0/1000〜6.0/1000程度の勾配で後方に延びる。この前部24aの後方に位置する後部24bは、0.0/1000〜5.0/1000の勾配で後方に延び、外径が14mm程度の大きさに形成された操作部28の円筒状部28aに連続する。
【0028】
そして、中間テーパ部26は、20.0/1000〜50.0/1000程度の勾配で形成され、前部テーパ部22の後部22b(又は移行部22c)および後部テーパ部24の前部24aに対して、勾配が急激に変化する。この勾配の急激な変化とは、これに限るものではないが、強化繊維がずれ易い、例えば勾配の差がほぼ20/1000又は25/1000以上の状態をいう。なお、上述のシャフト10を形成する場合の中間テーパ部16における勾配の差は、最大でも50/1000程度であるのが好ましい。
【0029】
図3は、このシャフト10を形成する際に、芯金20上に順に巻回される繊維強化プリプレグの配置例を示す。このシャフト10は、軸芯が芯金20の軸芯と一致した状態で形成され、強化繊維が芯金の軸芯に対して傾斜方向に配置されたバイアス層と、強化繊維が芯金20の軸芯に沿う軸長方向に配置されたストレート層とを有する本体層を全長にわたって形成し、厚肉部12aが内周側および外周側に形成される補強層により、肉厚t1に補強される。
【0030】
本体層のバイアス層は、前部バイアス層と後部バイアス層とで形成してある。前部バイアス層は、芯金20の軸芯に対して強化繊維31を+35度から+55度の範囲の傾斜方向に配向させた第1プリプレグ30pと、強化繊維33を−35から−55度の範囲の傾斜方向に配向させた第2プリプレグ32pとを、先縁部30a,32aが幅方向すなわち芯金20の軸芯に対して直交する方向に、例えば10〜20mmずらせた状態で重ね合わせた前部プリプレグを、前部テーパ部22および中間テーパ部26上に巻回して形成される。同様に、後部バイアス層は、芯金20の軸芯に対して強化繊維35を+35度から+55度の範囲の傾斜方向に配向させた第3プリプレグ34pと、強化繊維37を−35から−55度の範囲の傾斜方向に配向させた第4プリプレグ36pとを、先縁部34a,36aが幅方向に、例えば10〜20mmずらせた状態で重ね合わせた後部プリプレグを、中間テーパ部26および後部テーパ部24上に巻回して形成してある。
【0031】
これらの前部プリプレグを形成する第1,第2プリプレグ30p,32pは、芯金20の軸方向に沿って、芯金20の前部テーパ部22および中間テーパ部26に対応した長さを有し、後部プリプレグを形成する第3,第4プリプレグ34p,36pは、芯金20の軸方向に沿って、芯金20の中間テーパ部26および後部テーパ部24に対応した長さを有する。このため、前部プリプレグ30p,32pと後部プリプレグ34p,36pは、芯金20の中間テーパ部26上で、互いに重なり合い、シャフト10の中間テーパ部16を補強する。
【0032】
この中間テーパ部26における前部プリプレグ30p,32pと後部プリプレグ34p,36pとの重なり領域は、中間テーパ部26の全長にわたって形成する他、その一部であってもよい。一部に形成する場合は、中間テーパ部26の前端または後端の勾配が急激に変化する部分に重なり領域を配置し、急勾配の中間テーパ部26の全域、または、勾配が急激に変化する部位に前部バイアス層と後部バイアス層との重なり部分が形成されることにより、ねじり強度が向上し、つぶし強度の向上を図ることができる。
【0033】
なお、前部バイアス層と後部バイアス層との重なり部分を中間テーパ部26に配置することに代え、又は、これと共に、後部プリプレグ34p,36pよりも長さの短い補助プリプレグ(図示しない)を巻回してもよい。この補助プリプレグの強化繊維を軸方向に対して傾斜配置することにより、前部および後部バイアス層の重なり部を形成する場合と同様に、ねじり強度およびつぶし強度を向上することができる。この補助プリプレグを、中間テーパ部26よりも長く形成した場合には、中間テーパ部26に隣接する前後の部位でも、補助プリプレグが形成する補助バイアス層が、前部バイアス層および後部バイアス層に対する重なり部分を形成することができる。
【0034】
いずれの場合も、バイアス層の重なり部は、中間テーパ部26の前部と後部との少なくとも一方の縁部すなわち勾配変位点の軸方向の前後にわたって重なるように形成することが好ましい。これにより、ねじり剛性、強度の安定化を図ることができる。
【0035】
更に、前部プリプレグ30p,32pの後端は、芯金20の中間テーパ部26を越えて後部テーパ部24までは延びないため、勾配が急激に大きく変化する中間テーパ部36においても、強化繊維31,33がが蛇行したり傾斜角度が所期の位置からずれることが防止される。同様に、後部プリプレグ34p,36pの前端が、芯金20の中間テーパ部26を越えて前部テーパ部22までは延びないため、勾配が急激に大きく変化する中間テーパ部36においても、強化繊維35,37がが蛇行したり傾斜角度が所期の位置からずれることが防止される。これにより、勾配が急変する部位であっても、この勾配の変化部で強化繊維が蛇行し、繊維方向が所期の設定角度からずれ、強度のバラツキを生じ、あるいは、強度が低下するのが、確実に防止される。
【0036】
また、本体層のストレート層は、シャフト10の前部テーパ部12と後部テーパ部14とにわたって連続する強化繊維39,41,43を有しかつ芯金20上に一周分巻回される幅に形成された第5,第6,第7プリプレグ38p、40p、42pを、一層ごとに巻回して形成してある。ここに、一周分とは、0.9〜1.1プライ、好ましくは0.95〜1.05プライ形成する幅をいい、1プライに満たない状態すなわち巻回後に軸方向に沿う一部に僅かな隙間が形成される状態から、1プライ以上の状態すなわち軸方向に沿う一部に僅かな重なり部が形成される状態までの幅寸法を含むものである。このようなプリプレグでストレート層を形成することにより、偏肉および繊維の蛇行が防止され、強度の向上、安定化および軽量化が可能となる。
【0037】
強化繊維39を軸方向に引き揃えた第5プリプレグ38pは、芯金20の前部テーパ部22上に巻回される前部領域38aと、後部テーパ部24上に巻回される後部領域38bと、中間テーパ部26上に巻回される中間領域38cとを有し、中間領域38cには、切込み38dを形成してある。これらの前部領域38a、中間領域38cおよび後部領域38bは、それぞれ芯金22の前部テーパ部22、中間テーパ部26および後部テーパ部24上に一層分巻回される幅に形成してある。また、第6プリプレグ40pおよび第7プリプレグ42pも、第5プリプレグ38pと同様に形成してある。
【0038】
このように形成したプリプレグ38p,40p,42pは、それぞれ一層ごとすなわち一枚ずつ、巻き始め位置を周方向にずらせると共に、相対的に肉厚の厚いプリプレグを径方向の対向する位置(180度±60度の範囲で離隔した位置)に配置して、芯金20上に順に巻回する。前部テーパ部22および後部テーパ部24上では、勾配が緩やかであるため、強化繊維39,41,43が軸長方向に沿って配向され、中間領域38cでは、切込み38dが中間テーパ部26上で強化繊維39,41,43の蛇行やずれを抑制して軸長方向に配向する。これにより、本体層を形成するストレート層の強化繊維が軸長方向に引き揃えられ、強度の向上および軽量化を確実に図ることができる。特に、プリプレグ38p,40p,42p中の切込み38d,40d,42dは、巻回時に、急勾配部で強化繊維39,41,43に発生する内部応力を緩和する。
【0039】
このストレート層を形成するプリプレグ38p,40p,42pをそれぞれ巻回する際、周方向の重なり幅は、前部プリプレグ30p,32pおよび後部プリプレグ34p,36pのそれぞれの周方向の重なり幅よりも小さくし、軸長方向繊維の重なりを最小限に抑制することが好ましい。これにより、シャフト10の曲げ剛性が周方向の全体にわたって均一となり、方向性をなくし、強度の向上、安定化および軽量化が可能となる。
【0040】
また、急勾配の中間テーパ部26上では、バイアス層およびストレート層の上から例えばガラス繊維の織布で形成したスクレムシート44等の適宜の手段を用いて押えることにより、急勾配の中間テーパ部26上で、強化繊維39,41,43が移動するのを抑制することができる。
【0041】
更に、シャフト10の先端に厚肉部12aを形成するため、このような本体層の内側および外側に補強層を形成する第1,第2補強用プリプレグ46,48が、芯金20の前部22a上に巻回される。本実施形態の補強用プリプレグ46,48は、強化繊維を軸方向に引き揃えて形成してある。必要な場合には、更に、他の部位にも補強用プリプレグ(図示しない)を巻回してもよい。
【0042】
このように、芯金20上に本体層および補強層を形成したのち、最外周側から緊締テープで締付け、常法、すなわち、加熱工程、冷却工程、脱芯、緊締テープの除去、研磨、塗装等の工程を経て、図2に示すようなシャフト10が形成される。
【0043】
このように形成したシャフト10は、バイアス層が、前部プリプレグ30p,32pと後部プリプレグ34p,36pとを、中間テーパ部16の位置で軸方向に重ねて巻回して形成されることにより、中間テーパ部16が前部テーパ部12と後部テーパ部14とのそれぞれに対して勾配が大きく変化する場合であっても、強化繊維31,33,35,37が蛇行したり傾斜角度が所期の位置からずれることが防止され、更に、中間テーパ部16で前部プリプレグ30p,32pと後部プリプレグ34p,36pとが重なるため、シャフト10の強度の向上および軽量化を確実に図ることができる。
【0044】
また、本体層のバイアス層が前部バイアス層と後部バイアス層とに軸方向の前後で分割したことにより、前部プリプレグ30p,32pと後部プリプレグ34p,36pとのそれぞれの強化繊維の引張弾性率、合成樹脂含浸量、又は厚さを変えて、相対的にシャフト10の性能または特性を調整することができる。
【0045】
例えば、後部プリプレグ34p,36pの強化繊維35,37の引張弾性率を、前部プリプレグ30p,32pの強化繊維31,33よりも小さくすることにより、スイング操作中の切返し動作時の負荷を少なくすることができ、非力のプレーヤでも操作し易いシャフト10を形成することができる。また、前部バイアス層を、後部バイアス層よりも小さくすることでも、同様に、非力のプレーヤでも操作し易いシャフト10を形成することができる。
【0046】
一方、後部バイアス層の強化繊維35,37の引張弾性率、後部バイアス層を形成する後部プリプレグ34p,36pの厚さを、前部バイアス層よりも大きくすることにより、また、後部プリプレグ34p,36pの合成樹脂含浸量を前部バイアス層よりも小さく、強化繊維比率を大きくすることにより、シャフト10の後方部位におけるねじり剛性や重量等を相対的に大きくし、スイングスピードが速いプレーヤでも安定してスイング操作し易いシャフト10を形成することができる。
【0047】
なお、明らかなように、前部バイアス層と後部バイアス層とは、巻回するプリプレグの強化繊維の引張弾性率、厚さ、合成樹脂含浸量の全てを同じにしてもよい。
【0048】
また、ストレート層は、前部テーパ部12と後部テーパ部14とにわたって連続する強化繊維39,41,43を有しかつ芯金20上に一周分巻回される幅に形成されたプリプレグ38p,40p,42pを、一層ごとに巻回形成したことにより、ストレート層の強化繊維39,41,43の蛇行やずれを防止し、強度の向上および軽量化を確実に図ることができる。
【0049】
更に、中間テーパ部16の勾配または前後の勾配との差が小さい場合には、前後に分割したプリプレグ30p,32p,34p,36pに代えて、中間テーパ部16の前後にわたって連続するプリプレグを用いることができる。この連続するプリプレグの幅は、中間テーパ部16の1周にわたる巻回分または2周未満にわたる巻回分に対応した寸法に形成することが好ましいが、2周以上にわたる巻回分に対応した寸法に形成することもできる。
【0050】
いずれの場合も、シャフト10の本体層が、前部テーパ部22と後部テーパ部24との間で、これらのテーパ部に対して勾配が急激に変化する中間テーパ部26の位置で、前部プリプレグ30p,32pと後部プリプレグ34p,36pとを重ねて形成されるバイアス層と、前部テーパ部22と後部テーパ部24とにわたって連続する強化繊維39,41,43を有しかつ芯金20上に一周分巻回される幅に形成されたプリプレグ38p、40p、42pを、一層ごとに巻回形成したストレート層とを備えることにより、テーパすなわち勾配の大きな中間部におけるねじり強度と曲げ強度との両方を効率よく向上させ、強度の安定化が図れると共に、肉厚を薄くして軽量化を図ることが可能である。
【0051】
図4は、シャフト10を形成する際に、芯金20上に巻回される繊維強化プリプレグの他の配置例を示す。シャフト10および芯金20はそれぞれの軸芯が一致した状態であり、上述の配置例と同様であるため、同様な部位には同様な符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0052】
図4の配置例では、前部プリプレグ30p,32pは、前部テーパ部22から中間テーパ部26の一部に至る長さに形成され、後部プリプレグ34p,36pは、後部テーパ部24から中間テーパ部26の一部に至る長さに形成される。これらの前部および後部プリプレグ30p,32p,34p,36pは、巻き始め側から巻き終わり側の幅方向に沿って長さを次第に短く形成してある。このため、中間テーパ部26上では、長さ方向の一部においてのみ重なり、また、中間テーパ部26上に積層される層の数は巻回数の合計よりも少なくなる。この中間テーパ部26上に、前部プリプレグ30p,32pおよび後部プリプレグ34p,36pよりも軸方向長さが短く、かつ中間テーパ部26の軸方向長さよりも長い補助プリプレグ50p,52pを巻回してある。
【0053】
この補助プリプレグ50p,52pは、前部プリプレグ30p,32pおよび後部プリプレグ34p,36pと同様に、芯金20の軸芯に対して強化繊維51を+35度から+55度の範囲の傾斜方向に配向させた第1補助プリプレグ50pと、強化繊維53を−35から−55度の範囲の傾斜方向に配向させた第2補助プリプレグ52pとを、先縁部が幅方向ずらせた状態で重ね合わせて巻回される。この補助プリプレグ50p,52pは、前部および後部プリプレグと共に、本体層のバイアス層を形成し、シャフトの中間テーパ部16のねじり強度、および、つぶれ強度を向上させる。この補助プリプレグ50p,52pは、中間テーパ部26の全長にわたって巻回し、更に、前部テーパ部22および後部テーパ部24まで延びることが好ましい。
【0054】
このように前部バイアス層と後部バイアス層との重なり部を補助プリプレグ50p,52pで補強した場合でも、図3の配置例によるシャフト10のバイアス層と同様な作用効果が得られることは明らかである。
【0055】
なお、補助プリプレグ50p,52pが前部バイアス層と後部バイアス層との双方に重ねて巻回されることにより、前部バイアス層と後部バイアス層とを、互いに直接重ねて形成しなくともよい。また、前部プリプレグ30p,32pと後部プリプレグ34p,36pとの一方は、中間テーパ部26に達しない長さを有するものであってもよい。
【0056】
このようなバイアス層の上に形成するストレート層は、上述の第5,第6,第7プリプレグ38p,40p,42pに加え、第8プリプレグ54を内側すなわちバイアス層の上に巻回して形成される。
【0057】
この第8プリプレグ54は、第5,第6,第7プリプレグ38p,40p,42pと同様に、前部領域54aと後部領域54bと中間領域54cに連続した強化繊維54を軸方向に配向させ、中間領域54cには切込み54dを形成したものであるが、前部領域54aは、前部テーパ部22の後部22bに巻回される長さ、例えば前部テーパ部22の略半分の長さに形成してある。また、幅は、先側および元側で1プライ巻回する寸法に形成してある。これにより、軽量化と長手方向の曲げ剛性を段階的に変化させ、特徴のあるしなりバランスにすることができる。
【0058】
シャフト10の本体層には、更に、強化繊維が周方向に延びる周方向繊維層が形成される。
【0059】
本実施形態の周方向繊維層は、ストレート層と共に形成してあり、シャフト10の前部テーパ部12の先端側に、第9プリプレグ56pがシャフトの全長の20%以上で50%以下の長さにわたって、先側および元側で1.05〜1.20プライ、好ましくは1.1プライ形成する先側周方向繊維層と、後部テーパ部14の後端側に、第10プリプレグ58pがグリップ4(図1)と重なる位置に形成する元側周方向繊維層とを有する。この周方向繊維層は、シャフト10の軸方向の中央位置を含む中間部位、例えばシャフト10の全長のほぼ30%〜60%の範囲には形成しない。
【0060】
このように、中間部位を除くシャフト10の先端側と後端側とに周方向繊維層を形成することにより、最小限の周方向繊維層で、効率よく本体層の強度を向上し、安定化し、軽量化することができる。
【0061】
図4の配置例では、先側周方向繊維層を形成する第9プリプレグ56pは、芯金20の軸芯に対して強化繊維57を直交する方向に配向し、前部テーパ部22の先端側からシャフト10の全長の30%以上の長さを有する。また、元側周方向繊維層を形成する第10プリプレグ58pは、強化繊維59を芯金22の軸芯に対して直交する方向に配向し、後部テーパ部24の後端側から、例えばグリップ4の先側に更に100mm程度突出する長さに形成される。この第10プリプレグ58pは、グリップ4を形成する部位の全長にわたって長さを有することが好ましく、このグリップ4の先端より更に100mm程度長くする場合には、スイング操作中に手で握り締める範囲の全体の耐つぶれ強度を向上させることができるため、更に好ましい。
【0062】
第9プリプレグ56pは、ストレート層を形成する第8プリプレグ54pを巻回した後、芯金20の前部テーパ部22の先側に巻回される。また、第10プリプレグ58pは、第9プリプレグ56pの上に順に第巻回した第5,第6プリプレグ38p,40pの外側で、芯金20の後部テーパ部24の後側に巻回される。そして、この第10プリプレグ58pを巻回した後、ストレート層を形成する最後の第7プリプレグ42pを巻回し、先端側に補強用プリプレグ48が巻回される。なお、図3に示す補強用プリプレグ46と同様な補強用プリプレグを、前部プリプレグ30p,32pの巻回に先立って芯金22の前部22aに巻回し、内側にも補強層を形成することが好ましい。
【0063】
この後、巻回したプリプレグを最外周側から緊締テープで締付け、常法、すなわち、加熱工程、冷却工程、脱芯、緊締テープの除去、研磨、塗装等の工程を経て、図2に示すようなシャフト10が形成される。
【0064】
このように、中間部位を除く先側と元側とに、バイアス層およびストレート層と共に本体層を形成する周方向繊維層を配置したシャフト10は、上述のように図3との関連で説明したシャフト10による作用効果に加え、クラブヘッド6を取付ける部分およびスイング中に手で握り締める部分の特に勾配が緩やかな部分における必要最小限の部分でつぶれを防止して強度の向上および軽量化を確実に図ることができる。
【0065】
特に、先側周方向繊維層を、内側のバイアス層と外側のストレート層との間に配置し、元側周方向繊維層を、ストレート層の最外層の内側に配置したことにより、バイアス層の互いに交差する強化繊維と、周方向繊維層の周方向に延びる強化繊維と、ストレート層の軸方向に延びる強化繊維とを集中的に近接させて積層し、種々の方向の負荷に対して耐えることができ、効率よく強度を向上させることができる。
【0066】
更に、先側周方向繊維層は、シャフト10の先側からクラブヘッド6(図1)の固定位置を含むシャフトの全長の30%以上の範囲で、クラブヘッド6から受ける負荷に対する強度を増大する。元側周方向繊維層は、スイング中におけるグリップ4およびその隣接部位で、スイング中に握り締める手から受けるつぶし圧力に対する強度を増大する。そして、周方向繊維層が、キックポイントを含むシャフトの全長の30%以上にわたる範囲の中部位に形成されないことにより、シャフト10の軽量化を図ることができる。
【0067】
本体層を形成する上述の第1乃至第10プリプレグおよび第1,第2補助プリプレグは、それぞれ1層又は複数層巻回することが可能であり、必要に応じて一部を省略しあるいは追加することも可能である。また、ストレート層を形成する第9プリプレグ54pおよび先側周方向繊維層を形成する第9プリプレグ56pの長さを調整し、クラブヘッド6の取付部の強度向上や高剛性化によるキックポイントの調整をすることもできる。
【0068】
このように、本体層がバイアス層およびストレート層に加えて周方向繊維層を有する場合であっても、バイアス層が、前部テーパ部22と後部テーパ部24との間で、これらのテーパ部に対して勾配が急激に変化する中間テーパ部26の位置で、前部プリプレグ30p,32pと後部プリプレグ34p,36pとの少なくとも一方と補助プリプレグ50p,52pとを重ねて形成され、ストレート層が、前部テーパ部22と後部テーパ部24とにわたって連続する強化繊維39,41,43を有しかつ芯金20上に一周分巻回される幅に形成されたプリプレグ38p、40p、42pを、一層ごとに巻回形成されることにより、テーパすなわち勾配の大きな中間部におけるねじり強度と曲げ強度との両方を効率よく向上させ、強度の安定化が図れると共に、肉厚を薄くして軽量化を図ることが可能である。
【0069】
これらのプリプレグは、必要に応じて適宜のものを用いることができ、上述のようなゴルフクラブのシャフト10を形成する場合には、以下に例示する特性を有するものを用いることもできる。
【0070】
本体層のバイアス層を形成する第1乃至第4プリプレグ30p,32p,34p、36pは、例えば引張弾性率が230〜500GPa、強度が4000〜5500MPaの炭素繊維材料で形成した強化繊維を芯金20の軸方向に対して+35度から+55度の範囲の傾斜方向、又は、−35から−55度の範囲の傾斜方向に引き揃え、エポキシ樹脂等のマトリックス樹脂を含浸させて、樹脂含浸量を例えば18〜35重量%、厚さが0.07〜0.20mm程度のものでもよい。もちろん、上述のように、全てのプリプレグを同じに形成してもよく、更に、例えば前部と後部、上側と下側、または、全てを変えてもよい。
【0071】
第1,第2補助プリプレグ50p,52pについても、第1乃至第4プリプレグ30p,32p,34p、36pと同様なものでもよいが、これと異なるものであってもよい。
【0072】
ストレート層を形成する第5乃至第8プリプレグ38p,40p,42p,54pは、例えば引張弾性率が230〜500GPa、強度が4000〜5500MPaの炭素繊維材料で形成した強化繊維を芯金20の軸方向に対して平行な方向に引き揃え、エポキシ樹脂等のマトリックス樹脂を含浸させ、樹脂含浸量を例えば18〜35重量%、厚さが0.07〜0.20mm程度のものでもよい。各プリプレグ38p,40p,42p,54pを同じに形成してもよく、それぞれ別個に形成することも可能である。形成するストレート層の厚さに応じて、プリプレグの厚さ又は使用する枚数を変更することができる。
【0073】
周方向繊維層を形成する第9,第10プリプレグ56p,58pは、例えば引張弾性率が230〜500GPa、強度が4000〜5500MPaの炭素繊維材料で形成した強化繊維を芯金20の軸方向に対して平行な方向に引き揃え、エポキシ樹脂等のマトリックス樹脂を含浸させ、樹脂含浸量が例えば35〜50重量%、厚さが0.02〜0.05mm程度のものでもよい。先側周方向繊維層を形成する第9プリプレグ56pおよび元側周方向繊維層を形成する第10プリプレグ58pを同じに形成してもよく、それぞれ別個に形成することも可能である。形成する周方向繊維層の厚さに応じて、プリプレグの厚さ又は使用する枚数を変更することができる。
【0074】
上述の実施形態は、種々に変更することが可能であり、例えば図3に示す前部プリプレグ30p,32pおよび後部プリプレグ34p,36pに代え、図4に示す前部プリプレグ30p,32p、後部プリプレグ34p,36pおよび補助プリプレグ50p,52pを用いることも可能であり、図4に示す周方向繊維層56p,58pを図3に示すストレート層に組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるゴルフクラブシャフトを用いたゴルフクラブの全体図。
【図2】図1のゴルフクラブシャフトの断面図。
【図3】図1のゴルフクラブシャフトを形成するプリプレグの配置例を示す説明図。
【図4】プリプレグの他の配置例を示す説明図。
【符号の説明】
【0076】
10…シャフト、20…芯金、22…前部テーパ部、24…後部テーパ部、30p,32p…前部プリプレグ、34p,36p…後部プリプレグ、38p.40p,42p,54p…プリプレグ(ストレート層)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向前方部位の前部テーパ部と後方部位の後部テーパ部との間に、これらのテーパ部に対して勾配が急激に変化する中間テーパ部を配置した先細状の芯金に、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回して形成したゴルフクラブシャフトであって、
前記芯金の軸方向に対して強化繊維を+35度から+55度の範囲と−35から−55度の範囲との少なくとも一方範囲の角度で傾斜させたプリプレグを積層して形成したバイアス層と、芯金の軸方向に沿って強化繊維を配向させたプリプレグを積層して形成したストレート層とを有する本体層を備え、前記バイアス層は、前記中間テーパ部の少なくとも一部に重なる長さで分割された少なくとも一方の前部プリプレグと後部プリプレグを、この中間テーパ部の位置で、前記前部プリプレグと後部プリプレグとの他方又は中間テーパ部よりも長さの長い補助プリプレグに軸方向に重ねて巻回して形成されることを特徴とするゴルフクラブシャフト。
【請求項2】
軸方向前方部位の前部テーパ部と後方部位の後部テーパ部との間に、これらのテーパ部に対して勾配が急激に変化する中間テーパ部を配置した先細状の芯金に、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回して形成したゴルフクラブシャフトであって、
前記芯金の軸方向に対して強化繊維を+35度から+55度の範囲と−35から−55度の範囲との少なくとも一方範囲の角度で傾斜させたプリプレグを積層して形成したバイアス層と、芯金の軸方向に沿って強化繊維を配向させたプリプレグを積層して形成したストレート層とを有する本体層を備え、前記ストレート層は、前部テーパ部と後部テーパ部とにわたって連続する強化繊維を有しかつ芯金上に一周分巻回される幅に形成されたプリプレグを、一層ごとに巻回形成したことを特徴とするゴルフクラブシャフト。
【請求項3】
前記本体層は、芯金の周方向に強化繊維を配向させたプリプレグを巻回して形成した周方向繊維層を有し、この周方向繊維層は、前記中間テーパ部を除き、クラブヘッドを取付ける前部テーパ部と、グリップを形成する後部テーパ部とに配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴルフクラブシャフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−240429(P2009−240429A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88658(P2008−88658)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】