説明

ゴルフクラブシャフト

【課題】
シャフトのフープ層が他のプリプレグ層と交差しないようにフープ層とストレート層のプリプレグを任意の整数回だけ巻回し、シャフトの曲がりを抑制するとともに強度と剛性を改善したシャフトを提供すること、ならびに、フープ層のプリプレグをマンドレルへ容易に巻きつけられるゴルフクラブシャフトの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】
炭素繊維強化樹脂層を積層してなり、シャフトの軸方向に対して前記炭素繊維強化樹脂層の炭素繊維を90度±10度の角度で配向させたフープ層を少なくとも1以上有するゴルフクラブシャフトにおいて、第一ストレート層を構成するプリプレグの上にフープ層を構成するプリプレグを重ね合わせ、前記フープ層を構成するプリプレグの上に第二ストレート層を構成するプリプレグを重ね合わせて中間部材とし、中間部材を第一ストレート層が内側になるようにマンドレルに巻きつけゴルフクラブシャフトを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維強化樹脂層を積層してなるゴルフクラブシャフトに関し、特にシャフトの曲がりを軽減したことを特徴とするゴルフクラブシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化樹脂層を積層してなるゴルフクラブシャフト、特に軽量シャフトでは、曲げ強度確保のために、シャフト軸線方向に対して炭素繊維がほぼ90度になるフープ層を設けている。フープ層はシャフトの外側に近い層に設けると特に円管つぶれ強度に対して効果が高い。またシャフトの曲げ剛性を調整するために、シャフト軸線方向に対して炭素繊維がほぼ0度になるストレート層も設けられる。ストレート層もシャフトの外側に近い層に設けると曲げ剛性を高くする効果が高い。このためフープ層とストレート層はシャフト外側に近い層で互いに隣接して設けることが望ましい。
【0003】
例えば特開平11−19257には、超軽量カーボンシャフトの曲げ強度を向上させる目的で、フープ層を複数層設け、ストレート層と交互にかさね合わせた構成が開示されているが、フープ層のプリプレグをマンドレルに巻きつけることは困難で、プリプレグを厚くして2層または1層分のフープ層に、3層分の炭素繊維を巻きつけることが困難であるとし、さらにフープ層のプリプレグをマンドレルに巻き付けるために、バイアス層、あるいはストレート層に一旦張り合わせてから積層することで、生産性を上げる方法が開示されている。しかしながら積層されたプリプレグをマンドレルに積層する方法は具体的に開示されていない。
【0004】
異なる特性のプリプレグを積層した場合のマンドレルへの巻きつけ方法は、例えば特開平6−114131の図4に開示されるように、プリプレグをずらして積層してその一番下のプリプレグをマンドレルに巻きつける方法と、同じ寸法のプリプレグを積層してマンドレルに巻きつける方法がある。
【0005】
【特許文献1】特開平11−19257
【特許文献2】特開平6−114131
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えばフープ層1巻分のプリプレグを下側に、ストレート層複数巻分のプリプレグを上側になるようにプリプレグをずらしてマンドレルに巻きつけるとフープ層とストレート層が完全な同心円状にならず、図5に示すように双方のプリプレグが渦巻状に配置される。特にフープ層のプリプレグを跨いでストレート層のプリプレグが存在すると、フープ層を跨いだ方向にシャフトの軸線が曲がるという問題を有していた。また、同じ寸法のプリプレグを積層した場合は、フープ層とストレート層あるいはバイアス層のプリプレグの切目が重なるので、十分な強度が得られなかったり、シャフトの諸物性に異方性が生じるという問題を有していた。これらを避けるためには、フープ層とフープ層に隣接するプリプレグを1層毎にマンドレルに積層する必要があった。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決し、シャフトのフープ層が他のプリプレグ層と交差しないように、かつフープ層とストレート層のプリプレグの巻回数を任意の整数回としシャフトの曲がりを抑制するとともに強度と剛性を改善したシャフトを提供することを目的とする。あわせて、フープ層のプリプレグをマンドレルへ容易に巻きつけられるゴルフクラブシャフトの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するための請求項1に係わる発明は、炭素繊維強化樹脂層を積層してなり、シャフトの軸方向に対して前記炭素繊維強化樹脂層の炭素繊維を90度±10度の角度で配向させたフープ層を少なくとも1以上有するゴルフクラブシャフトにおいて、フープ層を構成するプリプレグの巻数は整数で、フープ層に隣接する片側または両側にシャフトの軸方向に対して前記炭素繊維強化樹脂層の炭素繊維を0度±10度の角度で配向させたストレート層が配置され、フープ層と、フープ層に隣接する片側または両側に配置されるストレート層が同心円状に配置されることを特徴とするゴルフクラブシャフトである。
【0009】
プリプレグの巻数とは、一つの層を構成するプリプレグの積層数をいい、巻数が整数回とは、プリプレグの巻始め端と巻終り端とシャフト中心がほぼ同一平面状に存在することをいう。フープ層以外の巻数についても同様に定義する。層が同心円状に配置されるとは、フープ層やストレート層等を構成するプリプレグが他の層のプリプレグの間に介在しないことをいう。
【0010】
請求項2に係わる発明は、フープ層を構成するプリプレグの巻回数が2以上の整数回であることを特徴とするゴルフクラブシャフトである。特にシャフト外層に近いフープ層は繊維量が多いほど強度改善の効果がある。
【0011】
請求項3に係わる発明は、炭素繊維強化樹脂層を積層してなり、シャフトの軸方向に対して前記炭素繊維強化樹脂層の炭素繊維を90度±10度の角度で配向させたフープ層を少なくとも1以上有するゴルフクラブシャフトにおいて、第一ストレート層を構成するプリプレグの上にフープ層を構成するプリプレグを重ね合わせ、前記フープ層を構成するプリプレグの上に第二ストレート層を構成するプリプレグを重ね合わせて中間部材とし、中間部材を第一ストレート層が内側になるようにマンドレルに巻きつけることを特徴とするゴルフクラブシャフトの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係わるゴルフクラブシャフトは、上記のようにフープ層の両側のストレート層が同心円状に配置されるので、シャフト軸の曲がりを抑えることができる。また、フープ層を構成するプリプレグの巻回数を2以上としてもマンドレルへの巻きつけが容易である。
【0013】
さらに、フープ層を含む任意の層のプリプレグの巻回数とプリプレグの巻始め端の位置が重ならないように設定できるので、シャフトの諸物性の方向性を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図1を用いて説明する。本発明のゴルフクラブシャフト1は、フープ層2を少なくとも1以上有し、前記フープ層2を構成するプリプレグの巻数は任意の整数回である。前記フープ層2に隣接するストレート層3−aまたは3−bの巻数は、シャフト1に付与すべき曲げ剛性により1回でもよいし1以外の任意の整数回でもよい。また、シャフト1には前記フープ層2や前記ストレート層3のほかに、シャフト全長ではなく部分的に配置される補強層21やシャフトのねじれ特性を規定するバイアス層20が設けられるが、これらはシャフトに付与すべき特性に応じて配置されていればよく本発明の主要な構成ではないので説明は省く。ただし、前記フープ層2や前記ストレート層3をシャフトの特性に効率よく反映させるためには、前記フープ層2、または前記フープ層に隣接する第二ストレート層3−bのいずれかが前記シャフト1の最外層に設けられることが望ましい。
【0015】
本発明のゴルフクラブシャフト1を作るためのプリプレグの積層方法について、図2を用いて説明する。フープ層2のプリプレグを幅Bhで、第一ストレート層3−aのプリプレグを幅Bh1で、第二ストレート層3−bのプリプレグ幅をBh2で裁断し、前記フープ層2を構成するプリプレグの一方の面かつ一方の縁に第一ストレート層3−aを構成するプリプレグを重ね合わせ、前記フープ層2を構成するプリプレグの他方の面かつ他方の縁に第二ストレート層3−bを構成するプリプレグを重ね合わせてシャフトの中間部材10を作り、前記第一ストレート層3−aを構成するプリプレグの二つの面のうち、前記フープ層2を積層した面とは異なる面がシャフトの内側になるようにマンドレル4に巻きつける。
【0016】
このとき、前記フープ層2と前記第一ストレート層3−a及び前記第二ストレート層3−bを構成するプリプレグの幅Bh、Bs1、Bs2は、各層を構成するプリプレグの巻数に対応させる。ここで図2(a)はフープ層と第一ストレート層の巻数が1、第二ストレート層の巻数が2の模式図であり、図2(b)は第一ストレート層と第二ストレート層の巻数が1、フープ層の巻数が2の模式図である。
【0017】
第一ストレート層3−aまたは第二ストレート層3−bが不要な場合は、各々に対応するプリプレグを除いて積層すればよい。また、プリプレグの積層幅l1,l2はプリプレグの縁から1巻数の長さ以内に収まるようにし、図2(a)のようにフープ層2の巻数が1の場合は、Bh>l1+l2となるように積層して中間部材10を作成する。またシャフトの特性に合わせて、前記中間部材10の他にバイアス層や補強層など(図示せず)をマンドレルに巻きつけた後に、加熱成形してシャフトを製造する。
【0018】
図3に、図2(a)の中間部材10を使用したシャフトの断面を示す。内側から、プリプレグの巻数が1の前記第一ストレート層3−aと前記フープ層2、及びプリプレグの巻数が2の前記第二ストレート層3−bであり、各々の層を構成するプリプレグが他の層を構成するプリプレグの間に介在しない同心円状に配置される。また、前記第一ストレート層3−aの切目71と前記フープ層の切目72は積層幅l1だけずれ、前記フープ層2と前記第二ストレート層3−bの巻始め端は積層幅l2だけずれる。
【0019】
また、前記第二ストレート層3−bのプリプレグの巻数は2で、シャフトの中心5と巻始め端6−a及び巻終り端6−bはほぼ直線上に配置される。実際のシャフトでは前記中間部材10の他にもシャフトの要求特性に合わせてプリプレグが使用されるが図3では省略する。
【実施例1】
【0020】
本発明の実施例を図4を用いて説明する。本実施例では、シャフトの内側から補強層21、第一のバイアス層20、フープ層22、第二のバイアス層20、第一ストレート層3−a、フープ層2、第二ストレート層3−b、補強層21の順で各層を配置した。各層の巻数は、前記バイアス層20は3、前記第二ストレート層は2、その他の層は1とした。
【0021】
ここで、前記第一ストレート層3−aと前記フープ層2の積層幅をl1、前記フープ層と前記第二ストレート層3−bの積層幅をl2とし、l1及びl2はいずれもBhの1/3となるように積層して予め中間部材10を作成した。製造工程を簡素化するために、バイアス層20とフープ層22で別の中間部材を予め作成してもよい。
【0022】
前記中間部材10を用いたシャフト1は、前記第一ストレート層の巻始め71と前記フープ層の巻始め72、及び第二ストレート層の巻始め6−aはそれぞれ120度間隔で配置され、シャフトの諸物性の異方性を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のシャフト
【図2】本発明のシャフトのプリプレグ巻きつけ方法
【図3】本発明のシャフトの断面模式図
【図4】本発明のシャフトの実施例
【図5】従来のシャフトの断面模式図
【符号の説明】
【0024】
1 シャフト、2 フープ層、3−a 第一ストレート層、3−b 第二ストレート層、4 マンドレル、5 シャフト中心、6−a 巻始め端、6−b 巻終り端、7 縁、10 中間部材、20 バイアス層、21補強層、22 フープ層
Bh フープ層のプリプレグ幅、Bs1 第一ストレート層のプリプレグ幅、Bs2 第二ストレート層のプリプレグ幅、l1 フープ層と第一ストレート層のプリプレグの積層幅、l2 フープ層と第二ストレート層のプリプレグ積層幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維強化樹脂層を積層してなり、シャフトの軸方向に対して前記炭素繊維強化樹脂層の炭素繊維を90度±10度の角度で配向させたフープ層を少なくとも1以上有するゴルフクラブシャフトにおいて、
前記フープ層を構成するプリプレグの巻数は整数で、
前記フープ層に隣接する片側または両側にシャフトの軸方向に対して前記炭素繊維強化樹脂層の炭素繊維を0度±10度の角度で配向させたストレート層が配置され、
前記フープ層と前記フープ層の片側または両側に配置されるストレート層が同心円状に配置されることを特徴とするゴルフクラブシャフト。
【請求項2】
前記フープ層を構成するプリプレグの巻数が2以上であることを特徴とする、請求項1のゴルフクラブシャフト。
【請求項3】
炭素繊維強化樹脂層を積層してなり、シャフトの軸方向に対して前記炭素繊維強化樹脂層の炭素繊維を90度±10度の角度で配向させたフープ層を少なくとも1以上有するゴルフクラブシャフトにおいて、
第一ストレート層を構成するプリプレグの上にフープ層を構成するプリプレグを重ね合わせ、前記フープ層を構成するプリプレグの上に第二ストレート層を構成するプリプレグを重ね合わせて中間部材とし、
前記中間部材を第一ストレート層が内側になるように前記マンドレルに巻きつけることを特徴とする請求項1または請求項2のゴルフクラブシャフトの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−247590(P2009−247590A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98838(P2008−98838)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(302019599)ミズノ テクニクス株式会社 (47)
【Fターム(参考)】