ゴルフクラブシャフト
【課題】ゴルフクラブシャフトの軽量性を維持し、フレックスの増大を抑制しながら、トルクを低下させ、強度を高める。
【解決手段】シャフト全長に配置する全長層のプリプレグを少なくも6層備え、該全長層として、強化繊維が交差する内側・外側バイアス層を積層したバイアスセット層を少なくとも2組備え、前記全長層の積層数のうちシャフト内周側の半数を内層部、シャフト外周側の半数を外層部として分けると、少なくとも1組の前記バイアスセット層の外側バイアス層は前記外層部に配置していると一方、他の少なくとも1組のバイアスセット層の内側バイアス層は前記内層部に配置し、さらに、前記外層部のバイアス層に接触させてフープ層を配置すると共に、前記外層部の最外全長層としてストレート層を配置している。
【解決手段】シャフト全長に配置する全長層のプリプレグを少なくも6層備え、該全長層として、強化繊維が交差する内側・外側バイアス層を積層したバイアスセット層を少なくとも2組備え、前記全長層の積層数のうちシャフト内周側の半数を内層部、シャフト外周側の半数を外層部として分けると、少なくとも1組の前記バイアスセット層の外側バイアス層は前記外層部に配置していると一方、他の少なくとも1組のバイアスセット層の内側バイアス層は前記内層部に配置し、さらに、前記外層部のバイアス層に接触させてフープ層を配置すると共に、前記外層部の最外全長層としてストレート層を配置している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブシャフトに関し、詳しくは、軽量なゴルフクラブシャフトの強度、方向性、飛距離の向上を図るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、打球の飛距離向上のため、ゴルフクラブシャフトとヘッドの軽量化が進んでいる。そのため、ゴルフクラブシャフトの材料は、従来の主流であったスチールから、軽量で、比強度、比剛性の高いカーボン等の強化繊維を樹脂に含浸したプリプレグを積層した繊維強化樹脂製が主流となっている。
【0003】
前記プリプレグを積層した繊維強化樹脂製のゴルフクラブシャフトでは、シャフト軸線に対して強化繊維の配向角度を傾斜させたバイアス層がトルクに影響を与えるためシャフトの内層部に配置し、シャフト軸線に対して強化繊維の配向角度を略平行としたストレート層がフレックスに影響を与えるため、シャフトの外層部に配置する構成が一般的である。
【0004】
シャフトの軽量化は、プリプレグのボリューム(目付量や層数)の削減で実施することが一般的であるが、この手法では、強度低下を招きやすいと共に、トルクやフレックスが大きくなる点に問題がある。
即ち、シャフトの軽量化により、一般的にヘッドスピードは速くなるが、トルクが大きい場合はヘッドの返りが遅くなるため、方向性悪化の大きな原因となる。一方、フレックスが大きい場合は、シャフトが柔らかいため、撓り過ぎてエネルギーロスを生じ、飛距離増大の妨げとなる。
【0005】
トルクを小さく方法としては、トルクに影響を与えるバイアス層の樹脂目付量増加、あるいは繊維種の高弾性化が一般的である。
フレックスを小さくする方法としては、フレックスに影響を与えるストレート層の樹脂目付量増加、あるいは繊維種の高弾性化が一般的である。
しかしながら、プリプレグの樹脂目付量ん増加は軽量化に反し、繊維種の高弾性化は繊維の引張弾性率が30t/mm2を超えると強度低下を招く点に問題がある。
そこで、軽量性と強度を維持しながら所望のフレックスとトルクを得ることが課題となっている。
【0006】
この種の問題に関し、特開2003−180890号(特許文献1)では、シャフトの中間部分に±20°〜65°のバイアス層を配置することで、軽量性を維持しながら、振動吸収性と方向性を向上させることが提案されている。しかしながら、この場合、バイアス層を追加すると軽量化に反し、ストレート層やフープ層に置き換えてバイアス層を配置する場合と曲げ強度やつぶし強度が低下しやすくなり、改善の余地がある。
【0007】
また、特開2004−305332号(特許文献2)では、シャフトの内層を繊維の配向角が±35°〜55°のバイアス層で形成すると共に、シャフトの外層をストレート層で形成し、かつ、最外層の少なくとも一部に繊維の配向角が±5°〜30°のバイアス層を形成することが提案されている。
これにより、内層のバイアス層で捩じれ剛性を高め、外層のストレート層で曲げ剛性を高め、最外層のバイアス層で繊維の変形量を小さくし、曲げ強度を高めることができる。しかしながら、最外層は塗装の関係で研磨され、バイアス層が研磨されることで所期の強度やトルクが十分な性能が得られない恐れがある。
【0008】
【特許文献1】特開2003−180890号公報
【特許文献2】特開2004−305332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、軽量性を備えると共に、所望のフレックスおよびトルクをバランスよく備え、優れた飛距離、打球方向性、強度を併せ持つゴルフクラブシャフトの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、プリプレグの積層体からなるゴルフクラブシャフトであって、
シャフト全長に配置する前記プリプレグからなる全長層を少なくも6層備え、
前記全長層として、強化繊維のシャフト軸線に対する配向角θ°が±25°以上±65°以下の範囲内であると共に、前記配向角が+θ°である一層のバイアス層と−θ°である一層のバイアス層とを互いの強化繊維が交差するように内側・外側バイアス層として重ね合わせて積層したバイアスセット層を少なくとも2組備え、
前記全長層の積層数のうち、シャフト内周側の半数を内層部、シャフト外周側の半数を外層部として分けると、少なくとも1組の前記バイアスセット層の外側バイアス層は前記外層部に配置している一方、他の少なくとも1組のバイアスセット層の内側バイアス層は前記内層部に配置し、
さらに、強化繊維のシャフト軸線に対する配向角が±80°以上90°以下の範囲内であるフープ層を、前記外層部のバイアス層に接触させて配置し、かつ、
前記外層部の最外全長層は、強化繊維のシャフト軸線に対する配向角が0°以上±10°以下の範囲内であるストレート層としていることを特徴とするゴルフクラブシャフトを提供している。
【0011】
前記プリプレグの積層数は、1枚のプリプレグによる1周層を1層として数えたものである。
また、前記全長層の積層数が偶数の場合は、半数ずつを内層部と外層部とに分けるが、奇数の場合は、中間の一層を中層部とし、該中層部を除いた半数ずつを内層部と外層部として規定している。
【0012】
前記したように、少なくとも2組のバイアスセット層のうち、1組のバイアスセット層の外側バイアス層は前記外層部に配置していると一方、他の1組のバイアスセット層の内側バイアス層は前記内層部に配置している。
具体的には、1組のバイアスセット層は、その外側バイアス層と内側バイアス層の両方を外層部に配置する場合と、外側バイアス層は外層部に配置し、内側バイアス層は中層部または内層部に配置する場合の3つのパターンがある。
さらに、他の1組のバイアスセット層は、その外側バイアス層と内側バイアス層の両方を内層部に配置する場合と、内側バイアス層は内層部に配置し、外側バイアス層は中層部または外層部に配置する場合の3つのパターンがある。
いずれのパターンでもよいが、前記したように、少なくとも、1つのバイアスセット層の外側バイアス層が外層部に位置し、他のバイアスセット層の内側バイアス層が内層部に位置させ、積層構成としたシャフトの内周側と外周側とにバランス層をバランス良く配置している。
【0013】
通常のシャフトでは中心側(即ち、内層側)に配置されることが多かったバイアス層を分割し、前記のように、本発明のゴルフクラブシャフトは、内層部と外層部にバランスよく配置することを特徴とし、該積層構成とすることで、軽量性を維持し、かつ、フレックスを大きくすることなく、トルク値を低下させることができ、打球方向性と飛距離の向上が可能となる。
【0014】
また、バイアスセット層を構成する内側バイアス層および外側バイアス層は、その強化繊維のシャフト軸線に対する角度が小さいほど曲げ強度向上に寄与し、大きいほどつぶし強度向上に寄与する。本発明では、このバイアス層の繊維角度を±25°以上65°以下の範囲内で変更・調節することにより、シャフト強度をバランスよく高めている。
前記バイアス層の強化繊維の配向角を±25°以上65°以下の範囲内としているのは、±25°未満あるいは±65°より大きい配向角では、シャフト捩じれ方向から逸脱するため所望のトルクが得られず、打球方向性を向上できないことに因る。
なお、前記バイアス層は、配向角が+θ°のプリプレグと−θ°のプリプレグとを貼り合わせた状態で巻きつけて積層しても、あるいは、一方を巻きつけた後に重ねて他方を巻きつけて積層してもよい。
【0015】
また、本発明のシャフトでは、フープ層を外層部に配置するバイアス層に接触させて配置している。シャフト軸線に対して強化繊維を略直交方向とするフープ層は、断面変形抑制性能があり、フレックスを変えることなくつぶれ剛性、つぶれ強度を向上させ、その結果、3点曲げ強度の向上につながるという特徴を有する。
該フープ層は、外層部に配置するバイアス層に接触させて配置しており、このフープ層を接触させるバイアス層は、バイアスセット層における外側バイアス層でも良いし、内側バイアス層でもよい。しかしながら、フープ層により断面変形抑制性能をより効果的に発揮させるには、外層部に配置するバイアスセット層のうち、外側バイアス層の外周面に接触させて配置することが最も好ましい。
このように、外層部に配置するバイアス層にフープ層を接触させて配置することにより、フープ層の断面変形抑制性能によって、ねじれ方向の断面変形を抑えることができ、トルクをより効果的に低下させて打球方向性を一層向上させることができる。
【0016】
さらに、本発明のシャフトでは、前記外層部の最外全長層にストレート層を配置していることにより、研磨による影響をバイアス層が受けずに済み、強度やトルクにおいて十分な性能を発揮することができる。
【0017】
本発明のシャフトは、バイアスセット層、フープ層およびストレート層を前記のように配置した積層構成としていることにより、軽量シャフトとしても、優れた強度を備えると共に、所望のフレックスとトルクをバランスよく設定でき、打球飛距離と方向性を高めることができる。また、繊維角度の組み合わせによって、低下させたトルクを維持したまま強度を向上させることもできる。
【0018】
前記シャフトの重量は50g以上70g以下とすることが好ましい。
その理由は50g未満ではシャフト重心点がヘッド側になるため、クラブバランスを調整する際に重いバランスにしか調整できず、スイング時に重く感じられ振り抜きにくいクラブとなる一方、70gを越えると、ヘッドスピードが上がらず、飛距離が低下してしまうことに因る。
【0019】
また、前記フープ層に使用するプリプレグは、強化繊維の引張弾性率が30t/mm2以上80t/mm2以下とし、樹脂含有率は30%以上40%以下とすることが好ましい。
フープ層の強化繊維の引張弾性率を30〜80t/mm2としているのは、30t/mm2未満では必要な断面変形抑制性能が得られず、80t/mm2を超えると、繊維の弾性が強くなりすぎて積層密着が困難になることに因る。
前記「引張弾性率」は、JISR7601:1986「炭素繊維試験方法」に準拠して測定している。
また、フープ層の樹脂含量率を30%以上40%以下としているのは、30%未満ではフープ層の積層密着力が低下し、40%を超えると、フープ層が厚くなりすぎて重量増加を招くことに因る。
【0020】
前記内層部の前記バイアスセット層の強化繊維の配向角を±θ1°とし、外層部の前記バイアスセット層の強化繊維の配向角を±θ2°とすると、θ2/θ1は1以上2以下の範囲内であることが好ましい。
このように内外バイアスセット層の繊維角度比θ2/θ1を設定することにより、シャフトの重量あるいは肉厚に応じた強度向上が可能となる。即ち、θ2/θ1を1以上2以下としているのは、1未満では、フレックス値は維持できるが、つぶし方向の強度が低下することで曲げ強度も低下してしまい、2より大きくすると、強度は維持できるが、フレックスが大きくなりすぎて、エネルギーロスによる飛距離低下を生じることに因る。
このθ2/θ1の下限は、より好ましくは1.2以上、さらには1.3以上、上限は1.8以下、さらには1.5以下が好ましい。
【0021】
内層部のバイアスセット層の前記繊維角度θ1は、小さい方が曲げ強度が向上するため、25°以上50°以下が好ましく、さらには25°以上45°以下が好ましく、特に25°以上40°以下が好ましい。
外層部のバイアスセット層の前記繊維角度θ2は、大きい方がつぶし方向の強度が向上し、肉厚の薄い軽量シャフトではつぶし方向の強度向上に伴い曲げ強度も向上するため、40°以上65°以下が好ましく、さらには45°以上65°以下、特に50°以上65°以下が好ましい。
【0022】
前記内層部のバイアスセット層の総厚さT1と、前記外層部のバイアスセット層の総厚さT2の比T2/T1は、1以上1.4以下の範囲内であることが好ましい。
これにより、シャフト強度を維持しながらトルクを小さくすることが可能となる。
即ち、前記厚み比T2/T1を1以上1.4以下としているのは、1未満ではトルク低下の効果が小さく、方向性が向上せず、1.4より大きくすると、トルクが低下して捩じれにくいシャフトとなるが、相対的にストレート層が内寄りに配置されることになり、フレックスが増大し、強度が低下することに因る。好ましくは、T2/T1の下限は1.1以上がよい。
【0023】
前記全長層の積層数が奇数の場合は、中間の一層を中層部とし、該中層部としてストレート層を配置することが好ましい。このように中層部としてストレート層を配置すると、フレックスの増大を抑えてトルクを小さくすることができる。
【0024】
前記プリプレグに用いられる樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられるが、強度と剛性の点より、熱硬化性樹脂が好ましく、特にエポキシ系樹脂が好ましい。
【0025】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ケイ素樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0026】
前記プリプレグに用いられる強化繊維としては、比重が小さく弾性率と強度が高いという点からカーボン繊維が好ましいが、その他、一般に高性能強化繊維として使用される繊維が用いられる。例えば、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。
【発明の効果】
【0027】
上述のように本発明によれば、トルクに影響するバイアス層を、増加するのではなく、内層部と外層部とに分割してバランスよく配置し、かつ、最外全長層にストレート層を配置することにより、重量増加を抑制すると共に強度、フレックスを維持しながら、トルクを低下させることができ、さらに、外側のバイアスセット層に接触させてフープ層を配置することにより、フープ層が有する断面変形抑制性能をトルク低下に寄与させることができ、捩れ方向の断面変形が抑制されるため、トルクを一層効果的に低下させることができる。従って、軽量性、優れた強度、優れた飛距離と方向性の全てをバランスよく備えるゴルフシャフトとすることができる。
【0028】
また、バイアス層の繊維角度を±25°〜65°の範囲内で変更、調節することで、低いトルクを維持したまま曲げ強度とつぶし強度を増減できるため、所望のトルクとシャフト強度とをバランスよく得ることができる。
【0029】
さらに、内側のバイアスセット層の繊維角度θ1°と外側のバイアスセット層の繊維角度θ2°の比θ2/θ1を1以上2以下とすることにより、所望のつぶし強度と所望のフレックスをバランスよく得ることができる。
また、内側のバイアスセット層の厚みT1と外側のバイアスセット層の厚みT2の比T2/T1を1以上1.4以下とすることにより、トルクの低下効果と、所望のフレックスをバランスよく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3に本発明の第一実施形態に係るゴルフクラブ用のシャフト10を示す。
【0031】
シャフト10は、図2に示すプリプレグ21〜32の積層体からなるテーパー状の長尺な管状体よりなり、前記プリプレグ21〜32のうちプリプレグ22、23、25〜30の8層はシャフトの全長に配置する全長層(1〜8)を形成している。
図1に示すように、シャフト10の小径側のヘッド側先端11にはヘッド13が取り付けられ、大径側のグリップ側後端12にはグリップ14が取り付けられている。本実施形態では、シャフト10の全長は1195mmとし、シャフト重量は63gとしている。
【0032】
前記シャフト10は、図2に示すように、前記プリプレグ21〜32を、内側からプリプレグ21〜32の順にシートワインディング製法によりマンドレル20に1周ずつ巻きつけて積層した後、ポリエチレン製やポリエチレンテレフタレート製等のテープで圧力をかけながらラッピングし、これをオーブン中で加熱加圧し樹脂を硬化させて一体的に成形し、その後、マンドレル20を引き抜いてシャフト10を製造している。シャフト表面は研磨を行った後、両端をカットして塗装している。
【0033】
シャフト10を構成する前記プリプレグ21〜32はいずれも、カーボン繊維からなる強化繊維F21〜F32を引き揃えてエポキシ樹脂を含浸させてなり、樹脂含有率はフープ層のプリプレグ以外はすべて25%とし、フープ層のプリプレグは30%〜40%としている。前記強化繊維F21〜F32の引張弾性率は30t/mm2としている。
【0034】
詳しくは、プリプレグ21は、ヘッド側先端部に部分的に配置され、長さを197mmとし、強化繊維F21は、シャフト軸線に対してなす配向角を0°としている。
プリプレグ22、23はいずれも、シャフト全長に配置され、強化繊維F22は、シャフト軸線に対してなす配向角を−45°とし、強化繊維F23は、シャフト軸線に対してなす配向角を+45°としている。この2枚の繊維強化プリプレグ22、23を、互いの強化繊維F22、F23が交差するように重ねて貼りあわせた状態で巻き付けて、後述の内層部側のバイアスセット層A1を形成している。
プリプレグ24は、ヘッド側先端部に部分的に配置され、長さを267mmとし、強化繊維F24は、シャフト軸線に対してなす配向角を0°とし、ストレート層を形成している。
プリプレグ25、26はいずれも、シャフト全長に配置され、強化繊維F25、26は、シャフト軸線に対してなす配向角を0°とし、ストレート層を形成している。
プリプレグ27、28はいずれも、シャフト全長に配置され、強化繊維F27は、シャフト軸線に対してなす配向角を−45°とし、強化繊維F28は、シャフト軸線に対してなす配向角を+45°としている。この2枚の繊維強化プリプレグ27、28を、互いの強化繊維F27、F28が交差するように重ねて貼りあわせた状態で巻き付けて、後述の外層部側のバイアスセット層A2を形成している。
プリプレグ29は、シャフト全長に配置され、強化繊維F29はシャフト軸線に対してなす配向角を90°とし、フープ層Bを形成している。
プリプレグ30は、シャフト全長に配置され、強化繊維F30は、シャフト軸線に対してなす配向角を0°とし、後述の最外周ストレート層Cを形成している。
プリプレグ31は、ヘッド側先端部に部分的に配置され、長さを217mmとし、強化繊維F31は、シャフト軸線に対してなす配向角を0°としている。
プリプレグ32は、ヘッド側先端部に部分的に配置され、長さを167mmとし、強化繊維F32は、シャフト軸線に対してなす配向角を0°としている。
【0035】
前記シャフト10は、前記のように、プリプレグ22、23、25、26、27、28、29、30からなる計8層の全長層を備えている。
詳しくは、図3に示すように、シャフト内周側4層の全長層22、23、25、26からなる内層部Iと、その外周側4層の全長層27、28、29、30、31からなる外層部IIとに分けると、内層部Iにプリプレグ22、23で形成される内層側のバイアスセット層A1を配置している。該内層部のバイアスセット層A1では、プリプレグ22が内側バイアス層、プリプレグ23が外側バイアス層となる。
一方、前記外層部IIに、プリプレグ27と28で形成される外層側のバイアスセット層A2を配置している。該外層部のバイアスセット層A2では、プリプレグ27が内層側バイアス層、プリプレグ28が外層側バイアス層となる。
【0036】
前記外層部IIには、プリプレグ29で形成される前記フープ層Bを、前記外層部のバイアスセット層A2の外側バイアス層28の外周面に接触させて配置している。また、外層部IIの最外全長層には前記のようにプリプレグ30を配置し、最外全長ストレート層Cとしている。
【0037】
前記内層部Iのバイアスセット層A1の強化繊維の配向角を±θ1°は±45°であり、外層部IIのバイアスセット層A2の強化繊維の配向角を±θ2°は±45°である。
よって、θ2/θ1は1である。
【0038】
前記内層部Iのバイアスセット層A1の総厚み(T1)と、外層部IIのバイアスセット層A2の総厚み(T2)は、いずれも0.290mmとしている。
【0039】
前記構成よりなるシャフト10は、トルクに影響を与えるバイアス層の積層数やプリプレグ目付量を増やすのではなく、従来であればシャフト内層部にのみ配置されていた全長バイアス層を、内層部Iにバイアスセット層A1を配置し、外層部IIにバイアスセット層A2を配置して分割している。このように、内層部Iのみでなく外層部IIにもバランスよく配置しているため、シャフト重量を増加することなく、かつ、フレックスや強度を維持したまま、トルクを低下させることが可能となる。
【0040】
また、前記フープ層Bは外層部IIのバイアスセット層A2の外側バイアス層のプリプレグ28の外周面に接触させて配置しているため、フープ層Bが有する断面変形抑制性能が効果的に発揮されて強度が向上すると共に、フープ層Bの断面変形抑制性能を、トルクに大きな影響を与える外層部IIのバイアスセット層A2のトルク低下性能に寄与させることができるため、トルクを一層効果的に低下させることができる。
【0041】
さらに、最外全長層としてプリプレグ30からなるストレート層Cを配置しているため、外層部IIのバイアスセット層A2は、塗装の関係で必要となる研磨の影響を受けずに済み、トルク低下効果を十分に発揮することができる。
【0042】
これらにより、軽量性を備え、かつ強度、飛距離、方向性に優れたシャフトを実現することができる。
さらに、前記内外層部のバイアスセット層A1、A2の強化繊維F22、F23、F27、F28の配向角は、いずれも+45°あるいは−45°であり、±25°以上65°以下の範囲内であるため、トルク低下効果を十分発揮できると共に、曲げ方向およびつぶし方向のシャフト強度もバランスよく高めることができる。
【0043】
また、内層部Iのバイアスセット層A1の強化繊維F22、F23の配向角に対する外層部IIのバイアスセット層A2の強化繊維F27、F28の配向角の比θ2/θ1は1であり、1〜2の範囲内であるため、フレックスの増大を抑制しながらシャフト強度を高めることができる。
さらに、内層部Iのバイアスセット層A1の厚みT1に対する外層部IIのバイアスセット層A2の厚みT2の比T2/T1は1であり、1〜1.4の範囲内であるため、フレックスの増大を抑制しながらバランスよくトルクを低下させることができる。
【0044】
さらにまた、前記フープ層Bは、強化繊維F29の引張弾性率が30t/mm2であり、樹脂含有率が37.5%であるため、フープ層Bの良好な積層密着と重量増加抑制とをバランスよく実現できる。
【0045】
図4に本発明の第2実施形態を示す。
本実施形態は、フープ層Bとなるプリプレグ33を外層部IIのバイアスセット層A2の内側バイアス層を構成するプリプレグ27の内周面に接触させて配置している。また、該バイアスセット層A2の外側バイアス層を構成するプリプレグ28の外周面に最外層全長層のストレート層Cを構成するプリプレグ30を配置している。
【0046】
即ち、製造工程におけるプリプレグの巻き付け順は、まず、プリプレグ21〜26を内側から順次に積層した後、強化繊維F33のシャフト軸線に対する配向角を90°とするプリプレグ33を巻きつけてフープ層Bを積層し、次に、プリプレグ27、28を巻きつけてバイアスセット層A2を形成し、次いで、プリプレグ30〜32を順次積層している。これにより、計8層の全長層1〜8は、プリプレグ22、23、25、26、33、27、28、30で形成している。
他の構成は第1実施形態と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
本実施形態においても、トルクに大きく影響する外層部IIのバイアスセット層A2に接触させてフープ層Bを配置しているため、フープ層Bの断面変形抑制性能をトルク低下に効果的に寄与させることができる。
【0048】
図5に本発明の第3実施形態を示す。
本実施形態のシャフトでは、プリプレグ22、23、25、27、28、29、34、30によって計8層の全長層を形成している。
プリプレグ27と28とからなるバイアスセット層A2のうち、外側バイアス層となるプリプレグ28は外層部IIに配置しているが、内側バイアス層となるプリプレグ27は内層部Iに配置している。即ち、バイアスセット層A2では内側バイアス層を内層部に、外側バイアス層を外層部に配置し、内層部と外層部とに分割配置している。
また、該内層部Iにプリプレグ22と23とからなるバイアスセット層A1を配置している。
該内層部Iにおいて、バイアスセット層A1の外側バイアス層となるプリプレグ23の外周に、全長層としてストレート層となるプリプレグ25を配置し、該プリプレグ25の外周にバイアスセット層A2を配置している。
外層部IIでは、前記バイアスセット層A2の外側バイアス層のプリプレグ28の外周にフープ層Bとなるプリプレグ29を配置している。該フープ層Bとプリプレグ30からなる最外全長ストレート層Cとの間に、強化繊維F34のシャフト軸線に対する配向角を0°とするプリプレグ34からなる全長ストレート層を配置している。
【0049】
即ち、製造工程におけるプリプレグの巻き付け順は、まず、プリプレグ21〜25を内側から順次積層した後、プリプレグ27、28を巻き付けてバイアスセット層A2を形成し、次いで、プリプレグ29を巻き付けてフープ層Bを形成し、次いで、プリプレグ34の次にプリプレグ30を巻き付けて最外全長ストレート層Cを形成し、最後に、プリプレグ31、32をヘッド側先端部に順次積層している。
その他の構成は前記第1実施形態と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
本実施形態においても、プリプレグ22、23で形成されるバイアスセット層A1を内層部Iに配置し、プリプレグ27、28で形成されるバイアスセット層A2のうち外側バイアス層のプリプレグ28が外層部IIに配置し、バイアス層を内層部Iと外層部IIとに分散配置している。
また、外層部IIに位置するバイアスセット層A2の外側バイアス層の外周面にフープ層Bを接触配置し、最外周ストレート層Cを設けている。これにより、重量増大とフレックス増大を抑制しながら、バランスよく、かつ、効果的にトルクを低下させることができる。
【0051】
図6に本発明の第4実施形態を示す。
本実施形態は、プリプレグ22、23、25、26、35、27、28、29、30によって計9層の全長層を設けている。この9層の全長層のうち、シャフト中心側の4層を内層部Iとし、外周側の4層を外層部IIとし、中間のI層のプリプレグ35を中層部IIIとしている。
該中層部IIIのプリプレグ35は、強化繊維F35のシャフト軸線方向に対する配向角を0°とするストレート層を形成するプリプレグとしている。
【0052】
前記内層部Iにはプリプレグ22と23とからなるバイアスセット層A1、外層部IIにはプリプレグ27、28からなるバイアスセット層A2を配置している、また、外層部IIのバイアスセット層A2の外側バイアス層のプリプレグ28の外周面にフープ層Bとなるプリプレグ29を接触させて配置し、該プリプレグ29の外周面に最外層全長層のストレート層Cとなるプリプレグ30を配置している。これにより、フレックスの増大を最小限に抑えながら、トルクを低下させることができる。
【0053】
(実施例)
以下に、本発明のゴルフクラブシャフトの実施例1〜13および比較例1〜7について詳述する。
下記の表1および表2に示すように、表1に示す実施例1〜13は全て全長層1〜8を8層備えたものとし、表2に示す比較例1〜3は全長層を7層とし、比較例4〜7は8層とした。
バイアス層は全て±45°とし、フープ層は90°とし、ストレート層は0°とした。
フープ層の有無またはフープ層の積層位置、バイアス層の積層位置、および厚みを異ならせた実施例1〜13および比較例1〜7を作製し、順式フレックス、トルク、3点曲げ強度、つぶし強度を測定し、その結果を表1および表2に示した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
実施例1〜13および比較例1〜7のいずれも、カーボン繊維を強化繊維としてエポキシ樹脂を含浸してなる三菱レイヨン社製のプリプレグを用い、シートワインディング製法により作製し、その作製方法は前記第一実施形態と同一とした。表1には全長層1〜8(1〜7)ついてのみ記載した。
また、実施例1〜13および比較例1〜7はいずれも、シャフト長さを1195mmとし、各実施例および比較例のシャフト重量およびシャフトバランスは、表1に示すとおり設定した。
【0058】
(実施例1)
プリプレグの積層構成を前記第2実施形態と同一構成とし、バイアスセット層A1を内層部Iに、バイアスセット層A2を外層部IIに配置すると共に、バイアスセット層A2の内周側に接触させてフープ層Bを配置した。最外全長層に繊維角度0°のストレート層を形成した。バイアスセット層A1、A2の繊維角度の比θ2/θ1は1とした。
全長層1、2、6、7には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.145mmの品番「MR350C−175S」を使用した。全長層3、4、8には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.124mmの品番「MR350C−150S」を使用した。フープ層Bを形成する全長層5には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率37.5%、厚み0.021mmの品番「MR350C−025S」を使用した。
内層部のバイアスセット層A1の厚みT1は0.290mmとし、外層部バイアスセット層A2の厚みT2は0.290mmとし、T2/T1を1に設定した。また、全長層3、4からなる内層のストレート層の厚みは0.248mmとし、全長層8からなる外層のストレート層8の厚みは0.124mmとした。
【0059】
(実施例2)
プリプレグの積層構成を前記第1実施形態と同一構成とし、バイアスセット層A1を内層部Iに、バイアスセット層A2を外層部IIに配置すると共に、バイアスセット層A2の外側バイアス層の外周に接触させてフープ層Bを配置した。さらに最外全長層8に繊維角度0°のストレート層を配置した。バイアスセット層A1、A2の繊維角度の比θ2/θ1は1に設定した。
前記ストレート層、バイアスセット層A1、A2およびフープ層Bのそれぞれに使用したプリプレグ種は前記実施例1と同一とした。
バイアスセット層A1の厚みT1は0.290mmとし、バイアスセット層A2の厚みT2は0.290mmとし、T2/T1を1に設定した。また、全長層3、4からなる内層のストレート層の厚みは0.248mmとし、全長層8からなる外層ストレート層の厚みは0.124mmとした。
【0060】
(実施例3)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の厚みの比T2/T1を変えた。
即ち、内層部のバイアスセット層A1には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.124mmの品番「MR350C−150S」を使用した。外層部のバイアスセット層A2には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.083mmの品番「MR350C−100S」を2周回分ずつ使用した。
これにより、バイアスセット層A1の厚みT1を0.248mmとし、バイアスセット層A2の厚みT2を0.352mmとし、T2/T1を1.42に設定した。
その他の使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0061】
(実施例4)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の厚みの比T2/T1を変えた。
即ち、内層部のバイアスセット層A1には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.083mmの品番「MR350C−100S」を2周回分ずつ使用した。外層部のバイアスセット層A2には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.124mmの品番「MR350C−150S」を使用した。
これにより、バイアスセット層A1の厚みT1を0.352mmとし、バイアスセット層A2の厚みT2を0.248mmとし、T2/T1を0.70に設定した。
その他の使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0062】
(実施例5)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の厚みの比T2/T1を変えた。
即ち、内層部のバイアスセット層A1には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.103mmの品番「MR350C−125S」を使用した。外層部のバイアスセット層A2には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.103mmの品番「MR350C−125S」を2周回分ずつ使用した。
これにより、バイアスセット層A1の厚みT1を0.206mmとし、バイアスセット層A2の厚みT2を0.412mmとし、T2/T1を2に設定した。
その他の使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0063】
(実施例6)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の厚みの比T2/T1を変えた。
即ち、内層部のバイアスセット層A1には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.083mmの品番「MR350C−100S」を2周回分ずつ使用した。外層部のバイアスセット層A2には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.103mmの品番「MR350C−125S」を使用した。
これにより、バイアスセット層A1の厚みT1を0.352mmとし、バイアスセット層A2の厚みT2を0.412mmとし、T2/T1を1.17に設定した。
その他の使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0064】
(実施例7)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の繊維角度を変えた。即ち、内層部のバイアスセット層A1と外層部バイアスセット層A2の繊維角度を、ともに±30°とした。
使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0065】
(実施例8)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の繊維角度を変えた。即ち、内層部のバイアスセット層A1と外層部のバイアスセット層A2の繊維角度を、ともに±60°とした。使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0066】
(実施例9)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の繊維角度の比θ2/θ1を変えた。即ち、内層部のバイアスセット層A1の繊維角度θ1を±30°とし、外層部のバイアスセット層A2の繊維角度θ2を±60°とし、繊維角度比θ2/θ1を2とした。使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0067】
(実施例10)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の繊維角度の比θ2/θ1を変えた。即ち、内層部のバイアスセット層A1の繊維角度θ1を±30°とし、外層部のバイアスセット層A2の繊維角度θ2を±45°とし、繊維角度比θ2/θ1を1.50とした。使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0068】
(実施例11)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の繊維角度の比θ2/θ1を変えた。即ち、内層部のバイアスセット層A1の繊維角度θ1を±45°とし、外層部のバイアスセット層A2の繊維角度θ2を±60°とし、繊維角度比θ2/θ1を1.33とした。使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0069】
(実施例12)
全長層1〜8のうち、内層部Iの積層構成を変えた。
即ち、図7に示すように、内層部Iは、最内全長層1に繊維角度0°のストレート層を配置し、その外側の全長層2、3に内層部のバイアスセット層A1を配置し、その外側の全長層4をストレート層とし、内層部のバイアスセット層A1を2つのストレート層で挟む構成とした。
外層部IIのプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。また、ストレート層、バイアスセット層A1、A2およびフープ層Bのそれぞれに使用するプリプレグ種も実施例2と同一とした。
【0070】
(実施例13)
プリプレグの積層構成は前記第3実施形態と同一とした。即ち、内層部Iのストレート層を1層減らす一方、外層部IIのストレート層を1層増やし、外層部のバイアスセット層A2のうち外側の層5は外層部IIに配置したが、内側の層4は内層部Iに配置した。
詳しくは、内周側から順に全長層1、2に繊維角度±45°の内層部のバイアスセット層A1を形成し、全長層3に繊維角度0°のストレート層を形成した。全長層4、5に繊維角度±45°のバイアスセット層A2を形成し、全長層6に繊維角度90°のフープ層Bを形成し、全長層7、8に繊維角度0°のストレート層を形成した。
ストレート層、バイアスセット層A1、A2およびフープ層Bのそれぞれに使用したプリプレグ種は実施例2と同一とした。
内層部のバイアスセット層A1の厚みT1は0.290mmとし、バイアスセット層A2の厚みT2は0.290mmとし、T2/T1を1に設定した。また、全長層3からなる内層のストレート層の厚みは0.124mmとし、全長層7、8からなる外層のストレート層の厚みは0.248mmとした。
【0071】
(比較例1)
バイアスセット層A1、A2を内層部と外層部とに分割配置せず、内層側にかためて配置し、フープ層も形成しなかった。
即ち、プリプレグの積層構成は、図8に示すように、計7層の全長層1〜7のうち内層部Iから中層部IIIを形成する全長層1〜4に、繊維角度±45°の2組のバイアスセット層A1、A2を配置し、外層部IIを形成する全長層5〜7のすべてを繊維角度0°のストレート層とした。
使用プリプレグ種は、全長ストレート層5に繊維引張弾性率24t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.146mmの品番「TR350C−175S」を使用したが、全長ストレート層6、7には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.124mmの品番「MR350C−150S」を使用し、全長バイアス層1〜4には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.145mmの品番「MR350C−175S」を使用した。
二組のバイアスセット層A1、A2はいずれも厚みを0.290mmとした。また、全長層6、7からなる最外ストレート層は厚みを0.248mmとし、全長層5からなる内層のストレート層は厚みを0.146mmとした。
【0072】
(比較例2)
バイアスセット層A1、A2を内層部Iと外層部IIとに分割配置せず、外層側にかためて配置し、フープ層も形成しなかった。
即ち、プリプレグの積層構成は、図9に示すように、計7層の全長層1〜7のうち内層部Iを形成する全長層1〜3のすべてを繊維角度0°のストレート層とし、中層部III〜外層部IIを形成する全長層4〜7には、繊維角度±45°の2組のバイアスセット層A1、A2を配置した。
使用プリプレグ種は、最内全長ストレート層4に繊維引張弾性率24t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.146mmの品番「TR350C−175S」を使用した。全長ストレート層2、3には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.124mmの品番「MR350C−150S」を使用した。その他の全長バイアス層4〜7には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.145mmの品番「MR350C−175S」を使用した。
二組のバイアスセット層A1、A2はいずれも厚みを0.290mmとした。また、全長層1からなる内層のストレート層は厚みを0.146mmとし、全長層2、3からなるストレート層は厚みを0.248mmとした。
【0073】
(比較例3)
バイアスセット層A1、A2を内層部Iと外層部IIに分割配置したが、フープ層は設けなかった。
即ち、プリプレグの積層構成は、図10に示すように、計7層の全長層1〜7のうち、全長層1、2に、繊維角度±45°の内側バイアスセット層A1を配置し、全長層3、4を繊維角度0°のストレート層とし、全長層5、6に繊維角度±45°の外層部のバイアスセット層A2を配置し、最外全長層7を繊維角度0°のストレート層とした。
使用プリプレグ種は、全長ストレート層3に繊維引張弾性率24t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.146mmの品番「TR350C−175S」を使用した。他の全長層4、7には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.124mmの品番「MR350C−150S」を使用した。その他の全長バイアス層1、2、5、6には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.145mmの品番「MR350C−175S」を使用した。
二組のバイアスセット層A1、A2はいずれも厚みを0.290mmとした。また、全長層3、4からなる内層のストレート層は厚みを0.270mmとし、全長層7からなる最外ストレート層は厚みを0.124mmとした。
【0074】
(比較例4)
バイアスセット層A1、A2を内層部Iと外層部IIに分割配置し、フープ層Bを内側バイアスセット層A1に接触させて配置した。
即ち、プリプレグの積層構成は、図11に示すように、計8層の全長層1〜8のうち、全長層1、2に繊維角度±45°の内層部のバイアスセット層A1を配置し、その外側の全長層3に繊維角度90°のフープ層Bを配置し、全長層4、5を繊維角度0°のストレート層とした。全長層6、7は繊維角度±45°の外層部のバイアスセット層A2を形成し、最外全長層8を繊維角度0°のストレート層とした。
ストレート層、バイアスセット層A1、A2、フープ層Bのそれぞれに使用したプリプレグ種は、実施例1と同一とした。
二組のバイアスセット層A1、A2はいずれも厚みを0.290mmとした。また、全長層4、5からなる内層のストレート層は厚みを0.248mmとし、全長層8からなる最外ストレート層は厚みを0.124mmとした。
【0075】
(比較例5)
プリプレグの積層構成は実施例2と同一としたが、内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の繊維角度をいずれも±15°とし、本発明のバイアス層の配向角度から外した。その他の構成および使用プリプレグ種も実施例2と同一とした。
【0076】
(比較例6)
プリプレグの積層構成は実施例2と同一としたが、内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の繊維角度をいずれも±75°とし、本発明のバイアス層の配向角度から外した。その他の構成および使用プリプレグ種も実施例2と同一とした。
【0077】
(比較例7)
プリプレグの積層構成は実施例2と同一としたが、内層部のバイアスセット層A1の繊維角度を±15°とし、外層部のバイアスセット層A2の繊維角度を±75°とし、繊維角度比θ2/θ1を5とした。その他の構成および使用プリプレグ種も実施例2と同一とした。
【0078】
(順式フレックスの測定)
順式フレックスとはシャフトのグリップ側(手元側)の硬さの指標であり、図12に示すように、ヘッド側先端11から799mmの位置を支点P1とし、この支点P1からグリップ側後端12寄りの140mmの位置を固定点P2とし、ヘッド側先端11から64mmの位置に2.7kgの錘W1を吊り下げ、ヘット側先端11の撓み量を測定して得たものである。
【0079】
(トルクの測定)
前記トルク(deg)は、図13に示すように、シャフト10のヘッド側先端11から40mmの位置を固定し、該ヘッド側先端11から865mmの点に136.3N・cm(13.9kgf・cm)のトルクを加え、そのときの捩じれ角度を測定したものである。
【0080】
(3点曲げ強度の測定)
三点曲げ強度とは、製品安全協会が定める破壊強度である。図14に示すように、3点でシャフト10を支え、上方から荷重Fを加え、シャフト10が破断した時の荷重値(ピーク値)を測定した。測定点は、シャフト10のヘッド側先端11から175mmの位置(A点)、525mmの位置(B点)、993mmの位置(C点)とした。支持点51のスパンは300mmとした。(図示はA点測定の例)
【0081】
(つぶし強度の測定)
万能圧縮試験機を用い、シャフト10のグリップ側後端12から10mmの位置、100mmの位置、200mmの位置、300mmの位置を中心に長さ約10mmの試験片を作成し圧縮試験を行い、その強力を示した。
【0082】
表1から確認できるように、バイアス層を内層部Iと外層部IIに分割配置した比較例3と分割配置しなかった比較例1、2とを比較すると、比較例3の方が、フレックスを大きくすること無く、かつ強度を低下させることなく、バランスよくトルクを小さくできることが確認できた。
さらに、バイアス層を分割配置すると共に、バイアス層に接触させてフープ層Bを形成した実施例1、2を、フープ層を設けなかった比較例3と比較すると、実施例1、2の方が、フレックスを大きくすること無く、トルクをより小さく、強度をより大きくできることが確認できた。これは、フープ層Bの断面変形抑制性能によって捩れ方向の変形が効果的に抑制されたことに因ると考えられる。
【0083】
フープ層Bを外層部のバイアスセット層A2に隣接配置した実施例1、2と、フープ層Bを内層部のバイアスセット層A1に隣接配置した比較例4とを比較すると、実施例1、2の方がトルクを効果的に小さくできることが確認できた。
また、フープ層Bを外層部のバイアスセット層A2の外側に隣接配置した実施例2と、内側に隣接配置した実施例1とを比較すると、実施例2の方がトルクをより低下できることが分かった。
【0084】
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の厚み比T2/T1が異なる実施例2〜実施例6を比較すると、厚み比が1〜1.4の範囲内の実施例2、3、6の結果は良好であったが、1未満の実施例4はトルク低下効果が弱まり、1.4を超えた実施例5は、フレックスが増大し強度も低下した。
【0085】
バイアスセット層A1、A2の繊維角度が異なる実施例7〜11および比較例5、6を比較すると、繊維角度が±25°〜65°の範囲内の実施例7〜11はトルク、フレックス、強度がバランスよく良好であったが、繊維角度が±25°〜65°の範囲外の比較例5、6は、トルクを効果的に低下できなかった。
さらに、バイアスセット層A1、A2の繊維角度を小さくすると、シャフト先端側の強度が向上し、繊維角度を大きくすると、グリップ側の強度が向上する傾向であることが確認できた。
【0086】
比較例7の結果から、内層部と外層部のバイアスセットセット層A1、A2の繊維角度比θ2/θ1を2より大きくすると、フレックスが増大するうえ、トルクを低下できないことが確認出来た。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第一実施形態に係るゴルフクラブシャフトの概略図である。
【図2】図1に示すゴルフクラブシャフトのプリプレグの積層構成を示す図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】第2実施形態のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図5】第3実施形態のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図6】第4実施形態のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図7】実施例12のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図8】比較例1のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図9】比較例2のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図10】比較例3のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図11】比較例4のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図12】順式フレックスの測定方法を示す図である。
【図13】トルクの測定方法を示す図である。
【図14】三点曲げ強度の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
10 シャフト
21〜35 繊維強化プリプレグ
41〜49 全長層
A1 内側バイアスセット層
A2 外側バイアスセット層
B フープ層
C 最外全長ストレート層
I 内層部
II 外層部
III 中層部
表中の1〜8 全長層
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブシャフトに関し、詳しくは、軽量なゴルフクラブシャフトの強度、方向性、飛距離の向上を図るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、打球の飛距離向上のため、ゴルフクラブシャフトとヘッドの軽量化が進んでいる。そのため、ゴルフクラブシャフトの材料は、従来の主流であったスチールから、軽量で、比強度、比剛性の高いカーボン等の強化繊維を樹脂に含浸したプリプレグを積層した繊維強化樹脂製が主流となっている。
【0003】
前記プリプレグを積層した繊維強化樹脂製のゴルフクラブシャフトでは、シャフト軸線に対して強化繊維の配向角度を傾斜させたバイアス層がトルクに影響を与えるためシャフトの内層部に配置し、シャフト軸線に対して強化繊維の配向角度を略平行としたストレート層がフレックスに影響を与えるため、シャフトの外層部に配置する構成が一般的である。
【0004】
シャフトの軽量化は、プリプレグのボリューム(目付量や層数)の削減で実施することが一般的であるが、この手法では、強度低下を招きやすいと共に、トルクやフレックスが大きくなる点に問題がある。
即ち、シャフトの軽量化により、一般的にヘッドスピードは速くなるが、トルクが大きい場合はヘッドの返りが遅くなるため、方向性悪化の大きな原因となる。一方、フレックスが大きい場合は、シャフトが柔らかいため、撓り過ぎてエネルギーロスを生じ、飛距離増大の妨げとなる。
【0005】
トルクを小さく方法としては、トルクに影響を与えるバイアス層の樹脂目付量増加、あるいは繊維種の高弾性化が一般的である。
フレックスを小さくする方法としては、フレックスに影響を与えるストレート層の樹脂目付量増加、あるいは繊維種の高弾性化が一般的である。
しかしながら、プリプレグの樹脂目付量ん増加は軽量化に反し、繊維種の高弾性化は繊維の引張弾性率が30t/mm2を超えると強度低下を招く点に問題がある。
そこで、軽量性と強度を維持しながら所望のフレックスとトルクを得ることが課題となっている。
【0006】
この種の問題に関し、特開2003−180890号(特許文献1)では、シャフトの中間部分に±20°〜65°のバイアス層を配置することで、軽量性を維持しながら、振動吸収性と方向性を向上させることが提案されている。しかしながら、この場合、バイアス層を追加すると軽量化に反し、ストレート層やフープ層に置き換えてバイアス層を配置する場合と曲げ強度やつぶし強度が低下しやすくなり、改善の余地がある。
【0007】
また、特開2004−305332号(特許文献2)では、シャフトの内層を繊維の配向角が±35°〜55°のバイアス層で形成すると共に、シャフトの外層をストレート層で形成し、かつ、最外層の少なくとも一部に繊維の配向角が±5°〜30°のバイアス層を形成することが提案されている。
これにより、内層のバイアス層で捩じれ剛性を高め、外層のストレート層で曲げ剛性を高め、最外層のバイアス層で繊維の変形量を小さくし、曲げ強度を高めることができる。しかしながら、最外層は塗装の関係で研磨され、バイアス層が研磨されることで所期の強度やトルクが十分な性能が得られない恐れがある。
【0008】
【特許文献1】特開2003−180890号公報
【特許文献2】特開2004−305332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、軽量性を備えると共に、所望のフレックスおよびトルクをバランスよく備え、優れた飛距離、打球方向性、強度を併せ持つゴルフクラブシャフトの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、プリプレグの積層体からなるゴルフクラブシャフトであって、
シャフト全長に配置する前記プリプレグからなる全長層を少なくも6層備え、
前記全長層として、強化繊維のシャフト軸線に対する配向角θ°が±25°以上±65°以下の範囲内であると共に、前記配向角が+θ°である一層のバイアス層と−θ°である一層のバイアス層とを互いの強化繊維が交差するように内側・外側バイアス層として重ね合わせて積層したバイアスセット層を少なくとも2組備え、
前記全長層の積層数のうち、シャフト内周側の半数を内層部、シャフト外周側の半数を外層部として分けると、少なくとも1組の前記バイアスセット層の外側バイアス層は前記外層部に配置している一方、他の少なくとも1組のバイアスセット層の内側バイアス層は前記内層部に配置し、
さらに、強化繊維のシャフト軸線に対する配向角が±80°以上90°以下の範囲内であるフープ層を、前記外層部のバイアス層に接触させて配置し、かつ、
前記外層部の最外全長層は、強化繊維のシャフト軸線に対する配向角が0°以上±10°以下の範囲内であるストレート層としていることを特徴とするゴルフクラブシャフトを提供している。
【0011】
前記プリプレグの積層数は、1枚のプリプレグによる1周層を1層として数えたものである。
また、前記全長層の積層数が偶数の場合は、半数ずつを内層部と外層部とに分けるが、奇数の場合は、中間の一層を中層部とし、該中層部を除いた半数ずつを内層部と外層部として規定している。
【0012】
前記したように、少なくとも2組のバイアスセット層のうち、1組のバイアスセット層の外側バイアス層は前記外層部に配置していると一方、他の1組のバイアスセット層の内側バイアス層は前記内層部に配置している。
具体的には、1組のバイアスセット層は、その外側バイアス層と内側バイアス層の両方を外層部に配置する場合と、外側バイアス層は外層部に配置し、内側バイアス層は中層部または内層部に配置する場合の3つのパターンがある。
さらに、他の1組のバイアスセット層は、その外側バイアス層と内側バイアス層の両方を内層部に配置する場合と、内側バイアス層は内層部に配置し、外側バイアス層は中層部または外層部に配置する場合の3つのパターンがある。
いずれのパターンでもよいが、前記したように、少なくとも、1つのバイアスセット層の外側バイアス層が外層部に位置し、他のバイアスセット層の内側バイアス層が内層部に位置させ、積層構成としたシャフトの内周側と外周側とにバランス層をバランス良く配置している。
【0013】
通常のシャフトでは中心側(即ち、内層側)に配置されることが多かったバイアス層を分割し、前記のように、本発明のゴルフクラブシャフトは、内層部と外層部にバランスよく配置することを特徴とし、該積層構成とすることで、軽量性を維持し、かつ、フレックスを大きくすることなく、トルク値を低下させることができ、打球方向性と飛距離の向上が可能となる。
【0014】
また、バイアスセット層を構成する内側バイアス層および外側バイアス層は、その強化繊維のシャフト軸線に対する角度が小さいほど曲げ強度向上に寄与し、大きいほどつぶし強度向上に寄与する。本発明では、このバイアス層の繊維角度を±25°以上65°以下の範囲内で変更・調節することにより、シャフト強度をバランスよく高めている。
前記バイアス層の強化繊維の配向角を±25°以上65°以下の範囲内としているのは、±25°未満あるいは±65°より大きい配向角では、シャフト捩じれ方向から逸脱するため所望のトルクが得られず、打球方向性を向上できないことに因る。
なお、前記バイアス層は、配向角が+θ°のプリプレグと−θ°のプリプレグとを貼り合わせた状態で巻きつけて積層しても、あるいは、一方を巻きつけた後に重ねて他方を巻きつけて積層してもよい。
【0015】
また、本発明のシャフトでは、フープ層を外層部に配置するバイアス層に接触させて配置している。シャフト軸線に対して強化繊維を略直交方向とするフープ層は、断面変形抑制性能があり、フレックスを変えることなくつぶれ剛性、つぶれ強度を向上させ、その結果、3点曲げ強度の向上につながるという特徴を有する。
該フープ層は、外層部に配置するバイアス層に接触させて配置しており、このフープ層を接触させるバイアス層は、バイアスセット層における外側バイアス層でも良いし、内側バイアス層でもよい。しかしながら、フープ層により断面変形抑制性能をより効果的に発揮させるには、外層部に配置するバイアスセット層のうち、外側バイアス層の外周面に接触させて配置することが最も好ましい。
このように、外層部に配置するバイアス層にフープ層を接触させて配置することにより、フープ層の断面変形抑制性能によって、ねじれ方向の断面変形を抑えることができ、トルクをより効果的に低下させて打球方向性を一層向上させることができる。
【0016】
さらに、本発明のシャフトでは、前記外層部の最外全長層にストレート層を配置していることにより、研磨による影響をバイアス層が受けずに済み、強度やトルクにおいて十分な性能を発揮することができる。
【0017】
本発明のシャフトは、バイアスセット層、フープ層およびストレート層を前記のように配置した積層構成としていることにより、軽量シャフトとしても、優れた強度を備えると共に、所望のフレックスとトルクをバランスよく設定でき、打球飛距離と方向性を高めることができる。また、繊維角度の組み合わせによって、低下させたトルクを維持したまま強度を向上させることもできる。
【0018】
前記シャフトの重量は50g以上70g以下とすることが好ましい。
その理由は50g未満ではシャフト重心点がヘッド側になるため、クラブバランスを調整する際に重いバランスにしか調整できず、スイング時に重く感じられ振り抜きにくいクラブとなる一方、70gを越えると、ヘッドスピードが上がらず、飛距離が低下してしまうことに因る。
【0019】
また、前記フープ層に使用するプリプレグは、強化繊維の引張弾性率が30t/mm2以上80t/mm2以下とし、樹脂含有率は30%以上40%以下とすることが好ましい。
フープ層の強化繊維の引張弾性率を30〜80t/mm2としているのは、30t/mm2未満では必要な断面変形抑制性能が得られず、80t/mm2を超えると、繊維の弾性が強くなりすぎて積層密着が困難になることに因る。
前記「引張弾性率」は、JISR7601:1986「炭素繊維試験方法」に準拠して測定している。
また、フープ層の樹脂含量率を30%以上40%以下としているのは、30%未満ではフープ層の積層密着力が低下し、40%を超えると、フープ層が厚くなりすぎて重量増加を招くことに因る。
【0020】
前記内層部の前記バイアスセット層の強化繊維の配向角を±θ1°とし、外層部の前記バイアスセット層の強化繊維の配向角を±θ2°とすると、θ2/θ1は1以上2以下の範囲内であることが好ましい。
このように内外バイアスセット層の繊維角度比θ2/θ1を設定することにより、シャフトの重量あるいは肉厚に応じた強度向上が可能となる。即ち、θ2/θ1を1以上2以下としているのは、1未満では、フレックス値は維持できるが、つぶし方向の強度が低下することで曲げ強度も低下してしまい、2より大きくすると、強度は維持できるが、フレックスが大きくなりすぎて、エネルギーロスによる飛距離低下を生じることに因る。
このθ2/θ1の下限は、より好ましくは1.2以上、さらには1.3以上、上限は1.8以下、さらには1.5以下が好ましい。
【0021】
内層部のバイアスセット層の前記繊維角度θ1は、小さい方が曲げ強度が向上するため、25°以上50°以下が好ましく、さらには25°以上45°以下が好ましく、特に25°以上40°以下が好ましい。
外層部のバイアスセット層の前記繊維角度θ2は、大きい方がつぶし方向の強度が向上し、肉厚の薄い軽量シャフトではつぶし方向の強度向上に伴い曲げ強度も向上するため、40°以上65°以下が好ましく、さらには45°以上65°以下、特に50°以上65°以下が好ましい。
【0022】
前記内層部のバイアスセット層の総厚さT1と、前記外層部のバイアスセット層の総厚さT2の比T2/T1は、1以上1.4以下の範囲内であることが好ましい。
これにより、シャフト強度を維持しながらトルクを小さくすることが可能となる。
即ち、前記厚み比T2/T1を1以上1.4以下としているのは、1未満ではトルク低下の効果が小さく、方向性が向上せず、1.4より大きくすると、トルクが低下して捩じれにくいシャフトとなるが、相対的にストレート層が内寄りに配置されることになり、フレックスが増大し、強度が低下することに因る。好ましくは、T2/T1の下限は1.1以上がよい。
【0023】
前記全長層の積層数が奇数の場合は、中間の一層を中層部とし、該中層部としてストレート層を配置することが好ましい。このように中層部としてストレート層を配置すると、フレックスの増大を抑えてトルクを小さくすることができる。
【0024】
前記プリプレグに用いられる樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられるが、強度と剛性の点より、熱硬化性樹脂が好ましく、特にエポキシ系樹脂が好ましい。
【0025】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ケイ素樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0026】
前記プリプレグに用いられる強化繊維としては、比重が小さく弾性率と強度が高いという点からカーボン繊維が好ましいが、その他、一般に高性能強化繊維として使用される繊維が用いられる。例えば、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。
【発明の効果】
【0027】
上述のように本発明によれば、トルクに影響するバイアス層を、増加するのではなく、内層部と外層部とに分割してバランスよく配置し、かつ、最外全長層にストレート層を配置することにより、重量増加を抑制すると共に強度、フレックスを維持しながら、トルクを低下させることができ、さらに、外側のバイアスセット層に接触させてフープ層を配置することにより、フープ層が有する断面変形抑制性能をトルク低下に寄与させることができ、捩れ方向の断面変形が抑制されるため、トルクを一層効果的に低下させることができる。従って、軽量性、優れた強度、優れた飛距離と方向性の全てをバランスよく備えるゴルフシャフトとすることができる。
【0028】
また、バイアス層の繊維角度を±25°〜65°の範囲内で変更、調節することで、低いトルクを維持したまま曲げ強度とつぶし強度を増減できるため、所望のトルクとシャフト強度とをバランスよく得ることができる。
【0029】
さらに、内側のバイアスセット層の繊維角度θ1°と外側のバイアスセット層の繊維角度θ2°の比θ2/θ1を1以上2以下とすることにより、所望のつぶし強度と所望のフレックスをバランスよく得ることができる。
また、内側のバイアスセット層の厚みT1と外側のバイアスセット層の厚みT2の比T2/T1を1以上1.4以下とすることにより、トルクの低下効果と、所望のフレックスをバランスよく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3に本発明の第一実施形態に係るゴルフクラブ用のシャフト10を示す。
【0031】
シャフト10は、図2に示すプリプレグ21〜32の積層体からなるテーパー状の長尺な管状体よりなり、前記プリプレグ21〜32のうちプリプレグ22、23、25〜30の8層はシャフトの全長に配置する全長層(1〜8)を形成している。
図1に示すように、シャフト10の小径側のヘッド側先端11にはヘッド13が取り付けられ、大径側のグリップ側後端12にはグリップ14が取り付けられている。本実施形態では、シャフト10の全長は1195mmとし、シャフト重量は63gとしている。
【0032】
前記シャフト10は、図2に示すように、前記プリプレグ21〜32を、内側からプリプレグ21〜32の順にシートワインディング製法によりマンドレル20に1周ずつ巻きつけて積層した後、ポリエチレン製やポリエチレンテレフタレート製等のテープで圧力をかけながらラッピングし、これをオーブン中で加熱加圧し樹脂を硬化させて一体的に成形し、その後、マンドレル20を引き抜いてシャフト10を製造している。シャフト表面は研磨を行った後、両端をカットして塗装している。
【0033】
シャフト10を構成する前記プリプレグ21〜32はいずれも、カーボン繊維からなる強化繊維F21〜F32を引き揃えてエポキシ樹脂を含浸させてなり、樹脂含有率はフープ層のプリプレグ以外はすべて25%とし、フープ層のプリプレグは30%〜40%としている。前記強化繊維F21〜F32の引張弾性率は30t/mm2としている。
【0034】
詳しくは、プリプレグ21は、ヘッド側先端部に部分的に配置され、長さを197mmとし、強化繊維F21は、シャフト軸線に対してなす配向角を0°としている。
プリプレグ22、23はいずれも、シャフト全長に配置され、強化繊維F22は、シャフト軸線に対してなす配向角を−45°とし、強化繊維F23は、シャフト軸線に対してなす配向角を+45°としている。この2枚の繊維強化プリプレグ22、23を、互いの強化繊維F22、F23が交差するように重ねて貼りあわせた状態で巻き付けて、後述の内層部側のバイアスセット層A1を形成している。
プリプレグ24は、ヘッド側先端部に部分的に配置され、長さを267mmとし、強化繊維F24は、シャフト軸線に対してなす配向角を0°とし、ストレート層を形成している。
プリプレグ25、26はいずれも、シャフト全長に配置され、強化繊維F25、26は、シャフト軸線に対してなす配向角を0°とし、ストレート層を形成している。
プリプレグ27、28はいずれも、シャフト全長に配置され、強化繊維F27は、シャフト軸線に対してなす配向角を−45°とし、強化繊維F28は、シャフト軸線に対してなす配向角を+45°としている。この2枚の繊維強化プリプレグ27、28を、互いの強化繊維F27、F28が交差するように重ねて貼りあわせた状態で巻き付けて、後述の外層部側のバイアスセット層A2を形成している。
プリプレグ29は、シャフト全長に配置され、強化繊維F29はシャフト軸線に対してなす配向角を90°とし、フープ層Bを形成している。
プリプレグ30は、シャフト全長に配置され、強化繊維F30は、シャフト軸線に対してなす配向角を0°とし、後述の最外周ストレート層Cを形成している。
プリプレグ31は、ヘッド側先端部に部分的に配置され、長さを217mmとし、強化繊維F31は、シャフト軸線に対してなす配向角を0°としている。
プリプレグ32は、ヘッド側先端部に部分的に配置され、長さを167mmとし、強化繊維F32は、シャフト軸線に対してなす配向角を0°としている。
【0035】
前記シャフト10は、前記のように、プリプレグ22、23、25、26、27、28、29、30からなる計8層の全長層を備えている。
詳しくは、図3に示すように、シャフト内周側4層の全長層22、23、25、26からなる内層部Iと、その外周側4層の全長層27、28、29、30、31からなる外層部IIとに分けると、内層部Iにプリプレグ22、23で形成される内層側のバイアスセット層A1を配置している。該内層部のバイアスセット層A1では、プリプレグ22が内側バイアス層、プリプレグ23が外側バイアス層となる。
一方、前記外層部IIに、プリプレグ27と28で形成される外層側のバイアスセット層A2を配置している。該外層部のバイアスセット層A2では、プリプレグ27が内層側バイアス層、プリプレグ28が外層側バイアス層となる。
【0036】
前記外層部IIには、プリプレグ29で形成される前記フープ層Bを、前記外層部のバイアスセット層A2の外側バイアス層28の外周面に接触させて配置している。また、外層部IIの最外全長層には前記のようにプリプレグ30を配置し、最外全長ストレート層Cとしている。
【0037】
前記内層部Iのバイアスセット層A1の強化繊維の配向角を±θ1°は±45°であり、外層部IIのバイアスセット層A2の強化繊維の配向角を±θ2°は±45°である。
よって、θ2/θ1は1である。
【0038】
前記内層部Iのバイアスセット層A1の総厚み(T1)と、外層部IIのバイアスセット層A2の総厚み(T2)は、いずれも0.290mmとしている。
【0039】
前記構成よりなるシャフト10は、トルクに影響を与えるバイアス層の積層数やプリプレグ目付量を増やすのではなく、従来であればシャフト内層部にのみ配置されていた全長バイアス層を、内層部Iにバイアスセット層A1を配置し、外層部IIにバイアスセット層A2を配置して分割している。このように、内層部Iのみでなく外層部IIにもバランスよく配置しているため、シャフト重量を増加することなく、かつ、フレックスや強度を維持したまま、トルクを低下させることが可能となる。
【0040】
また、前記フープ層Bは外層部IIのバイアスセット層A2の外側バイアス層のプリプレグ28の外周面に接触させて配置しているため、フープ層Bが有する断面変形抑制性能が効果的に発揮されて強度が向上すると共に、フープ層Bの断面変形抑制性能を、トルクに大きな影響を与える外層部IIのバイアスセット層A2のトルク低下性能に寄与させることができるため、トルクを一層効果的に低下させることができる。
【0041】
さらに、最外全長層としてプリプレグ30からなるストレート層Cを配置しているため、外層部IIのバイアスセット層A2は、塗装の関係で必要となる研磨の影響を受けずに済み、トルク低下効果を十分に発揮することができる。
【0042】
これらにより、軽量性を備え、かつ強度、飛距離、方向性に優れたシャフトを実現することができる。
さらに、前記内外層部のバイアスセット層A1、A2の強化繊維F22、F23、F27、F28の配向角は、いずれも+45°あるいは−45°であり、±25°以上65°以下の範囲内であるため、トルク低下効果を十分発揮できると共に、曲げ方向およびつぶし方向のシャフト強度もバランスよく高めることができる。
【0043】
また、内層部Iのバイアスセット層A1の強化繊維F22、F23の配向角に対する外層部IIのバイアスセット層A2の強化繊維F27、F28の配向角の比θ2/θ1は1であり、1〜2の範囲内であるため、フレックスの増大を抑制しながらシャフト強度を高めることができる。
さらに、内層部Iのバイアスセット層A1の厚みT1に対する外層部IIのバイアスセット層A2の厚みT2の比T2/T1は1であり、1〜1.4の範囲内であるため、フレックスの増大を抑制しながらバランスよくトルクを低下させることができる。
【0044】
さらにまた、前記フープ層Bは、強化繊維F29の引張弾性率が30t/mm2であり、樹脂含有率が37.5%であるため、フープ層Bの良好な積層密着と重量増加抑制とをバランスよく実現できる。
【0045】
図4に本発明の第2実施形態を示す。
本実施形態は、フープ層Bとなるプリプレグ33を外層部IIのバイアスセット層A2の内側バイアス層を構成するプリプレグ27の内周面に接触させて配置している。また、該バイアスセット層A2の外側バイアス層を構成するプリプレグ28の外周面に最外層全長層のストレート層Cを構成するプリプレグ30を配置している。
【0046】
即ち、製造工程におけるプリプレグの巻き付け順は、まず、プリプレグ21〜26を内側から順次に積層した後、強化繊維F33のシャフト軸線に対する配向角を90°とするプリプレグ33を巻きつけてフープ層Bを積層し、次に、プリプレグ27、28を巻きつけてバイアスセット層A2を形成し、次いで、プリプレグ30〜32を順次積層している。これにより、計8層の全長層1〜8は、プリプレグ22、23、25、26、33、27、28、30で形成している。
他の構成は第1実施形態と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
本実施形態においても、トルクに大きく影響する外層部IIのバイアスセット層A2に接触させてフープ層Bを配置しているため、フープ層Bの断面変形抑制性能をトルク低下に効果的に寄与させることができる。
【0048】
図5に本発明の第3実施形態を示す。
本実施形態のシャフトでは、プリプレグ22、23、25、27、28、29、34、30によって計8層の全長層を形成している。
プリプレグ27と28とからなるバイアスセット層A2のうち、外側バイアス層となるプリプレグ28は外層部IIに配置しているが、内側バイアス層となるプリプレグ27は内層部Iに配置している。即ち、バイアスセット層A2では内側バイアス層を内層部に、外側バイアス層を外層部に配置し、内層部と外層部とに分割配置している。
また、該内層部Iにプリプレグ22と23とからなるバイアスセット層A1を配置している。
該内層部Iにおいて、バイアスセット層A1の外側バイアス層となるプリプレグ23の外周に、全長層としてストレート層となるプリプレグ25を配置し、該プリプレグ25の外周にバイアスセット層A2を配置している。
外層部IIでは、前記バイアスセット層A2の外側バイアス層のプリプレグ28の外周にフープ層Bとなるプリプレグ29を配置している。該フープ層Bとプリプレグ30からなる最外全長ストレート層Cとの間に、強化繊維F34のシャフト軸線に対する配向角を0°とするプリプレグ34からなる全長ストレート層を配置している。
【0049】
即ち、製造工程におけるプリプレグの巻き付け順は、まず、プリプレグ21〜25を内側から順次積層した後、プリプレグ27、28を巻き付けてバイアスセット層A2を形成し、次いで、プリプレグ29を巻き付けてフープ層Bを形成し、次いで、プリプレグ34の次にプリプレグ30を巻き付けて最外全長ストレート層Cを形成し、最後に、プリプレグ31、32をヘッド側先端部に順次積層している。
その他の構成は前記第1実施形態と同様であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
本実施形態においても、プリプレグ22、23で形成されるバイアスセット層A1を内層部Iに配置し、プリプレグ27、28で形成されるバイアスセット層A2のうち外側バイアス層のプリプレグ28が外層部IIに配置し、バイアス層を内層部Iと外層部IIとに分散配置している。
また、外層部IIに位置するバイアスセット層A2の外側バイアス層の外周面にフープ層Bを接触配置し、最外周ストレート層Cを設けている。これにより、重量増大とフレックス増大を抑制しながら、バランスよく、かつ、効果的にトルクを低下させることができる。
【0051】
図6に本発明の第4実施形態を示す。
本実施形態は、プリプレグ22、23、25、26、35、27、28、29、30によって計9層の全長層を設けている。この9層の全長層のうち、シャフト中心側の4層を内層部Iとし、外周側の4層を外層部IIとし、中間のI層のプリプレグ35を中層部IIIとしている。
該中層部IIIのプリプレグ35は、強化繊維F35のシャフト軸線方向に対する配向角を0°とするストレート層を形成するプリプレグとしている。
【0052】
前記内層部Iにはプリプレグ22と23とからなるバイアスセット層A1、外層部IIにはプリプレグ27、28からなるバイアスセット層A2を配置している、また、外層部IIのバイアスセット層A2の外側バイアス層のプリプレグ28の外周面にフープ層Bとなるプリプレグ29を接触させて配置し、該プリプレグ29の外周面に最外層全長層のストレート層Cとなるプリプレグ30を配置している。これにより、フレックスの増大を最小限に抑えながら、トルクを低下させることができる。
【0053】
(実施例)
以下に、本発明のゴルフクラブシャフトの実施例1〜13および比較例1〜7について詳述する。
下記の表1および表2に示すように、表1に示す実施例1〜13は全て全長層1〜8を8層備えたものとし、表2に示す比較例1〜3は全長層を7層とし、比較例4〜7は8層とした。
バイアス層は全て±45°とし、フープ層は90°とし、ストレート層は0°とした。
フープ層の有無またはフープ層の積層位置、バイアス層の積層位置、および厚みを異ならせた実施例1〜13および比較例1〜7を作製し、順式フレックス、トルク、3点曲げ強度、つぶし強度を測定し、その結果を表1および表2に示した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
実施例1〜13および比較例1〜7のいずれも、カーボン繊維を強化繊維としてエポキシ樹脂を含浸してなる三菱レイヨン社製のプリプレグを用い、シートワインディング製法により作製し、その作製方法は前記第一実施形態と同一とした。表1には全長層1〜8(1〜7)ついてのみ記載した。
また、実施例1〜13および比較例1〜7はいずれも、シャフト長さを1195mmとし、各実施例および比較例のシャフト重量およびシャフトバランスは、表1に示すとおり設定した。
【0058】
(実施例1)
プリプレグの積層構成を前記第2実施形態と同一構成とし、バイアスセット層A1を内層部Iに、バイアスセット層A2を外層部IIに配置すると共に、バイアスセット層A2の内周側に接触させてフープ層Bを配置した。最外全長層に繊維角度0°のストレート層を形成した。バイアスセット層A1、A2の繊維角度の比θ2/θ1は1とした。
全長層1、2、6、7には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.145mmの品番「MR350C−175S」を使用した。全長層3、4、8には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.124mmの品番「MR350C−150S」を使用した。フープ層Bを形成する全長層5には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率37.5%、厚み0.021mmの品番「MR350C−025S」を使用した。
内層部のバイアスセット層A1の厚みT1は0.290mmとし、外層部バイアスセット層A2の厚みT2は0.290mmとし、T2/T1を1に設定した。また、全長層3、4からなる内層のストレート層の厚みは0.248mmとし、全長層8からなる外層のストレート層8の厚みは0.124mmとした。
【0059】
(実施例2)
プリプレグの積層構成を前記第1実施形態と同一構成とし、バイアスセット層A1を内層部Iに、バイアスセット層A2を外層部IIに配置すると共に、バイアスセット層A2の外側バイアス層の外周に接触させてフープ層Bを配置した。さらに最外全長層8に繊維角度0°のストレート層を配置した。バイアスセット層A1、A2の繊維角度の比θ2/θ1は1に設定した。
前記ストレート層、バイアスセット層A1、A2およびフープ層Bのそれぞれに使用したプリプレグ種は前記実施例1と同一とした。
バイアスセット層A1の厚みT1は0.290mmとし、バイアスセット層A2の厚みT2は0.290mmとし、T2/T1を1に設定した。また、全長層3、4からなる内層のストレート層の厚みは0.248mmとし、全長層8からなる外層ストレート層の厚みは0.124mmとした。
【0060】
(実施例3)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の厚みの比T2/T1を変えた。
即ち、内層部のバイアスセット層A1には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.124mmの品番「MR350C−150S」を使用した。外層部のバイアスセット層A2には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.083mmの品番「MR350C−100S」を2周回分ずつ使用した。
これにより、バイアスセット層A1の厚みT1を0.248mmとし、バイアスセット層A2の厚みT2を0.352mmとし、T2/T1を1.42に設定した。
その他の使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0061】
(実施例4)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の厚みの比T2/T1を変えた。
即ち、内層部のバイアスセット層A1には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.083mmの品番「MR350C−100S」を2周回分ずつ使用した。外層部のバイアスセット層A2には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.124mmの品番「MR350C−150S」を使用した。
これにより、バイアスセット層A1の厚みT1を0.352mmとし、バイアスセット層A2の厚みT2を0.248mmとし、T2/T1を0.70に設定した。
その他の使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0062】
(実施例5)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の厚みの比T2/T1を変えた。
即ち、内層部のバイアスセット層A1には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.103mmの品番「MR350C−125S」を使用した。外層部のバイアスセット層A2には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.103mmの品番「MR350C−125S」を2周回分ずつ使用した。
これにより、バイアスセット層A1の厚みT1を0.206mmとし、バイアスセット層A2の厚みT2を0.412mmとし、T2/T1を2に設定した。
その他の使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0063】
(実施例6)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の厚みの比T2/T1を変えた。
即ち、内層部のバイアスセット層A1には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.083mmの品番「MR350C−100S」を2周回分ずつ使用した。外層部のバイアスセット層A2には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.103mmの品番「MR350C−125S」を使用した。
これにより、バイアスセット層A1の厚みT1を0.352mmとし、バイアスセット層A2の厚みT2を0.412mmとし、T2/T1を1.17に設定した。
その他の使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0064】
(実施例7)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の繊維角度を変えた。即ち、内層部のバイアスセット層A1と外層部バイアスセット層A2の繊維角度を、ともに±30°とした。
使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0065】
(実施例8)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の繊維角度を変えた。即ち、内層部のバイアスセット層A1と外層部のバイアスセット層A2の繊維角度を、ともに±60°とした。使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0066】
(実施例9)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の繊維角度の比θ2/θ1を変えた。即ち、内層部のバイアスセット層A1の繊維角度θ1を±30°とし、外層部のバイアスセット層A2の繊維角度θ2を±60°とし、繊維角度比θ2/θ1を2とした。使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0067】
(実施例10)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の繊維角度の比θ2/θ1を変えた。即ち、内層部のバイアスセット層A1の繊維角度θ1を±30°とし、外層部のバイアスセット層A2の繊維角度θ2を±45°とし、繊維角度比θ2/θ1を1.50とした。使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0068】
(実施例11)
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の繊維角度の比θ2/θ1を変えた。即ち、内層部のバイアスセット層A1の繊維角度θ1を±45°とし、外層部のバイアスセット層A2の繊維角度θ2を±60°とし、繊維角度比θ2/θ1を1.33とした。使用プリプレグ種およびプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。
【0069】
(実施例12)
全長層1〜8のうち、内層部Iの積層構成を変えた。
即ち、図7に示すように、内層部Iは、最内全長層1に繊維角度0°のストレート層を配置し、その外側の全長層2、3に内層部のバイアスセット層A1を配置し、その外側の全長層4をストレート層とし、内層部のバイアスセット層A1を2つのストレート層で挟む構成とした。
外層部IIのプリプレグの積層構成は実施例2と同一とした。また、ストレート層、バイアスセット層A1、A2およびフープ層Bのそれぞれに使用するプリプレグ種も実施例2と同一とした。
【0070】
(実施例13)
プリプレグの積層構成は前記第3実施形態と同一とした。即ち、内層部Iのストレート層を1層減らす一方、外層部IIのストレート層を1層増やし、外層部のバイアスセット層A2のうち外側の層5は外層部IIに配置したが、内側の層4は内層部Iに配置した。
詳しくは、内周側から順に全長層1、2に繊維角度±45°の内層部のバイアスセット層A1を形成し、全長層3に繊維角度0°のストレート層を形成した。全長層4、5に繊維角度±45°のバイアスセット層A2を形成し、全長層6に繊維角度90°のフープ層Bを形成し、全長層7、8に繊維角度0°のストレート層を形成した。
ストレート層、バイアスセット層A1、A2およびフープ層Bのそれぞれに使用したプリプレグ種は実施例2と同一とした。
内層部のバイアスセット層A1の厚みT1は0.290mmとし、バイアスセット層A2の厚みT2は0.290mmとし、T2/T1を1に設定した。また、全長層3からなる内層のストレート層の厚みは0.124mmとし、全長層7、8からなる外層のストレート層の厚みは0.248mmとした。
【0071】
(比較例1)
バイアスセット層A1、A2を内層部と外層部とに分割配置せず、内層側にかためて配置し、フープ層も形成しなかった。
即ち、プリプレグの積層構成は、図8に示すように、計7層の全長層1〜7のうち内層部Iから中層部IIIを形成する全長層1〜4に、繊維角度±45°の2組のバイアスセット層A1、A2を配置し、外層部IIを形成する全長層5〜7のすべてを繊維角度0°のストレート層とした。
使用プリプレグ種は、全長ストレート層5に繊維引張弾性率24t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.146mmの品番「TR350C−175S」を使用したが、全長ストレート層6、7には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.124mmの品番「MR350C−150S」を使用し、全長バイアス層1〜4には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.145mmの品番「MR350C−175S」を使用した。
二組のバイアスセット層A1、A2はいずれも厚みを0.290mmとした。また、全長層6、7からなる最外ストレート層は厚みを0.248mmとし、全長層5からなる内層のストレート層は厚みを0.146mmとした。
【0072】
(比較例2)
バイアスセット層A1、A2を内層部Iと外層部IIとに分割配置せず、外層側にかためて配置し、フープ層も形成しなかった。
即ち、プリプレグの積層構成は、図9に示すように、計7層の全長層1〜7のうち内層部Iを形成する全長層1〜3のすべてを繊維角度0°のストレート層とし、中層部III〜外層部IIを形成する全長層4〜7には、繊維角度±45°の2組のバイアスセット層A1、A2を配置した。
使用プリプレグ種は、最内全長ストレート層4に繊維引張弾性率24t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.146mmの品番「TR350C−175S」を使用した。全長ストレート層2、3には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.124mmの品番「MR350C−150S」を使用した。その他の全長バイアス層4〜7には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.145mmの品番「MR350C−175S」を使用した。
二組のバイアスセット層A1、A2はいずれも厚みを0.290mmとした。また、全長層1からなる内層のストレート層は厚みを0.146mmとし、全長層2、3からなるストレート層は厚みを0.248mmとした。
【0073】
(比較例3)
バイアスセット層A1、A2を内層部Iと外層部IIに分割配置したが、フープ層は設けなかった。
即ち、プリプレグの積層構成は、図10に示すように、計7層の全長層1〜7のうち、全長層1、2に、繊維角度±45°の内側バイアスセット層A1を配置し、全長層3、4を繊維角度0°のストレート層とし、全長層5、6に繊維角度±45°の外層部のバイアスセット層A2を配置し、最外全長層7を繊維角度0°のストレート層とした。
使用プリプレグ種は、全長ストレート層3に繊維引張弾性率24t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.146mmの品番「TR350C−175S」を使用した。他の全長層4、7には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.124mmの品番「MR350C−150S」を使用した。その他の全長バイアス層1、2、5、6には、繊維引張弾性率30t/mm2、樹脂含有率25%、厚み0.145mmの品番「MR350C−175S」を使用した。
二組のバイアスセット層A1、A2はいずれも厚みを0.290mmとした。また、全長層3、4からなる内層のストレート層は厚みを0.270mmとし、全長層7からなる最外ストレート層は厚みを0.124mmとした。
【0074】
(比較例4)
バイアスセット層A1、A2を内層部Iと外層部IIに分割配置し、フープ層Bを内側バイアスセット層A1に接触させて配置した。
即ち、プリプレグの積層構成は、図11に示すように、計8層の全長層1〜8のうち、全長層1、2に繊維角度±45°の内層部のバイアスセット層A1を配置し、その外側の全長層3に繊維角度90°のフープ層Bを配置し、全長層4、5を繊維角度0°のストレート層とした。全長層6、7は繊維角度±45°の外層部のバイアスセット層A2を形成し、最外全長層8を繊維角度0°のストレート層とした。
ストレート層、バイアスセット層A1、A2、フープ層Bのそれぞれに使用したプリプレグ種は、実施例1と同一とした。
二組のバイアスセット層A1、A2はいずれも厚みを0.290mmとした。また、全長層4、5からなる内層のストレート層は厚みを0.248mmとし、全長層8からなる最外ストレート層は厚みを0.124mmとした。
【0075】
(比較例5)
プリプレグの積層構成は実施例2と同一としたが、内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の繊維角度をいずれも±15°とし、本発明のバイアス層の配向角度から外した。その他の構成および使用プリプレグ種も実施例2と同一とした。
【0076】
(比較例6)
プリプレグの積層構成は実施例2と同一としたが、内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の繊維角度をいずれも±75°とし、本発明のバイアス層の配向角度から外した。その他の構成および使用プリプレグ種も実施例2と同一とした。
【0077】
(比較例7)
プリプレグの積層構成は実施例2と同一としたが、内層部のバイアスセット層A1の繊維角度を±15°とし、外層部のバイアスセット層A2の繊維角度を±75°とし、繊維角度比θ2/θ1を5とした。その他の構成および使用プリプレグ種も実施例2と同一とした。
【0078】
(順式フレックスの測定)
順式フレックスとはシャフトのグリップ側(手元側)の硬さの指標であり、図12に示すように、ヘッド側先端11から799mmの位置を支点P1とし、この支点P1からグリップ側後端12寄りの140mmの位置を固定点P2とし、ヘッド側先端11から64mmの位置に2.7kgの錘W1を吊り下げ、ヘット側先端11の撓み量を測定して得たものである。
【0079】
(トルクの測定)
前記トルク(deg)は、図13に示すように、シャフト10のヘッド側先端11から40mmの位置を固定し、該ヘッド側先端11から865mmの点に136.3N・cm(13.9kgf・cm)のトルクを加え、そのときの捩じれ角度を測定したものである。
【0080】
(3点曲げ強度の測定)
三点曲げ強度とは、製品安全協会が定める破壊強度である。図14に示すように、3点でシャフト10を支え、上方から荷重Fを加え、シャフト10が破断した時の荷重値(ピーク値)を測定した。測定点は、シャフト10のヘッド側先端11から175mmの位置(A点)、525mmの位置(B点)、993mmの位置(C点)とした。支持点51のスパンは300mmとした。(図示はA点測定の例)
【0081】
(つぶし強度の測定)
万能圧縮試験機を用い、シャフト10のグリップ側後端12から10mmの位置、100mmの位置、200mmの位置、300mmの位置を中心に長さ約10mmの試験片を作成し圧縮試験を行い、その強力を示した。
【0082】
表1から確認できるように、バイアス層を内層部Iと外層部IIに分割配置した比較例3と分割配置しなかった比較例1、2とを比較すると、比較例3の方が、フレックスを大きくすること無く、かつ強度を低下させることなく、バランスよくトルクを小さくできることが確認できた。
さらに、バイアス層を分割配置すると共に、バイアス層に接触させてフープ層Bを形成した実施例1、2を、フープ層を設けなかった比較例3と比較すると、実施例1、2の方が、フレックスを大きくすること無く、トルクをより小さく、強度をより大きくできることが確認できた。これは、フープ層Bの断面変形抑制性能によって捩れ方向の変形が効果的に抑制されたことに因ると考えられる。
【0083】
フープ層Bを外層部のバイアスセット層A2に隣接配置した実施例1、2と、フープ層Bを内層部のバイアスセット層A1に隣接配置した比較例4とを比較すると、実施例1、2の方がトルクを効果的に小さくできることが確認できた。
また、フープ層Bを外層部のバイアスセット層A2の外側に隣接配置した実施例2と、内側に隣接配置した実施例1とを比較すると、実施例2の方がトルクをより低下できることが分かった。
【0084】
内層部と外層部のバイアスセット層A1、A2の厚み比T2/T1が異なる実施例2〜実施例6を比較すると、厚み比が1〜1.4の範囲内の実施例2、3、6の結果は良好であったが、1未満の実施例4はトルク低下効果が弱まり、1.4を超えた実施例5は、フレックスが増大し強度も低下した。
【0085】
バイアスセット層A1、A2の繊維角度が異なる実施例7〜11および比較例5、6を比較すると、繊維角度が±25°〜65°の範囲内の実施例7〜11はトルク、フレックス、強度がバランスよく良好であったが、繊維角度が±25°〜65°の範囲外の比較例5、6は、トルクを効果的に低下できなかった。
さらに、バイアスセット層A1、A2の繊維角度を小さくすると、シャフト先端側の強度が向上し、繊維角度を大きくすると、グリップ側の強度が向上する傾向であることが確認できた。
【0086】
比較例7の結果から、内層部と外層部のバイアスセットセット層A1、A2の繊維角度比θ2/θ1を2より大きくすると、フレックスが増大するうえ、トルクを低下できないことが確認出来た。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第一実施形態に係るゴルフクラブシャフトの概略図である。
【図2】図1に示すゴルフクラブシャフトのプリプレグの積層構成を示す図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】第2実施形態のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図5】第3実施形態のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図6】第4実施形態のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図7】実施例12のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図8】比較例1のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図9】比較例2のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図10】比較例3のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図11】比較例4のプリプレグ積層構成を示す図である。
【図12】順式フレックスの測定方法を示す図である。
【図13】トルクの測定方法を示す図である。
【図14】三点曲げ強度の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
10 シャフト
21〜35 繊維強化プリプレグ
41〜49 全長層
A1 内側バイアスセット層
A2 外側バイアスセット層
B フープ層
C 最外全長ストレート層
I 内層部
II 外層部
III 中層部
表中の1〜8 全長層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリプレグの積層体からなるゴルフクラブシャフトであって、
シャフト全長に配置する前記プリプレグからなる全長層を少なくも6層備え、
前記全長層として、強化繊維のシャフト軸線に対する配向角θ°が±25°以上±65°以下の範囲内であると共に、前記配向角が+θ°である一層のバイアス層と−θ°である一層のバイアス層とを互いの強化繊維が交差するように内側・外側バイアス層として重ね合わせて積層したバイアスセット層を少なくとも2組備え、
前記全長層の積層数のうち、シャフト内周側の半数を内層部、シャフト外周側の半数を外層部として分けると、少なくとも1組の前記バイアスセット層の外側バイアス層は前記外層部に配置している一方、他の少なくとも1組のバイアスセット層の内側バイアス層は前記内層部に配置し、
さらに、強化繊維のシャフト軸線に対する配向角が±80°以上90°以下の範囲内であるフープ層を、前記外層部のバイアス層に接触させて配置し、かつ、
前記外層部の最外全長層は、強化繊維のシャフト軸線に対する配向角が0°以上±10°以下の範囲内であるストレート層としていることを特徴とするゴルフクラブシャフト。
【請求項2】
前記シャフトの重量は50g以上70g以下であり、
前記フープ層に使用するプリプレグは、強化繊維の引張弾性率が30t/mm2以上80t/mm2以下であると共に樹脂含有率が30%以上40%以下である請求項1に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項3】
前記内層部のバイアスセット層の強化繊維の配向角を±θ1°、前記外層部のバイアスセット層の強化繊維の配向角を±θ2°とすると、θ2/θ1は1以上2以下の範囲内である請求項1または請求項2に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項4】
前記内層部のバイアスセット層の総厚さT1と、前記外層部のバイアスセット層の総厚さT2の比T2/T1は、1以上1.4以下である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項5】
前記全長層の積層数が奇数であり、中間の一層を中層部とし、該中層部として、強化繊維のシャフト軸線に対する配向角が0°以上±10°以下の範囲内であるストレート層を配置している請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項1】
プリプレグの積層体からなるゴルフクラブシャフトであって、
シャフト全長に配置する前記プリプレグからなる全長層を少なくも6層備え、
前記全長層として、強化繊維のシャフト軸線に対する配向角θ°が±25°以上±65°以下の範囲内であると共に、前記配向角が+θ°である一層のバイアス層と−θ°である一層のバイアス層とを互いの強化繊維が交差するように内側・外側バイアス層として重ね合わせて積層したバイアスセット層を少なくとも2組備え、
前記全長層の積層数のうち、シャフト内周側の半数を内層部、シャフト外周側の半数を外層部として分けると、少なくとも1組の前記バイアスセット層の外側バイアス層は前記外層部に配置している一方、他の少なくとも1組のバイアスセット層の内側バイアス層は前記内層部に配置し、
さらに、強化繊維のシャフト軸線に対する配向角が±80°以上90°以下の範囲内であるフープ層を、前記外層部のバイアス層に接触させて配置し、かつ、
前記外層部の最外全長層は、強化繊維のシャフト軸線に対する配向角が0°以上±10°以下の範囲内であるストレート層としていることを特徴とするゴルフクラブシャフト。
【請求項2】
前記シャフトの重量は50g以上70g以下であり、
前記フープ層に使用するプリプレグは、強化繊維の引張弾性率が30t/mm2以上80t/mm2以下であると共に樹脂含有率が30%以上40%以下である請求項1に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項3】
前記内層部のバイアスセット層の強化繊維の配向角を±θ1°、前記外層部のバイアスセット層の強化繊維の配向角を±θ2°とすると、θ2/θ1は1以上2以下の範囲内である請求項1または請求項2に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項4】
前記内層部のバイアスセット層の総厚さT1と、前記外層部のバイアスセット層の総厚さT2の比T2/T1は、1以上1.4以下である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のゴルフクラブシャフト。
【請求項5】
前記全長層の積層数が奇数であり、中間の一層を中層部とし、該中層部として、強化繊維のシャフト軸線に対する配向角が0°以上±10°以下の範囲内であるストレート層を配置している請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のゴルフクラブシャフト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−60983(P2009−60983A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229444(P2007−229444)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】
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