説明

ゴルフクラブヘッド

【課題】簡素な構造で、部品の一部を交換するだけでシャフトの取付位置やヘッドの全体形状などを変更することができ、形状選択の自在性、汎用性に優れ、多くの部品を共通化することができ、在庫管理が容易で、量産性に優れ、初心者やアマチュア選手でも好み等に応じて手軽に重心位置などをカスタマイズしながら、長期間、使用することができ、メンテナンス性、取扱い性、省資源性に優れるゴルフクラブヘッドの提供。
【解決手段】シャフト取付基体と、シャフト取付基体のバックフェース面側に配設され密度や質量の異なる錘が着脱自在に保持されるバランス調整部と、シャフト取付基体のフェース面側に配設されシャフト取付基体を挟んでバランス調整部と着脱自在に連結されるフェース面側連結部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの好み等に応じて簡便に重心位置やシャフトの取付位置などをカスタマイズできる汎用性、メンテナンス性に優れたゴルフクラブヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のゴルフクラブは、飛距離を伸ばすことに主眼が置かれ、ヘッドの材質やロフト角度等の設計を重視するものが主流であり、個々のユーザの好みや癖、体調(年齢)などに応じたカスタマイズ化(調整)については、ほとんど検討されていなかった。
そこで、本願出願人は鋭意研究の結果、(特許文献1)を出願した。
(特許文献1)には、「1乃至複数のバランサーが着脱自在に収容され、ヘッド本体のバックフェース面側のトウ側及びヒール側に着脱自在に覆設されるカバー部を備えた左右一対のバランス調整部を有するゴルフクラブヘッドであって、カバー部が、バランサーの外周を囲繞するバランサー収容凹部と、バランサー収容凹部と仕切られヘッド本体のクラウン側及びソール側に形設され1乃至複数の重心高さ調整バランサーが収容される上下一対の重心高さ調整部と、を備えていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3148909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(特許文献1)のゴルフクラブヘッドは、プレーヤーの個性に合わせてヘッドの前後方向や左右方向だけでなく、上下方向の重心バランスを最適に調整することにより、容易にボールにバックスピン(逆回転)やトップスピンをかけたりすることができ、ボールにコントロールをつけ易く、汎用性、取扱い性に優れ、幅広い範囲で重心の微調整が可能で、重心調整の自在性に優れるものであった。
しかし、各々のバランサーや重心高さ調整バランサーの比重(材質)や質量を選択し、それらの数や配置の組合せなどにより、重心位置を調整する作業は煩雑であり、最適位置の決定には工数を有するという課題を有していた。
特に、上級者やプロ選手の場合は、このような微調整が必要であるが、初心者やアマチュア選手の場合には、細かな調整は不要であり、簡素な構成で大まかなバランス調整を手軽に行うことができるゴルフクラブヘッドの開発が要望されていた。
【0005】
本発明は上記課題を解決するもので、簡素な構造で、部品の一部を交換するだけでシャフトの取付位置やヘッドの全体形状などを変更することができ、形状選択の自在性、汎用性に優れ、多くの部品を共通化することができ、在庫管理が容易で、量産性に優れ、初心者やアマチュア選手でも好み等に応じて手軽に重心位置などをカスタマイズしながら、長期間、使用することができ、メンテナンス性、取扱い性、省資源性に優れるゴルフクラブヘッドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のゴルフクラブヘッドは、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載のゴルフクラブヘッドは、シャフト取付基体と、前記シャフト取付基体のバックフェース面側に配設され密度や質量の異なる錘が着脱自在に保持されるバランス調整部と、前記シャフト取付基体のフェース面側に配設され前記シャフト取付基体を挟んで前記バランス調整部と着脱自在に連結されるフェース面側連結部と、を備えている構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)シャフト取付基体と、バランス調整部と、フェース面側連結部を有する少なくとも三層以上の構造であるため、各々の部品の形状や材質を選択して交換するだけで、シャフトの取付位置や角度、ヘッド全体の形状、質量、重心バランスなどを大きく変化させることができ、形状選択の自在性、汎用性に優れる。
(2)密度や質量の異なる錘が着脱自在に保持されるバランス調整部を有するので、複数の錘の密度(材質)、質量、配列などを組合せることにより、ヘッド全体の質量や重心位置を手軽に調整することができ、メンテナンス性に優れる。
(3)シャフト取付基体を挟んでバランス調整部と着脱自在に連結されるフェース面側連結部を有するので、バランス調整部とフェース面側連結部でシャフト取付基体を確実に挟持することができ、固定安定性、耐久性に優れると共に、破損した部品のみを簡便に取替えることができ、省資源性、メンテナンス性に優れる。
(4)フェース面側連結部の材質(質量)を選択して交換するだけで、ヘッド全体の前後方向の重心位置を調整することができると共に、フェース面側連結部のフェース面(表面)の硬さによって、ボールへのタッチの感触を調整し、ユーザの好み等に対応することができ、重心位置調整の作業性、ヘッドの設計自在性に優れる。
(5)各部品の形状や材質、錘の材質や配置などによってヘッド全体の重心をフェース面側やソール面側が重くなるようにした場合、フェース面がボールの芯の下(赤道上の重心より低い位置)に当たり易くなり、ボールのバックスピン回転を増やすことができ、ボールにコントロールをつけ易く、特に短距離若しくは速いグリーンでのパッティング用のゴルフクラブヘッドとしての使用性に優れる。
(6)各部品の形状や材質、錘の材質や配置などによってヘッド全体の重心をクラウン側やバックフェース面が重くなるようにした場合、フェース面がボールの芯(赤道上の重心付近)又は芯よりやや高い位置に当たり易くなり、インパクト時のロスを減らして、距離を伸ばすことができる。
(7)バランス調整部やフェース面側連結部を交換して質量や重心位置を調整する場合でも、シャフト取付基体を使い捨てることなく使い続けることができ、省資源性、環境保護性に優れる。
【0007】
ここで、には、シャフトを取付るためのヘーゼル(シャフト嵌合部)が形設される。シャフト嵌合部の位置や角度が異なる複数のシャフト取付基体を用意しておけば、シャフト取付基体のみを交換するだけで、シャフトの角度、向き、曲げ等を簡便に変更することができる。これにより、少ない在庫で多くのユーザの好みや利き手の違いにも対応することができ、量産性、在庫管理の容易性に優れる。
シャフト取付基体及びバランス調整部の材質としては、マグネシウム,チタン,ステンレス等の金属や合成樹脂等を用いることができる。ポリカーボネート等のエンジニアリング樹脂を用いた場合、軽量で機械的強度に優れ、外力などによる破損を防止することができる。尚、これらの材質を選択することによって、ゴルフクラブヘッドの総質量を調整することができる。
【0008】
バランス調整部は、密度や質量の異なる錘を着脱することにより、ゴルフクラブヘッドのバランス(全体の質量や重心位置)を調整することができるものであればよい。
フェース面側連結部の形状、大きさ、厚さ等は適宜、選択することができる。また、フェース面側連結部の材質としては、タングステン、ステンレス、チタン等の各種金属のほか、合成ゴム等も使用することができる。フェース面側連結部の形状や材質などを選択することにより、ヘッド全体の質量や重心バランスを大きく変化させることができる。
バランス調整部とフェース面側連結部は着脱自在に連結できればよいが、螺子止めの場合、着脱作業が容易で組み立て及び分解の作業性に優れると共に、固定の確実性、安定性に優れるので好ましい。
【0009】
バランス調整部に保持される各々の錘の密度(比重、材質)や質量は、適宜、選択することができ、全て同じである必要はない。また、錘の外形は、円形状,矩形状,多角形状などの形状やこれらを組合せた形状などに形成することができる。中央部に固定用の貫通孔を穿設しておけば、バランス調整部とフェース面側連結部を連結する連結軸などを利用してバランス調整部に簡便かつ確実にすることができる。
錘としては、タングステン,真鍮,鉄,銅,金などの比重の大きな金属やマグネシウム,アルミニウム,チタンなどの比重の小さな金属などを主成分として形成されるものの他に、金属よりも比重の小さな(軽量な)ABS樹脂やPC樹脂などの合成樹脂系や合成ゴム系などの材料で形成されるものを組合せて使用することができる。
【0010】
シャフト取付基体にはICチップを埋設するICチップ収納部を形設することが好ましい。ICチップ収納部に埋設されるICチップには、ユーザの個人情報(氏名やユーザ登録番号等)とゴルフクラブヘッドの仕様情報(製造番号,質量,重心位置,シャフトの質量や長さ等)を関連付けして記憶させることができ、シャフト取付基体と共に簡便に管理することができ、必要に応じて記憶された各種情報(データ)を読取って、コンピュータなどで保存、管理したり、それらの情報を更新して、ICチップに最新の情報として書込んで記憶させたりして、ユーザやゴルフクラブヘッドに関する情報を漏れなく確実に管理することができ、データ管理の確実性、信頼性に優れる。このICチップに、ゴルフクラブヘッドの売買や譲渡の記録、ユーザの履歴等を記憶させれば、ゴルフクラブヘッドの真贋(正規品か否か)や正当に取引されたものかどうか(盗品か否か)を簡便かつ確実に判別することができ、ゴルフクラブヘッドの流通管理の信頼性に優れる。
【0011】
ICチップは、データの読込み及び書込みができるものであればよい。特に、無線でデータの読書きが可能な非接触式のICタグは、リーダライタと通信可能な距離にあるだけでデータの読書きを行うことができ、分解したり、リーダライタに接触させたりする必要がなく、使用性に優れ、好ましい。尚、ICチップ収納部の位置は、リーダライタと通信可能な位置であればよいが、表面に露出せず、ゴルフクラブの持ち運び時や使用時に外部から衝撃を受け難い位置を選択し、ICチップの大きさ等に合わせて凹所等で形設されることが好ましい。ICチップ収納部をシャフト取付基体のバックフェース面側に形設した場合、ICチップが打撃による衝撃の影響を受け難く、かつバランス調整部によって保護され、外力による破損や故障、紛失等の事故を防止できる。また、ICチップ収納部はシャフト取付基体のヒール側又はトウ側のいずれに形設してもよいが、ヒール側に形設した場合、スイングが安定し易く、手首の返りを防止することができ、軌道の安定性に優れる。
【0012】
リーダライタとコンピュータとの間はUSB(Universal Serial Bus)ケーブル等を用いて接続することにより、相互にデータの転送を行うことができる。
バランス調整やICチップに記憶された三次元の重心位置情報の更新等はゴルフクラブヘッドを購入した販売店やメンテナンスショップ等で行うことができ、ICチップに記憶された各種情報は各々の販売店などでユーザ情報(顧客情報)と共に管理することができる。
尚、ゴルフクラブヘッドの形態としては様々なものがあるが、特にパターが好適に用いられる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のゴルフクラブヘッドであって、前記シャフト取付基体が、外周枠部と、前記外周枠部の中空部に着脱自在に配設される質量調整部と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)シャフト取付基体が、外周枠部と外周枠部の中空部に着脱自在に配設される質量調整部を有することにより、必要に応じて質量調整部の材質、質量、取付位置などを変更して、シャフト取付基体全体の質量や重心位置を大きく変化させることができ、ユーザの好みに対応することが可能で、汎用性、設計自在性に優れる。
【0014】
ここで、外周枠部及び質量調整部の材質は、シャフト取付基体として一体に形成する場合と同様に、適宜、選択することができ、必ずしも異なる材質である必要はなく、同じ材質を用いてもよい。例えば、外周枠部の材質としてステンレスを用い、質量調整部の材質としてアルミニウム、チタン、ステンレスなどを組合せて用いることができる。
質量調整部は外周枠部の中空部に着脱できるものであればよい。質量調整部の外形形状を中空部と同形状に形成した場合、中空部に嵌合させて簡便に固定することができ、着脱作業性に優れるので好ましい。
また、質量調整部は板状に形成することができるが、必ずしも外周枠部の中空部の幅と同じ厚さに形成する必要はなく、板厚の薄い質量調整部をフェース面側やバックフェース面側にずらして配設したり、材質や質量の異なる複数枚の質量調整部を組み合わせて配設したりできる。これにより、シャフト取付基体全体の質量や前後方向の重心位置を簡便に調整することができる。
【0015】
質量調整部は均一な厚さや材質である必要はなく、上面側とソール側或いはヒール側とトゥ側などの場所によって厚さや材質を変化させ、上下方向や左右方向の重心位置も調整することができる。
尚、板厚の薄い質量調整部を用いる場合、外周部のみを肉厚に形成し、外周枠部に対する固定安定性を向上させることができる。また、外周枠部の内周面に沿って凸条の係止突起を形設したり、中空部をフェース面側とバックフェース面側に仕切る仕切壁を形設したりして、質量調整部の外周部や表面を係止突起や仕切壁に当接させて確実に位置決め固定することもできる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のゴルフクラブヘッドであって、前記バランス調整部が、前記シャフト取付基体側に開口しトウ側及びヒール側にそれぞれ形設されたバランサー収容部と、各々の前記バランサー収容部のバックフェース面側に穿設された固定螺子挿通孔と、前記固定螺子挿通孔から挿通され前記フェース面側連結部と螺着される固定螺子と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)バランス調整部が、トウ側及びヒール側にそれぞれ形設されたバランサー収容部を有するので、各々のバランサー収容部に収容される錘の数、各々の錘の材質(質量)、配置の組合せを選択することにより、ユーザの癖や好み等に応じて、幅広い範囲で簡便にヘッドの左右方向及び前後方向の重心位置を調整することができ、重心設計の自在性、汎用性に優れる。
(2)バランス調整部のバランサー収容部が、シャフト取付基体側に開口しているので、バランサー収容部の開口部にシャフト取付基体で蓋をすることができ、別途、蓋などの部材を用意する必要がなく、部品点数を低減できると共に、内部の錘を風雨や外力から保護して破損や紛失などを防ぐことができ、耐久性、取扱い性に優れる。
(3)バランス調整部が、各々のバランサー収容部のバックフェース面側に穿設された固定螺子挿通孔と、固定螺子挿通孔から挿通されフェース面側連結部と螺着される固定螺子を有するので、バランス調整部とフェース面側連結部を簡便かつ確実に連結することができ、組み立て及び分解が容易で、メンテナンス性に優れる
(4)バランス調整部のバランサー収容部に穿設された固定螺子挿通孔から挿通されてフェース面側連結部と螺着される固定螺子を有するので、バランス調整部に雄螺子部や雌螺子部を形設する必要がなく、加工性に優れると共に、固定螺子が摩耗、変形、破損した場合には、固定螺子のみを交換するだけでよく、バランス調整部を長期間使用することができ、省資源性、環境保護性に優れる。
【0017】
ここで、バランス調整部のバランサー収容部がシャフト取付基体側に開口しているので、シャフト取付基体のバックフェース面側にバランサー収容部の開口部に嵌合する嵌合凸部を形設することにより、シャフト取付基体とバランス調整部を簡便に位置決めして仮固定することができ、固定螺子の着脱作業性に優れる。
固定螺子はフェース面側連結部と螺着できれば、雄螺子でも雌螺子でもよい。また、フェース面側連結部に直接、固定螺子と螺着される雌螺子部や雄螺子部を形設してもよいし、フェース面側連結部には貫通孔のみを穿設し、雌螺子部や雄螺子部を有する挿通軸を挿設してもよい。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のゴルフクラブヘッドであって、前記フェース面側連結部が、プレート本体と、前記プレート本体の前記シャフト取付基体側に突設され前記固定螺子と螺着される連結軸部と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項3の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)フェース面側連結部が、プレート本体と、プレート本体のシャフト取付基体側に突設され固定螺子と螺着される連結軸部と、を有するので、固定螺子と連結軸部を螺着することにより、バランス調整部とフェース面側連結部を簡便に連結して強固に固定することができ、組み立て及び分解の作業性、固定の安定性、確実性に優れる。
【0019】
ここで、固定螺子及び連結軸部は、いずれか一方に雄螺子部を形設し、他方に雌螺子部を形設すればよい。
錘に磁力を持たせた場合、複数の錘を一体に取り扱うことができ、着脱作業が容易で、重心の調整を簡便に行うことができるだけでなく、微妙な振動も抑えることが可能となり、使用性に優れる。尚、全ての錘に磁力を持たせる必要はなく、一部のみに磁力を持たせるようにして、磁力を持たない錘と組合せて使用してもよい。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のゴルフクラブヘッドであって、前記錘が前記固定螺子の軸部又は前記連結軸部に着脱自在に挿通される構成を有している。
この構成により、請求項4の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)錘が固定螺子の軸部又は連結軸部に着脱自在に挿通されることにより、複数の錘をバランス調整部のバランサー収容部の内部に確実に保持することができ、重心が移動することがなく、取扱い性に優れる。
ここで、固定螺子の軸部及び連結軸部の長さは、適宜、選択することができ、これらの長さのバランスによって、錘が固定螺子の軸部又は連結軸部に挿通され、保持される。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載のゴルフクラブヘッドであって、前記フェース面側連結部が、プレート本体と、前記プレート本体に穿設された貫通孔と、前記貫通孔に挿設され前記固定螺子と螺着される挿通軸と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項3の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)フェース面側連結部が、プレート本体と、プレート本体に穿設された貫通孔と、貫通孔に挿設され固定螺子と螺着される挿通軸と、を有するので、固定螺子と挿通軸を螺着することにより、バランス調整部とフェース面側連結部を簡便に連結して強固に固定することができ、組み立て及び分解の作業性、固定の安定性、確実性に優れる。
(2)プレート本体の貫通孔に挿設される挿通軸に固定螺子と螺着される雌螺子部又は雌螺子部が形設されるので、プレート本体に雌螺子部や雄螺子部を直接形設する必要がなく、加工性に優れると共に、挿通軸が摩耗、変形、破損した場合には、挿通軸のみを交換するだけでよく、プレート本体を長期間使用することができ、省資源性、環境保護性に優れる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のゴルフクラブヘッドであって、前記フェース面側連結部が、前記プレート本体のフェース面側に形設され前記挿通軸の頭部が嵌合される嵌合凹部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項6の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)フェース面側連結部が、プレート本体のフェース面側に形設され挿通軸の頭部が嵌合される嵌合凹部を有することにより、固定螺子を挿通軸に螺着する際に、挿通軸が固定螺子と共周りすることがなく、固定螺子と挿通軸を簡便かつ確実に螺着することができ、組み立て及び分解の作業性、固定の確実性に優れる。
(2)挿通軸の頭部がプレート本体の嵌合凹部に嵌合されることにより、挿通軸の頭部がプレート本体のフェース面側に突出することがなく、挿通軸の頭部とボールとの接触を防止して、プレート本体のフェース面で確実にボールを打つことができ、使用性に優れる。
【0023】
ここで、挿通軸の頭部の形状は、多角形状や楕円形状などに形成することが好ましい。嵌合凹部と挿通軸の頭部との間に隙間があっても、固定螺子と挿通軸との螺着時に挿通軸の回転を確実に防止できるためである。
また、嵌合凹部の深さは挿通軸の頭部の高さと同等以上に形成することにより、挿通軸の頭部が嵌合凹部から突出することを防止できる。
尚、フェース面側連結部のプレート本体の表面(フェース面)には、さらにカバープレートを覆設することができる。これにより、プレート本体の表面と挿通軸の頭部との間に生じる段差を解消し、打球の進行方向の安定性を向上できると共に、カバープレートの材質や厚さなどによってもゴルフクラブヘッドの質量を微調整することができ、設計自在性、汎用性に優れる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載のゴルフクラブヘッドであって、前記錘が前記固定螺子の軸部又は前記挿通軸に着脱自在に挿通される構成を有している。
この構成により、請求項6又は7の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)錘が固定螺子の軸部又は挿通軸に着脱自在に挿通されることにより、複数の錘をバランス調整部のバランサー収容部の内部に確実に保持することができ、重心が移動することがなく、取扱い性に優れる。
ここで、固定螺子の軸部及び挿通軸の長さは、適宜、選択することができ、これらの長さのバランスによって、錘が固定螺子の軸部又は挿通軸に挿通され、保持される。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項4乃至8の内いずれか1項に記載のゴルフクラブヘッドであって、前記シャフト取付基体のフェース面側に形設され前記フェース面側連結部の前記プレート本体が嵌合されるフェース面凹部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項4乃至8の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)シャフト取付基体のフェース面側に形設されフェース面側連結部のプレート本体が嵌合されるフェース面凹部を有することにより、固定螺子でフェース面側連結部を固定する前に、シャフト取付基体とフェース面側連結部を簡便に位置決めして仮固定することができ、固定螺子を簡便に着脱することができ、組み立て及び分解の作業性に優れる。
ここで、フェース面凹部の形状はフェース面側連結部の形状に合わせて形成される。特に、フェース面凹部の深さをフェース面側連結部の厚さと同等に形成することにより、シャフト取付基体のフェース面と、フェース面側連結部の表面が面一になり、ボールを確実に打つことができ、ショットの信頼性に優れる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明のゴルフクラブヘッドによれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)シャフト取付基体、バランス調整部、フェース面側連結部の形状や材質を選択して交換するだけで、シャフトの取付位置や角度、曲がり、ヘッド全体の形状、質量、重心バランスなどを大きく変化させることができる形状選択の自在性、汎用性に優れたゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)質量調整部の材質、質量、取付位置などを変更するだけで、簡便にシャフト取付基体全体の質量や重心位置を大きく変化させて、ユーザの好みに対応することが可能な汎用性、設計自在性に優れたゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)バランス調整部とフェース面側連結部を簡便かつ確実に連結してシャフト取付基体を挟持することができ、組み立て及び分解が容易で、メンテナンス性に優れたゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)バランサー収容部のバックフェース面側から挿通される固定螺子と、フェース面側連結部の連結軸部を螺着することにより、バランス調整部とフェース面側連結部を簡便に連結して強固に固定することができる組み立て及び分解の作業性、固定の安定性、確実性に優れたゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)複数の錘を固定螺子の軸部又は連結軸部に挿通することにより、バランス調整部のバランサー収容部の内部に確実に保持することができ、重心が移動することがなく、取扱い性に優れたゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【0031】
請求項6に記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)バランサー収容部のバックフェース面側から挿通される固定螺子と、フェース面側連結部の挿通軸を螺着することにより、バランス調整部とフェース面側連結部を簡便に連結して強固に固定することができる組み立て及び分解の作業性、固定の安定性、確実性に優れたゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【0032】
請求項7に記載の発明によれば、請求項6の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)フェース面側連結部のプレート本体のフェース面側に形設された嵌合凹部に挿通軸の頭部が嵌合されることにより、固定螺子を挿通軸に螺着する際に、挿通軸が固定螺子と共周りすることがなく、固定螺子と挿通軸を簡便かつ確実に螺着することができる組み立て及び分解の作業性、固定の確実性に優れたゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【0033】
請求項8に記載の発明によれば、請求項6又は7の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)複数の錘を固定螺子の軸部又は挿通軸に挿通することにより、バランス調整部のバランサー収容部の内部に確実に保持することができ、重心が移動することがなく、取扱い性に優れたゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【0034】
請求項9に記載の発明によれば、請求項4乃至8の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)シャフト取付基体のフェース面側に形設されるフェース面凹部に、フェース面側連結部のプレート本体を嵌合させることにより、固定螺子でフェース面側連結部を固定する前に、シャフト取付基体とフェース面側連結部を簡便に位置決めして仮固定することができ、固定螺子を簡便に着脱することができる組み立て及び分解の作業性に優れたゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)実施の形態1のゴルフクラブヘッドのフェース面側の斜視図 (b)実施の形態1のゴルフクラブヘッドのバックフェース面側の斜視図
【図2】実施の形態1のゴルフクラブヘッドの分解斜視図
【図3】(a)実施の形態1のゴルフクラブヘッドのシャフト取付基体の側面図 (b)実施の形態1のゴルフクラブヘッドのシャフト取付基体の背面図
【図4】実施の形態1のゴルフクラブヘッドのバランサー収容部の断面模式図
【図5】実施の形態1のゴルフクラブヘッドにおけるシャフト取付基体の変形例を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0036】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1のゴルフクラブヘッドについて、以下図面を用いて説明する。
図1(a)は実施の形態1のゴルフクラブヘッドのフェース面側の斜視図であり、図1(b)は実施の形態1のゴルフクラブヘッドのバックフェース面側の斜視図である。
図1中、1は実施の形態1のゴルフクラブヘッド、1aはゴルフクラブヘッド1のフェース面、1bはゴルフクラブヘッド1のバックフェース面、1cはゴルフクラブヘッド1の上面、2はヘーゼル3が形設されたゴルフクラブヘッド1のシャフト取付基体、4はシャフト取付基体2のバックフェース面1b側に配設され後述するバランサー収容部5a,5bの内部に密度や質量の異なる錘が着脱自在に保持されるゴルフクラブヘッド1のバランス調整部、7はシャフト取付基体2のフェース面1a側に配設されシャフト取付基体2を挟んでバランス調整部4と着脱自在に連結されるフェース面側連結部(図1(a))である。
【0037】
次に、実施の形態1のゴルフクラブヘッドの各部の詳細について説明する。
図2は実施の形態1のゴルフクラブヘッドの分解斜視図であり、図3(a)は実施の形態1のゴルフクラブヘッドのシャフト取付基体の側面図であり、図3(b)は実施の形態1のゴルフクラブヘッドのシャフト取付基体の背面図であり、図4は実施の形態1のゴルフクラブヘッドのバランサー収容部の断面模式図である。
まず、実施の形態1のゴルフクラブヘッドのシャフト取付基体について説明する。
図2乃至図4中、2aはシャフト取付基体2のフェース面1a側に形設されたフェース面凹部(図2)、2bはシャフト取付基体2に穿設された2つの軸挿通孔、2cはシャフト取付基体2のバックフェース面1b側に形設されバランサー収容部5a,5bの開口部6に嵌合する嵌合凸部(図3,4)、2dはシャフト取付基体2のバックフェース面1b(図2)側の中央部に矩形状に形設されたバックフェース面凹部(図3(b))、2eはシャフト取付基体2のバックフェース面1b(図2)側のトウ側に凹状に形設されICチップが埋設されるICチップ収納部である。
【0038】
本実施の形態では、図1,2に示したように、シャフト取付基体2のヒール側にヘーゼル(シャフト嵌合部)3を形設したが、ヘーゼル3の位置や角度は適宜、選択することができる。ヘーゼル3の位置や角度が異なる複数のシャフト取付基体2を用意しておけば、シャフト取付基体2のみを交換するだけで、シャフトの角度や向きを簡便に変更することができる。これにより、少ない在庫で多くのユーザの好みや利き手の違いにも対応することができ、量産性、在庫管理の容易性に優れる。
また、図3,4に示したように、シャフト取付基体2のバックフェース面1b側にバランサー収容部5a,5bの開口部6に嵌合する嵌合凸部2cを形設することにより、シャフト取付基体2とバランス調整部4を簡便に位置決めして仮固定することができ、固定螺子11の着脱作業性に優れる。
【0039】
図1(b),図3(b)に示したバックフェース面凹部2dには、必要に応じてバックフェース面レート(図示せず)を嵌合又は貼着することができる。バックフェース面レートの材質としては、タングステン、ステンレス、チタン、金、白金等の各種金属、ガラス、合成樹脂等の中からプレー用とディスプレイ用を適宜、使い分けることができる。バックフェース面レートの表面には、ユーザの名前などを彫ったり、様々な色や模様等で装飾を施したりできる。特に、プライベート用やディスプレイ用の場合、貴金属や宝石などで装飾することができる。
【0040】
図3(b)のICチップ収納部2eにはICチップを埋設することができる。ICチップには、ユーザの個人情報(氏名やユーザ登録番号等)やゴルフクラブヘッドの仕様情報(製造番号,質量,重心位置,シャフトの質量や長さ等)等を記憶させて管理することができる。必要に応じてICチップに記憶された各種情報(データ)を読取り、コンピュータなどで保存、管理、更新して、ユーザやゴルフクラブヘッドに関する情報を漏れなく確実に管理することができる。特に、ICチップに、ゴルフクラブヘッドの売買や譲渡の記録、ユーザの履歴等を記憶させれば、ゴルフクラブヘッドの真贋(正規品か否か)や正当に取引されたものかどうか(盗品か否か)を簡便かつ確実に判別することができ、ゴルフクラブヘッドの流通管理の信頼性に優れる。
【0041】
尚、ICチップ収納部2eの位置は、リーダライタと通信可能な位置であればよいが、通常は表面に露出せず、ゴルフクラブの持ち運び時や使用時に外部から衝撃を受け難い位置を選択し、ICチップの大きさ等に合わせて形設されることが好ましい。ICチップ収納部2eをシャフト取付基体2のバックフェース面側に形設した場合、ICチップが打撃による衝撃の影響を受け難く、かつバランス調整部4によって保護され、外力による破損や故障、紛失等の事故を防止できる。また、ICチップ収納部2eはシャフト取付基体2のヒール側又はトウ側のいずれに形設してもよいが、図3(b)に示すように、ヒール側に形設した場合、スイングが安定し易く、手首の返り等を防止することができ、軌道の安定性に優れる。
【0042】
次に、実施の形態1のゴルフクラブヘッドのバランス調整部及びフェース面側連結部について説明する。
図2及び図4中、5a,5bはシャフト取付基体2側に開口しトウ側及びヒール側にそれぞれ形設されたバランサー収容部(図2)、6はバランサー収容部5a,5bの開口部(図2)、8はシャフト取付基体2のフェース面凹部2aに嵌合されるフェース面側連結部7のプレート本体、8aはシャフト取付基体2の軸挿通孔2bの位置に合わせてプレート本体8に穿設された2つの貫通孔、8bはプレート本体8のフェース面1a側の貫通孔8aの周りに形設された嵌合凹部、9はプレート本体8の貫通孔8aからシャフト取付基体2の軸挿通孔2bに挿設される挿通軸、9aはプレート本体8の嵌合凹部8bに嵌合される挿通軸9の頭部、9bは挿通軸9の先端部に形設された連結用雌螺子部、10はフェース面側連結部7のプレート本体8の表面(フェース面側)に覆設されるカバープレート、11は環状に形成され貫通孔11aに挿通軸9が挿通されてバランサー収容部5a,5bに保持される複数の錘、12は各々のバランサー収容部5a,5bのバックフェース面1b側に穿設された固定螺子挿通孔6b(図4)から挿通されフェース面側連結部7の挿通軸9の連結用雌螺子部9bと螺着される固定螺子、12aは連結用雌螺子部9bと螺着される雄螺子部が形設された固定螺子12の軸部、12bは軸部12aの端部に形設されバランサー収容部5a,5bのバックフェース面1b側の固定螺子挿通孔6b(図3)の周りに形設された座ぐり部6aに嵌合される固定螺子12の頭部、12cは固定螺子11を回転させて着脱する工具を嵌合するために頭部12bに形設された5箇所の工具嵌合凹部(図4,図1(b))である。
【0043】
シャフト取付基体2及びバランス調整部4の材質としては、マグネシウム,チタン,ステンレス等の金属や合成樹脂等を用いることができる。ポリカーボネート等のエンジニアリング樹脂を用いた場合、軽量で機械的強度に優れ、外力などによる破損を防止することができる。尚、これらの材質を選択することによって、ゴルフクラブヘッド1の総質量を調整することができる。
錘11としては、タングステン,真鍮,鉄,銅,金などの比重の大きな金属やマグネシウム,アルミニウム,チタンなどの比重の小さな金属或いは金属よりも比重の小さな(軽量な)ABS樹脂やPC樹脂などの合成樹脂系や合成ゴム系などの材料を用いることができる。各々の錘11の密度(比重、材質)や質量は、適宜、選択することができ、全て同じである必要はない。種類の異なる錘11の配置(組合せ)によって、前後方向の重心位置を調整できる。また、錘11の外形は、円形状に限らず、矩形状や多角形状などの形状やこれらを組合せた形状などに形成することができる。
【0044】
フェース面側連結部7のプレート本体8やカバープレート10の形状、大きさ、厚さ等は適宜、選択することができる。また、プレート本体8やカバープレート10の材質としては、タングステン、ステンレス、チタン等の各種金属のほか、合成ゴム等も使用することができる。プレート本体8やカバープレート10の形状や材質などを選択することにより、ゴルフクラブヘッド1全体の質量や重心バランスを変化させることができる。
本実施の形態では、フェース面側連結部7のプレート本体8と挿通軸9を別部材で形成したが、プレート本体8のバックフェース面1b(シャフト取付基体2)側にプレート本体8と一体に連結軸部を突設し、固定螺子12と螺着される雌螺子部を形設してもよい。また、本実施の形態では、固定螺子12に雄螺子部を形設し、挿通軸9に連結用雌螺子部9bを形設したが、固定螺子12に雌螺子部を形設し、挿通軸9(或いは連結軸部)に雄螺子部を形設してもよい。
尚、フェース面凹部2aの形状はフェース面側連結部7のプレート本体8やカバープレート10の形状に合わせて形成される。特に、フェース面凹部2aの深さをフェース面側連結部のプレート本体8とカバープレート10の総厚と同等に形成することにより、シャフト取付基体2のフェース面1aと、カバープレート10の表面が面一になり、ボールを確実に打つことができ、ショットの信頼性に優れる。尚、フェース面側連結部7のプレート本体8と挿通軸9を一体に形成する場合、カバープレート10は省略することができる。
【0045】
次に、実施の形態1のゴルフクラブヘッドにおけるシャフト取付基体の変形例について説明する。
図5は実施の形態1のゴルフクラブヘッドにおけるシャフト取付基体の変形例を示す分解斜視図である。
図5において、実施の形態1のゴルフクラブヘッドにおけるシャフト取付基体の変形例が実施の形態1と異なるのは、シャフト取付基体2Aが、中空部22aを有する外周枠部22と、外周枠部22の中空部22aに着脱自在に配設される板状の質量調整部23によって形成されている点である。
質量調整部23の材質、質量、取付位置などを変更することにより、シャフト取付基体2A全体の質量や重心位置を調整することができる。例えば、外周枠部22の材質としてステンレスを用い、質量調整部23の材質としてアルミニウム、チタン、ステンレスなどを組合せて用いることができる。
【0046】
尚、質量調整部23は外周枠部22の中空部22aに着脱できるものであればよい。質量調整部23の外形形状を中空部22aと同形状に形成した場合、中空部22aに嵌合させて簡便に固定することができ、着脱作業性に優れる。また、質量調整部23は、図5に示したように、板状に形成することができるが、必ずしも外周枠部22と同じ厚さに形成する必要はなく、板厚の薄い質量調整部23をフェース面1a側やバックフェース面1b側にずらして配設したり、材質や質量の異なる複数枚の質量調整部23を組み合わせて配設したりできる。これにより、シャフト取付基体2A全体の質量や前後方向の重心位置を簡便に調整することができる。また、質量調整部23は均一な厚さや材質である必要はなく、上面側とソール側或いはヒール側とトゥ側などの場所によって厚さや材質を変化させ、上下方向や左右方向の重心位置も調整することができる。尚、板厚の薄い質量調整部23を用いる場合、外周部のみを肉厚に形成し、外周枠部22に対する固定安定性を向上させることもできる。また、外周枠部22の内周面に沿って凸条の係止突起を形設したり、中空部22aをフェース面側とバックフェース面側に仕切る仕切壁を形設したりして、質量調整部23の外周部や表面を係止突起や仕切壁に当接させて確実に位置決め固定することもできる。さらに、仕切壁には必要に応じて孔を穿設して質量や重心を調整することができる。
【0047】
以上のように、実施の形態1におけるゴルフクラブヘッドは構成されているので、以下のような作用を有する。
(1)シャフト取付基体と、バランス調整部と、フェース面側連結部を有する少なくとも三層以上の構造であるため、各々の部品の形状や材質を選択して交換するだけで、シャフトの取付位置や角度、ヘッド全体の形状、質量、重心バランスなどを大きく変化させることができ、形状選択の自在性、汎用性に優れる。
(2)密度や質量の異なる錘が着脱自在に保持されるバランス調整部を有するので、複数の錘の密度(材質)、質量、配列などを組合せることにより、ヘッド全体の質量や重心位置を手軽に調整することができ、メンテナンス性に優れる。
(3)シャフト取付基体を挟んでバランス調整部と着脱自在に連結されるフェース面側連結部を有するので、バランス調整部とフェース面側連結部でシャフト取付基体を確実に挟持することができ、固定安定性、耐久性に優れると共に、破損した部品のみを簡便に取替えることができ、省資源性、メンテナンス性に優れる。
(4)フェース面側連結部の材質(質量)を選択して交換するだけで、ヘッド全体の前後方向の重心位置を調整することができると共に、フェース面側連結部のフェース面(表面)の硬さによって、ボールへのタッチの感触を調整し、ユーザの好み等に対応することができ、重心位置調整の作業性、ヘッドの設計自在性に優れる。
(5)各部品の形状や材質、錘の材質や配置などによってヘッド全体の重心をフェース面側やソール面側が重くなるようにした場合、フェース面がボールの芯の下(赤道上の重心より低い位置)に当たり易くなり、ボールのバックスピン回転を増やすことができ、ボールにコントロールをつけ易く、ショートクラブ用或いは短距離又は速いグリーンでのパッティング用のゴルフクラブヘッドとしての使用性に優れる。
(6)各部品の形状や材質、錘の材質や配置などによってヘッド全体の重心をクラウン側やバックフェース面が重くなるようにした場合、フェース面がボールの芯(赤道上の重心付近)又は芯よりやや高い位置に当たり易くなり、インパクト時のロスを減らして、飛距離を伸ばすことができる。
(7)バランス調整部やフェース面側連結部を交換して質量や重心位置を調整する場合でも、シャフト取付基体を使い捨てることなく使い続けることができ、省資源性、環境保護性に優れる。
(8)バランス調整部が、トウ側及びヒール側にそれぞれ形設されたバランサー収容部を有するので、各々のバランサー収容部に収容される錘の数、各々の錘の材質(質量)、配置の組合せを選択することにより、ユーザの癖や好み等に応じて、幅広い範囲で簡便にヘッドの左右方向及び前後方向の重心位置を調整することができ、重心設計の自在性、汎用性に優れる。
(9)バランス調整部のバランサー収容部が、シャフト取付基体側に開口しているので、バランサー収容部の開口部にシャフト取付基体で蓋をすることができ、別途、蓋などの部材を用意する必要がなく、部品点数を低減できると共に、内部の錘を風雨や外力から保護して破損や紛失などを防ぐことができ、耐久性、取扱い性に優れる。
(10)バランス調整部が、各々のバランサー収容部のバックフェース面側に穿設された固定螺子挿通孔と、固定螺子挿通孔から挿通されフェース面側連結部と螺着される固定螺子を有するので、バランス調整部とフェース面側連結部を簡便かつ確実に連結することができ、組み立て及び分解が容易で、メンテナンス性に優れる
(11)バランス調整部のバランサー収容部に穿設された固定螺子挿通孔から挿通されてフェース面側連結部と螺着される固定螺子を有するので、バランス調整部に螺子部を形設する必要がなく、加工性に優れると共に、固定螺子が摩耗、変形、破損した場合には、固定螺子のみを交換するだけでよく、バランス調整部を長期間使用することができ、省資源性、環境保護性に優れる。
(12)フェース面側連結部が、プレート本体と、プレート本体に穿設された貫通孔と、先端部に固定螺子と螺着される連結用雌螺子部が形設され貫通孔に挿設される挿通軸と、を有するので、固定螺子と挿通軸の連結用雌螺子部を螺着することにより、バランス調整部とフェース面側連結部を簡便に連結して強固に固定することができ、組み立て及び分解の作業性、固定の安定性、確実性に優れる。
(13)プレート本体の貫通孔に挿設される挿通軸に固定螺子と螺着される連結用雌螺子部が形設されるので、プレート本体に連結用雌螺子部を形設する必要がなく、加工性に優れると共に、挿通軸が摩耗、変形、破損した場合には、挿通軸のみを交換するだけでよく、プレート本体を長期間使用することができ、省資源性、環境保護性に優れる。
(14)フェース面側連結部が、プレート本体のフェース面側に形設され挿通軸の頭部が嵌合される嵌合凹部を有することにより、固定螺子を挿通軸の連結用雌螺子部に螺着する際に、挿通軸が固定螺子と共周りすることがなく、固定螺子と挿通軸を簡便かつ確実に螺着することができ、組み立て及び分解の作業性、固定の確実性に優れる。
(15)挿通軸の頭部がプレート本体の嵌合凹部に嵌合されることにより、挿通軸の頭部がプレート本体のフェース面側に突出することがなく、挿通軸の頭部とボールとの接触を防止して、プレート本体のフェース面で確実にボールを打つことができ、使用性に優れる。
(16)錘が固定螺子の軸部又は挿通軸に着脱自在に挿通されることにより、複数の錘をバランス調整部のバランサー収容部の内部に確実に保持することができ、重心が移動することがなく、取扱い性に優れる。
(17)シャフト取付基体のフェース面側に形設されフェース面側連結部のプレート本体が嵌合されるフェース面凹部を有することにより、固定螺子でフェース面側連結部を固定する前に、シャフト取付基体とフェース面側連結部を簡便に位置決めして仮固定することができ、固定螺子を簡便に着脱することができ、組み立て及び分解の作業性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、簡素な構造で、部品の一部を交換するだけでシャフトの取付位置やヘッドの全体形状などを変更することができ、形状選択の自在性、汎用性に優れ、多くの部品を共通化することができ、在庫管理が容易で、量産性に優れ、初心者やアマチュア選手でも好み等に応じて手軽に重心位置などをカスタマイズしながら、長期間、使用することができ、メンテナンス性、取扱い性、省資源性に優れるゴルフクラブヘッドの提供を行って、ゴルフ人口の増加と共に、省資源化、環境保護に貢献することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ゴルフクラブヘッド
1a フェース面
1b バックフェース面
1c 上面
2,2A シャフト取付基体
2a フェース面凹部
2b 軸挿通孔
2c 嵌合凸部
2d バックフェース面凹部
2e ICチップ収納部
3 ヘーゼル
4 バランス調整部
5a,5b バランサー収容部
6 開口部
6a 座ぐり部
6b 固定螺子挿通孔
7 フェース面側連結部
8 プレート本体
8a 貫通孔
8b 嵌合凹部
9 挿通軸
9a,11b 頭部
9b 連結用雌螺子部
10 カバープレート
11 錘
11a 貫通孔
12 固定螺子
12a 軸部
12c 工具嵌合凹部
22 外周枠部
22a 中空部
23 質量調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト取付基体と、前記シャフト取付基体のバックフェース面側に配設され密度や質量の異なる錘が着脱自在に保持されるバランス調整部と、前記シャフト取付基体のフェース面側に配設され前記シャフト取付基体を挟んで前記バランス調整部と着脱自在に連結されるフェース面側連結部と、を備えたことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記シャフト取付基体が、外周枠部と、前記外周枠部の中空部に着脱自在に配設される質量調整部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記バランス調整部が、前記シャフト取付基体側に開口しトウ側及びヒール側にそれぞれ形設されたバランサー収容部と、各々の前記バランサー収容部のバックフェース面側に穿設された固定螺子挿通孔と、前記固定螺子挿通孔から挿通され前記フェース面側連結部と螺着される固定螺子と、を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記フェース面側連結部が、プレート本体と、前記プレート本体の前記シャフト取付基体側に突設され前記固定螺子と螺着される連結軸部と、を備えたことを特徴とする請求項3に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記錘が前記固定螺子の軸部又は前記連結軸部に着脱自在に挿通されることを特徴とする請求項4に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記フェース面側連結部が、プレート本体と、前記プレート本体に穿設された貫通孔と、前記貫通孔に挿設され前記固定螺子と螺着される挿通軸と、を備えたことを特徴とする請求項3に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記フェース面側連結部が、前記プレート本体のフェース面側に形設され前記挿通軸の頭部が嵌合される嵌合凹部を備えたことを特徴とする請求項6に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記錘が前記固定螺子の軸部又は前記挿通軸に着脱自在に挿通されることを特徴とする請求項6又は7に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記シャフト取付基体のフェース面側に形設され前記フェース面側連結部の前記プレート本体が嵌合されるフェース面凹部を備えたことを特徴とする請求項4乃至8の内いずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−250887(P2011−250887A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125214(P2010−125214)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(598008042)株式会社アニージングスポーツ (2)
【Fターム(参考)】