説明

ゴルフクラブ及びその製造方法

【課題】 ヘッド本体の正面にフェース部材を固着するゴルフクラブにおいて、ヘッドの正面全域にフェース部材を配置する。
【解決手段】 フェース部材11とヘッド本体12とをそれぞれ形成する。フェース部材11の一側縁及び上縁17、下縁18は、ヘッド本体12のトウ側の前縁、上面4の前縁4A及びソール5の前縁5Aと同じ大きさに形成される。トウ側の前縁、上面4の前縁4A及びソール5の前縁5Aのそれぞれの正面側に、一側縁、上縁17及び下縁18のそれぞれの背面側を突き合せると共に、この突き合せ部19Aを溶着する。溶接部19の溶け込み部がフェース3の中央部へ向って伸びている。溶接装置のノズル20を突き合せ部19Aに対向させると共に該突き合せ部19Aの長手方向に移動して溶接を行う。これによりアイアン型ヘッド1の前面の隅までフェース部材11を配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとしてシャフトを連結するシャフト取り付け部を設けたヘッド本体の前面に形成した窓孔に、板状のフェース部材を嵌合すると共にその縁を溶接したゴルフクラブが公知である。またその溶接方法において前記フェース部材の周縁部の全部又は一部に凸部を前方に突出するように形成したゴルフクラブの製造方法も公知である(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−310809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術においては、ヘッド本体の正面に形成した窓孔にフェース部材を嵌合してから溶着するものであるので、ヘッド本体の前面側縁の内側にフェース部材の縁が配置され、フェース部材の正面側面積はヘッド本体の正面側面積よりも小さくなる。そして、このようなものでは図5に示すようにヘッド本体31の正面に形成した取り付け用凹部32に、フェース部材33を嵌着すると共に、正面側より凹部32とフェース部材33の嵌合部に溶接を施すことにより、溶接部34の溶け込み部がフェース35にあらわれると共に、その溶接部34の溶け込み部は後方にへ向って伸びるようになっている。
【0004】
ところで、このようなヘッド本体に別体のフェース部材を固着するものにおいては、ヘッドにおける重心深度の調整や重量バランス等を行うためにヘッド本体とフェース部材は異なる材料によって形成される。
【0005】
しかしながら、従来のようなヘッドにおいてはフェース部材がヘッド本体の前面の全域を覆うものでなかったので、例えば打球時にゴルフボールの打球位置がスイートエリアを外れ、ヘッド本体の前面の縁とフェース部材に跨ったような場合には、ヘッド本体、フェース部材のそれぞれの反発係数が異なることに起因して打球方向が狂ってしまうというおそれがある。
【0006】
また、従来技術では図5のように打球面たるフェース35に溶接部34があらわれることとなるので、この溶接部34にボールが当り、この結果溶接部34、ひいてはヘッドが破損するおそれがある。
【0007】
解決しようとする問題点は、ヘッド本体の正面にフェース部材を固着するゴルフクラブにおいて、ヘッドの正面全域にフェース部材を配置すると共に破損し難くする点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、前面にフェースを形成し、下部にソールを形成すると共に上部に上面を形成し、一側にトウを形成すると共に他側にシャフト取り付け部を設けたヘッドの前記シャフト取り付け部にシャフトを連結したゴルフクラブにおいて、前記ヘッドは、前記フェースに対応して形成されるフェース部材と、下部に前記ソールを形成すると共に上部に前記上面を形成し一側に前記トウを形成すると共に他側に前記シャフト取り付け部を形成したヘッド本体とを備え、前記フェース部材の少なくとも一側縁及び上縁、下縁は、前記ヘッド本体のトウ側の前縁、上面の前縁及びソールの前縁と同じ大きさに形成され、前記トウ側の前縁、上面の前縁及びソールの前縁のそれぞれの前面側に、前記一側縁、上縁及び下縁の背面側を溶接し、この溶接部の溶け込み部がフェースの中央部へ向って伸びていることを特徴とするゴルフクラブである。
【0009】
請求項2の発明は、前面にフェースを形成し、下部にソールを形成すると共に上部に上面を形成し、一側にトウを形成すると共に他側にシャフト取り付け部を設けたヘッドの前記シャフト取り付け部にシャフトを連結したゴルフクラブの製造方法において、前記フェースに対応して形成されるフェース部材と、下部に前記ソールを形成すると共に上部に前記上面を形成し一側に前記トウを形成すると共に他側に前記シャフト取り付け部を形成したヘッド本体とをそれぞれ形成し、前記フェース部材の少なくとも一側縁及び上縁、下縁は、前記ヘッド本体のトウ側の前縁、上面の前縁及びソールの前縁と同じ大きさに形成され、前記トウ側の前縁、上面の前縁及びソールの前縁のそれぞれの前面側に、前記一側縁、上縁及び下縁の背面側を突き合せると共に、この突き合せ部に対向してレーザ溶接のレーザビームを当てて該突き合せ部を溶着したことを特徴とするゴルフクラブの製造方法である。
【0010】
請求項3の発明は、前記突き合せ部の長手方向に沿ってレーザ溶接装置を移動して溶接を行うことを特徴とする請求項2記載のゴルフクラブの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、ヘッドの前面全域にフェース部材を配置して打球面にはフェース部材のみがあらわれて打球時にフェース部材による同一の反発係数を確保することができ、さらに溶接部にボールが当たることはなく破損しにくくなる。
【0012】
請求項2の発明によれば、ヘッドの前面の隅までフェース部材を配置することができ、さらに溶接部にボールが当たることはなく破損しにくくなる。
【0013】
請求項3の発明によれば、突き合せ部の長手方向を連続して安定した溶接を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0015】
図1〜図4は実施例1を示しており、アイアン形ゴルフクラブはアイアン形のヘッド1とシャフト2を備えており、前記ヘッド1は前面にゴルフボール(図示せず)を打撃するためのフェース3が形成され、このフェース3の上部にトップ等と称する上面4、下部にソール5、一側にトウ6、他側にヒール7を形成している。そしてヒール7の上部にホーゼルなどと称するシャフト取り付け部8を斜め上方へ突設すると共に、該シャフト取り付け部8にシャフト2の下端を連結したものである。さらに、ヘッド1の背面中央にキャビティ等と称する背面凹部9を形成しており、この背面凹部9の下部はえぐられるようにして底面凹部10が形成されている。
【0016】
次に前記ヘッド1の製造方法について説明する。ヘッド1はフェース3に対応して形成されるフェース部材11と、このフェース部材11の後側に配置されるヘッド本体12とを一体化したものであり、フェース部材11とヘッド本体12とは異なる材料によって形成されている。前記ヘッド本体12は下部にソール5を形成すると共に上部に上面4を形成し一側にはトウ6を形成すると共に他側にシャフト取り付け部8を形成している。そして、ヒール7側を除いて前面にはフェース部材11を取り付けるためこのフェース部材11の厚みと同等の深さを形成する段部13を介して取り付け面14が形成されている。さらに、ヘッド本体12には前記背面凹部9の他に底面凹部10も形成されている。
【0017】
前記フェース部材11の一側縁15、他側縁16及び上縁17、下縁18のうち一側縁15及び上縁17、下縁18は、前記ヘッド本体12のトウ6側の前縁6A、上面4の前縁4A及びソール5の前縁5Aと同じ大きさに形成されており、さらに他側縁16は段部13と同じ大きさに形成されている。そして、フェース部材11の背面を取り付け面14に当接させ、前記トウ6側の前縁6A、上面4の前縁4A及びソール5の前縁5Aのそれぞれの正面側に、前記一側縁15、上縁17及び下縁18のそれぞれの背面側をそれぞれ突き合せると共に、この突き合せ部19Aを溶着し、この溶接部19によってフェース部材11をヘッド本体12に固着するものである。尚、他側縁16は段部13に突き合わせて溶接部19Bによって固着する。
【0018】
そして、その溶接方法は、レーザ溶接によって行うものであり、レーザ溶接装置のノズル20を突き合せ部19Aの外縁に対向させて、突き合せ部19Aの外縁にレーザビーム20Aを向けて照射して溶接部19を形成するものである。このような溶接における前記ノズル20は突き合せ部19Aの長手方向Z、すなわちヘッド1の上面4、トウ6及びソール5、或いはソール5、トウ及び上面4に沿って移動して連続した溶接部19を形成するものである。そして、溶接部19においては、レーザ溶接においてはレーザビーム20Aの指向性が優れているので、溶接部19の溶け込み部がフェース3の中央部、すなわちフェース3の軸芯X方向へ向って伸びている。
【0019】
尚、フェース部材11の他側縁16と段部13とは正面側にノズル20を配置して溶接部19Bを形成する。
【0020】
このようにしてフェース部材11をヘッド本体12に固着した後、或いはその前にフェース部材11の正面にはスコアライン等と称する横向きの小溝21が上下多段に形成されており、そしてヘッド1は研磨や鍍金等を施された後に、シャフト取り付け部8にシャフト2が連結されるものである。
【0021】
以上のように前記実施例においては、ヘッド1は、フェース3に対応して形成されるフェース部材11と、下部にソール5を形成すると共に上部に上面4を形成し一側にトウ6を形成すると共に他側にシャフト取り付け部8を形成したヘッド本体12とを備え、フェース部材11の一側縁15及び上縁17、下縁18は、ヘッド本体12のトウ6側の前縁6A、上面4の前縁4A及びソール5の前縁5Aと同じ大きさに形成され、トウ6側の前縁6A、上面4の前縁4A及びソール5の前縁5Aのそれぞれの正面側に、一側縁15、上縁17及び下縁18のそれぞれの背面側を固着したことによって、アイアン型ヘッド1の前面全域にフェース部材11を配置することができ、このため打球面にはフェース部材11のみがあらわれてフェース3のいかなる箇所で打球しても同一の反発係数を確保することができる。しかも、溶接部19の溶け込み部がフェース3の中央部へ向って伸びているので溶接部19にボールが直接接触することはなく、破損し難くなる。
【0022】
また、製造方法において、フェース部材11とヘッド本体12とをそれぞれ形成し、フェース部材11の一側縁15及び上縁17、下縁18は、ヘッド本体12のトウ6側の前縁6A、上面4の前縁4A及びソール5の前縁5Aと同じ大きさに形成され、トウ6側の前縁6A、上面4の前縁4A及びソール5の前縁5Aのそれぞれの正面側に、一側縁15、上縁17及び下縁18のそれぞれの背面側を突き合せると共に、この突き合せ部19Aを溶着したことによって、アイアン型ヘッド1の前面の隅までフェース部材11を配置することができる。しかも、突き合せ部19Aに対向してレーザ溶接のレーザビーム20Aを当てて該突き合せ部19Aを溶着したことで、レーザビーム20Aの指向性によって打球方向と交差する方向に溶接部19を長く形成できるので、溶接部19にボールだ直接接触することはなく、破損し難くなる。
【0023】
さらに、前記突き合せ部19Aに沿って溶接装置のノズル20を移動して溶接を行うことによって、スポット的ではなく突き合せ部19Aの長手方向Zを連続して安定した溶接を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように本発明にかかるゴルフクラブは種々のものに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1を示す正面図である。
【図2】本発明の実施例1を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施例1を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例1を示す要部の拡大断面図である。
【図5】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ヘッド
2 シャフト
3 フェース
4 上面
4A 前縁
5 ソール
5A 前縁
6 トウ
6A 前縁
8 シャフト取り付け部
11 フェース部材
12 ヘッド本体
15 一側縁
17 上縁
18 下縁
19 溶接部
19A 突き合せ部
20 ノズル(溶接装置)
Z 長手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面にフェースを形成し、下部にソールを形成すると共に上部に上面を形成し、一側にトウを形成すると共に他側にシャフト取り付け部を設けたヘッドの前記シャフト取り付け部にシャフトを連結したゴルフクラブにおいて、前記ヘッドは、前記フェースに対応して形成されるフェース部材と、下部に前記ソールを形成すると共に上部に前記上面を形成し一側に前記トウを形成すると共に他側に前記シャフト取り付け部を形成したヘッド本体とを備え、前記フェース部材の少なくとも一側縁及び上縁、下縁は、前記ヘッド本体のトウ側の前縁、上面の前縁及びソールの前縁と同じ大きさに形成され、前記トウ側の前縁、上面の前縁及びソールの前縁のそれぞれの前面側に、前記一側縁、上縁及び下縁の背面側を溶接し、この溶接部の溶け込み部がフェースの中央部へ向って伸びていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項2】
前面にフェースを形成し、下部にソールを形成すると共に上部に上面を形成し、一側にトウを形成すると共に他側にシャフト取り付け部を設けたヘッドの前記シャフト取り付け部にシャフトを連結したゴルフクラブの製造方法において、前記フェースに対応して形成されるフェース部材と、下部に前記ソールを形成すると共に上部に前記上面を形成し一側に前記トウを形成すると共に他側に前記シャフト取り付け部を形成したヘッド本体とをそれぞれ形成し、前記フェース部材の少なくとも一側縁及び上縁、下縁は、前記ヘッド本体のトウ側の前縁、上面の前縁及びソールの前縁と同じ大きさに形成され、前記トウ側の前縁、上面の前縁及びソールの前縁のそれぞれの前面側に、前記一側縁、上縁及び下縁の背面側を突き合せると共に、この突き合せ部に対向してレーザ溶接のレーザビームを当てて該突き合せ部を溶着したことを特徴とするゴルフクラブの製造方法。
【請求項3】
前記突き合せ部の長手方向に沿ってレーザ溶接装置を移動して溶接を行うことを特徴とする請求項2記載のゴルフクラブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−223686(P2006−223686A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43211(P2005−43211)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(591002382)株式会社遠藤製作所 (19)
【Fターム(参考)】