説明

ゴルフクラブ用グリップ

【課題】 パターやクラブ全体のバランスを大きく変化させることなく、安定したパッティングやスイングを行うことができるようにしたグリップを提供する。
【解決手段】 ゴルフクラブ用グリップは、中心軸線を中心として20°〜60°の範囲内の角度の領域部分に8g〜15gの範囲内の重量(30、31)が付加され、中心軸線回りの慣性モーメントが付加前の慣性モーメントに比較して増大されている。
グリップの 断面外形は、六角形状、4つの短辺と4つの長辺からなる変形八角形、又は円形とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフクラブ用グリップに関し、特にパターやクラブ全体のバランスを大きく変化させることなく、安定したパッティングやスイングを行うことができるようにしたグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、多くの人がゴルフ競技を楽しむようになってきた。ゴルフ競技中に、ウッド型クラブやアイアン型クラブでゴルフボールを意図する方向に十分な距離だけ安定に飛ばすことができても、グリーン上でゴルフボールを意図する方向に正確にパッティングできないと、スコアアップにつながらない。
【0003】
通常、ゴルフのパターにはヘッドの形状によってブレートタイプ、ピンタイプ、マレットタイプなどがあり、ホーゼルやシャフトの形状や位置によってオフセット、ヒールシャフト、センターシャフトなどがあり、種々なタイプのものが知られているが、グリーン上やグリーン回りからゴルフボールをころがしてホールに入れるので、どのタイプのパターであってもパッティングを行ったときのフィーリングは非常に重要である。
【0004】
ところで、多くのパターではヘッド重心がシャフトの中心軸線の延長線よりもヘッドトウ側に位置しており、その構造上、シャフト中心軸線からみてヘッドトウ側の方がヒール側よりも重く、テイクバック時にはヘッドトウ側が意図するプレイの線の方向に対してヒール側よりも進みパッティング時にはヘッドのトウ側がヒール側よりも遅れるという動きが起きやすく、ヘッドが安定し難い。
【0005】
これに対し、グリップをシャフトの基端部に装着したときに、グリップの上端部を握る手、右利きのプレイヤーの場合には左手の掌に接する部位に金属材料を含有させ、グリップのヘッドトウ側部分とヒール側部分との間に20〜70gの重量差を設け、シャフト中心軸線からみてヘッドトウ側とヒール側との間の重量比を小さくして操作の安定性を確保するようにしたパター用グリップが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−319172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1記載のパター用グリップでは金属材料を含有させて20〜70gの重量差を設けるようにしているので、グリップが重くなってパター全体のバランスが大きく変化し、パッティングのフィーリングが全く異なってグリップを握る手におもわず力が入ってしまい、いわゆるイップス病を引き起こすおそれがあった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み、パター全体のバランスを大きく変化させることなく、安定したパッティングを行うことができるようにしたゴルフクラブ用グリップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るゴルフクラブ用グリップは、中心軸線を中心として20°〜60°の範囲内の角度の領域部分に8g〜15gの範囲内の重量が付加され、中心軸線回りの慣性モーメントが付加前の慣性モーメントに比較して増大されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の特徴の1つは中心軸線を中心として20°〜60°の範囲内の角度の領域部分に8g〜15gの範囲内の重量を付加するようにした点にある。
【0011】
これにより、計算上、中心軸線回りの慣性モーメントが付加前に比較して10%以上(好ましくは15%以下)増大され、テイクバック時にヘッドトウ側が意図するプレイの線の方向に対してヒール側よりも進みパッティング時に遅れるという動きが少なくなり、さらには増加する重量が8g〜15g程度であり、クラブ全体のバランスが大きく変化することはないので、正確にヘッドコントロールをすることができる。なお、計算上、グリップの外径を24mmφ、シャフトの外径を14mmφと想定して計算を行っているが、外径が大きくなれば慣性モーメントは大きく、外径が小さくなれば慣性モーメントは小さくなるが、実用上、プレイヤーが握ってプレイできる外径は24mmφ前後である。
【0012】
重錘を中心軸線を中心として20°〜60°の範囲内の角度の領域部分に設けるようにしたのは8〜15gの重錘の付加によって慣性モーメントを10%以上15%以下だけ増大させるのに必要な角度範囲であるからである。
【0013】
なお、パターヘッドはグリップに比較してシャフトの長さだけ大きく動くので、パターヘッドに1g〜2gの重錘を付加すると、パッティングのフィーリングが大きく変化するが、グリップに15g程度の重錘を付加しても、グリップはプレイヤーの手によって握られ、大きな動きをするものではないので、パッティングのフィーリングが大きく変化することはない。
【0014】
また、シャフト中心軸線回りの慣性モーメントを増大させることによってヘッドの進みや遅れを少なくできるので、プレイヤーはグリップをそれほど力強く握らずともヘッドコントロールを楽に行うことができる。
【0015】
その結果、プレイヤーは身体を過度に緊張させることなく楽にパッティングを行うことができるので、特許文献1記載のグリップに比較して、いわゆるイップス病を引き起し難くなる。
【0016】
グリップの断面外形は、六角形状、変形八角形、円形、かまぼこ形のいずれであってもよく、又公知の断面外形状のグリップにも適用できる。また、後述の実施の形態に示されるように、長手方向にほぼ等しい太さのストレートグリップであってもよく、又先端になるにしたがって細くなったグリップでもよい。
【0017】
特に、本件発明を断面外形が六角形のグリップに適用すると、スクエアにグリップを握る場合に両手の親指を六角形のヘッドトウ側の平坦な一面に載せることによってスクエアグリップとなるので、初心者であっても正確な握り方でグリップを握ることができ、慣性モーメントによるヘッドコントロールのしやすさと相まって非常に使い勝手のよいパターを提供できる。
【0018】
本発明のグリップはパターに適用すると、その効果が大きいが、ウッド型クラブ又はアイアン型クラブにも同様に適用でき、ヘッドコントロールしやすいクラブを得ることができる。
【0019】
重量の付加の仕方は特に限定されず、例えば金属板を貼り付け、グリップ中に埋設し、あるいは金属粉、例えばバリウム、タングステン、ボロンなどの粉末をグリップ内に含有させるようにしてもよい。すなわち、中心軸線を中心として20°〜60°の範囲内の大きさの角度にわたって8g〜15gの範囲内の重さの金属板を貼付け又は埋設し、あるいは8g〜15gの範囲内の重さの金属粉を含有分散させることによって重量を付加することができる。
【0020】
なお、重量はグリップの先端側に付加するのがよいが、グリップの長手方向の中央や基端部に設けることもでき、さらには先端側、中央及び基端部にわたって連続して又は離間して設けるようにしてもよい。
【0021】
グリップをシャフト基端部に装着する場合、重量を付加した部位がヘッドトウ側、ヘッドヒール側、テイクバック側及びパッティング(ウッド型クラブやアイアン型クラブの場合のダウンスイングを含む)側のいずれか1つの方向を指向するようにグリップをシャフトに装着するのがよい。
【0022】
例えば、重量を付加した部位をヘッドトウ側に指向させると、シャフト中心軸線から見てヘッドトウ側が重くなった重量バランスとなるので、ヘッドがゴルフボールに当たったときにゴルフボールの重さに負けない、いわゆる当たり負けし難いパター、ウッド型クラブ、アイアン型クラブを得ることができる。
【0023】
また、重量を付加した部位をヘッドヒール側に指向させると、シャフト中心軸線を基準として当該部位の重さがヘッドの重さをバランスする方向に作用するので、ヘッドコントロールしやすいパター、ウッド型クラブ、アイアン型クラブを得ることができる。
【0024】
さらに、重量を付加した部位をテイクバック側に指向させると、当該部位の重さによってクラブをテイクバックしやすくなり、重量を付加した部位をパッティングやダウンスイング側に指向させると、当該部位の重さによってクラブをパッティング又はダウンスイングしやすくなる。
【0025】
グリップの材料は特に限定されないが、金属板を貼付け埋設し、金属粉を含有分散させるので、ラバーグリップが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るゴルフクラブ用グリップの好ましい実施形態を装着したパターの1例を示す図である。
【図2】上記実施形態を示す断面図である。
【図3】他の実施形態を示す断面図である。
【図4】さらに他の実施形態を示す断面図である。
【図5】慣性モーメントを計算するための図である。
【図6】本発明に係るゴルフクラブ用グリップの好ましい実施形態を装着したアイアン型クラブの1例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1及び図2は本発明に係るゴルフクラブ用グリップの好ましい実施形態を示す。図において、パターヘッド20のヒールH側にはホーゼル21が一体に形成され、ホーゼル21にはシャフト22の先端が結合され、シャフト22の基端部には本例のラバーグリップ10が装着されている。
【0028】
ラバーグリップ10は長さLがほぼ30cmで、断面外形が六角形状をなし、長手方向の全体にわたって等しい大きさの断面外形に形成され(ストレートグリップ)、中心にはシャフト22の基端部が嵌め込まれる穴10Aが長手方向に延びて形成され、ラバーグリップ10の先端部11にはシャフト中心軸線を中心にして角度αが60°の領域部分に10gの金属板30が埋設され、ラバーグリップ10は金属板30が埋設された部位がパターヘッド20のトウTを指向するようにしてシャフト22の基端部に装着されている。
【0029】
本例のラバーグリップ10を装着したパターではシャフト22の中心軸線回りの慣性モーメントが付加前に比較して増大される。すると、パターのテイクバック時にはパターヘッド20の重心がシャフト22の中心軸線の延長線からヘッドトウT側に位置することに起因して、パターヘッド20のトウT側が意図するプレイの線の方向に対してヒール側よりも進むという動きが、金属板30の付加前に比較して増大してシャフト中心軸線回りの慣性モーメントに起因して抑制される。
【0030】
また、パッティング時にはパターヘッド20のトウT側が意図するプレイの線の方向に対してヒール側よりも遅れるという動きが、シャフト中心軸線回りの大きくなった慣性モーメントに起因して抑制される。
【0031】
また、パターヘッド20はグリップ10に比較してシャフト22の長さだけ大きく動くので、パターヘッド20に1g〜2gの重錘を付加すると、パッティングのフィーリングが大きく変化する。
【0032】
これに対し、本例ではラバークリップ10に付加した金属板30は10gであるが、ラバーグリップ10に10gの金属板30を付加しても、ラバーグリップ10はプレイヤーの手によって握られ、大きな動きをするものではないので、パッティングのフィーリングが大きく変化することはなく、しかもパター全体のバランスが大きく変化することはないので、正確にヘッドコントロールをすることができる。
【0033】
また、シャフト22中心軸線回りの慣性モーメントを増大させることによってパターヘッド20の進みや遅れを抑制しているので、プレイヤーはラバーグリップ10をそれほど力強く握らずともヘッドコントロールを楽に行うことができる。その結果、プレイヤーは身体を過度に緊張させることなく楽にパッティングを行うことができるので、いわゆるイップス病を引き起し難くなる。
【0034】
また、スクエアにラバーグリップ10を握る場合に両手の親指をラバーグリップ10の断面六角形のヘッドトウT側の平坦な一面に載せることによってスクエアグリップとなるので、初心者であっても正確な握り方でラバーグリップ10を握ることができる。
【0035】
図3は他の実施形態を示す。図3の(A)はラバーグリップ10の断面外形を短辺10Bと長辺10Cの組合せからなる変形八角形とした例である。図3の(B)はラバーグリップ10の断面外形を円形とした例である。
【0036】
図3の(C)は金属板30をラバーグリップ10の表面に貼り付けた例である。但し、ゴルフ規則に適合するように、表面に凹所を設けて面一となるように貼り付ける。図3の(D)はラバーグリップ10のシャフト中心軸線を中心に角度αの領域部分に10gの金属粉を含有分散させた例である。金属粉の粒度は実質的に均一に分散できる限り限定されない。
【0037】
図4はさらに他の実施形態を示す。図4の(a)はラバーグリップ10の断面外形を対向する2辺を長くした変形八角形とした例である。図4の(b)はラバーグリップ10の断面外形を、1辺を直線状にした扁平かまぼこ形状とし、金属板30をラバーグリップ10の両側部位に埋設した例である。なお、請求項に記載の条件を満たす限り、本例のように重錘を2つとしてもよい。
【0038】
図4の(c)は断面外形を、1辺を直線状としたかまぼこ形状とし、金属板30をラバーグリップ10の表面に面一となるように貼り付けた例である。
【0039】
ここで、本発明に係るゴルフクラブ用グリップの慣性モーメントを計算する。図5において、ラバーグリップ10とは長さL=0.28m、外径24φmの生ゴム製(生ゴムの密度P=1060kg/m3)とし、シャフト22は外径14φm、厚み0.4mm、スチール製パイプ(スチールの密度Q=7800kg/m3)とし、金属板30は幅10mm、厚み1mm、重さ10gとした。
【0040】
付加前の慣性モーメント
I0=(28.7×P+0.8×Q)×L×10-9=1.03×10-5(kgm2
付加後の慣性モーメント
I1==10.3×10-6+1.4×10-6=11.7×10-6(kgm2
1.4×10-6/11.7×10-6≒0.12
慣性モーメントがほぼ12%増加しており、わずかな重さの金属板によって慣性モーメントを顕著に増大させる得ることが判明した。
【0041】
図6は第1の実施形態におけるグリップをアイアン型クラブに用いた例を示す。図において、クラブヘッド40は軟鉄などの金属材料を用いて製造され、クラブヘッド40のヒールH側にはホーゼル(ソケット)41が一体に形成され、ホーゼル41には本例のラバーグリップ10を備えたシャフト22の先端部が嵌め込まれており、このように本例のグリップ10はアイアン型クラブにも同様に適用でき、さらにはウッド型クラブにも適用できる。
【符号の説明】
【0042】
10 グリップ
22 シャフト
30 金属板
31 金属粉


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を中心として20°〜60°の範囲内の角度の領域部分に8g〜15gの範囲内の重量(30、31)が付加され、中心軸線回りの慣性モーメントが付加前の慣性モーメントに比較して増大されていることを特徴とするゴルフクラブ用グリップ。
【請求項2】
断面外形が、六角形状、変形八角形、円形又はかまぼこ形状である請求項1記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項3】
パターのシャフト(22)の基端部に装着される請求項1記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項4】
ウッド型クラブ又はアイアン型クラブのシャフト基端部に装着される請求項1記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項5】
中心軸線を中心として20°〜60°の範囲内の大きさの角度にわたって8g〜15gの範囲内の重さの金属板(30)を貼付け又は埋設し、あるいは8g〜15gの範囲内の重さの金属粉(31)を含有分散させることによって重量が付加されている請求項1記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項6】
重量を付加した部位(11)がヘッドトウ側、ヘッドヒール側、テイクバック側及びパッティング側のいずれか1つの方向を指向させてシャフト基端部に装着されている請求項1記載のゴルフクラブ用グリップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−200424(P2012−200424A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68092(P2011−68092)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(511077616)
【Fターム(参考)】