説明

ゴルフクラブ用シャフトおよびゴルフクラブ

【課題】アウターシャフトとインナーシャフトを備えた2重構造のゴルフクラブ用シャフトであって、両シャフトを一体的に動作させたり、一方のシャフトを主体として動作させたりすることができ、これにより優れた性能を発揮するゴルフクラブ用シャフトを提供する。
【解決手段】アウターシャフト12と、アウターシャフトの中空部に配置されたインナーシャフト14とを備え、アウターシャフト12とインナーシャフト14との間に空隙部16が形成されているゴルフクラブ用シャフト10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウターシャフトとインナーシャフトを備えた2重構造のゴルフクラブ用シャフトおよびそれを用いたゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アウターシャフトとインナーシャフトを備えた2重構造のゴルフクラブ用シャフトとして、特許文献1のものが提案されている。特許文献1の請求項1のゴルフクラブ用シャフトは、アウターシャフトと、このアウターシャフト内に挿入されているインナーシャフトからなり、アウターシャフトとインナーシャフトは先端側の径が小さく後端側の径が大きいテーパー状であり、インナーシャフトは、その先端の外径とアウターシャフトの内径とが一致する位置まで挿入されてインナーシャフトの先端位置がアウターシャフトの先端よりも後端側にずれ、かつ、後端位置が少なくともアウターシャフトの後端位置まで達し、アウターシャフトと実質一体となっている。
【0003】
特許文献1の請求項3のゴルフクラブ用シャフトは、アウターシャフトと、このアウターシャフト内に挿入されているインナシャフトからなり、アウターシャフトとインナシャフトは先端側の径が小さく後端側の径が大きいテーパー状であり、インナシャフトは、アウターシャフトに挿入されてアウターシャフトの先端位置がインナシャフトの先端よりも後端側にずれ、かつ、後端位置がアウターシャフトの後端位置と同じであり、アウターシャフトと実質一体となっている。
【0004】
上述した特許文献1のゴルフクラブ用シャフトは、アウターシャフトとインナーシャフトが重なり合っている部分の曲げ剛性および捻り剛性が高く、この部分が存在することによって打球の方向性を保つことができ、一方、アウターシャフトまたはインナーシャフトは、その先端部分にインナーシャフトまたはアウターシャフトと重ならない部分があり、この部分の剛性は低く撓みやすい部分であるため、この撓みの反発力を利用してインパクト時のヘッドスピードを増大させ、非力なプレーヤーでも飛距離を延ばすことができるものである(段落0007)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3647034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のゴルフクラブ用シャフトは、アウターシャフトとインナーシャフトが一体化されているため、両シャフトを一体的に動作させることはできるが、いずれか一方のシャフトを主体として動作させることはできず、この点で改良の余地を有するものであった。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、アウターシャフトとインナーシャフトを備えた2重構造のゴルフクラブ用シャフトであって、両シャフトを一体的に動作させたり、一方のシャフトを主体として動作させたりすることができ、これにより優れた性能を発揮するゴルフクラブ用シャフトおよびそれを用いたゴルフクラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するため、アウターシャフトと、前記アウターシャフトの中空部に配置されたインナーシャフトとを備え、前記アウターシャフトと前記インナーシャフトとの間に空隙部が形成されていることを特徴とするゴルフクラブ用シャフトを提供する。また、本発明は、上記本発明に係るゴルフクラブ用シャフトを装着したことを特徴とするゴルフクラブを提供する。
【0009】
本発明のゴルフクラブ用シャフトは、アウターシャフトとインナーシャフトを別体とするとともに、両シャフトを互いに離間させたので、両シャフトが別々に動作することができる。したがって、ヘッドスピードの遅いゴルファーがスイングを行った場合には、アウターシャフトはしなるが、インナーシャフトはヘッドスピードに応じて全くしならないか、多少しなるだけの状態となる。そのため、シャフトが柔らかくなってヘッドスピードの遅いゴルファー向きのシャフトとなり、シャフトの柔らかさを活かして、ヘッドスピードを速くしたり、ボールの打出角を大きくしたりして飛距離を増大させることができる。一方、ヘッドスピードの速いゴルファーがスイングを行った場合には、両シャフトが一緒に大きくしなる。そのため、シャフトが硬くなってヘッドスピードの速いゴルファー向きのシャフトとなり、シャフトの硬さを活かして、ボールの初速を大きくして飛距離を増大させることができる。
【0010】
本発明のゴルフボール用シャフトは、前述した空隙部の幅を0.1〜7mmとすることが適当であり、これにより前述した本発明の作用効果を確実に得ることができる。空隙部の幅のより好ましい範囲は0.5〜6mmである。ただし、インナーシャフトの後端は、アウターシャフトの内面に接していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴルフクラブ用シャフトは、ヘッドスピードの遅いゴルファーがスイングを行った場合には、主にアウターシャフトがしなり、柔らかいシャフトとなるため、ボールの打出角を大きくして飛距離を増大させることができる。また、ヘッドスピードの速いゴルファーがスイングを行った場合には、アウターシャフトとインナーシャフトが一緒にしなり、硬いシャフトとなるので、ボールの初速を大きくして飛距離を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るゴルフクラブ用シャフトの第1実施形態を示す模式的断面図である。
【図2】本発明に係るゴルフクラブ用シャフトの第2実施形態を示す模式的断面図である。
【図3】本発明に係るゴルフクラブ用シャフトの第3実施形態を示す模式的断面図である。
【図4】本発明に係るゴルフクラブ用シャフトの第4実施形態を示す模式的断面図である。
【図5】本発明シャフトを装着したゴルフクラブを用いてヘッドスピードの遅いゴルファーがスイングを行った場合におけるシャフトのしなり状態を示す説明図である。
【図6】本発明シャフトを装着したゴルフクラブを用いてヘッドスピードの速いゴルファーがスイングを行った場合におけるシャフトのしなり状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
【0014】
(第1実施形態)
図1は本発明に係るゴルフクラブ用シャフトの第1実施形態を示す模式的断面図である。本例のシャフト10は、アウターシャフト12と、アウターシャフト12の中空部に配置されたインナーシャフト14とを備え、両シャフト12、14の間に空隙部16が形成されている。本例では、アウターシャフト12およびインナーシャフト14は、いずれも、先方に向かうにしたがい漸次小径となる中空先細り円錐形状を有し、両シャフト12、14は長さがほぼ等しい。アウターシャフト12の長さは787〜1219mm、先端外径は8.4〜10mm、後端外径は14〜17mm、壁部の肉厚は0.6〜2.5mm、インナーシャフト14の長さは787〜1219mm、先端外径は1〜4mm、後端外径は4〜15.8mm、壁部の肉厚は0.6〜4mmとすることが好ましい。
【0015】
上記空隙部16の幅aは、先端で1〜6mm、特に2〜4mmとすることが好ましい。また、空隙部16の幅aは、シャフトの後端側から先端側に向かうにしたがい漸次広くなることにより、シャフトの後端側よりもシャフトの先端側の方が広くなっており、これによりシャフト先端側のしなりを大きく(長く)利用することができるという作用効果が得られる。
【0016】
アウターシャフト12の後端部とインナーシャフト14の後端部とは連結部材18により連結され、これにより両シャフト12、14が外れないようになっている。連結部材18の材質としては、ゴム、樹脂、エラストマー、コルク、木材等が挙げられる。また、アウターシャフト12の先端部とインナーシャフト14の先端部との間の空隙部16には、振動吸収部材20が配置され、これによりスイングを行ったときに両シャフト12、14から振動音(ビン鳴り)が生じないようになっている。連結部材18の材質としては、例えば、ゴム、エラストマー等の弾性材あるいはそれらを発泡させたもの、例えば発泡ポリウレタン等からなる柔軟なスポンジ類などが挙げられる。
【0017】
アウターシャフト12およびインナーシャフト14の材質としては、繊維強化樹脂や金属を用いることができる。この場合、上記繊維強化樹脂の強化繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、金属繊維、アラミド繊維、炭化けい素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維等を挙げることができる。上記繊維強化樹脂の熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができる。上記繊維強化樹脂の副資材としては、硬化剤、硬化促進剤、充填材、離型剤、顔料等を用いることができる。また、上記金属としては、鉄合金、チタン合金等を挙げることができる。なお、インナーシャフト14は、樹脂のみで形成してもよい。
【0018】
アウターシャフト12およびインナーシャフト14としては、強化繊維が一方向に沿って配列された繊維強化樹脂層を複数層有するシャフトを用いることができる。上記繊維強化樹脂層は、例えば、芯金(マンドレル)にプリプレグシートを巻き、これを加熱硬化させるシートワインディング法により形成することができる。プリプレグシートとしては、平行に引き揃えたロービングやクロス、マットといった強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたものを用いることができる。
【0019】
この場合、本例では、シャフト10においてアウターシャフト12が主体的な役割を果たし、インナーシャフト14が補助的な役割を果たす。したがって、アウターシャフト12は、繊維強化樹脂層として、繊維方向がシャフト軸方向に対して傾斜したバイアス層を主体とすることが好適である。また、インナーシャフト14は、繊維強化樹脂層として、繊維方向がシャフト軸方向と一致するストレート層を主体とすることが好適である。
【0020】
なお、前述した芯金を用いたシャフト成形時には、芯金の表面に離型剤を塗布するため、シャフト内面には離型剤が付着するが、シャフト内面を研磨することにより、上記離型剤を除去することが好ましい。
【0021】
(第2実施形態)
図2は本発明に係るゴルフクラブ用シャフトの第2実施形態を示す模式的断面図である。本例のシャフト30は、アウターシャフト12と、アウターシャフト12の中空部に配置されたインナーシャフト14とを備え、両シャフト12、14の間に空隙部16が形成されている。本例では、アウターシャフト12は、先方に向かうにしたがい漸次小径となる中空先細り円錐形状を有し、インナーシャフト14は、後端側と先端側の径が等しい中空円筒形状を有し、両シャフト12、14は長さがほぼ等しい。アウターシャフト12の長さ、外径、壁部の肉厚、インナーシャフト14の長さ、外径、壁部の肉厚は、第1実施形態と同様とすることができる。
【0022】
上記空隙部16の幅aは、先端で1〜6mm、特に2〜4mmとすることが好ましい。また、空隙部16の幅aは、シャフトの後端側から先端側に向かうにしたがい漸次狭くなることにより、シャフトの後端側よりもシャフトの先端側の方が狭くなっており、これによりインナーシャフトを軽量化することができるという作用効果が得られる。
【0023】
本実施形態において、連結部材18、振動吸収部材20の機能、材質や、アウターシャフト12、インナーシャフト14の材質、成形法などは、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0024】
(第3実施形態)
図3は本発明に係るゴルフクラブ用シャフトの第3実施形態を示す模式的断面図である。本例のシャフト40は、アウターシャフト12と、アウターシャフト12の中空部に配置されたインナーシャフト14とを備え、両シャフト12、14の間に空隙部16が形成されている。本例では、アウターシャフト12は、先方に向かうにしたがい漸次小径となる中空先細り円錐形状を有し、インナーシャフト14は、後端側と先端側の径が等しい中実円柱形状を有し、両シャフト12、14は長さがほぼ等しい。アウターシャフト12の長さ、外径、壁部の肉厚、インナーシャフト14の長さ、外径は、第1実施形態と同様とすることができる。
【0025】
上記空隙部16の幅aは、先端で1〜6mm、特に2〜4mmとすることが好ましい。また、空隙部16の幅aは、シャフトの後端側から先端側に向かうにしたがい漸次狭くなることにより、シャフトの後端側よりもシャフトの先端側の方が狭くなっており、これにより第2実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0026】
本実施形態において、連結部材18、振動吸収部材20の機能、材質や、アウターシャフト12の材質、成形法、インナーシャフト14の材質などは、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、インナーシャフト1は、繊維強化樹脂や金属を用いて公知の成形法で成形すればよい。
【0027】
(第4実施形態)
図4は本発明に係るゴルフクラブ用シャフトの第4実施形態を示す模式的断面図である。本例のシャフト50は、アウターシャフト12と、アウターシャフト12の中空部に配置されたインナーシャフト14とを備え、両シャフト12、14の間に空隙部16が形成されている。本例では、アウターシャフト12は、先方に向かうにしたがい漸次小径となる中空先細り円錐形状を有し、インナーシャフト14は、先方に向かうにしたがい漸次小径となる中空先細り円錐形状部分12aを後端側に有するとともに、先端側に後端側と先端側の径が等しい中実円柱形状部分12bを先端側に有し、両シャフト12、14は長さがほぼ等しい。アウターシャフト12の長さ、外径、壁部の肉厚、インナーシャフト14の長さは第1実施形態と同様とし、インナーシャフト14の長さ、外径は、第1実施形態と同様とすることができる。
【0028】
上記空隙部16の幅aは、先端で1〜6mm、特に2〜4mmとすることが好ましい。また、空隙部16の幅aは、後端側において、シャフトの後端側から先端側に向かうにしたがい漸次広くなっているとともに、先端側において、シャフトの後端側から先端側に向かうにしたがい漸次狭くなっており、これによりインナーシャフトを軽量化することができるという作用効果が得られる。
【0029】
本実施形態において、連結部材18、振動吸収部材20の機能、材質や、アウターシャフト12の材質、成形法、インナーシャフト14の材質などは、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、インナーシャフト1は、繊維強化樹脂や金属を用いて公知の成形法で成形すればよい。
【0030】
なお、本発明のゴルフボール用シャフトは上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、アウターシャフトの長さとインナーシャフトの長さを等しくしたが、両シャフトの長さを変えてもよい。また、上記実施形態では、インナーシャフトの断面を円形としたが、角形などの他の形状としてもよい。
【0031】
次に、図5、図6を参照して、本発明シャフトの作用効果を説明する。本発明シャフト60を装着したゴルフクラブを用いてヘッドスピードの遅いゴルファーがスイングを行った場合は、図5に示すように、アウターシャフト62はしなるが、インナーシャフト64はヘッドスピードに応じて全くしならないか、多少しなるだけの状態になる。したがって、シャフト60が柔らかくなってヘッドスピードの遅いゴルファー向きになり、シャフト60の柔らかさを活かして、ボールの打出角を大きくして飛距離を増大させることができる。
【0032】
本発明シャフト60を装着したゴルフクラブを用いてヘッドスピードの速いゴルファーがスイングを行った場合は、図6に示すように、ヘッドスピードによってしなりの大きさは異なるが、アウターシャフト62およびインナーシャフト64の両方がヘッドスピードに応じてしなる。したがって、シャフト60硬くなってヘッドスピードの速いゴルファー向きになり、シャフトの硬さを活かして、ボールの初速を大きくして飛距離を増大させることができる。ただし、この場合でも、シャフト60の主体的役割を果たすのはアウターシャフト62であり、インナーシャフト64は補助的役割を果たすものである。
【符号の説明】
【0033】
10 ゴルフクラブ用シャフト
12 アウターシャフト
14 インナーシャフト
16 空隙部
18 連結部材
20 振動吸収部材
30 ゴルフクラブ用シャフト
40 ゴルフクラブ用シャフト
50 ゴルフクラブ用シャフト
60 ゴルフクラブ用シャフト
62 アウターシャフト
64 インナーシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターシャフトと、前記アウターシャフトの中空部に配置されたインナーシャフトとを備え、前記アウターシャフトと前記インナーシャフトとの間に空隙部が形成されていることを特徴とするゴルフクラブ用シャフト。
【請求項2】
前記空隙部の幅はシャフト先端で1〜6mmである請求項1に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項3】
前記アウターシャフトの後端部と前記インナーシャフトの後端部とは連結部材により連結されている請求項1または2に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項4】
前記アウターシャフトの先端部と前記インナーシャフトの先端部との間の空隙部に振動吸収部材が配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項5】
前記アウターシャフトと前記インナーシャフトとは長さが等しい請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項6】
前記アウターシャフトと前記インナーシャフトとの間の空隙部の幅は、シャフトの後端側よりもシャフトの先端側の方が広い請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項7】
前記アウターシャフトと前記インナーシャフトとの間の空隙部の幅は、シャフトの後端側よりもシャフトの先端側の方が狭い請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項8】
前記アウターシャフトは、繊維強化樹脂により形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のゴルフクラブ用シャフトを具備することを特徴とするゴルフクラブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−142973(P2011−142973A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4567(P2010−4567)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】