説明

ゴルフクラブ用シャフト

【課題】カーボン繊維強化樹脂を素材としたゴルフクラブ用シャフトであって、塗装により十分な意匠性を付与することができるゴルフクラブ用シャフトを提供する。
【解決手段】カーボン繊維強化樹脂からなる素管12の外周面にメタリック塗料層14が形成され、かつ、メタリック塗料層の周面にカラークリアー塗料塗装領域16、18、20がシャフトの軸方向に沿って複数形成されているとともに、複数のカラークリアー塗料塗装領域は互いに異なる色を有するゴルフクラブ用シャフト10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン繊維強化樹脂(CFRP)を素材としたゴルフクラブ用シャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ゴルフクラブ用シャフトとしては、カーボン繊維を熱硬化性樹脂で固めたカーボン繊維強化樹脂を素材としたものが多用されている。このカーボン繊維強化樹脂を素材としたゴルフクラブ用シャフト(カーボンシャフト)を作製する場合、カーボン繊維強化樹脂からなる素管を成形した後、素管に表面仕上げ、塗装を施す。
【0003】
上記塗装では、単一の塗料を用いることが多いが、色の異なる2種類の塗料を用いることもある(特許文献1参照)。特許文献1は、管状体本体の上の第1の色の塗料層中に第2の色の粒子が混入してぼかし模様を形成している領域を有する管状体の発明を開示している。
【0004】
【特許文献1】特開平8−172982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の管状体からなるゴルフクラブ用シャフトは、2色によるぼかし模様を形成したものであり、十分な意匠性を有さないものであった。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、カーボン繊維強化樹脂を素材としたゴルフクラブ用シャフトであって、塗装により十分な意匠性を付与することができるゴルフクラブ用シャフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するため、カーボン繊維強化樹脂からなる素管の外周面にメタリック塗料層が形成され、かつ、前記メタリック塗料層の周面にカラークリアー塗料塗装領域がシャフトの軸方向に沿って複数形成されているとともに、前記複数のカラークリアー塗料塗装領域は互いに異なる色を有することを特徴とするゴルフクラブ用シャフトを提供する。
【0008】
本発明のゴルフクラブ用シャフトは、カーボン繊維強化樹脂からなる黒色の素管の外周面にメタリック塗料層が形成され、さらにこのメタリック塗料層の周面に互いに色の異なる複数のカラークリアー塗料塗装領域が形成されている。そのため、メタリック塗料層で反射した光が、それぞれのカラークリアー塗料塗装領域を透過して独特の色感を発現させ、その結果、十分な意匠性を得ることができる。
【0009】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。本発明において用いるカーボン繊維強化樹脂製の素管は、例えば、先細り円柱形のマンドレルの周囲にプリプレグの積層体を形成した後、この積層体を加熱硬化させることにより成形することができる。プリプレグとしては、例えば、平行に引き揃えたロービングやクロス、マットといった強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させて作製したシート状のものを用いることができる。この場合、強化繊維はカーボン繊維単独であってもよく、カーボン繊維とカーボン繊維以外の強化繊維との混合物であってもよい。カーボン繊維以外の強化繊維としては、例えば、ガラス繊維、金属繊維、アラミド繊維、炭化けい素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維等を挙げることができる。また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等、副資材としては硬化剤、硬化促進剤、充填材、離型剤、顔料等を用いることができる。
【0010】
本発明では、素管の外周面にメタリック塗料層を形成する。ただし、グリップを装着する部分にはメタリック塗料層を形成する必要はない。メタリック塗料としては、例えば、基材塗料にアルミニウム、亜鉛、銀、白金、ニッケル、錫、ステンレス鋼、マイカ等からなる光輝材を混合したものを用いることができる。メタリック塗料の色に限定はないが、シルバーが好ましく、アルミニウム箔、二酸化チタンの微粒子、チタン箔などを顔料とすることが良く、特に輝度の高い蒸着アルミニウムを顔料とすることが好ましい。メタリック塗料層は、スプレー塗装法、しごき塗装法などによって形成することができるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
本発明では、メタリック塗料層の周面にカラークリアー塗料塗装領域をシャフトの軸方向に沿って複数形成する。カラークリアー塗料としては、透明クリアー塗料に顔料等の着色剤を混合したものを用いることができる。カラークリアー塗料の色に限定はないが、彩度の高い色、具体的には青、赤、黄、オレンジ、紫が好ましい。また、染料は、一般的に顔料に比べ小さい粒子であり、着色剤は染料でもよい。
【0012】
本発明では、カラークリアー塗料塗装領域は、シャフトの軸方向に沿って連続して形成されていることが好ましい。これにより、さらに優れた意匠性を得ることができる。
【0013】
本発明では、複数のカラークリアー塗料塗装領域の境界部分では、隣接するカラークリアー塗料塗装領域の一部同士が重なり合っていることが好ましい。これにより、カラークリアー塗料塗装領域の境界部分で色が急激に変化することが防止され、さらに優れた意匠性を得ることができる。
【0014】
本発明では、複数のカラークリアー塗料塗装領域は、色の3原色(赤、青、黄)の隣り合う2色およびその中間色を有する3つのクリアー塗料塗装領域であり、シャフトの基端側に濃い色のクリアー塗料塗装領域、その先方に中間色のクリアー塗料塗装領域、その先方に薄い色のクリアー塗料塗装領域を形成し、シャフト先端部はメタリック塗料層を露出させることが特に適当である。このようにすると、色のスムーズなグラデーション(色の推移)が得られ、特に優れた意匠性を得ることができる。具体的には、赤と黄とその中間色であるオレンジを用いたり、黄と青とその中間色である緑を用いたりすると良い。特に、色相の近い赤、オレンジ、黄のグラデーションがよい。
【0015】
カラークリアー塗料塗装領域は、スプレー塗装法、しごき塗装法などによって形成することもできるが、熱転写法を用いて1回の転写により形成することが好ましい。熱転写法を用いる場合、転写紙や転写フィルムにスクリーン印刷法などによってカラークリアー塗料層を形成し、この転写紙や転写フィルム上のカラークリアー塗料層をシャフトのメタリック塗料層に当てて加圧しながら加熱することにより、カラークリアー塗料層をメタリック塗料層上に転着させればよい。複数のカラークリアー塗料塗装領域を熱転写法を用いて1回の転写により形成することにより、カラークリアー塗料の塗装工程を簡単にすることができるとともに、カラークリアー塗料を硬化させるための加熱工程(焼き付け)の回数を減らすことができ、シャフトの熱による劣化を防止することができる。
【0016】
本発明のゴルフクラブ用シャフトは、シャフトの最外層に透明クリアー塗料層を形成することが好ましい。これにより、メタリック塗料層やカラークリアー塗料塗装領域を保護することができる。透明クリアー塗料層は、スプレー塗装法、しごき塗装法などによって形成することができるが、これらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
本発明のゴルフクラブ用シャフトは、塗装により十分な意匠性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。図1は本発明のゴルフクラブ用シャフトの一例を示す模式的正面図である。
【0019】
本例のゴルフクラブ用シャフト10は、カーボン繊維強化樹脂からなる素管12の外周面全面にメタリック塗料層14が形成されている。また、メタリック塗料層14の周面に3つのカラークリアー塗料塗装領域16、18、20がシャフトの軸方向に沿って連続して形成されている。カラークリアー塗料塗装領域16、18、20の境界部分では、隣接するカラークリアー塗料塗装領域16、18、20の一部同士が重なり合っている。
【0020】
カラークリアー塗料塗装領域16は赤色、カラークリアー塗料塗装領域18はオレンジ色、カラークリアー塗料塗装領域20は黄色であり、シャフト先端部ではメタリック塗料層14が露出している。すなわち、本例のゴルフクラブ用シャフト10では、カラークリアー塗料塗装領域16、18、20は、色の3原色(赤、青、黄)の隣り合う2色(赤色、黄色)およびその中間色(オレンジ色)を有する3つのクリアー塗料塗装領域であり、シャフトの基端側に濃い色(赤色)のクリアー塗料塗装領域16、その先方に中間色のクリアー塗料塗装領域18、その先方に薄い色(黄色)のクリアー塗料塗装領域20を形成し、シャフト先端部はメタリック塗料層14を露出させている。
【0021】
本例のゴルフクラブ用シャフト10では、3つのカラークリアー塗料塗装領域16、18、20は、熱転写法を用いて1回の転写により形成されている。また、本例のゴルフクラブ用シャフト10は、シャフトの最外層に透明クリアー塗料層が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のゴルフクラブ用シャフトの一例を示す模式的正面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 ゴルフクラブ用シャフト
12 素管
14 メタリック塗料層
16 カラークリアー塗料塗装領域
18 カラークリアー塗料塗装領域
20 カラークリアー塗料塗装領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボン繊維強化樹脂からなる素管の外周面にメタリック塗料層が形成され、かつ、前記メタリック塗料層の周面にカラークリアー塗料塗装領域がシャフトの軸方向に沿って複数形成されているとともに、前記複数のカラークリアー塗料塗装領域は互いに異なる色を有することを特徴とするゴルフクラブ用シャフト。
【請求項2】
前記複数のカラークリアー塗料塗装領域は、シャフトの軸方向に沿って連続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項3】
前記複数のカラークリアー塗料塗装領域の境界部分では、隣接するカラークリアー塗料塗装領域の一部同士が重なり合っていることを特徴とする請求項1または2に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項4】
前記複数のカラークリアー塗料塗装領域は、色の3原色(赤、青、黄)の隣り合う2色およびその中間色を有する3つのクリアー塗料塗装領域であり、シャフトの基端側に濃い色のクリアー塗料塗装領域、その先方に中間色のクリアー塗料塗装領域、その先方に薄い色のクリアー塗料塗装領域を形成し、シャフト先端部はメタリック塗料層を露出させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項5】
前記複数のカラークリアー塗料塗装領域は、熱転写法を用いて1回の転写により形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴルフクラブ用シャフト。
【請求項6】
シャフトの最外層に透明クリアー塗料層が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のゴルフクラブ用シャフト。

【図1】
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【公開番号】特開2007−282654(P2007−282654A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109819(P2006−109819)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】