説明

ゴルフシューズ用ソール

【課題】アウトソールとミッドソールとの剥離が十分に防止されると共に、アウトソールの側面への露出量が小さいゴルフシューズ用ソールを提供する。
【解決手段】アウトソール11の周縁に立設された立ち上げ縁部の少なくとも一部が、アウトソールの最外縁の第1立上部13と、この第1立上部13よりも内側に設けられた、第1立上部13よりも上方にまで立ち上がる第2立上部14とを有し、ミッドソール12が第2立上部14の外側面14aを覆っている。立ち上げ縁部を外側の第1立上部13と内側の第2立上部14とで構成し、この第2立上部14を第1立上部13よりも高くしたことにより、アウトソール11とミッドソール12との剥離が十分に防止される。ソールの側面に露出するのは第2立上部14よりも高さの低い第1立上部13であるため、ソール側面へのアウトソール露出量(高さ)も少ないため、ソール側面の美観を高めることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフシューズ用ソールに係り、特に、アウトソールとアウトソールより柔軟なミッドソールとが積層されたゴルフシューズ用ソールにおけるアウトソールとミッドソールの剥離の問題を解決したゴルフシューズ用ソールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフシューズ用ソールの底面は、一般に、アウトソールと該アウトソールの上側に積層された、該アウトソールよりも柔軟なミッドソールとの積層体で構成されている。このアウトソールとミッドソールとがソール周縁において剥離することを防止するためにアウトソールの周縁の少なくとも一部に立ち上げ縁部を設けることが行われている(例えば特開2000−70002号公報の図2参照)。
【0003】
図3は、市販されているゴルフシューズのソールの一例を示す底面図であり、図4は、ソール幅方向の縦断面図(図3のIV−IV線に沿う断面図)である。このゴルフシューズ用ソール1は、アウトソール2とミッドソール3との積層体よりなる。アウトソール2の底面には多数の突起4が設けられている(図4において、GLはグランドラインである。)。
【0004】
このアウトソール2の外側及び内側の側縁にあっては、上方にh=3〜15mm程度立ち上がる立ち上げ縁部5が設けられている。ミッドソール3は、この立ち上げ縁部5の内側面5aと頂面5bとの双方に接している。立ち上げ縁部5の外側面5cは外部に露出している。
【特許文献1】特開2000−70002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴルファーがスイングを行うと、ゴルファーの身体が強く捻られるので、ソールのアウトソールとミッドソールとの界面には足幅方向に大きな剪断応力が生じ、このためにアウトソールとミッドソールとの間に大きな引き裂き方向の力が加わり、アウトソールとミッドソールとが側縁から剥離が生じ易い。例えば、右利きのプレーヤーにおいては左足外側側縁及び右足内側側縁から剥離が生じ、左利きプレーヤーにおいては左足内側側縁及び右足外側側縁から剥離が生じることがある。
【0006】
上記図3,4のようにアウトソール2の縁部に立ち上げ縁部5を立設することにより、この縁部からのアウトソール2とミッドソール3との剥離がある程度防止されるが、このような立ち上げ縁部を形成しても、長年使用していると剥離が生じ、ソール部の破損に到ることがある。
【0007】
この剥離を防止するためには、立ち上げ縁部を高くすることが効果的であるが、立ち上げ縁部を高くするとデザイン性が損なわれるので、あまり高くすることはできない。特に、スニーカータイプのゴルフシューズにあっては、立ち上げ縁部をなるべく低く抑えることが望まれている。
【0008】
なお、近年、スパイクレスシューズが普及し、ゴルフシューズを着用したままゴルフ練習場においてゴムマット等の上でスイングをすることが増えている。このようにゴムマット上でスイングすると、アウトソールとミッドソールとの間に生じる剪断応力がかなり大きなものとなり、比較的早期のうちにアウトソールとミッドソールとの間に剥離が生じることがある。
【0009】
本発明は、アウトソールとミッドソールとの剥離が十分に防止されると共に、アウトソールの側面への露出量が小さく、デザイン性も向上させることができるゴルフシューズ用ソールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)のゴルフシューズ用ソールは、アウトソールとアウトソールより柔軟なミッドソールとが積層されてなり、該アウトソールの周縁から立ち上げ縁部が立設されているゴルフシューズ用ソールにおいて、少なくとも一部の該立ち上げ縁部は、該アウトソールの最外縁の第1立上部と、該第1立上部よりも内側に設けられた、該第1立上部よりも上方にまで立ち上がる第2立上部とを有し、前記ミッドソールが該第2立上部の外側面を覆っていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2のゴルフシューズ用ソールは、請求項1において、該第2立上部の外側面は、上方ほど内側となるように傾斜していることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3のゴルフシューズ用ソールは、請求項1において、該第2立上部の外側面は、ゴルフシューズ用ソールの底面に対し略垂直であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4のゴルフシューズ用ソールは、請求項1ないし3のいずれか1項において、該第2立上部は該第1立上部よりも2〜8mm高いことを特徴とするものである。
【0014】
請求項5のゴルフシューズ用ソールは、請求項1ないし4のいずれか1項において、該ゴルフシューズ用ソールの前足部の外側の側縁と内側の側縁とにのみ前記該第1立上部及び第2立上部を有した立ち上げ縁部が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のゴルフシューズ用ソールにあっては、立ち上げ縁部を外側の第1立上部と内側の第2立上部とで構成し、この第2立上部を第1立上部よりも高くしている。このように高い第2立上部を設けたことにより、アウトソールとミッドソールとの剥離が十分に防止される。また、ソールの側面に露出するのは第2立上部よりも高さの低い第1立上部であるため、ソール側面へのアウトソール露出量(高さ)も少ない。このため、ソール側面の美観を高めることも可能である。
【0016】
この第2立上部の外側面は、上方ほど内側となるように傾斜していてもよいが、ソール底面に対し略垂直とすることにより、該第2立上部の外側面へのミッドソールの被り厚さを大きくし、この部分でのミッドソールの付着強度、あるいはミッドソールの耐久性を向上させることができる。
【0017】
第2立上部を第1立上部よりも十分に例えば2〜8mm程度高くすることにより、アウトソールとミッドソールとの剥離をより十分に防止することが可能となる。
【0018】
なお、ゴルファーがスイングしたときにソールに加えられる足幅方向の剪断応力はソールの前足部の外側及び内側の側縁において著しく大きくなる。そこで、本発明のゴルフシューズ用ソールにあっては、前足部の外側及び内側の側縁の立ち上げ縁部のみを上記の第1立上部と第2立上部とで構成するようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に図面を参照して本発明のゴルフシューズ用ソールの実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明のゴルフシューズ用ソールの第1の実施の形態を示し、図2は第2の実施の形態を示している。図1,2の(a)図はソール幅方向の縦断面図であり、前記図4と同様部分の断面を示している。(b)図は(a)図のB部の拡大図である。
【0021】
図1,2に示す如く、本発明のゴルフシューズ用ソール10,20は、アウトソール11,21とミッドソール12,22との積層体よりなり、アウトソール11,21の周縁の立ち上げ縁部が、アウトソール最外縁の第1立上部13,23とこの第1立上部13,23よりも内側に設けられた第2立上部14,24とで構成され、第2立上部14,24が第1立上部13,23よりも上方に立ち上がる。即ち、第2立上部14,24の高さが第1立上部13,23の高さよりも高い。このため、ミッドソール12,22の外周縁部に第2立上部14,24の外側面14a,24aを覆う被覆片部15,25が形成されている。なお、本発明のゴルフシューズ用ソール10,20のその他の部位の構成は従来のゴルフシューズ用ソールと同様であり、アウトソール11,21の底面には多数の突起16,26が設けられている。図1,2において、GLはグランドラインである。
【0022】
本発明のゴルフシューズ用ソール10,20にあっては、アウトソール11,21の立ち上げ縁部を外側の第1立上部13,23と内側の第2立上部14,24とで構成し、この第2立上部14,24を第1立上部13,23よりも高くしている。このように立ち上げ縁部に第1立上部13,23と第2立上部14,24との段部を形成し、かつ、第2立上部14,24を第1立上部13,23よりも高くして、第2立上部14,24の外側面14a,24aを覆う被覆片部15,25をミッドソール12,22に形成したことにより、ソール周縁部分におけるアウトソール11,21とミッドソール12,22との接着面積が増大し、かつ、アウトソール11,21とミッドソール12,22との係合部が形成され、スイング時に加わる剪断応力に対して抵抗力を持つことができるようになり、アウトソール11,21とミッドソール12,22との剥離が防止される。
【0023】
また、ソールの側面に露出する第1立上部13,23は、第2立上部14,24よりも高さが低いため、ソール側面へのアウトソール露出量(高さ)も少ない。このため、ソール側面の美観を損なうこともない。
【0024】
図1に示す如く、この第2立上部14の外側面14aは、上方ほど内側となるように傾斜していてもよいが、図2に示す如く、ソール底面に対し略垂直とすることにより、該第2立上部24の外側面へのミッドソール22の被り厚さを大きくし、この部分でのミッドソール22の付着強度、あるいはミッドソール22の耐久性を向上させることができる。
【0025】
第2立上部14,24は、第1立上部13,23よりも十分に、例えば2〜8mm(即ち、図1(b),図2(b)においてy=2〜8mm)程度高くすることにより、アウトソール11,21とミッドソール12,22との剥離をより十分に防止することが可能となる。この段差yが2mm未満では第2立上部14,24を設けたことによる本発明の効果を十分に得ることができず、8mmを超えるとソール形状に影響を及ぼし、また、比較的比重の大きいアウトソールの部分が多くなり、ソールの重量増加となり好ましくない。
【0026】
また、第1立上部13,23の高さは3〜10mm(即ち、図1(b),図2(b)においてy=3〜10mm)で、幅は1〜3mm(即ち、図1(b),図2(b)においてx=1〜3mm)、第2立上部14,24の幅は7〜9mm(即ち、図1(b),図2(b)においてx=7〜9mm)程度とするのが好ましい。
【0027】
なお、ゴルファーがスイングしたときにソールに加えられる足幅方向の剪断応力はソールの前足部の外側及び内側の側縁において著しく大きくなる。そこで、本発明のゴルフシューズ用ソールにあっては、前足部の外側及び内側の側縁の立ち上げ縁部のみを上記の第1立上部と第2立上部とで構成するようにしてもよい。また、ソールの外側及び内側のうちの一方のみを上記の第1立上部と第2立上部とで構成するようにしても良い。
【0028】
ゴルフシューズ用ソールを構成するアウトソールの材質としては、ゴム又はゴム様弾性材料を用いることが好ましく、より具体的には、通常のソリッド(非発泡)又は発泡のゴム類や、ソリッドのサーモプラスチックウレタン、ナイロン等を好適に用いることができる。アウトソールの材質の硬度は、JIS−A硬度で40〜90゜、特に60〜70゜の範囲が好ましい。
【0029】
一方、ミッドソールの材質としては、発泡ゴム、発泡プラスチックといった弾性発泡体、より具体的には、EVA(エチレンビニルアセテート)発泡体、通常の発泡ゴム、発泡ポリウレタン等を好適に用いることができる。ただし、本発明の目的を損なわない限り、ミッドソールの材質として非発泡の弾性体(ゴム類等)を用いても差し支えない。ミッドソールの材質の硬度は、アスカーC硬度で40〜90゜、特に50〜70゜の範囲が好ましい。
【0030】
アウトソールの地面と接する底面には、通常、複数の滑り防止用の突起が形成されている。この突起は、アウトソールの一部を突出させてアウトソールと一体に成形したものであることが好ましい。この突起の形状は、円錐台状、多角錐台状、砲弾状、円柱状、角柱状等の任意の形状とすることできるが、先細りの形状、例えば前記円錐台状、多角錐台状、砲弾状等とすることが好ましい。また、突起の大きさにも限定はないが、径(最大径)は3〜8mm、高さは3〜8mmとすることが適当である。
【0031】
アウトソール下面における前記突起の配置位置は任意に設定することができ、例えば所定間隔を置いて(例えば突起の直径の1〜3倍の間隔を置いて)、アウトソールの下面全体に亘り配置することができる。また、突起は、ソール部を前方から爪先部、踏付け部、土踏まず部及び踵部と区分したとき、体重が大きく加わる踏付け部及び踵部を中心に設けるようにしてもよい。
【0032】
なお、本発明のスポーツシューズのソール部のアウトソール下面には、これと一体の突起に加え、他の滑り防止用の突起物、例えば金属突起、ソフトスパイク等を適宜設けることができる。
【0033】
ただし、本発明のゴルフシューズ用ソールは、アウトソールの接地面にこのような滑り止め用の突起を設けたものに何ら限定されず、突起のない、所謂スパイクレスシューズ用ソールであっても良く、本発明の第1立上部と第2立上部との構成によるアウトソールとミッドソールとの剥離防止効果は、むしろ、このようなスパイクレスシューズにおいて、より一層有効に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)図は本発明のゴルフシューズ用ソールの実施の形態を示すソール幅方向の縦断面図であり、(b)図は(a)図のB部の拡大図である。
【図2】(a)図は本発明のゴルフシューズ用ソールの別の実施の形態を示すソール幅方向の縦断面図であり、(b)図は(a)図のB部の拡大図である。
【図3】市販のゴルフシューズ用ソールの一例を示す底面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 ゴルフシューズ用ソール
2 アウトソール
3 ミッドソール
4 突起
5 立ち上げ縁部
10,20 ゴルフシューズ用ソール
11,21 アウトソール
12,22 ミッドソール
13,23 第1立上部
14,24 第2立上部
15,25 被覆片部
16,26 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウトソールとアウトソールより柔軟なミッドソールとが積層されてなり、該アウトソールの周縁から立ち上げ縁部が立設されているゴルフシューズ用ソールにおいて、
少なくとも一部の該立ち上げ縁部は、該アウトソールの最外縁の第1立上部と、該第1立上部よりも内側に設けられた、該第1立上部よりも上方にまで立ち上がる第2立上部とを有し、
前記ミッドソールが該第2立上部の外側面を覆っていることを特徴とするゴルフシューズ用ソール。
【請求項2】
請求項1において、該第2立上部の外側面は、上方ほど内側となるように傾斜していることを特徴とするゴルフシューズ用ソール。
【請求項3】
請求項1において、該第2立上部の外側面は、ゴルフシューズ用ソールの底面に対し略垂直であることを特徴とするゴルフシューズ用ソール。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該第2立上部は該第1立上部よりも2〜8mm高いことを特徴とするゴルフシューズ用ソール。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、該ゴルフシューズ用ソールの前足部の外側の側縁と内側の側縁とにのみ前記該第1立上部及び第2立上部を有した立ち上げ縁部が設けられていることを特徴とするゴルフシューズ用ソール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−6636(P2006−6636A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188191(P2004−188191)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】