説明

ゴルフボール外面上でのデータ表示

【課題】様々なスイング特性の値を表示することができるゴルフボールを提供する。
【解決手段】様々なスイング特性についての値をボールの表示層120に表示するために、ゴルフボールに複数の層及びエレメントが組み込まれる。少なくとも一つのスイング特性の値を計算するための計算機102が組み込まれている。計測した結果を表示層120に表示するための重り付き光源106が組み込まれている。表示層120は実質的に不透明な層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴルフのラウンド中のゴルファーのスイングに関する情報をゴルファーに提供する装置に関する。詳しくは、本開示は、スイング特性の値を計算するための計算機及び値をボールのほぼ上面に表示するように構成された光源を含むゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフは、伝統的に、習得が困難なスポーツである。ゴルファーは、ゴルフ練習場でスイングについての多くの概念を学ぶことができるが、ゴルフコースに出ると、どうして特定のゴルフのショットの方向がうまくいかないのか又は距離が合わなかったりするのかを判断するのが困難である。これは、コース上でのゴルフには、ゴルフ練習場では再現されない多くの要因が含まれるためである。こうした要因には、芝の長さが様々であること、ディボットマーク等の障害、足元が定まらない地形、一様でない着地領域、風雨、等が含まれる。更に、ゴルファーがゲームをうまく運ぼうとするとき、これまで行った他のスイングに関するフィードバックなしでは適切なクラブの選択を決定するのは難しい。
【0003】
多くの場合、ゴルファーはゴルフスイングに習慣的なパターンを持っている。この習慣的なパターンには、習慣的なエラーが含まれている場合がある。ゴルファーは、ゴルフ練習場等のプレッシャーもストレスも少ない環境では、こうしたエラーを矯正できるが、他の人々がフォアサムで一緒にプレーしており、他のゴルファーも居て、対処すべき障害がコース上にあるゴルフコース等の多くの要因がある環境では、そのエラーに集中することができなくなる。
【0004】
こうした状況では、練習用のティーでのスイングの結果とは似つかぬ特定のパターンが出てしまうのである。こうしたパターンは、ゴルファーにとって不慣れであり、ゴルファーは、ゲームの状況にあるときにこうしたパターンをどうやって抜け出すのかに困惑してしまう。フォアサムの他のメンバーがゴルファーにとって助けになる場合もあるが、経験のレベルが同じゴルファーでは、スイングの欠陥を矯正するために良いアドバイスを与えることができない。
【0005】
従って、ゴルファーがどのようなエラーをするのかを決定できる客観的なデータにアクセスできるのがゴルファーにとって助けになり、ゴルファーは、これによりスイングを矯正できる。ゴルフ産業において、ボールに対するスイングに関するデータを検出し、そのデータを携帯式のデバイス又は遠隔のデバイス等の別のデバイスに伝達するため、ボールの中にセンサを埋め込むことは周知である。更に、他の産業においては、他の機器を必要とすることなく、ボール内のセンサが検出したデータの表示器をボールに設けることは周知である。しかしながら、このようなシステムは、ボールに加わる応力及び衝撃力が大きいため、ゴルフ産業では使用されていない。こうした用途で一般に使用されている表示器は、ゴルフクラブの衝撃力に耐えることができず、場合によっては地面又はコース上の障害物との衝突に耐えることができず、従って、ゴルフの用途で使用する上で必要とされる耐久性を備えていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゴルファーがボール以外の機器を購入し或いは他の機器と同期する必要なしにゴルファーのスイング特性を確認できる自己完結型のボールを提供するのが望ましい。更に、ゴルファーがボールを見るだけでスイング特性の情報をゴルファーに提供するため、ボールのカバーが表示器として機能できるように設計されたボールを提供するのが望ましい。このようにして、ゴルファーは、追加の機器を持ち運んだり購入したりすることなく、所望の情報を得ることができ、ボールは、従来のコース上で従来の機器でプレーする上で適切な耐久性を備えている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施例は、一つ又は複数のスイング特性の値を計算するための埋設された計算機と、こうした値を送る光源と、ゴルファーが値を読み取ることができる表示器とを含むゴルフボールに関する。これらのエレメントは、全て、ゴルフボールの内部に配置されている。ゴルファーは、ボール内の計算機が提供するデータを使用してゴルフスイングを変え、そのスコアに絶えず注意し、ゲームの様々な質を評価する。検出、計算、及び表示の全ての必要な機能がボールに内蔵されているため、ボールは、ボール内で発生したデータを呼び出すのに必要な唯一の機器である。
【0008】
一実施例では、少なくとも一つのスイング特性を表示することができるゴルフボールを開示する。ゴルフボールは、計算機と、クッション層と、少なくとも一つの中間層と、表示器と、光源とを含んでいてもよい。計算機は、少なくとも一つのスイング特性についての値を計算できる。クッション層は、計算機を取り囲んでいてもよい。少なくとも一つの中間層は、クッション層を取り囲んでいてもよい。表示器は、計算値を表示できるように光源に対して位置決めされていてもよい。光源は、計算機から表示器へ光を送り、これによって計算値を表示器上に表示できる。ボールは、更に、光源を概ね上方へ向けることができる重りを含む。
【0009】
他の実施例では、ゴルフボールの一層上にデータを表示する表示デバイスを組み込んでいるゴルフボールを提供する。ゴルフボールは、光源と、重りと、表示層とを含んでいてもよい。光源は、3次元の回転自由度を備えていてもよく、ゴルフボールの中心領域に位置決めされていてもよい。重りは、光源に取り付けられていて、光源を概ね上方へ向けることができる。表示層は連続していてもよく、光源が任意の回転位置に位置決めされたとき、光源から放出された光を表示するように構成されていてもよい。
【0010】
他の実施例では、ボールの一層上に少なくとも一つのスイング特性を表示するためのデバイスを提供する。デバイスは、計算機と、光源と、重りと、クッション層と、少なくとも一つの中間層と、表示層とを含む。計算機、光源、及び重りは互いに取り付けられていて、球体に包含されていてもよい。この球体は、ボールの中心領域に配置されていてもよい。計算機は、少なくとも一つのスイング特性を計算できてもよい。クッション層は、包含された球体を取り囲んでいてもよい。クッション層は、更に、包含された球体がボールの動きから独立して動くことができるように設計されていてもよい。少なくとも一つの中間層は、クッション層を取り囲んでいてもよい。表示層は中間層を包含していてもよい。光源及び表示層は、少なくとも一つのスイング特性についての値を光源が表示層の任意の場所に表示できるように構成されていてもよい。重りが概ね上方にある表示層上に光を投射して表示する光源を配向できるように、重り、計算機、及び光源が互いに取り付けられている。
【0011】
本発明のこの他のシステム、方法、特徴、及び利点は、添付図面及び以下の説明を検討することによって当業者に明らかになる。このような追加のシステム、方法、特徴、及び利点は、全て、この説明及びこの概要に含まれており、本発明の範疇にあり、添付の特許請求の範囲によって保護される。
【0012】
本発明は、添付図面及び以下の説明を参照することにより更によく理解されるであろう。添付図面に示す構成要素は、必ずしも等縮尺ではなく、本発明の原理を例示することを主眼としている。更に、添付図面において、様々な図に亘り対応する部分に同様の参照番号が付してある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示によるボールの第1の実施例の断面図である。
【図2】本開示によるボールの第2の実施例の断面図である。
【図3】本開示によるボールの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示に説明するボールは、各々、少なくとも一つのスイング特性についてのデータをゴルファーに提供するように協働する多くの構成要素を有する。このデータは、ボールの一つの層上に表示される。これは、データを取得するための追加の機器に頼ることなく、ゴルファーがデータを得ることができるようにするためである。
【0015】
図1は、ボール100の第1実施例の断面図である。ボール100は、計算機102を含んでいてもよい。計算機102はボール100の中心領域に配置されており、幾つかの場合、ボール100のほぼ中心104に位置決めされる。計算機102は多くの構成要素を含んでいてもよい。
【0016】
計算機102は電源を含んでいてもよい。多くの実施例において、電源は電池であってもよい。電池は、充電可能であってもよい。電池は、ゴルフボールに共通の回転運動によって充電可能であってもよいし、充電可能な電池の産業で一般的であるように無接触式充電装置によって充電可能であってもよい。電池の正確な形体及び電池の充電方法は、多くの実施例において重要ではなく、当業者は、ボールのサイズに関して使用される適当なサイズ及び重量を維持しつつ、選択されたエレメントの残りについての適当なワット数、電流、及び記憶容量を持つ多くの従来のシステムから選択できる。
【0017】
計算機102は、更に、スイング特性の値を計算するためのプロセッサを含んでいてもよい。様々な種類のスイング特性についての値を決定するためにボールに内蔵されていてもよいプロセッサは一般に周知である。多くの実施例において、従来のマイクロプロセッサを使用してもよい。マイクロプロセッサは、所望の様々なスイング特性のうちの任意の特性を計算するように設計されていてもよい。他の実施例では、一つ又は複数のナノコンピュータをプロセッサとして使用してもよい。
【0018】
計算機102は、更に、メモリーを含んでいてもよい。幾つかの実施例では、計算機が別の使用についての値を保存するのが望ましい。ゴルファーは、単一のショットから得られたデータを見ようとする。しかしながら、ゴルファーは、更に、複数のショットから得られたデータを見ようとする。例えば、幾つかの実施例では、特定のクラブで打った場合ボールの平均飛距離を知るのが望ましい。他の実施例では、ゴルファーは、スコアをダブルチェックするための方法として、ボールを使用して、打った全ショット数を記憶することを望む。こうした場合又は他の場合において、この情報をメモリー内に保持するのが有用である。更に、メモリーは、特定のスイング特性についての計算を行うのに必要な又は望ましいデータや等式を記憶していてもよい。
【0019】
計算機102は、更に、複数のスイッチを含んでいてもよい。電池の寿命を維持するため、計算機102はタイマースイッチを含んでいてもよい。タイマースイッチは、所定の非使用期間後、マイクロプロセッサをスリープモードにし、マイクロプロセッサ及び他の電力を消費する特徴部を休止させる。計算機102は、更に、オンスイッチを含んでいてもよい。オンスイッチは、ボール100と表面との間の衝突による等の従来の方法で起動させてもよい。幾つかの実施例では、ゴルファーがボールを地面に衝突させ跳ね返らせることによって計算機102を起動させるのが望ましい。他の実施例では、ゴルファーが、ボール100を用いてプレーを開始することによって、例えばボール100をクラブで打つこと等によって計算機102を起動させるのが望ましい。他の実施例では、ゴルファーが行うことができる、振る、転がす等の動きを加えることによって計算機102を起動してもよい。
【0020】
計算機102は、更に、計算機102内のエレメントを互いに電気的に接続できる様々な回路又は配線を含んでいてもよい。この回路は周知であり、当業者が容易に形成できる。回路は、設計者の好み及び所望に応じて、有線であっても無線であってもよい。
【0021】
計算機102は、更に、光源106に接続されていてもよい。光源106は、使用者に対し、計算機が計算した特定のスイング特性の値を表す目に見えるメッセージを発生できる。光源106は、任意の型式の光源であってもよい。幾つかの実施例では、光源106には、光源自体の電池が含まれていてもよく、他の実施例では、光源106は、計算機102に内蔵された電池によって電力が加えられてもよい。多くの実施例において、関連した電池の寿命をできるだけ長くするため、低消費電力の光源106を使用するのが望ましい。幾つかの実施例では、光源106はLEDであってもよい。他の実施例では、光源106はレーザーであってもよい。他の実施例では、光源106は白熱灯であってもよい。
【0022】
多くの実施例において、本実施例で望ましい光源のワット数は比較的低い。幾つかの実施例では、光源106は、最大出力が1mWのレーザーであってもよい。幾つかの実施例では、光源106は、約10ルーメン〜約40ルーメンの輝度の投射光であってもよい。光源106から放出された光の色は、任意の所望の色であってもよい。幾つかの実施例では、従来のゴルフボールの典型的な白色と対照的な色を投射光用に使用するのが望ましく、そのような色は、レーザーやLEDによって容易に送られる。幾つかの実施例では、投射光の色は、赤色又は緑色であってもよいが、他の実施例では、投射光の色は、設計者が所望の、又は顧客が好きな色であってもよい。幾つかの実施例では、色は、以下に更に詳細に説明するように、顧客が選択できてもよい。
【0023】
多くの実施例において、重り108が組み込まれており、光源106及び計算機102に取り付けられている。多くの実施例において、重り108は比較的小型つまり軽量である。多くの実施例において、ボール100の総重量をUSGAの規格内に納め、ボール100の重量を半径方向にできるだけ偏りなく維持するのが望ましい。従って、重り108は比較的小型つまり軽量であるとよい。多くの実施例において、重り108の目的は、光源106を重力に対して所定の方向へ向けることである。図1に重力方向を概ね矢印107として示す。光源106は、所定の表示方向110を含む。表示方向110は、光が光源106から放射、投射つまり放出される方向であってもよい。多くの実施例において、表示方向は、概ね上方であり、即ち重力方向とは逆方向である。表示方向が上方である場合、ゴルファーは、例えば表示方向が下方である場合よりも表示された情報を容易に見ることができる。表示方向が概ね重力方向下方である場合には、ゴルファーは、ゴルフボールを持ち上げなくては、或いは情報を読むための鏡又は他のデバイスを使用しなくては情報を見ることができない。特別な状況を除き、フェアウェー上のボールを持ち上げるのはゴルフの規則に反するため、情報を下方に表示することにすると、各ショットから情報又はデータを受け取って使用しようとするゴルファーにとって困難が生じる。
【0024】
ゴルファーは、各ショットから得られたこのデータ又は情報を見て使用しようとするため、計算機からデータを送る光を各ショット後に見ることができるのが望ましい。従って、固定された表示位置を使用する場合、こうした表示を各ショットの終了時に見ることができることを保証するのは不可能である。更に、表示方向110が固定されている場合、同様の不都合が生じる。表示方向を変えることができ、多くの場合に表示方向110を上方に向けることができるようにボール100を設計することが望ましい。
【0025】
光源106は、ボール100の中心領域に位置決めされていて、該光源106に3次元の回転自由度が与えられるように重り108に取り付けられていてもよい。光源106は、どこにも拘束されてなく、どのような点や軸に対しても枢動しない。ボール100の3次元的な最終休止位置に関わらず、光源106は任意の回転位置まで自由に回転できる。
【0026】
従って、光源106の表示領域110が概ね上方つまり重力方向とは逆方向を向き、重り108が概ね下方つまり重力方向を向くように光源106及び重り108が取り付けられているのが望ましい。図1に示す実施例では、光源106及び重り108の両方が計算機102に取り付けられているが、この取り付けは、便宜上の理由や、パッケージ上の理由による。重り108の目的が表示領域110を所定の方向へ向けることであるため、重り108は、表示方向110を概ね上方へ向けるために、光源106よりも僅かに重いことだけが必要とされる。多くの実施例において、表示方向を真上へ向けることは必須でなく、多くの実施例において、データをボール100の上半部に表示するのが望ましく、ボール100の上半部の任意の場所が概ね上方に向いているものと考えられる。従って、重りは、図1に概ね示されている向きまで回転させるのに必要な重さと同程度の重さがあればよい。
【0027】
多くの実施例においては、計算機102、光源106、及び重り108はボール100の中心領域に封じ込められるように位置決めされ、即ち包含されていてもよい。幾つかの実施例では、計算機102、光源106、及び重り108は流体密シェル112内に配置されていてもよい。流体密シェル112は球形であってもよく、ボールがゴルフクラブ、地面、又は他の表面等の表面と接触したときに変形するのに十分な弾性と、内部に封じ込められたエレメントに何らかの保護手段を提供するのに十分な強度とを併せ持つ材料で形成されていてもよい。シェル112を図1に球形であるように示しているが、シェル112は、必ずしも球形でなくてもよい。シェル即ちカプセル112は、例えば、内部に封じ込められたエレメントと同一の形状であるように型成形されていてもよい。他の実施例では、シェル112は、ポリエチレンフィルム等の薄いメンブレンであって、このメンブレンの内側に計算機102、光源106、及び重り108が封じ込まれていてもよい。
【0028】
嚢114(ブラダー)がカプセル112を取り囲んでいてもよい。嚢114は、流体116で充填されていてもよい。流体116は、カプセル112及びその内部に封じ込められたエレメントに対してクッション層即ち衝撃吸収層として役立つ。一般に、ゴルフボールには、クラブ等により高い衝撃が加えられる。別の物体や表面がボール100と接触したとき、カプセル112の位置がずらされ易い。流体116は、カプセル112の動きを減衰するのに十分な粘度を有するように選択されてもよい。流体116は、更に、ボール100が休止状態にあるときに、カプセル112が嚢114内で浮遊しているように、十分に高い粘度及び適当な密度を備えていてもよい。流体116は、更に、嚢114内でのカプセル112の回転を可能にするか又は促すように設計されていてもよい。ボール100の休止時にカプセル112が重力に対して概ね図1に示す方向を向くのが望ましいため、カプセル112は、図1に示す方向に達することができるように、嚢114内で自由に回転するように設計されていることが望ましい。流体116の選択を行う上で、この特徴を一つの要因として使用してもよい。
【0029】
幾つかの実施例では、嚢114は必ずしも別個のエレメントでなくてもよい。幾つかの実施例では、嚢114は、単に中間層118の内面であってもよい。中間層118は、嚢114、クッション層即ち流体層116、カプセル112、及びカプセル112内に包含されたエレメントを取り囲む一つ又は複数の層であってもよい。中間層118は、ゴルフボールを製造するのにこれまで使用されている複数の熱可塑性又は熱硬化性の材料のうちの任意の材料で形成されていてもよい。ゴルファーが彼の又は彼女の通常のボールと同様にボール100を使用するように、ボール100ができるだけ従来のボールとほぼ同じ挙動を示すのが望ましいため、中間層118に対して選択される材料は、従来のボールと同様の反発係数、圧縮係数、等が生じるように選択されてもよい。幾つかの実施例では、様々な層の特性を組み合わせてボール100から適当な応答を得るために中間層118は、異なる材料からなる複数の重なった層であってもよい。
【0030】
中間層118を表示層120が取り囲んでいてもよい。表示層120は、光源106の表示領域110から放出された光を表示するように選択されてもよい。表示層120は、多くの実施例において、実質的に不透明であってもよい。表示層120は、光源106の表示領域110から放出された光を、ボール100を見る人に対して表示するため、適当な色彩及び厚さの適当な材料で形成されていてもよい。表示領域110から放出された光は、視認領域122に示されてもよい。視認領域122は、表示層120の破線間の領域であってもよい。破線は、一般的には、表示領域110から放出された光を受け取ることができる表示層120の範囲を示す。放出された光が表示層120に届くと、ボール100を使用しているゴルファーによって視認できるようになる。幾つかの実施例では、視認領域は、約15mm×約15mm〜約35mm×約35mmであってもよい。
【0031】
表示層120は、様々な材料から選択されてもよい。幾つかの実施例では、表示層120は、紙、ウレタンやアイオノマー等の熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂で形成されていてもよい。表示層120は、中実の材料であってもよく、又はメッシュであってもよい。別の態様では、表示層120は、中間層118の外面124に施された塗料であってもよい。幾つかの実施例では、表示層120の厚さは、約0.1mm〜約2mmであり、更に好ましくは、約0.1mm〜約1.7mmであり、最も好ましくは、約0.2mm〜約1.5mmである。多くの実施例において、表示層120は、表示層120の任意の領域に適当な表示領域つまり視認領域122を提供するため、連続した表面であるのが望ましい。
【0032】
表示層120は、望ましくは、白色である。多くの実施例において、白色の表示表面は、光源106から放出された光と表示層の色との間に望ましいコントラストを提供する。表示層120は実質的に不透明であるとよい。表示層120は、ボールを見る人が、光源106から放出された光を見ることができないような完全な不透明にしない方がよい。しかしながら、表示層120が透明又は実質的に半透明である場合には、光源106から放出された光を表示層120上で見ることができない。従って、表示層120は、光源106から放出された光を見ることができるのに十分に不透明である。
【0033】
表示層120は、その全表面及び表面積に亘って連続しているのが望ましい。上記のように、光源106には3次元の回転自由度がある。ボール100が休止位置に来たとき、ボール100の表示層120上の任意の点が最上位置に保持される。従って、表示層120上の任意の領域もまた上領域にあり、表示層120上の任意の領域が表示領域即ち視認領域122になる。表示層120の任意の領域が視認領域122になるため、光源106から放出された光を、ボール100を見るゴルファーに対し、ボール100の最終休止配向によらず明瞭に表示できるように表示層120が連続しており、不連続部分が最小であるのが望ましい。
【0034】
カバー層126が表示層120を取り囲んでいてもよい。多くの実施例において、カバー層126、特にはカバー層126の外面128は、ゴルフクラブで叩かれるように構成されている。従って、カバー層126には、様々なディンプル、フレット即ちランド、突出部若しくは印刷の特徴、又はボール100の弾道に影響を及ぼす上で設計者が望ましいと考える他の特徴が含まれる。カバー層126は、傷が付き難いように設計されていてもよい。設計者が望ましいと考えるこれらの特徴の任意の組み合せを本設計に組み込むことができるため、添付図面では、カバー層126は、こうした特徴が設けられていない簡単な形態で示してある。カバー層126は単一のカバー層で示してある。幾つかの実施例では、設計者は、カバー層126として複数の重なった層を組み込むのが望ましいと考える。この複数の層をカバー層126と呼んでもよい。
【0035】
ボール100の層の多くについて、実質的に透明であるのが望ましい。ゴルファーが光源106から放出された光を見ることができるようにするため、ゴルファーと光源106との間の層は、表示層120を除いて実質的に透明であるのが望ましい。従って、カプセル122、液体116、嚢114、中間層118、及びカバー層126は全て、実質的に透明であるのが望ましい。幾つかの実施例では、実質的に透明でなく半透明の幾つかの材料を組み込んでもよい。任意の一つの層に必要な透明度は、データ層120に投射されたデータをゴルファーが容易に見ることができれば十分である。
【0036】
次に図2を参照すると、この図では、図1の実施例に対して様々な変更が行ってある。こうした変更は、図2に示すように一緒に行う代わりに、単独で行ってもよい。当業者は、自分の設計についていずれの変更を行うのが望ましいのかを選択できる。図2の実施例では、様々なエレメントについて、同じ文言を使用する。同じ文言を使用した場合、図2のエレメントは、図1の同じ名称のエレメントと関連して説明したのとほぼ同じ特性を備えている。図1の対応するエレメントと異なる特徴だけを説明する。
【0037】
図2では、中心カプセル領域のエレメントの構成が幾分異なっている。図2では、計算機202は球形の形状であり、ボール200の中心204の近くのボール200の中心領域に配置された状態で示してある。図2では、計算機202は他の構造に固定されていない。光源206及び重り208は互いに固定されており、計算機202を中心として自由に独立して回転できる。光源206及び重り208は、一つ又は複数のアーム209によって互いに取り付けられるように構成されていてもよい。図2に矢印207で示すように、重り208及び光源206は、表示方向210が、概ね上方つまり重力方向とは反対の方向を向くように構成されている。この実施例でも、光源206は3次元の回転自由度を有し、ボール200が休止位置に達したとき、任意の位置まで回転できる。
【0038】
図2に示す実施例において、表示方向210の外面211及び重り208の外面205は、各々、球体の一部を別々に又は一緒に形成する円弧状の形状を持つように形成されている。これらの形状は、重り208、光源206、及び計算機202を取り囲むつまり包含するクッション層の内面213と合致する形態を備えていてもよい。別の態様では、又は追加的に、球体又は他の包含フィルム又はエンベロープ等の別個の包含層が、計算機202、光源206及び重り208を取り囲み、これらを包含していてもよい。更に、所望であれば、計算機202及び重り208の部分、光源206、及び計算機202に当接する任意の関連したアーム209の間に潤滑剤を施し、これらの部品が互いに自由に独立して回転できるようにしてもよい。更に、クッション層の内面213に当接する光源206及び重り208のエレメント間に潤滑剤を施してもよい。
【0039】
図2の実施例では、クッション層即ち衝撃吸収層は二つの嚢を含んでいてもよい。第1嚢250は、第1流体254で充填されていてもよいし、第2嚢252は、第2流体256で充填されていてもよい。多くの実施例において、第1流体254及び第2流体256は同じ流体であってもよい。第1嚢250は、第1当接面258を含んでいてもよく、第2嚢252は、第2当接面260を含んでいてもよい。第1当接面258及び第2当接面260は、任意の所望の取り付け構造又は方法で互いに固定されていてもよい。いくつかの実施例では、第1当接面258及び第2当接面260は、互いに接着剤で固定されていてもよい。図2の実施例では、第1嚢250及び第2嚢252によって形成されたクッション層の内面213が、計算機202、光源206、及び重り208を包含するカプセルを形成している。
【0040】
第1嚢250及び第2嚢252の各々は、中空の半球体であってもよく、これらの半球体は、各々、設計圧力又は所望の圧力を生じさせる流体で充填されていてもよい。ボール200がクラブで叩かれたときなどに、包含されたエレメントに力が加わったとき、各嚢内の流体が、包含されたエレメントに圧力を加える。この圧力は、包含されたエレメントに加わる力を減衰させ、即ちこうした力に対してクッションの働きをし、これによってこれらのエレメントを保護する。多くの実施例において、半球状の二つの嚢を使用するのが望ましい。この構成により、ボール200の組み立てプロセス中に組み立て及び充填を行うことを必要とするのでなく、これらの嚢の組み立てと充填を互いに関連していない工程で行うことができる。
【0041】
中間層218がクッション層を取り囲んでいてもよい。カバー層216が中間層218を取り囲んでいてもよい。表示層220がカバー層216を取り囲んでいてもよい。図2に示すように、表示層220がボール200の最外層である場合、幾つかの実施例においては、トップコートが更に施されていることが望ましい。トップコートは、表示層220の耐久性を向上させる薄い樹脂層等の薄層であってもよい。トップコートは、追加の耐擦り傷性を提供する。表示層220がボール200の最外層として形成された場合には、視認領域222の大きさを、表示層がボール200の最外層でない場合よりも大きくできる。
【0042】
添付図面には、様々な厚さの層が示してあり、一つ又は複数の実施例と関連して他の厚さを言及した。これらの厚さは、これらの層についての唯一の可能な厚さではないことに留意されたい。様々な層についての所望の厚さは、設計者が使用したい材料と、設計者が様々な層によって提供したい防護性つまり反発性で決まる。当業者は、適当な厚さの層を有するボールを提供するために、本実施例に変更を加えることができる。更に、中心カプセル即ち中心領域内のエレメントを様々な相対的な大きさ及び形状を持つものとして例示した。これらの大きさ及び形状は単なる例示であって、設計者が選択するエレメントの大きさを示すものではない。当業者であれば、設計者が選択したエレメントを含むボールを提供するために本実施例を変更できる。
【0043】
図3は、複数のスイング特性についての値を表示領域322に表示したボール300を示す。これらの値及びこれらのスイング特性は単なる例示であって、図示した値以外の他の複数の特性を評価してもよい。
【0044】
本開示に示す実施例は、表示層の表示領域が重力方向と逆方向にほぼ真上を向くように示してある。特に真上方向への表示が必要というわけではない。図3に示すように、ボールを見ているゴルファーには、ボールの表面積のほぼ半分が見える。データは、真上にではなく、ボールの僅かに下方に表示されてもよい。表示領域がそのように配向されるのが望ましい場合には、当業者は、特に真上方向にでなくほぼ上方を向いた表示領域を提供するために、重りと表示方向の相対的な位置を容易に変更できる。
【0045】
図3に示す実施例は、複数のスイング特性についての複数の値を同時に表示することを示す。ボールは、複数の特性の複数の値を同時に表示するのでなく、一つの特性だけを表示してもよい。他の実施例では、ボールは、様々な特性の値についての連続したスクロールを水平方向又は垂直方向に表示してもよい。他の実施例では、これらの値を次々にフラッシュ表示してもよい。当業者は、設計者が適当であると考える方法でデータを表示するように、光源の表示を容易に変更できる。他の態様では、表示方法は、使用者によって変更されてもよい。
【0046】
幾つかの実施例では、ゴルファーがボールの多くの特徴をカスタマイズできる。ゴルファーは、選択メニューに達するまで多くの操作を行った後、複数の選択肢から選択することができる。例えば、ゴルファーは、光の色、フォントの種類、フォントサイズ、データの表示方法を(上述したように)選択できる。使用者は、更に、ボールが自動停止するまでの残り時間や特定のスイング特性に関するデータの表示時間等の様々な時間特性を設定することができる。ゴルファーは、更に、ボールが単一回のスイングの特性だけを表示するのか又はこれまでの多くのスイングから得られた平均値を示すのかを設定できる。
【0047】
更に、使用者がメモリーをリセットできるのが望ましい。ゴルファーが特定の長さのプレーについてのデータを保存し、その後データを消去し、別のデータセットの計算を開始したいことがあろう。ゴルファーは、例えば、新たなクラブセットを購入したとき、異なるコースを訪れたとき、又は単に得られた結果が気に入らない場合、こうした更新をしようとする。ゴルファーは、カスタマイズ・プログラムの一部を使ってこれらの特徴をリセットできてもよいし、独立した一連の操作(通常では起こらないバウンド、振盪、及び回転からなるパターン等)をボールに行うことによって、これらの特徴をリセットできてもよい。
【0048】
計算機に組み込まれたマイクロプロセッサ又はナノコンピュータが様々なスイング特性を計算する。計算機によって値を計算できるスイング特性の例には、ボール速度、スピン量、打ち上げ角度、飛翔時間、初速、キャリー飛距離、転がり距離、及びストローク数が含まれる。これらの値をショット毎に個々に計算してもよく、更に、複数のストロークの平均値や和を計算してもよい。これらのスイング特性は一例であり、他の特性についての他の値を計算し、特に列挙した値に加えて表示してもよい。
【0049】
ゴルファーは、開示したボールと同様の複数のボールを同じゴルフラウンドで使用することを選択してもよい。幾つかの場合、ゴルファーは、一般的に、特定のクラブでどれ程遠くまで飛ばすのかを知りたいものである。このような場合、ゴルファーは、各ボールに様々なクラブの名称の印を付けることができ、別のクラブを使用することを選択したときにコース上でボールを交換してもよい。開示のボールをこのように使用することによって、ゴルファーは、各クラブでの平均の飛距離を決定でき、一つ又は複数のクラブの結果が他のクラブで得られたデータと整合していない場合、特定のクラブについて追加の練習が必要であるかどうかを決定できる。
【0050】
本発明の様々な実施例を説明したが、以上の説明は例示であって限定ではなく、本発明の範疇で多くの実施例が可能であるということは当業者には明らかであろう。従って、本発明は添付の特許請求の範囲及びその等価物による以外は制限されない。更に、添付の特許請求の範囲の範囲内で様々な変形及び変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
100 ボール
102 計算機
104 中心
106 光源
108 重り
110 表示領域
112 流体密シェル
114 嚢(ブラダー)
116 流体
118 中間層
120 表示層
122 視認領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのスイング特性を表示することができるゴルフボールにおいて、
少なくとも一つのスイング特性についての値を計算できる計算機と、
前記計算機を取り囲んでいるクッション層と、
前記クッション層を取り囲んでいる少なくとも一つの中間層と、
計算値を表示できるように光源に対して位置決めされた表示器と、
前記表示器へ光を送り、これによって前記表示器上に前記計算値を表示する光源と、
を含む、ゴルフボール。
【請求項2】
前記計算機及び前記光源は互いに取り付けられている、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記計算機及び前記光源は前記ゴルフボールの回転から独立して回転することができる、請求項2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記光源に取り付けられた重りをさらに含む、請求項2に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記重りは、前記光源を概ね上方へ向けることができる、請求項4に記載のゴルフボール。
【請求項6】
前記クッション層は液体を含む、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項7】
前記クッション層は、該クッション層内に前記計算機を浮遊させるのに適当な粘度を有する液体を含む、請求項6に記載のゴルフボール。
【請求項8】
前記クッション層は、液体で充填され、第1当接面を持つ第1半球状嚢と、液体で充填され、第2当接面を持つ第2半球状嚢とを含み、第1当接面と第2当接面は互いに当接して配置されていることによって、第1嚢及び第2嚢は、前記計算機及び前記光源を取り囲んでいる、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項9】
前記計算機、前記光源、及び重りは、球形のカプセル内に配置されている、請求項8に記載のゴルフボール。
【請求項10】
ゴルフボールの一層上にデータを表示する表示デバイスを組み込んでいるゴルフボールにおいて、
前記ゴルフボールの中心領域に位置決めされ、3次元の回転自由度を有する光源と、
前記光源に取り付けられ、前記光源を概ね上方へ向ける重りと、
前記光源が任意の回転位置に位置決めされたとき、前記光源から放出された光を表示するように構成された連続した表示層と、
を含む、ゴルフボール。
【請求項11】
前記連続した表示層は実質的に不透明である、請求項10に記載のゴルフボール。
【請求項12】
前記光源に電気的に接続され、スイング特性についての値を計算できる計算機をさらに含む、請求項10に記載のゴルフボール。
【請求項13】
前記光源を取り囲んでいる少なくとも一つの実質的に透明な追加の層をさらに含む、請求項10に記載のゴルフボール。
【請求項14】
ボールの一層上に少なくとも一つのスイング特性についての値を表示するデバイスにおいて、
互いに取り付けられた計算機、光源及び重りであって、前記ボールの中心領域にある球体内に包含された、計算機、光源、及び重りと、
前記包含された球体を取り囲み、前記包含された球体が前記ボールの動きから独立して動くことができるように設計されたクッション層と、
前記クッション層を取り囲んでいる少なくとも一つの中間層と、
前記中間層を包含する表示層と、
を含み、
前記計算機は少なくとも一つのスイング特性を計算することができ、
前記光源が少なくとも一つのスイング特性についての値を前記表示層の任意の場所に表示できるように、前記光源及び前記表示層が構成されている、デバイス。
【請求項15】
前記表示層は実質的に不透明である、請求項14に記載のボール。
【請求項16】
前記計算機は、マイクロプロセッサ及び電池を含む、請求項14に記載のボール。
【請求項17】
前記光源は、LED及びレーザーから選択される、請求項14に記載のボール。
【請求項18】
前記重りが、概ね上方の方向にある表示層上に光を投射して表示するように前記光源を配向できるように、前記重り、計算機および光源が互いに取り付けられている、請求項14に記載のボール。
【請求項19】
前記表示層は白色である、請求項14に記載のボール。
【請求項20】
前記表示層を取り囲んでいるカバー層を含む、請求項14に記載のボール。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−223568(P2012−223568A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−88891(P2012−88891)
【出願日】平成24年4月10日(2012.4.10)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)