説明

ゴルフボール用材料、ゴルフボール及びゴルフボール用材料の製造方法

【課題】本発明は、UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物を過酸化物の存在下、非アイオノマー熱可塑性樹脂、アイオノマー樹脂を加熱溶融混合することにより得られるアイオノマー樹脂組成物、又は、前記アイオノマー樹脂の代わりに、そのアイオノマーのベースである酸含有ポリマーを用い、同様に加熱溶融混合した酸含有ポリマー組成物を金属イオン種で酸を中和反応して得られるアイオノマー樹脂組成物からなるゴルフボール用材料、その製造法、該ゴルフボール用材料の成形物を構成要素として具備するゴルフボールを提供する。
【効果】本発明のゴルフボール用材料は、熱安定性、流動性、成形性が良好で、しかも反発性を損なうことなく、耐摩耗性、耐擦過傷性、耐久性、柔軟性等に優れる高性能のゴルフボールを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱安定性、流動性、成形性が良好で、反発性、耐久性、柔軟性及び耐擦過傷性等に優れる高性能のゴルフボールを得ることができるゴルフボール用材料、その製造方法及び該ゴルフボール用材料の成形物を構成要素として具備するゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年より、ゴルフボール用材料には、アイオノマー樹脂が広く用いられている。アイオノマー樹脂は、エチレン等のオレフィンと、アクリル酸、メタクリル酸あるいはマレイン酸等の不飽和カルボン酸からなるイオン性共重合体の酸性基を、部分的にナトリウム、リチウム、亜鉛、マグネシウム等の金属イオンで中和したもので、耐久性、反発性、耐擦過傷性などの面で優れた性質を有している。
【0003】
現在、アイオノマー樹脂はゴルフボールカバー材のベース樹脂の主流であるが、常にユーザーからは適度な柔軟性且つ高反発性を有し飛行特性に優れたゴルフボールが求められており、様々な改良が行われている。
【0004】
例えば、アイオノマー材料の反発性、流動性を改善する提案として、アイオノマー樹脂に多量の金属石鹸(高級脂肪酸金属塩)を添加した材料(特許文献1:米国特許第5312857号明細書,特許文献2:米国特許第5306760号明細書,特許文献3:米国特許第6100321号明細書、特許文献4:米国特許第6653382号明細書、特許文献5:米国特許第6777472号明細書)等を挙げることができる。
【0005】
しかしながら、これら提案は、アイオノマー材料中の金属石鹸が射出成形時に分解・気化して多量の脂肪酸ガスを発生させるため、成形不良を起こし易く、発生したガスが成形物の表面に付着して塗装性を著しく低下させる。また、これらアイオノマー材料をゴルフボールのカバー材に使用した場合、低分子量体の金属石鹸(高級脂肪酸金属塩)を多量に配合するため、ゴルフボールの耐久性を著しく損なわせる場合があり、ゴルフボールの実用レベルからは程遠いものである。
【0006】
また、柔軟な熱可塑性樹脂とアイオノマーとの単なる溶融混合物の材料が開発されている(特許文献6:特開2003−180878号公報)。しかし、この製法において見かけ上は均一であっても、射出成形によってゴルフボールのある層を形成させた際、射出成形時、金型中の高せん断力により、その溶融混合物の形成層が層剥離を起こすことが懸念された。
【0007】
最近、ゴルフボール用アイオノマー材料で、第一成分として、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、第二成分として、上記と異種の熱可塑性樹脂を用い、両者を混練後、その樹脂組成物中に分散された第一成分の酸を、第三成分として金属イオン種を配合して中和し、IPN(相互貫入高分子網目 Interpenetrating Polymer Network)構造を有する、均一相で高反発弾性の材料が開発されている(特許文献7:米国特許出願公開第2004/0044136号明細書、特許文献8:米国特許出願公開第2004/0242802号明細書、特許文献9:米国特許第7026399号明細書、特許文献10:米国特許第7175545号明細書等)。しかし、これらの製法においても、第二成分として使用される異種の熱可塑性樹脂が生成するアイオノマー樹脂マトリックスと完全に非相溶性または貧相溶性を示す場合、これらの材料を使用し、射出成形によってゴルフボールのある層を形成させた際、金型中における高せん断力により、層中に層剥離現象が観察されることがあり、ゴルフボールの物性低下が懸念された。特に、耐擦過傷性が著しく低下する傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5312857号明細書
【特許文献2】米国特許第5306760号明細書
【特許文献3】米国特許第6100321号明細書
【特許文献4】米国特許第6653382号明細書
【特許文献5】米国特許第6777472号明細書
【特許文献6】特開2003−180878号公報
【特許文献7】米国特許出願公開第2004/0044136号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/0242802号明細書
【特許文献9】米国特許第7026399号明細書
【特許文献10】米国特許第7175545号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、熱安定性、流動性、成形性が良好なゴルフボール用材料を提供すると共に、当該ゴルフボール用材料を射出成形により成形してゴルフボールの構成要素として使用した場合、ゴルフボール層中の層剥離を抑制することができ、反発性を損なうことなく、柔軟性、耐久性、耐擦過傷性等に優れる高性能のゴルフボールを得ることができるゴルフボール用材料、その製造方法、及び該ゴルフボール用材料の成形物を構成要素として具備するゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、太陽光、X線、紫外線(UV)、電子線(EB)、プラズマアークなどの照射によって硬化できる材料、即ち、UV/EB硬化型材料を、太陽光、X線、紫外線、電子ビーム、プラズマアークなどによる照射を行わず、過酸化物の存在下、本発明に使用される熱可塑性樹脂に配合し、アイオノマー樹脂と加熱溶融混合することによって得られるアイオノマー樹脂組成物を射出成形した際、層剥離を抑制できるコルフボール用材料が得られることを知見した。また、上記のUV/EB硬化型材料を、過酸化物の存在下、熱可塑性樹脂及びアイオノマー樹脂のベースである酸含有ポリマーに配合して得られる酸含有ポリマー組成物に、金属イオン種を加え酸の中和反応で得られるアイオノマー樹脂組成物は、射出成形時、層剥離が抑制されたゴルフボール用材料であることを知見した。
【0011】
更に、過酸化物の存在なしで、UV/EB硬化型材料を一成分として配合したアイオノマー樹脂組成物の場合、5日以上の長期エージングを行うことにより、UV/EB硬化型材料の自動的な酸化架橋により、そのUV/EB硬化型材料の効果が現れることを知見した。
【0012】
そして、得られた上記アイオノマー樹脂組成物は、意外にも熱安定性、流動性、成形性が良好であり、これらのアイオノマー樹脂組成物をゴルフボール成分に用いた場合、反発性を損なうことなく、柔軟性、耐久性、耐擦過傷性等に優れる高性能のゴルフボールを形成するのに最適な材料であることを知見した。
【0013】
また、本発明者らは更に検討を行ったところ、上記ゴルフボール用材料の成形物を構成要素(コアとこのコアを被覆するカバーとからなるツーピースソリッドゴルフボール、または、1層以上のコアと、該コアを被覆する1層以上の中間層と、該中間層を被覆する1層以上のカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールにおけるカバー材又は中間層材、以下、同じ。)として具備したゴルフボールは、反発性を損なうことなく、優れた柔軟性、耐久性、耐擦過傷性を有することを知見し、本発明をなすに至った。
【0014】
即ち、本発明は、下記のゴルフボール用材料、その製造方法、及び該ゴルフボール用材料の成形物を構成要素として具備するゴルフボールを提供する。
【0015】
〔I〕ゴルフボール用材料
下記(i)〜(iii)
(i)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物、
(ii)非アイオノマー熱可塑性樹脂、及び
(iii)アイオノマー樹脂
から構成されるアイオノマー樹脂組成物を含有するゴルフボール用材料。
【0016】
〔II〕ゴルフボール用材料の製造方法
〔1〕(i)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物と、(ii)非アイオノマー熱可塑性樹脂とを、予め溶融混練し、その後、(iii)アイオノマー樹脂、またはアイオノマー樹脂とそのベースの酸含有ポリマーとを配合し、溶融混練してアイオノマー樹脂組成物を得ることとするゴルフボール用材料の製造方法。
〔2〕上記(i)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物と、(ii)非アイオノマー熱可塑性樹脂、及び(iii)アイオノマー樹脂のベースの酸含有ポリマーを溶融混練し、その後、酸素含有無機金属化合物の金属イオン種を配合し、溶融混練しながら中和反応により得られるアイオノマー樹脂組成物を得ることとするゴルフボール用材料の製造方法。
〔3〕(i)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物、(ii)非アイオノマー熱可塑性樹脂、及び(iv)過酸化物を配合し、予め過酸化物が分解しない温度で溶融混練し、その後、(iii)アイオノマー樹脂、またはアイオノマー樹脂とそのベースの酸含有ポリマーを配合し、上記過酸化物が分解する温度以上で溶融混練することにより、相互貫入網目構造(IPN)を有するアイオノマー樹脂組成物を得ることとするゴルフボール用材料の製造方法。
〔4〕(i)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物、(ii)非アイオノマー熱可塑性樹脂、及び(iii)アイオノマー樹脂のベースの酸含有ポリマー、及び(iv)過酸化物を配合し、予め過酸化物が分解しない温度で溶融混練し、その後、酸素含有無機金属化合物の金属イオン種を配合して上記過酸化物が分解する温度以上で溶融混練することにより、上記(i)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物のグラフト化反応を起こさせると共に上記(iii)アイオノマー樹脂のベースである酸含有ポリマー中の酸を中和させて相互貫入網目構造を有するアイオノマー樹脂組成物を得ることとするゴルフボール用材料の製造方法。
【0017】
〔III〕ゴルフボール
上記ゴルフボール用材料の成形物を構成要素として用いることとするゴルフボール、特には、上記ゴルフボール用材料を、コアと該コアを被覆するカバーとからなるツーピースソリッドゴルフボール、又は、1層以上のコアと該コアを被覆する1層以上の中間層と該中間層を被覆する1層以上のカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールにおけるカバー材又は中間層材として用いることとするゴルフボール。
【0018】
本発明は、下記(A)〜(C)のうちいずれか1つのアイオノマー樹脂組成物が使用される。
アイオノマー樹脂組成物(A)
UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物を、太陽光、X線、紫外線、電子ビーム、プラズマアーク等による照射を行わず、過酸化物の存在下、非アイオノマー熱可塑性樹脂及びアイオノマー樹脂、またはそのアイオノマー樹脂とそのベースである酸含有ポリマーへ加熱溶融混練することにより得られるアイオノマー樹脂組成物(A)
アイオノマー樹脂組成物(B)
前記アイオノマーの代わりにそのアイオノマーのベースである酸含有ポリマーを用い、過酸化物の分解温度以下で加熱溶融混練した酸含有ポリマー組成物を、酸素含有無機化合物の金属イオン種でその酸を中和反応し得られるアイオノマー樹脂組成物(B)
アイオノマー樹脂組成物(C)
前記の(A)または(B)の配合組成で過酸化物を配合せず、エージングにより得られるアイオノマー樹脂組成物(C)
【発明の効果】
【0019】
上記のアイオノマー樹脂組成物(A)〜(C)は、射出成形時、層剥離が抑制され、熱安定性、流動性、成形性が良好であり、それらを使用したゴルフボールは反発性を損なうことなく、柔軟性、耐久性、耐擦過傷性等に優れる高性能を示し、本発明はこれらのゴルフボール用材料の製造方法、該ゴルフボール用材料の成形物を構成要素として具備するゴルフボールを提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボール用材料は、(i)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物と、(ii)非アイオノマー熱可塑性樹脂と、(iii)アイオノマー樹脂、アイオノマー樹脂及び/又はアイオノマー樹脂のベースである酸含有ポリマー、或いは、上記アイオノマー樹脂の代替としてのアイオノマー樹脂のベースである酸含有ポリマーと酸素含有無機金属化合物と、(iv)過酸化物とから構成されるアイオノマー樹脂組成物を含有するゴルフボール用材料である。または、本発明のゴルフボール用材料は、前記の構成成分(i)、(ii)及び(iii)から構成されるアイオノマー樹脂組成物を含有するゴルフボール用材料である。そして、このゴルフボール用材料の製造方法として、上記(i)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物に、上記(ii)非アイオノマー熱可塑性樹脂と上記(iv)過酸化物とを、過酸化物が分解しない温度で溶融混練し、次に上記(iii)アイオノマー樹脂を配合することにより、本発明のアイオノマー樹脂組成物(A)を必須成分として含むゴルフボール用材料を得るものである。或いは、前記(i)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物、上記(ii)非アイオノマー熱可塑性樹脂、上記(iii)アイオノマーの代替として、そのベースの酸含有ポリマー及び(iv)過酸化物を配合し、過酸化物の分解温度以下で溶融混合した後、酸素含有無機金属化合物の金属イオン種を配合し、上記過酸化物が分解する温度以上で加熱溶融混練により、本発明のアイオノマー樹脂組成物(B)を必須成分として含むゴルフボール用材料を得るものである。
【0021】
更に前記(A)または(B)の配合処方において、過酸化物を配合しない処方で得られる樹脂配合物をエージング処理により、本発明のアイオノマー樹脂組成物(C)のゴルフボール用材料を得るものである。
【0022】
本発明は、一般に非アイオノマー熱可塑性樹脂に対し貧相溶性のアイオノマー樹脂系に関するものであり、非アイオノマー熱可塑性樹脂を配合したアイオノマー樹脂組成物において、射出成形時、層剥離を抑制したアイオノマー樹脂組成物が得られるものである。
【0023】
また、本発明は、非アイオノマー熱可塑性樹脂を配合したアイオノマー樹脂組成物において、射出成形時に層剥離を抑制し、熱安定性、流動性、成形性が良好な材料で、それをゴルフボールのある部分に用いた際、反発性を損なうことなく、柔軟性、耐久性、耐擦過傷性等に優れたボール物性を示すゴルフボール用材料を製造することを目的として、アイオノマー樹脂と熱可塑性樹脂との間の優れた一種の相間架橋剤としてのUV/EB硬化型材料の役割を見出したものである。
【0024】
通常、UV/EB硬化型材料は、X線、紫外線(UV)、電子ビーム(EB)、プラズマアーク等の照射下、ゴルフボールの最表皮層のトップコート用に使用されている。しかし、本発明では、その類の用途ではなく、過酸化物の存在下、非アイオノマー熱可塑性樹脂とアイオノマー樹脂との溶融混練において、非アイオノマー熱可塑性樹脂と類似の骨格構造を有すUV/EB硬化型材料を併用することにより、非アイオノマー熱可塑性樹脂とアイオノマー樹脂との相間架橋を行うことができるようにしたものである。即ち、相互貫入網目構造を形成させることを創案し、そのアイオノマー樹脂組成物(A)を射出成形した際、層剥離を抑制できるコルフボール用材料が得られることを知見した。
【0025】
また、上記のUV/EB硬化型材料を、過酸化物の存在下、非アイオノマー熱可塑性樹脂と、アイオノマー樹脂のベースである酸含有ポリマー、即ち、オレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体、及び、不飽和カルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸及び/又は不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなる酸含有ポリマーに配合して得られる酸含有ポリマー組成物に、酸素含有無機金属化合物の金属イオン種を溶融混合することにより、UV/EB硬化型材料のグラフト化反応と共にその金属イオン種による酸の中和反応によって形成される相互貫入網目構造(IPN)構造を有するアイオノマー樹脂組成物(B)は、射出成形時、層剥離が抑制されたゴルフボール用材料であることを知見した。
【0026】
更に、前記の(A)または(B)の配合処方で過酸化物を配合しないで得られる樹脂配合物をエージング処理することにより得られるアイオノマー樹脂組成物(C)は、射出成形時、層剥離が抑制されたゴルフボール用材料であることも知見した。
【0027】
本発明に使用される非アイオノマー熱可塑性樹脂の骨格構造に類似の骨格構造を有するUV/EB硬化型材料が、非アイオノマー熱可塑性樹脂との相溶性がより向上するため、その結果として、より均一なIPN構造を有するアイオノマー樹脂組成物のゴルフボール用材料が得られることを知見した。
【0028】
本発明では、アイオノマー樹脂組成物中にUV/EB硬化型材料を存在させることにより、アイオノマー樹脂層に対し、非相溶性または貧相溶性の非アイオノマー熱可塑性樹脂層を均一に共存させることができ、最終的には、射出成形時、層剥離が抑制され、熱安定性、流動性、成形性が良好で、しかもそれをゴルフボールに使用した場合、反発性を損なうことなく、柔軟性、耐久性、耐擦過傷性等の優れた物性を示すゴルフボール用材料を提供することが可能である。
【0029】
本発明では、非アイオノマー熱可塑性樹脂配合のアイオノマー樹脂組成物の調製過程において、UV/EB硬化型材料を使用しないと、多くの場合、射出成形時に層剥離を起こし易くなる。また、UV/EB硬化型材料を過剰に使用すると、ゲル状物が生成し、アイオノマー樹脂組成物が不均一となり、最終的にゴルフボール用材料の目標とする物性が得られない結果となる。
【0030】
本発明では、非アイオノマー熱可塑性樹脂配合のアイオノマー樹脂組成物(A)の調整過程において、UV/EB硬化型材料、過酸化物、非アイオノマー熱可塑性樹脂及びアイオノマー樹脂を溶融混練するものである。この場合、UV/EB硬化型材料、過酸化物及び非アイオノマー熱可塑性樹脂を予め過酸化物が分解しない程度の温度の範囲で溶融混練し、その後、アイオノマー樹脂を配合し、過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混合する方法が好適に採用される。
【0031】
また、本発明では、非アイオノマー熱可塑性樹脂配合のアイオノマー樹脂組成物(B)の調整過程において、UV/EB硬化型材料、過酸化物、非アイオノマー熱可塑性樹脂及びアイオノマー樹脂のベースである酸含有ポリマーを予め過酸化物が分解しない温度の範囲で溶融混練し、その後、酸素含有無機金属化合物の金属イオン種を配合し、過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混練することにより、UV/EB硬化型材料のグラフト化反応と共に金属イオン種による酸の中和反応によってIPN構造を有するアイオノマー樹脂組成物が得られるものである。
【0032】
この場合、UV/EB硬化型材料、過酸化物、非アイオノマー熱可塑性樹脂を予め過酸化物が分解しない温度の範囲で溶融混練し、その後、酸含有ポリマーを過酸化物が分解しない程度の温度の範囲で溶融混練し、更にその後、酸素含有無機金属化合物の金属イオン種を配合し、過酸化物の分解温度以上の温度で溶融混練する方法が好適に採用される。
【0033】
更に、本発明では、上記のアイオノマー樹脂組成物(A)及び(B)の調整過程で、過酸化物を使用しないで、得られる樹脂配合物を、エージング処理により、アイオノマー樹脂組成物(A)及び(B)と同様な樹脂物性を有するアイオノマー樹脂組成物(C)が得られるものである。
【0034】
上記のエージング条件としては、温度については、5〜80℃、好ましくは10〜70℃、より好ましくは20〜60℃である。また、時間については、5日以上、好ましくは7日以上、より好ましくは10日以上、上限として、100日間である。相対湿度は、10〜80%、好ましくは20〜70%、より好ましくは30〜55%である。
【0035】
本発明で使用されるUV/EB硬化型材料については、使用される非アイオノマー熱可塑性樹脂の骨格構造と類似の骨格構造を有するものを使用することが望ましい。これにより、UV/EB硬化型材料と非アイオノマー熱可塑性樹脂との相溶性がより向上し、より均一なIPN構造を有するアイオノマー樹脂組成物を得ることができる。
【0036】
本発明に用いられるUV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物には、これらに限定されるものではないが、次のようなものが例示される。
主鎖骨格の一部がポリエステル、ポリエーテル、ウレタン、アクリレート、ブタジエン、エポキシ、カーボネート及びロジン系の構造から選ばれ、更にエチレン系不飽和結合の官能基を1分子中に少なくとも2個以上有し、そのエチレン系不飽和結合の官能基が、アクリル基〔CH2=CHCO−〕、メタクリル基〔CH2=C(CH3)CO−〕、アリル基〔CH2=CHCH−〕、ビニル基〔CH2=CH−〕などの群から選択される1種類以上の重合性官能基を有する材料である。
【0037】
具体的には、ポリエステル系アクリレート〔EBECRYL 657(4官能基、約125,000mPa・sec/25℃、数平均分子量Mn約1,500)、EBECRYL 853(3官能基、約80mPa・sec/25℃、Mn約470)、EBECRYL 1830(6官能基、約50,000mPa・sec/25℃、Mn約1,500)いずれもダイセル・サイテック社製;Aronix M6250(2官能基、約500mPa・sec/25℃、数平均分子量Mn約1,000)東亜合成社製〕,ポリエーテル系アクリレート〔BLEMMER−ADE600(2官能基、約70mPa・sec/25℃、Mn約750)日油社製、UV−6640B(2官能基、約20,000mPa・sec/50℃、Mn約5,000)日本合成化学社製〕;ウレタン系アクリレート〔SHIKOH UV−7510B(3官能基、約2,000mPa・sec/50℃、Mn約3,500)、SHIKOH UV−7000B(3官能基、約25,000mPa・sec/50℃、Mn約3,500)いずれも日本合成化学社製、Ebecryl 270、2官能基、約3,000mPa・sec/50℃、Mn約1,500)CYTEC社製〕エポキシ(ビスフェノールA)系アクリレート〔V#700(2官能基、約1,000Pa・sec/25℃、Mn約500)、V#540(2官能基、約15,000mPa・sec/50℃、Mn約540)いずれも大阪有機化学工業社製〕;カーボネート系アクリレート〔UV−3210EA(2官能基、約3,000mPa・sec/25℃、Mn約9,000)、UV−3310B(2官能基、約55,000mPa・sec/50℃、Mn約5,000)いずれも日本合成化学社製〕;ブタジエン系アクリレート〔BAC−45(2官能基、約4500mPa・sec/25℃、Mn約3,000)大阪有機化学工業社製〕;ロジン系アクリレート〔BEAMSET 102(3官能基、約35,000mPa・sec/40℃、Mn約5,000)荒川化学工業社製、BANBEAM UV−22A(3官能基、約530,000mPa・sec/25℃、Mn約5,000)、BANBEAM UV−22C(3官能基、約120,000mPa・sec/25℃、Mn約5,000)いずれもハリマ化成社製〕;ポリエーテル系アリール〔Polyglycol AA600(2官能基、約27,000mPa・sec/20℃、Mn約600)、Polyglycol AA1200(2官能基、約41,000mPa・sec/20℃、Mn約1,200)いずれもClariant社製〕;ポリエーテル系ビニル〔TEGVE(2官能基、約3.4mPa・sec/25℃、Mn202)日本カーバイド工業社製〕などが例示される。
【0038】
上記UV/EB硬化型材料の配合量は、非アイオノマー熱可塑性樹脂とアイオノマー樹脂またはそのベース樹脂である酸含有ポリマーの全配合量100質量部に対し、0.05〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10.0質量部である。上記UV/EB硬化型材料を過剰に配合すると、得られるアイオノマー樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が極端に低下し、ゲル状物が生成し、正常な成形品を得ることができなくなる場合がある。逆に、少なすぎると、得られるアイオノマー樹脂組成物が、射出成形時に層剥離現象を起こし、低擦過傷性や低反発性を来たし、最終製品のゴルフボール物性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0039】
上記UV/EB硬化型材料と併用される過酸化物については、その分解温度と用いられる非アイオノマー熱可塑性樹脂の混練可能な溶融温度を参考にして適宜選択することができる。具体的には、ジクミルパーオキサイド(1分半減期温度175℃)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(185℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(194℃)、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート(173℃)、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(175℃)、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド(177℃)、p−メンタンハイドロパーオキサイド(200℃)などから選ばれる1種又は2種以上を採用することができる。その過酸化物の配合量は、非アイオノマー熱可塑性樹脂とアイオノマー樹脂及び/又はそのベースである酸含有ポリマーとの全配合量100質量部に対して、0.05〜20質量部とすることが好ましく、より好ましくは0.08〜15質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部、最も好ましくは0.5〜5.0質量部である。
【0040】
本発明に用いられる非アイオノマー熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系エラストマー(ポリオレフィン、メタロセンポリオレフィン含む)、ポリスチレン系エラストマー、ポリアクリレート系ポリマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアセタールなどから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。具体的には、ポリエチレンメタクリレート、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンエチルアクリレート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)−ポリε−カプロラクトン(PCL)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12−MDI)−ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリスチレン−ブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルポリアミド、ポリオキシメチレンなどが挙げられる。その質量配合比(非アイオノマー熱可塑性樹脂/アイオノマー樹脂またはそのベースである酸含有ポリマー)が好ましくは1/99〜99/1であり、より好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは10/90〜90/10である。
【0041】
本発明に使用されるアイオノマー樹脂としては、オレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体、不飽和カルボン酸無水物含有ポリマー、不飽和ジカルボン酸含有ポリマー及び不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなる酸含量0.5〜30質量%、好ましくは1.0〜25質量%を有するポリマーを、周期率表第IA、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB、IVA、IVB、VA、VB、VIA、VIB、VIIB及びVIIIBから選択される1種又は2種以上の金属カチオンで、中和度5〜90mol%の範囲で中和されたアイオノマー樹脂を挙げることができ、その1種又は2種以上を使用することができる。
【0042】
具体的には、60モル%Zn(亜鉛中和度)−ポリエチレン−メタクリル酸共重合体、40モル%Mg(マグネシウム中和度)−ポリエチレン−メタクリル酸共重合体、40モル%Mg(マグネシウム中和度)−ポリエチレン−メタクリル酸−イソブチレンアクリレート三元共重合体等が挙げられる。
【0043】
本発明において、非アイオノマー熱可塑性樹脂がアミノ基,イミノ基等の塩基性官能基を有する場合、上記アイオノマー樹脂のベースである酸含有ポリマーとしては、ジカルボン酸またはその酸無水物が上記塩基性官能基と反応することを避けるため、ジカルボン酸及びその酸無水物以外の酸(例えばカルボン酸)を含有したポリマーを好適に使用することができる。例えば、酸含量0.5〜30質量%、好ましくは1.0〜25質量%のオレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体を挙げることができる。この場合、オレフィンが有する炭素数としては通常2以上、上限として、通常8以下、特に6以下である。このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンが好適に用いられる。一方、不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ジメチルアクリル酸、エタアクリル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。
【0044】
また、ジカルボン酸及びその酸無水物以外の酸含有ポリマーとして、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体を用いることもできる。不飽和カルボン酸エステルとしては、不飽和カルボン酸の低級アルキルエステルを好適に用いることができ、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等から選ばれる1種又は2種以上が使用される。特に、アクリル酸ブチル(アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル)が好適に用いられる。上記の配合量は、非アイオノマー熱可塑性樹脂/酸含有ポリマーの質量配合比で1/99〜99/1であり、好ましくは5/95〜95/5、より好ましくは10/90〜90/10である。
【0045】
本発明において、UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物、過酸化物、非アイオノマー熱可塑性樹脂及びアイオノマー樹脂のベースである酸含有ポリマーから調製される酸含有ポリマー組成物を金属イオン種で中和反応し、IPN構造を有するアイオノマー樹脂組成物を得ることができる。その際に使用される酸素含有無機金属化合物の金属イオン種としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び酸化亜鉛の群から選ばれる1種又は2種以上が使用される。また、これらの酸素含有無機金属化合物はナノ微粒子またはマスターバッチの形で使用されることが好ましい。これらの金属イオン種の配合量(中和度)については、用いられるアイオノマー樹脂のベースである酸含有ポリマーの酸含量によっても異なり、中和度が、好ましくは1〜95モル%、より好ましくは5〜90モル%、さらに好ましくは10〜80モル%である。その中和度を高くするとアイオノマー樹脂組成物の流動性が損なわれ(即ち、メルトインデックスが低くなり)、射出成形が困難になるおそれがある。また、射出成形時、せん断発熱が大きくなり、アイオノマー樹脂組成物中に配合されている非アイオノマー熱可塑性樹脂の熱分解と層剥離を起こし易くなる。逆に、その中和度が低すぎると、流動性はあるが、イオン架橋度が低下するために、アイオノマー樹脂組成物自体の機械的強度が低下し、その結果、ゴルフボール材料として使用した場合、該ゴルフボールの強度低下や低耐久性に繋がるおそれがある。
【0046】
上記の場合、酸素含有無機金属化合物の金属イオン種による酸含有ポリマー組成物の酸中和反応を、ニーディングディスクゾーンを有するスクリューセグメント配置のベント付二軸押出機を使用して行うことが望ましい。
【0047】
本発明のゴルフボール用材料には、更に任意の添加剤を用途に応じて適宜配合することができる。本発明のゴルフボール用材料をカバー材として用いる場合には、上述した必須成分に加え、例えば、顔料、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを加えることができる。これら添加剤を配合する場合、その配合量としては、上記必須成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、上限として、好ましくは10質量部以下、好ましくは4質量部以下である。
【0048】
本発明のゴルフボール用材料の比重としては、好ましくは0.9以上、より好ましくは0.92以上、さらに好ましくは0.94以上、上限として、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.05以下である。
【0049】
本発明のゴルフボール用材料を用いた成形物のショアD硬度は、好ましくは40以上、より好ましくは45以上、上限として、好ましくは75以下、より好ましくは70以下である。ショアD硬度が高すぎると、形成されたゴルフボールの打撃時のフィーリングが著しく低下する場合があり、逆に、ショアD硬度が低すぎると、ゴルフボールの反発性が低下する場合がある。
【0050】
本発明のアイオノマー樹脂組成物であるゴルフボール用材料は、コアと該コアを被覆するカバーとからなるツーピースソリッドゴルフボール、又は、1層以上のコアと該コアを被覆する1層以上の中間層と該中間層を被覆する1層以上のカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールにおけるカバー材又は中間層材として用いることができる。
【0051】
本発明のゴルフボール用材料及びその製造方法によれば、(1)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物を過酸化物の存在又は非存在の下、非アイオノマー熱可塑性樹脂、及びアイオノマー樹脂を加熱溶融混合することにより得られるアイオノマー樹脂組成物、(2)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物を過酸化物の存在又は非存在の下、非アイオノマー熱可塑性樹脂、及び前記アイオノマー樹脂の代わりに、そのアイオノマーのベースである酸含有ポリマーを用い、同様に加熱溶融混合した酸含有ポリマー組成物を金属イオン種で酸を中和反応して得られるIPN構造を有するアイオノマー樹脂組成物の上記(1)(2)を本質的成分として用いることにより、射出成形時、層剥離が抑制され、熱安定性、流動性、成形性が良好で、しかも反発性を損なうことなく、柔軟性、耐久性、耐擦過傷性等に優れる高性能のゴルフボールを得ることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。尚、本発明の実施例に使用した反応用二軸押出機は、スクリュー径32mmφ、全体L/D41、ニーディングディスクゾーンL/Dが全体L/Dの40%、真空ベントポート及び水圧注入装置付きである。また適宜、5リットル加圧ニーダーを使用し、その塊状混練物を二軸一軸押出機40mmφでペレット化し材料調製を行った。なお、下記表中の各材料の数字は質量部で表される。
【0053】
〔実施例1〕
表1に記載の配合組成で、予め、水酸化マグネシウムマスターバッチ“MgMB”を除いたウレタン骨格のUV/EB硬化型材料“UV/EB−4”(液体フィーダーで注入)を含む各配合成分を二軸押出機で過酸化物“PO−3”が分解しない溶融温度(170℃)で混練し、酸含有ポリマー組成物を得た。次いで、その酸含有ポリマー組成物に表1に示した“MgMB”の所定量を配合し、210℃設定の反応用二軸押出機で、含まれる酸含有ベース樹脂に対し中和度50mol%の中和反応と“PO−3”の分解を行い、均一なアイオノマー樹脂組成物を得た。得られたアイオノマー樹脂組成物のMFR及び硬度を表1に示した。適度な低硬度と射出成形可能なMFRを示していた。そのアイオノマー樹脂組成物をツーピースゴルフボールのカバー材に使用し、コアにBR架橋体(外径38.9mmφ、重量36.0g、圧縮歪3.35mm)を用い、射出成形機で射出成形を行い、ツーピースゴルフボール(直径42.7mmφ、重量45.5g)を作製した。これらのゴルフボール評価を行い、その結果を表1に記載した。射出成形後のゴルフボール表面研磨(トリミング)でササクレなし(表面スムース)、良好な耐摩耗性、耐擦過傷性、ボール耐久性、初速度とC.O.Rを有したゴルフボールであった。
【0054】
尚、水酸化マグネシウムマスターバッチは特願2005−227691号に記載した方法に準じ、調整した。即ち、5リットル加圧ニーダー(ナニワ製造機械社製、設定温度100℃)を使用し、マスターバッチ用ベースポリマーにNucrel N0200H(エチレン−メタクリル酸−アクリル酸イソブチル三元共重合体酸、DuPont社製)と水酸化マグネシウムMg(OH)2(平均粒径0.8μm、協和化学社製)の配合比N0200H/Mg(OH)2が50/50(質量比)になるように2.0kg仕込み、ローター回転数35rpm、混練温度が120℃〜130℃の範囲になるようにコントロールしながら、0.49MPaの加圧下、20分間混練した。その混練物を二軸一軸押出機40mmφ(ナニワ製造機械社製、温度設定180℃)でストランド化後、ペレット化した。得られたMg(OH)2含有量50質量%のMg(OH)2マスターバッチのMFRは2.3g/10min(190℃、2160g荷重)であった。
【0055】
〔実施例2〕
実施例1の配合組成中、過酸化物“PO−3”を除いた表1の配合組成で、ウレタン骨格のUV/EB硬化型材料“UV/EB−4”(液体フィーダーで注入)を含む各配合成分を二軸押出機により、溶融温度170℃で混練し、酸含有ポリマー組成物を得た。次いで、その酸含有ポリマー組成物に表1に示した“MgMB”の所定量を配合し、210℃設定の反応用二軸押出機で、含まれる酸含有ベース樹脂に対し中和度50mol%の中和反応を行い、均一なアイオノマー樹脂組成物を得た。180℃設定のホットプレス機で、そのアイオノマー樹脂組成物のシート(厚み2mm×縦100mm×横100mm)を作製した。また、得られたアイオノマー樹脂組成物を、実施例1の操作を繰り返し、射出成形機で射出成形を行い、ツーピースゴルフボールを作製した。作製したシートとゴルフボールを23±5℃、25日間、相対湿度45〜55%のエージング条件で静置した後、諸物性を評価し表に示した。実施例1とほぼ同等の物性を示していた。
【0056】
〔実施例3〕
表1に記載の配合組成で、ナノ酸化亜鉛を除いたブタジエン骨格のUV/EB硬化型材料“UV/EB−3”を含む各配合成分を5リットル加圧ニーダーで過酸化物“PO−2”が分解しない温度(110℃)で混練後、そのブタジエン配合酸含有ポリマー組成物に表1に示した所定量のナノ酸化亜鉛を配合し、温度170℃で、含まれる酸含有ベース樹脂に対し中和度35mol%の中和反応と“PO−2”の分解を行い、均一なアイオノマー樹脂組成物を得た。得られたアイオノマー樹脂組成物のMFR及び硬度を表1に示した。適度な低硬度と射出成形可能なMFRを示していた。そのアイオノマー樹脂組成物を使用し、実施例1のゴルフボール射出成形の操作を繰り返し、ツーピースゴルフボールを作製した。射出成形後のゴルフボール表面研磨(トリミング)でササクレなし(表面スムース)、良好な耐摩耗性、耐擦過傷性、ボール耐久性、初速度とC.O.Rを有したゴルフボールであった。
【0057】
〔実施例4〕
表1に記載の配合組成で、ナノ酸化亜鉛を除いた、ポリエーテル骨格のUV/EB硬化型材料“UV/EB−2”(液体フィーダー使用)を含む各配合成分を二軸押出機で過酸化物“PO−1”が分解しない溶融温度(170℃)で混練し、酸含有ポリマー組成物を得た。次いで、その酸含有ポリマー組成物に表1に示したナノ酸化亜鉛の所定量を配合し、210℃設定の反応用二軸押出機で、含まれる酸含有ベース樹脂に対し中和度60mol%の中和反応と“PO−1”の分解を行い、均一なアイオノマー樹脂組成物を得た。得られたアイオノマー樹脂組成物のMFR及び硬度を表1に示した。適度な高硬度と射出成形可能なMFRを示していた。そのアイオノマー樹脂組成物を使用し、実施例1のゴルフボール射出成形の操作を繰り返し、ツーピースゴルフボールを作製した。射出成形後のゴルフボール表面研磨(トリミング)でササクレなし(表面スムース)、良好な耐摩耗性、耐擦過傷性、ボール耐久性、高い初速度とC.O.Rを有したゴルフボールであった。
【0058】
〔実施例5〕
表1に記載の配合組成で、ナノ酸化亜鉛を除いた、ポリエステル骨格のUV/EB硬化型材料“UV/EB−1”(液体フィーダー使用)を含む各配合成分を二軸押出機で過酸化物“PO−3”が分解しない溶融温度(180℃)で混練し、酸含有ポリマー組成物を得た。次いで、その酸含有ポリマー組成物に表1に示したナノ酸化亜鉛の所定量を配合し、210℃設定の反応用二軸押出機で、含まれる酸含有ベース樹脂に対し中和度45mol%の中和反応と“PO−1”の分解を行い、均一なアイオノマー樹脂組成物を得た。得られたアイオノマー樹脂組成物のMFR及び硬度を表に示した。適度な中硬度と射出成形可能なMFRを示していた。そのアイオノマー樹脂組成物を使用し、実施例1のゴルフボール射出成形の操作を繰り返し、ツーピースゴルフボールを作製した。射出成形後のゴルフボール表面研磨(トリミング)でササクレなし(表面スムース)、良好な耐摩耗性、耐擦過傷性、ボール耐久性、高い初速度とC.O.Rを有したゴルフボールであった。
【0059】
〔比較例1〕
実施例1の比較例として、ウレタン骨格のUV/EB硬化型材料“UV/EB−4”を除き、表1に示した配合組成で、実施例1の操作を繰り返し、アイオノマー樹脂組成物を得、ツーピースゴルフボールを作製した。射出成形後のゴルフボール表面研磨(トリミング)でササクレなし(表面スムース)で耐摩耗性も良好であったが、ウレタン骨格のUV/EB硬化型材料“UV/EB−4”を配合した実施例1に比較すると、耐擦過傷性、ボール耐久性、初速度及びC.O.Rとも劣る傾向であり、UV/EB硬化型材料配合の重要性を示していた。
【0060】
〔比較例2〕
実施例3の比較例として、ブタジエン骨格のUV/EB硬化型材料“UV/EB−3”を除き、表1に示した配合量で、反応用二軸押出機(設定温度210℃)を使用し、予めベース樹脂(ベース樹脂−2)をナノ酸化亜鉛で中和し、中和度35mol%の亜鉛アイオノマーを調製した。次に、“PO−2”の分解温度(170℃)に設定した5リットル加圧ニーダーを使用し、表1に示した配合量で、その亜鉛アイオノマー、BR及び過酸化物“PO−2”を溶融混練し、アイオノマー樹脂組成物を得た。そのアイオノマー樹脂組成物を使用し、実施例1のゴルフボール射出成形の操作を繰り返し、ツーピースゴルフボールを作製した。射出成形後のゴルフボール表面研磨(トリミング)でササクレがあり(表面粗い)、実施例3と比較して、ボール耐久性はかなり低下、初速度及びC.O.Rとも劣っていた。実施例3と比較すると、本比較例は、アイオノマーとBRのメルトブレンド系であり、実施例3の操作によるIPN構造を形成し難く、また、UV/EB硬化型材料を配合していないため、ゴルフボール物性は劣っていた。
【0061】
〔比較例3〕
実施例4の比較例として、ポリエーテル骨格のUV/EB硬化型材料“UV/EB−2”及び過酸化物“PO−1”を除き、表1に示した配合組成で、実施例4の操作を繰り返し、アイオノマー樹脂組成物を得、ツーピースゴルフボールを作製した。射出成形後のゴルフボール表面研磨(トリミング)でササクレなし(表面スムース)で耐摩耗性も良好であったが、ポリエーテル骨格のUV/EB硬化型材料“UV/EB−2”及び過酸化物“PO−1”を配合した実施例4と比較すると、耐擦過傷性、ボール耐久性、初速度及びC.O.Rとも劣る傾向であり、UV/EB硬化型材料及び過酸化物配合の重要性を示していた。
【0062】
【表1】

*実施例2:25日間エージング後
【0063】
上記表中の材料の詳細は下記のとおりである。
a.UV/EB−1
Aronix M6250(ポリエステル系アクリレート、2官能基、約500mPa・sec/25℃、数平均分子量約1,000)東亜合成社製
b.UB/EB−2
TEGVE(ポリエーテル系ビニル、2官能基、約3.4mPa・sec/25℃、数平均分子量約202)日本カーバイド工業社製
c.UV/EB−3
BAC−45(ブタジエン系アクリレート、2官能基、約4,500mPa・sec/25℃、数平均分子量約3,000)大阪有機化学工業社製
d.UV/EB−4
SHIKOH UV−7510B(ウレタン系アクリレート、3官能基、約2,000mPa・sec/50℃、数平均分子量約3,500)日本合成化学社製
【0064】
e.PO−1
ジ−t−ブチルパーオキサイド(1分半減期温度185℃)日油社製
f.PO−2
ジクミルパーオキサイド(1分半減期温度175℃)日油社製
g.PO−3
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(1分半減期温度194℃)日油社製
【0065】
h.TPEE
Hytrel 4047(ポリエステルポリエーテル、Shore D 40)DuPont社製
i.POM
AMILUS S731(ポリアセタール、MFR9.0g/10min、M.p.166℃)東レ社製
j.BR
無水マレイン酸変性BR01(ポリブタジエン、シス−1,4−結合含有量96%、ニッケル系重合触媒、JSR社製)
k.TPU
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸変性脂肪族系ポリウレタン(HMDI−PCL、DIC・Bayer社製)
【0066】
l.アイオノマー−1
S8527(ナトリウムアイオノマー、Shore D 56)DuPont社製
m.アイオノマー−2
S8940(ナトリウムアイオノマー、Shore D 63)DuPont社製
n.アイオノマー−3
S9945(亜鉛アイオノマー、Shore D 61)DuPont社製
o.ベース樹脂−1
Nucrel 960(メタクリル酸15質量%、MFR60g/10min)DuPont社製
p.ベース樹脂−2
Nucrel 2050H(メタクリル酸20質量%、MFR500g/10min)DuPont社製
q.ベース樹脂−3
Nucrel 599(メタクリル酸10質量%、MFR500g/10min)DuPont社製
r.ベース樹脂−4
AC5120H(アクリル酸15.6質量%、MFR>500g/10min)トーメン社製
s.ベース樹脂−5
AN4319(メタクリル酸8.0質量%、MFR50g/10min)DuPont社製
t.ベース樹脂−6
Escor 5200(アクリル酸15.0質量%、MFR36g/10min)ExxonMobil Chemical社製
【0067】
u.ナノ酸化亜鉛
酸化亜鉛NANOFINE−50(平均粒径20nm、粒度分布1〜100nm、粒径0.05μm以下の成分割合約60%)堺化学工業社製
v.MgMB
水酸マグネシウム/エチレン−メタクリル酸−アクリル酸イソブチル三元共重合体=50/50質量%
w.二酸化チタン
タイペークPF737、石原産業社製
x.青色顔料
Pigment Blue 29、東洋インキ社製
【0068】
試験項目の詳細については下記のとおりである。
【0069】
MFR(g/10min)
JIS−K7210に準拠し、試験温度190℃、試験荷重21.18N(2.16kgf)条件下での測定値。
ショアD硬度
ASTM D−2240に準じて測定したショアD硬度。
【0070】
たわみ量
23±1℃の温度で、ゴルフボールを鋼板の上に置き、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)に負荷したときのゴルフボールのたわみ量(mm)。
【0071】
初速
初速はR&Aの承認する装置であるUSGAのドラム回転式の初速計と同方式の初速測定器を用いて測定した。ボールは23±1℃の温度で3時間以上温調し、同温度で測定した。
250ポンド(113.4kg)のヘッド(ストライキングマスク)を使って打撃速度143.8ft/s(43.83m/s)にてボールを打撃した。10個のボールを各々2回打撃して6.28ft(1.91m)の間を通過する時間を計測し、初速を計算した。15分間でこのサイクルを行った。
【0072】
反発係数(Coefficient of Restitution)
空気砲弾によりボールをスチール板に向けて43m/sで発射させたとき、その跳ね返り速度を計測した。反発係数(C.O.R)は、ボール初速と跳ね返り速度との比率である。
【0073】
割れ耐久性
米国Automated Design Corporation製のADC Ball COR Durability Testerにより、ボールの耐久性を評価した。ボールを空気圧で発射させた後、平行に設置した2枚の金属板に連続的に衝突させ、ボールが割れるまでに要した発射回数の平均値を耐久性とした。この場合、平均値とは、同種のボールを4個用意し、それぞれのボールを発射させて4個のボールがそれぞれ割れるまでに要した発射回数を平均化した値である。試験機のタイプは横型CORであり、金属板への入射速度は43m/sであった。
【0074】
耐擦過傷性
ボールを23±1℃の温度に保温し、ピッチングウエッジをスイングロボットマシンに取り付け、ヘッドスピード33m/sにて打撃し、打撃傷を目視で判断し、下記の点数の基準で評価を行った。
最良 1点
より良い 2点
良い又は普通 3点
悪い 4点
より悪い 5点
最悪 6点
【0075】
耐磨耗性
内容量5リットルの筒状物に15個のゴルフボールと1.7リットルの砂を入れて、50rpm、2時間ミキシングした。その後にボールを取り出し、磨耗による表面の傷つきの度合い、光沢減少の度合いを目視により、最良、より良い、良い又は普通、悪い、より悪い、最悪、の基準で評価した。
【0076】
表面研磨後のボール外観
射出成形後のゴルフボールを#500のホイールで3.5秒の条件で表面研磨し、表面スムース、表面やや粗い、表面粗い、の基準で評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i)〜(iii)
(i)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物、
(ii)非アイオノマー熱可塑性樹脂、及び
(iii)アイオノマー樹脂
から構成されるアイオノマー樹脂組成物を含有することを特徴とするゴルフボール用材料。
【請求項2】
上記アイオノマー樹脂組成物に、更に(iv)過酸化物が配合される請求項1記載のゴルフボール用材料。
【請求項3】
上記(i)成分のUV/EB硬化型材料は、その主鎖骨格の一部がポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ブタジエン、エポキシ、カーボネート及びロジン系の構造の群から選ばれ、かつエチレン系不飽和結合の官能基を1分子中に少なくとも2個有するものである請求項1又は2記載のゴルフボール用材料。
【請求項4】
上記エチレン系不飽和結合の官能基は、アクリル基、メタクリル基、アリル基及びビニル基の群から選ばれる1種類以上の重合性官能基である請求項3記載のゴルフボール用材料。
【請求項5】
上記(i)成分の数平均分子量Mnが150〜1,000,000、温度50℃における粘度が10〜300,000mPa・secの範囲である請求項3又は4記載のゴルフボール用材料。
【請求項6】
上記(i)成分の配合量が、上記(ii)及び(iii)の合計量100質量部に対し、0.05〜20質量部である請求項1〜5のいずれか1項記載のゴルフボール用材料。
【請求項7】
上記(ii)非アイオノマー熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアクリレート系ポリマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテル系エラストマー及びポリアセタールの群から選ばれる1種又は2種以上であり、かつその質量配合比が(ii)/(iii)で1/99〜99/1である請求項1〜6のいずれか1項記載のゴルフボール用材料。
【請求項8】
上記(iii)成分が、アイオノマー樹脂、アイオノマー樹脂と該アイオノマー樹脂のベースである酸含有ポリマーとの樹脂組成物、及び、アイオノマー樹脂のベースである酸含有ポリマーと酸素含有無機金属化合物の金属イオン種との樹脂組成物の群から選ばれる請求項1〜7のいずれか1項のゴルフボール用材料。
【請求項9】
上記(iii)成分が、オレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体、不飽和カルボン酸無水物含有ポリマー、不飽和ジカルボン酸含有ポリマー及び不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなる酸含量0.5〜30質量%を有するポリマーを、周期率表第IA,IB,IIA,IIB,IIIA,IIIB,IVA,IVB,VA,VB,VIA,VIB,VIIB及びVIIIBから選択される1種又は2種以上の金属カチオンで中和した樹脂組成物である請求項8記載のゴルフボール用材料。
【請求項10】
上記(iii)成分のアイオノマー樹脂のベースである酸含有ポリマー成分が、オレフィン−不飽和カルボン酸2元共重合体、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体、不飽和カルボン酸無水物含有ポリマー、不飽和ジカルボン酸含有ポリマー及び不飽和ジカルボン酸ハーフエステル含有ポリマーよりなる群から選択された1種又は2種以上からなる酸含量0.5〜30質量%を有するポリマーである請求項8記載のゴルフボール用材料。
【請求項11】
上記(iv)成分が、1分半減期の分解温度が140〜250℃の範囲である過酸化物であり、その配合量が、樹脂成分の合計100質量部に対して0.05〜15質量部である請求項2〜10のいずれか1項記載のゴルフボール用材料。
【請求項12】
(i)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物と、(ii)非アイオノマー熱可塑性樹脂とを、予め溶融混練し、その後、(iii)アイオノマー樹脂、またはアイオノマー樹脂とそのベースの酸含有ポリマーとを配合し、溶融混練してアイオノマー樹脂組成物を得ることを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項13】
(i)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物と、(ii)非アイオノマー熱可塑性樹脂、及び(iii)アイオノマー樹脂のベースの酸含有ポリマーを溶融混練し、その後、酸素含有無機金属化合物の金属イオン種を配合し、溶融混練しながら中和反応により得られるアイオノマー樹脂組成物を得ることを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項14】
上記アイオノマー樹脂組成物を、更にエージング処理する請求項12又は13記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項15】
上記のエージング処理条件が、温度5℃〜80℃、静置日数5日〜100日間である請求項14のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項16】
(i)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物、(ii)非アイオノマー熱可塑性樹脂、及び(iv)過酸化物を配合し、予め過酸化物が分解しない温度で溶融混練し、その後、(iii)アイオノマー樹脂、またはアイオノマー樹脂とそのベースの酸含有ポリマーを配合し、上記過酸化物が分解する温度以上で溶融混練することにより、相互貫入網目構造(IPN)を有するアイオノマー樹脂組成物を得ることを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項17】
(i)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物、(ii)非アイオノマー熱可塑性樹脂、及び(iii)アイオノマー樹脂のベースの酸含有ポリマー、及び(iv)過酸化物を配合し、予め過酸化物が分解しない温度で溶融混練し、その後、酸素含有無機金属化合物の金属イオン種を配合して上記過酸化物が分解する温度以上で溶融混練することにより、上記(i)UV/EB硬化型材料から選ばれる1種以上の化合物のグラフト化反応を起こさせると共に上記(iii)アイオノマー樹脂のベースである酸含有ポリマー中の酸を中和させて相互貫入網目構造を有するアイオノマー樹脂組成物を得ることを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項18】
上記酸素含有無機金属化合物の金属イオン種が、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び酸化亜鉛の群から選ばれる1種又は2種以上が使用され、かつ上記酸素含有無機金属化合物がナノ微粒子またはマスターバッチの形で使用される請求項17記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項19】
上記酸素含有無機金属化合物の金属イオン種による酸含有ポリマー組成物の酸中和反応を、ニーディングディスクゾーンを有するスクリューセグメント配置のベント付二軸押出機を使用して行う請求項17又は18記載のゴルフボール用材料の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜11のいずれか1項記載のゴルフボール用材料の成形物を構成要素として用いることとするゴルフボール。
【請求項21】
請求項1〜11のいずれか1項記載のゴルフボール用材料を、コアと該コアを被覆するカバーとからなるツーピースソリッドゴルフボール、又は、1層以上のコアと該コアを被覆する1層以上の中間層と該中間層を被覆する1層以上のカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールにおけるカバー材又は中間層材として用いることとするゴルフボール。

【公開番号】特開2010−51800(P2010−51800A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195164(P2009−195164)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】