説明

ゴルフ用上衣

【課題】 ゴルフのアドレスからスイング時における動作を適度に規制するとともに、その際の身体の動きのポイントを意識させるようなゴルフ用上衣を提供する。
【解決手段】 ゴルフ用上衣が伸縮性を有する上衣本体1と、該上衣本体に縫着された帯状体2とからなり、該帯状体はポリウレタンを含まない非伸縮性の生地からなり、該帯状体は後身頃12において衿ぐり12aより下方で肩甲骨3上を横切る位置で左右のアームホール12b、12b′間に延在する背中規制用帯状体21と、上衣の袖13において左右アームホールで背中規制用帯状体21に接続し、袖折り山線13c、13c′を越えて袖口まで螺旋状に袖13に縫着された腕規制用帯状体22とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ用上衣に関する。より詳しくは、本発明は、ゴルフのプレイ時に着用する身体にフィットしたシャツやインナーウエアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキーウェアなどのスポーツウェアにおいては、機能性や耐久性、透湿性や防寒性などが適正となるように、そのスポーツに適した素材の研究が進められている。特に、そのスポーツに応じた使用者の動きに支障がなく機能性が向上するように、素材の研究に加え、どの部分をどの方向に良好に伸縮させると機能性が向上するかに主眼が置かれて研究されていた。
【0003】
また、特許文献1(特許第3115816号公報)には、野球のピッチャー、テニス、砲丸投げ等の各種スポーツを行う際に着用するスポーツウェアにおいて、肩関節やその近傍の筋肉、肩関節近傍の上肢筋肉の障害などの予防や治療に役立てるために、スポーツ科学におけるテーピング理論を応用し、スポーツウェアに緊締力の強い部分を形成することにより、テーピングど同様なる効果を生じさせることが提案されている。
【0004】
特許文献2(特許第4061336号公報)には、各種のスポーツでは体幹の旋回や腕の動作に伴い肩甲骨の運動がなされ、その場合、左右の肩甲骨が連動して運動することに着目し、運動パフォーマンスを向上させるための運動用衣類が提案されている。特許文献2の衣類では、衣類本体部よりも高い緊締力を有する帯状緊締部を備えており、この緊締部が着用者の左右の肩甲骨をそれぞれ囲む環状の緊締部と胸椎に対応する位置で左右の環状緊締部を連結する緊締部とを有しているものである。環状緊締部により肩甲骨まわりの筋肉群をサポートし、胸椎に対応する位置の緊締部により左右の肩甲骨の動きを連動させている。
【0005】
上述した特許文献1および特許文献2の衣料では、各種スポーツに対応するように、筋肉に沿ってまたは骨格に沿って緊締部が設けられ、緊締部により筋肉を補強することを目的とし、そして、筋肉を補強することにより運動能力を高めようとするものである。しかも、スポーツ一般に対応するもので、ゴルフに特定して提案されたものではない。特許文献2の衣類を着用して、ゴルフのスイングを行ったらヘッドスピードが向上したことが特許文献2に記載されており、これは緊締部により筋肉のがサポートされ、肩甲骨の可動領域が広くなったためであると説明されている。
【0006】
しかし、ゴルフのプレイに関しては、単に肩回りの筋肉が強くなったり、肩の可動領域が広くなったりしただけでは、ゴルフのスイングが安定していない人や自己流の癖がついたスイングをする人(初心者や中級者)には上手くゴルフクラブを振ることができない。
【0007】
すなわち、ゴルフプレイ中に良いスコアとする上で、常に理想的なフォームでゴルフクラブをスイングすることが要求される。かかる理想的なスイングフォームについては、例えば、
○肩の線、腰の線、足の位置を全て目標に対してスクエアに構え、
○上腕は外側に向き、肘から先は内捻した状態でクラブを握り、スイング中はこの状態を維持する(グリップで両手を絞り過ぎると、上腕が内捻し、スイングが窮屈になるので注意する)、
○左膝がボールにむかっていく感じでクラブヘッドを低く真っ直ぐに引き、バックスイングはゆっくりと、手首のコックは腰の高さあたりから始め(バックスイング時には、アドレス時の肩が下がった状態を維持し、肩が浮き上がらないように注意する)、
○次いでグリップは緩めないようにして右脇を適度にあけ、左腕は真っ直ぐに伸ばし、右手は軽く支える程度にしてダウンスイングをスタートし、左腰および左腕でスイングをリードし、右肘を身体に充分引きつけ、グリップエンドが腰線より下にきてから使い始め、
○インパクトはアドレスの状態に近づけて身体の正面でボールを捉え、
○インパクト後は右腕を伸ばし、左腕はあくまでもカジの役目をさせ、大きくフオロスルーを行う、
というように指導されている。
【0008】
しかし、かかる理想的なスイングフォームもゴルフプレイヤーが体得しなければ理論通りにはいかない。そこで、理想的なフォームを体得できるようにした種々の矯正装置や矯正具が従来から提案されている。従来から提案されている矯正装置や矯正具は理想的なスイングフォームの体得には利用できても、ゴルフプレイ中には使用できない。特に、初心者の場合には体得したフォーム通りにスイングできないという問題がある。
【0009】
特許文献3(実用新案登録第3039102号公報)には、ダウンスイング遅れ側の腕、例えば右利きの場合には右腕の肘から肩にかけての袖内側部分と脇部分とに所定の伸縮弾性を付与し、右腕を脇に引きつけた状態に保持し、肩の回転、およびバックスイングのトップの位置からダウンスイングへの移行の好ましいタイミングを体感できるようにした矯正衣が提案されている。
【0010】
このゴルフスイング矯正衣はゴルフプレイ中にも使用できるものの、理想的なスイングフォームの一部、即ち肩の回転およびトップの位置からダウンスイングへのタイミングを矯正するものであり、理想的なスイングフォームの全体を矯正できないという問題があった。
【0011】
このようなことに鑑み、特許文献4(特開2001−157727号公報)には、ゴルフプレイ中にも理想的なフォームでゴルフクラブをスイングできるようにするゴルフスイング矯正衣が提案されている。
【0012】
このゴルフスイング矯正衣は、左脇から右肩までの部分と左袖とを小さな荷重で伸びる伸縮性生地を使用し、残りの身頃および右袖を大きな荷重で伸びる大きな伸縮弾性を有する生地とし、伸縮弾性の大きな生地の伸縮方向を裾から右上方に傾斜するようにしている。これにより、右側(ダウンスイング遅れ側)の肩関節の動きを制限すると共に、右腕のダウンスイング動作を左側の腕の動作よりも制限するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3115816号公報
【特許文献2】特許第4061336号公報
【特許文献3】実用新案登録第3039102号公報
【特許文献4】特開2001−157727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献4のゴルフスイング矯正衣は左肩部を除く身頃全体および右袖を大きな荷重で伸びる大きな伸縮弾性を有する生地で構成しているので、この矯正衣を着用すると全体に締め付け感が強く、着心地が悪いという問題がある。
【0015】
しかも、このような矯正衣は大きな伸縮弾性を有する生地を、従来の衣服と異なって、斜め使い(バイアス)しているので、脇縫い、袖付け、袖下縫い等の縫製工程において布地がバイアス状であり、布地が捩じれ易く、縫い難いという問題がある。
【0016】
特許文献4のゴルフスイング矯正衣では、右側の肩関節の動きを制限すると共に、右腕のダウンスイング動作を左側の腕の動作よりも制限しているが、大きな荷重を掛けないと伸びないような大きな伸縮弾性を有する生地をほぼ全体に使用して、無理やり矯正しているだけであるので、理想のスイングフォームに矯正することは実際には無理である。
【0017】
本発明は、前述した従来の問題点を解消し、ゴルフのアドレスからスイング時における動作を適度に規制するとともに、その際の身体の動きのポイントを意識させるようなゴルフ用上衣を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、伸縮性を有する上衣本体と、該上衣本体に縫着された帯状体とからなり、該帯状体はポリウレタンを含まない非伸縮性の生地からなり、該帯状体は後身頃において衿ぐりより下方で肩甲骨上を横切る位置で左右のアームホール間に延在する背中規制用帯状体と、上衣の袖において前記左右アームホールで該背中規制用帯状体に接続し、袖折り山線を越えて袖口まで螺旋状に袖に縫着された腕規制用帯状体とを含んでいることとを特徴とするゴルフ用上衣により前記目的を達成した。
【0019】
また、本発明によれば、前身頃および後身頃においてアームホールを取囲んで肩規制用帯状体が設けられており、該肩規制用帯状体は肩および脇下で前身頃側と後身頃側とが接続していることが好ましい。
【0020】
更に、本発明のゴルフ用上衣においては、伸縮性を有する上衣本体の下方部分に、ポリウレタンを含まない非伸縮性の生地からなる腹部規制用布が縫着されていることが好ましい。
【0021】
この場合、腹部規制用布は前身頃における中央部分が一番高く且つ裾まで延在しており、腹部規制用布の上縁が円弧状を描いて裾まで達しており、腹部規制用布の左右の裾部が後身頃に位置することが好ましい。
【0022】
腹部規制用布の別の態様として、腹部規制用布が、前身頃におけるウエスト部にのみに該ウエスト部に平行して延在しており、該腹部規制用布の上縁がアンダー・バスト付近に位置していることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
特許文献2に開示されているような従来のスポーツウェアにおいて採用されているテープ状緊締部は、テーピング理論を応用して筋肉の補強や筋肉の伸び過ぎを防止するものであり、ポリウレタンの混糸率を高くした(通常の伸縮性生地では2〜5%であるのに対して、10%以上である)生地からなり、大きな力を掛けると伸びる伸縮弾性が大きな生地を使用する。
【0024】
これに対して、本発明によれば、上衣本体に縫着される帯状体は、筋肉の補強や筋肉の伸び過ぎ防止を目的とするものではなく、ゴルフのプレイ時(アドレスからスイングまで)に、必要な箇所に意識を向けさせると共に不要な大きな動作を規制するためのものである。このため、本発明の帯状体は、ポリウレタンを含まない非伸縮性の生地からなるものである。
【0025】
すなわち、本発明の上衣は上衣本体が伸縮性を有しているので、身体にフィットし、それに縫着された非伸縮性の帯状体は着用者に縫着箇所に対する意識を向けさせる。また、着用者が何らかの動作をした場合は、帯状体を引張る方向の動作に対しては無理に引張らないように規制する役目を行うことができる。
【0026】
本発明によれば、帯状体が後身頃において衿ぐりより下方で肩甲骨上を横切る位置で左右のアームホール間に延在する背中規制用帯状体と、上衣の袖において左右アームホールで背中規制用帯状体に接続し、袖折り山線を越えて袖口まで螺旋状に袖に縫着された腕規制用帯状体とを含んでいる。
【0027】
アドレス時は、腕を伸ばし、肩が前方内側に寄った、いわゆる「肩が閉じた」状態で、肩が自然に下がった状態とするのが、良いフォームである。本発明によれば、肩甲骨上を横切る位置に背中規制用帯状体を設けたことにより、この良いフォームであることを確認し易い。すなわち、腕を伸ばし、肩を閉じた状態で、背中規制用帯状体が意識できれば、肩が下がった良いフォームである。肩が上がった状態(肩が浮いた状態)の悪いフォームであると、背中規制用帯状体を意識できない。
【0028】
本発明によれば、背中規制用帯状体と腕規制用帯状体を接続させ、腕規制用帯状体を袖折り山線を越えて肘の内側を通り袖口まで螺旋状に袖に縫着したことにより、背中規制用帯状体に接続した腕規制用帯状体の肘の内側までの部分の引張り力により、着用者の上腕は外側向きに捻られる力が作用する。そして、螺旋状の腕規制用帯状体の肘から先は内側に捻る力が作用する。従って、上腕は外側に向き、肘から先は内捻した好ましい状態でクラブを握ることができ、スイング時にもこの状態を維持することが容易である。
【0029】
また、本発明によれば、前身頃および後身頃においてアームホールを取囲んで肩規制用帯状体が設けられており、この肩規制用帯状体と背中規制用帯状体、腕規制用帯状体が一体的に作用して、バックスイング時に肩、腕が高く伸び上がることを防止できる。すなわち、肩や腕が高く伸び上がった状態は悪いフォームであるが、肩が上がり過ぎた場合は肩規制用帯状体の脇下部分がつかえるような感じを与える。また、肩規制用帯状体や肩規制用帯状体を意識することにより、ダウンスイング時に両腕をアドレス時の態勢(二等辺三角形の形)に戻し易い。
【0030】
スイング時の身体の回転運動においては回転軸がブレると筋肉の力がクラブヘッドに伝わり難く、飛距離がアップしない。特に回転の中心である腰の軸がブレる原因として、腹筋の力で腰を支える力が不足している場合がアマチュアプレーヤーに多く見られる。
【0031】
この対策として、本発明によれば、伸縮性を有する上衣本体の下方部分に、ポリウレタンを含まない非伸縮性の生地からなる腹部規制用布を縫着した。このように腹部規制用布を設けることにより、着用者の腹部を圧迫して引き締めるとともに、腹筋への意識を高める。それにより、腹筋に力を入れた状態でクラブをスイングすることでクラブヘッドに力が伝わり、飛距離を伸ばすことが可能である。
【0032】
特に、上記の着用者の腹部を圧迫して引き締めるとともに、腹筋への意識を高める効果を高めるために、腹部規制用布は前身頃における中央部分が一番高く且つ裾まで延在しており、腹部規制用布の上縁が円弧状を描いて裾まで達しており、腹部規制用布の左右の裾部が後身頃に位置していることが好ましい。。
【0033】
別の態様では、着用者が女性である場合は腹部規制用布は前身頃におけるウエスト部にのみに該ウエスト部に平行して延在しており、該腹部規制用布の上縁がアンダー・バスト付近に達しているものとすることが好ましい。女性の場合は、胸の高さかあるためにバックスイング時に胸の上に腕が載ったようになり易いが、本発明では腹部規制用布によりアンダー・バストの箇所を引き締めることにより、腕を胸の下に入れ易くなり、バックスイング時に反利き腕の肘の上がり過ぎを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のゴルフ用上衣の一実施例であり、図1(a)はその正面図、図1(b)は背面図である。
【図2】本発明のゴルフ用上衣の別の実施例であり、図2(a)はその正面図、図2(b)は背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面に示した実施例に基いて本発明を詳細に説明する。
【0036】
本発明のゴルフ用上衣は伸縮性を有する上衣本体1と、上衣本体1に縫着された帯状体2とからなる。帯状体2はポリウレタンを含まない非伸縮性の生地からなり、図1において細かな縦線を施して非伸縮性生地の部分を示した。
【0037】
本発明の上衣本体1に使用する伸縮性の生地は、着用者の身体にフィットし且つ運動し易いように、縦横に伸縮性を有するツーウェイストレッチ生地が好ましい。伸縮性の生地は編物でも織物でもよいが、伸縮しやすいことから、編物の方が好ましい。伸縮性の観点から、編物としては、丸編機で編成するような緯編の方が、経編よりも好ましい。
【0038】
伸縮性生地の糸使いとしては、ナイロン等の捲縮加工糸のみでもよいが、身体への密着性を高めるためには、ポリウレタン弾性糸を使用し、通常よりもポリウレタンの割合を多くすることが好ましい。例えば、ナイロン91%、ポリウレタン9%とする。
【0039】
本発明において、帯状体2に使用する非伸縮性の生地とは、ポリウレタン弾性糸を使用しておらず、弾性的な伸縮性を実質的に備えていない生地であり、織物でも編物でもよいが、帯状体2の長さ方向には伸び難いものである。なお、編物の場合は、その編目構造上、編糸の素材に拘りなく変形可能であるので、ハイ・ゲージとして編目を密にして、伸び難くしたものを使用することが好ましい。このような生地としては、例えば、東レ株式会社販売の「ウルトラシェル」(登録商標)があり、本発明の帯状体2にこの生地を使用してもよい。また、織物や編物において縦横で伸び方が違う場合は、伸びない方向を帯状体2の長さ方向として使用する。
【0040】
図1に示すように、本発明のゴルフ用上衣において帯状体2は数箇所に設けられている。図1(b)において、背中規制用帯状体21は後身頃12において衿ぐり12aより下方で、肩甲骨3(ゴルフ用上衣を着用した場合に肩甲骨に対応する箇所を点線で示した)上を横切る位置で左右の後身頃側アームホール12b、12b′間に延在する。
【0041】
上衣の左右の袖13、13′には左右の後身頃側アームホール12b、12b′から袖口まで螺旋状に腕規制用帯状体22、22′が縫着されている。腕規制用帯状体22、22′はアームホール12b、12b′で背中規制用帯状体21に接続し、後袖側13a、13a′から袖折り山線13c、13c′(すなわち、袖下縫い目13d、13d′を基準に袖を平らに折り畳んだ際に、反対側の輪になった肩先から袖口までの線をいう)を越えて前袖側13b、13b′(図1(a)参照)に延び、肘の内側を通り、再び後袖側13a、13a′へと回り、袖口まで螺旋状に袖13、13′に縫着されている。図1に示すように、左右の腕規制用帯状体22、22′における螺旋の方向は互いに逆方向である。
【0042】
図1(a)において、左右の前身頃側アームホールを符号11b、11b′で示した。前身頃11および後身頃12において左腕側のアームホール11b、12bおよび右腕側のアームホール11b′、12b′をそれぞれぐるりと取囲んで肩規制用帯状体23、23′が設けられている。肩規制用帯状体23、23′は後身頃12において肩甲骨の上を通っており、そして肩および脇下で前身頃側と後身頃側とが接続して、環状となっている。図示した実施例では、後身頃12において肩規制用帯状体23、23′を縫着した後、背中規制用帯状体21が縫着されている。
【0043】
伸縮性を有する上衣本体1の下方部分(着用者の腹部を覆う部分)に、腹部規制用布4が縫着されている。腹部規制用布4は帯状体2と同様にポリウレタンを含まない非伸縮性の生地からなるものである。
【0044】
図1(a)に示すように、腹部規制用布4は前身頃11における中央部分が一番高く且つ裾まで延在しており、腹部規制用布4の上縁4aが円弧状を描いて裾まで達している。そして、図1(b)に示すように、腹部規制用布4の左右の裾部が後身頃12に位置するように延びていることが好ましい。
【0045】
このようにすることにより、着用者の腹部を圧迫して引き締めるとともに、腹筋への意識を高める効果を高めることができる。この態様は、上述した腹部規制用布4の形状から、特に、太って下腹部が出易い紳士用のゴルフ用上衣として好ましい。
【0046】
別の実施例を図2を参照して説明する。図2は、本発明のゴルフ用上衣の別の実施例であり、図2(a)はその正面図、図2(b)は背面図である。図2に示す実施例は、特に、女性用のゴルフ用上衣として好ましいものである。なお、図2においては衿なしとしているが、図1に示した実施例と同様に衿ありとしてもよい。また、図1の実施例においても、図2の実施例と同様に衿なしとすることもできる。
【0047】
図2に示すように、本発明のゴルフ用上衣においても帯状体2は数箇所に設けられている。図2(b)において、背中規制用帯状体21は後身頃12において衿ぐり12aより下方で、肩甲骨3(ゴルフ用上衣を着用した場合に肩甲骨に対応する箇所を点線で示した)上を横切る位置で左右の後身頃側アームホール12b、12b′間に延在する。
【0048】
上衣の左右の袖13、13′には左右のアームホール12b、12b′から袖口まで螺旋状に腕規制用帯状体22、22′が縫着されている。腕規制用帯状体22、22′はアームホール12b、12b′で背中規制用帯状体21に接続し、後袖側13a、13a′から袖折り山線13c、13c′を越えて前袖側13b、13b′(図2(a)参照)に延び、肘の内側を通り、再び後袖側13a、13a′へと回り、袖口まで螺旋状に袖13、13′に縫着されている。図2に示すように、左右の腕規制用帯状体22、22′における螺旋の方向は互いに逆方向である。
【0049】
前身頃11および後身頃12において左腕側のアームホール11b、12bおよび右腕側のアームホール11b′、12b′をそれぞれぐるりと取囲んで肩規制用帯状体23、23′が設けられている。肩規制用帯状体23、23′は後身頃12において肩甲骨の上を通っており、そして肩および脇下で前身頃側と後身頃側とが接続して、環状となっている。図示した実施例では、後身頃12において肩規制用帯状体23、23′を縫着した後、背中規制用帯状体21が縫着されている。
【0050】
図2に示す実施例は女性用のゴルフ用上衣であるので、肩幅が図1に示した実施例よりも狭くなっており、肩規制用帯状体23、23′のアームホール側の縁部とアームホール11b、11b′、12b、12b′との距離が狭くなっている。
【0051】
肩規制用帯状体23、23′が上記の状態となっていると、図2に示すゴルフ用上衣1を女性が着用すると、肩規制用帯状体23、23′の効果が出易く、バックスイング時の方の上がりを防止できる。
【0052】
伸縮性を有する上衣本体1の下方部分(着用者の腹部を覆う部分)に、腹部規制用布4が縫着されている。は帯状体2と同様にポリウレタンを含まない非伸縮性の生地からなるものである。
【0053】
図2の腹部規制用布4は、図2(a)に示すように、前身頃11におけるウエスト部にのみにウエスト部に平行して延在しており、図2(b)に示すように、後身頃には腹部規制用布4は到達していない。この実施例において腹部規制用布4の上縁4aがアンダー・バスト付近に位置している。なお、図2に示すゴルフ用上衣は女性用であり、図1に示した実施例に比べてウエスト部を絞り込んでより美しい体型としている。
【0054】
腹部規制用布4を上述のように位置させることにより、図1に示した実施例と同様に着用者の腹部を圧迫して引き締めるとともに、腹筋への意識を高める効果が生じる。それにより、着用者は腹筋に力を入れた状態でクラブをスイングすることでクラブヘッドに力が伝わり、飛距離を伸ばすことが可能である。
【0055】
この図2の実施例の態様によれば、腹部規制用布4が前身頃側のウエスト部にのみにウエスト部に平行して延在し且つその上縁4aがアンダー・バストまで達していることにより着用者の肋骨付近を押さえ安定させる。
【0056】
これにより、バックスイング時には反利き腕側の腕(着用者が右利きの場合には左腕)が上がることなく胸の下へいき、左腕の肘の上がりを防ぐ。また、ダウンスイング時にもゴルフクラブのヘッドがバックスイング時と同様な軌道を通過し、スイングが安定し、良好なスコアが期待できる。
【0057】
図2に示した実施例のものでは腹部規制用布4があるので、スイング時のみならずスイング時以外にも、着用者のウエスト部を綺麗に見せることができ、加えて、図2の実施例では腹部規制用布4が後身頃には設けられていないので、図1の実施例に比べて脱いだり着たりすることが容易であり、特に、女性用のゴルフ用上衣として好ましい。
【0058】
1 ゴルフ用上衣の本体
2 帯状体
3 肩甲骨
4 腹部規制用布
11 前身頃
12 後身頃
12a 後身頃の衿ぐり
12b、12b′ アームホール
13 袖
13c、13c′ 袖折り山線
21 背中規制用帯状体
22、22′ 腕規制用帯状体
23、23′ 肩規制用帯状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する上衣本体と、該上衣本体に縫着された帯状体とからなり、該帯状体はポリウレタンを含まない非伸縮性の生地からなり、該帯状体は後身頃において衿ぐりより下方で肩甲骨上を横切る位置で左右のアームホール間に延在する背中規制用帯状体と、上衣の袖において前記左右アームホールで該背中規制用帯状体に接続し、袖折り山線を越えて袖口まで螺旋状に袖に縫着された腕規制用帯状体とを含んでいることとを特徴とするゴルフ用上衣。
【請求項2】
前身頃および後身頃においてアームホールを取囲んで肩規制用帯状体が設けられており、該肩規制用帯状体は肩および脇下で前身頃側と後身頃側とが接続していることを特徴とする請求項1記載のゴルフ用上衣。
【請求項3】
伸縮性を有する上衣本体の下方部分に、腹部規制用布が縫着されており、該腹部規制用布はポリウレタンを含まない非伸縮性の生地からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴルフ用上衣。
【請求項4】
腹部規制用布は前身頃における中央部分が一番高く且つ裾まで延在しており、該腹部規制用布の上縁が円弧状を描いて裾まで達しており、該腹部規制用布の左右の裾部が後身頃に位置することを特徴とする請求項3記載のゴルフ用上衣。
【請求項5】
腹部規制用布は前身頃におけるウエスト部にのみに該ウエスト部に平行して延在しており、該腹部規制用布の上縁がアンダー・バスト付近に位置することを特徴とする請求項3記載のゴルフ用上衣。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−442(P2012−442A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248330(P2010−248330)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(593085417)株式会社オンワードホールディングス (14)
【Fターム(参考)】