説明

ゴルフ練習クラブ

【課題】両手の使い方が最適で、脇が締まり、腰の回転を使ったスイングを会得することができるゴルフ練習クラブを提供する。
【解決手段】ゴルフ練習クラブ1に、基準面6に対して所定位置に形成された打撃面5を有する打撃部4と、打撃部4から基準面6に沿って所定方向へ延びるシャフト部2と、シャフト部2の先端から同軸状に延設される第一軸部10と、第一軸部10の先端から所定距離離れて同軸状に配置される第二軸部20と、第二軸部20の基端と第一軸部10の先端とを連結し、第二軸部20が第一軸部10に対して基準面6の垂直方向で且つシャフト部2の軸方向に対して垂直方向へ撓むように弾性変形可能とされた可撓部30と、可撓部30を含む第二軸部20の先端からシャフト部2の先端までの外周を被覆する被覆部3とを主に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフの理想的なスイングを会得するためのゴルフ練習クラブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴルフの練習をする場合、ゴルフの解説書等を読んだり、レッスンプロに指導を受けたりしている。しかしながら、ゴルフの解説書等を読んで理屈を学んでも、理想的なスイングを会得するのは困難であった。また、レッスンプロの指導では、指導料の費用がかかる上に、指導者との都合の兼ね合いなどによって指導を伴った練習時間が限られており、有効な練習時間を設定できる自由度が低い問題があった。
【0003】
そこで、ゴルフを練習する使用者の腰の位置を固定する保持具と、保持具に支持された使用者を中心とする理想的なスイングの軌跡と略一致した円形のガイドループと、ガイドループに案内されるスイングシャフトと、を備えたゴルフ練習器が提案されている(例えば、特許文献1)。この練習器によると、保持具に支持された使用者がスイングシャフトを振り回すことで強制的に理想的なスイングを行うことができるようになっている。
【0004】
しかしながら、特許文献1のものは、練習器が大掛かりで高価であると共に、練習器を設置する場所が必要となる問題があった。そこで、スイングシャフト内に、所定長の伸長ばねと、伸長ばねに連接された所定長の圧縮ばねと、を備えたものが提案されている(例えば、特許文献2)。この練習具は、理想的なスイングでスイングシャフトを振ると、ばねの伸縮により特定の音が出るようになっており、理想的なスイングか否かを聴覚的に知らせることができるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、理想的なスイングとしては、脇を締めて腰の回転でスイングを行うだけでなく、両手の使い方も重要であり、ゴルフボールを打撃するインパクトの手前まで押し手(右利きの場合は右手)に力を入れ過ぎないように引き手(右利きの場合は左手)を先行させ、インパクト後に徐々に押し手を先行させていくことが望ましい使い方とされている。
つまり、ゴルフクラブを握った両手の夫々の軸(握軸とも称す)が折れ曲がらずに真直ぐと同軸上に推移するようなスイングを行うことが望ましい。
【0006】
しかしながら、従来のものでは、引き手或いは押し手に力が入り過ぎても、スイングシャフトは曲がらず両手の夫々の握軸が強制的に同軸上に位置するので、両手の力の入れ具合が理想的な状態であるか否かが判り難く、理想的でない力の入れ具合で練習してしまう問題があった。そのため、たとえスイングの軌跡が理想的な軌跡であっても、実際にゴルフボールを打つと、理想的な弾道(飛距離)を得ることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は上記実情に鑑み、両手の使い方が最適で、脇が締まり、腰の回転を使ったスイングを会得することができるゴルフ練習クラブを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のゴルフ練習クラブは、
「基準面に対して所定位置に形成された打撃面を有する打撃部と、
該打撃部から前記基準面に沿って所定方向へ延びるシャフト部と、
該シャフト部の先端から同軸状に延設される第一軸部と、
該第一軸部の先端から所定距離離れて同軸状に配置される第二軸部と、
該第二軸部の基端と前記第一軸部の先端とを連結し、前記第二軸部が前記第一軸部に対して前記基準面の垂直方向で且つ前記シャフト部の軸方向に対して垂直方向へ撓むように弾性変形可能とされた可撓部と、
該可撓部を含む前記第二軸部の先端から前記シャフト部の先端までの外周を被覆する被覆部と
を具備する」
ことを特徴として主に構成されている。
【0009】
ここで、基準面は、ゴルフボールを打撃するインパクトの位置におけるスイング方向と直交する面のことである。また、打撃面は、ゴルフボールを打撃する面であり、この打撃面は、基準面に対する所定角度(ロフト角)がクラブの種類毎に設定されており、このロフト角により打球の飛び出し角度が変化する。
【0010】
また、第一軸部は、シャフト部の先端から同軸状に延設されていれば良く、シャフト部と別体であったり、シャフト部と一体であっても良い。
【0011】
また、可撓部は、インパクトの位置におけるシャフト部に対して基準面の垂直方向(スイング方向とも称す)にだけ撓むと共に、弾性変形させる荷重が無くなった場合、第二軸部を第一軸部の同軸状に復帰させるものであれば良く、例えば、基準面と平行に延びる板バネや、基準面と平行で且つシャフト部の軸方向に垂直な軸を有するヒンジと、第二軸部を第一軸部に対して同軸状に復帰させる弾性部材とを備えたものであっても良い。
【0012】
また、可撓部の連結は、取外不能、或いは取外可能としても良い。取外不能とした場合は、連結部分の強度を向上させることができ、破損し難くすることができる。また、取外可能とした場合は、破損しても破損した部材の交換ができ、修理をすることができる。
【0013】
また、被覆部は、被覆することによって、クラブのグリップを形成するものであれば良く、例えば、一端が塞がれた円筒形状のものを被せたり、テープ状のものを巻いたりして形成しても良い。また、その材質は、滑り難いものが望ましく、例えば、ゴム、皮、布等が挙げられる。なお、被覆部の表面に、可撓部の位置を示す線等のマーキングを備えるようにしても良く、これにより、使用者に対して可撓部の位置を判り易くすることができ、正しい位置で被覆部(グリップ)を握らせることができる。
【0014】
本発明のゴルフ練習クラブを用いる場合、使用者は、引き手と押し手との間に可撓部が位置するように、被覆部(グリップ)を握って使用する。そして、理想的なスイングを行うと、グリップを握った両手の夫々の握軸が折れ曲がらずに真直ぐと同軸上に推移するので、可撓部も撓むことが無く違和感無くスムーズにスイングすることができる。これに対して、理想的ではないスイングを行うと、何れかの手に力が入り過ぎることで両手の夫々の握軸が折れ曲がって可撓部が撓んでしまうので、使用者に対して違和感を与えることができる。この可撓部が撓む具体的な例としては、例えば、クラブを引き上げたトップの位置では、脇が開くことで、押し手に対して引き手が体の外側に傾いたり、クラブを振り下ろすダウンスイングでは、押し手に力が入り過ぎることで、引き手に対して押し手が先行したり、インパクト以後では、腰の回転を使用しないで振り切れなくなることで、押し手が傾いてしまったりすると、可撓部で撓みが生じて使用者に違和感を与えることができる。
【0015】
このように、理想的ではないスイングを行うと、可撓部が撓んで使用者に違和感を与えることができるので、使用者に対して最適な両手の使い方(力の入れ方や、夫々の手の向き等)を意識させることができ、グリップを握った両手の夫々の握軸が折れ曲がらずに真直ぐと同軸上に推移するように心がけてスイングさせることができると同時に、両手の夫々の握軸が折れ曲がらずに真直ぐと同軸上に推移させることで、自然と使用者の脇が締まると共に腰の回転を使うようになり理想的なスイングを行わせる(会得させる)ことができる。
【0016】
また、本発明は、打撃面を有する打撃部がゴルフクラブのヘッドに相当しており、一般のゴルフのクラブと同様の形態となっており、特許文献1のものとは異なって、設置場所(練習場)を必要とせず、携帯してどこでも練習することができると共に、素振りだけでは無く、実際にゴルフボールを打撃することが可能であるので、特許文献2のものとは異なり、弾道を確認しながら理想的な力の入れ具合を練習することができる。
【0017】
なお、可撓部がスイング方向にだけ撓むのではなく、あらゆる方向に弾性変形可能な可撓部とした場合は、第二軸部を握る引き手だけではグリップを真直ぐに握ることが難しくなるので、理想的なスイングを練習し難いものになる。しかしながら、本発明のゴルフ練習クラブでは、可撓部がスイング方向へのみ可撓するので、クラブを構えた姿勢において、引き手だけでグリップを真直ぐに握ることが可能となり、グリップに対する引き手の真直ぐな位置が認識できるため、両手でグリップを真直ぐ握ることができ、上述した問題点を解決することができる。
【0018】
従って、本発明のゴルフ練習クラブによれば、グリップにスイング方向へのみ可撓する可撓部を有することにより、理想的でないスイングをすると可撓部が撓んで、使用者に違和感を与えることができるため、使用者に最適な両手の使い方を意識させることができ、使用者が違和感を感じないようにスイングを練習することによって、両手の使い方が最適で、脇が締まり、腰の回転を使った理想的なスイングを会得することができる。
【0019】
更に、本発明のゴルフ練習クラブは、上記構成に加え、
「前記第一軸部に対する前記第二軸部の撓み量を規制する規制手段を更に具備する」ものであっても構わない。
【0020】
ここで、規制手段は、第一軸部に対する第二軸部の撓み量を規制するものであれば良く、例えば、「第一軸部及び第二軸部は、先端及び基端に夫々取付部材が取付けられる取付部を備え、可撓部は、両端に取付部材が挿入される円形状の連結孔を有し、基準面と平行に延びた板状でシャフト部に沿って配置される第一弾性部材と、第一弾性部材の連結孔と同軸状に配置された取付部材が挿入されるシャフト部の軸方向へ延びた長孔状の挿入孔を有し、第一弾性部材と平行に配置される少なくとも一つの板状の第二弾性部材とを備え、可撓部が撓んだ時に挿入孔の長手方向の端面に取付部材が当接して撓みが規制されるもの」であったり、「基準面と平行で且つシャフト部の軸方向に垂直な軸を有するヒンジと、ヒンジの外周に配置されるコイルバネとを備え、可撓部が撓んだ時にコイルバネの内側が縮んでコイルの線同士が当接して撓みが規制されるもの」であっても良い。
【0021】
従って、本発明のゴルフ練習クラブによれば、規制手段を具備することで、許容以上の撓みを生じさせる力が働いた場合、撓み量を規制することができ、可撓部の破損を防止することができる。
【0022】
更に、本発明のゴルフ練習クラブは、上記構成に加え、
「前記可撓部の両端に前記第一軸部及び前記第二軸部を取付けるための棒状の取付部材を更に具備し、
前記第一軸部及び前記第二軸部は、
先端及び基端に夫々前記取付部材が取付けられる取付部を備え、
前記可撓部は、
両端に前記取付部材が挿入される円形状の連結孔を有し、前記基準面と平行に延びた板状で前記シャフト部に沿って配置される第一弾性部材と、
該第一弾性部材の前記連結孔と同軸状に配置された前記取付部材が挿入される前記シャフト部の軸方向へ延びた長孔状の挿入孔を有し、前記第一弾性部材と平行に配置される少なくとも一つの板状の第二弾性部材と
を備えている」ものであっても構わない。
【0023】
ここで、取付部材は、第一軸部及び第二軸部の軸方向と垂直方向を向くように配置される。また、取付部は、取付部材が取付けられる形状であれば良く、例えば、第一軸部及び第二軸部の外周面に取付部材と同径の孔を穿設したり、取付用の螺子孔を形成したものであっても良い。
【0024】
また、第二弾性部材は、複数配置しても良く、例えば、第一弾性部材を中央として、その両側に重ねて配置しても良いし、第一弾性部材の片側のみに重ねて配置しても良い。
【0025】
また、連結孔は、複数形成されていても良く、取り付けられる取付部材の数に応じて形成すれば良い。また、一つの取付部に対して少なくとも二つの取付部材を取付けても良く、これにより、可撓部が取付部材を中心として回転するのを防止することができる。
【0026】
また、挿入孔は、連結孔を長孔の長手方向の中央近傍となるように連結孔と重ねられる。これにより、可撓部に撓みを生じた場合、第一弾性部材と第二弾性部材とで曲率半径が異なるため、挿入孔と連結孔との中心が長手方向にずれることとなるが、挿入孔を長孔状としているので、連結孔と同軸の取付部材が挿入孔内で相対的にスライドすることができ、可撓部を撓ませることができる。
【0027】
従って、本発明のゴルフ練習クラブによれば、可撓部を板状の弾性部材とすることにより、簡単な構成で撓み方向を第二軸部が第一軸部に対して基準面の垂直方向で且つシャフト部の軸方向に対して垂直方向(スイング方向)とすることができると共に、可撓部として、ヒンジと弾性部材とを組合せたものと比較して部品点数を少なくすることができる。
【0028】
更に、本発明のゴルフ練習クラブは、上記構成に加え、
「前記規制手段は、
前記第二弾性部材における前記挿入孔の長手方向の端部が、前記取付部材に当接することで撓み量を規制する」ものであっても構わない。
【0029】
ところで、可撓部に撓みが生じると、上述したように、第一弾性部材と第二弾性部材とでは曲率半径が異なるので、挿入孔と連結孔の中心が長手方向へずれて長孔状の挿入孔内で連結孔と同軸の取付部材が相対的にスライドすることとなる。そして、取付部材が挿入孔の端部に当接すると、取付部材がこれ以上スライドすることができなくなるので、第二弾性部材がこれ以上曲がる(撓む)ことができなくなり、可撓部の撓み量が規制されることとなる。従って、本発明のゴルフ練習クラブによれば、規制手段として、第二弾性部材における挿入孔の長手方向の端部に取付部材が当接することで撓み量を規制するものとしているので、別途、規制手段としての部材を備える必要が無く、ゴルフ練習クラブに係る部品点数を低減させることができ、コストを抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の効果として、両手の使い方が最適で、脇が締まり、腰の回転を使ったスイングを会得することができるゴルフ練習クラブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態であるゴルフ練習クラブを示す斜視図である。
【図2】図1のゴルフ練習クラブの要部を拡大して示す断面図である。
【図3】図2において可撓部が撓んだ状態を示す断面図である。
【図4】図1のゴルフ練習クラブの要部を分解して示す斜視図である。
【図5】図1とは異なる本発明のゴルフ練習クラブの他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態であるゴルフ練習クラブ1について、図1乃至図5に基づいて説明する。ここで、図1は本発明の一実施形態であるゴルフ練習クラブを示す斜視図であり、図2は図1のゴルフ練習クラブの要部を拡大して示す断面図であり、図3は図2において可撓部が撓んだ状態を示す断面図であり、図4は図1のゴルフ練習クラブの要部を分解して示す斜視図であり、図5は図1とは異なる本発明のゴルフ練習クラブの他の例を示す斜視図である。
【0033】
本実施形態のゴルフ練習クラブ1は、理想的なスイングを会得するためのものであり、図1乃至図4に示すように、基準面6に対して所定位置に形成された打撃面5を有する打撃部4と、打撃部4から基準面6に沿って所定方向へ延びるシャフト部2と、シャフト部2の先端から同軸状に延設される第一軸部10と、第一軸部10の先端から所定距離離れて同軸状に配置される第二軸部20と、第二軸部20の基端と第一軸部10の先端とを連結し、第二軸部20が第一軸部10に対して基準面6の垂直方向で且つシャフト部2の軸方向に対して垂直方向へ撓むように弾性変形可能とされた可撓部30と、可撓部30を含む第二軸部20の先端からシャフト部2の先端までの外周を被覆する被覆部3と、可撓部30の両端に第一軸部10及び第二軸部20を取付けるための棒状の取付部材33と、を具備するものである。
【0034】
本例のゴルフ練習クラブ1の打撃部4は、図1及び図2に示すように、一般的に使用されているゴルフクラブの種類におけるウッドと同様の形態であり、ゴルフボールを打撃するインパクトの位置における打撃部4のスイング方向と垂直に交わる基準面6に対して所定角度とされた打撃面5を有する。また、本例のゴルフ練習クラブ1のシャフト部2は、先端が開口した中空状であり、材質は炭素繊維強化樹脂(カーボングラファイト)にて形成されている。
【0035】
本例のゴルフ練習クラブ1の第一軸部10は、シャフト部2と別体であり、図2乃至図4に示すように、円柱状の第一軸本体11と、第一軸本体11が内部に挿入され外径がシャフト部2とほぼ同径である円筒状の第一軸ケース12と、を備えている。第一軸本体11は、シャフト2から遠い方の端面である先端面の中央近傍に先端面側が開放され基準面6と平行な対向する面を有した溝形状の第一溝部13と、第一溝部13を通過するように第一軸本体11を基準面6の直交方向に貫通して第一軸本体11の長手方向に並んで穿設される一対の第一取付孔14と、を備えている。この第一軸部10は、先端面とは反対側の他端側が中空状のシャフト部2の先端に挿入固着されている。
【0036】
また、ゴルフ練習クラブ1の第二軸部20は、図2乃至図4に示すように、第一軸部10と同様に、円柱状の第二軸本体21と、第二軸本体21が内部に挿入され外径がシャフト部2とほぼ同径である円筒状の第二軸ケース22と、を備えている。第二軸本体21は、シャフト2から近い方の端面である基端面の中央近傍に基端面側が開放され基準面6と平行な対向する面を有した溝形状の第二溝部23と、第二溝部23を通過するように第二軸本体21を基準面6の直交方向に貫通して第二軸本体21の長手方向に並んで穿設される一対の第二取付孔24と、を備えている。この第二軸部20は、第二溝部23が第一溝部13と向かい合うように配置される。
【0037】
また、ゴルフ練習クラブ1の可撓部30は、図2乃至図4に示すように、両端に取付部材33が挿入される一対の円形状の連結孔36を有し、基準面6と平行に延びた板状でシャフト部2に沿って配置される第一弾性部材31と、第一弾性部材31の連結孔36と同軸状に配置された取付部材33が挿入されるシャフト部2の軸方向へ延びた一対の長孔状の挿入孔37を有し、第一弾性部材31の両面に夫々3つ重ねられた板状の第二弾性部材32と、を備えている。このため、可撓部30は、第二軸部20が第一軸部10に対して基準面6の垂直方向で且つシャフト部2の軸方向に対して垂直方向へ撓むように弾性変形することができるようになっている。
【0038】
連結孔36及び挿入孔37は、第一弾性部材31及び第二弾性部材32の両端に一対ずつ第一弾性部材31及び第二弾性部材32の長手方向に並んで形成され、一対の芯間距離は、第一軸本体11及び第二軸本体21に穿設される第一取付孔14及び第二取付孔24の芯間距離と等しいものとなっている。また、第二弾性部材32が第一弾性部材31に重ねられた状態では、長孔である挿入孔37の長手方向の中央近傍に連結孔36が位置する。これにより、可撓部30に撓みを生じた場合、図3に示すように、第一弾性部材31と第二弾性部材32とで曲率半径が異なるため、挿入孔37と連結孔36との中心が長手方向にずれることとなるが、挿入孔37を長孔状としているので、連結孔36と同軸の取付部材33が挿入孔37内で相対的にスライドすることができ、可撓部30を撓ませることができる。
【0039】
また、可撓部30に対する第一軸部10及び第二軸部20の連結は、第一軸本体11では、第一溝部13に第一弾性部材31の端部と、第一弾性部材31の両面に夫々3つ重ねた第二弾性部材32の端部と、が差し込まれ、一対の取付部材33が第一取付孔14、挿入孔37、及び連結孔36に挿入されることで連結される。また、第二軸本体21でも同様に、第二溝部23に第一弾性部材31の他端部と、第一弾性部材31の両面に夫々3つ重ねた第二弾性部材32の他端部と、が差し込まれ、一対の取付部材33が第二取付孔24、挿入孔37、及び連結孔36に挿入されることで連結される。
【0040】
また、ゴルフ練習クラブ1は、第一軸部10に対する第二軸部20の撓み量を規制する規制手段を更に具備する。本実施例での規制手段は、第一弾性部材31と第二弾性部材32とで曲率半径が異なることにより、挿入孔37と連結孔36との中心が長手方向にずれ、連結孔36と同軸の取付部材33が挿入孔37内で相対的にスライドし、挿入孔37の長手方向の端部に取付部材33が当接することで撓み量を規制するものである。なお、本実施例での可撓範囲は、基準面6の垂直方向の前後に対して夫々約15度に設定されている。
【0041】
また、ゴルフ練習クラブ1は、可撓部30の周囲に、図2乃至図4に示すように、第一弾性部材31の両面に重ねた第二弾性部材32の夫々の外側に平面が内側となるように配置された一対の半円柱状のスペーサ34と、可撓部30の周囲に配置されたコイルバネ35と、を備えている。
【0042】
スペーサ34は、樹脂材によって形成され、配置された第一軸本体11及び第二軸本体21の向かい合う端面距離より短い長さであると共に曲面の半径は、第一軸部10及び第二軸部20の半径より小さいものとなっている。
【0043】
コイルバネ35は、外径が第一軸ケース12及び第二軸ケース22の外径とほぼ等しく、線径が第一軸ケース12及び第二軸ケース22の厚みとほぼ等しく形成されている。また、コイルバネ35は、コイルバネ35の中心軸が第一軸部10及び第二軸部20の中心軸と同軸状であると共に、第一軸ケース12と第二軸ケース22との向かい合う夫々の端面にコイルバネ35の両端面が当接する。コイルバネ35の内側には、第二弾性部材32との隙間にスペーサ34が配置されているため、中心軸がずれ難くなっている。更に、コイルバネ35は、第一弾性部材31及び第二弾性部材32の外周に配置されているため、円柱状ではない板状の第一弾性部材31及び第二弾性部材32を被覆部3で被覆しても、可撓性を維持すると共に被覆部3の外形を円柱状に保持することができる。
【0044】
また、ゴルフ練習クラブ1の被覆部3は、図1に示すように、一端が塞がれた円筒形状のゴム等の弾性体によって形成されており、被覆状態で、他端の開口側の先端がシャフト部2の先端に位置する。また、被覆部3は、開口側の内面に塗布された接着剤によって、シャフト部2の外周に接着されており、被覆状態が容易にずれないものとなっている。
【0045】
また、ゴルフ練習クラブ1の取付部材33は、図2乃至図4に示すように、第一軸本体11及び第二軸本体21の軸径より短く、第一取付孔14及び第二取付孔24に挿入した場合に、第一軸本体11及び第二軸本体21の外周から飛び出さない長さの円柱状に形成されている。
【0046】
因みに、本実施例における可撓部30の位置は、撓みの中心が、第二軸部20の先端(グリップエンド)から約110cmの位置としている。また、第一弾性部位材31及び第二弾性部材32の厚みは約0.5mmであり、長手方向の全長は約60mmである。更に、第一軸部10と第二軸部20の間の距離は、約25mmとしている。第一弾性部位材31及び第二弾性部材32の第一溝部13及び第二溝部23に対する差し込み量は、夫々約17.5mmとなっている。また、コイルバネの全長は、約11mmで、線径は、0.5mmである。
【0047】
本例のゴルフ練習クラブ1を用いる場合、使用者は、引き手と押し手との間に可撓部30が位置するように、被覆部3(グリップ)を握って使用する。そして、理想的なスイングを行うと、ゴルフ練習クラブ1を握った両手の夫々の握軸が折れ曲がらずに真直ぐと同軸上に推移するので、可撓部30も撓むことがなく違和感無くスムーズにスイングすることができる。これに対して、理想的ではないスイングを行うと、何れかの手に力が入り過ぎることで両手の夫々の握軸が折れ曲がって可撓部30が撓んでしまうので、使用者に対して違和感を与えることができる。
【0048】
このように、本実施形態のゴルフ練習クラブ1によると、グリップに可撓部30を有することにより、理想的でないスイングをすると可撓部30が撓んで、使用者に違和感を与えることができるため、使用者に最適な両手の使い方を意識させることができ、使用者が違和感を感じないようにスイングを練習することによって、両手の使い方が最適で、脇が締まり、腰の回転を使った理想的なスイングを会得することができるゴルフ練習クラブ1を提供することができる。
【0049】
また、本実施形態のゴルフ練習クラブ1によると、可撓部30を板状の第一弾性部材31及び第二弾性部材32とすることにより、簡単な構成で撓み方向を第二軸部20が第一軸部10に対して基準面6の垂直方向で且つシャフト部2の軸方向に対して垂直方向とすることができると共に、可撓部30として、ヒンジと弾性部材とを組合せたものと比較して部品点数を少なくすることができる。
【0050】
また、本実施形態のゴルフ練習クラブ1によると、打撃面5を有する打撃部4を備えており、一般のゴルフクラブと同様の形態のものとしているので、設置場所(練習場)を必要とせず、携帯してどこでも練習することができると共に、素振りだけではなく、実際にゴルフボールを打撃することができ、弾道を確認しながら理想的な力の入れ具合を練習することができる。
【0051】
また、本実施形態のゴルフ練習クラブ1によると、可撓部30に規制手段を備えるため、許容以上の撓みを生じさせる力が働いた場合、撓み量を規制することができ、可撓部30の破損を防止することができる。更に、この場合、別途、規制手段としての部材を備えなくても規制することができるため、部品点数が減り、安価に製作することができる。なお、本例では、シャフト部2を炭素繊維強化樹脂としているため、第一軸部10や第二軸部20を、第一軸本体11と第一軸ケース12や、第二軸本体21と第二軸ケース22で構成したものを示したが、これに限定するものではなく、シャフト部2をスチールやアルミ等の金属製としても良く、これにより、シャフトに対して第一軸本体11や第二軸本体21に相当するものを直接形成することができるので、ゴルフ練習クラブ1を構成する部品点数を更に少なくすることができ、より安価に製作することができる。
【0052】
また、本実施形態のゴルフ練習クラブ1によると、第一弾性部材31及び第二弾性部材32の外周にコイルバネ35が配置されているため、可撓部30が板状の第一弾性部材31及び第二弾性部材32であっても、可撓性を維持しながら被覆部3の外形を円柱状に保持することが可能となり、一般のゴルフクラブと比較しても違和感無くグリップを握ることができる。
【0053】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0054】
すなわち、本実施形態のゴルフ練習クラブ1は、第一軸部10が、第一軸本体11と第一軸ケース12とで別体のものを示したが、これに限定されるものではなく、一体でも良い。更には、第一軸部10とシャフト部2が一体のものでも良い。
【0055】
また、本実施形態のゴルフ練習クラブ1は、可撓部30の可撓範囲を約15度に設定したものを示したが、これに限定されるものではなく、約10度〜約20度の範囲の中で設定すれば良い。これよりも少ないと使用者が撓みを認識し難く、これよりも多いと両手の夫々の握軸が折れ過ぎてスイングの練習がし難くなる。
【0056】
また、本実施形態のゴルフ練習クラブ1は、可撓部30として、第二弾性部材32を第一弾性部材31の両面に夫々3つ重ねるものを示したが、これに限定されるものではなく、スイングの負荷に対する耐久性を有し、撓み後、即座に第二軸部20を第一軸部10の同軸状に復帰させる弾性力を備えるものであれば良い。
【0057】
また、本実施形態のゴルフ練習クラブ1は、被覆部3が、ゴム等の弾性体によって形成されるものを示したが、これに限定されるものではなく、例えば、布、皮等の滑り難いものであれば良い。また、形状においてもテープ状のものを巻いて形成しても良い。
【0058】
また、本実施形態のゴルフ練習クラブ1は、被覆部3の表面に何も描いていないものを示したが、これに限定されるものではなく、図5に示すように、被覆部3の表面に可撓部30の位置を示すマーキング7を備えるようにしても良い。このマーキング7は、被覆部3の表面に線を描いたり、テープを貼ったりすることで形成されている。
【0059】
また、本実施形態のゴルフ練習クラブ1は、第一溝部13及び第二溝部23が、第一軸本体11及び第二軸本体21の端面の中央近傍に溝形状に形成したものを示したが、これに限定されるものではなく、円柱の半分を削り取った半円柱状に形成したものでも良い。この場合、第一弾性部材31及び第二弾性部材32は、第一溝部13及び第二溝部23によって、重なり方向の一方への位置が制限されないため、例えば、取付部材33を第一取付孔14又は第二取付孔24から延びる鍔付の円柱形状のものとしたり、ボルト等の螺子部材として、位置を制限しても構わない。
【0060】
なお、上述した本実施形態のゴルフ練習クラブ1は、可撓部30の撓みによって、使用者の両手に違和感を与えるものを示したが、例えば、可撓部30が撓むと同時に音を発する発音手段を備えるものでも構わない。発音手段を備えることにより、ゴルフクラブを握った両手の夫々の握軸が折れ曲がったことを両手の違和感と共に、聴覚的に認識させることができ、スイングにおいて撓んだ位置をより判り易く認識することができる。
【0061】
また、上述したゴルフ練習クラブ1で示した構成(機構)を野球のバットやテニスのラケットに適用しても良く、例えば、野球のバットに適用した場合、脇が締まり腰の回転を用いたスイング、つまり、内角球に強くなるスイングを練習することができる。また、野球のバットに適用した場合では、可撓部30の撓み方向(スイング方向)を示すマーキングを更に備えることが望ましく、これにより、スイングの練習を正しく行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
1 ゴルフ練習クラブ
2 シャフト部
3 被覆部
4 打撃部
5 打撃面
6 基準面
10 第一軸部
11 第一軸本体
14 第一取付孔
20 第二軸部
21 第二軸本体
24 第二取付孔
30 可撓部
31 第一弾性部材
32 第二弾性部材
33 取付部材
36 連結孔
37 挿入孔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開平11−99233号公報
【特許文献2】特開2007−275167号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面に対して所定位置に形成された打撃面を有する打撃部と、
該打撃部から前記基準面に沿って所定方向へ延びるシャフト部と、
該シャフト部の先端から同軸状に延設される第一軸部と、
該第一軸部の先端から所定距離離れて同軸状に配置される第二軸部と、
該第二軸部の基端と前記第一軸部の先端とを連結し、前記第二軸部が前記第一軸部に対して前記基準面の垂直方向で且つ前記シャフト部の軸方向に対して垂直方向へ撓むように弾性変形可能とされた可撓部と、
該可撓部を含む前記第二軸部の先端から前記シャフト部の先端までの外周を被覆する被覆部と
を具備することを特徴とするゴルフ練習クラブ。
【請求項2】
前記第一軸部に対する前記第二軸部の撓み量を規制する規制手段を更に具備することを特徴とする請求項1に記載のゴルフ練習クラブ。
【請求項3】
前記可撓部の両端に前記第一軸部及び前記第二軸部を取付けるための棒状の取付部材を更に具備し、
前記第一軸部及び前記第二軸部は、
先端及び基端に夫々前記取付部材が取付けられる取付部を備え、
前記可撓部は、
両端に前記取付部材が挿入される円形状の連結孔を有し、前記基準面と平行に延びた板状で前記シャフト部に沿って配置される第一弾性部材と、
該第一弾性部材の前記連結孔と同軸状に配置された前記取付部材が挿入される前記シャフト部の軸方向へ延びた長孔状の挿入孔を有し、前記第一弾性部材と平行に配置される少なくとも一つの板状の第二弾性部材と
を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のゴルフ練習クラブ。
【請求項4】
前記規制手段は、
前記第二弾性部材における前記挿入孔の長手方向の端部が、前記取付部材に当接することで撓み量を規制することを特徴とする請求項3に記載のゴルフ練習クラブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−156242(P2011−156242A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21733(P2010−21733)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【特許番号】特許第4676555号(P4676555)
【特許公報発行日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(595159035)有限会社石垣精工 (4)
【Fターム(参考)】