説明

サイアロン相含有アルミナ質焼結砥粒の製造方法

【目的】 研削に大きく寄与する硬く鋭利な切り刃の発生ができ易く、研削性能に優れた砥粒を提供する。
【構成】 多孔質仮焼ゲルに珪素化合物および炭素化合物を含浸し、窒素またはアンモニアガス雰囲気下で窒化後、焼結しサイアロン相含有のアルミナ質焼結砥粒を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、研削性能に優れたサイアロン相を含有するアルミナ質焼結砥粒の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミナ質電融砥粒にはA,WA,PA,HAがあるが、これらは硬度が高く、現在でも研削砥粒の主流を占めている。しかしながら、これらの砥粒は比較的靭性が低く、また研削に寄与する切れ刃の発生も粗大単位で行なわれるために、その研削性能は不十分であった。そのため近年アルミナ質砥粒の改良がさまざまに行なわれている。特開昭56−32369にはジルコニアやスピネルを含有するゾルゲル法によるアルミナ質焼結砥粒が、特開昭60−231462ではアルミナ種粒子を使用する良質のゾルゲル法によるアルミナ質焼結砥粒が記載されている。
【0003】また、特開昭63−139062には、オキシ窒化γ−アルミニウム、第IVB族金属の窒化物を含有させたゾルゲル法によるアルミナ質焼結砥粒が、特開平5−117042にはオキシ窒化物とアルミナとを電炉で溶融しオキシ窒化物等を含む研摩材が記載されている。更に特開平5−105870にはアルミナゾルにSiC,TiB2 ,サイアロン等の機械的耐性材料を添加混合しゲル化し、焼結した複合研摩材が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の特開昭63−139062等に含有されるオキシ窒化γ−アルミニウム(ALON)はスピネル型結晶で、アルミナに比して硬度が低いため、研削に寄与する鋭利な切れ刃としては不利であり、また製造法としても炭素またはその化学的前駆物質の混合ゾルを製造する工程において、これらの分散が極めて困難で、凝集し易い炭素質が焼結後も残存炭素として砥粒内に残り性能を劣化させる。また、特開平5−105870においては機械的耐性材料の添加量が多いため、ならびに添加時の分散の困難性のためアルミナ結晶のネットワークを分断し、最終的に焼結砥粒としての焼結性が劣り問題となる。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記の課題を解決するとともに、研削に寄与する硬く鋭利な切れ刃の発生ができ易く、研削性能に優れた砥粒を種々検討した結果、アルミナ質ゲルを仮焼して得られたアルミナ質多孔体に珪素化合物および炭素化合物を含浸させ、乾燥後窒素またはアンモニアガス雰囲気下にて窒化しつつ焼結することを特徴とするサイアロン相を含有するアルミナ質焼結砥粒の製造方法を見出した。
【0006】本発明の砥粒は、ゾルゲル法と含浸法との組合せによって製造される。すなわち、(擬)ベーマイト(例えば、Condea社からSB Pural Aluminaなる商品名で市販されている)を硝酸その他の酸と混合して、まずゾル化する。ゾル化の際に、砥粒の高密度化および/または結晶組織微細化のためには、粒径0.2μm以下、望ましくは、0.1μm以下のα−アルミナ微粒子またはコランダム構造を有するTi23 ,MgO・TiO2 ,FeO・TiO2 ,NiO・TiO2 ,CoO・TiO2 ,MnO・TiO2 ,ZnO・TiO2 ,V23 ,Ga23 ,Rh23 ,α−Fe23 およびα−Fe23 の前駆体のうち少なくとも一種類の微粒子、または、これらの元素を固溶したα−アルミナ微粒子を上記アルミナゾルに種として添加するのが好ましい。
【0007】その後、ゲル化させるが、(擬)ベーマイトとこれらの微粒子を混合した後に酸を混合してゾル化し、次いでゲル化してもよい。種として添加する上記微粒子の添加量はアルミナゾル中のアルミナの重量に対し、0.3〜3重量%が好ましい。0.3重量%未満では、砥粒のアルミナ結晶サイズが微細にならず、また3重量%を超えても結晶の微細化が更に向上することは殆ど認められない。
【0008】ゲル化後、乾燥して乾燥ゲルとし、所定の砥粒の粒度になるように粉砕、整粒し、その後好ましくは550〜900℃の温度にて仮焼する。仮焼された粒子は放置するとまた吸湿するほどのアルミナ質多孔体である。吸湿前の状態で乾燥ゲルの自由水および結晶水の大部分、好ましくは全水分量の95重量%以上が除去されるまで仮焼温度に保持する。仮焼温度が900℃を超えると仮焼ゲル中に十分に細孔が形成されず、次に述べる珪素化合物および炭素化合物が粒子内に所定の量含浸され難く、特に砥粒内部への含浸が困難となる。また、仮焼ゲル中の残存水分が多くなる。乾燥ゲルの全水分量の95%未満の除去率でも同様な困難を生ずる。仮焼温度が550℃未満では水分の除去率が低いため好ましくない。
【0009】上記の仮焼ゲルに対して、珪素化合物と炭素化合物を含浸させる。珪素化合物が液体(例えば四塩化珪素のような珪素化合物、テトラエトキシシランのようなシリコンアルコキシド)の場合にはそのままか溶媒に希釈し、シリカのように固体の場合にはそれを微細化し、溶媒に分散させて含浸させる。溶媒としては水、エタノール、メタノール、エーテル、アセトン等が使用できるが、表面張力の小さな溶媒の方が砥粒内部への含浸効果が大きいので、エタノール、メタノールが好ましく、生産コスト的には水が好ましい。
【0010】また、炭素化合物としては蔗糖およびぶどう糖のような糖類、あるいはポリビニルアルコール、フェノール樹脂のような樹脂類等が使用できる。炭化率の高い化合物が好ましい。炭素化合物も液体ならそのままか溶媒に希釈したものを、固体なら上記のような溶媒に分散なり、溶解して含浸させる。
【0011】含浸の方法としては、前記の解砕整粒した仮焼アルミナゲルをこれより細かい網目上にのせて含浸液浴中に浸した後この含浸ゲルを網目ごと引き上げる方法等があり、特に限定されるものではなく、また含浸の際の雰囲気の加圧や脱気を行なっても構わないが、より好ましい方法は所定量の仮焼アルミナゲルに所定量の含浸液をほぼ全体に行き渡るように注入した後、この湿潤物をかき混ぜて均一化するのが好ましい。より好ましい含浸方法としては液体または溶液をスプレー滴下し、仮焼ゲルに接触させるのがよい。
【0012】次に含浸させる量について記載する。珪素化合物の含浸量は珪素元素としてAl23 1モルに対し、0.0051〜1.16モルが好ましく、より好ましくは0.0051〜0.35モルを、炭素化合物は十分にサイアロン相が形成される温度1450℃における残炭素としてAl23 1モルに対し、0.011〜2.61モルが好ましく、より好ましくは0.011〜0.78モルである。一回の含浸でこれらの量が入らない場合は、含浸後乾燥し、また含浸する操作を繰返し所定の量を含浸する。上記の量が入ると、最終砥粒として好ましくはSiは0.1〜15モル%、より好ましくは0.1〜6モル%含有することになり、Nも好ましくは0.15〜22.5モル%、より好ましくは0.15〜9モル%含有され、この割合にて各種のサイアロン相が形成される。それぞれの下限量未満の量の含浸量ではサイアロン相を含有した効果がないか均一な含有がなされない、また上限を超える量を含浸させると余剰のSiやCが残り、かえって砥粒の研削性能を落とすため好ましくない。
【0013】炭素化合物を含浸させるのは、該化合物が焼結までの過程か、焼結時に残炭素として炭素となり、該炭素が、焼結温度範囲にてAl23 やSiO2 の酸素原子を奪い取り、雰囲気N2 またはアンモニアガスと以下のような置換反応をし、窒化物および/または酸窒化物となるためである。
Al23 +3C+N2 → 2AlN+3COSiO2 +3C+2/3N2 → 1/3Si34 +2CO高温では上の反応式の右側に移行し、更にこれら生成物がAl23 等と反応し、各種のサイアロン相、例えばSi4 Al226 が2/3Al23 +2/3AlN+4/3Si34 →Si4 Al226の反応式が生成され、アルミナ質砥粒内に含有される。
【0014】次に含浸後の操作、工程について記す。含浸後の仮焼ゲルを乾燥し、N2 ガスまたはアンモニアガス雰囲気中にて、好ましくは1450〜1700℃の温度範囲にて焼結する。含浸された珪素化合物や炭素化合物は、焼結前か焼結の初期段階にてそれぞれシリカの前駆体またはシリカおよび炭素になる。アルミナおよびシリカは炭素を還元剤として雰囲気の窒素と反応し還元窒化反応により窒化物あるいは酸窒化物と変換されるが、この反応を促進させて焼結砥粒中の未反応炭素の残存を砥粒特性に悪影響を及ぼさない程度の最小限にとどめるためには、焼結雰囲気ガスを流すのが望ましい。なお、この反応において使用される雰囲気としては窒素またはアンモニアガスに限られるものではなく、加熱により窒素と、還元窒化反応を阻害しない成分とに分解するようなものであればどのようなものでもよい。窒化物の生成は1400℃前後でなされるが、焼結温度を1450℃以上としたのは、この温度未満では還元窒化反応により生成した窒化物と残存酸化物の反応によるサイアロン相形成が不十分となり、また焼結不足により緻密でない焼結砥粒となり、更に結晶組織も板状とはならないからである。焼結温度の上限については、焼結によって形成されたサイアロン相の分解とそれによるシリカ成分の揮発が開始するという理由から1700℃以下が好ましい。
【0015】このようにして製造された砥粒は、緻密で高硬度の多結晶焼結砥粒であり、結晶組織は通常のアルミナ焼結体とは異なり、結晶粒径の比較的揃った板状組織からなっている。この砥粒の結晶相は大部分のアルミナの他、サイアロン相を含有するが、更に少量のムライト相を含んだり、焼結を低温にて行なった場合にはこの他少量の窒化アルミニウム相が観察される。前述のように焼結した後、室温にまで冷却し、目的とする砥粒の所定粒度に再度篩分け等で整粒し、目的の粒度を持つ砥粒を得る。
【0016】本発明の砥粒をビトリファイドボンド、メタルボンドまたはレジンボンド等の結合剤で成形硬化させることによって各種の砥石が製造される。また、研摩布紙は、基材と砥粒とを接着剤で接着させることにより製造される。接着剤としては優れた研摩特性と耐水性のためにフェノール樹脂系接着剤が好ましく、レゾルシノールまたはその誘導体を併用することにより硬化条件を緩和することもできる。研摩布紙用基材としては、紙、織布、不織布等が例示される。以下、実施例について本発明を具体的に説明する。
【0017】
【実施例】
実施例1擬ベーマイト(Condea社,Dispural)4kgと純水16kgを撹拌混合しスラリーとし、更に67.5wt%の硝酸380mlを等容の純水で希釈したものを滴下しゾル化し撹拌した。一方、種粒子を以下のように造った。純水とアルミナボールを入れたアルミナライニングのポットミルを14日間回転させて得られたアルミナ摩砕粉スラリーを硝酸にてpH=2.6としたものを用意した。このスラリーの摩砕粉含有量は16.6wt%で、摩砕粉の比表面積は50m2 /gであった。前述のスラリーにこのアルミナ摩砕粉スラリー240gを添加し更に撹拌を続けて分散させた。摩砕粉添加ゾルを熱風乾燥機にて90℃、24時間静置乾燥した。得られた乾燥固形物をそれぞれ粉砕篩分けして、600〜250μmの粒分を700℃で2時間大気中で仮焼して摩砕粉入り仮焼アルミナとした。
【0018】テトラエトキシシラン7.8gをエタノール6mlに溶かした溶液と無水ぶどう糖2.5gを純水10mlに溶かした溶液を混合後、上記の摩砕粉入り仮焼アルミナ38.4gに含浸させ、熱風乾燥機で90℃、24時間乾燥させた。更にこの乾燥物15gを内径35mm、均熱部120mmの管状炉にて窒素ガス200ml/minのフロー中で700℃で2時間仮焼し、溶媒の揮発とぶどう糖の炭化を行なった後、焼結用の富士電波工業(株)製ハイマルチ5000型黒鉛ヒーター炉に移して窒化、焼結を行なった。窒化焼結は窒素ガスフロー(1リットル/分)下で行ない、窒化のため1400℃で4時間保持後、更に1700℃に昇温後2時間保持した。
【0019】こうして得られた砥粒は、黒色で、X線回折による結晶相解析はαアルミナ相の他、少量のサイアロン相とムライト相が確認された。また、砥粒を乳鉢で解砕した時の破断面の走査型電子顕微鏡観察では砥粒は緻密に焼結していて、結晶組織は1〜2μmで、板状の結晶粒どうしの集合体であった。砥粒の粒子の荷重500gでのビッカース硬度は、2080kg/mm2 で、SiおよびN含量はそれぞれ1.87mol%,0.92mol%であった。
【0020】実施例2含浸液の配合がテトラエトキシシラン7.8gをエタノール6mlに溶かした溶液と無水ぶどう糖6.5gを純水10mlに溶かした溶液を混合したものである以外は実施例1と同様な条件で砥粒を造った。得られた砥粒は黒色で、結晶粒径は約1〜2μmで形状は実施例1のものとほぼ同様であったが、破断面の凹凸は実施例1のものより鋭利であった。結晶相はαアルミナ相、少量のサイアロン相が観察され、ムライト相は実施例1と比較して微量であった。ビッカース硬度はHv=2160kg/mm2 であった。この砥粒の化学成分はSi=1.87mol%、N=3.25mol%であった。
【0021】実施例3テトラエトキシシラン2.7gをエタノール6mlに溶かした溶液と無水ぶどう糖2.6gを純水10mlに溶かした溶液を混合後摩砕粉入り仮焼アルミナ39.4gに含浸させる含浸操作以外は実施例1と同様な条件で砥粒を造った。得られた砥粒は黒色で、結晶相はαアルミナ相、少量のサイアロン相が観察され、ムライト相はごくわずかであった。ビッカース硬度はHv=2140kg/mm2 であった。この砥粒の化学成分はSi=0.65mol%、N=1.03mol%であった。
【0022】実施例4テトラエトキシシラン12.1gをエタノール5mlに溶かした溶液と無水ぶどう糖8.7gを純水9mlに溶かした溶液を混合後摩砕粉入り仮焼アルミナ34.9gに含浸させた後実施例1同様乾燥、窒素ガス中での仮焼炭化後、これに更に同じ配合の含浸液を含浸させてもう一度乾燥、窒素ガス中で仮焼を行なう含浸、仮焼炭化操作以外は実施例1と同様な条件で砥粒を製造した。得られた砥粒は黒色で、結晶相はαアルミナ相、サイアロン相、少量のムライト相であった。ビッカース硬度はHv=2100kg/mm2 であった。この砥粒の化学成分はSi=2.83mol%、N=8.47mol%であった。
【0023】実施例5使用した仮焼アルミナが摩砕粉を含んでいないものである他は実施例2と同様な条件で砥粒を造った。得られた砥粒は黒色で、結晶組織は実施例2のものとほぼ同様であった。結晶相はαアルミナ相、少量のサイアロン相、微量のムライト相が観察された。ビッカース硬度は2110kg/mm2 であった。この砥粒の化学成分はSi=1.83mol%、N=3.09mol%であった。
【0024】実施例6含浸液の配合がテトラエトキシシラン7.8gとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂3.3gをエタノール16mlに溶かした溶液である以外は実施例1と同様の条件で砥粒を造った。得られた砥粒は黒色で、結晶組織は実施例2のものとほぼ同様であった。結晶相はαアルミナ相、少量のサイアロン相、微量のムライト相が観察された。ビッカース硬度は2180kg/mm2 であった。この砥粒の化学成分はSi=1.82mol%、N=3.09mol%であった。
【0025】比較例1高純度アルミナ(昭和電工製UA−5105、平均粒径0.4μm)187.1g、窒化珪素(昭和電工製NU−30、平均粒径1.0μm)8.6g、窒化アルミニウム(東洋アルミ社製UF、平均粒径1.0μm)1.3gとエタノール400mlをウレタンポットミルにて24時間湿式混合、90℃で24時間乾燥したものを解砕、210μmの篩を通過させた。この混合粉40gを2t/cm2 金型成形後黒鉛ヒーター炉にて、実施例1と同様の焼成パターンにて焼結を行なった。焼結したペレットは粉砕、整粒してJIS#60の砥粒とした。得られた砥粒は黒灰色で、結晶組織は激しく焼結していて粒界が明らかでなく、中には15μm程度まで焼結した結晶粒もみられたが、一部に板状粒の痕跡がみられた。結晶相はαアルミナ相とサイアロン相のみであった。ビッカース硬度は2030kg/mm2 であった。この砥粒の化学成分はSi=1.90mol%、N=2.96mol%であった。
【0026】比較例2実施例1で使用した擬ベーマイトゾルを遠心分離して未分散部分を除去したもの2.5kgを一定に撹拌しながら沸点まで加熱し、β−サイアロン粉末(平均粒径1.0μm)26.0gを添加した。β−サイアロン全量添加後約5分後にゾルはゲル化完了した。これを熱風乾燥機にて90℃で乾燥し、得られた乾燥固形物を実施例1と同様に粉砕、篩分けし、そのまま実施例1と同様に仮焼した後窒素ガスフロー(1リットル/分)下で1350℃で4時間焼結した。こうして得られた砥粒は黒みがかった灰色で、X線回折による結晶相解析はαアルミナ相とサイアロン相が確認された。結晶組織観察では平均粒径0.4μmのアルミナマトリックス中にサイアロンが分散した様子が確認された。砥粒のビッカース硬度は1640kg/mm2 であった。この砥粒の化学成分はSi=1.91mol%、N=2.86mol%であった。
【0027】比較例3焼結を実施例1と同一条件で行なった以外は比較例2と同様に砥粒を造った。得られた砥粒は黒みがかった灰色で、X線回折による結晶相解析はαアルミナ相とサイアロン相が確認された。結晶組織は比較例2と同様に激しく焼結した部分があったがその頻度は比較例2より小であり、平均粒径は2.5μmであった。砥粒のビッカース硬度は2070kg/mm2 であった。この砥粒の化学成分はSi=1.82mol%、N=3.02mol%であった。
【0028】比較例4摩砕粉入り仮焼アルミナ40.0gに対し含浸操作を行なわずそのまま使用する以外は実施例1と同様な条件で砥粒を造った。得られた砥粒は紫色で、結晶組織は5〜10μm程度の不規則に粒成長した組織が観察された。結晶相はαアルミナ相のみが観察された。この砥粒の化学成分はN=0.04mol%であった。
【0029】実施例7〜12および比較例4〜8実施例1〜6および比較例1〜4で作製した砥粒、並びにJIS R6004規定の褐色アルミナ研削材A砥粒を整粒してそれぞれJIS#60の砥粒とし、以下の方法にてディスク状研摩布を造った。実施例、比較例のそれぞれの砥粒100部と、10部のレゾルシノールを10部のエタノールに溶解したものの混合物を100℃で1時間乾燥しエタノールを蒸発させ、コーティング砥粒とした。圧縮不織布基材にフェノール樹脂接着剤(昭和高分子(株)製BRL−2867、固形分約70%)を100g/m2 の割合にて均一に塗布し、この上にコーティング砥粒を散布した後、過剰の砥粒を除去して研摩材付着量250g/m2とした。これを80℃で4時間乾燥後、前記フェノール接着剤を200g/m2の割合にて均一に塗布し、更に80℃で4時間乾燥させた後、2時間で135℃まで昇温し、135℃で30分キープした。冷却後これをパンチ抜きして180φのディスク状研摩布とし、各砥粒に対し、実施例7〜12および比較例4〜8の研摩布とした。A砥粒が比較例8である。これを用いて表1の試験条件にて乾式研削を行なった。
【0030】表1:研削試験条件サンダー : 日立PHD−180C研削時間 : 1分×10回被削材 : SPC荷重 : 3ポンドこの結果、各実施例、比較例における研削量は表2のようになった。
【0031】
【表1】


【0032】なお表2にて比較例8につき9〜10分研削量の値がないのは、研削後4分間にて著しく焼けを発生し研削されなくなったために研削試験を停止したことによる。
【0033】
【発明の効果】本発明により得られる焼結砥粒は硬度が高く、研削性能の優れたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルミナ質ゲルを仮焼して得られたアルミナ質多孔体に珪素化合物および炭素化合物を含浸させ、乾燥後窒素またはアンモニアガス雰囲気下にて窒化しつつ焼結することを特徴とするサイアロン相含有アルミナ質焼結砥粒の製造方法。